第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「クローン戦争期の軍需生産は、後の帝国の大幅軍拡の比ではない。例えるならそれは僅かな木々しかない砂漠地帯から突然豪勢な宮殿を出現させるようなものだ。むしろ魔法の類と言っていい。そして不思議なことに一部の造船所では“突然”魔法でもかけられたような速度で軍需品を吐き出し続けることが多々あった。もしかするとそれはジェダイの魔法かも知れないし或いはもっと別の存在が背後にいるのかも知れない。今となっては判別しようがない問題だが」
-クワット・シティ文庫 軍需のクローン戦争史より抜粋-


最高議長が遺した遺産

-レジスタンス領 最高司令部所在地 イリーニウム星系 惑星ディカー-

代理総統暗殺未遂事件の報せはその失敗と共に各銀河へと届けられた。

 

総統はこの日、旧帝国首都にして現在の第二首都であるベアルーリンからコルサントに向かうスケジュールの予定が大幅に遅れていた。

 

それでもようやくコルサントに帰還しセントラル地区の演説会場に迎えるとコルサントの軌道上で総統を始め誰しもが思っていた時、彼らの運命を変える出来事が起きた。

 

セントラル地区宇宙港に向かおうとするある二隻の輸送船が衝突事故を起こしたのだ。

 

事故の影響でコルサント軌道上の一部が閉鎖され当然セントラル地区宇宙港行きの航路も交通どめとなった。

 

総統一行は再び待たされる事となった。

 

だがこれがよかった、この事故のおかげで総統の命は救われる事となる。

 

この間に会場での爆破テロが発生しそれとほぼ同時期にセントラル地区宇宙港の政府専用ハンガーベイ区画も同様に爆破された。

 

軌道上でこの事件の内容を知った総統一行は進路を変え、急いで総統府へと向かった。

 

同刻、会場での爆破テロを察知した国防軍最高司令部及び親衛隊最高司令部は直ちに行動を開始した。

 

まず双方が現地のセントラル地区一体に部隊を派遣し総統府、帝国議会(ライヒスターク)、国防軍本部、親衛隊本部、その他各行政府官庁街などの重要な施設を封鎖し一体の警備に当たった。

 

コルサント本国防衛艦隊も行動を開始し軌道上に全艦艇を配置し非常時に備えて外部の敵の襲来を警戒した。

 

クローン戦争時のコルサントの戦いのようなことがあってはならない。

 

それと同時にコルサント本国防衛艦隊は真っ先に総統が乗船する船を発見し総統府までの航行を守る護衛部隊を展開した。

 

これにより代理総統一行は総統府まで安全に辿り着くことが出来た。

 

総統府に辿り着いてしまえばもう命の危険はない。

 

総統は急いで総統府の厳重な警備の敷かれた地下壕に籠った。

 

その間に会場にいた聴衆客達は警備隊やジークハルトの指揮によって脱出しそれと同時にフリシュタイン上級大佐率いる部隊が内部に突入を開始した。

 

テロリストたちは殆どが打ち倒されるかどこかへ退避して事件は幕を下ろした。

 

彼らの目論見は失敗に終わりいたずらに犠牲を生み出す結果となったのだ。

 

無論事件の内情はディカーにいるディゴール大臣達にも届いた。

 

司令室には前線各所の部隊を見回っている為ホログラムでの出席となった。

 

逆に今度は各地の抵抗勢力の教育を終えたハンとチューバッカがディカーに戻ってきていた。

 

更にはボーラ・ヴィオからなんとか離脱したカルとアソーカもディカーの司令部にいた。

 

今のディカーにはレジスタンス随一の高官が多く揃っておりまた同時にレジスタンスが持つ最精鋭の特殊戦力でもある。

 

特に今まで軍の助っ人として活躍していた2人のジェダイもディカーに来た途端ディゴール大臣から臨時のジェダイ将軍となるよう階級章と書類が渡された。

 

今のレジスタンスは縋れるものはなんでも縋りたいだろうし軍の命令をこれで素早く展開出来るようになる。

 

「…それで、結局の所総統は生きている…ということだな…?」

 

ディゴール大臣はモン・カラからボサウイに移った情報将校のアルド・バロダイ対第三帝国情報収集課主任に尋ねた。

 

彼は普段MC75スター・クルーザー“テンペラス”を旗艦とする戦闘群に属しておりそこで情報将校として活動していた。

 

その為今回の事件もいち早く第三帝国の内情を分析していた。

 

『残念…といえばいいのか、その通りです。しかもコルサント自体の混乱は予想よりも遥かに低く、犠牲者も少ないとのこと』

 

「そうか…それでバロダイ主任、それとソロ将軍にも聞かせてもらうが今回の襲撃を行ったのは我々レジスタンス、もしくはレジスタンスに合流していない旧新共和国軍の残党、我々と協力する抵抗勢力の仕業に当てはまるか?」

 

これが一番重要な質問だった。

 

少なくともディゴール大臣やレイア、他の将軍や提督達の命令で総統暗殺の命令は出していないはずだ。

 

そもそも何度か立てられた計画だって全て様々な要因が重なって頓挫した。

 

何より今回の暗殺未遂事件は民間人の犠牲もかなり多く出ている。

 

レジスタンスとしても“()()()()()()”とは思えなかった。

 

『少なくとも私が知る限りでは全て当てはまらないと思います。現状入ってきた情報だけ取っても2年前に崩壊したコルサントの防衛軍の残党が行動を起こしたという可能性も考えにくいです』

 

「こっちとしてもやるように命令した覚えはないし事前報告もなかった。それに俺達がなんとかコルサントに入って戦いを教えた時の規模を考えても宇宙港のハンガーベイ一つと建物一つを爆破させて襲撃するなんて事は不可能なはずだ」

 

2人の意見は完全に一致しており総じてディゴール大臣が挙げた懸念はどれも払拭された。

 

「となると我々の関係者以外の武装勢力が行動を起こして失敗した、という事だな?」

 

「そうなるな、第三帝国のやってる事を考えると俺達みたいな連中以外の恨みも相当買ってそうだしな」

 

『襲撃する武装勢力に関する情報がまだ限られている為何とも言えませんがその線が最も可能性が高いと思われます』

 

コルサントは広い。

 

あの何千層もの都市惑星には単なる中央政府の機能、行政府機能、権力者達が住んでいるだけでなく多くの中級、下級層の人々も多く住んでいる。

 

それ以外にも裏社会との繋がりのある者やコルサントに根付いた犯罪カルテルが存在している。

 

第三帝国はそれらに対してかなり徹底的な弾圧を行なっていたし関係のない貧困層にも激しい弾圧や搾取を行なっている為それらの不満が爆発した可能性もある。

 

無論コルサント内に潜入したレジスタンス関係勢力以外の反第三帝国の勢力が行動を起こした可能性も十分にある。

 

今の限られた情報の中で真実を選び抜くのは不可能であろうし恐らく当事者の第三帝国とてそれは同様だろう。

 

「分かった、引き続き情報収集を続けてくれ。軍全体にも詳細を伝えろ、それと恐らく帝国はさほど混乱していない。この気をチャンスと思って下手に攻勢に転じるのは控えるよう添付を」

 

「了解…!」

 

ディゴール大臣は部下の幕僚に指示を出すと再びホログラムの方に目線を向けた。

 

今度はそこにシス・エターナル軍の動きが表示されていた。

 

むしろ今ではレジスタンスに対する脅威は第三帝国よりもシス・エターナル軍の方が遥かに上回っている。

 

どんなに限界でも辛うじて維持されていた惑星ロザル、惑星サンクチュアリの失陥によりレジスタンス軍最大の戦力を誇るモン・カラ周辺は一気に後退した。

 

ドゥミナス宙域とロザル宙域の勢力圏を完全に喪失し遂にはモン・カラ宙域内に侵入された。

 

しかもシス・エターナル軍は分散し更に多くの範囲に被害を与えている。

 

このままではレジスタンス軍が一気に艦船と兵員不足に陥ってもおかしくない。

 

かき集めた新共和国軍の遺産がシス・エターナルの紅き一撃によって徐々に溶かされ続けていた。

 

「シス・エターナル軍は主にモン・カラ戦線に注力していたはずだが…今回のタノ将軍とケスティス将軍の任務の結果、リド星系にも密かに展開していたことが判明しそしてリド星系の惑星ボーラ・ヴィオはシス・エターナル軍によって破壊された」

 

星図からボーラ・ヴィオが消失し代わりにシス・エターナル軍の行動範囲を示すマークが表示された。

 

既にシス・エターナル軍は惑星の破壊と共に撤退したようだが。

 

「シス・エターナルもボーラ・ヴィオの廃棄されたクローニング施設を制御していたジョルースを狙っていたようだった。彼らにとってもジョルースは十分脅威だ」

 

「それでジョルースとその一味は2人が打ち倒したんだろ?」

 

ハンはカルとアソーカに尋ねた。

 

2人は顔を見合わせアソーカが「戦闘はしたけど私達が行く頃には既にジョルースは討たれていた」と付け加えた。

 

あの狂気のクローンの老人を倒したのはアソーカではない。

 

「となるとシス・エターナル側のフォース感受者の戦士か…こちらとは戦ったのか?」

 

「いや、ジョルースを倒して施設を制圧したことで撤退を始めていたから直接対決する事はなかったけど……」

 

再びアソーカはカルと顔を見合わせた。

 

この事を話していいのかどうしても踏ん切りがつかなかった。

 

2人があの地で知ったことは事情を知ったとはいえ衝撃に値するものだった。

 

「“ある人物”から、これを貰った。とても大切な情報がここに入っている」

 

アソーカは決断しある物体を差し出した。

 

ハンやレイア、ディゴール大臣らはアソーカが手に持つ物体に目を向けた。

 

レイアは真っ先に「ホロクロン…」と答えた。

 

「一体誰からこれを?」

 

ディゴール大臣は見覚えがあるのかすぐにアソーカに尋ねた。

 

「それは…まずこの中身を見てからにして欲しい」

 

ホロクロンは基本的にフォース感受者ではないと開錠できない。

 

その為アソーカは自らのフォースの力を用いてホロクロンを開錠した。

 

カイバー・メモリー・クリスタルに宿された記憶が掘り起こされる。

 

シス・エターナルの戦いとの趨勢を決める、大切な情報が。

 

 

 

 

 

 

-インナー・リム・テリトリー チャルダーン星系周辺 惑星C-a12 旧共和国造船所-

ハイパースペースからジェルマン達を乗せたUウィングがジャンプアウトし放棄された旧共和国時代の造船所が彼らの目の前に現れた。

 

クローン戦戦争は相対する両陣営が互いに相手を越えようと、足りなかったものを埋めようと本来一千年分の間に作るべきだった兵器を作り続けた。

 

共和国側はクワットやコレリア、レンディリ、多くの造船所から多くの軍艦と兵器が出現しそれらが元々いた諸邦の兵とカミーノで製造されたクローン・トルーパーによって運用された。

 

だがそれだけでは足りなかった。

 

特に銀河共和国の場合、質や工業力はともかく物量の面ではバトル・ドロイドに対し劣勢であり1人でも多く、1丁でも多く、1門でも多く、1機でも多く、1台でも多く、一隻でも多くの物を求めた。

 

その結果両陣営とも放棄された旧時代の造船所を密かに再利用し始めた。

 

そのうちの一つがこのチャルダーン星系に位置する惑星の軌道上に存在する旧共和国造船所地帯だ。

 

この造船所の名前の由来は新共和国や帝国から見ての前時代の共和国ということではなく、本当にシス帝国と戦争をしていた時代の共和国時代から存在していたという理由で名付けられた。

 

シス帝国に対抗する為に本来は作られた造船所であったが戦争が終わるとこの造船所は現地のチャルダーン政府に譲渡された。

 

チャルダーン政府はしばらくこの造船所を使って製品を作っていたのだがやがてチャルダーン本星の軌道上に造船所を構築した為用済みとなった造船所は旧造船所として観光資源化され、実質的な造船所としての機能を終えた。

 

クローン戦争が始まる前は。

 

あの戦争は銀河を一変させたと同時に過去のものにも命を吹き込んだ。

 

かつて戦場を駆けたジェダイは再び将軍となり、解散した共和国軍はパルパティーン最高議長の名の下現代に蘇った。

 

そしてチャルダーン星系に存在していた造船所もそのうちの一つである。

 

既存の生産ライン以上の物を確保する為にこの造船所も現代技術が導入され再び稼働を始めた。

 

