第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「私が立っているところが私の国、我々の故郷だ」
-旧時代のある将軍の言葉より抜粋-


ディゴールの呼び声

-シス・エターナル本領 未知領域 惑星エクセゴル-

ジストン級から1機のデルタ級T-3cシャトルが発艦し、地表の発着場に向かった。

 

シャトルの中にはマラ・ジェイドとルークが乗客として席に座っていた。

 

チス・アセンダンシーでの訓練を終えた2人はエクセゴルに帰還後、即座に玉座の間に呼び出された。

 

2人は若干の不安を持ちながら到着を待った。

 

「皇帝は僕達の戦った敵に興味があるようだ」

 

「どうしてそんなことが分かるの?」

 

ふと口を開いたルークにマラ・ジェイドは真意を尋ねた。

 

ルークは少し考えた後、「フォースが告げているんだ」と答えた。

 

2人はフォース感受者でフォースの力を知覚してからかなりの月日が経つ。

 

それでもフォースを完全に理解したものではなかった。

 

「あの艦……“ヴァニッシャー”で光に包まれた時、光の中でビジョンを見た。未来の出来事のようなビジョンを…」

 

「君も見たのか」

 

マラ・ジェイドは小さく頷いた。

 

あの光の中で見た光景、あれは確かにフォースが見せようとするものだった。

 

「私の両親のことも見た。会ったことはないけど何故かはっきりと分かった」

 

「僕もビジョンを見たよ。僕も未来の出来事だった、しかも色々な世界の」

 

一体どの未来がこれから進む正しい未来なのかは分からなかった。

 

出来うることなら彼女が隣にいたあの平和な未来に突き進みたいのだが。

 

「…1つはね、貴方と一緒にいるビジョンを見た。平和で……穏やかで……今まで感じたことのないような優しさに包まれていた」

 

きっとそれはルークも見たビジョンであろう。

 

自分の父やレイアとは違う、また新たな家族と触れ合っているような気分だった。

 

「フォースのビジョンは断片的に、判別がつかないように見せてくる」

 

「でも私は……あの未来の先に行きたい」

 

彼女には確固たる意志があった。

 

同時に迷いも。

 

マラ・ジェイドはまだ自身の主とオースについて悩んでいるようだった。

 

「君なら行ける」、ルークは彼女の背中を押した。

 

しかしマラ・ジェイドはまだ心の迷いが取れずにいた。

 

まだ自身の師がシスの暗黒卿であることを負い目に感じているのだろう。

 

「君は悪に仕えているだけの存在で君自身にはまだ善と光の心が残っている。それに暗黒が心を閉ざしていたとしても人は必ず選択して変われる」

 

ルークの真剣な瞳がマラ・ジェイドの心に突き刺さった。

 

多くの時代から追放された人々が彼に新たなる希望を見たのも理解出来る。

 

彼には善の心があり、人を信じ、決して諦めなかった。

 

だから奇跡も起こった。

 

暗黒に堕ちた者が最期に光に転じ、自身の運命を果たした。

 

ルークはその瞬間を間近で見た。

 

だから言えるのだ。

 

「かつて父がそうだったように」

 

 

 

 

-ファースト・オーダー領 未知領域 イラム星系 惑星イラム軌道上 インペリアルⅡl級“アルティメイタム”-

アルティメイタム”の艦内には他のインペリアル級同様会議室が存在し、ホロ通信を用いたリモート会議も可能であった。

 

会議室にはスローネ大提督が他のまだ残っている帝国軍残存勢力、つまり帝国軍閥の指導者達と会議を開いていた。

 

現状第三帝国がこの銀河系で最も広大な領域を支配する国家である。

 

そしてディープ・コアや著名な13人の帝国軍閥の指導者達は2年前に親衛隊の手によって暗殺された。

 

またその他にも惑星アンシオンを巡る戦いで軍閥指導者の1人と見なされていたドウル元帥が死んだ。

 

つい最近もアノート宙域の軍閥指導者であったユーブリック・アデルハード総督の軍閥に裏切り者が発生し大きく弱体化した。

 

無論そうでない者もいる。

 

惑星モラックに勢力圏を維持していたヴァリン・ヘス将軍の軍閥は第三帝国に下り、親衛隊の一部となった。

 

他にも様々な末路を辿った指導者達がいるがエンドア戦後に誕生した帝国軍閥はそれこそ星の数存在する為一つ一つ追っていくのは難しい。

 

皇帝の死を聞いた帝国の者達は次は自分こそが皇帝となるべきだ、今の境遇を打破するチャンスだと愚かにも野心を燃え上がらせた。

 

その結果、総戦力では新共和国に対しても圧倒的に優位にあった帝国は数だけは多くその身は小さい存在に成り下がった。

 

各宙域に、各星系に、各惑星に、或いは各都市に軍閥が発生し互いに利権と力を求めて争い始めた。

 

故ウィルハフ・ターキンが彼の編み出したドクトリンの中で共和国の崩壊の要因とほぼ同じように帝国は崩壊した。

 

帝国崩壊の最大の要因は戦争ではなく、激しい利己主義によるものだった。

 

結果新共和国に敗北し指導者達は永久に勝利を失った。

 

そんな中でもまだ軍閥指導者達は生き残りと更なる繁栄を求めて銀河に存在し続けている。

 

『我が勢力の中にも親第三帝国派が台頭し始めている。これは由々しき事態だ』

 

会議に参加しているある軍閥の指導者はそのように直近の状況を報告した。

 

彼は帝国軍の軍服を改造しており肩にショルダーストラップの肩章、詰襟には独自の紋章がつけられている。

 

『離反や反乱の兆しはないが総統万歳(ハイル・ヒューラー)だのあのちょび髭の演説を真似るだと忌々しい』

 

『早めに対処せねば君もやがでアデルハード総督と同じ目に遭うぞ。もしかすると第三帝国の差金かもしれん』

 

別の軍将も例を挙げて危機感を持つよう促した。

 

彼は比較的スタンダードな軍服のままであったがわざとらしく帝国名誉勲章をぶら下げていた。

 

「だがその心配もなくなる、もう間も無くシス・エターナル艦隊が再び現れ帝国は再編される。お前達も今のうちに帰属の準備を整えておくのだ」

 

スローネ大提督は第三帝国への不安感を口にする軍将達にそう促した。

 

以前までこの会議はブレンドル・ハックス将軍が代理として出席していた。

 

スローネ大提督は未知領域でファースト・オーダーの戦力を拡大する傍ら、銀河系に残る軍将達とコンタクトを取っていた。

 

特に第三帝国が台頭してからはより一層コンタクトの回数が強まり、代理のハックス将軍からスローネ大提督に入れ替わったのはファースト・オーダーが第三帝国と同盟を結んでからであった。

 

第三帝国との同盟は少なくとも一旦は各軍閥と第三帝国の直接戦闘を止める結果を齎した。

 

そしてシス・エターナルの帰還と帝国の再編、この二つは何の因果関係もないように見えて実は深く繋がりがある。

 

この会議の場にいる彼ら彼女らもシス・エターナルの指導者の存在を知ったらすぐに頭を下げるだろう。

 

だが未だシス・エターナルに関して無知な軍将達は怪訝な顔をしていた。

 

『確かにシス・エターナルの強さは理解出来たがあれだけで奴らの軍門に他の軍将達が下るとは考えにくい。第一、私とてまだ抵抗がある』

 

スキンヘッドで中佐の階級を持つ軍将はそう言い切った。

 

彼の率いている勢力ではとてもではないがシス・エターナル軍の小艦隊にすら勝てそうにない。

 

だが他の軍閥ではそうではないところもある。

 

未だインペリアル級を二十四隻、宙域艦隊のまま保持しているところだってあるのだ。

 

『あの第三帝国と共に並ぶことは出来ない!奴らは兄上の仇なのだぞ!!』

 

そう怒りと憎しみに満ちた表情で大声を上げたのはコシュ・テラドク、かつて軍将の1人だったトルーテン・テラドク提督の弟だ。

 

兄のトルーテンは2年前の帝国再編の大粛清と呼ばれる13人の軍将の大規模粛清時に暗殺された。

 

