第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「私はあの時大セスウェナ連邦の首都警察に勤めていた。丁度いい時間だったのでカフを入れ、同僚達と雑談をしていたところだ。暫くすると2、3個上の先輩が血相を変えて休憩室に飛び込んで来た。かなり興奮した面持ちで彼は言ったんだ。『護送中の囚人が脱走した』って。そこから後のことはよく覚えていない。余りの忙しさで記憶が飛んでしまったよ」
-元大セスウェナ連邦警察官の証言-


暗黒との戦い

-アウター・リム・テリトリー 第三帝国領 サラスト宙域 ボートラス星系周辺 捕虜護送船団-

FFISO第Ⅴ局のコンシーラー級監獄船とゴザンティ級の船団はエリアドゥの捕虜刑務所から元新共和国軍の捕虜を各地の収容所へ移送していた。

 

総統府の命令でまず南銀河のレジスタンス軍、及び元新共和国軍の捕虜は全て通常の捕虜拘留所からFFISO直轄の収容所へ移送することが決定された。

 

理由は幾つかあるのだが一つはレジスタンス軍の拘留所襲撃だ。

 

レジスタンス軍は最近特殊部隊や軽歩兵の精鋭部隊を用いて拘留所を襲撃し捕虜を解放する事例が相次いだ為、より警備が厳重な収容所に移送こととなった。

 

それは捕虜を一元的に管理しようとするFFISOに反対した大セスウェナ領域も例外ではなかった。

 

総統命令としてFFISO第Ⅴ局の職員がエリアドゥやセスウェナに到着し捕虜の移送を始めた。

 

今ボートラス星系を航行中の捕虜護送船団はその第一陣でありアド・スパインから回り込むようにリマ・トレード・ルートに入って収容所に向かう予定だ。

 

尤もこのコンシーラー級は全長50メートルのトランスポートでありあくまで先遣隊という枠組みである。

 

本隊のインペリアル・プリズン・バージは後から1万人以上の捕虜を乗せて発進する予定で1時間ほど前に第二陣がハイパースペースに入ったそうだ。

 

今は第三陣と小規模の護送船団が出発し最終便がまだエリアドゥに待機している。

 

もう間も無く発進可能だそうだが手続きなどで送れる可能性がある。

 

輸送中の捕虜の監督は全て第Ⅴ局所属の警務部隊が務めており、船内には警務の兵士達が周囲を警戒していた。

 

彼らは皆地上軍トルーパーと同じ装備を身につけており、その為親衛隊トルーパーとの呼び名で呼ばれることもあった。

 

一般的なストームトルーパーより練度は劣るが警備任務という点では十分であった。

 

「ボートラス星系に入りました、上手くいけばサラストの星系パトロール隊と合流出来ます」

 

船団の旗艦を務めるゴザンティ級のブリッジで乗組員の1人が船長に報告した。

 

護送船団には一つの不安点があった。

 

それは捕虜の移送中にレジスタンス軍の攻撃を受け船団が制圧され捕虜が解放されないかという不安だ。

 

この移送は極秘任務であり大セスウェナの拘留所職員にも伝えられていない。

 

秘密裏に、そして極秘かつ脅威を分散して捕虜を移送しているのだがそれでもレジスタンス軍の攻撃という不安は消失しなかった。

 

各ゴザンティ級には護衛用のTIEファイターを搭載している為最低限の戦闘は出来る。

 

それでもいざ機動部隊の攻撃を受けた時どのくらい持つかは正直不明瞭なところだ。

 

その為パトロール隊でもいいからより戦闘能力のある部隊と早期に合流したかった。

 

「星系のパトロール隊は親衛隊だったな。それなら合流後暫く護衛してもらうことは可能だが」

 

「しかし我々は既にサラスト宙域に入っています。流石にレジスタンス軍もここまで浸透して攻撃はしてこないでしょう」

 

副船長はそう断言した。

 

スターファイター隊での浸透攻撃なら可能だろうが流石にMCクルーザーやスターホーク級のような主力艦は送り込めそうにない。

 

サラスト宙域は既に親衛隊の完全なる影響下にある。

 

何かあれば親衛隊の部隊がすぐに飛んでくるはずだ。

 

「そうだな……ボートラス星系を抜けたらハイパースペースに入って一気にアド宙域まで向かう、各艦には予定通り変更なしと伝えろ」

 

「了解」

 

船長の命令通りゴザンティ級の通信士は各艦に指示を伝達した。

 

だが船長の判断は間違いだったと言える。

 

ここで安全策を取ってパトロール隊と合流しルートを変更してサラストからリマ・トレード・ルートに乗って向かうべきだった。

 

そうすれば“仮に囚人たちの暴動が発生しても対処できたのはずだ”。

 

事件が起きたのは船団がハイパースペースに入る前のことだ。

 

そろそろアド宙域に向けてハイパースペースへの座標計算を行い始めていた頃、ゴザンティ級の監房ブロックでの出来事だ。

 

監房ブロックには一個分隊ほどの親衛隊トルーパーが警備の任に就いていた。

 

兵士達はE-11より前のモデルであるE-10を装備しベルト周りには弾薬や武器類を収納するポーチがついていた。

 

アーマーは旧帝国時代の地上軍トルーパーと同じものだがヘルメットは前のモデルよりも変化があった。

 

より防御耐性が向上し現在のストームトルーパーのヘルメットとある程度の共通性を持たせた。

 

第三帝国独自のヘルメットであり他の帝国軍の軍閥勢力とは大きく異なる点の一つだ。

 

尤も練度はまた別の問題になってくるが。

 

「後何時間くらいで収容所に着くと思う?」

 

分隊の1人が仲間に問いかけた。

 

話しかけられた分隊の兵士はブラスター・ライフルを壁に立てかけ自身は床に座っていた。

 

話しかけた方の兵士もE-10を一応持ってはいるがいつでも撃てる体勢ではなかった。

 

「さあな、だがどうせ囚人を運ぶだけの仕事だ。のんびりしてようぜ」

 

兵士はふとズボンのポケットに手を入れようとした。

 

相方の兵士はそのポケットの中に何が入っているかを知っていた為すぐに軽く注意した。

 

「おい、勤務中だぞ。タバコは控えろよ」

 

「へっバレたか」

 

「当然だ」

 

本来このような光景を長官のハイドレーヒ大将やさらに上のヒェムナー長官らに見られたら彼らに明日はない。

 

すぐに別の部隊へ配属され第224装甲師団配下の特別移動任務部隊に組み込まれるだろう。

 

ヒャムナー長官は親衛隊将兵や警察、治安維持組織に勤務中の喫煙を制限するよう命じた。

 

だが第三帝国も国防軍も親衛隊もFFISOも急速な拡大により全ての将兵や職員がかつての帝国レベルの練度や規律ではなくなっていた。

 

その為末端の将兵では帝国軍よりも規律の緩みが生じており完全に撲滅するのは難しかった。

 

「長官閣下は勤務中は控えろと言っていただろ?」

 

「バレなきゃいいだろ、最近じゃケッセル産のタバコも高くなってる。配給品も少なくなってるし」

 

ケッセル産のタバコは質が高く特に人気で銀河系の多くの人に吸われていた。

 

しかし第三帝国との関係が悪化するにつれて徐々にケッセルから輸出されるタバコも少なくなり値段は上がっていった。

 

COMPNORによる反タバコ運動の影響もあって今ではすっかり第三帝国領内ではケッセルのタバコは高級品となってしまった。

 

「仕方ないだろう、シャンドリラ・モンジャヴとかもあんまり吸えないし」

 

「これならホックの警官をやっていた方がマシだったぜ」

 

2人は苦笑を浮かべていたところ何か監房の方からガコンと何かが落ちると音が聞こえた。

 

流石に何かおかしいと思ったのか2人はブラスター・ライフルを手に取って音の出た方へ向かった。

 

辺りを見回りながら歩いていると左側のある監房室からドアをドンドンと叩く音が聞こえた。

 

しかもドアの奥からは人間の呻き声のようなものが聞こえる。

 

「どうした!?大丈夫か!?」

 

2人はこれはまずい大事だと思いすぐにドアの解除キーを差し込んでその監房室のドアを開けた。

 

監房室の中には捕虜の1人が苦しそうに蹲り唸っていた。

 

「どうした、どこが痛い?気分が悪いか?」

 

「今すぐ衛生兵を……」

 

心配する2人を他所に監房ブロックでは1発の銃声が響いた。

 

兵士の1人がそのまま床に斃れ瞳孔を開いたままピクリとも動かなくなった。

 

「は?」

 

更に銃声が響きもう1人の兵士も撃ち殺された。

 

蹲っていた捕虜は別に何もなかったかのように立ち上がり斃れた兵士達のポケットを漁った。

 

捕虜の右手にはしっかりとDH-17ブラスター・ピストルが握りしめられていた。

 

そのまま捕虜は先ほど兵士がドアを開ける際に使った解除キーを入手し他の監房室のドアも解除した。

 

「敵兵の装備はE-10、ホルスターにはEC-17が入ってる。直ちに回収して使え」

 

「了解」

 

ドアを開け他の仲間を解放するなりその捕虜の男は仲間に命令を出した。

 

全員がDH-17ブラスター・ピストルやブラーグ1120ホールドアウト・ブラスターを既に手にしていた。

 

男がまだ開錠していない監房室のドアに向かっていた時反対側の通路から1人の親衛隊トルーパーがやってきた。

 

どうやら先ほどの銃声を聞きつけてやってきたようで「どうした、何があった」と声をかけた。

 

トルーパーはまだ仲間の兵士が生きていると思っていたのだろう。

 

だがそれは大きな間違いであり親衛隊トルーパーが姿を現した瞬間捕虜達が持つブラスターで即座に始末された。

 

「よし、エンジン区画とブリッジを目指して全員前進。計画通りに艦を制圧しろ」

 

男は捕虜達に命令を出し開放された元新共和国軍の捕虜達は一斉にブリッジとエンジン区画を目指して攻撃を開始した。

 

まだ状況を把握していないゴザンティ級の乗組員や他の親衛隊トルーパー達は一斉にブラスターを放ちながら駆け出す捕虜の姿を見た瞬間に死を迎えた。

 

捕虜達は斃れた敵兵の武器を奪い武装を強化した。

 

DH-17はいいブラスター・ピストルだがやはりブラスター・ピストルでは限界がある。

 

「クソッ!どうして捕虜が!」

 

「早くブリッジに連絡しろ!!」

 

監房ブロックを抜け出した捕虜の群衆は瞬く間にゴザンティ級の乗組員を圧倒していった。

 

辛うじて防衛線を構築しブリッジに連絡する頃には既にゴザンティ級の殆どが捕虜達によって制圧されていた。

 

『こちらエンジン制御室…!!武装した捕虜の大群に囲まれている…!!早く救援を…!!』

 

「なんだと、それは本当か?数は、人数はどのくらいいる」

 