一度はあのシーヴ・パルパティーン最高議長も何人かの顧問団と共にこの造船所を視察し建造され戦場へと向かう大量の艦艇を見送ったこともある。

 

大量の艦艇がチャルダーン軌道上造船所と共に建造されすぐさま造船所に投入された。

 

クローン戦争で共和国側を支えたのは間違いないが戦争が終わった数ヶ月後、再びこの造船所は放棄された。

 

有事の緊急措置であった上、帝国の今後の精密に練られた軍拡計画であれば別に過去の古い造船所を態々使い続ける必要もなかった。

 

その上観光資源としての価値も見込めなくなった為この造船所は完全に放棄されてしまった。

 

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「あれが旧造船所、流石に数十年前まで現役かどうしていただけあってとりあえず動けそうだな」

 

「本当にこんな場所に兵器が眠っているのか?少し怪しいんだけど」

 

ジェルマンは人気のない元造船所地帯を眺めながらそう呟いた。

 

各所の造船宇宙ステーションは文字通り死んでいるという言葉が相応しい様相で宇宙空間の静けさと同調していた。

 

「だが司令部が決めたことだ。なければせめて何か土産に持っていく必要がある。それより、先についてるインフェルノ隊とやらからは連絡はついたか?」

 

「念の為、特別回線で送ってる。本当についてるなら後少しで繋がると思うけど」

 

今回はジェルマンとジョーレンのチームの単独での任務ではなく別の特殊部隊との合同任務だった。

 

それがインフェルノ分隊、帝国の特殊部隊ユニットがほぼ丸々亡命し新共和国軍の特殊部隊として再編成された。

 

帝国時代と同じくレイダー級コルベット“コルウス”を拠点としてレジスタンスとなった今での活動している。

 

「インフェルノ分隊かぁ…名前だけは聞いたことあるが正直、どうなんだ」

 

ジョーレンはジェルマンに尋ねた。

 

彼が同盟軍の特殊部隊員として第一線で活躍していた頃はまだインフェルノ分隊などなかったはずだ。

 

しかも元帝国の特殊部隊、この肩書には誰もが一度は何らかの抵抗感を覚える。

 

ジョーレンとしても言葉の意味の中には信頼して背中を預けて大丈夫なのかという小さな最も重要な疑念が混じっていた。

 

「少なくとも5年も新共和国やレジスタンスの為に戦っているしアクバー元帥やオーガナ議長達からの信頼も篤い。それにインフェルノ隊は第三帝国の引き抜き工作が発生した時も離反しなかった」

 

第三帝国と新共和国の開戦前、新共和国側のコルベット艦が第三帝国側に亡命するという事件が発生していた。

 

そのすぐ後に両国が開戦し新共和国が崩壊してしまった為事件の詳細は分からずじまいとなったがその後のレジスタンス軍の一部組織の調査の結果、殆どが旧帝国と何らかの深い関わりのある人物だったことが明らかになった。

 

元老院議員アルセン・バレムは以前は帝国のCOMPNORの官僚だった疑惑がありその疑惑を自ら証明するかのように亡命後、第三帝国COMPNOR委員となった。

 

元老院情報委員会のルーズ・イルセと保安評議会ルイズビット・チェコスタは2人とも以前は黎明期の帝国情報部の職員でありその後地元の政府の安全保障組織に移ったようだがそれでも帝国の繋がりは深かったと見ていいだろう。

 

艦隊司令部のクリティス・ジュノール少将と逃走したコルベット艦の艦長であるダリック・ネイツ艦長は2人とも元惑星防衛軍ではあるのだがネイツ艦長はエンドア戦の直後まで帝国宇宙軍の大尉であり、ジュノール少将も元はインペリアル級の艦長であったことが発覚した。

 

2人とも巧妙に自らの過去を偽造しあたかも元から惑星防衛軍の将校だという風に偽っていたのだ。

 

あの混乱した銀河内戦直後の新共和国ではそれほど深く調べる余裕も時間もなかったし誰も調べようとしなかった。

 

何よりセフ・コンのドレクス・ホウブレン保安中隊長は元ストームトルーパー・コマンダーであった。

 

そもそもセフ・コンとは新共和国の衛星刑務所の警備隊であり当時の責任者のメージャーノン軍曹と更に元ストームトルーパーや帝国贔屓の者達がセフ・コンの警備兵として活動していた。

 

その為セフ・コンには新共和国時代からずっと疑いの目が掛けられ、あのランドだってメージャーノン軍曹の責任者に任命することには反対したのだ。

 

何度か新共和国の安全保障会議で「セフ・コンを廃止すべきだ」との意見が出たのだが、軍縮路線に舵を取り余力もあまりなかった当時の新共和国がセフ・コンを解体し新しい新規の警備隊を展開することは現実的にも不可能だった。

 

結果セフ・コンは新共和国が崩壊するその時まで存続し戦うことなく新共和国崩壊後、さも当たり前のように帝国に寝返りそのまま第三帝国の一部隊として掌握された。

 

今は第三帝国グリムドック強制収容所の警備隊、第447FFグリムドック警務旅団“セフ・コン”として再びストームトルーパーとなり刑務所の中にいた囚人達と共に今度は逆に見張る側になっていた。

 

つまり、あの事件で亡命した者達は皆元帝国と何らかの関わりがあり亡命するべくして亡命したといった様相だった。

 

されど元帝国軍の特殊部隊で将校も多くいたインフェルノ分隊からは誰1人も亡命者を出していなかった。

 

これだけで十分信頼は担保されているはずだ。

 

新共和国が崩壊した後も、各部隊が残党軍として個別に戦っていた時も、レジスタンス軍が形成された時もインフェルノ分隊は自由の為に戦った。

 

今後も彼らが第三帝国や他の帝国残存勢力に亡命することは絶対にないだろう。

 

少なくともジェルマンはそう思っていた。

 

「それに腕前だって実績がある。何せ我々が散々味わってきたんだからな」

 

最後にジェルマンは皮肉り2人は苦笑を浮かべた。

 

するとかけていた通信がようやく繋がった。

 

『こちらレジスタンス特殊作戦司令部所属、“コルウス”』

 

コルウス”の側からジェルマン達のUウィングに通信が入った。

 

「こちら同じくレジスタンス特殊司令部所属“シールズ”、ジェルマン・ジルディール大尉だ。“コルウス”、そちらの所在を教えてくれ」

 

待っていましたとばかりに通信機越しの“コルウス”のオペレーターは大きく息を吸い込みすぐに位置を教えた。

 

『中央制御ステーション近くに停泊している、こちらで座標を座標を送るが直ちにステーションへ向かってくれ。我々の指揮官が待っている』

 

「了解した“コルウス”、直ちに向かう」

 

通信を聴いていたジョーレンはジェルマンと顔を見合わせて操縦桿を傾けステーションの方へ向かった。

 

若干機能が生きているのか先行したインフェルノ分隊が復活させたのか定かではないがステーションのハンガーベイの偏向シールドは起動状態にあった。

 

これがなければUウィングから外に出るのも一苦労だ。

 

「あれが“コルウス”ってやつか?」

 

ジョーレンはコックピットから見える一隻のレイダー級コルベットを指差し呟いた。

 

通常のレイダー級とは違いTIEのパネルが取り外され代わりに赤いラインが船体に引かれている。

 

帝国軍が扱うレイダー級とは見るからに違う上にこの艦からは友軍であるという信号が出されていた。

 

「そうこれだよ、資料でしか見たことなかったけど」

 

「帝国のレイダー級を改造してそのまま使っているのか。確かに特殊部隊用としては扱いやすそうだ」

 

レイダー級は元々コルベット艦であるがそこそこ重武装で機動力にも優れ、艦載能力もあり少人数でも十分運用出来る。

 

特殊部隊が移動型拠点として扱うにはもってこいのの軍艦だ。

 

それはずっと帝国の敵側の特殊部隊員をしてきたジョーレンから見ても感じられることだった。

 

彼らを乗せたUウィングはそのままステーションの内部に入りそのまま着陸した。

 

機体のハッチが開き武装を整えた2人の男が出てくる。

 

「行くぞ」

 

ジョーレンを先頭にいつも通り2人は任務を開始した。

 

前へ前へと前進し徐々にビューポートから外の宇宙空間と本来の造船所区画が見え始めた。

 

そこで2人は驚くべき事実を目にした。

 

「ちょっと待て……おい、おいおいおいおい……嘘だろ……」

 

真っ先に驚いて足を止めたのはジョーレンの方だった。

 

彼は手でジェルマンを押さえブラスターは握りしめつつも目線は完全に造船区画の方に行っていた。

 

口がぽかんと開き瞳孔は開いている。

 

「いや……まさか……俺たちが回収してこいって言われた兵器は…“()()()()”……なのか…?」

 

ジョーレンも驚いているがジェルマンも十分驚いている。

 

何せ彼からしてみれば教科書や講義の中に出てきた過去の遺産が今目の前に綺麗な状態で存在しているからだ。

 

しかもそれを回収してこいと言われている。

 

「いやそれよりも……ここはもう、“()()()()()()()()()()()”…?」

 

ジェルマンはジョーレンに尋ね再確認しようとした。

 

この状況を見ればもう一回確認したくもなる。

 

ジョーレンも断言出来ずに「そのはずなんだが…」と言葉を濁した。

 

2人ともこの異様な光景に脳が拒否反応を示している。

 

だがジョーレンからしてみればある種“懐かしさ”も感じると言っていいだろう。

 

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無人で、放棄されたのにも関わらずこの造船所では今でもクローン戦争時代に活躍した艦船が建造され続けている。

 

その中には司令クルーザーではないアークワイテンズ級や旧共和国時代の設計のヴィクトリーⅠ級、そして何より目を引くのが今はもうとっくの昔に退役したヴェネター級スター・デストロイヤーの存在だった。

 

このスター・デストロイヤーはクローン戦争中にとにかく大量に建造され続け共和国宇宙軍の主力艦として共和国軍の戦線を維持し数多の星々を開放していった。

 

戦争後期に後のインペリアルⅠ級であるインペレーター級スター・デストロイヤーが出現したのだが少数生産であった為共和国軍の主力艦としての印象が強いのはヴェネター級だった。

 

帝国の黎明期もこの艦は戦後の銀河の治安を維持しインペリアル級や次世代の軍艦達にバトンを渡したはずだった。

 

されどこの放棄された造船所では未だに旧時代の軍艦を誰もいないのにも関わらず建造し続けていた。

 

しかもここで建造されている艦船は皆ある程度整った、今から戦えそうな様相でヴェネター級とてクローン戦争の時のように敵艦と撃ち合い出来そうな雰囲気だった。

 

この造船所には人もいなければドロイドや自動で建造するシステムも全て機能停止している。

 

何せ放棄されているからであり今この地に足を踏み入れたのはジェルマンとジョーレンと先行していたインフェルノ分隊くらいだ。

 

恐らく数十年無人、されどこの造船所は無人であるのにも関わらず資材を使い残された設計通りに軍艦を建造し続けていた。

 

例えそれがもう使われていない旧時代のものであってもだ。

 

「この造船所は今も“()()()()()()”…?なんでヴェネター級を…いやそれよりも、ここの兵器を本当に持っていくのか…?使い物になるのかすら…」

 

懐かしいと思う気持ちと同時にジョーレンはこの戦争でここで造られている艦艇が役に立つのか疑問に思った。

 

まず懐かしいと思う気持ちはやはりクローン戦争に従軍した時、これと同じ情景を何度も見たからであろう。

 

なんなら今目の前で建造されている軍艦に乗って戦場まで送られたこともある。

 

自分が乗艦するヴェネター級が敵艦との乱戦に巻き込まれ小破、中破のまま近くの宇宙港や軍事基地に立ち寄って修復を受けて再び戦場に戻るなどよくあることだった。

 

その度に目の前の光景を目にした。

 

だから懐かしい少年の日の思い出が蘇ったようだった。

 

その反面そんなもう28年、長ければ30年近く前の軍艦が役に立つのかという至極真っ当な疑問もジョーレンは持っていた。

 

確かにアークワイテンズ級やヴィクトリー級は今の戦場でも使われているがこれらは全て何度もマイナーチェンジを重ねて今も第一線に立っている。

 

それこそシステムや搭載兵器がクローン戦争時代のままならこの戦いにはついていけないかもしれない。

 

「だが今の状況じゃないよりマシだ。それにバラせばネビュラ級やスターホーク級の資材として使える」

 

ジェルマンの言うことも尤もらしいことだった。

 