一部の戦力と指導者を失ったテラドク軍閥は大きく後退し厳しい立場に追いやられていた。

 

その為この中にいる軍将達の中で最も第三帝国に恨みを抱いていることは間違い無いだろう。

 

「テラドク、気持ちは分かるがこれも帝国のためだ。それにこのまま戦ったとてお前の戦力では第三帝国を真正面から打ち破るのはもう不可能だろう?」

 

テラドク提督は黙るしかなくなった。

 

第三帝国がテラドク提督の軍閥を明確な敵対勢力だと認識して軍を派遣すればひとたまりもないだろう。

 

ここにいる軍将達も単独で第三帝国と戦って勝てる戦力を持つ者は誰1人としていない。

 

皆前内戦の際に他の軍将や新共和国との戦いで戦力を無駄に浪費してしまった。

 

『ああ、その前に一つよろしいか?大提督殿』

 

会議に参加していた1人の軍将、というべきか国家指導者がスローネ大提督に尋ねた。

 

彼はルーダ・アザル自称永世統領、元クゥイベロン宙域のモフであり現在も宙域の指導者の地位に就いている。

 

彼は厳密に言えば帝国軍閥の指導者ではない。

 

何故なら彼はあくまで旧帝国から離れた新な独立国家の指導者であり、もう帝国とは関係ないという建前でいるからだ。

 

新共和国との対立意志もない以上、新共和国も手出し出来ず今日まで生き残っていた。

 

別に彼だけが特別なわけではない。

 

モフアザルのように自身の権力を守る為に帝国の看板を取り下げた者は多くいる。

 

そのうちの幾人かは第三帝国に下り、そうでない者は未だ中立を維持していた。

 

「何かな、モフアザル」

 

スローネ大提督はあくまで彼を旧帝国の呼び方で呼んだ。

 

モフアザルも特に反論するわけでもなく話を続けた。

 

『シス・エターナルについてだ。確かにあの軍隊が持つ火砲は強力だ、だがそれだけで再び一つの帝国として纏るとは思えない。特に第三帝国も折角自分が築き上げた新たな秩序を別の誰かに牛耳られるのだとしたらいい気分ではないはずだ』

 

他の軍将達は俯き、考える仕草を見せた。

 

ただ1人、テラドク提督はモフアザルに賛同し『必ず陰謀を差し向けてくる』と脅しを付け加えた。

 

「無論、シス・エターナルによる統一はただ力一本で成されるものではない。我々の本当の主人が帰還される。皇帝陛下がお戻りなられるのだ」

 

この場にいる軍将達にとって今に発言は十分な衝撃を与えた。

 

本来は言うかどうか迷っていた情報だ。

 

あのエクセゴルの奥地にいる指導者は間違いなくシーヴ・パルパティーンその人だった。

 

何故皇帝が生きているのか、何故死後から5年近く何もしなかったのかは今でも分からない。

 

スローネ大提督だって会った瞬間は疑いの疑念を持った。

 

しかしあの石造の玉座に佇む男は間違いなく皇帝だった。

 

『皇帝陛下がご帰還されるのか…?』

 

『そもそも生きていらしたこと自体我々にとっては……』

 

「皆の気持ちは理解出来る、私も最初は同じだった。だがこれは事実だ、陛下は未知領域から大軍を連れて再び我らを導いて下さる」

 

そして恐らくシンダー作戦と終末司令はその為にあった。

 

皇帝亡き帝国に現れるであろう裏切り者とそれを打ち倒さんとする者達に出来る限りの打撃を与え、いつでも帰還出来るように。

 

きっとラックスであればこのことを全て知っていたのだろう。

 

奴は最期の最後まで皇帝に忠実であった。

 

『しかしだね大提督、私はこの目で存在を確認しない限り君の主張を受け入れられないのだよ。むしろ偽者の可能性の方が高い』

 

モフアザルはスローネ大提督の主張を認めようとはしなかった。

 

だが彼のいうことも一理ある。

 

もし仮に、『実は死んだ皇帝や皇太子が生きていて自分達を導いて下さる』と言われたら信じる気になるだろうか。

 

はっきり言って狂人の戯言としか思わないだろう。

 

彼らのような軍閥の指導者なら尚更だ。

 

スローネ大提督の言うことは本当であってもそれが真実として受け入れられるかはまた別の問題であった。

 

『現に陛下の子息を騙る詐欺師が昔居たではないか。担ぎ上げたヒッサ共々死んだがな』

 

「私の目を疑っているのか」

 

スローネ大提督は強めの口調でモフアザルに詰めた。

 

モフアザルはいつもと変わらぬ表情で『そうではない、ただ信じられもしないということだ』と返した。

 

まだスローネ大提督だからモフアザルも他の軍将達も比較的穏やかな反応をしている。

 

もしこれがハックス将軍辺りだったら「あの狂人ついにイカれやがったか」としか思われないだろう。

 

『またいつ現れるか分からない連中の話をするよりも、現実的な話をするべきでだろう』

 

横から割り込んできた1人の軍将がスローネ大提督に反論した。

 

軍将の声は無気力と冷徹を混ぜ合わせたような声音で一見するとただの中堅官僚に見えるがただならぬ相手である事が声で分かる。

 

彼の名はギデオン、多くの人間は彼をモフギデオンと呼んだ。

 

彼は元々帝国保安局の出身者であり、マンダロアの大粛清を取り行った。

 

そのせいかモフギデオンは新共和国からは戦争犯罪の容疑で罪に問われており、マンダロリアン達からは大いに恨まれていた。

 

それでも彼は軍閥の指導者として自身の権力と配下の勢力を日々維持していた。

 

「また戦力の譲渡の話かモフギデオン。貴様のような敵の多い者こそ、私の話をよく聞くべきだ。自身の命を繋げておきたいのならばな」

 

『途中からだが状況はよく分かった大提督。私もモフアザルの意見に賛同する』

 

スローネ大提督はなんとなくそう言うだろうと若干の諦めがあった。

 

モフギデオンは疑心の塊のような男だ。

 

大提督としての権限を用いてもそう簡単に彼がスローネ大提督の言葉を信じるはずもなかった。

 

『確かに、大提督の言う通り帰ってくるかもしれない。だがシス・エターナル艦隊は銀河系から突如姿を消して以来音沙汰はない。つまり暫くは彼らには頼れないということだ』

 

軍将達は顔を顰め頷いた。

 

彼ら彼女らは下手すればレジスタンスなんかよりも明日を生き延びるのに必死だ。

 

手持ちの兵力は帝国時代よりも少なく、第三帝国の侵略を受ければ瞬く間に消し飛ばされてしまう。

 

自身の統治領域に住まう住民の暴動だって気がかりだ。

 

第三帝国という理解不能な大国がいる中で、彼ら彼女らのような弱小軍閥は大きな後ろ盾が必要であった。

 

『シス・エターナルがいない以上、我らが生き残る為にはまず目先のことについて話すべきだろう。だからこの話はここで終いだ』

 

『ところでモフギデオン、君が前言っていた“()()()()()()”についてだが…確保は順調に行っているのか?』

 

話が完全にすり替わってしまった。

 

モフギデオンと彼が抱えている科学者の研究の一環の為、ある特殊な“()()”の確保が話題となっていた。

 

その“()()”の能力を知れば第三帝国も全力を上げて確保しに来る、その前にこちらで保護する必要がある、モフギデオンはそう訴えていた。

 

『“()()”は賞金稼ぎのマンダロリアンの手の内にある。もう間も無く確保するだろう』

 

『気をつけた方がいい、第三帝国もそうだがレジスタンスも嗅ぎ回り始めてると聞く』

 

『十分注意は払っている』

 

スローネ大提督は全てを達観したかのような表情で彼らの会話を聞いていた。

 

大提督はかつてターキン総督の乗艦“エグゼキュートリクス”に乗っていたことがある。

 

ターキン総督が考案したターキン・ドクトリン、今ならその内容が痛いほど分かるとスローネ大提督は感じていた。

 

今の彼ら彼女らはターキン・ドクトリンで言うところ共和国崩壊の最大の要因だ。

 

