第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「私を認めてくださったのがパルトン閣下であったように私が最高の機甲科指揮官と認めたのはパルトン閣下だけだった」
-ウェリントン・アイブルームス連邦地上軍大将-


ケッセルの戦い

-ケッセル王国領 アウター・リム・テリトリー ケッセル宙域 ケッセル星系 惑星ケッセル ケッセンドラ野営地-

ケッセル防衛の為に惑星内のあちこちに防御陣地と野営地、そして各部隊の指揮所が設置されケッセルは戦時体制へと移行した。

 

このケッセンドラもかつては最大の拘置所だったものを義勇兵部隊の野営地に改装したものだ。

 

あちこちにテントとプレハブの宿舎が建設され、多くの義勇兵達が指揮所で与えられた識別番号とIDチップの確認を行なっている。

 

IDチップの確認を済ませた義勇兵達は各々装備を受領しに行ったり、トレーニングをしたり、テント内で休んだりベンチで食事を摂ったりとある程度自由に過ごしていた。

 

当然その中にはジェルマンとジョーレンもいた。

 

2人は配給所から昼食のプレートを受け取り、ベンチに座って一応同じ分隊員という扱いの仲間達と食事を共にした。

 

「えっと、あんたらの名前なんて言うんだっけ?俺銃とか武器のことは覚えられるんだが人の名前は点でダメでよ」

 

2人の反対側の席に座ったイクトッチイの傭兵が名前を尋ねた。

 

このイクトッチイの名前はベンネ・デパーソンというらしく、惑星サイリリアの移民2世らしい。

 

サイリリアの外人部隊に入隊し除隊した後2、3つほど職を転々としたがどれも上手くいかず、結局傭兵になったそうだ。

 

「俺はタイドゥ、こっちはルースコット、まあこいつはルーシーとでも呼んでやれ」

 

「よろしくな」

 

「ああ、よろしく」

 

ベンネはティックティック・シチューを食べる手を止め、ジェルマンが差し出してきた手をしっかりと握り締めた。

 

同じようにジョーレンの手もしっかりと握り締め、2人もプレートの食事を口に運んだ。

 

配給された昼食は主食がスペース・ワッフル2枚、主菜はロースト・ヌーナ、副菜がルイカのサラダで汁物はティックティック・シチューだった。

 

飲み物はただの水か茶かブルーミルクかを選べるようになっていた。

 

「どうだ、ここの飯まあまあ行けるだろ?」

 

ベンネの隣に座った人間種の男、サイネス・カムは3人に話しかけた。

 

彼は惑星カターダ出身で親はカターダの政治家であったそうだが失脚して没落、食うに困ったサイネスは傭兵になったそうだ。

 

彼の隣にはアンバランのドイス・サイトスが同じようにトレイを持って座った。

 

2人は義勇兵の公募が始まった時、真っ先に志願した傭兵であった。

 

その為ケッセルでの生活や食事には慣れている。

 

「ああ、兵隊の飯にしちゃあいい方だ。飲食やるにしては微妙だけどね」

 

ロースト・ヌーナを1枚齧りながらジェルマンは味の感想を述べた。

 

軍用レーションに比べればまだ美味しい方だし普通の人でも難なく食えるだろう。

 

ただ肉が硬いのと若干パサついているのが気になるが。

 

「でもこの飯も後数十時間で食えなくなるのかって思うと辛いぜ」

 

シチューにつけたワッフルを口に運びながらベンネがぼやく。

 

最悪、もう一生この食事にありつけないかもしれないのだ。

 

「仕方ねえよ、俺たちそれで給料貰ってんだから」

 

「ああ、それにいいじゃねぇか。あのお嬢様が言ってた通り、ここを切り抜ければ俺達大英雄だ。あのケッセルとパイクに一生の借りが作れる」

 

ジェルマンの隣にもう1人傭兵が座った。

 

ティブリン出身のイシ・ティブの傭兵、アルメト・ウェークスだ。

 

用を足してから配給を取りに行った為、彼だけ少し遅れた。

 