今のレジスタンス軍は慢性的な艦船不足に悩まされている。

 

少しでも艦隊の足しになれば今の状況を打開するきっかけとなるかもしれない。

 

様々な感情がこの訳の分からない光景と共に存在していた。

 

「インフェルノ隊と合流してこのステーションの司令塔に向かおう、ここを占拠すればきっと造船所の全艦船を一気に…」

 

ジェルマンの提案はジョーレンによって遮られすぐに武器を構えるようハンドサインを出された。

 

このおかしな状況でもジョーレンの技量と知能は全く衰えていないようですぐに異変に気づいた。

 

ジョーレンは指で近くの監視カメラを密かに差した。

 

ジェルマンはすぐにその意図に気づいた。

 

僅かながらにだがカメラが動いているのが分かる。

 

「どうする」とジェルマンはジョーレンとアイコンタクトを取った。

 

ジョーレンはブラスター・ピストルに手をかけつつ気づかないフリをして歩き始めようとした。

 

するとカメラは機能を停止し動きを止めた。

 

それとほぼ同時にある1体のシーカー・ドロイドが目の前から現れた。

 

2人は足取りを止めたがすぐにこのドロイドが味方だと言うことが理解出来た。

 

色合いが通常のシーカー・ドロイドと違う上にこのドロイドの背後からある2人の人物が現れた。

 

片割れのパイロットスーツのズボンを履いた女性が2人の前に出て口を開く。

 

彼女の方をシーカー・ドロイドは器用によじ登った。

 

「待っていた、私はアイデン・ヴェルシオ中佐。インフェルノ分隊の隊長だ」

 

黒髪の女性は自らの名前を名乗り手を差し出した。

 

アイデン・ヴェルシオ、本来もう当分は戦うはずのなかったはずの戦士がまた1人、ジェルマン達と共に戦うこととなる。

 

 

 

 

-第三帝国領 首都惑星コルサント 親衛隊医療病院-

あの大テロ事件は多くの犠牲者と負傷者を出し、世間に衝撃を与えたがそれまでだった。

 

恐らく敵の目標であったはずの代理総統は生存しておりすぐにホロネットを通じてだが声明を発表した。

 

この卑劣な暴力行為は愚かな反乱分子によるものであり第三帝国と全ての国民に対する挑戦である、と。

 

すぐにISB、FFISO主導による主犯勢力掃討作戦の実行が発表された。

 

これと同時にアンダーワールドの“()()”を完璧に済ませてしまおうという魂胆もあるのだろうがどの道再びコルサントで夥しい数の命が奪われる事となるのは間違いなかった。

 

無論一般の国防軍と親衛隊も掃討作戦の支援を行うよう要請があり幾つかの部隊が既に動き始めていた。

 

それは親衛隊の軍病院にいたジークハルトもだった。

 

「パパはいつになったらお家に帰れるの?」

 

マインラートはジークハルトが寝ているベッドの隣で彼に尋ねた。

 

「明日には退院出来るよ。まあでもお休みはだいぶ先になっちゃったけどな…ハハ」

 

マインラートの頭を撫でながらジークハルトは乾いた笑いを浮かべた。

 

本当ならあの会場で代理総統の演説を聞いた後は暫く休みが取れるはずだった。

 

それがあのテロによって全て潰されジークハルトも傷を負った為病院に入院せざるを得なくなった。

 

しかもテロ組織掃討作戦の為ジークハルトと彼の部隊も宇宙港やアンダーワールド・ポータルの封鎖に駆り出される為再び休日は遠くへ行ってしまった。

 

「取り敢えず、掃討作戦終了後に休みを取るつもりだ。その時に遊びに行こうな」

 

「うん!」

 

「失礼します」

 

ドアが開きヴァリンヘルト大尉とアデルハイン大佐の副官であるハストフルク上級中尉が入ってきた。

 

彼も度重なる戦いで上級中尉に昇進し白兵戦章を受賞した。

 

彼らが入ってきたということは家族にも言えない仕事の話があるということだ。

 

ジークハルトは「ごめんな、お父さん仕事の話があるから少し外にいってもらえるかな」とマインラートやホリーに伝えた。

 

「うん、わかった。行こう」

 

「うん」

 

先にマインラートはホリーを連れて病室の外へ出た。

 

「ああ…すみません」

 

ヴァリンヘルト大尉は気まずそうにユーリアに謝った。

 

「いえ、お構いなく」

 

ユーリアはジークハルトに微笑みかけると2人の子供達と共に病室を出た。

 

ジークハルトは身体を起こし一気に表情が固くなり1人の父親の姿から1人の将校の姿になった。

 

「それで、何の用だ?」

 

「掃討作戦の会議が終了し我々の配置が決定しました。会議には准将の代わりにアデルハイン大佐が出席なされた為代わりにハストフルク上級中尉が」

 

上級中尉は敬礼しヴァリンヘルト大尉に代わってハストフルク上級中尉が説明を始めた。

 

「まず我々の配置はセントラル地区全域で第31義勇擲弾兵団一部隊と共に地区内の封鎖、及び監視です。宇宙港、ポータルを重点的に封鎖し中から1人も逃すなということです」

 

「第31義勇兵団といえば…」

 

「ああ、我々と共にこれからナブーを奪還する予定のデア・フルス・ソルー兵団のことだ。まあここで簡易的な実戦を交えての連携力の強化を行いたいのだろう」

 

とはいえたったひとつの地区にそこまで兵員を注ぎ込む必要もないと思うが。

 

文字通り虫1匹たりともアンダーワールドから出れなくするつもりなのであろう。

 

保安局の連中が中でやることを含めても外部に何ももれないということは相当重要だ。

 

「今閣下の代わりにアデルハイン大佐が中心となって簡易的な作戦を決めています。尤も我々は掃討の実行部隊ではないのでそこまで難しいものではありませんが」

 

「ハイネクロイツとメルゲンヘルク大佐はどうしてる」

 

「一応第21航空旅団と“ライアビリティ”は空中及び軌道上の警備を命じられています。その為作戦会議には出ていましたが掃討作戦中は軌道上におられるかと」

 

恐らくデア・フルス・ソルー兵団側の軍艦や航空部隊もハイネクロイツ大佐やメルゲンヘルク大佐と共に警備に当たってくれるはずだ。

 

それ以上に通常のコルサントの警備隊もフル動員されるはずなので空も空の先の警備は問題ない。

 

「明日、より正式な情報が閣下に送られるかと。そこに何か問題点などあれば是非お申し付け下さい」

 

「分かった、まあアデルハイン達なら恐らく問題はないだろうがな。他に何かあるか?」

 

「いえ我々は…」

 

「私はあるぞ」

 

1人の聞き慣れた男の声が数名の足音と共に聞こえた。

 

ジークハルト直属の上官であるモーデルゲン上級大将で数名の部下を連れている。

 

ヴァリンヘルト大尉とハストフルク上級中尉はすぐに敬礼した。

 

「モーデルゲン上級大将…」

 

ジークハルトも簡易的だがベッドの上から敬礼を送りモーデルゲン上級大将も敬礼を返した。

 

モーデルゲン上級大将も度々目にかけている部下ということもあってかジークハルトの見舞いに訪れていた。

 

しかし今回はこの様子から見て少し違うようだ。

 

「明日退院するそうだな准将」

 

「はい、一応念の為の入院でしたし明日から軍務にも復帰出来ますよ」

 

「それは素晴らしい。早速だが君には明日、総統府へ向かってもらいたい」

 

「総統府へ?」

 

ジークハルトの問いにモーデルゲン上級大将は頷いた。

 

モーデルゲン上級大将はいつも通りの飄々とした態度で理由を答え始めた。

 

「あの事件で会場にいてテロの実行者達と戦闘になった警備隊や将校に勲章を授与する事になってな。君が入院している間に君の副官や連れていた下士官と兵卒にはすでに授与されている」

 

ジークハルトはふとヴァリンヘルト大尉の方に目を向けた。

 

彼は照れくさそうに頷いた。

 

となるとバルベッド軍曹とゼルテック上等兵もなんらかの勲章を授与されたのか。

 

義勇兵の印象向上の為、というわずかな目的がこんな結果で果たされるとは。

 

「特に君は指揮系統が混乱する前に警備隊に的確な指示を出し、犠牲者を最小限に留めつつ負傷するまで戦った。十分勲章を授与するに値する」

 

「なるほど…」

 

「授与式は総統府にて総統閣下が直接行われる。セントラル戦功勲章、戦傷章、そして一等銀十字勲章が授与される、今回の事件で最大の名誉だ」

 

「そうですか、勲章が戴けるとなるとこの傷も負った甲斐がありますよ」

 

ジークハルトは皮肉を込めつつそう呟いた。

 

モーデルゲン上級大将も微笑を浮かべ答える。

 

「総統閣下や周りの閣僚達は今回の君の働きに大いに満足している。無論我々軍部もだ、このままナブーまで取り返せば君は少将への昇進が確定し親衛隊の中枢に入る事となる」

 

やがては上級大将に、その期待がモーデルゲン上級大将から溢れていた。

 

実際似たようなことを既にバエルンテーゼ上級大将からも同じことを言われた。

 

「ということだ、少し未来の話をしてしまったな」

 

「いえ、私や私の部隊としてはまず掃討作戦の封鎖任務に注力しませんと」

 

「そうだったな、だがナブー奪還と共に我々は一気に勝利に突き進む。第三帝国を勝利の未来へ推し進めるのは君だ」

 

モーデルゲン上級大将はジークハルトの肩に手を置きそう告げた。

 

ヴァリンヘルト大尉やハストフルク上級中尉はまだよく分かっていないようだったがジークハルトにはなんとなく分かった気がした。

 

この戦争を終わらせる気なのだ、親衛隊は、国防軍は、“()()()()()()()()()”。

 

シス・エターナル軍の活躍振りと第三帝国との同盟関係を鑑みれば自然とこのワードが出てくる。

 

シス・エターナルが持つあの禍々しい破壊の一撃を存分に利用して文字通りこの世から敵を消し飛ばすつもりなのだろう。

 

夥しい犠牲と共に、その先の扉はナブー陥落によって開かれる。

 

となればジークハルトの一押しでその先の地獄は開かれるのかもしれない。

 

彼にとってまた気の重くなる、それでいて止まることの出来ない道が再び出来上がっていた。

 

 

 

 

 

-未知領域 チス・アセンダンシー首都惑星シーラ チス拡張防衛艦隊司令部 第一ハンガーベイ-

シス・エターナルの紋章とシス・エターナル所属を示すシャトル群がチス・アセンダンシーの首都惑星であるシーラの都市、クサプラーのハンガーベイに着艦した。

 

デルタ級T-3cシャトルを戦闘に残り2機のラムダ級が着陸しハッチが開いた。

 

周りには軽く50人は超えてそうなほどのチス・アセンダンシーの将兵とこの地に亡命してきた帝国軍将兵がシス・エターナルの客人を出迎える為に整列していた。

 

チス・アセンダンシーと亡命帝国軍の軍服は軍事的伝統を共有している為かなり似通っている。

 

特に帝国軍は元々の制服にチス・アセンダンシー譲りのショルダーボードの肩章とベルトがついておりシス・エターナル軍や第三帝国の国防軍ともまた違った印象を見受ける。

 

「着いたようだね」

 

コックピットの座席に座っていたルークはパイロットの1人であるマレック・スティールにふと呟いた。

 

互いに違う機体に乗っていたとはいえ2人はパイロットであり互いに話していると気が合う所や通じ合うところが多かった。

 

「ああ、これからが我々の本当の仕事だ」

 

ルークはマレックの言葉に頷き同調した。

 

シス・エターナルの中枢に位置するルークや皇帝の手であるマレックやマラ・ジェイドが態々ここにきた理由は主にチス・アセンダンシーの領域にいるフォース感受者の教育であった。

 

彼らに正しい力の使い方を教える必要があるのだ。

 

ルークとしては他人に何かを教えるのは初めてではない為あまり不安はなかった。

 

ルークはしばらくデルタ級のコックピットの窓から外を見つめていた。

 

窓の外には一糸乱れぬ姿で整列する将兵の姿があり当然といえば当然だが青い肌を持つチスと普通の人間である帝国軍の将兵がなんの違和感もなく肩を並べていた。

 

「どうした?」

 

「そろそろ出るぞ?ルーク?」

 

マレックと奥から出てきたマラ・ジェイドはルークを急かしたがルークはしばらく窓の外の光景を見つめていた。

 

「…いや、なんでもない。行こう」

 