激しい利己主義の集団、一見すれば愚かしい存在の集まり。

 

だが再び共に帝国を再建しようと志す数少ない同法に変わり無かった。

 

例えそれが決して叶わぬ道だとしても。

 

 

 

 

ー惑星ウェイランド軌道上 インペリアル級“ドクトル・ロイス・ヘムロック”ー

ヴォーレンハイト少将に与えられたこのインペリアル級“ドクトル・ロイス・ヘムロック”は通常のインペリアル級とはある大きな違いを艦内に持っていた。

 

このスター・デストロイヤーは通常の艦よりも大規模な研究ラボを備えており、ヴォーレンハイト少将がウェイランドの研究所を離れてもミディ=クロリアンの研究が出来るようになっていた。

 

そして現在この”ドクトル・ロイス・ヘムロック”には第三帝国中の科学者や親衛隊の上級将校、COMPNOR幹部が集まっていた。

 

「クローニングは、我々にとって重要なものです。かつて銀河共和国がクローン兵を用いて戦争に勝利したように、クローンの存在は軍事的に第三帝国を多大なる発展に導きます」

 

ある会議室の中で大手を振って熱弁を振るうこの研究者の名前はヨセフ・メンジェル博士。

 

医師であり、生物学を研究している。

 

彼の研究する生物学にはクローニングも含まれており、特に彼は双子について多大な興味を持っていた。

 

「我々は失われたクローニング技術の復活とその発展を当面の目標としており、ヴォーレンハイト博士の研究と合わせ最終的にはミディ=クロリアン値の高いクローンを製造、または人工的に生成出来るようになるでしょう」

 

メンジェル博士はかなり自信に溢れた表情だった。

 

会場にいる参加者達、特に親衛隊将校はメンジェル博士の発言を受けてかなり興味を惹かれたようだ。

 

何人かは食いつくように博士の話を聞いていた。

 

ヴォーレンハイト少将も仕事仲間の話を黙って聞いていた。

 

博士が話す研究成果の中にはトレードチップ計画が目指すところの成果も含まれている。

 

尤も、計画の進歩はお世辞にも良いとは言えるものではないのだが。

 

すると彼の前の席の親衛隊将校が何かを話しているのが聞こえた。

 

「クローニングといえば……パーシング博士の行方はつかめたのか?」

 

パーシング、ヴォーレンハイト少将はその懐かしい名前を聞いて感慨深くなった。

 

ペン・パーシング、旧帝国時代にクローニングの研究をしていた科学者でヴォーレンハイト少将の同僚でもあった。

 

彼は昔一度だけヴォーレンハイト少将に科学者となった理由を話してくれた。

 

幼い頃に亡くなった母なった。

 

もしクローニングによる臓器移植を可能だったならば母は死なずに済んだのではなかったのか。

 

だからクローニングの研究に彼は没頭した。

 

二度と母のような悲劇を生み出さないために。

 

「噂ではモフギデオンの勢力にいるそうだ……ギデオンめ、厄介なことを」

 

帝国の科学者など全員戦犯として刑務所に送られたものと思っていた。

 

しかし実際はそうではなかったようだ。

 

「居場所は保安局が突き止めた……後は保護するだけだ。彼にはもう少し第三帝国で働いてもらわねばな」

 

ヴォーレンハイト少将は元同僚に降りかかる災難を想像し同情した。

 

「それで博士、君が我々に望むことはなんだ?更なる予算、もしくは機材か?」

 

会議にホログラムで参加しているCOMPNOR委員の1人がメンジェル博士に尋ねた。

 

「当然それらもありますが、一番は被検体です。根本的に我々には被検体が足りません」

 

メンジェル博士は親衛隊将校、特に強制収容所に勤めている親衛隊将校達に向けて話した。

 

彼らの研究に用いられる被検体の出所は強制収容所にいるミディ=クロリアン値の高いと判断された者達である。

 

収容所での検査はまだミディ=クロリアン検査技術が未成熟の為効率良く被検体の徴収が行われているわけではなかった。

 

「現状の2倍とは言いません、1.5、いや1.2倍の被検体があれば研究は確実に進展するでしょう」

 

ウェイランド研究所に送られてくる被検体はアカデミーで集められた人間種の子供たちと収容所から集められた子供たちの両方がいる。

 

無論人間種の子供たちを人体実験で無碍にはできない。

 

集められた彼ら彼女らは貴重なフォース感受者として戦闘教育を受け、第三帝国にとって忠実な兵士へと育て上げられる。

 

実験の対象はあくまで非人間、エイリアン種族のフォース感受者だ。

 

「こちらでも対処する。我が収容所では総統閣下認可の下、専門のフォース感受者検査チームが設立された。やがて他の収容所でも同様のチームが増えるだろう」

 

惑星アウシュの親衛隊を管轄するヴァリン・ヘス親衛隊大将ははっきりとそう断言した。

 

彼は比較的最近親衛隊に入ったばかりにも関わらず頭角を現していた。

 

「ありがとうございます大将閣下。最後に私が申しあげておきたいことは、シス・アーリア主義に基づく我々のクローニング研究は必ず我々の民族に良き未来を齎すということです」

 

「以上で発表を終わります」とメンジェル博士は頭を下げ、会場の面々からは拍手が飛び交った。

 

博士は随分満足そうな表情だった。

 

ヴォーレンハイト少将も彼の内心が分からないわけではない、自分の研究が他者に認められることはうれしいものだ。

 

仮に多くの人の命を犠牲にしたものでも。

 

「博士の研究発表、好評でしたね」

 

ヴォーレンハイト少将の隣に座っていた研究員の1人がそう呟いた。

 

既に少将らウェイランド研究所チームの発表は終わっており、結果は大体メンジェル博士の発表と同じものであった。

 

親衛隊、COMPNORは共にクローニングとミディ=クロリアンの培養研究を支援してくれている。

 

成果が出れば国防軍も歩兵育成に取り入れたいと研究成果の反映を望むようになるだろう。

 

尤も成功すればの話だが。

 

「悠長に会議の場で褒められたことを喜んでいる場合ではないぞ。我々の価値は研究を成功させることだけにある。失敗すれば全て無意味だ」

 

惑星一つを研究所として与えられ、先輩の名前が入った自分専用のスター・デストロイヤーを送られた。

 

だがこれは裏を返せば責任を果たせという意思の表れだろう。

 

失敗すれば全てを失う、あの子達の未来も。

 

「それにあちらの方々の研究の方が余程お偉い方の目に留まりそうだ」

 

ヴォーレンハイト少将はメンジェル博士の次に壇上に立った人物を見てそう呟いた。

 

「現在我々の研究チームは新型のハイパードライブと燃料の開発に注力しています」

 

今度の発表は生物学とは打って変わって工学、特にハイパードライブの話になった。

 

男は研究チームのリーダーとして堂々と発表を続けた。

 

「我々の目標はより高性能で長期間の航行に耐えられるエンジンとハイパードライブを開発することにあります」

 

男の名はウェルン・フォンブラン、コルサント工科大学を卒業した優秀な工学者である。

 

彼の名前はヴォーレンハイト少将もよく知っていた。

 

同時に彼の本心が単なるハイパードライブの開発にないことも。

 

「従来の艦船のエンジンでは航続距離に限界があり常に補給を受けなければなりません。また重力井戸の影響を受けると強制的にジャンプアウトしてしまう」

 

重力井戸を人工的に発生させるインターディクション・フィールドの技術は銀河内戦の敗戦と帝国の崩壊によって新共和国側にも流れてしまった。

 

その結果、マジノ線での戦いで新共和国軍も重力井戸発生装置を用いて軍集団の動きを止めた。

 

マジノ線に張り付いた部隊は全て陽動の為大きな問題はなかったのだがこのままでは厄介だ。

 

現在のレジスタンスが重力井戸発生装置を用いてゲリラ的に軍の移動を妨害されれば軍の作戦行動に支障をきたす。

 

「我々の新型ハイパードライブは重力井戸の影響を軽減しジャンプアウトせずに航行を続ける事が出来ます」

 

モニターにフォンブラン博士の研究チームの成果が映し出されている。

 