『大勢だ!!全員がブラスターで武装してる!!このままじゃあすぐにやられる!!』

 

制御室からの報告を聞き船長は一気に青ざめた。

 

捕虜が脱走した上に何故か捕虜は全員武装している。

 

このゴザンティ級に常駐している乗組員や警備のトルーパーの武器を合わせたって全員に武器は行き渡らないはずだ。

 

それに制御室まで接近されたということは既に船内の殆どが…。

 

しかも最悪の報告は他の船からも入ってきた。

 

『こちら監獄船194-2…!緊急要件!監房ブロックから捕虜が脱走し現在戦闘中!!増援を要請する!!』

 

「なんだと!?」

 

『監獄船194-3!こっちも捕虜が監房を抜け出した!このままじゃあ持たない!!助けてくれ!!』

 

『クソッ!この囚人どもが!!ウワァァァァァ!!』

 

「監獄船194-9との通信が途絶、ブリッジからの応答ありません」

 

「ほぼ全ての監獄船で捕虜の脱走が確認されています…!」

 

「あり得ない……」

 

船長は狼狽しフラフラと倒れそうになった。

 

だが副船長の「船長指示を!」という言葉で辛うじて正気を取り戻した。

 

「よっ予備船の兵員を各艦に回して鎮圧を図れ!だがまずは本艦だ!本艦の鎮圧を…!!」

 

「捕虜がすぐそこまで迫ってる!!脱出を!!」

 

船長が命令を出す前にドアが開き1人の親衛隊トルーパーが入ってきた。

 

額から汗が滝のように流れ落ちており息遣いも荒れていた。

 

開いたドアの奥では必死に戦う親衛隊トルーパーの姿が見えた。

 

当然その奥には武器を持った捕虜達の姿もだ。

 

「急いで脱出を!」

 

親衛隊トルーパーはそう進言すると遠くから放たれたブラスター弾を頭に喰らい即死した。

 

船長の目の前で糸が切れた人形のようにバタンと斃れ奥で戦っていた親衛隊トルーパー達も全員撃ち殺された。

 

邪魔者がいなくなったことにより捕虜達は一斉にブリッジへと駆け出した。

 

「ヒィ!?」

 

1人の乗組員が恐怖の余り引き攣った悲鳴を上げた。

 

ブリッジへ突入してきた捕虜達は乗組員や船長に向けてブラスター・ピストルの銃口を向けた。

 

さらに奥から数人の捕虜が姿を現した。

 

そのうちの1人が捕虜達のリーダーだったようで全員に指示を出した。

 

「武装を解除して監房ブロックに、我々は“無事に帰れればそれでいい”」

 

捕虜達は頷き乗組員達の武装やコムリンクを取り上げ連行した。

 

リーダーはブリッジのビューポートから外の様子を眺めた。

 

同様にビューポートから船団の様子を眺めている人物がいた。

 

船長が直前になって呼び寄せようとした予備のゴザンティ級の乗組員達だった。

 

一部の監獄船で何かしらの異常事態が発生した時に対処する為に兵員のみを乗せたゴザンティ級を三隻用意していた。

 

三隻とも外部接続機にはTIEボーディング・クラフトがついておりいつでも他の監獄船に乗り込めるようになっている。

 

「他の監獄船との通信回線からシャットアウトされ始めています」

 

「旗艦との連絡も取れません」

 

「やはり何かあったのだ、トルーパー隊を出動させろ!まずは旗艦からだ」

 

「いえ船長、旗艦から予備通信です。各艦の通信状況の悪化が発生した為その場で待機されたしと」

 

通信士はゴザンティ級の船長にそう報告した。

 

すると旗艦からはTIEファイターが発艦し始めた。

 

他のゴザンティ級からもTIEファイターが発艦し辺りを飛行し始めた。

 

「各艦からTIEファイターが発艦しています」

 

「全機、こちらに接近しています」

 

「一体何が始まったんだ」

 

飛行するTIEファイターは編隊を組みゴザンティ級を取り囲んだ。

 

確実に“()()()()()()()()()”。

 

TIEファイターはチャージしたL-s1レーザー砲を一気に放出し三隻のゴザンティ級に掃射した。

 

TIEファイターから放たれる雨のようなレーザー射撃は脆弱な偏向シールドしか張っていないゴザンティ級の船体に大きなダメージを与えた。

 

船体が何箇所も爆発しエンジンが吹き飛びあるゴザンティ級はレーザー射撃によってブリッジが破壊された。

 

援護するかのように周りのゴザンティ級も二連レーザー砲と重レーザー砲で砲撃を開始した。

 

「たっ対空射撃!!」

 

「無理です間に合いません!!」

 

「そんなっ…!」

 

船長が命令を出した瞬間ビューポートには1機のTIEファイターが映った。

 

それも今から魚雷を放ちトドメを刺そうとしているTIEファイターにだ。

 

本来友軍機であるはずのTIEファイターがこんなに恐ろしいと思ったのはこれが人生で初めて、そして最後であろう。

 

彼らの人生はここで終わる。

 

三隻のゴザンティ級は木っ端微塵に爆散しTIEファイターは各艦に戻った。

 

「全ての船が制御下に入りました。いつでもハイパースペースに入れます」

 

乗組員の席に座り捕虜の1人がリーダーに報告した。

 

彼は元MCスター・クルーザーの乗組員でゴザンティ級を動かすなど簡単なことだった。

「どちらに向かいますか、この地点ではアノートもコメルも距離的には変わりませんが」

 

「コメル宙域へ、ナブーへ迎え。我々はあの方の下に集う必要がある、なんたって我々も“レジスタンス”だからな」

 

リーダーの言葉に彼の仲間達は微笑を浮かべ各艦にナブーへのハイパースペース・ジャンプを伝達した。

 

これがまず最初の捕虜脱走者達であった。

 

同じような捕虜の脱走は全ての護送船団で起こっていた。

 

セスウェナ宙域からサラスト宙域を航行中のインペリアル・プリズン・バージの船団も同様のことが起こっていた。

 

こちらは一隻につき捕虜が1万人も収容出来る為一箇所でも捕虜が脱走すると一気にその火種は広がった。

 

あっという間に警備の親衛隊トルーパーは蹂躙されバージの制御権は強奪された。

 

生き残った者もいただろうがそれらは全て逆に監房ブロックの中へ叩き込まれた。

 

そして捕虜の脱走はまだバージへ乗船中のエリアドゥでも発生していた。

 

囚人を殆ど乗せ終わった状態で一斉に暴動が発生しバージが停泊するハンガーベイでは銃撃戦が発生していた。

 

親衛隊トルーパーを倒して奪ったブラスター・ライフルやどこからか強奪した重ブラスター・ライフルでトルーパー達を蹴散らした。

 

「クソッ!レジスタンスのクズどもめ!」

 

「どうして全員武装してるんだ!!」

 

遮蔽物に隠れながら親衛隊トルーパー達はE-10やE-11で応戦した。

 

あくまで捕虜の移送任務ということでサーマル・デトネーターやインパクト・グレネード類の爆薬は持ち合わせていなかった。

 

「現地の駐屯隊とセスウェナの部隊はどうした!?」

 

「駐屯隊は現場に急行中!ですがセスウェナの警察隊はエリアドゥ市民の安全確保の為周辺の封鎖と包囲に専念しこちらには来れないそうです!」

 

部隊長の問いに部下の親衛隊トルーパーはそう答えた。

 

大セスウェナ連邦警察及び連邦軍は出動したものの第一命令はエリアドゥ市民の安全確保と現場の封鎖だった。

 

その為内部のことはほぼ全て第三帝国の派遣部隊と駐屯部隊に任せることにしていた。

 

自分で蒔いた種なのだ、その種が厄災に育つのだとしたら刈り取るのは彼ら(ルビ 第三帝国)であるべきだ。

 

しかし現場で戦闘中の親衛隊トルーパー達はそうは思っていなかった。

 

「チッ!南アウター・リムの成り上がり者どもめ!さっさと増援を寄越せばこんなことには…!」

 

「バージとの固定具が解除されていきます!」

 

ハッチが閉まりインペリアル・プリズン・バージは徐々に発進態勢を強化していった。

 

「封鎖はどうなってる!?」

 

「ダメです!宇宙空間でも首都圏防衛艦隊は演習中の為すぐにはこれないとのこと!」

 

「このままでは…!」

 

親衛隊トルーパー達はありったけの火力をバージのエンジンに向けたがブラスター・ライフル程度では全く意味がない。

 

やがて数十秒もしないうちにバージのエンジンが点火しハンガーベイを離れた。

 

親衛隊トルーパー達がブラスターを放って撃墜しようとする頃には既にエリアドゥの大空を飛び抜けていた。

 

その様子は封鎖中の大セスウェナ連邦警察や連邦軍も目撃していた。

 

当然警察装備では撃墜は無理だがこの時点ではまだ連邦軍が持つ装備で迎撃可能だった。

 

「大尉、この距離ならまだ撃っても当たりますが撃ちますか」

 

中隊長の大尉に対して隊員の1人である伍長はエレクトロバイノキュラーを覗き込みながら尋ねた。

 

しかし大尉は「やめておけ」と首を振った。

 

「ここで撃墜したら地表に墜落し予想外の被害を生み出す可能性がある。我々はまず市民の避難誘導と周辺の警戒だ。脱走した捕虜が市街地に身を潜めている可能性がある」

 

「了解!」

 

大尉の判断の影響もあってか奪取されたインペリアル・プリズン・バージは無事にエリアドゥの大気圏を抜けてハイパースペースへと入った。

 

だが彼らが目的地であるナブーやアノート宙域に辿り着くのはもう少し先のことである。

 

同じような脱走はエリアドゥだけではなく他の箇所でも発生していた。

 

サラスト、マラステア、ダークネル、ヴァンドア、南銀河の捕虜達が護送の隙を見計らって脱走したのだ。

 

彼ら彼女らはレジスタンス軍の勢力下であるコメル宙域とアノート宙域を目指した。

 

レジスタンスはこの衝撃的な事件を脱走した捕虜の船団と共に初めて知った。

 

彼ら彼女らはレジスタンス軍の捕虜もいればまだ新共和国軍だった時に捕虜になった者もいた。

 

しかし彼ら彼女らは皆拘留所にも届いたレイアの演説とイセノ、ナブーでの勝利が忘れかけていた希望を取り戻した。

 

これでピースは揃ってきた。

 

銀河を夜明けへと導くピースが。

 

 

 

 

-モッデル宙域 エンドア星系 惑星ケフ・バー 捜索区画グレック-

「議長と将軍、上手くやってるかな」

 

ジェルマンはブラスター・ライフルのティバナ・ガスを交換しながらそう呟いた。

 

彼らはハンとレイアが任務を達成する為に出来る限り敵の戦力をこちらに集中させておく囮の役割を担っていた。

 

2人が早めに任務を達成出来ればそれだけ彼らも脱出出来るのだ。

 