「まあな」

 

「きっと燃料給油し放題だぜ?俺たち」

 

分隊員達は軽いジョークに全員で笑った。

 

ジェルマンとジョーレンも同じように笑っていたが内心では完全に受け入れ切っていなかった。

 

特にあのクラリッサの演説、多くの将兵はあの演説によって士気が上がったらしいが2人はそうではなかった。

 

やはり対第三帝国の為とはいえスパイとして潜り込んだからだろうか。

 

彼女の言葉の危険な香りと理屈を理解出来ても受け入れるつもりはなかった。

 

「そういや2人の出身を聞いてなかったな、飯ついでに聞こうじゃないか」

 

「でもあんまり暗い話はやめてくれよ?」

 

分隊員から話を振られてジェルマンは「ああ、分かったよ」と了承した。

 

意外にも分隊員達とはすぐに打ち解けられた。

 

その点はこの分隊の仲間が皆プロフェッショナルだからだろうか。

 

軽い模擬訓練でもレジスタンス軍特殊部隊員ほどではないにしても悪くない連携だった。

 

「僕の生まれは…よくは覚えてないんだが一応ホズニアン・プライムってことになってる。まあ殆ど過ごしたことはないんだけどね」

 

「俺は生まれだけだとラクサスだな、小さい頃はラクサスで過ごしてそれ以降は星々を転々とって感じだな」

 

2人ともある意味で嘘は言っていない。

 

少なくともジェルマンが将校教育を終えて仕事をしていた星はホズニアン・プライムだったし、ジョーレンが生まれた星はラクサスであった。

 

しかし生まれてからその後に至るまでは聞かれてもいないし真実を言うつもりはなかった。

 

「なるほどな、じゃああのUウィングはホズニアンで買ったのか?」

 

サイネスがふと尋ねた。

 

彼としてはちょっとした好奇心故聞いたことであり、その後も気にせずルイカのサラダとロースト・ヌーナを一緒にして食べていた。

 

「いや、別の星で手に入れたものだ、んで機体の一部はこいつが改造した。レジスタンスとかが使ってるUウィングよりよっぽど便利だぜ?」

 

「はあそいつはすげぇな」

 

アルメトは感心しながらシチューを一気飲みする。

 

彼が一番遅くに席に着いたのにもうプレートの料理が半分なくなっていた。

 

どうもこのイシ・ティブは相当早食いらしい。

 

尤もそれはジェルマンとジョーレンも同じで彼らも既にスペース・ワッフルを食べ切り、残りはルイカのサラダ少しとロースト・ヌーナが1枚程度だった。

 

「Uウィングなんてありがてぇじゃねぇか、中にはクローン戦争中のV-19とかZ-96持ってきたやつもいるらしいぜ?」

 

「それどこか無改造のAT-TEまで引っ張り出してきた奴もいるって、さっきドイスと見に行ったがアレが使えるとは到底思えないなぁ、なあ?」

 

「ああ、液漏れしてて関節の軋んでた」

 

静かにブルーミルクを飲むドイスはそう感想を述べた。

 

彼はこの愉快な分隊の中では物静かな方で基本的には仲間と会話を交わすことは少なかった。

 

反面彼は観察眼に優れており、周囲をよく見渡して分隊に的確なアドバイスを提供してくれる頼れる仲間だ。

 

ふとジョーレンは反乱軍時代に自分が率いていた部隊の面々を思い出した。

 

彼らも共に食事を囲む仲間達と同じで愉快な良い兵士達だった。

 

殆どが戦死し、生き残った者はだいぶ少なくなってしまったが。

 

「タイドゥとルースコットはいるか?」

 

最後のロースト・ヌーナを口に入れた瞬間、別の分隊に配属されている義勇兵が声をかけてきた。

 

彼の階級は義勇軍伍長であり、義勇軍第359歩兵大隊の小隊伝令を務めていた。

 

2人は立ち上がり、敬礼する。

 

「ゼセップ中隊長がお呼びだ、俺について来い」

 

ジャケットや軍帽など手近な荷物を持って伍長についていく。

 