モニターを見て特に宇宙軍の将校達が食いついて見ていた。

 

彼らにとってみれば得体の知れない生体研究よりも艦船に関わる技術の方が興味をそそられるだろう。

 

「一度のジャンプによる航行距離と航行時間の短縮も従来型に比べて格段に進んでいます。このまま研究を重ねれば我々はやがてこの銀河の外に出ることも可能になるでしょう」

 

その瞬間フォンブラン博士はまるで子どものように目を輝かせていた。

 

彼にとって第三帝国は彼の夢を叶えるための道具でしかないのだろう。

 

この広い銀河系を離れ外宇宙へ進出するという恐らく研究の根本的な原動力の追求のための道具。

 

人によってはこの悪魔のような帝国も自分の夢や利益追求のための道具でしかない。

 

尤もヴォーレンハイト少将だって人のことを言えた達ではない。

 

これまで自身の研究の為、生命の追求のため多くの痛みを他者に与えててきた。

 

ふと己の罪を思い起こしヴォーレンハイト少将は口を紡いだ。

 

反抗することもせず再び研究を続けるという新たな罪をまた一つ犯しながら。

 

 

 

 

ーレジスタンス領 イリーニウム星系 惑星ディカー―

ディカーに帰投したミレニアム・ファルコン号とUウィング、シールズ・ワンはディカーの基地職員に温かく迎えられた。

 

手に入れたウェイファインダーはすぐに情報部の解析班に持ち込まれ、調査が進んだ。

 

その間にジェルマンとジョーレンは司令室に呼ばれた。

 

「よくやってくれた、君達のお陰で最後のキーパーツが揃った、これで我々は反撃に移ることが出来る」

 

2人は顔を見合わせた。

 

反撃、恐らくそれはシス・エターナルに対しての反撃だろう。

 

しかし今現在、シス・エターナル軍は銀河の表舞台から撤退し居場所が分からない。

 

つまるところ、攻撃しようがないのだ。

 

「大臣、反撃というのは…」

 

ジョーレンは答えが返ってこないことを承知でディゴール大臣に尋ねた。

 

大臣は口髭を撫でながら少し待って口を開いた。

 

「…君達第一線の情報部将校になら話してもいいだろう。こちらを見てくれ」

 

ホロテーブルには参謀たちが立てたであろう作戦計画が文章で並んでいた。

 

2人はざっと計画に目を通す。

 

見たところこの作戦はある戦略目標への大規模奇襲作戦のようだった。

 

「君達を含めた我々の情報網によってシス・エターナル軍の拠点を掴むことに成功した」

 

テーブルを操作しある惑星のホログラムを出現させた。

 

「場所は未知領域、惑星エクセゴル。ここにシス・エターナルの総戦力が集まっている」

 

惑星の周りに敵軍の推定戦力が展開し惑星を取り囲んでいる。

 

エクセゴルなんて今まで聞いたことのない惑星だ。

 

しかも位置する場所が未知領域とは。

 

その名の通り未知領域はまだ分からないことだらけで危険なことも多いだろう。

 

「我々は同盟国及び友軍と共にこのエクセゴルへ奇襲攻撃を仕掛け、敵指導部の排除、敵艦隊の殲滅しシス・エターナルの脅威を完全に破砕する」

 

ジェルマンはディゴール大臣の言葉を聞いて固唾を飲んだ。

 

ついに、ようやく負け続けのレジスタンスが反撃し勝利を掴む希望を見つけたかもしれないのだ。

 

内側から戦意と効用が湧き出てくる。

 

ジョーレンも半分は同じ気持であったがもう半分ではより現実主義的な考えを巡らせていた。

 

その敵の位置、一体どうやって掴んだのだろうか。

 

シス・エターナルの到来以降、2人は何度か第三帝国内に潜入した。

 

下士官兵や尉官、部隊長クラスの佐官がエクセゴルの存在を知らないのは理解できる。

 

しかし第三帝国の将官級も知っているような雰囲気ではなかった。

 

知っているとすればコルサントにいる第三帝国の本当に中枢にいる人物たちだろう。

 

尤も尋ねたところで答えてくれるかどうかはまた別の話だが。

 

「同盟国ということは新分離主義連合もでありますか」

 

「ああ、セルヴェント外相の労力の賜物だろう。だが最後の一押しとしては少し足りない。そこで君達、特にジルディール大尉に1つ頼みたい」

 

「私…ですか?」

 

ディゴール大臣は小さく頷いた。

 

何度も彼と共に戦ってきたジョーレンはディゴール大臣が求めている任務の内容を察した。

 

「情報部の特殊部隊が第三帝国のIGV-55を鹵獲する。この艦の通信能力の高さは君もよく知っているだろう」

 

「はい、我が軍の独自開発中のEEW(Espionage Electronic Warfare))コルベットも未だにこれと同じ性能に達していないようですが」

 

IGV-55監視船、ゴザンティ級を改造したこの諜報船は索敵、電子戦、諜報、通信性能の向上において大いに役に立つ。

 

船体に取り付けられた巨大なレドームと大量の通信センサーがこれらの能力を維持しているのだ。

 

戦闘能力においては通常のゴザンティ級よりも劣っているかもしれないがその他の能力ではスター・デストロイヤーすら上回っている。

 

「IGV-55を経由して各地の抵抗勢力にも呼び掛けたい。今回の作戦、スターシップだけでなく1機でも多くのスターファイターが必要だ」

 

「それで私の任務は一体…」

 

「君の任務は長距離通信のサポートだ。第三帝国にこのことが悟られれば必ず行動を仕掛けてくるはずだ。通信をカモフラージュし呼び掛けを秘密裏の内に行いたい」

 

ジェルマンは間髪言わずに「分かりました」と任務を了承した。

 

やれるかどうかではなくもうやるしかないのだ。

 

彼の覚悟はホズニアン・プライムにいた頃とは大きく違う。

 

ジョーレンはまた彼のことを誇らしく感じていた。

 

「バスチル少佐、君にはイセノ戦と同じ部隊を編成、指揮しエクセゴルでの地上戦闘に備えよ」

 

「直ちに訓練を行わせます」

 

やはり仕事はまだまだあるようだ。

 

ジョーレンはディゴール大臣に敬礼し任務を了承した。

 

あの懐かしい戦友たちと再び戦えるのは個人的には嬉しい。

 

ジョーレンもまた、1人の兵士である。

 

それも戦場でしか生き方を知らない兵士だ。

 

「作戦開始まで少し時間がある。それまで休んでおけ」

 

2人は敬礼し司令室を後にした。

 

戦いの始まりまでもう一刻の猶予もなかった。

 

 

 

 

-シス・エターナル本領 未知領域 惑星エクセゴル 玉座の間-

エクセゴルには今、シス・エターナルが持つ全ての戦力が集結していた。

 

スーパーレーザーを搭載したジストン級の無敵艦隊に皇帝の忠誠を尽くすシス・トルーパー軍団。

 

そしてダークサイドを扱うフォースの戦士達。

 

かつてよりだいぶ衰えはしたがそれでも脅威であることに変わり無かった。

 

「父の名前を知っている?」

 

ルークは艦隊司令官のフリューゲルに聞き返した。

 

フリューゲルは自身が率いる艦隊の凶悪性に似合わず優しい笑みで「ええ」と頷いた。

 

実はルークは彼と会うのが初めてであった。

 

最初にエクセゴルに来た時、フリューゲルは艦隊を率いて銀河系へ戻っていたからだ。

 

「クローン戦争の前線にいたらスカイウォーカー将軍の名を知らない人間はいなかったと思いますよ。私も何度か直接目にしましたし」

 

「父は……戦場ではどんな感じでしたか」

 

ルークは思い切ってフリューゲルに尋ねた。

 

確かに父アナキンは常に彼の側にいる。

 

しかし他人から見た父の評価というものはまた違った一面を見せてくれる。

 

それが人生でほんの僅かしか父と触れ合ったことのない若者であれば尚更興味を惹かれるはずだ。

 

「私、こう見ても昔はパイロットでしてね。自分で言うのもなんですが腕は良かったと思います。ですがスカイウォーカー将軍は私を遥かに上回っていたでしょう」

 