「まだ撤収の命令が出ていないということは任務は継続中ってことだ。ならば我々の任務も続いている」

 

ジョーレンは敵のランドスピーダーに取り付けられていたブラスター砲を取り付け持ち出し構えた。

 

そしてブラスター砲のスコープから遠くの状況を監視する。

 

「そろそろ敵の部隊が来てもおかしくない頃だが……」

 

呼び寄せてからかなり時間が経過している。

 

相手の機動力にもよるがランドスピーダーやスピーダー・バイクを保有していればもうすぐ到着するはずだ。

 

そして予測通り帝国軍は来た。

 

ランドスピーダーの機種はT-44の改良型だろうか。

 

1台に5人が乗車可能でそれが4台、しかも4台のスピーダー・バイクを護衛につけていた。

 

「仕掛けた地雷と……こいつらが作動すれば半分は削れるだろう。後は的に接近される前に殲滅するしかない、冷却器の調整頼む」

 

「分かった」

 

チューバッカは身振り手振りでウィケットとパプルーに次にやることを伝えた。

 

2人は理解したのかしていないのかよく分からない状態だったがそれでも武器を手に取り始めた。

 

チューバッカも自らのボウキャスターを構え敵兵を待ち伏せた。

 

「後もう少しで地雷原に突っ込むはずだ……」

 

ブラスター砲に指を掛けジョーレンは静かに敵を待った。

 

一方スピーダーに乗り込む帝国軍は敵が待ち構えているとはまだ気づいていなかった。

 

逆に戦闘の様子がなくもう既に鎮圧したのかと思っていた。

 

だがそれは大きな間違いだった。

 

「スカウト、先行して区画に突入してくれ。あの様子では戦闘が終了した可能性がある」

 

「了解!」

 

「我々も急ぐぞ」

 

「はい!」

 

分隊長を乗せたランドスピーダーと前方を走るスピーダー・バイクが速力を上げた瞬間突如地面が爆発した。

 

爆発に巻き込まれランドスピーダーとスピーダー・バイクは横転し燃え盛る残骸と成り果てた。

 

「何!?」

 

爆発に驚き部隊は急停止したがある1台のスピーダー・バイクが止まれずに再び爆発に巻き込まれた。

 

更に吹っ飛んだバイクがランドスピーダーに直撃しそのままランドスピーダーも横転した。

 

「防御陣形を作れ!」

 

生き残ったストームトルーパーやスカウト・トルーパー達はスピーダーを集めその下に隠れた。

 

数名のストームトルーパーが横転したランドスピーダーからまだ戦えるトルーパーを救助し武器を与える。

 

「一体これはどういうことだ!」

 

「恐らく対車両用地雷が敷設されていたと思われます!」

 

これではランドスピーダーを用いて接近する事が出来ない。

 

しかもこの地雷が敷設されたということは恐らく区画グレックは制圧されてしまったと思われる。

 

この文体の軍曹は「他の区画へ応援要請を」と命令したが通信妨害の影響で仲間を呼ぶことは出来なかった。

 

もう1人の分隊長は一番最初に爆発したスピーダーに乗っていた為その時点で戦死してしまった。

 

しかもこの状況を作り出したジェルマン達は彼らを好きな様に出来る。

 

「グレネードを投擲、俺とチューイで集中砲火を浴びせる」

 

「了解」

 

A280-CFEに取り付けられたグレネードランチャーの引き金を引き敵の防御陣形にグレネードを投擲した。

 

それに合わせてチューバッカとジョーレンもそれぞれ攻撃を開始した。

 

ブラスター砲が敵兵を薙ぎ払い、最大火力のボウキャスターがスピーダーの装甲を打ち破った。

 

「反撃しろ!撃て!」

 

ストームトルーパー達も手持ちのE-11やT-21軽連射式ブラスターで応戦したがブラスター砲は全てグレネードで破壊されてしまった。

 

それだけではなくストームトルーパー達にも死傷者が発生し敵のペースに対し後手に回るしかなかった。

 

だがジョーレンが扱うブラスター砲の冷却中に僅かながら隙が生まれた。

 

「煙幕を展開しその隙に接近する!」

 

ランドスピーダーのスモーク発射機能を使い周辺に煙幕を展開する。

 

辺りに白い煙が立ち込め目視では周辺の様子が全く分からなくなった。

 

その間にと軍曹はストームトルーパー達に命令を出した。

 

「散開して突撃!行くぞ!」

 

軍曹と共にストームトルーパー達は煙幕の中を突っ切り全身を開始した。

 

トルーパー達は散開し全方位から接近している為無闇矢鱈に攻撃したところで意味がない。

 

それは当然ジェルマン達も分かり切っていた。

 

「まあ敷設したのはリパルサー反応型だけだし良い判断だが……」

 

A300に持ち替えたジョーレンはそう呟きながら2人のイウォーク達の方に目を寄せた。

 

彼らが敷設した罠は確かに原始的だがもしかすると我々が持っている装備よりも遥かに厄介かも知れない。

 

接近するストームトルーパー達はE-11を構えながら駆け足で敵陣地へ向かった。

 

距離的にはそこまで離れてはいない為煙幕を抜ければ一気に攻撃が出来るはずだ。

 

そんな中ある1人のストームトルーパーが草叢に突っ込みそこで何か縄のようなものが足に引っ掛かった。

 

「なんだ!?」

 

直後どこからか飛んできた矢に首が貫かれそのストームトルーパーは地面へ斃れた。

 

別のトルーパーも同じように足に縄が絡まり矢に貫かれた。

 

「気をつけろ…!何かが仕掛けられてっ!」

 

忠告しようとしたストームトルーパーは突如何もないところで転けた。

 

よく見ると足元が草を結び合わせた仕掛けに絡まっていた。

 

同じように仕掛け矢に掛かって負傷する者や転ぶ者が続出した。

 

「やはりイウォークの罠は効果抜群だなっ……!もう少し時間があったら落とし穴や乱杭も撃てたんじゃないか…?」

 

A300のスコープを覗きジョーレンは引き金を引いた。

 

彼のA300にはコンピューター式ヒートビジョン・スコープが取り付けられており煙幕が辺りを取り囲んでいても周囲の様子が探知出来た。

 

煙幕の中を突っ込んでくるストームトルーパーを1人ずづ狙い撃つ。

 

ジェルマンも同じように自らのA280-CFEにヒートビジョン・スコープを取り付け敵にグレネードを投擲した。

 

予想外のトラップと狙撃により再びストームトルーパー達は苦戦し始めた。

 

しかも煙幕から出た瞬間チューバッカのボウキャスターがストームトルーパーを吹っ飛ばす。

 

もはや逃げ場などなかった。

 

「クソッ!レジスタンス共め!」

 

「一旦後退!後退だ!」

 

「本部に増援をっ!」

 

不利を悟りストームトルーパー達は撤退を開始したが当然生かして帰すつもりは毛頭なかった。

 

背中からでもジョーレンは敵を撃ち抜いた。

 

ここで一気に敵部隊に来られては流石に対処し切れなくなる。

 

最後の敵兵を狙撃する頃には他のスカウト・トルーパー達も全員地面に倒れていた。

 

「敵部隊の全滅を確認」

 

「よし次だ、通信を繋げる。出来れば次はもっと小ぶりの隊を呼び寄せる」

 

「分かった…!」

 

敵兵が持っていたコムリンクを利用し敵部隊に通信を取った。

 

あえてこの時だけ妨害を弱めに設定することで他の部隊とも通信が繋がるようになるのだ。

 

その間にチューバッカもジョーレンも自らの武器のチェックを行なっていた。

 

「こっちは今んところ順調だが……議長達はどうだか……」

 

ジョーレンはケフ・バーの大空を見つめながらそう呟いた。

 

 

 

 

-同惑星 捜索区画エンス-

ジョーレンの希望に反してこちらでは突如現れた襲撃者との睨み合いが続いていた。

 

シス・ウェイファインダーはハンとレイアの下にあるが襲撃者である黒いロイヤル・ガードからこのまま無事に逃げ帰れるとは思えない。

 

あの赤いライトセーバー、このライトセーバーを持つ者が簡単に一度執着したものを諦めるはずがない。

 

自らの命に換えてでも奪いにくるだろう。

 

「ロイヤル・ガードか、お前達の主人はもう5年も前にくたばっちまったぜ?それともお前の新しい主人はあの“()()()()()”とか言う奴か?」

 

ハンは敢えて黒いロイヤル・ガードに対し挑発的な態度を取った。

 

シーヴ・パルパティーンとダース・シディアスという人物が同一の人であるという情報は既に“()()()()()()()”。

 

あの黒いロイヤル・ガードがそれを認識しているかは定かではないが。

 

「それともちょび髭の…」

 

ハンが言い切る前に黒いロイヤル・ガードは手を前に翳しフォースの力で彼らを押し出そうとした。

 

しかしその力が届く前にレイアが割って入りなんとか攻撃を食い止めた。

 

その隙にハンは自らのDL-44で再びロイヤル・ガードを銃撃した。

 

ブラスター弾は全て黒いロイヤル・ガードが持つライトセーバー・パイクによって弾かれたがその隙に再びレイアが斬り掛かった。

 

黒いロイヤル・ガードは斬撃を受け流しレイアから距離を取った。

 

レイアは自らの呼吸と型が乱れていることを自覚し黒いロイヤル・ガードを追いつつも自らの意識を落ち着かせた。

 

エンドアの森で教わったことを思い出せ、今重要なのは相手を打ち倒すことではない。

 

少なくとも我々を追撃出来るようにすればいいのだ。

 

レイアはライトセーバーの斬撃以外にもフォース・プッシュや近くに置いているブラスター・ライフルを多用し様々な方法で攻撃を行った。

 

相手の黒いロイヤル・ガードは防戦しつつ反撃の機会を狙った。

 

格闘術ではレイアではなく黒いロイヤル・ガードの方に分があるかも知れない。

 

もし相手が本当にロイヤル・ガードであるならば話に聞く厳しいトレーニングを行なってきたはずだ。

 

レイアもかなりの戦いで場数を踏んできたが格闘戦ではどうなるか分からない。

 

しかし彼女には強力なフォースがついている、彼女もスカイウォーカーの血族なのだ。

 

もしかしたらそれはやがて“血の呪縛”となるかも知れない。

 

レイアの実の父はスカイウォーカーでありながら銀河系の恐怖の代名詞でもある。

 

そのことが今後彼女を苦しめるかも知れない、だが同時に希望ともなり得るはずだ。

 

自らの血の呪縛に抗う最初の1人として。

 

一瞬の隙をついて黒いロイヤル・ガードは反撃に打って出た。

 

突きを繰り出し相手が回避した瞬間にライトセーバー・パイクを持ち上げて斬撃を繰り出す。

 

ライトセーバーの刃は両面どころか刃の全ての部分に切断力がある。

 