その時ドイスだけが最後まで2人を見つめていた。

 

ジェルマンとジョーレンは伍長に連れられ、宿舎の裏側まで行った。

 

基本的この時間帯に宿舎にいる奴は寝ているか酒を飲んでいるかで裏側まで来る人も聞き耳を立てる人もいなかった。

 

念の為周囲を確認し、伍長が口を開く。

 

「…クラッケン将軍の命令です、帝国軍襲来前にまず一度最終報告を提示せよとのこと」

 

伍長はレジスタンス軍情報部のスパイであった。

 

2人とも彼の手の動きを見てなんとなく察していた。

 

伍長は敬礼する際に3本の指を太ももに翳して2人に見せていた。

 

これは情報部が仲間に自身の存在を知らせる時の合図であり、これを見た2人は伍長が同じように潜入中の情報部スパイという確証を持った。

 

「分かった、今編纂中だから後5時間後くらいには送信すると伝えろ」

 

「了解、それとお2人の配属は空中機動部隊で間違いありませんね?」

 

「ああ、第1義勇空中強襲大隊のB中隊第1小隊だ」

 

ジョーレンは内心で寄せ集めの集団だがなと付け加えた。

 

実際には輸送機を持ち込んだ義勇兵を中心に構成した部隊でレジスタンス地上軍の空中機動部隊のような戦闘は難しい。

 

しかも殆どの輸送機が個人所有のもので整備性の良さなどある訳がないし性能もまちまちだった。

 

それでも1個大隊を編成出来るほどの義勇兵が集まっているのは凄いことなのだが。

 

「司令部から先程各中隊にと配布された部隊展開図です。義勇兵は基本的に二級、三級の防衛戦に回されてますが空中強襲大隊だけは戦線の穴埋めですのでどこに配属されるか分かりません。お気をつけてください」

 

伍長は地図のコピーを2人に手渡した。

 

ふとジェルマンは気になったことを伍長に尋ねる。

 

「この義勇兵の隊だけ大分前線に配置されているようだけど」

 

1つだけ、第2義勇兵戦闘団という旅団戦闘団規模の部隊が前線のかなり近い所に配置されていた。

 

部隊のマークは機甲部隊、つまりウォーカーや戦車で武装した突撃部隊だ。

 

「…その義勇兵部隊、通常の義勇兵ではありません。恐らく”正規軍の類”かと」

 

「どこの?」

 

「エリアドゥ」

 

その一言だけでどこの軍か2人はすぐに分かった。

 

驚いた表情のままジョーレンが皮肉を呟く。

 

「条約脱退した瞬間にこれか、南アウター・リムがコアの忠臣だった時代はもう終わったな」

 

「どういう経緯かまだ分かりませんので事実をそのままクラッケン将軍に報告します」

 

「ありがとう、それじゃあそっちも頑張れよ」

 

「はい、少佐と上級大尉もお気をつけて」

 

伍長と敬礼しジェルマンとジョーレンはその場から堂々と離れた。

 

地図のコピーをポケットにしまい、ベンチの方へ戻って行った。

 

彼らとて油断出来ないのだ。

 

この戦いがどういう結末を迎えるかはまだ決まっていないのだから。

 

 

 

 

 

-ケッセル星系 ケッセル・ラン内-

ハイパースペース・ジャンプした親衛隊の侵攻艦隊は予定通りの地点に全艦艇が無事にジャンプアウトした。

 

この結果にブレッツ大佐は一先ず安堵し、艦隊はケッセル本星へ向けて進撃を開始した。

 

インペリアル級を先頭に防空網の穴を埋めるようにアークワイテンズ級が艦列を組んだ。

 

艦隊はこの空間で出せるだけの最大船速でケッセルへ向かった。

 

可能な限り素早く部隊を動かし素早く相手より先に事を起こす。

 

親衛隊宇宙軍の強さを世に知らしめる為に。

 

「センサーに小惑星及び機雷確認出来ず、艦隊の行動範囲に危険物は見当たりません」

 