ルークはマレックやマラ・ジェイドの後に続いていった。

 

一方同じくチス拡張艦隊司令部ではルーク達シス・エターナルの顧問団を出迎える為、国家元首であるリヴィリフ、宰相ラストーレ、そして亡命帝国の代表としてヴィルヘルムとタッグ元帥が来ていた。

 

彼らはこの数時間前まで艦隊司令部に駐留しているチス・アセンダンシー製のスター・デストロイヤーを視察していた。

 

この軍艦を基として多くのチス・アセンダンシーのスター・デストロイヤーがまだ見ぬスター・デストロイヤーの大軍と共に銀河の防波堤となるのだ。

 

彼らはシス・エターナル側の顧問達が魔買うようセッティングした司令部の応接室に向かっていた。

 

ここでチス・アセンダンシーとシス・エターナルの関係性をアピールし共に未知領域の防波堤として協力していくことを示す必要があった。

 

これからそう遠くない未来にやってくるあの怪物はチス・アセンダンシー単独で防げるものではない。

 

多くの協力者が必要なのだ。

 

「陛下、シス・エターナルの顧問団が到着されました」

 

チス拡張防衛艦隊の将校がリヴィリフらに声をかけた。

 

リヴィリフは「分かった」と返答し応接室に高官らと共に入った。

 

すでに中には数名の帝国軍とチス・アセンダンシー拡張防衛軍の将校らが入っておりリヴィリフやヴィルヘルムらに敬礼した。

 

ここにいる全員が将官クラスの超高官だ。

 

中には参謀総長のシャポシニコフ元帥やヴァシレフスキー少将、アララニ提督、技術将校であるブライアリー・ロナン将軍など多くの名だたる将官が並んでいる。

 

「シス・エターナルの顧問団は確かフォース感受者の教育だけではなくスターファイターや技術も含まれていたな?」

 

ヴィルヘルムは隣のタッグ元帥に尋ねた。

 

タッグ元帥は頷き「既に新領域の軍管区からも部隊を集めている」と答えた。

 

「しかし…まさかシス・エターナルの側から声をかけてくるとは…彼らは我々以上に秘密主義だと思っていたのだが」

 

ラストーレはふと呟いた。

 

ヴィルヘルムも頷いた。

 

シスといえば銀河系では既に遠い昔、遥か彼方の過去に存在した歴史上の単語でしかないがシス・エターナルは違う。

 

今に至るまで帝国から密かに協力を受けて銀河系を僅かな戦力でも総べるほどの力を手に入れていた。

 

それも自ら銀河に姿を現すまで誰も気づかないほどだ。

 

チス・アセンダンシーも秘密主義を貫き銀河系からしたら半ば伝説的な存在ではあったがそれでもシス・エターナルほどではない。

 

そんな存在が向こうの側から協力を持ちかけてくるなど半信半疑になるのも無理はない。

 

しかも既にチス側にシス・エターナルの力の秘密であるスーパーレーザー搭載型新世代ドレッドノートの設計図を譲渡しているのだ。

 

「だが……あの“()()()()()()”と立ち向かってくれるのなら余は歓迎する。たとえそれが悪魔であろうとなんであろうと…我々と我々の臣民を守れるのであれば」

 

「はい…」

 

リヴィリフの決意にラストーレは強く頷いた。

 

その思いはヴィルヘルムやタッグ元帥も同じだ。

 

例え手を力を貸してくれる者が悪魔であろうとなんであろうとこれから必ず現れる“()()()()()()”を打ち倒すためには利用せねばならない。

 

「その為にも、揃えられるものは揃えておかなければ。“()()()()()()()()()”も当然な」

 

ヴィルヘルムはふと1人の将校の方に目を向けた。

 

その将校は険しい表情で頷いた。

 

「そう重く受け止めるな、我々にはまだ時間がある」

 

「…しかし、私の持つ力でなんとか出来るでしょうか」

 

ジュリアス・ナーン司令官は重い表情でそう呟いた。

 

彼もフォース感受者で今回ルーク達から教育を受ける将兵の1人であった。

 

ナーン司令官はインペリアル級“マゼラン”の艦長であり多くの将兵から慕われ急速に昇進していった。

 

家族にも恵まれ妻と一人娘を愛し社交的で友人も多い絵に描いたような完璧な人物であった。

 

されどそんな完璧超人にも影はある。

 

ナーン司令官の一族にはジェダイの肩書を持った、しかもクローン戦争に参戦したジェダイの戦士達が3人もいたのだ。

 

帝国は公式的にはジェダイは反逆者であり帝国軍人であるナーン司令官にとってそれは大きな汚点となった。

 

奴もジェダイの内通者なのではないか、忠誠心はジェダイの親族にあるのではないか。

 

ただでさえ帝国はジェダイを嫌っているし政治家の中には「ジェダイは1人残らず抹殺し公開処刑にかけるべきだ」と反ジェダイ的な思想を持つ者も存在していた。

 

しかもナーン司令官自身もジェダイの親族同様フォース感受者で娘にもその疑いがあった。

 

風の噂によればフォース感受者はどこかへ連れ去られ二度と帰ってこないそうだ。

 

その為ナーン司令官は自身の親族のことを必死に隠そうとしていた。

 

隠して普通に生きて帝国に尽くしてさえいれば今まで通りの人生を送れる。

 

誰も不幸にならず、妻や娘も幸せになる。

 

だがナーン司令官の必死の苦労は今、彼の目の前にいるヴィルヘルムによって砕かれた。

 

ヴィルヘルムがどうやってナーン司令官の隠したかったことを知ったのかは定かではない。

 

単に偶然かも知れないし、或いは何か気になる点があって調べていくうちに発覚した可能性もある。

 

だがヴィルヘルムは彼の過去を糾弾しようとはせずむしろ彼の“()()”を活かそうとした。

 

エンドア戦後、帝国は完全に崩壊し当時ヴィルヘルムがモフとして統治していたサンクト宙域も軍将として独立せざるを得なくなった。

 

ヴィルヘルムはやがて全住民、全戦力を率いてチス・アセンダンシーへと移住した。

 

そこで彼は鎖から解き放たれある事を実行に移そうとした。

 

それは公でも運用出来るフォース感受者部隊の設立とフォースの力を戦術、戦略単位で扱っていく事だった。

 

こうでもしなければあの“()()()()()()”とは戦えない。

 

()”が残し“()()”が完成させた理論で戦うためにもだ。

 

「君の持つ力はまだ原石のようなものだ。正しく鍛えられ始めて力を発揮する。まだ力を恐れ、力に疑いを持つ時ではない」

 

ヴィルヘルムは不安を持つナーン司令官を宥めた。

 

チスとそれに与する帝国の欠片はこの銀河系で1人、未来の為に準備を進めていた。

 

 

 

 

 

ジェルマン達は無事にアイデン・ヴェルシオ中佐率いるインフェルノ分隊との合流を果たしステーションの中央制御室に向かっていた。

 

ジョーレンが気づいたカメラの稼働は先に訪れ周辺を警戒していたアイデンがジョーレン達の侵入を察知して自身のドロイドに命じてカメラから2人を確認した時のことだ。

 

僅かな動作だったのだがそれに気づくとはとアイデンも感心していた。

 

「見えてきた、あれが制御室の入り口か」

 

インフェルノ隊の隊員であるデル・ミーコ少佐は指を差して全員に伝えた。

 

「システムは動いてるけどドアにロックが掛かっている感じでしょうかね」

 

「ドロイドを先行させる、解除を頼む」

 

アイデンはカラフルな自身のID-10シーカー・ドロイドを先行させた。

 

ドロイドは器用に端末にアクセスしドアを解除した。

 

「開いたようだ、行こう」

 

4人はドアの開錠と共に一気に内部に突入した。

 

アイデンとジョーレンが警戒しつつジェルマンとデル、そしてドロイドがコンソールを操作し始めた。

 

「良かった、やっぱりシステムは生きてる」

 

ジェルマンは軽く操作しただけでもこのステーションがまだ十分機能していることを理解した。

 

少し触っただけでも造船システムや建造中の艦船をここから操作出来る。

 

「ああ、しかもこの造船所は急増で作られたものだから制御は全てここに集約されている。もちろん“()()()()()()()()()()”」

 

デルはコンソールを操作してステーションに停泊してある軍艦を動かした。

 

そのことはジェルマンも知覚しているようだ。

 

「まさか、本当にシステムがここ全てに集約されているとは…」

 

アイデンは事前に聞いていたとはいえ少々驚いていたようだ。

 

だがジョーレンは「作られたのが戦中なら仕方ない。まあ我々としてはありがたいことだ」と軽く流していた。

 

ジョーレンにとってはむしろこれが当たり前だった。

 

何もかもが足りなかったクローン戦争で急いで前線での消費を埋める為にあちこちの施設がフル稼働され簡略化の為に制御機能が一纏めにされている所があっても珍しいことではない。

 

「ジェルマン、全艦艇を操作して全てハイパースペースに流せ。座標はもちろん」

 

「アノート宙域、ベスピン…だろ?」

 

「ああ、その通りだ」

 

ジェルマンはデルやドロイドと協力して建造し終えた艦船を操作し始めた。

 

ジョーレンは戦闘態勢を崩さぬまま室内の窓から外に停泊するこの地で粛々と建造された軍艦達を眺めた。

 

全艦が見慣れた赤と白のカラーリング、しかも並ぶ軍艦はヴェネター級、アークワイテンズ級、ヴィクトリーⅠ級と全てジョーレンがまだ幼き日に乗り込んだものだ。

 

中には僅かばかりだがメイルストロム級も含まれていた。

 

本当にまるでクローン戦争の頃に戻ったようだった。

 

似たような場所で似たような光景を何度でも見てきた。

 

帝国もそうだが共和国軍の施設は基本似たような造りであり一度も来たことがないはずのこの場所も少年の頃いた場所のように見えた。

 

故に心のうちではどうしようもない嫌な感情が湧き出る。

 

「なんだか、昔に戻ったような気分だな…いいことは何一つもなかったが」

 

ジョーレンはこの光景を見つめてそう苦々しいものを吐き出すように呟いた。

 

ジョーレンにとっての10代の時間というのは最悪以外の何ものでもなかった。

 

唯一の肉親を殺され自身は半ば軍隊へ、少年兵として秘密裏に前線へ送られ戦い続けた。

 

多くの戦友を失い戦争が終わる頃には身も心もボロボロだった。

 

あの赤と白の色合いを持つ軍艦の中で過ごした日々はジョーレンとって最悪でしかなかった。

 

あれからが自らの手を染める日々の始まりだったのだ。

 

自らの正しさなど忘れてしまうような日々の始まりだった。

 

「懐かしい…少佐はクローン戦争に?」

 

ジョーレンの独り言を聞いていたのかアイデンは彼に尋ねた。

 

ジョーレンはバツが悪そうに小さく頷いた。

 

「ジェルマンには一度話した事がありましてね。私の父は共和国派だったんですが地元は分離主義の影響が強くある日過激派に襲われて……しかも移住先では私が分離主義者と疑われる始末ですよ」

 

「…なるほど、それは申し訳ないことを聞いてしまった」

 

アイデンは表情を硬らせ謝罪の言葉を述べたがジョーレンは「いえ、もう遠い昔の話です」とはぐらかした。

 

今やクローン戦争など本当にただの昔話に過ぎない、少なくともジョーレンはそう感じていた。

 

かつて殺し合った分離主義者達は今や味方、クローン戦争の勝利を豪語していた帝国は崩壊し第三帝国は遠い昔のクローン戦争の出来事より新共和国を打ち倒した事を豪語している。

 

徐々にあの当時の戦争の栄光の効力もなくなり、いよいよクローン戦争がただの戦史の一部として扱われ始めている。

 

あの戦いで死んでいったジョーレンの戦友達もそう遠くない未来に過去に存在する統計の1人となってしまうのだ。

 

そのことについて悲しみや虚しさを覚える反面ジョーレンはあの頃からだいぶ歳を取り割り切ることも覚えた。

 

そうでもしないとこの仕事は続けられない。

 

「私は…父がその世代だったけど父はむしろ戦後に活躍した人物だった。私の故郷を帝国へ引き込み帝国に尽くし続けた」

 

「ギャリック・ヴェルシオ“()()()()()”は俺も知っていますよ。まあ直接会った事がないので名前だけですが」

 

アイデンはジョーレンから懐かしい肩書きが聞こえた為微笑を浮かべつつそのまま話を続けた。

 