その為少し触れただけでも相手にダメージを与えられるのだ。

 

黒いロイヤル・ガードはそのままライトセーバー・パイクを振り回しレイアと距離を取った。

 

ハンとレイアはブラスター弾を放って遠距離からでも攻撃を行うが全て弾かれてしまった。

 

黒いロイヤル・ガードはトルーパーの亡骸の側にあったプローブ・ドロイドのコントローラーをフォースで引き寄せ手にした。

 

「まさか…!」

 

ハンはすぐに察知しDL-44で慌てて黒いロイヤル・ガードを撃った。

 

無論ロイヤル・ガードは全て弾き返しコントローラーのあるスイッチを押した。

 

それはこの区画のプローブ・ドロイドを全て戦闘モードへ移行するスイッチだった。

 

「やられたっ!」

 

ハンはレイアと共に急いでもの影に隠れブラスター・ピストルを構えた。

 

第二デス・スターの残骸の隙間から数十体のプローブ・ドロイドが一斉に姿を現した。

 

プローブ・ドロイドはハンとレイアを見つけるなり自身のブラスター砲で2人を攻撃し始めた。

 

レイアはブラスター弾を弾きながらその間にハンがDL-44で狙い撃った。

 

ブラスター弾が命中したことにより2、3体のプローブ・ドロイドが撃墜された。

 

しかしその程度の数倒しただけでは全く数が減らない。

 

プローブ・ドロイドはブラスター弾を周囲にばら撒きつつ浮遊しながら2人に接近した。

 

2人は徐々に後退しつつドロイドの数を減らした。

 

しかしドロイドの数は一向に減らずむしろ増えるばかりだ。

 

しかも黒いロイヤル・ガードはプローブ・ドロイドの突撃に合わせて再び攻撃を開始した。

 

ブラスター弾を弾きつつ黒いロイヤル・ガードの斬撃を受け止めるレイアの労力は限界に近かった。

 

ハンもレイアを助けようとプローブ・ドロイドを何体か撃破したが直ぐにドロイドの集中攻撃を受けて応戦出来ずにいた。

 

「チッ!このままじゃあまずい…!」

 

ハンが援護射撃をすれば即座にプローブ・ドロイドが穴を埋め、レイアは黒いロイヤル・ガードの攻撃を受け止めている為助けに入れない。

 

万事休す、もうどうすることも出来ない状況だった。

 

数的優勢を確保した黒いロイヤル・ガードは攻勢を強めた。

 

ライトセーバー・パイクの連続した攻撃はセーバー戦に完全には慣れていないレイアを追い詰めた。

 

ロイヤル・ガードは破壊されたプローブ・ドロイドの残骸を投げ飛ばし搦手でレイアの集中を削いだ。

 

ハンも攻撃の合間を縫って近接反応爆弾を黒いロイヤル・ガードの前に投擲しすぐに起爆させた。

 

しかし事前に回避していた黒いロイヤル・ガードには何のダメージもなかったが辛うじて黒いロイヤル・ガードの攻撃を一旦止めることに成功した。

 

レイアが再び攻勢に出ようとするもすぐにプローブ・ドロイドが妨害し黒いロイヤル・ガードが体勢を立て直せる時間を作った。

 

再び黒いロイヤル・ガードの猛攻が始まりレイアはまた防戦一方になった。

 

ハンにもより一層圧力が掛けられ自身の身を守ることで精一杯だ。

 

「チッ!あいつらを呼び出せれば!」

 

せめてチューバッカやあの特殊部隊がいればこの程度の数捌けるだろうに。

 

ハンは何体かのドロイドを撃墜しながら心からそう思った。

 

一方レイアはそんなことを考えている余裕はなかった。

 

今はまず、目の前の敵に集中する必要があったからだ。

 

この黒いロイヤル・ガードはかなり戦い慣れており、そう簡単に打ち倒せる相手ではなかった。

 

フォースの能力をロイヤル・ガードとしての技能でカバーし、積極的な攻撃によって相手が手を出す隙を生まれないようにしている。

 

能力や伸び代では圧倒的にレイアに軍配が上がるだろうが今の所の経験の差では黒いロイヤル・ガードが上であった。

 

「せめてあの地図だけは…!」

 

レイアは辛うじて黒いロイヤル・ガードから距離を取ったが今度はプローブ・ドロイドの攻撃を受けることになってしまった。

 

ブラスターの雨がレイアとハンに降り注ぐ。

 

この機をチャンスと考えたのか黒いロイヤル・ガードは一気に攻撃をかけようとした。

 

レイアはどうやって攻撃を躱そうか考えていたが全ては杞憂に終わった。

 

突如上空からプローブ・ドロイドや黒いロイヤル・ガードに向けてレーザーが放たれたのだ。

 

レーザー砲が発生させる爆風やレーザーの直撃によってプローブ・ドロイドは破壊され、黒いロイヤル・ガードは防御に徹した。

 

ハンとレイアはレーザー弾が放たれた上空を横切るものを目にした。

 

T-6シャトル、旧共和国のジェダイ達が使ったシャトルで本来は非武装である。

 

しかしそれを改造しこの銀河系で未だ使っている人物。

 

レイアはすぐにその名を呼んだ。

 

「アソーカ!」

 

かつてトグルータの幼き少女だった麗しの戦士はT-6から飛び降りプローブ・ドロイドに白いライトセーバーを突き刺し衝撃を緩和しながら着地した。

 

2本の白刀を構えアソーカは次々とプローブ・ドロイドを斬り倒していく。

 

気がつけば周囲のドロイドは全て破壊され、残る敵は黒いロイヤル・ガード1人のみとなっていた。

 

「私が相手をする、2人は今のうちに船へ」

 

アソーカと黒いロイヤル・ガードの間にピリついた殺気が渦巻いた。

 

近くにT-6シャトルが着陸しハッチが開く。

 

アソーカは敵を牽制しつつ2人が船に入るのを見守ろうとした。

 

しかしレイアは彼女の隣に立った。

 

彼女の父と同じ青色の光剣を構え、彼女の父と同じ風貌を漂わせながら。

 

「先に行って!」

 

レイアはライトセーバーを構えハンにそう告げた。

 

ウェイファインダーを持ったハンを逃すのは最重要課題だ。

 

あれがなければシス・エターナルに対する反抗作戦が実行出来ない。

 

それはハンも重々理解しており、彼は苦渋の選択の末にT-6に乗り込むことを決めた。

 

本当だったらハンも戦いに加わっていただろう。

 

「ファルコンで迎えに来る、それまで待っていてくれ」

 

「ええ」

 

人を乗せたT-6シャトルはすぐに浮遊しその場を離れた。

 

黒いロイヤル・ガードは発進を阻止しようと手を伸ばしたがすぐにレイアとアソーカに邪魔をされ2人の斬撃を受け止めつつ後退した。

 

黒いロイヤル・ガードも流石に2対1、しかも相手があのアソーカ・タノでは苦戦はまず間違いない。

 

大粛清を生き残ったジェダイは仮にパダワンであっても強い。

 

カル・ケスティスとの戦いで黒いロイヤル・ガードは十分にそれを思い知っている。

 

しかしまだ引き下がる訳にはいかない。

 

もう少し戦っておかないと“()()()()()()()”。

 

黒いロイヤル・ガードはライトセーバー・パイクを構え、2人を迎え撃った。

 

ライトセーバーの刃が触れ合う音が何度も響き、再びライトセーバー線が開始された。

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー 大セスウェナ連邦首都惑星 惑星エリアドゥ 連邦国防省本庁舎-

数十人の制服を着た連邦軍の将兵達がモニターに向き合い軍務についている。

 

現在連邦軍、特にエリアドゥの全地上軍基地、宇宙軍基地、航空軍基地は非常時態勢に移行し、宇宙艦隊は連邦領域内の警備任務に就いていた。

 

本庁舎司令部では各艦隊や展開中の部隊の情報を集約し警戒任務を実行している。

 

何せ捕虜が監獄船を奪取して逃走したのだ、連邦領域の安全に著しく損なわれた。

 

連邦軍に加え警察や警備隊も領域内のパトロールを続けていた。

 

「長官、カバル宙域軍司令部から報告です」

 

2人の宇宙軍少佐が敬礼し国防長官、ハインズ・リノックスに報告書を渡した。

 

彼は元々旧帝国の戦争省の人物で惑星アヴェラムの生まれである。

 

銀河内戦の混乱期に大セスウェナ連邦へと亡命し、現在は大セスウェナ連邦国防長官として働いていた。

 

大セスウェナ連邦も元を辿れば帝国軍勢力の1つ、コア・ワールドやその他の領域からの亡命者が政府の役人として働いていることも少なくなかった。

 

「カバル宙域には問題はないそうです。2時間前の報告ではステニプリス宙域も同様でしたが」

 

国防省に視察に来ていたヘルムートに報告した。

 

「現状、レジスタンス軍が展開している地域は近隣だと2つあります。1つはナブーを含めたコメル宙域周辺、そしてもう1つはアノート宙域方面」

 

「統合本部のメンバーは今、どのくらいエリアドゥに残っている?」

 

「本部長ホルト元帥とハブリン航空軍司令官はフェラー統合軍基地にいます。リンスフォード作戦部総長はセスウェナの軌道上ステーションに、ホルコム海兵隊総司令官はユヴェナ・プライムの海兵隊キャンプに」

 

統合本部は旧帝国軍の統合本部と同じく大セスウェナ連邦軍の最高機関であり地上軍、宇宙軍、航空軍、海兵隊のトップが主要メンバーに置かれていた。

 

また連邦構成国が保有する惑星防衛軍の代表として惑星防衛軍総局長もメンバーに加わっていた。

 

現在この国防省本庁舎にいるのは地上軍参謀総長と惑星防衛軍総局長の2名である。

 

「第三帝国、特に国防軍と親衛隊からの反応はどうだ」

 

第三帝国は名目上同盟国であり連邦国防省は第三帝国軍とのカウンターパートを用意していた。

 

リノックス長官は「何もありません」と首を振った。

 

「サラストの親衛隊もマラステアの国防軍にも動きはありません。アノート方面の艦隊は未だ戦闘中のことですが」

 

「どう言い繕うか迷っているのでしょう」

 

モッティ提督は冗談混じりにそう呟き、ヘルムートも皮肉を込めて「もしくは我々の説明不要と思っているのかもな」と付け加えた。

 

少なくとも連邦側の看守や警官達に死傷者は出ていない。

 

第三帝国側の警備兵、特に監獄船に乗っていたメンバーはそうもいかないだろうが。

 

「ですが、以前より気になっていることが1つ。第三帝国がウルマトラとブーンタに戦力を集中させていることです」

 

リノックス長官は近くの士官に頼んでモニターに星図を映し出した。

 

惑星ウルマトラと惑星ブーンタのある地点が赤く光り、情報が映し出された。

 