フリューゲルはまるで少年のように目を輝かせながら語った。

 

その瞬間だけフリューゲルはクローン戦争に参戦した10代の頃に戻っていた。

 

「一度だけスカイウォーカー将軍と一緒に飛んだことがありますが彼の飛行技術は芸術的で、その中に奇想天外さが混じっていました。若いながらに憧れましたよ」

 

父が優秀なパイロットだったことはアソーカからもレックスからもよく聞かされた。

 

それと同時に時々無茶をやっていたことも。

 

2人とも父の無茶に何度も振り回されたことも。

 

「帝国時代になってジェダイ将軍の名は口に出すのは憚られましたのでもう話すことはないと思っていましたが……正直、尊敬していました」

 

フリューゲルは最後に「ジェダイの中でも特に優れた指揮官でした」と付け加えた。

 

ルークは何処か感慨深そうに話を聞いていた。

 

育ての親であるオーウェン・ラーズもベルー・ホワイトサン・ラーズも当然ながら父アナキンのことは喋ろうとしなかった。

 

勿論2人が離そうとしなかったのも真実を知り、様々なものに触れてきた今なら自分を守るためだったのだなと理解出来る。

 

ルークは2人から家族の愛を受けて育った。

 

父アナキンが心から欲し、他のジェダイ達は一生与えられることのないものだ。

 

「まさかスカイウォーカー将軍に息子がいて、しかも気づけば我々の味方になっているなんて。運命とは分からないものですね」

 

フリューゲルは微笑を浮かべながらルークにそう投げかけた。

 

ルークは心の奥底に少し罪悪感を抱えながらも小さく頷いた。

 

やがて彼らを裏切らなければならない。

 

ルークは一連の会話の中でもフリューゲルが悪人ではないことを感じていた。

 

ただ彼は命令を受け、そこに軍事的合理性があれば成し遂げてしまう。

 

恐らく彼と彼の親族は皆そうしてきたのだろう。

 

何かを守るために、きっと今もそうだ。

 

「スカイウォーカー卿、我が主人がお呼びです」

 

シス信者の1人がルークを呼んだ。

 

ルークは名残惜しそうに頭を下げた。

 

フリューゲルは如何にも人の良さそうな表情で「また話しましょう」と彼を見送った。

 

エクセゴルは常に大気が不安定で青白い空にはけたたましい落雷が響き渡っている。

 

何人ものシス信者がすれ違う度にルークに頭を下げる。

 

彼ら彼女らにしてみればルークはもう次の新たな主人なのだ。

 

かつてこの地に訪れたとある暗黒卿は望まれぬ来訪者として襲撃されたがルークは違った。

 

彼はシスの主人たるシディアスにも認められた人として扱われた。

 

では一体何故か。

 

パルパティーンはかつてエンドアでルークを新たな弟子に迎えることを諦めた。

 

その結果破滅を迎えたパルパティーンが何故再びルークを弟子に迎え入れようとするのか。

 

「我が主、スカイウォーカー卿をお連れしました」

 

シス信者は頭を深々と下げて玉座に佇む老人に報告した。

 

少し、元に戻ったのか、ルークは未だ機器類に繋がれ命を保っている男の様子をそう評した。

 

以前姿を目にした時はもう少し精気が失われた生ける屍のような様相だった。

 

しかし今ではエンドアの時と同じとは行かずともただの高齢の老人と言える程度には回復していた。

 

「下がって良いぞ我が僕」

 

「はい」

 

ルークは玉座の間に足を踏み入れた。

 

既に先客がいた、マラ・ジェイドだ。

 

彼女はシディアスの警護ということで玉座の間に駐在していた。

 

「チスとの交流、ご苦労であった我が優秀な手、そして我が新たな弟子よ」

 

ルークは決してシディアスに頭を下げることはなかった。

 

「其方はいずれ余の代わりとしてシスの全てを引き継ぐのだ、新たな世代を育てるのも良い経験になったであろう」

 

シディアスはにたついた笑みを浮かべその後に「それとも“()()()”と触れ合ったことの方が衝撃だったかな」と付け加えた。

 

ルークもマラ・ジェイドも2人ともその言葉に注目した。

 

ルークは包み隠さずパルパティーンに尋ねた。

 

「あれは一体なんだ、あのような生物は今まで見たことがないしジェダイの文献にも存在しない。そして何より……フォースの効きも悪かった」

 

チスのステーションで戦ったあの生物はフォースの効きが悪かった。

 

本来生物全てにフォースが通っている為効果に差はあれどフォースは様々な方法で効く。

 

しかしあの生物だけは違った、あの生物だけ明確にフォースが効かなかった。

 

まるであの生物にはフォースが通っていないかのように。

 

「フォースとはこの銀河系の生命に流れるもの、理の外から来た者には当然道理は通じない」

 

「ではあの生物は銀河の外からやってきたというのか」

 

「ああ、そうだとも。やがてこの銀河に“()()()()()”尖兵としてな」

 

その瞬間だけパルパティーンから靄が消えたようだった。

 

彼は今までになく饒舌に喋った。

 

「我々が奴らに気付いたのは何十年も前のこと、我々は破滅を回避する為に“()()”を続けてきた。腐ったものを建て直し、新たな力を増やし、そしてこの地に“()()()”を残した」

 

帝国の誕生、銀河の再編、軍備の拡大、そして“()()()()()()”。

 

いずれ外銀河から訪れる破滅の軍団を防ぐ為にはどれも欠けてはならぬものばかりだった。

 

「我々の努力は幾つか実を結ばぬものもあったが……全てではなかった。“()()()()()()()()”」

 

ルークもマラ・ジェイドも初めて聞く内容だった。

 

「其方はいずれこの艦隊を率いて来るべき驚異を排除するであろう、若きスカイウォーカーが新たなシスの主として」

 

「エンドアで言ったことをもう忘れたか、僕はジェダイだシス卿。銀河の脅威に立ち向かうことはあってもシスの道を生きることはない」

 

ルークは嗄れたシス卿に啖呵を切った。

 

彼の決意はエンドアの頃から全く変わっていない。

 

むしろ度重なる暗黒面の誘惑を跳ね除け、彼の心は強くなっている。

 

「なんとでも言うが良い、若きスカイウォーカー。どの道其方の持つ力だけでは余の命を完全に断ち切る事は出来ん。其方が余を亡き者にする為にはもう一つの力が必要だ」

 

シディアスには余裕があった。

 

こんな出来損ないのような身体に魂が収まっていようとまだ死んではいない、そして死ぬ事はないと言う余裕が。

 

彼の周りには数多の先人のシス達が亡霊のように取り憑いている。

 

故に彼の命はまだ現世に繋ぎ止められていた。

 

「其方に最後の試練を与えよう、エクセゴルに古くから伝わる試練の場だ。洞窟の奥底へと入り、力を手にし戻ってくるのだ」

 

シディアスは最後に「必ず其方の望むものが手に入るだろう」と付け加えた。

 

今、シディアスの命令に逆らう訳にはいかない。

 

彼の手元にはまだ“()()()”がいるのだ。

 

ルークは無言でシディアスに背を向け、案内のシス信者の後に続いた。

 

不安そうな表情のマラ・ジェイドに優しい笑みだけを送って。

 

 

 

 

-レジスタンス領 イリーニウム星系 惑星ディカー軌道上 MC80"クレマンソー"-

ディカーの軌道上にはディカー駐留艦隊の全ての艦船が艦列を組んで待機していた。

 

惑星内からは作戦に参加するスターファイター隊が割り振られた母艦に集まりつつある。

 

各艦艇には絶え間なく区画の最終報告と司令部からの報告が飛び交っていた。

 

『第5中隊よりディカー司令部へ、間もなくそちらへジャンプアウトする、受け入れの用意を頼む』

 

「こちら旗艦"クレマンソー"、直ちに準備する。第5中隊及び"ブークリエⅦ"はポイントL3-22に移動し捕虜移送が始まるまで待機せよ」

 

通信士から報告を受け取った"クレマンソー"の将校がブリッジで待機しているディゴール大臣に報告した。

 

「閣下、鹵獲隊が間もなく帰還します」

 