艦隊の友軍艦と協力してセンサーの範囲を広げ、より広範囲を確認し前進した。

 

この侵攻艦隊は第906FF小艦隊と第903FF小艦隊の2個小艦隊と第283FF機動部隊の1個機動部隊によって構成されている主力艦隊である。

 

本来主力艦隊の構成はインペリアル級二十四隻、大凡4個小艦隊であった。

 

つまり今回の侵攻艦隊は通常の半個艦隊程度の戦力しかない。

 

それでもケッセルのような1惑星を制圧するには十分過ぎる戦力であった。

 

ケッセル・ランのような閉所では機雷や小惑星の妨害要素が張り巡らされている可能性があり、艦隊内に緊張が走っていた。

 

「些細な影にも注意しろ、敵が何か仕掛けてくるかもしれん」

 

「了解」

 

機雷、例えば大型のサイズミック・チャージなどであればインペリアル級でも被害を被るほどの打撃を与えられる。

 

しかもケッセル・ランのような場所ではより効力が上がる。

 

無論防衛側のケッセル宇宙軍もその事は重々承知の上。

 

その為ケッセル宇宙軍が仕掛けた機雷はある細工が施されていた。

 

「中将、哨戒艦からの報告です。大型輸送船舶の破片裏に機雷を確認したとのこと」

 

「船舶の破片群映像に出します」

 

ブリッジのモニターに船舶の破片が映し出され、先行させたレイダー級コルベットからの映像もモニターに映された。

 

通常の爆発型の機雷が5個、サイズミック・チャージ型の機雷が4個あった。

 

ヴェルケンダール中将は直ちに命令を出した。

 

「下手に爆発させるのは前衛艦に被害が出る、イオン砲で無力化せよ!後続の補助艦艇が後で除去する」

 

「了解」

 

インペリアル級の戦艦イオン砲が機雷原に照準を合わせ一斉に砲を放つ。

 

水色の砲弾が着弾するなり周囲にイオン・ダメージを与え無力化していく。

 

艦隊の一斉射が終わる頃には周辺は無力化されていた。

 

「よし、規定量以上のイオン砲を撃ち込んだんだ、これで機雷は無力化されたはずだ。全艦前進せよ!」

 

停止していた侵攻艦隊が再び動き出す。

 

もう爆発することのない機雷原を易々と通過し、一行はケッセルへ向けて直進するはずだった。

 

突然無から放たれた1発のプロトン魚雷が全てを狂わせた。

 

「3時の方向よりプロトン魚雷接近!」

 

前衛のインペリアル級”レヘムサ”のセンサーが魚雷を捉えた。

 

すぐに艦長が「迎撃用意を!」と叫ぶもののもう手遅れであった。

 

プロトン魚雷は艦列の合間を縫って本来無力化されたはずの機雷原に命中する。

 

その瞬間、艦長は全てを悟った。

 

「全出力をシールドに回せ!!」

 

その叫び声と共に魚雷の爆発が機雷原に引火し誘爆を引き起こした。

 

爆風とサイズミック・チャージの波状攻撃が艦隊に襲い掛かる。

 

サイズミック・チャージの波状攻撃が反対側の機雷原にも誘爆し同様の攻撃が右側からも訪れた。

 

爆風とサイズミック・チャージにより艦隊は大混乱に陥った。

 

「”レヘムサ”、”ソードアイ”、”パーシュート”小破!アークワイテンズ級”ACC-504”、”ACC-518”、”AAC-553”大破!」

 

「”ACC-552”より救難要請が出ています!」

 

トラキュレント”のブリッジでは悲鳴のような警報音と被害報告が鳴り止まなかった。

 

ヴェルケンダール中将は一気に焦り、顔を強張らせた。

 

それでも幸いだったのは後方の揚陸艦隊に被害がなかったことと、主力艦のダメージは少なかったことだ。

 

それでも少なくないアークワイテンズ級が大破しもう持ちそうになかった。

 

「大破した艦艇乗組員は直ちに退艦し回収は”テーティス”に回収させろ!こうなった以上敵地へ急ぐしかない!」

 