「以前FCSIAとのミーティングを元に作成したものです。ウルマトラには元々現地駐留軍の基地がありますがブーンタはそうではありません。新たに物資集積所とプレハブですが基地を建設したとのこと」

 

「一方でウルマトラの方にはISDを基幹とした十分な艦隊にSSD(セキューター級スター・デストロイヤー)と輸送艦の揚陸部隊……」

 

リノックス長官は頷き説明を続けた。

 

「物資の詳細は完全には把握出来ていませんが主に陸上兵器、武器弾薬、医薬品などだそうです」

 

「これは間違いなく何らかの地上侵攻を視野に入れた軍事行動を取るつもりでしょう」

 

リノックス長官の背後に控えていた連邦地上軍参謀総長、キャレッド・マルシャル将軍はキッパリとそう答えた。

 

彼は非常に堅物で副官にも同期にも自身のファーストネームを呼ばせたことがなかった。

 

長らく彼と共に仕事をしているリノックス長官もそのことについてはよく知っているしヘルムートも彼のことは常にマルシャル将軍、もしくは参謀総長と呼んだ。

 

「単なる国境の警備であるなら艦隊で十分、それにウルマトラにはもとより十分な戦力が配置されていたはずです」

 

「何より後方にはスレイヘロンがある、指揮機能はあそこで十分賄えていたはずです」

 

ザーラ司令官もマルシャル将軍の発言に付け加えた。

 

流石は亡きウィルハフ・ターキン総督の弟子である、即座に星の位置とそこから出来る分析を打ち出した。

 

「輸送艦の往復回数から言って両惑星に溜まっている物資の量は3個兵団を動かすのに十分なものです。それにハット・スペース全体が第三帝国の制圧下だとすると、1個野戦軍がそのまま雪崩れ込んでくる可能性もある」

 

マルシャル将軍は更に「ハット・スペースの兵力増強が進めば確実に彼らは戦争を始める」と断言した。

 

同じ地上軍の将軍として分かる所があるのだろう。

 

第三帝国は惑星制圧も含めた侵攻を展開するつもりだ。

 

「現状、シス・エターナル軍の介入で北東戦線に余裕があります。ナブー奪還は親衛隊主導という情報もありますし余剰戦力を東部に展開してもおかしくはありませんが…」

 

モッティ提督の表情はそれでもまだ信じられないといったものだ。

 

いくら狂気が蘇らせた中央の帝国とはいえそこまでやるのか。

 

誰しもが一度は思っただろう、ヘルムートも、恐らくは新共和国の死んだ議員や官僚達も皆。

 

だから第三帝国をここまで増長させてしまった。

 

彼らはコルサント制圧から今日に至るまで留まることなく戦争行動を続けている。

 

その理由は政治思想もあるだろうが一番は既に“()()()()()()()()”を構築してしまったからだろう。

 

あの軍事大国が一度立ち止まればその崩壊は新共和国や旧帝国よりも容易い。

 

「現状、これ以上の情報がないので何とも言えませんが分析では『第三帝国が連邦の“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”』と出ています」

 

盟友国、はっきりと明言されなくともそこがどこかはヘルムートはよく分かっていた。

 

それにウルマトラとブーンタの地理的関係から行って侵攻予定地はもうあそこしかない。

 

「引き続き、調査を頼む。彼女達には出来れば早めに伝えておきたい。それと“()()”の準備も」

 

「首相や各長官と協議し、進めていきます」

 

今出来るのは警戒と準備のみ、だがこの2つを怠れば厄災がすぐに降りかかってくる。

 

尤も、その厄災と手を結んでしまった時点で十分の罰は受けているだろうが。

 

「失礼します!閣下、スピーダーの準備が完了しましたのでご準備を」

 

室内に入ってきた運転手がそう報告しヘルムートは「すぐ行く」と伝えた。

 

「せっかくだ長官、乗って行くか?」

 

ヘルムートはリノックス長官に同席するか尋ねた。

 

彼らはこれから政府官邸に向かい各省庁長官や統合本部長などが出席する緊急会議に向かうところであった。

 

行き先は同じ連邦政府官邸である為時間短縮の為にも丁度良かった。

 

「私はもう暫くここで情報を収集してから参ります。官邸でまたお会いしましょう」

 

「分かった、では官邸で」

 

ヘルムートは長官達に敬礼し司令室を後にした。

 

モッティ提督やザーラ司令官もヘルムートの後に続き司令室の人気が少し減った。

 

リノックス長官は近くのモニターに寄って出てくる情報を確認した。

 

「閣下は今年で……確か19歳だったか?」

 

長官はふと背後に控えているマルシャル将軍に尋ねた。

 

将軍は「ええ、来年で20歳になると以前閣下が」と答えた。

 

「本来であれば閣下も今頃ロイヤル・アカデミーを卒業し少尉か中尉……我々の後輩になるはずが我々の上司になってしまったとはな」

 

「仕方がありません、閣下は大セスウェナ連邦盟主です。今後も連邦を維持する為には閣下が必要です」

 

そこは「スピード出世ですね」と言うような冗談が欲しかったのだが生真面目なマルシャル将軍は真面目に理由を答えた。

 

リノックス長官は苦笑を浮かべながらも「確かに、将軍の言う通りだ」と頷いた。

 

大セスウェナ連邦はかつてよりこの地を守護し繁栄させてきたターキン家の名の下に諸邦が参集して成り立ったのだ。

 

その当時からターキン家の主人であったヘルムートは単なる連邦盟主ではない。

 

大セスウェナ連邦の精神的支柱であり、銀河内戦末期の混乱状態の中で連邦を今の状態にまで持ち込んだのは間違いなく彼の手腕も一因にある。

 

奇跡の人、或いは現人神と思う者もいるだろう。

 

その神秘性とカリスマ、そしてあの若く秀麗な風貌とターキン家の家柄が連邦盟主として連邦の結束力を高めている。

 

「しかしだな将軍、私は時に思うことがある。閣下は19歳、つまりまだ10代の若者の肩に連邦の重責が掛かっているのだ」

 

リノックス長官もここまでの役職になるには様々な経験と年月を経ている。

 

それより上の役職を僅か10代の少年が担っているのだ。

 

いや、正確には“()()()()()()()”と言った方がいい。

 

ヘルムートが連邦盟主に選ばれた最大の要因はその年齢と最も本流に近い血統という2つにあった。

 

本来彼は象徴、もしくは飾りの盟主であり、様々な外敵や政敵を欺く為には御し易く見える必要もあった。

 

だがお陰でデルヴァードスのような簒奪者が直接大セスウェナ量を手にする防ぎ、今の連邦体制を維持出来た。

 

当然ヘルムートが望まれた以上の働きをしたというのもあるだろうが。

 

しかし彼はこの巨大な国家の盟主である為に、それ以前にターキン家の人間として普通の青少年とは違う育て方を受けて生きてきた。

 

「閣下自身、今の生活に納得されていると良いのだが……」

 

長官は言葉を選んだ末に心配そうな声音でそう発した。

 

本音を全て口にすることは流石に憚られた。

 

「しかし我々が閣下の代わりを務める事は出来ませんし少しでも邪な考えを浮かべれば我々は皆デルヴァードスと同じ目に遭うでしょう」

 

「それは……そうだが」

 

「国民選挙で選ばれる首相とは違い、盟主たる閣下には絶対的な存在でいて貰わなくては困ります。我々は旧帝国の轍を踏む訳にはいかない」

 

かつてヘルムートの地位を、空席となった銀河帝国指導者の地位を奪おうとした者は大勢いた。

 

誰しもが私利私欲に溺れ、結果的に帝国は全体では新共和国に勝っていたののも関わらず統一された指揮系統のもとで戦うことが出来ずに崩壊した。

 

これは正に故ウィルハフ・ターキンがターキン・ドクトリンの前述で記した通りの結末だ。

 

だからこそ大セスウェナ連邦はその轍を踏む訳にはいかなかった。

 

「すべては大セスウェナ連邦が生き残る為です。閣下とてそれは理解しておいででしょう」

 

リノックス長官は「そうだな…」と小さく頷く他なかった。

 

彼がヘルムートへの哀れみや良心を見せたところで最早どうすることも出来ない。

 

恐らくヘルムートが盟主の席を降りたいと自分で言い出してもだろう。

 

連邦が存続しアウター・リムの希望となる為にはまだターキンの血が必要であった。

 

過去も、未来も。

 

 

 

 

 

-第三帝国首都惑星コルサント 親衛隊本部 FFSIO第一作戦室-

護送中の捕虜の脱走は警備を担当した第三帝国の各保安機関、特にFFISOに衝撃を与えた。

 

捕虜の護送を担当していたのはFFISO第Ⅴ局であったからだ。

 

FFISOでは現地でパトロール中の部隊から情報を受け取り、捕虜達の行方を追っていた。

 

「護送船の発信機が全て途絶、遠隔での追跡は不可能です」

 

「第四十六封鎖部隊は後2時間ほどでアド宙域に到達します」

 

下士官達の報告にハイドレーヒ大将は「遅すぎる」と苛立ちの言葉を述べた。

 

彼の後ろではFFISOの将校達が書類やデータ端末を持って右往左往しており、作戦室は喧騒に包まれていた。

 

「オイカン大提督麾下の封鎖部隊を特例で派遣出来ないのか」

 

ハイパースペース・レーンから敵艦を引き摺り出す重力井戸の能力を搭載した軍艦は数に限りがある。

 

第三帝国は何とか重力井戸搭載艦のイモビライザーやインターディクター級スター・デストロイヤーを再建造し機動部隊を編成したがそれでもアウター・リム方面へ回すにはまだ数が足りなかった。

 

現在ハイパースペース・レーン封鎖の為に2つの封鎖部隊が展開されたが部隊が到着する頃には捕虜達は皆アノートなりコメルなりに逃げているだろう。

 

その為最も近くにいるインターディクター級を是が非でも動員したいのだがそもそも所属が違うということと、ハイドレーヒ大将は艦隊の直属上官たるオイカン大提督とある不祥事以来仲が悪い為そう易々と頼むことも出来なかった。

 

「大提督の麾下艦隊はアノート宙域攻略中で一隻たりとも動かせないと事前通知が……」

 

「であれば既存の艦隊で最低限度でもいいから封鎖線を展開させろ。居住惑星には保安局の直轄部隊を置いて警戒に当たれ」

 

「了解!」

 

時間的に鑑みて最初に護送船団を強奪した捕虜達はもうアノート宙域かコメル宙域に辿り着いているだろう。

 

逃げ出した全員を再び同じ監獄に放り込むことはもう不可能だ。

 

「長官、大セスウェナ連邦より公式の非難声明が」

 

本部付の大尉が敬礼しハイドレーヒ大将にタブレットを手渡した。

 

ハイドレーヒ大将はタブレットを受け取り不機嫌な顔で一瞥する。

 

内容は当然今回の捕虜脱走のことで大セスウェナ連邦側は『連邦領域の安全を著しく損なった』とかなり強い言葉で非難を打ち出していた。

 