タブレット端末を副官に手渡し、ディゴール大臣は振り返った。

 

大臣は手招きしてまた別の部下を呼び寄せた。

 

「技術班に移動準備を始めろと伝えろ、シャトルには右舷ベイにドッキングするよう命令を出せ」

 

「了解しました」

 

「私は閣僚会議と軍司令官会議に出席するから報告は副官に頼む」

 

「分かりました」

 

ディゴール大臣は副官を引き連れブリッジから降りてホロテーブルへ向かった。

 

ケピ帽を深くかぶり直し、詰襟を伸ばす。

 

レジスタンス軍の軍服は新共和国軍が3年前に変えた軍服をそのまま使っていた。

 

地上軍の将校は灰色、宇宙軍は黒色を基調とした詰襟の軍服で、尉官と佐官はショルダーループの肩章、将官はショルダーストラップの肩章と定められた。

 

軍帽としてケピ帽が採用され、帝国軍や反乱同盟軍時代のシルエットとは大きく変化した。

 

本来は新しい世代の正規軍の姿とデザイナーの期待が込められたが結果的には再び反乱と自由の象徴となった。

 

ディゴール大臣の肩章には少将を表す2つ星がついており、腕章にも同様の2つ星がつけられている。

 

大臣の到着と共にホログラムが起動しレジスタンス政府の大臣たちが現れた。

 

「各地の全参加部隊の準備、完了しました。正規軍部隊は命令があれば全て出撃出来ます」

 

ディゴール大臣は各大臣に報告した。

 

円状のホロテーブルには財務大臣、外務大臣、国務大臣などが参加しており、その中には議長たるレイアもいた。

 

『議長の代理として私はディカーに残り非常時に対処する』

 

国防大臣を除くその他の大臣は皆銀河系に残る。

 

しかしレイアはレジスタンス軍の最高司令官としてエクセゴルへ向かう為、ガー副議長がレイアの代わりに彼女の職務を代行することになった。

 

「軍情報部曰く、第三帝国が大規模な軍事的行動に出る可能性は限りなく低いとのことだ。つまり今がチャンスだ」

 

大臣たちは皆頷き、内心で最期を迎えてもいいよう覚悟を決めた。

 

ここで覚悟を決められない者はもうとっくの昔に死んでいる。

 

『連合軍も戦力の過半数を出してくれるとは思わなかったが』

 

パストル・タルディ財務大臣は新分離主義連合の動きに対して驚きを示した。

 

連合軍は再編された宇宙艦隊の大多数を動員しエクセゴルへの奇襲作戦に参加することを決めた。

 

指揮官はマー・トゥーク提督で参謀長としてカラーニ将軍が指名された。

 

『我々の努力というよりシス・エターナル軍の脅威を完全に潰したいからだろう。バロスの消失は連合にとっても衝撃だった』

 

セルヴェント大臣は連合側の心中を察しながら重く呟いた。

 

今連合軍の第一線に立つ多くの将兵達はオルデランの破滅を目にしている。

 

もし自分の故郷がこうなってしまったらという不安や危機感を漠然とした形だが心の中にあった。

 

そんな力が第三帝国と手を組んだとしたら、それは銀河系に降り注ぐ大いなる厄災となるだろう。

 

阻止出来るなら、何としても阻止する必要があった。

 

『共に戦う同志が多いことは良いことです。ではガー副議長、そして大臣の皆さん、銀河系のことは頼みました』

 

レイアは彼女の前にいる同志達に表舞台での未来を託した。

 

大臣達は大きく頷き、ガー副議長が『フォースと共にあらんことを』と最後に祈りの言葉を送った。

 

ホロテーブルはレイアだけを残して別のホログラムを映し出した。

 

アクバー元帥、ライカン将軍、ヴィアタッグ将軍、シンドゥーラ将軍、クラッケン将軍、タロン将軍、ランドといったレジスタンス軍の高級将校達が集まっていた。

 

更に参加部隊として同盟国たる新分離主義連合の将官達もいた。

 

『議長、モン・カラ、ヤヴィン4、キャッシーク、べスピン、ボサウイ、ディカーなどレジスタンスの主要惑星艦隊は全艦戦闘配置完了しています』

 

アクバー元帥は各軍司令官を代表してレイアに報告した。

 

レジスタンス軍はバロス、ドーラ、ロザルと敗北が続いていたものの士気旺盛、戦意に溢れていた。

 

かつてレイアがレジスタンス宣言するまでの新共和国残党軍は士気が低く、戦意は常に低下していた。

 

しかしイセノ、ナブーといった一連の勝利とレイアの呼びかけが第三帝国と立ち向かう将兵達の孤独感を和らげ戦う心を取り戻させた。

 

『連合軍、第一連合艦隊も戦闘準備は完了している。そちらが動くなら我々も動くとしよう』

 

連合軍司令官、マー・トゥーク提督は今回の作戦に参加する同盟国軍の代表として出席していた。

 

彼の隣にはリック・オーリー一等空将もナブー義勇軍隊長として参加している。

 

『では作戦説明に入ります』

 

ホロテーブルの真ん中には艦隊を模した図形が一面に展開された。

 

青はレジスタンスと連合軍ら同盟国の義勇軍、赤はシス。エターナル。

 

『わが軍はエクセゴルへのジャンプアウトと同時に包囲陣形を展開、三方向から同時攻撃を行い、敵艦隊を殲滅します』

 

赤色の図形が1つずつ消失していく。

 

実際に行われる作戦でここまで楽に敵を撃破することは出来ない。

 

だが三方向からの集中砲火であれば流石のスター・デストロイヤーでも撃破出来るだろう。

 

『艦隊中央はモン・カラ方面軍が、艦隊右翼はヤヴィン、キャッシーク、ボサウイの方面軍が担当し、艦隊左翼は連合軍及び同盟国軍が担当します』

 

「べスピンとディカー艦隊は後方の火力支援と予備選力に回されます」

 

『分かりました、地上の上陸部隊の方はどうなっていますか』

 

レイアは地上軍の将軍達に状況を尋ねた。

 

会議に出席する1人の将軍が手を挙げ『その件は私が説明します』と声を上げた。

 

『ではタイベン将軍どうぞ』

 

タイベン将軍は新共和国地上軍の将軍でマジノ線での撤退戦を成功させ今日まで生きていた。

 

彼は非常にタフな将軍でマジノ線に展開する地上軍部隊をほぼ全て無傷で撤退させたのはタイベン将軍の尽力あってのことであった。

 

『上陸戦力は充足率100%の10個師団を投入し機動運用出来る戦力として1個特殊作戦旅団も加えます』

 

エクセゴル上陸軍として編成された10個師団の指揮はタイベン将軍が取るが、特殊作戦旅団の指揮はメイディン将軍が取ることになっていた。

 

今回の作戦は強襲を目的とするため機動力に優れた師団を取り揃えた。

 

『上陸部隊は砲撃地点の確保と敵指揮拠点の制圧を目指します。砲撃地点を確保した砲兵部隊は地上より対艦攻撃を開始、艦隊の支援を行います』

 

地上軍が保有する一部の重ターボレーザー砲は主力艦に対しても十分な攻撃能力がある。

 

エクセゴルは敵の本拠点、シス・エターナル艦隊としても下手に攻撃は出来ないだろう。

 

ましてやスーパーレーザーが降ってくる事はあり得ない。

 

それだけでも大きなアドバンテージである。

 

『今回の作戦は敵艦隊の撃滅と指導部の殺害にある。繰り返しになるが、作戦目標が達成された場合我々はエクセゴルに長居せず即座に撤退する』

 

エクセゴルの永続的な占領はハナから想定されていなかった。

 

まずエクセゴルのような不安定な航路しか存在しない飛び地を占領しておくメリットは低い上に労力的に難しかった。

 

シス・エターナルという超兵器を保有する軍事戦力のみを無力化できればそれで万々歳であり、その為には艦隊を用いた強襲作戦が有効であった。

 

『艦隊の左翼方面はあなた方連合軍に託されている、任せましたぞ』

 

アクバー元帥はトゥーク提督に念を押して頼んだ。

 