「父からは帝国に常に忠実であれ、と教えられてきた。その為に徹底的に思想を叩き込まれ、技術を叩き込まれ気づけば帝国の特殊部隊になっていた」

 

「しかし、あなた方は自分で帝国から離れた。そして今もなお、どれだけ劣勢となってもレジスタンスに居続けている」

 

ジョーレンからすればそれが驚きだった。

 

この手の特殊部隊は、特に帝国軍は徹底的に忠誠心を叩き込まれ疑う事を知らない。

 

それはジョーレンだって半ば同じだ。

 

たとえ疑問があっても命令は絶対で割り切ってやらねばならない。

 

それなのにアイデンは彼女の部下達と共に帝国を脱し新共和国についた。

 

ジョーレンが新共和国側にいるのは単純に“運が良かった”だけだと彼は思っていた。

 

彼の上官が彼を連れて帝国から脱走したからだ。

 

あの時上官に連れられなければ今もきっとジョーレンは帝国側にいる。

 

「エンドアでデス・スターが破壊され我々は主を失い帝国は崩壊した。だが帝国の指導者達は誰も変わろうとしなかった、戦略的な思考も、忠誠心も」

 

アイデンはあの頃を思い出した。

 

エンドアからフォンドアへ、ピリオから故郷ヴァードスへ。

 

あの僅かな間でアイデンの忠誠心は揺らいだ。

 

それはきっと忠義を尽くす者が消え去った影響もあるしそれ以上に皇帝がいなくなった後の帝国に幻滅に近いものを感じたのもある。

 

だがそれ以上の理由がアイデンには存在していた。

 

「しかも主を失った忠誠心は私の故郷を崩壊させ、私達は“コルウス”に避難民を乗せて逃げるしかなかった。そこで私達は新共和国に頼った」

 

「それで新共和国に合流したと」

 

「それが一番正しい道だと思ったし今もそう思っている。最期は父もそう思っていたはずだ」

 

あの“エヴィセレイター”での最期の会話は今でも覚えている。

 

父ギャリック・ヴェルシオ提督も最期にはアイデンのことを認めた。

 

「だから私はレジスタンスでも戦い続ける」

 

アイデンははっきりとそう決意を口に出した。

 

今度はジョーレンの方がどこか羨ましさを含んだ微笑を浮かべていた。

 

「…俺も今度ばかりは戦って役に立たないとな」

 

ジョーレンはふとジェルマンの方を見つめてそう呟いた。

 

ジェルマンの方はコンソールを操作するデルと話が弾んでいるように見えた。

 

デル・ミーコ少佐はアイデンと同じく元帝国軍特殊部隊員でインフェルノ分隊に招集される前はストームトルーパー、ショア・トルーパー、TIEファイターパイロット、更には軍艦の主任エンジニアなど様々な職を務めた。

 

情報部一辺倒だったジェルマンからすれば珍しい話ばかりだし主任エンジニアとしてはハッキング技術などが得意なジェルマンとも話が合った。

 

「ミーコ少佐はエンジニアだったと聞きましたがスター・デストロイヤーのですか?」

 

「ああ、スター・デストロイヤーの主任エンジニアってのは大変な仕事だ。あの巨大な主力艦を常に万全の状態で保つ必要がある」

 

「最近、特にホズニアン・プライム陥落以降に帝国軍のスター・デストロイヤーに潜入した経験は?」

 

ジェルマンの問いにデルは「ある」と一言で答えた。

 

さらにその後「なんなら潜入してその艦を奪取した」と付け加えた。

 

ジェルマンは一気に目の輝きを変えてデルに尋ねた。

 

「じゃっじゃあ!何か少佐が主任エンジニアを務めていた頃と変わった点はありませんでしたか!?単純な人員とか使っている技術とか」

 

「両方ともある、まず一つは人員だ。地上に部隊を下ろした後だからか大分人員が少なかった。いやむしろ“()()()()()”と言った方がいい。あの時もインフェルノ分隊全員で乗り込んだのだがそれでも4年前以前の方が人員が多かったように感じる。ストームトルーパーどころか宇宙軍トルーパーも少なかったし戦闘もそれほど激化しなかった」

 

デルは敵艦に上陸した時のことを思い返しながら語った。

 

彼らは銀河内戦の頃から何度も帝国軍の軍艦に潜入して奪取を行っていた。

 

その為経験で僅かな違和感に気づけたのだ。

 

「それに艦のシステムもかなりドロイドや自動制御に依存しているようだった。以前であれば何千、何万人の技術者で賄えていたはずなんだが…」

 

「今ではそうではないと……僕が以前インペリアル級に侵入して奪取した時もそう感じました。帝国の軍艦にしては自動システムに頼り過ぎている」

 

だからジェルマンが1人でもインペリアル級をそのまま奪取出来た。

 

あれがもし3万7,000人近くの将兵を乗せたインペリアル級であればそうは行かなかったはずだ。

 

必ずどこかで抵抗を受けて、或いは妨害の部隊を展開されて必ず上手くいっていなかった。

 

だがあの奪取したインペリアル級は明らかにそれほどの大人数で運用されている雰囲気ではなかった。

 

「エンドア以降、帝国は大きく弱体化した。そもそも多くの兵員が分散し潜入したある場所では物資不足と兵員不足に悩まされていた。そしてそれは今の帝国軍も変わらないと俺は見ている。しかも規模の拡大に注力した余り層が薄い。昔のようにスター・デストロイヤーたった一隻の為に数万の将兵を乗せることは難しくなっているように見える」

 

「つまり……帝国軍は完全にかつての姿を取り戻せた訳ではない。むしろ規模ばかり拡大した結果我々にも付け入る隙があると…?」

 

デルは大きく頷いた。

 

帝国は銀河内戦の後、様々な手法を用いて戦力を保全しようとした。

 

だがそれでも保全出来た戦力は所詮元の帝国の半分以下、むしろ半分など夢のまた夢の話だ。

 

それを取り戻そうとした結果が今の第三帝国の帝国軍、いや“()()()”なのかもしれない。

 

「この軍艦だって一体なんの役に立つか分からないがきっと帝国の隙をついて一撃を与える事が出来るはずだ」

 

デルはハイパースペースに突入していくヴェネター級ら旧共和国時代の軍艦を見つめながら呟いた。

 

更にデルは話を続ける。

 

「レジスタンスは今のところシス・エターナルに対して劣勢だ。だが必ず隙はある」

 

正しき道を、かつてデルはピリオでとある男からこの言葉を贈られた。

 

今のデルにとって正しき道とはこの銀河で帝国と戦うことになると思っている。

 

それはジェルマンも同様だ。

 

ジェルマンはこんな絶望的な状況でも“()()”というものを確かに持ち続けていた。

 

今なら帝国を倒せる、それ以上に我々なら倒せるという確固たる自信があった。

 

だがその“()()”を奪おうと銀河の闇は動き始めていた。

 

特に第三帝国ではない“()()”は。

 

それを感知したのはステーションの中にいる者達ではなく外で警戒を続けていた“コルウス”の乗組員達だった。

 

コルウス”のブリッジでは乗組員達が常時周囲に目を光らせていた。

 

この作戦は誰にも悟られてはならない。

 

プローブ・ドロイド1体にでも見つかって帝国軍の部隊がきた途端全てがおしまいだ。

 

「今のところ、異常はないな?」

 

ブリッジでデュロスの男、シュリブ・スールガヴは乗組員達に尋ねた。

 

シュリブはアイデンやデルとは違い元から新共和国軍のパイロットでありデンジャー中隊というスターファイター中隊を率いていた。

 

その後インフェルノ分隊の一員となりシュリブは数々の任務をアイデンやデル、この“コルウス”の乗組員達と共にこなしてきた。

 

「はい、今のところは。コマンダー達も制御室を制圧し続々と軍艦を送り続けています。このままのペースでいけば後1時間も掛からずにあらかた終了するかと」

 

コルウス”の航行士官であるアディアナ・ケイトンはシュリブにそう報告した。

 

彼女はアイデン達がまだ帝国軍にいる頃から“コルウス”の操縦士を務めておりアイデンが帝国から離反した時も真っ先に自分は味方だと告げた。

 

「早めに終わるのはいいことだ。なる早くずらかれるに越したことはない」

 

「はい、しかしあんな古い軍艦なんて役に立つのでしょうか」

 

ケイトンはふと疑問を口にした。

 

「分からんが数は補える、それに贈られる先はあのランド・カルリジアンだ。きっと何か突拍子もないことに使う」

 

シュリブはそう苦笑混じりに答えた。

 

シュリブとランドはかなり古い付き合いだ。

 

昔一緒に新共和国の任務をこなしたこともある、尤もかなり酷い結末となったが。

 

だがシュリブとしては親友のランドを信頼はしていた。

 

無論突拍子もないことをするという条件付きでだが。

 

彼らのたわいもない会話もこれで途切れることになる。

 

それは“コルウス”のセンサー士官の一言によってだ。

 

「…っ!!シュリブ隊長!!ハイパースペースに艦影多数接近!!敵です!!」

 

「何!?距離と数は!?」

 

その一言で“コルウス”のブリッジは一気に緊迫感に包まれた。

 

士官達は顔を見合わせ緊迫した表情を浮かべた。

 

センサー士官は急いで調べ報告した。

 

「恐らくですがスター・デストロイヤーが一隻、セキューター級です。更に付属艦としてゴザンティ級と思わしき艦艇が数隻…」

 

「かなりの大部隊じゃないか…第三帝国か?」

 

「いえ……違います、まだ周辺の第三帝国の部隊の動きはない……恐らく第三帝国以外の敵部隊です…!」

 

その一言は十分ブリッジの乗組員達を困惑させるに至った。

 

何せこの言葉を発したセンサー士官が一番表情を硬らせ冷や汗を垂らしている。

 

もしかするとこの地は何者かの根城で我々は足を踏み入れてはいけない場所に踏み入れてしまったのではないかと。

 

シュリブはアイデンがいない間の指揮官としてしっかり“コルウス”に指示を出した。

 

「ケイトン、今すぐアイデン達に連絡だ。敵が来ると」

 

「了解…!」

 

「艦を出して少しでも時間を稼ぐ!流石に敵艦を撃破するのは無理だろうが足止めは出来るはずだ!俺もXウィングで出る!」

 

「了解!!」

 

シュリブは一通りの命令を出すと足早にブリッジを後にした。

 

流石特殊部隊の司令船、シュリブの僅かな命令だけでも的確に行動し始めた。

 

ステーションの物陰に隠れていた“コルウス”は姿を表す。

 

その間、シュリブはヘルメットを手に取り“コルウス”のハンガーベイに急いだ。

 

コルウス”の艦内では乗組員達が配置につき、あるいは物資を輸送し戦闘体制を整えてていた。

 

警報が鳴り響き乗組員達はあちらこちらへ行き来する、まさに慌ただしいという一言が似合っている。

 

「俺の機体は出せるな!?」

 

シュリブはヘルメットを被ると急いで自分のXウィングに乗り込んだ。

 

座席に座ると早速機体を調整し操縦桿を握り締める。

 

「はい!整備は完璧で弾薬類は全て装填済みです!ですが隊長1人での出撃は…」

 

Xウィングにドロイドを装着している間に“コルウス”の整備士が不安気な表情を浮かべた。

 

セキューター級たった一隻で144機のスターファイターが搭載可能だ。

 

流石に全機が来ることはないとしても相当の脅威であることは間違いない。

 

「“()()()()()()()()()”の名は伊達じゃない。阻めるだけの敵を阻む」

 

「ご武運を…!フォースと共にあらんことを…!」

 

整備士は敬礼し黄色い梯子を取り外した。

 

『ドロイドの設置完了です!』

 

別の整備士がコムリンクでシュリブにそう伝えた。

 

機体発艦の為にハンガーベイの隔壁が解放され薄い偏向シールドの膜が“コルウス”のハンガーベイを覆っている。

 

周囲では整備士や警備兵らが辺りに捌けている。

 

「シュリブ・スールガヴ、出るぞ!」

 

Xウィングを浮上させシュリブは宣言通り“コルウス”のハンガーベイから出撃した。

 

巧みな操縦技術で最小限のエネルギーでシュリブのXウィングは宇宙空間を駆ける。

 

「こちらシュリブ・スールガヴ。アイデン、敵が俺たちに勘付いた!敵艦隊がこっちに向かってる1」

 

『なんですって!?』

 

「今“コルウス”と共に迎え撃つ準備をしている!そっちも戦闘に備えておいてくれ!」

 

『分かったわ…!シュリブも“コルウス”も気をつけて』

 