「了解!」

 

爆発するアークワイテンズ級から次々と脱出ポッドが放たれ回収用のインペリアル級へ飛行する。

 

その間に無事な艦隊の前衛と主力はケッセルへ向けて前進した。

 

トラキュレント”のブリッジでは参謀達が何故今の事態が起こったかを話し合っていた。

 

「そもそもあの攻撃はどこから飛んできた…?」

 

「本艦からは視覚とはいえ前衛最左翼の艦と先行偵察艦であれば見えたはず……」

 

「まさか……ステルス・シップか…?」

 

その一言を呟いたのは艦隊司令部付参謀のデューゲル中佐だった。

 

勿論彼の考察に他の参謀達はあり得ないと言った表情だ。

 

ケッセル王国軍が自前でステルス・シップを建造したという情報も購入したという情報もなかった。

 

ので本来ならば否定される可能性だが、彼の一言を聞いてヴェルケンダール中将はある一つの可能性に辿り着いた。

 

「…いや、ステルス・シップを持った艦隊を有する国家はある」

 

しかもステルス・シップを艦隊単位で保有している国。

 

今や第三帝国とは険悪な空気の連邦国家。

 

「大セスウェナ連邦だ…!あそこの国が義勇兵という形で派兵した可能性は十分にある…!」

 

「まさか…!」

 

「いやしかしステルス・シップを広範囲に展開出来る戦力を持っているのは国防軍、我が親衛隊か大セスウェナ連邦宇宙軍くらいです」

 

「となれば一体何隻の艦が送られているんだ…?」

 

少なくとも最後に報告された情報では大セスウェナ連邦内の主力艦隊は動いていない。

 

尤もそれが小型艦やステルス・シップまでそうであったかは不明だ。

 

であれば一体何隻の艦がケッセル側に入っている、地上軍は、航空戦力はどうか。

 

考えを張り巡らせていくうちに本来数的優位に立っていたはずの相手が次第に膨れ上がっていく。

 

もしかするとこの戦い、相当シビアなものになるのではとヴェルケンダール中将は不安を募らせ始めた。

 

それでも今更引き下がることは出来ない。

 

勝利か死による忠誠か、親衛隊にはその二択しかないのだ。

 

 

 

 

-惑星ケッセル 第2義勇兵戦闘団 指揮能力向上型AT-AT-

ある1人の男が巨大なアサルト・ウォーカーの足先に腰掛けて煙草を吹かしていた。

 

連邦地上軍の戦闘服の上からアーマーを着てヘルメットを被っている。

 

吸っている煙草はケッセル産のものでケッセル王国軍の将校から貰ったものだ。

 

味は悪くないがやはり吸い慣れたエリアドゥのものがいいなと内心で思っていた。

 

「パルトン准将!」

 

1人の若き中尉がこの戦争犬(ウォードッグ)ジェミス・パルトン准将に敬礼した。

 

パルトン准将は煙草を左手に持ち替え、敬礼を返す。

 

「アイブルームス中尉か、どうした」

 

ウェリントン・アイブルームス中尉、まだ数少ない大セスウェナ連邦軍アカデミー卒業組の将校である。

 

彼は第1機甲師団の若手士官だったが師団長から「経験を積んでこい」と今回の義勇兵に送り込まれた。

 

「閣下をお見かけしたのでご挨拶兼アドバイスを頂戴したく参上しました」

 

「アドバイス?悪いが女の引っ掛け方は教えらんねぇな、俺はこれでも妻帯者なもんで。でっかくなってきたが息子だっている」

 

「いえそうではなく、是非機甲科将校、指揮官としてのアドバイスをお願いします」

 

その一言を聞いてパルトン准将は目の色を変え、煙草を吹かしてから話した。

 

彼にとってこの巨大なアサルト・ウォーカーと兵隊達は宝であり、絶対の信頼を置いていた。

 

その一端を若い後輩に叩き込むのも先輩としての務めだ。

 