ハイドレーヒ大将はタブレットをフリシュタイン上級大佐に手渡し大尉に一つ尋ねた。

 

「この文章は外務省からか」

 

「はい、外務省よりこちらにも回ってきました」

 

そのことを聞いたハイドレーヒ大将は少し考え別の将校を呼んだ。

 

その将校は敬礼し「御用でしょうか」とハイドレーヒ大将に尋ねた。

 

彼は第Ⅵ局に所属するFFISOの中佐で作戦室に連絡要員として待機していた。

 

「24時間以内に大セスウェナ連邦の国内情報を纏めて提出してくれ。少し気がかりだ」

 

「分かりました…!」

 

中佐は敬礼して作戦室を後にしハイドレーヒ大将は再び大尉の方へ話を始めた。

 

「宣伝省や各機関には緘口令を。情報を遮断させるんだ」

 

「了解、前線の部隊に対してはどうしますか?」

 

大尉は大将に尋ねた。

 

現段階で箝口令を出し、情報を遮断してもいずれ何らかの理由で今回の事件は少なからずコア・ワールドにも伝わってくるだろう。

 

特に前線で事件に関わった部隊から漏れ出ることはよくある。

 

「当然箝口令は出す。それと同時に各隊の忠誠将校に監視させておけ、少なくとも1ヶ月は保たせる」

 

命令を聞いた大尉は周りの将校達を集めて箝口令の伝達に向かった。

 

ひと段落着いたハイドレーヒ大将は司令官席に座り報告を待った。

 

今の所新しい報告は入っておらずハイドレーヒ大将は椅子に深く座り込んだ。

 

「…フリシュタイン。アンダーワールドに置いている兵力はどのくらい他に回せる?」

 

ふとハイドレーヒ大将は隣に控えているフリシュタイン上級大佐に尋ねた。

 

彼は何かを確認するまでもなく「“()()”は大体完了しましたのでポータルの警備隊以外は全て使えます」と答えた。

 

ハイドレーヒ大将は何やら満足気に微笑み、フリシュタイン上級大佐に命令を与えた。

 

「後で司令官達に各捕虜収容所と強制収容所に展開するよう伝えろ。警備強化を行う」

 

フリシュタイン上級大佐は無言で小さく頷いた。

 

「ポータルでは良くやった。これでナブー奪還さえ乗り越えれば君は晴れて准将だ」

 

ハイドレーヒ大将の代理として前線で各隊の調整を行なっていたフリシュタイン上級大佐はポータルでの“()()”が成功した事により準層への昇進が内定した。

 

帝国宇宙軍ではアカデミーを卒業した少尉が准将になるまで最低でも15、16年掛かるとされている。

 

フリシュタイン上級大佐が保安局出身だとしても彼はまだ30歳、通常よりも4、5年早い昇進だ。

 

これは彼が優秀ということもあるがそれ以上に旧帝国に比べて第三帝国には人がいないという証明でもあった。

 

「准将に昇進したら私の副官職から離れる事になる。もしかしたらコルサント外の仕事に就くかもしれん」

 

「忠誠こそ我々最大の名誉、どこへでも行きましょう」

 

フリシュタイン上級大佐の返答にハイドレーヒ大将は再び満足げな表情を浮かべた。

 

彼が親衛隊の将兵に求めているのはこのような心がけだった。

 

「尤もこの情勢下で予定通りの作戦を実行出来るかは不安がありますが」

 

「安心しろフリシュタイン、彼らとてナブー奪還は必須だ。いつまでもレジスタンスにあの場を渡しておくのは誰だって望ましくないだろう」

 

フリシュタイン上級大佐が言う不安点とは主にシス・エターナルのことだった。

 

シス・エターナルは銀河系に派遣したスーパーレーザー艦隊を突如本国に帰還させた。

 

それと同時にシス・エターナルは第三帝国に対し密かに再び艦隊を連れて銀河系に戻ってくるという旨を撤退後に伝えてきた。

 

あくまで銀河北東部における攻勢はデモンストレーションでしかない。

 

これからシス・エターナル軍の本格攻勢が始まることを暗に伝えていた。

 

そうなれば当然第三帝国もシス・エターナル軍と連携する必要がある。

 

もしかするとその過程でナブー攻略に使われる分の戦力を引き抜かれる恐れがあった。

 

「ナブーの政治的価値は高い。むしろナブーを確保したい欲で言えばシス・エターナルの方が強いだろう」

 

「正直、それも心配です。アーヴァラ7に派遣された忠誠将校の報告書を見るに軍同士の連携となると軋轢が……」

 

アーヴァラ7には当然保安局から多くの忠誠将校が従軍した。

 

セドリスらの言動も把握しており報告書には派遣された国防軍側とシス・エターナル軍の間に微妙な軋轢があったことが記載されていた。

 

より大規模な連携となった場合この軋轢が広がる可能性がある。

 

ましてや戦場の手柄の取り合いともなれば抑えるのは中々難しい。

 

「その件については我々が派遣する忠誠将校を増やす他ない。最悪ヒェムナー長官に進言して国防軍の憲兵隊に我々で手を加えるのも視野に入れる」

 

ハイドレーヒ大将はフリシュタイン上級大佐を近づけ耳打ちした。

 

「国防軍に気をつけろ。最近“()()()()()()()()()()()()()()()()()()”」

 

以前より国防軍は代理総統に対して反発的な人間も少なからずいた。

 

特にコルサント奪還以前から行われていた一部の領土奪還の際には国防軍からも「博打が過ぎる」と言う声が出た。

 

保安局は以前より反帝国的とマークされた人物や組織を黒いミラーブライトと呼んでいた。

 

ミラーブライトは今から9年前に破壊されたオルデランの子守唄であり、オルデラン出身の反帝国主義者が増加したことからオルデランの文化を取ってこう称した。

 

第三帝国において黒いミラーブライトは第三帝国内の、特に国防軍内の反総統派達を呼ぶ総称になっていた。

 

「分かりました」

 

「ハイドレーヒ大将…!」

 

急足で作戦室に入ってきた親衛隊将校が彼に敬礼し息を整えを整え話し始めた。

 

第Ⅴ局B部に所属するガンツェル中佐だ。

 

息が荒れている前に彼の顔色は随分と青く、何かまた良からぬ事態が発生したことを想起させた。

 

「ケフ・バーのハイネンシュルツ中佐からです。現在同地の調査隊はレジスタンス部隊の襲撃を受け戦闘状態に入りました。しかも黒いロイヤル・ガードが現れたという報告も……」

 

その単語でフリシュタイン上級大佐は状況を察し、ハイドレーヒ大将も表情は変えなかったが少し間を置いて命令を出した。

 

「ハイネンシュルツ中佐に命令。調査は中断、麾下部隊を撤退を開始しろ」

 

「了解…!」

 

「モーヴェル中佐」

 

「はい!」

 

ガンツェル中佐と入れ違いになる形で呼び出された第Ⅰ局A部のモーヴェル中佐がハイドレーヒ大将の前にやってきた。

 

「データベースのケフ・バー調査隊の項目を削除しろ。後参加した部隊の書き換えも頼む」

 

「分かりました。アルテン、ヨークス来てくれ、新しい仕事だ」

 

モーヴェル中佐は同僚を連れて作戦室を後にした。

 

フリシュタイン上級大佐はふと「何故レジスタンスが…」と呟いた。

 

あの黒いロイヤル・ガードがあらわ荒れる理由は分かる、だがレジスタンスがケフ・バーのことを知っているはずはない。

 

レジスタンスが現れた理由がどうしても分からなかった。

 

「考えられることは一つ、誰かが情報を漏らした。我々か“()()”のどちらかが」

 

ハイドレーヒ大将の目つきは彼の湧き上がる不満を鋭く固めたように悪くなっていった。

 

また銀河系が大きく変わる。

 

しかしやるべきことは一つだ。

 

「我々は第三帝国“()”秩序を守り帝国を幾千年も先に繁栄させていく。そのための我々だ」

 

 

 

 

 

-シス・エターナル本領 エクセゴル星系 惑星エクセゴル 玉座の間-

失敗した人間を叱りつけ、或いは罪を償わせる仕事は皇帝のやるべきことではなく、彼の片割れにいる弟子の暗黒卿の仕事であった。

 

その鉄の拳は帝国内外にとって恐怖の象徴であり、彼がいる場所に安全地帯などなかった。

 

勿論彼の怒りを免れ、或いは彼に認められた者達もいた。

 

そのうちの1人は第三帝国国防軍の大将軍となり、また1人は未知領域で才覚を露わにしていた。

 

だが大多数は理不尽ともいうべき粛清の対象となった。

 

今、セドリスとテドリンがかつての皇帝の手によってされているように。

 

「くぅ……がぁ……めっ……面目ありませんっ……!」

 

「申し訳……ございません……うっ……!」

 

シディアスの魂を入れる器は不完全とはいえ、その力は十分にあった。

 

セドリスはダークサイドの術によって己がやらかした失敗の罰を受けていた。

 

彼は与えられたジストン級のアキシャル・スーパーレーザーを失ったのだ。

 

レジスタンス軍のスターファイター隊の攻撃によって。

 

セドリスとテドリンはあの時アソーカとカルの相手に集中しすぎたせいで戦闘瞑想や軌道上にいる部隊への指示が疎かになっていた。

 

その結果アキシャル・スーパーレーザーに攻撃を受け、あわやジストン級ごと撃沈するところであった。

 

しかもジェダイとの戦闘でセドリスとテドリンは敗北寸前まで追い込まれた。

 

彼らが狙いとしていた“()()”を確保することは出来たとはいえ、シディアスからしてみればとても満足行く結果ではなかった。

 

「其方らはジェダイの生き残りどもに追い詰められ、数少ない超兵器を失った。ジェダイとレジスタンスの雑兵に敗北するほど其方らは力量不足なのか」

 

シディアスはダークサイドの力を強めた。

 

セドリスとテドリンは苦しみ、呻き声を強めた。

 

やがて苦痛に耐えられなくなり、玉座の間に倒れた。

 

「立って見せよダークサイドの達人達よ。其方らがこの程度すら耐えられぬ軟弱者であるならば、其方らには死があるのみだ」

 

「お許しをっ…!お許しください陛下…!!うわぁっ!」

 

「我らはっ……我らは必ずやお役に立ちます!!」

 

皇帝は苦しむ2人には耳も貸そうともせず、再び力を強めた。

 

周りに控えている信者達も、皇帝を守るソヴリン・プロテクター達も、ゼクル・ニストも何も言わなかった。

 

この罰は当然のものであると皆確信していた。

 

セドリスもテドリンもかなり踏ん張っていたがそろそろ限界であった。

 

もうダメかと思われた瞬間彼らに救いの手が差し伸べられた。

 

「陛下、チス・アセンダンシーに派遣した艦より現在帰還するとの報告が」

 