アイデンからの通信が切れるとシュリブは「ああ…!サラストの時よりはまだマシな状況だ」と1人付け加えた。

 

まだ作戦の途中だというのに敵の来訪を受けるとは運が悪い。

 

だが造船所内の艦船をハイパースペースに流すだけの時間はまだ稼げる、その為にも1分でも長く戦う必要がある。

 

シュリブのXウィングが一気に前進し“コルウス”の前に出た。

 

迫り来る暗黒の軍団を迎え撃つために。

 

新たな戦いが始まる。

 

 

 

 

 

-セスウェナ宙域 惑星エリアドゥ 政府官邸 連邦盟主執務室-

大セスウェナにとっても相当暗殺未遂事件は大きな衝撃が走った。

 

と、同時に第三帝国の構成国の中で最も早く行動したのは大セスウェナであった。

 

セントラル地区でのテロ攻撃を察知した駐コルサント大使館では真っ先にコルサントにいる大セスウェナ連邦の国民を保護し総統府など第三帝国の主要機関に人員を派遣していた。

 

またそれと同時に偶然にも大セスウェナ連邦宇宙軍の部隊が近場のブレンタールⅣで演習を行なっていた為直ちに急行することが出来た。

 

コルサント本国防衛艦隊と協力しコルサントの混乱を抑え同地の安定化を図った。

 

今もブレンタールⅣの演習部隊はコルサントにおり予定ではもう間も無く大セスウェナ連邦領域に帰還するはずである。

 

ヘルムートはその間にFCSIAの将校であるウォーレス・フィスク中佐とアーテル大尉から報告を受けていた。

 

フィスク中佐は帝国保安局時代からカリスマ的な捜査官として知られ彼の才能はFCSIAでも活かされていた。

 

「事件の詳細ですが、本来第三帝国代理総統が演説を始める時間に合わせて会場全体に仕掛けられた爆発物が一斉に作動、壇上からステージの裏は全て吹き飛びました」

 

フィスク中佐は何も見ずにすらすらとヘルムートらに報告する。

 

ヘルムートもテーブルの上で指を組んで真剣な表情で報告を聞いていた。

 

「その時点で一般の聴衆客が死傷し避難が始まりました。また同時期に施設内の警備室も爆破されています。恐らく警備部隊の指揮系統の混乱を狙ったものと思われますが」

 

「だが実際には混乱することはなく、むしろ組織だった避難経路の確保と抵抗によりそれ以上民間人に死傷者は出なかったと」

 

「その通りです、テロの実行犯達にとってそれが二番目に大きな誤算だったでしょう。一番はもちろんそもそも会場に代理総統がいなかったという点ですが」

 

結局彼らがセントラル地区のビュアガーデンでテロを起こし総統を抹殺しようとしたとしても件の総統が会場にいなければ意味がない。

 

むしろ一般人に多くの死傷者を出したいのならやり方は他に沢山あるはずだ。

 

彼らの総統暗殺という計画は最初から頓挫していた。

 

「会場で指揮を執っていた人物はジークハルト・シュタンデリスという親衛隊の将官でこの時はたまたま会場に居合わせたそうです」

 

アーテル大尉はタブレットに映されたジークハルトの顔をヘルムートに見せた。

 

ヘルムートの隣ではザーラ司令官とモッティ提督が横から覗いて見ている。

 

「閣下ほどではありませんが随分若いですね。まだ30手前なのにもう准将で勲章と戦歴も凄まじい」

 

「しかも追記では『少将への昇進が内定』と書かれている。親衛隊の若き貴公子といったところでしょうか」

 

モッティ提督とザーラ司令官はそれぞれジークハルトの経歴を眺めて包み隠さず意見を口にした。

 

ヘルムートも頷きつつ呟いた。

 

「だが警備室がやられてすぐに指揮が取れるということは相当場数を踏んで判断力があるということだ。これだけの経歴であっても問題はない」

 

それ故にやがて“()()()()()()()()()()()()()()”という不安もある。

 

特に親衛隊の将校であれば完全に“シロ”であることはまずない。

 

「またセントラル地区の宇宙港も攻撃に遭っていますがこちらでも総統は暗殺出来ず仕舞いだったようです」

 

「なるほど…死傷者の数とインパクトはあっても暗殺犯達の目的は大失敗だったということか」

 

「計画自体はかなり精密ですからね、それ故にタイミングの僅かなズレが失敗に繋がったとFCSIAの分析班は結果を出しています」

 

確かにもう少し柔軟性のある計画なら成功していたかもしれない。

 

設置した爆弾の爆破時間を遠隔で調整するとか総統府にも念の為攻撃を仕掛けるとか。

 

だがどれも実行していないし実行不可能であったのだろう。

 

尤もこれら全てを実行したからと言って総統が暗殺出来る訳でもない。

 

「また合わせてコルサントにいる我が軍と大使館の様子もご報告いたします。現地ではウィルム・レイヒ大使と演習部隊指揮官によって在コルサント市民の保護は完了、こちらから送ったバーク提督の派遣艦隊と交代し現在連邦領域に帰還中です」

 

「レイヒ大使はご存知の通り元宇宙軍提督ですので連携も取りやすかったのかと」とフィスク中佐は付け加えた。

 

タブレットにも演習艦隊から先行して送られてきた簡易報告書が添付されている。

 

ヘルムートは粗方目を通すとフィスク中佐にあるものを要求した。

 

「“F()C()S()I()A()()()()()()()()”」

 

その意図を理解したフィスク中佐は小さく頷きタブレットに特殊なコードを入力した。

 

すると別の報告書が添付されていた。

 

フィスク中佐はヘルムートに耳打ちする。

 

「“()()()()()()()”」

 

ヘルムートは満足そうに微笑を浮かべた。

 

「それと今回の事件を受けて第三帝国の保安組織がコルサントのアンダーワールドに対して大規模な掃討作戦を実行すると」

 

「それはこちらも聞いているよ。ISBとFFSBの部隊が主軸になるんだ、きっとアンダーワールドは地獄と化すだろう」

 

連中は首都の地下街を文字通り一掃するつもりだ。

 

第三帝国の作戦が始まる前にFCSIAに頼んでおいた任務が実行されていて本当に良かった。

 

「艦隊が帰還するルートは確かハイディアン・ウェイを通ってマラステアから来るんだったな?」

 

ヘルムートは宇宙軍人であるモッティ提督とザーラ司令官に尋ねた。

 

2人は「その通りです」と頷いた。

 

「リマ・トレード・ルートでサラストから来るよりは安全ですので」

 

「もうそろそろついてもおかしくないと思うのですが…」

 

モッティ提督が時計を眺めていると執務室の呼び出しブザーが鳴らされた。

 

ヘルムートは「入っていい」と了承すると奥から2人の将校が入ってきた。

 

青い制服、つまり大セスウェナ連邦軍スターファイター航空軍の将校だ。

 

大セスウェナ連邦ではスターファイター隊はかなり独立した指揮権が与えられており既に宇宙軍のスターファイター隊と地上軍の航空隊が合併されている。

 

今目の前にいるバック・タージドソン准将もその1人だ。

 

「失礼します閣下、ブレンタールⅣに送った演習艦隊が帰還したと報告が入りました。現在ユヴェナ・プライムで乗員を降ろしており、うち(航空軍)の基地に駐留しているそうですが」

 

モッティ提督の読み通り艦隊が無事に帰還したようだ。

 

しかも予定通りユヴェナ・プライムの航空軍基地に到着している。

 

彼らが極秘に計画していた作戦は全て成功した。

 

「了解した、乗客はこのままユヴェナ・プライムに降ろし艦隊はこっち(エリアドゥ星系)に来るよう伝えろ」

 

「了解閣下、それではこれで」

 

タージドソン准将は部下と共に敬礼し執務室を後にした。

 

准将が下がると共にヘルムートは肩の重い荷物が降ろされたかのように背もたれに深く座り込んだ。

 

ふうと一息つき、穏やかな微笑を浮かべる。

 

「ありがとう中佐、君達のおかげで多くの人が救われた。長官にも是非そう伝えてくれ」

 

ヘルムートはフィスク中佐に労いと例の言葉を述べた。

 

中佐は「我々の役目ですから」とニヒルな笑みを浮かべて敬礼しアーテル大尉と共に執務室を後にした。

 

後ろでモッティ提督とザーラ司令官も穏やかな笑みを浮かべている。

 

()()()()()”とは大きく変わってしまったがそれでも最低限のことはやり遂げられた。

 

だがそれで終わりなのではない、むしろ始まりなのだ。

 

()()()()()()()()()()()()”。

 

ヘルムートのテーブルの上にはタブレット端末が置いてありヘルムートはタブレットを手に取った。

 

「我々も計画を始める必要があるな……まあまずはその為にも“準備”から始めなくては」

 

タブレット端末に書かれている“Sentinel project”の文字を読んでヘルムートは重たく呟いた。

 

暗黒の悪魔から与えられたものを最初に使った者の血縁者が再びこの世に具現化しようとしていた。

 

悪魔を超える悪魔を滅ぼすために。

 

 

 

 

 

 

-カラマリ宙域 シス・エターナル/レジスタンス軍戦闘区域 惑星サンクチュアリ-

強欲でこの世全てのものを我が物にせんと常に画策してきたシスの軍勢がロザル陥落で満足するはずもない。

 

ロザルの軍政をある程度固めたシス・エターナル派遣軍は再び一斉に進軍を始めた。

 

宙域警備に当たっていたレジスタンス艦隊を蹴散らしシス・エターナル軍は一気にカムドン星系まで進軍、星系内のレジスタンス軍を撃破しつつ惑星カムドンを制圧。

 

カムドン守備隊は地上戦をする覚悟であったがモン・カラの司令部はスーパーレーザーで地上軍ごとカムドンを破壊されることを恐れ撤退命令を下した。

 

敗北を未だ知らないシス・エターナル軍は再び勝利を新たな領域と共に収めた。

 

間髪入れずにシス・エターナル艦隊は“エクリプスⅡ”を先頭に前進する。

 

この悪魔の軍団に真っ向からぶつかってもとてもではないが勝てるものではない。

 

その為レジスタンス軍もあの手この手を使ってシス・エターナル軍を打ち倒そうとした。

 

惑星サンクチュアリに戦力を結集させると思わせつつシス・エターナルの進軍経路を狙って大規模奇襲攻撃を仕掛けたり。

 

或いは物量を用いた連続的な奇襲による波状攻撃によってシス・エターナル軍を損耗させ後退させようとしたり。

 

どれも半ば成功しかけた。

 

シス・エターナル軍の軍艦を損傷させシスのスターファイターを撃墜した。

 

時にはシス・エターナル軍の足を止め、一旦後退させたこともある。

 

撃破は無理でもシス・エターナル軍の大攻勢を封じ込められるのではないか、その間に反撃出来るのではないかという期待感が現れ始めた。

 

その度にレジスタンス軍の攻撃は強まっていく。

 

だがレジスタンスがコツコツと積み上げたものをたった一撃でねじ伏せ、この世から存在諸共消し飛ばし、誰もいなくなった航路を我が物顔で進み続けるのがシス・エターナル軍だ。

 

レジスタンス軍の攻撃をシス・エターナル軍もあの手この手で打ち破って行った。

 

時には強固な対空陣形を展開してジストン級や主力艦を守りつつシスTIEファイターやシスTIEボマーを用いて反撃に転じ、最後には拡散モードのアキシャル・スーパーレーザーでレジスタンス艦隊に損害を与えたり。

 

時にはスーパーレーザーの連続発射による波状攻撃を用いて何度も現れる小部隊を蹴散らしたり。

 

また時には元パイロットであるフリューゲル自身が自らスターファイターに乗り込んでレジスタンス軍機を蹴散らし友軍機を先導するなど荒っぽいやり方だがそれでもレジスタンス軍の攻撃を打ち破り進軍を続けた。

 

レジスタンス軍が新たな攻撃を考え実行するにつれてシス・エターナル艦隊の頭脳達もそれに対抗する方法を編み出し絶大な力を持つシス・エターナルの兵器によって実行に移された。

 

銀河最新鋭のテクノロジーと最高位の戦術が組み合わさった瞬間その戦場には文字通り最強の軍隊が誕生する。

 

シス・エターナルの赤い津波は止まることを知らない。

 

そして遂にシス・エターナル艦隊はレジスタンスの文字通り“聖域(Sanctuary)”であるサンクチュアリにまで迫っていた。

 