「いいか中尉、機甲科将校に最も重要なのは攻撃精神だ。一に攻撃精神、二に攻撃精神、敵を叩いたら更に叩いて兵隊を引き連れて進む!この気概こそまず重要だ」

 

アイブルームス中尉は目を火輝かせながら准将の話に耳を傾けた。

 

熱心で勉強好きな将校はパルトン准将も好きな方だ。

 

「その為には指揮官が前に出て戦うことが必要だ、それこそあのヴィアーズみたいにな。そうやって兵を引っ張って機甲の突撃力は何倍も増大する。おそれを知らぬ指揮官をやることで兵士も皆恐れを忘れて戦えるのだ」

 

「なるほど…!」

 

「後は即決力とかアカデミーで習うことばかりだ。とにかく一番は攻撃精神、敵のクソッタレどもを1人残らず踏み潰してクソにする気概が重要だ」

 

機甲部隊の任務は敵の戦線に穴を開けてその穴を拡張することだ。

 

砲撃が降り注ぐ中、前へ前へと進んでいく覚悟がなければ機甲部隊の指揮官にはなれない。

 

最前列の突入部隊を率いるにはやはりパルトン准将くらいの異常性がなければならないのだ。

 

「中尉、お前は優秀だからあえて陣形とか小難しい話はせん。大胆不敵であれ中尉、今から来る親衛隊のクソッタレどもに目にもの見せてやれ」

 

パルトン准将は2回アイブルームス中尉のアーマーを小突き、勇気を出させた。

 

すると中尉は真面目な顔で敬礼した。

 

正直彼にはこんな話も必要なかったとさえ思える。

 

彼の瞳はパルトン准将と同じような機甲科将校の戦う危険な男の眼をしていた。

 

事実、この後の戦争でもアイブルームス中尉はパルトン准将の先鋒として度々闘いに出るのだがそれはまた別の話。

 

「さてと中尉、お前も1本吸うか?味は悪くないぞ」

 

「それスパイス多量とかじゃないですよね?」

 

「多分大丈夫だろう、ほれ」

 

箱から1本取り出し煙草を中尉に渡した。

 

アイブルームス中尉は煙草を受け取り、自分で火をつけて吸い始めた。

 

確かに味は悪くないというのが吸った感想だ。

 

2人は暫く無言で煙草を吸った。

 

ケッセルの空にこの煙草の煙はよく合う。

 

「中尉、この戦争はほんの始まりに過ぎない。これから更に大きな戦争が始まる」

 

「我々はその予行演習ということなのでしょう?」

 

「ああ、身体を慣らしておく必要がある。それにここの嬢さんと燃料は我々にも必要だ、きっと長い戦いになるだろうからな」

 

第三帝国がそう遠くない内に大セスウェナに攻めてくることは連邦軍人であれば周知の事実だった。

 

一部の腑抜けたクソッタレはまだ関係を修復出来ると叫んでいたがあのクソッタレどもの下働きに戻るつもりはない。

 

何より盟主は”()()()”をしていた。

 

あれはウィルハフ・ターキン総督と同じ戦う強者の眼だ。

 

ヘルムート・ターキンには確かにウィルハフの意志が入っていた。

 

「…ここの嬢さんも立派だったがやはりうちの盟主の方が立派だ。ああいう手合いには何かしてやりたくなる」

 

「連邦盟主と連邦国民を守るのが我々の使命、もし戦いが来るのなら勝って見せましょう」

 

「ああ、まずはこの戦いに勝たないとな」

 

「准将!」

 

遠くからパルトン准将を呼ぶ声が聞こえた。

 

パルトン准将の副官、フーガ・ヴァスル中尉は准将に駆け寄るなり敬礼して報告を始めた。

 

「司令部からの連絡です!現在、第三帝国宇宙軍と思わしき艦隊が地雷原を通過!囮の部隊を追っているとのこと!」

 

「よし来た!艦隊は後どのくらいでこっちに着くって?」

 

「3時間もあれば確実に到着するそうです!」

 

パルトン准将は吸っていた煙草を口から離し、戦いに行く男の顔つきになった。

 