シディアスは2人への罰を一旦やめ、玉座に深く腰掛けた。

 

報告に来たのはフリューゲルで彼は周囲を静かに見渡し、一呼吸置いてから報告を始めた。

 

「首都シーラでフォース感受者への教育過程を終えたそうですが、その途中で“()()()()()()”に出会したと」

 

フリューゲルは最後に「もしかすると“()()()()()()”と接触した可能性もあります」と付け加えた。

 

そのことはシディアスの興味を強く刺激したようであった。

 

「スカイウォーカーと余の忠実なる手はいつ戻る」

 

シディアスの問いにフリューゲルは「後5時間ほどで帰還するそうです」と答えた。

 

一瞬だけピリついた空気が流れシディアスはフリューゲルに命令した。

 

「送り込んだ者達が帰還したら余の玉座の前にすぐ連れてくるよう伝えよ。特にスカイウォーカー、そろそろ仕上げを行う必要がある」

 

「分かりました」

 

フリューゲルはシディアスに敬礼しその場を後にした。

 

シディアスは再びセドリスとテドリンに目を向けた。

 

2人は顔を引き攣らせ、怯えているようだった。

 

もしこの場にダース・ヴェイダーがいたら間違いなく彼らを処刑しているだろう。

 

少なくともシディアスはヴェイダーよりは寛容なところがあった。

 

「セドリス、テドリン」

 

シディアスは静かに2人の名前を呼んだ。

 

2人は深々と頭を下げ、主の判断を待った。

 

彼らの諦めの良さがどうかは分からないが、少なくとも死を恐れてシディアスの叛逆したところで勝ち目はない。

 

抗えない絶対的な恐怖と力が肉体は不完全で一度は死んだこの暗黒卿にまだ残っていた。

 

「其方らに次はない。来るべき“()()()”で真価を発揮して見せよ」

 

「ハッ!必ずやご期待に応えて見せます…!」

 

「我が命を賭けて必ずやシスの悲願を…!」

 

これを許されたと捉えるか常に己の首元に刃が掛けられているのかは個人の判断に委ねられるだろう。

 

だが一つ言えることは彼らが次に失敗したらその時は本当に“()()()()”だということだ。

 

セドリスもテドリンもこれから死に物狂いで武功を立てねばならない。

 

そうでなければ必ず死よりも恐ろしいものを味わうことになるだろう。

 

「其方らに話すことはもうない。下がれ、余の僕達よ」

 

その場にいる全員がシディアスに対し頭を下げ、玉座の間を後にした。

 

2人のダークサイダーは玉座の間を出た後も拭いきれない恐怖に見舞われただろうが。

 

静かになった玉座の間でシディアスは控えさせているシス信奉者を呼んだ。

 

フード付きの黒いローブを身に纏い、深々と主に頭を下げた。

 

「お呼びでございますか、我が主」

 

敬虔深い信奉者は嗄れた声で主に尋ねた。

 

「直ちにあの装置を起動せよ。選ばれし者の末裔に“()()”、“()()”は揃っておる」

 

「分かりました、起動を急がせます」

 

信奉者は深々と頭を下げ、玉座の間を後にした。

 

あの装置を起動すればようやくこの不完全な身体で苦しむこともなくなる。

 

かつてのようにライトセーバーを持ち、戦うことも出来よう。

 

そうすれば5年のうちに失われた全ては取り戻せる。

 

己の帝国、己の力、己の弟子。

 

再びスカイウォーカーの名を持つ者を弟子にすることも出来よう。

 

シスの繁栄はまだ始まったばかりだ。

 

数千年かけて積み重ねてきたシス卿達によって生きながらえた最後のシス卿の絵空事に近い野望は達成されつつあった。

 

 

 

 

 

ジェルマン達は囮の役を担い、現在も戦闘を続けていた。

 

だが通信機を用いた偽の増援を呼ぶ作戦にも限界があり、敵にジェルマン達のトリックがバレてしまった。

 

今やジェルマン達の周りには対処し切れないほどの帝国軍部隊が現れていた。

 

辺り一帯ストームトルーパー達によって完全に包囲されていた。

 

四方八方から赤いブラスター弾が飛び交い顔も出せずにいる。

 

「チッ!まずいことになったな!」

 

ジョーレンは牽制射撃をしつつそう吐き捨てた。

 

チューバッカは自慢の火力で敵兵を数人吹っ飛ばしたが全く数が減らない。

 

ウィケットとパプルーも一生懸命に矢を放って戦うがそれこそコンヴォアの涙と言う諺通りの状態である。

 

「ええいこの!」

 

ジェルマンは敵から奪ったブラスター砲をコンテナに固定して引き金を引いた。

 

ブラスター砲の一斉射はストームトルーパー2名を撃ち倒し、敵兵1個分隊を牽制させるには十分な火力だった。

 

されど抑えられたのはたった1個分隊のみ、他のストームトルーパー分隊は攻撃を続けていた。

 

その間に工兵ストームトルーパーが地雷撤去用の機材を用いてジェルマン達が施設した地雷を吹き飛ばして道を作った。

 

爆発が聞こえジョーレンは「やられた!」と声を上げた。

 

すかさず対応に出たジョーレンとチューバッカの集中射撃によって前に出てくる敵兵を食い止めることには成功した。

 

しかしその間にもう片方の地雷原も工兵隊によって突破されトルーパー達がブラスター弾と共に前進してきた。

 

ジェルマンが再びブラスター砲で応戦するもストームトルーパー達は後数十メートルのところまで接近してきた。

 

しかも最悪なことにブラスター砲は冷却タイムに入り撃てなくなってしまった。

 

「チッ!最悪だこの!」

 

急いで武器をA280-CFEに持ち替え、姿の見えている敵兵に狙いを定めるがブラスター砲とブラスター・ライフルでは面制圧力が大きく違う。

 

攻撃を受けているトルーパーが応戦している間に別のトルーパー達が前進され、さらに距離を詰められる。

 

ジェルマンはインパクト・グレネードを投擲し敵兵にダメージを与える。

 

その様子を見たウィケットとパプルーはあることを思いついたのか徐に荒縄を取り出してきた。

 

「待って何に使うのそれ!?」

 

ジェルマンの声を無視し2人のイウォークはインパクト・グレネードを手に取った。

 

荒縄に付けて器用にくるくる回し遠くにインパクト・グレネードを投擲してストームトルーパーを撃破した。

 

後方の爆発に気を取られた隙にジェルマンの素早い射撃によってなんとか全てのトルーパーを撃ち倒す事が出来た。

 

しかしストームトルーパーの1個分隊を撃破したところで次の1個分隊がやってくるだけだ。

 

しかも工作用とはいえウォーカーを引き連れて。

 

「前方からAT-CT!」

 

そのことを聞いたジョーレンは「ここは任せた」とチューバッカに声をかけ、ジェルマンの方に向かった。

 

A300をスナイパーモードに切り替え、前方のスピーダーに乗っている軍曹とスピーダーのエンジンを狙い撃った。

 

エンジンが爆散しスピーダーは止まった。

 

スピーダーに乗っていたストームトルーパーがブラスター・ライフルの一斉射撃と共に接近してくる。

 

AT-CTはハッチに取り付けてあるEウェブ・ブラスター砲でジェルマン達を射撃した。

 

赤い弾丸が周辺にばら撒かれ、ジェルマンとジョーレンはイウォーク達を抱き抱えて遮蔽物の近くに蹲った。

 

いくら非武装のウォーカーとはいえ歩兵からしてみれば十分強敵だ。

 

「あのウォーカーを潰さんことには話が進まない。グレネードは」

 

「あるけど、これじゃあ関節も破壊出来ない」

 

2人のブラスター・ライフルについているグレネードではAT-CTの装甲にダメージを与える事は出来ない。

 

かと言って足元にサーマル・デトネーターを投げても根本的な解決には至らないであろう。

 

「一か八か接近してデトネーターを…」

 

「流石に危険過ぎる!せめてもっと遠距離からでも撃てるものを…」

 

2人はふとウィケットとパプルーが使っていた弓を目にした。

 

彼らは今、インパクト・グレネードの投擲で忙しい為弓を使っていない。

 

ジョーレンはこの弓を使った突拍子もないウォーカーの撃退方法を思いついた。

 

「ウィケット弓借りるぞ!」

 

通じてはいないとは思うが一応本人に声をかけウィケットの弓と1本の矢を拝借した。

 

急いで簡易テープを取り出し、矢にサーマル・デトネーターを巻き付け始める。

 

その光景を見てジェルマンは「一体何を…?」と困惑していた。

 

「こいつで投擲の飛距離を稼ぐ。ジェルマンは先にブラスター砲手を狙い撃ってくれ」

 

「分かった!」

 

もう四の五の言っている場合ではない為ジェルマンは早速位置についた。

 

スナイパーモードに換装したA280-CFEを構え、狙いを定める。

 

敵のブラスター砲は制圧射撃を優先して行なっている為精度はそれほど良くない。

 

冷静に、機体から身体を出して銃撃する兵士の頭に狙いを定め、静かに引き金を引いた。

 

砲手は脳天にブラスター弾を喰らい即死した。

 

一先ずブラスター砲による攻撃は止み、チャンスが生まれた。

 

もし相手がAT-CTではなくAT-STであったならばこのようなチャンスは訪れなかったであろう。

 

ジョーレンは弓矢を持って野原に躍り出た。

 

ストームトルーパー達はジョーレンを見て「逃すな、撃て!」と一斉に発砲するがジェルマンの援護射撃によって妨害された。

 

ギリギリまで接近し、近くの草原に身を隠し弓を引き絞る。

 

矢の先端に取り付けたサーマル・デトネーターの起爆スイッチに指をかけ、彼はかつて上官のジェダイ達がよく口にしていた言葉を発する。

 

「フォースよ、我と共にあれ」

 

祈りの言葉と共に矢は放たれ、ウォーカー目掛けてまっすぐ飛んでいった。

 

矢は丁度AT-CTの胴体部に直撃し、丁度良いタイミングで先端のサーマル・デトネーターが起爆した。

 

デトネーターの爆発により胴体部が破損しAT-CTは上半身と下半身に分かれて地面に崩れ落ちた。

 

「AT-CT撃破!」

 

ジョーレンは撃破の報告を終えると弓をバックパックの間に挟み、速やかにブラスター・ライフルに持ち替える。

 

ウォーカーとスピーダーを失ったことにより、ストームトルーパー分隊は一旦前進を停止した。

 

彼らもこの状況を見て、重装備なしでは苦戦すると見抜いたのだろう。

 

その隙にジョーレンはジェルマン達の場所まで後退しブラスター・ライフルの冷却を行なった。

 

「ウィケット、ありがとうな。このまま残りの分隊を制圧する。俺がインプローダーを投げたら一気に集中砲火を…!」

 

ウィケットに弓を返し、ジェルマンに指示を出しているとチューバッカが全員に聞こえるくらいの大きな声で叫んでいた。

 