レジスタンス艦隊は必死に抵抗するも徹底した殲滅戦によって何度目か分からない劣勢に立たされていた。

 

シス・エターナル艦隊が惑星を取り囲むように展開し惑星からレジスタンス軍を締め出していった。

 

「地上にレジスタンス軍らしき戦力は確認出来ません」

 

エクリプスⅡ”のブリッジでブリッツェ中佐は惑星の分析結果を報告した。

 

「そうか、では惑星に対する超兵器攻撃はなしだ。上陸部隊を展開し速やかに惑星を制圧せよ。艦隊は対惑星包囲を解除し狩れるだけの敵を狩れ」

 

フリューゲルの判断は常にその戦場においての最適解でありその度にシス・エターナル軍にとって利となり得る結果に導いていた。

 

彼の一族は俗に“Generation”と呼ばれる世襲軍人一家の生まれでフリューゲルは分家なれど幼い頃から軍事を叩き込まれ指揮官になるべくして育った。

 

その結果10代でクローン戦争の戦場へ出る事となるのだがフリューゲルは他の分家の兄弟同様それを不幸だと認知していなかった。

 

自分の一族は遅かれ早かれ軍の道に行く、そういう運命なのだしそれが当たり前だった。

 

フリューゲルの父も、祖父も、曽祖父も、曽祖父の父も、開祖クイエムからそうだった。

 

何世代にもその地は受け継がれてきた。

 

それが今レジスタンス軍の脅威となって発揮されている。

 

フリューゲルの命令通りジストン級のアキシャル・スーパーレーザーが次々と後退するレジスタンス軍の艦艇を屠り追い詰めていく。

 

元よりフリューゲルが率いる艦隊の人員はエクセゴルに向かう前フリューゲルが率いていたディープ・コア予備艦隊が基礎となっており、元より精鋭の集まりであった。

 

さらにそこにシス・エターナル軍随一の精鋭達を集めたのがフリューゲルが率いる今回のシス・エターナル遠征艦隊なのだ。

 

技術だけでなく艦隊の動きや練度、砲撃命中率や攻撃方法などで一般的な国防軍やその他の軍隊の宇宙艦隊を遥かに上回っている。

 

最初からレジスタンス軍の勝ち目などないに等しかった。

 

それでも彼らは抵抗し続けたしその犠牲は決して無駄ではなかったし生き残った者達は無駄にはしないよう努めてきた。

 

「艦隊の半数が撃破されました!既に右翼方面では組織的反抗が不可能です!」

 

サンクチュアリ守備艦隊の旗艦を務めるネビュラ級のブリッジでは艦隊司令官の副官が悲鳴のような声を上げて報告していた。

 

ブリッジを見ればそんなことは一目瞭然だ。

 

シス・エターナルからすれば倒す敵がいなくなった右翼側の方面では爆発の光が少なくなり続けている。

 

左翼側の艦隊だってそう長くは持たない。

 

「本艦のシールド出力も45%まで低下しています!これ以上耐え凌ぐのは無理です!」

 

ネビュラ級の艦長も同様に弱音を吐き冷や汗を垂らしながら不安そうな表情を司令官の方へ向けた。

 

周りの艦艇も何隻かは既に中破以上の損傷を受けており逆に無傷な艦の方が珍しいくらいだった。

 

「…これまでかっ…!もう十分時間は稼いだはずだ、全艦艇直ちにニュー・へウルケアまで退却!屈辱ではあるがサンクチュアリは予定通り放棄する!!」

 

司令官にとってそれは予定されていたことであっても屈辱的に感じた。

 

サンクチュアリは文字通りレジスタンス、延いては新共和国、反乱同盟時代からの“聖域”だ。

 

帝国から追われ続ける反乱同盟軍にとってこの地は数少ない安全な場所であり救いや楽園に近い場所であった。

 

その場所をシス・エターナル軍に渡してしまうなど屈辱以外に他ならない。

 

だが時間は稼いだしこれ以上兵の命を失う訳にもいかない。

 

司令官は理性的に正しい道を選んだ。

 

レジスタンス軍はシス・エターナル軍の猛攻を受けつつも組織的にサンクチュアリ周辺から撤退していった。

 

殿部隊が最後まで抗戦し味方の撤退時間を稼ぎ、それ以外の部隊は皆粛々と後退予定地であるニュー・へウルケアまで引き下がった。

 

シス・エターナル軍とて深追いするようなことはせず艦隊をひとまずサンクチュアリ周辺に固めた。

 

僅か数ヶ月で殆ど目立った損害もなしに宙域を一個、更には今まで踏み込めなかったカラマリ宙域の一部区画の占領にも成功した。

 

レジスタンス軍も軽視出来ない損害を毎回負い大打撃を受けているはずだ。

 

シス・エターナルの脅威とその強さは十分銀河系へ喧伝出来た。

 

エクセゴルで立案した戦略通りの展開だ。

 

「敵艦隊はおそらくこの奥のニュー・へウルケアに後退した模様です。またヒナクーにもレジスタンス艦隊が集結中とのこと」

 

幕僚の1人であるヴァイテル少佐がフリューゲルに報告した。

 

「二方向から攻撃するつもりか。全艦に通達、現領域で防御陣形を展開しつつ敵の襲来に備えろ。国防軍の部隊はどうなっている?」

 

「ガレル、ラクサスから部隊が向かっていますが両方合わせて二個機動部隊が限界だと申しております」

 

デミングス司令官は国防軍との調整役も担っており国防軍によれば送れる部隊は今デミングス司令官が言った通りの戦力らしい。

 

だがフリューゲルからすればそれだけでは足りないと感じていた。

 

「それが限界なのか?」

 

「国防軍としてはこれが限界らしいです。尤もエストラン宙域やハット・スペースにはまだ戦力があるらしいですが」

 

第三帝国は銀河協定の影響か国防軍と親衛隊という2つの軍事組織を保有している。

 

もしかすると指揮系統の影響で本来出せるはずの戦力が送れていないのかも知れない。

 

だとすればまるで旧共和国のようだが一応同盟国なのだから文句は言えない。

 

「とにかく国防軍が来るまでここを死守する。敵が来るまでの間に全艦体制を整えさせておけ」

 

「了解」

 

ヴァイテル少佐とデミングス司令官は敬礼しそれぞれ持ち場へ戻った。

 

その間にフリューゲルはブリッツェ中佐を呼んだ。

 

「何か御用でしょうか」

 

「メルヴァー将軍の容体はどうだ?」

 

フリューゲルが尋ねたのはロザルの戦いで重傷を負い意識を失ったメルヴァー将軍のことだった。

 

彼はAT-MTに乗り込み前線で直接指揮を取っていたのだがその間に運悪くレジスタンス軍機が将軍のAT-MTに特攻し大破し重傷を負った。

 

幸いにもパイロット共々AT-MTの頑丈さによって命は助かったのだが衝撃で重傷を負い意識を失ってしまった。

 

ロザル戦はその後の残された指揮官達によって地上戦も勝利したのだがメルヴァー将軍の負傷は大きな衝撃を与えた。

 

「まだ意識は回復していませんがバクタ治療を受けている為、数時間後には意識共々回復しているでしょう。大丈夫ですよ」

 

「そうか…ならいいのだが……恐らく将軍が回復する頃に我々は“()()()()()()()()()()”」

 

「やはり…ですか」

 

ブリッツェ中佐は制帽を深く被り直し一息吐いた。

 

既に彼らシス・エターナル遠征艦隊の役割は全て果たした。

 

レジスタンス軍に大打撃を与え、シス・エターナル軍の力を銀河系に見せつけ、スーパーレーザーの復活を銀河へと知らしめた。

 

更にはロザルなどカイバークリスタル産出惑星も制圧しもう十分過ぎるほどフリューゲル達は戦果を挙げた。

 

「まだモン・カラに到達していませんが」

 

ブリッツェ中佐としてはまだ戦えるといった意志があった。

 

シス・エターナル軍は今のところ負けなし、損害も微々たるもので補給線も確立している。

 

レジスタンス軍とはまだ技術的にも力の差がありこのまま一気にカラマリ宙域周辺のレジスタンス軍の司令部である惑星モン・カラの制圧だって可能なはずだ。

 

だがフリューゲルは首を振った。

 

「いや、我々の役割を考えればここが引き時だ。まだ損害がないうちに我々の脅威だけを残したまま後退するのがベストだろう」

 

このまま奥深くへと進軍していけばこのままの勢いで勝ち続けられるかどうか分からない。

 

むしろ地の利がある状態で物量に押し切られ初の損害を受ける可能性もある。

 

そうなれば全ておしまいだ。

 

更にフリューゲルはある人物の名前を挙げた。

 

「それに帰還命令を決断なされたのは陛下自身だ。陛下の命令であればどれだけ勝っていようと帰還するしかない」

 

「なるほど…ならば仕方ありませんね…」

 

シディアス自身の命令であればブリッツェ中佐達は否が応でも従うしかない。

 

シス卿の命令は絶対であり背くことは許されない、“()()()()()()()()()()()()()()”。

 

「だが無論今すぐという訳にはいかない。例の地点に送った予備艦隊の強襲揚陸部隊はどうなっている?」

 

シス・エターナルはこの銀河に襲来する前から銀河帝国の影に隠れて暗躍を続けていた。

 

フリューゲルとしてもその暗躍を知ったのはエクセゴルに来てだいぶ経ってからでありこの銀河系でシスの暗躍を完全に全て把握している者は数少ないはずだ。

 

その中でもシス・エターナルは永久的に監視し続ける幾つかのポイントを設置しそこが何かしらの危険に遭えば例え危険を冒してでも部隊を派遣し対処するということになっていた。

 

そのうちの一つは旧シス領域、惑星モラバンドや惑星ドロマンド・カスといったシスにとっての聖地だ。

 

当然ここに第三帝国の親衛隊がヒェムナー長官と共に訪れた時もシス・エターナルは密かに部隊を派遣しいつでも対応出来る状態になっていた。

 

だがヒェムナー長官のある種狂気的なシス領域の復興計画のおかげで特に害はなしと判断された為シス・エターナル軍は密かに早々と撤退した。

 

他にも幾つかの地点を監視しておりそのうちの一つがチャルダーン星系の旧共和国造船所だ。

 

あそこにはとある“シスの秘密”が隠されている。

 

訪れた者達が帝国であるならまだしも敵であるレジスタンス軍があの地に向かうのであれば対処しなくてはならない。

 

そこで最も素早く展開出来るシス・エターナル遠征艦隊の強襲揚陸部隊を派遣した。

 

戦力的には申し分ない、むしろ多過ぎるほどだがあそこの秘密を知られるよりはマシだ。

 

「間も無く現地に到着すると思われます。恐らくすぐ終わるでしょうが」

 

「彼らの任務が終わったら、我々もエクセゴルへ帰還だ。再び銀河系の暗闇で“()()()()()()()()()()”」

 

ブリッツェ中佐も重く頷きフリューゲルは永遠と広がる銀河系の星々を見つめた。

 

我々の使命はこの星々を幾つか“()()”と同時にこの銀河を“()()”ことが使命だ。

 

そして“()()”任務はようやく終わりが近づいてきた。

 

再び“()()”の日々が訪れる。

 

シス・エターナルの襲来はレジスタンスのまだ知らぬところで終わりを見せようとしていた。

 

だがこの判断がこの一連の動乱に大きな展開が訪れることになる。

 

レジスタンスの劣勢的な運命を覆す大きな展開が。

 

 

 

 

 

 

 

ハイパースペースから一隻のセキューター級と数隻のゴザンティ級が出現した。

 

整った艦列のままセキューター級を主軸とした強襲揚陸部隊は通常の速度を保ったまま造船所の中央制御ステーションを目指した。

 

ここを制圧すれば造船所全体を占拠出来る事は既にシス・エターナル軍も理解している。

 

ゴザンティ級は早速船体に取り付けてあるシスTIEファイターを出撃させステーションに急行させた。

 

編隊を組むシスTIEファイターは一斉に周囲へ散開し造船所一体を取り囲んだ。

 

セキューター級からも支援部隊が送られ兵員を乗せたゴザンティ級が速力を上げてステーションへ向けて前進し始めた。

 

「第一揚陸隊、およそ10分でステーションに到着します」

 

セキューター級のブリッジで士官が艦長に報告した。

 

あのステーションの特徴上、敵艦以外には支援攻撃を出せない。

 

かなり辛い戦いになるだろうがそれでも相手は少数だ。

 

物量と武装の違いでさほど苦戦はしないだろうと指揮官達は考えていた。

 