口元は喜びに溢れ、目元はランコアも射殺すような鋭い目付きに変わった。

 

待ちに待った戦争の時間が来たのだ。

 

「よしアイブルームス中尉、仕事の時間だ!親衛隊のクソッタレどもに地獄を見せてやれ!」

 

「ハッ!」

 

軍靴の音を鳴らしまるで遊園地に行く子どものような笑みで自身の乗り込むウォーカーに向かった。

 

ジェミス・パルトンの戦いが今から始まる。

 

地獄の扉は今開かれた。

 

 

 

 

 

親衛隊の侵攻艦隊は幾つかの地雷原を事前に吹っ飛ばし、ケッセル・ラン内にいたケッセル王国宇宙軍のパトロール部隊を追撃した。

 

アークワイテンズ級三隻、レイダー級六隻で構成されるパトロール隊は逃げ足が早く、未だ一隻も仕留めきれていない状態だった。

 

ターボレーザーを放ち、インペリアル級が迫り来る。

 

前衛のインペリアル級からはTIEブルート1個小隊が送り込まれたがすぐに返り討ちにされた。

 

相手は相当優秀な機動戦が出来るようだ。

 

未だ親衛隊とパトロール隊の追撃戦は続いていた。

 

「このままケッセル本星へ誘い込むつもりでしょうか」

 

「だとしたらその策に乗ってやる、ケッセルまで案内してもらおうじゃないか」

 

ドルベルク准将の問いにヴェルケンダール中将はそう答えた。

 

どのような罠があろうと現状の艦隊戦力なら打ち破れると中将は踏んでいた。

 

既に艦隊は後少しでケッセル・ランを脱せられる地点まで来ていた。

 

次第に敵のパトロール隊は逃げることに重点を置いて速力を高めた。

 

当然インペリアル級では追いつけない為親衛隊のアークワイテンズ級やレイダー級が臨時の機動部隊を組んで追撃を開始した。

 

だがそれが問題だった。

 

突如どこからともなくハイパースペース・ジャンプアウトした爆撃機隊が先行した機動部隊に狙いを定めた。

 

3機のTIEパニッシャーを先頭にYウィングや改造ハイエナ級ボマーなど合わせて14機が後に続く。

 

14機の爆撃機が一斉にプロトン魚雷とプロトン爆弾を投下した。

 

船体に被弾し大爆発を起こす。

 

機動部隊もYウィング1機、改造ハイエナ級を4、5機撃墜したもののその他の爆撃機は取り逃してしまった。

 

結果的に機動部隊は大打撃を被った。

 

レイダー級四隻、アークワイテンズ級一隻が轟沈、残りは全て大破し有爆の炎を上げている。

 

「追撃部隊壊滅!」

 

「逃すな!このままケッセルまで突入する!地上軍には上陸の準備を要請、ここで蹴りをつけてやる」

 

ついに艦隊はカーボンバーグやデブリの浮遊する地獄の空間を抜けた。

 

そのまま突撃陣を組みつつ、ケッセルへの丁度いい侵入角度に艦隊を合わせた。

 

既に上陸目標は決まっている。

 

行政区画たるケッセル城、大規模施設の存在するケッセンドラ、上陸の足場となるケッセル宇宙港、そしてスパイス鉱山と燃料資源採掘場。

 

特にケッセル城とケッセル宇宙港、燃料資源採掘場に主力部隊が展開され早急に制圧することが望まれた。

 

インペリアル級からもウォーカーを積んだゴザンティ級が発進し、地上へ部隊を展開し始めた。

 

艦隊は陣形そのまま、駐留艦隊に警戒しつつ上陸支援を開始した。

 

「支援砲撃の準備、恐らくは偏向シールドが展開されているだろうが構わん」

 

インペリアル級、ヴィクトリー級のターボレーザー砲が1分間の間、地上に降り注いだ。

 

軌道上で観測出来る塹壕と思わしき陣地や各防空施設にターボレーザー弾を浴びせたが予測された通り偏向シールドに阻まれて効果はなかった。

 