彼が指を差す方向にはトルーパー達が放ったと思われる信号弾が上がっていた。

 

度々帝国軍内にも潜入していたジョーレンならあの信号が何の指示を出しているか何となく分かった。

 

「あれは……撤退命令か…?」

 

「絶対にそうだ、あれを見て」

 

ジェルマンが指を差した方向を見ると先ほどまで戦闘していたストームトルーパー分隊がスピーダーに乗り込んで戦闘から離脱し始めている。

 

しかもスピーダーが撃破された分隊の為に兵員輸送機まで到着していた。

 

「まさか議長達の方に兵力を向けるために…?」

 

「いや、きっとあれだよ!」

 

ジェルマンはまた別の方向に指を差した。

 

彼の差す方向には3機のスターシップが真っ直ぐジェルマン達の方向へ向かっていた。

 

ミレニアム・ファルコンとUウィング、そしてT-6シャトルだ。

 

移動操縦のUウィングは着陸の為に一旦周囲にタレットとブラスター砲が周囲に攻撃をばら撒き安全地帯を確保した。

 

2機はゆっくりと機体を地表に近づけ、ハッチを開いた。

 

ファルコン号の方には先に退避していたC-3POが身を乗り出していた。

 

「バスチル少佐!撤退命令です!急いで自分の船にお乗りくださいー!」

 

「了解した!チューイはイウォーク2人を連れて先にファルコンへ、何かあったら俺たちで援護する!」

 

チューバッカはすぐに「分かった」と告げ、ウィケットとパプルーを担いでファルコン号に急いだ。

 

ジョーレンは3人を見送りながら心の中で今回はイウォークに助けられたなと微笑ましくなった。

 

チューバッカ達がファルコン号に乗り込むと今度はジョーレンとジェルマンの撤退が始まった。

 

「ジェルマン、お前が先に乗り込め。殿は俺がやる」

 

「分かった!」

 

ジェルマンは持てるだけの武装を手に持ってUウィングに走った。

 

ジョーレンはブラスター・ライフルを構え、後ろ歩きでゆっくり後退した。

 

「乗り込んだ!」

 

ジェルマンの報告を聞くとジョーレンは手に持っていたスイッチを押し、周囲に敷設した地雷を全て爆破させた。

 

爆発の煙と炎で一旦視界が遮られ撤退する余裕が生まれた。

 

ジョーレンも急いでUウィングに乗り込み、コックピットの座席に座った。

 

自動操縦から有人操縦に切り替え、機体を浮上させる。

 

敵の攻撃を全く受けぬまま、ミレニアム・ファルコンとUウィングは次の目標へ向かい始めた。

 

今もなお暗黒と戦う、2人のフォースの申し子を助けるために。

 

 

 

 

同じ頃、黒いロイヤル・ガードとの激闘はまだ続いていた。

 

黒いロイヤル・ガードは先ほどまでとは打って変わってライトセーバー戦や武術を用いた正攻法による戦いを駆使していた。

 

アソーカとレイア、2対1であるにも関わらず黒いロイヤル・ガードはかなり上手く立ち回っている。

 

彼女らと長時間の鍔迫り合いになる回数は減り、むしろ連続した斬撃で2人に攻勢の隙を与えないようにしていた。

 

しかしアソーカはクローン戦争の時から数々の修羅場を潜り抜けてきたこの中で最も戦闘経験があるベテランだ。

 

レイアはまだフォースの技術を学んだばかりだが才能は十分にあり、この先頭の中でも徐々に開花し始めている。

 

アソーカはレイアに目で合図を送り彼女を一旦後ろへ下がらせた。

 

そうはさせるかと黒いロイヤル・ガードはレイアに斬撃を加えようとする。

 

だがアソーカが前に立ちはだかり、斬撃を全て防いだ。

 

白色の光剣が赤い光剣を受け止め、逆に反撃を加えようともう1本の白色の光剣が振り下ろされた。

 

黒いロイヤル・ガードもそう簡単に攻撃を受けるはずもなく、斬撃を受け止め続けた。

 

しかしこれではレイアに対し攻撃を加えることが出来ない。

 

黒いロイヤル・ガードは徐々に防戦一方となり、追い込まれているように感じた。

 

そしてそれは事実であった。

 

後方に下がったレイアが自身の集中力と持てるだけの力を込めてフォースで黒いロイヤル・ガードを押し出した。

 

アソーカの攻撃を防ぐのに精一杯だった黒いロイヤル・ガードはレイアの攻撃をもろに喰らってしまった。

 

フォース・プッシュによるダメージを受け、全身が痛む。

 

しかし間一髪のところで体勢を立て直し、ライトセーバー・パイクの先を地面に押し立てて攻撃を耐え抜いた。

 

おかげで即座に攻勢に転じたアソーカの猛攻にも耐えることが出来た。

 

彼女は何度も2本のライトセーバーで多方向から攻撃を繰り出し、時には蹴りやフォース・プッシュも多用してくる。

 

戦い慣れ、身体の使い方のコツを知っているからかアソーカに疲れの色は全く見えなかった。

 

これも彼女の師の教え方が良かったからなのだろうか。

 

アソーカの凄まじい継戦能力は精神面でも黒いロイヤル・ガードを押しつつあった。

 

「貴方も尋問官の1人?それともまた別のフォース使い?」

 

アソーカは相手のライトセーバーを押し付け、黒いロイヤル・ガードに問い詰めた。

 

聞いた話によればかつて存在していた尋問官の何人かは彼女の手によって抹殺されたらしい。

 

以前聞いた報告によればマラコアでの戦闘で死亡したらしいがやはり嘘だったようだ。

 

彼女の師を報告した者は数年経ち、皇帝を殺した。

 

その成れの果てがこの地だ。

 

黒いロイヤル・ガードは再びくる攻撃を察知し事前にその場を離れた。

 

再びレイアのフォース・プッシュが繰り出され辺りの草木が揺れ動く。

 

今度は事前に回避していたこともありダメージはなかった。

 

フォース・ジャンプで空中に一瞬だけ浮かんだ黒いロイヤル・ガードはレイアに狙いを定めた。

 

当然そのことはレイアも察知している。

 

彼女はライトセーバーを構え、防御の態勢を取る。

 

レイアは確かにフォースの強い者だ。

 

しかしフォースを用いた戦闘は自分の方が経験の差があると黒いロイヤル・ガードは考えていた。

 

加速をつけ、一突きで防御を崩そうと画策する。

 

レイアも流石にこのままでは危険だと思ったのか苦しい表情が顔に出ていた。

 

これでトドメだと黒いロイヤル・ガードは全力をかけた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()”。

 

黒いロイヤル・ガードに突如レーザー弾が放たれ、遠くに吹き飛ばされた。

 

辛うじて防御する事は出来たが攻撃の算段は完全に崩れた。

 

一方レイアはレーザー弾の放たれた方向に目を寄せた。

 

やはり彼はここぞという時にやってくれる男だ。

 

レイアは戦闘中にも関わらず微笑みを溢した。

 

上空には円盤状のスターシップが1機、伝説のミレニアム・ファルコンだ。

 

9年前のヤヴィンの時のように、今度はレイアの命を救った。

 

ファルコン号からハンの声が聞こえる。

 

『迎えに来たぜ、少し遅れたかもな!』

 

レイアはその声に安心感を覚えた。

 

アソーカはライトセーバーを構え、レイアに「先に行って」と伝えた。

 

レイアは小さく頷き、ファルコン号に向かって走った。

 

ファルコンもハッチを開いてギリギリまで地表に近づいた。

 

ファルコン号がレイアを回収している間にジェルマンとジョーレンが乗り込むUウィングが黒いロイヤル・ガードを攻撃した。

 

度重なるレーザー弾を躱し、攻撃のタイミングを探る。

 

その間にレイアはファルコン号に飛び乗った。

 

レイアを回収したファルコン号はそのまま上空に舞い上がり惑星から離脱する。

 

『フルクラム、こちらで援護します。今のうちに退避を』

 

ジェルマンはアソーカのコムリンクに通信を繋いだ。

 

しかしアソーカは「いえ、貴方達も先に脱出しなさい」と答えた。

 

「もう暫くここで食い止める」

 

アソーカの応答にジェルマンはまだ納得がいっていないようだった。

 

しかしクローン戦争中のことを知っているジョーレンは『了解した』と告げ、ファルコン号に追随した。

 

Uウィングが飛び去るのを見送り、アソーカは目の前にいるダークサイドの使い手と対峙した。

 

ライトセーバーを構え、一呼吸置くことなく走り出す。

 

黒いロイヤル・ガードはライトセーバー・パイクを構え、再び防御の態勢を取った。

 

一見すれば全く隙のない防御の構え。

 

しかしこの場合相手が悪過ぎた。

 

アソーカはまず一撃目の斬撃でライトセーバー・パイクを跳ね除け、二撃目の斬撃でヘルメットを切り裂いた。

 

黒いロイヤル・ガードのヘルメットが砕け、ほんの少しだけヘルメットの中の素顔に傷を付ける。

 

アソーカは勢いを殺さずにそのまま走り抜けた。

 

黒いロイヤル・ガードは体勢が崩れ、顔の傷を押さえている為動けない。

 

アソーカがフォースを用いて高く飛んだ瞬間、彼女の背後を飛行していたT-6シャトルがアソーカを回収した。

 

黒いロイヤル・ガードが対応を取る間もなくT-6シャトルは飛び去り、ファルコン号やUウィングの後に続いた。

 

3機のスターシップは大気圏内を抜け、早々にハイパースペースへ突入した。

 

不思議なことに軌道上に控えているはずの帝国軍部隊の攻撃は特に受けなかった。

 

だがおかげでウェイファインダーを、勝利に必要な鍵を手に入れることが出来た。

 

アソーカは操縦席に座り、ようやく一息つくことが出来た。

 

戦い慣れているとはいえ戦闘は心と身体を消耗させる。

 

「どうだったかね、完璧なタイミングだったと思うが」

 

T-6シャトルを操縦するアーキテクト・ドロイド、ヒュイヤンは彼女に尋ねた。

 

ヒュイヤンとアソーカは古くからの友人であり彼の言う通りタイミングもバッチリだった。

 

「ええ、おかげで助かった」

 

ハイパースペースの中でアソーカはふと思いに耽った。

 

この戦いのこと、あの敵のこと、未知領域にいるシスの軍勢のこと、戦争の後の未来のことを。

 

「彼の言う通り地図は手に入れた。後は…」

 

向かうだけ、アソーカの中では結論が出ていた。

 

銀河の夜明けはもう少しだ。

 

 

つづく




お久しぶりですEitoku Inobeです!!

だいぶ期間が空いてしまいましたが久々のナチ帝国です!

なんとか今年中にはたくさん進めたいですね!!

そいでは!!(そそくさとどこかへ逃亡を図る音)
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