だがそれは正しい判断ではなかったことが判明する。

 

「このまま敵が退けばそれでよし、退かぬ場合は殲滅して…」

 

「艦長!ステーションの裏側より震盪ミサイル接近!揚陸隊に衝突します!」

 

「ついに来たか」

 

センサー士官の報告を受け艦長は表情を硬らせた。

 

突然のミサイル攻撃にゴザンティ級は回避し切れず何隻かが被弾し損傷した。

 

シスTIEファイター部隊は震盪ミサイルの発射地点を確認し一斉に攻撃して叩こうと迫った。

 

しかしそれは攻撃した者達に取っての思う壺だ。

 

「よし掛かった!」

 

突然裏から出てきたXウィングの攻撃によって一気に4機のシスTIEファイターが撃墜された。

 

Xウィングは編隊の列のど真ん中をあえて飛び去り迫り来る2機のシスTIEファイターを再び撃墜した。

 

突然の襲来に驚いたシスTIEファイター部隊は全機散開し逆に包囲してXウィングを潰そうと目論んだ。

 

所詮相手は1機、奇襲で4機持っていかれたがまだ許容範囲内だし恐るるに足らない。

 

Xウィングは器用に攻撃を躱しつつ対空砲火を繰り出すゴザンティ級の艦列に向かっていた。

 

その背後を取ろうとシスTIEファイター部隊はXウィングを狙うがそれもまた思う壺であった。

 

突如ステーションの裏からレーザー砲が放たれ再び何機かのシスTIEファイターが巻き添えを喰らい撃墜された。

 

レーザー砲を繰り出しつつステーションの裏からレイダー級“コルウス”が姿を表した。

 

同時にターボレーザー、震盪ミサイルも放ち揚陸隊のゴザンティ級を一隻行動不能に追い込んだ。

 

コルウス”の優秀な砲撃手達は狙いを外さない。

 

僅かな武装だがその機動力と突撃力を活かしゴザンティ級の揚陸隊にダメージを与えていった。

 

TIEファイター部隊も“コルウス”の対空砲撃により容易に近づくことが出来ずにいる。

 

「いいぞ“コルウス”!シスの野郎が怯んでいる!!」

 

シュリブはXウィングから歓声を上げてシスTIEファイターを再び撃墜した。

 

ゴザンティ級やゴザンティ級を護衛するシスTIEファイターの砲撃を躱しつつシュリブは器用に一隻のゴザンティ級の船体シールドを突破し取りついた。

 

船体に直接レーザー弾を撃ち出しダメージを与えていく。

 

ある程度の攻撃が成功するとシュリブは巧みにXウィングを操りゴザンティ級から離れた。

 

更に攻撃を躱しつつ別のゴザンティ級に取り付くと今度はプロトン魚雷を1発発射しゴザンティ級のエンジンを破壊した。

 

メインエンジンが大破しサブエンジンも損傷したゴザンティ級は航行不能となり虚しくレーザー砲を放ちながら宇宙空間を漂った。

 

コルウス”もターボレーザー砲や震盪ミサイルで敵艦の動きを食い止めた。

 

先に母艦から潰そうと何機かのシスTIEファイターがイオン魚雷や震盪ミサイルを放ったが全て“コルウス”のジャマー機能によって被弾する事はなあった。

 

更に“コルウス”に攻撃した敵機は全てシュリブのXウィングによって撃破された。

 

『流石ですシュリブ隊長!』

 

「デンジャーリーダーの名は伊達じゃないってな!」

 

シュリブは満面の笑顔と共に機体を操り再び攻撃に出た。

 

しかし何隻かのゴザンティ級を攻撃しTIEファイターを何機も撃墜したのにも関わらず敵はまだ圧倒的な物量を誇っていた。

 

しかも最悪なことに後方で待機していたついにセキューター級が動き出した。

 

ハンガーベイから何十機ものシスTIEファイターが出撃しその後からセンチネル級やTIEボーディング・クラフトといった兵員輸送機が姿を現した。

 

しかもセキューター級も“コルウス”に向けて砲撃を開始した。

 

何十門もの重軽ターボレーザーや戦艦イオン砲の砲弾が雨のよう“コルウス”に降り注いだ。

 

コルウス”は砲弾の暴風雨をなんとか躱したがこの状態で攻撃を続行するのは不可能に近かった。

 

「チッ!流石にスター・デストロイヤー丸々一隻をやるのはっ!」

 

シュリブはこの状況に歯噛みした。

 

いくらこのXウィングが優秀な機体でシュリブが優秀なパイロットでもこの状況でシス・エターナル軍からステーションを守るのには限界がある。

 

しかも“コルウス”が敵艦の攻撃を受けて攻撃出来ない状況では余計にだ。

 

しかも敵は完全に外にいる部隊の足を止める為に行動を始めた。

 

シスTIEファイターの群れがシュリブのXウィングのみを狙ってレーザー弾を撃ち放ってきた。

 

何十機もの大群がシュリブのXウィングの動きを抑制し彼の行動を妨害した。

 

これでは思うように敵を攻撃出来ない。

 

今のシュリブは敵の攻撃を躱しつつ反撃のチャンスを狙うのが精一杯であった。

 

それでも未だ被弾していないというのはシュリブのパイロットとしての腕の表れだろう。

 

「おい!流石にこの数は捌ききれないぞ!!」

 

シュリブは敵機の攻撃を躱しながら反撃し何機かのシスTIEファイターを撃墜していたがそれでもとてもゴザンティ級やセンチネル級の足止めは出来そうにない。

 

そうこうしているうちに“コルウス”の真横を一隻のゴザンティ級と2、3機のセンチネル級とTIEボーディング・クラフトが通り過ぎていった。

 

しかも護衛のシスTIEファイターごとだ。

 

シュリブはしまったと思ったが今の状況ではどうすることも出来ない。

 

仕方なくステーションの中にいるアイデン達に声をかけた。

 

『アイデンすまない!敵の揚陸部隊を取りこぼした!そっちにクルーザーと輸送船が向かってる!』

 

「分かったわ、ステーション内で敵を迎え撃つ。シュリブも“コルウス”を護衛しながら無理をしない程度に敵を抑え付けておいて」

 

アイデンは的確に指示を出しシュリブからも『了解だ!』と返答があった。

 

コムリンクを切るとアイデンはジェルマン達の下に向かい「敵がこの中に入ってくる」と伝えた。

 

「どうにかして時間を稼がないと…後どのくらいの時間でここの艦船を全て動かせる?」

 

アイデンは無人艦船を制御するジェルマンとデルに尋ねた。

 

外では何隻もヴェネター級やアークワイテンズ級、ヴィクトリー級らがある程度纏まった機動部隊を編成しハイパースペース空間へジャンプしていた。

 

当然中には誰も人がいない為全てジェルマンとデルがこの制御室でコントロールしている。

 

単純な作業だがそれでも数が多い為かなりの時間が掛かっていた。

 

「大凡半分以上は終わった、ペースを上げれば後30分で終わる」

 

デルは可能な限り短い時間を彼女に伝えたがそれでも足りないとアイデンは言った。

 

「時間がない、20分で切り上げてくれ。私達はその間に敵を迎え撃つ」

 

アイデンはブラスター・ライフルを手に取るとジョーレンの方へ目線を送った。

 

ジョーレンは既にブラスター・ライフルを手に取りジェルマンのバックから何かを取り出していた。

 

「当然、同行させていただきますよ。ただ敵の上陸までだいぶ時間がある、そのうちに仕掛けるものは仕掛けておかないと」

 

ジョーレンはジェルマンのバックから近接反応爆弾を取り出した。

 

それを見たアイデンはどこか嬉しそうにジョーレンから爆弾を受け取った。

 

ジョーレンは戦う気満々だしとても頼もしく見えた。

 

これから待ち受ける絶対的な物量差もなんの苦にも思わない。

 

1人で蹴散らせそうな気分だ。

 

「ジェルマン、俺達の機体があるベイ以外全てのハンガーベイの隔壁を閉じろ、それに続く通路もだ。壁を作って少しでも長く足止めしろ」

 

「分かった…!」

 

ジェルマンはコンソールを操作し制御室からステーション内のハンガーベイ全隔壁を封鎖した。

 

今まで僅かなシールドで宇宙空間と閉ざされていたハンガーベイが物理的なシールドによって完全に外部とシャットダウンされた。

 

これで敵が内部に侵入するには少しばかり時間が掛かることになる。

 

ジョーレンはジェルマンのバックを背負うとアイデンと顔を見合わせた。

 

既にアイデンもある程度の武装を揃え背中にカラフルなシーカー・ドロイドを背負っている。

 

それ以外の武装だと彼女はA280-CFE換装式重ブラスター・ライフルの換装パーツを持っておりその一部はパルス・レーザーが発射出来るようになっていた。

 

「それじゃあ、行ってくる」

 

ジョーレンは制御室に残る2人に軽く敬礼を贈ると走り始めた。

 

アイデンもその後に続こうとした。

 

「アイデン!」

 

だがデルの彼女を呼ぶ声によって一旦その足は止まった。

 

アイデンが振り返ると少し心配そうな表情を浮かべたデルが微笑んでいた。

 

アイデンも同じような微笑みをデルに返す。

 

「気をつけて」

 

「ええ、あなたも」

 

短い言葉だったがそれは2人の信頼を超えた関係を表していた。

 

デルは帝国時代の別の隊員とは違い、死ぬことなくここまでアイデンについてきた。

 

デルは帝国時代のまた別の隊員とは違い、ヴァードスでもアイデンについていった。

 

新共和国へ行こうと提案したのもデルだった。

 

それからインフェルノ分隊が新共和国の部隊となってもデルはアイデンについていった。

 

エンドア、ベスピン、ジャクー。

 

最後のジャクーの戦いで“エヴィセレイター”から脱出したアイデンを発見したのもデルだった。

 

結局あの戦場で見た通り帝国が崩壊する事はなかったがそれ以降もデルはアイデンと共にあった。

 

そしてそれは恐らくこれからもだ。

 

アイデンは名残惜しそうにデルに背を向けるとジョーレンと共に走り始めた。

 

デルもアイデンに背を向けジェルマンと共に作業に戻った。

 

離れていてもレジスタンス軍インフェルノ分隊は一つだ。

 

そしてそれはジェルマンとジョーレンも。

 

コルウス”とシュリブが防ぎ切れなかったゴザンティ級とセンチネル級、TIEボーディング・クラフトの一団がついにステーションのハンガーベイまでやってきた。

 

ハンガーベイには分厚い隔壁が存在している為護衛のシスTIEファイターが震盪ミサイルを何発か放って無理やり壁をこじ開けた。

 

最初にゴザンティ級が内部に突入しその傍にセンチネル級とTIEボーディング・クラフトが侵入した。

 

ハンガーベイに無理やり侵入したゴザンティ級から内部に搭載された兵員が降りてくる。

 

周囲を警戒しながらブラスター・ライフルを構え一斉にハンガーベイに姿を表した。

 

現代シスの尖兵たるシス・トルーパー達だ。

 

この精鋭兵達はジェルマンが起動した隔壁をものともしない。

 

爆薬で無理やりドアを破壊しシス・トルーパー達はそこからステーションの内部へ浸透する。

 

この地に足を踏み入れた窃盗どもを排除する為に。

 

だがタダでやられるほどレジスタンス軍の特殊部隊は柔ではない。

 

既にシス・エターナル軍を迎え撃つ準備は整っている。

 

来るならば来い、全て蹴散らしてやる。

 

前衛を担当するアイデンとジョーレンからはそれほどの気概が感じられた。

 

シス・トルーパー達は大軍でそれでいてゆっくりとステーションの中へと入ってくる。

 

赤き擲弾兵達に容赦はない。

 

彼らとアイデンとジョーレンがぶつかるのはもうそう遠くない。

 

この銀河を一変させた戦争で活躍した古のスター・デストロイヤーを背景に、本来更に未来から訪れるはずのシスの尖兵を迎え撃とうとしていた。

 

これは小さな、そして大きな戦いだ。

 

だがそれ故に重要さを持ち合わせている。

 

“最高議長が遺した遺産”を巡って強者たちがぶつかり合う。

 

シス・トルーパーVSレジスタンス軍特殊部隊、開戦スタートだ。

 

 

 

 

つづく




おいーす!どうも私です〜!

ついにナチ帝国うん十話!(数を覚えていない)

いよいよシス・エターナル編も大詰めですね〜

これからもずんずん地獄のような世界を拡張していきましょうね〜

そいではまた〜
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