クローン戦争中、彼らが直接対決したことはないがそれでも共和国と連合で敵同士だった。

 

彼らの間に若干の不安はあるもののプロの軍人として割り切っている。

 

『任せてもらおう、我々とてあの脅威は放置したくはない』

 

彼らは第三帝国がやっているような主従の同盟関係ではなく、対等な協力である。

 

その為指揮権の統合では時に難を示すこともあるだろうが少なくともシスの超兵器を排除しなければならないという点では一致していた。

 

『ありがとうございます。ディゴール大臣、本土に残る友軍の状況はどうなっていますか』

 

レイアはディゴール大臣に尋ねた。

 

レジスタンス軍は今回の作戦の為にありとあらゆる兵力をかき集めた。

 

だが銀河系に第三帝国やその他の敵対勢力がいる以上、全ての戦力をぶつけることは出来ない。

 

どうしても守備隊として残る者達がいた。

 

「地上軍は各惑星、衛星に展開し要塞陣地を構築。宇宙軍は防衛線を今のところ維持していますが最悪の場合、ゲリラ的な機動戦に移行する手はずは整っています」

 

銀河系に残る部隊は最低限第三帝国の侵攻を阻止出来ればそれで良かった。

 

『分かりました。では各員、戦場で』

 

短いレイアの一言が全員の気を引き締めた。

 

ホログラムは消え、ブリッジにはディゴール大臣だけが残された。

 

彼は深いため息をつき、人生を振り返る。

 

思えば軍人として恵まれた人生を歩んできたとは到底言えない日々であった。

 

クローン戦争には参戦した、だがほかの将校達の様に駆け上がるような昇進は出来なかった。

 

そもそも帝国軍の空気がディゴール大臣と合っていなかったのだ。

 

彼は自然と反乱同盟軍の秘密の協力者となった。

 

そして今やレジスタンス政府の国防大臣、レジスタンス軍の軍政全てを取り仕切る立場だ。

 

帝国時代、うだつの上がらない一端の中級将校の私が今の私を見たらどう思うだろうか。

 

ディゴール大臣は人生を振り返りながら今の立場を重く感じていた。

 

「閣下、間もなく調整が完了します。スピーチのご準備を」

 

「了解した……」

 

国防相はケピ帽を深くかぶり直し、部下たちを引き連れてスピーチ用のブリーフィング室へ向かった。

 

彼の言葉で自由を求める多くの者達が眠りから目を覚ますのだ。

 

 

 

 

鹵獲されたのはIGV-55監視船。

 

巨大なレドームと多数のアンテナが特徴的なゴザンティ級の改良品だ。

 

その諜報能力と索敵能力は高いが中身はゴザンティ級である。

 

CR90コルベットから強制乗船した特殊部隊によってブリッジは制圧されディカーまで連れて行かれた。

 

「各コンソールは事前に割り振った通りだ。落ち着いて作業せよ」

 

メルホーン技術大佐は部下の技術士官や情報将校達を宥めた。

 

彼は今回の長距離通信の責任者である。

 

彼のチームがいなければまずディゴール大臣が声明を発表することすら叶わない。

 

「バルモーラ中継所、エッセレス観測施設にそれぞれ接続しました。各惑星の通信センターに回線広げます」

 

ジェルマンは優れたハッキング技術を駆使し、帝国の通信施設を制圧した。

 

巧妙にカモフラージュを加えながら通信可能領域を広げていく。

 

尤も、これらのカモフラージュにも限界があった。

 

「大佐、カターダの帝国軍通信基地から通信が入りました。どうしますか」

 

「アルゼマー中尉、応答して時間を稼げ」

 

メルホーン大佐に命じられてヘッドセットを被った1人の将校が応答に出た。

 

名はアルゼマーといい、レジスタンス軍では中尉の階級を持っていた。

 

『監視船LZ-55、応答せよ。監視船LZ-55、何があった』

 

「こちら監視船LZ-55、どうした」

 

アルゼマー中尉は汗一つかかず、帝国軍の通信士と会話を始めた。

 

『定期連絡が長らく返ってこなかった。一体何があった』

 

「レジスタンス軍の諜報船の影響範囲内だった。本艦では対処が難しい為、一旦退避していた」

 

『了解した、では異常はないな。定期コードを送信せよ』

 

「こちらに損害はない、今コード送信するからしばらく待ってくれ」

 

アルゼマー中尉はレジスタンス側が偽装したコードを送信した。

 

彼は帝国軍の基本的な会話や通信に精通している。

 

何を隠そう2年前までアルゼマー中尉は第三帝国の国防軍将校だった。

 

当時はまだ少尉の階級を持った若い下級将校であり、新共和国との戦いにも参戦した。

 

その過程でアルゼマー国防軍少尉は第三帝国が行った残虐行為を目にし、自身の在り方に疑問を持つようになった。

 

本当にこのまま軍に残り続けることが正しいことなのか。

 

彼は亡命を決意し幾人かの同志と共にレジスタンスへ亡命した。

 

『コード受信、問題ないな。LZ-55、定期連絡は以上だ。航海の無事を祈る』

 

「了解、司令部。通信終了」

 

アルゼマー中尉は通信を切り、深くため息をついた。

 

いくら元帝国軍人とはいえ敵と話しているのだから当然緊張する。

 

メルホーン大佐は「よくやった」と若き中尉を労い、作戦全体の状況に目を寄せた。

 

「各通信センターへの接続率、90%に到達」

 

「今のところ第三帝国からの妨害や逆探知は検査出来ません」

 

技術班のカモフラージュ技術が高いのか将又帝国の諜報機関が能力不足なだけなのか、帝国に悟られることはなかった。

 

ジェルマンは残りの地方に点在する通信センターに接続を開始した。

 

中にはもう全く使われていない通信塔なども存在する。

 

だが少しでも仲間が増えるのであれば全ての通信施設を繋げ可能性を高める。

 

1人でも多くの仲間が必要なのだ。

 

悪魔のようなシスの軍団と戦うためには。

 

「トラスク……ネヴァロの広域通信に……接続完了…!銀河全域に通信できます!」

 

ジェルマンは振り返りメルホーン大佐に断言した。

 

隣にジョーレンはいないが彼がいたら微笑んでいたことだろう。

 

事実メルホーン大佐は喜びを隠しきれずにいた。

 

「よし!”クレマンソー”、こちらの準備は完了した。そちらとのリンク接続を求む」

 

『”クレマンソー”了解した、よくやってくれた』

 

クレマンソー”との通信は途切れ、張り詰めていた空気は緩んだ。

 

互いの仕事ぶりを称え合い、この難しい仕事を乗り切ったことを祝した。

 

たった一隻のゴザンティ級から全銀河系への通信を可能としたのだ。

 

「では大佐、お先に」

 

ジェルマンは1人席を立ち、メルホーン大佐に一言声をかけた。

 

彼は今から戦いに行かねばならない。

 

それも今後の銀河の行く末を左右する一大決戦へだ。

 

「ああ、フォースと共にあれ」

 

メルホーン大佐の祈りにジェルマンは無言の敬礼を返し、その場を後にした。

 

駆け足で船内を移動し、ドッキングベイに留まっているUウィングへ乗り込んだ。

 

「少し待った?」

 

ジェルマンは急いで副操縦席に座り、隣で操縦桿を握る相棒に声をかけた。

 

「いや、大体時間通りだ。よし野郎ども、飛ばすぞ」

 

ジョーレンは振り返り、Uウィングに乗っている特殊部隊員達に声をかけた。

 

ヘンディー上級曹長らイセノの面々だ。

 

ゴザンティ級とのドッキングを解除し、艦隊の定位置につく。

 

隣にはコーラン少佐率いるソード中隊の面々がいた。

 

ジェルマンは中隊の1機にハンドサインで頼んだぞと合図を送った。

 

ソード2、ヴィジレコフ上級中尉はジェルマンに任せてくれとハンドサインを返した。

 

「さてと、大臣閣下の演説を聞いてやるとしますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は自由レジスタンス政府国防大臣、シャール・ディゴール。この声明を聞いている皆さん、どうか私の演説を最後まで聞いた上で判断してく欲しい。我々と共にこの銀河の果て共に戦うかを」

 

シャール・ディゴールが行ったこの日の演説はレジスタンス宣言と並ぶ重大さを持った。

 

彼が後に獲得する政治権力のことを考えれば今日の演説の方が影響力は高いだろう。

 

やがて訪れる未来の秩序で彼が手にする”()”のことを考えれば猶更だ。

 

「先日、惑星バロスが我がレジスタンス軍の同胞の命と共に破壊された。惑星が破壊されるのは9年前のオルデランの戦い以来の惨劇だ」

 

この銀河系にカイバー・クリスタルを用いた超兵器が誕生してから完全に破壊された惑星はオルデランとこのバロスのみである。

 

確かにそれ以外にもスーパーレーザーを食らって被害を受けた惑星や衛星はある。

 

だが完全なる惑星の破壊はオルデランとバロスだけであった。

 

「シス・エターナルはオルデランの惨劇を繰り返し、そしてオルデランの惨劇を銀河中に広げようとしている。第三帝国の悪魔のような支配秩序に協調し、少しでも抵抗を企てる者達をオルデランと同じように星ごと破壊しようとその血まみれの手を伸ばしつつある」

 

クレマンソー”の艦長やディゴール大臣の副官達は大臣の演説をカメラの奥で見守っていた。

 

彼らの奥には顔の見えない眠れる戦士達が自分の声を聴いている。

 

そう思う度にディゴール大臣の身が引き締まった。

 

「今、自分の隣にいる者、遠く離れた仲間や恋人、家族のことを思い返してみてほしい。今、自身がその足で立っている星のことを思い返してみてほしい。そして最後に、そんな自分自身がいる星が、仲間や愛する者達がいる星が破壊され全てが失われることを」

 

人はどんなに宇宙に出ようと、星から星へ移動しようと陸地から離れることは出来ない。

 

星々が持つ大地の上には計り知れない安住感がある。

 

そんな大地が、自分や愛する人ごとなくなってしまうかもしれないのだ。

 

その恐怖は例えようがない。

 

ディゴール大臣の言葉を聞いてレジスタンス軍の一部の将兵も故郷を思い出し再び覚悟を固めた。

 

特にレイアやライカン将軍のようなオルデランの生き残り達は思う所があっただろう。

 

「シス・エターナルの艦隊は一時的に姿を消した、だがこれは一時的なものでしかない。奴らはやがて帰ってくるのだ、今度こそすべての戦力を連れて銀河系に破滅を齎すために帰ってくるのだ!そうなってはもう手遅れになってしまう…我々は再び多くの惨劇に見舞われることになる。オルデランやバロスだけでは済まないのだ」

 

この演説を聞いている者達が一体何を考えているのかこの時点でディゴール大臣は完全に把握出来る訳ではなかった。

 

彼はジェダイでもシスでもないしましてや遠く離れた場所にいる人々の心の中を覗くことは出来ない。

 

それでもディゴール大臣には勝算があった。

 

「だが皆さん、どうか絶望しないで欲しい、もう破滅は避けられないのだと諦めないで頂きたい。我々にはまだ希望がある、シス・エターナルを倒すチャンスがある」

 

大臣は続けて作戦の内容も交えて話を続けた。

 

もうここまでくれば後戻りは出来ない。

 

「我々レジスタンスはシス・エターナルの本拠地を特定することに成功した。連中の戦力はこの地点に結集し、奇襲を受けることは全く考えていない。奇襲には絶好のチャンスだ」

 

銀河中の酒場や反第三帝国勢力のアジトで多くの人々が彼の言葉に耳を傾けている。

 

ディゴール大臣は抽象的な希望だけではなく具体的な事例を挙げていった。

 

例えばスカリフ。

 

「9年前、スカリフで1つの反乱軍部隊が行動を起こした。デス・スターの設計図を奪取し破壊する為に銀河系で誰よりも勇気のある者達が立ち上がったのだ。そして反乱軍が後に続き、自由の為の反抗がその日から始まったのだ」

 

ディゴール大臣がスカリフで散ったローグ・ワン部隊のことを知ったのは銀河内戦後、地上軍次官として軍の資料整理を整備している頃だった。

 

ローグ・ワンの記録については残っていても新共和国政府によって一部脚色されている点が多々あった。

 

何せ当時の同盟政府は対デス・スターに対し非戦を決断したのにも関わらず、ローグ・ワンとラダス提督の独断を止められずなし崩し的に戦いが始まった。

 

その事実は後の新共和国政府にと取ってみれば都合が悪く、”()()”せざるを得ないとされた。

 

その為ディゴール大臣も正確にローグ・ワンのことを知っている訳ではない。

 

ただ彼女らが自由の為に一番最初に立ち上がった戦士達であることは疑いようがなかった。

 

「我々はもうかつての歴史は繰り返さない。我々レジスタンス軍は全軍を率いてシス・エターナルを奇襲する!我々全員で自由の為の戦いを、自由の狼煙を上げるのだ!」

 

我々はもう誰か1人を自由の為の犠牲にすることはない。

 

我々は我々で決断し、我々全員で自由の為に戦場へ行く。

 

全員は生きて帰れなくても我々は自由の為に戦う。

 

その為の抵抗軍(Resistance)なのだから。

 

「そしてこの放送を聞いている銀河系の皆さん、もし共に戦う力があるのなら我々の列に加わってほしい!シス・エターナルとの決戦に加わってほしい!我々が自らの手で破滅という恐怖の鎖を引きちぎる為に、共に戦ってほしい!」

 

大臣は続けた。

 

「もし仮に持てる船が僅かな武装のついたものであっても我々は構わない。我々には1でも多くの共に戦う仲間が必要なのだ!我々はあなた方を必要としている」

 

その言葉に嘘偽りはなかった。

 

だから大臣は訴えかけた。

 

レジスタンス国防大臣、シャール・ディゴールとして。

 

「私はかつて、レジスタンス宣言で希望があると、新共和国は孤独ではないと言った。ではレジスタンスはどうか?生まれ変わったレジスタンスは孤独なのか?それは否である!」

 

その力強い断言はレジスタンスの将兵達にも勇気を与えた。

 

人は1人で戦う意思を維持し続けるのは難しい。

 

誰か共に戦う戦友がいてこそ戦意を維持し続けられるのだ。

 

「レジスタンスも孤独ではない!我々には新分離主義連合の同志がいる、ナブーの同志がいる!そして今この放送を聞いてくれている皆さんがいる!第三帝国やシス・エターナルの支配と戦う多くの仲間がいる!だから皆さんの力が必要だ!銀河系の団結がレジスタンスを強くする。我々を勝利へと導いてくれる!」

 

演説はいよいよ終わりに近づいていた。

 

ディゴール大臣は最後に戦場の場所と思いを語る。

 

「私シャール・ディゴールも共に戦場に立つ、レジスタンスや同盟国の将兵と肩を並べ、運命を共にする。そして戦場で立ち上がった勇気ある皆さんを迎え入れよう。攻撃目標は未知領域惑星エクセゴル、立ち上がる皆さんは我々レジスタンス軍が必ず導く。だから安心してついてきてほしい。そして共に勝利の先まで突き進もう。我々に不可能という文字はない。では戦友諸君、戦場で会おう」

 

レジスタンス、反撃の狼煙がここに上がった。

 

ハイパースペースへ何千、何万という軍艦が一つの目的地を目指して突入した。

 

シス・エターナル軍とレジスタンス軍。

 

本来遠い未来の対決が今ここに始まる。

 

銀河の夜明け作戦、この大戦争の命運は大きく変わろうとしていた。

 

 

つづく




お久しぶりです!アメリカ150円のEITOKUMSです!

本当にお久しぶりのナチ帝国、果たしていつ完結するんでしょうか

このままだと一生涯掛かっても終わらない気がしてきました

そうなった場合はクローンEITOKUSがきっとものを書き始めるでしょう()

ちなみにこの時代はアコライトが明日終わればもう1話残すところという結果です

みんなも諏訪部ジェダイを応援しましょうね、わしはジュディシアル・フォースが見たいのですが

それではまた〜
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