だがこれで敵の偏向シールドの範囲は割り出すことが出来た。

 

上陸部隊はシールド外の手頃な場所に着陸を開始し突撃の準備を開始した。

 

既にセキューター級と貨物船は大気圏内に突入し地上部隊を仕切っている。

 

『第一陣は降下完了した、地上指揮所の設置が完了次第攻勢に出る』

 

「了解した、こちらは敵の駐留艦隊を見つけ次第叩く。もちろん数隻は支援用に残しておくつもりだ」

 

シュヴェーツ中将はホログラムの姿で”トラキュレント”のヴェルケンダール中将と会話していた。

 

ヴェルケンダール中将の報告通り、不可解なことに先程の機動部隊もケッセル防衛艦隊も今の所確認されていなかった。

 

周囲に偵察艦と偵察機を展開しているのだが全く音沙汰がない。

 

地上軍が敵の地上軍を撃破しなければならないのと同じように宇宙軍もまた、敵の宇宙艦隊を撃退しなければ安心して地上作戦に臨めない。

 

シュヴェーツ中将もそのことを若干不安視しているようだった。

 

『早急に頼むぞ、装甲兵団とてシールドの外なら機動爆撃に勝ち目はない』

 

地上軍にとって宇宙からの恐怖はシールドが開いた瞬間に軌道爆撃を叩き込まれ、成すすべなく壊滅することだ。

 

無論そうしない為に偏向シールドはあるし地上軍も攻撃手段を持っている。

 

味方の宇宙軍、スターファイター隊との統合運用もその為にある。

 

だがやはり敵艦隊はいるかもしれないというだけで心理的な影響を与えた。

 

むしろいるはずの敵がいないという方が心理的影響は強いと見える。

 

「流石に撤退したとは考えにくいが…」

 

ヴェルケンダール中将がそう言い放った瞬間彼の上げた予測とは反対の報告が飛んできた。

 

「中将!10時の方向、エリア43に敵艦隊!」

 

「何だと!?」

 

『ついに出たか!』

 

「艦砲射撃来ます!」

 

報告と共にケッセル星系艦隊最初の一撃が加えられた。

 

何十、何百発というターボレーザーの雨が親衛隊艦隊に被害を与える。

 

上陸中のゴザンティ級やセンチネル級にも被弾し大気圏上で爆散していった。

 

当然これだけでは終わらず、ケッセル星系艦隊は続け様に攻撃を敢行する。

 

「陣形を転換し展開中の上陸部隊の盾となれ!これ以上損害を出させるな!」

 

「了解!」

 

「敵艦、インペリアル級6、ヴィクトリー級12、プロカーセイター級8、”()()()()()()1()”……」

 

「バカな……なっ!」

 

ブリッジの左舷側を見るとそこには確かにドレッドノートの姿があった。

 

ベラトール級ドレッドノート、7,200メートルの巨体は”トラキュレント”のブリッジからでもしっかり見える。

 

ヴェルケンダール中将は動揺し様々な考えを巡らせた。

 

「なぜここに奴が…!まさか大セスウェナが…?いやそんなのはありえない、だとしたらどこで…」

 

「落ち着いてください閣下!ドレッドノートはともかく、スター・デストロイヤーの数ではまだこちらが勝っています!」

 

ドルベルク准将に促されヴェルケンダール中将は艦隊指揮に集中した。

 

「まずは敵インペリアル級を確固撃破する、ドレッドノートはその後だ。ベラトール級とはいえ所詮はケッセル人が使うもの、無用な長物だということをわからせてやれ!!」

 

反撃を撃ちつつ陣形を転換した親衛隊艦隊はついにケッセル星系艦隊と真正面から対峙した。

 

ケッセルの戦い、侵略者を討ち倒さんと王国の将兵達の奮闘が始まった。

 

 

 

 

親衛隊艦隊の横合いに最初の一撃を加えることに成功したケッセル防衛艦隊はベラトール級”キング・ケッセル”を中心に火力集中隊形を構築した。

 

ケッセル王国宇宙軍は旧ケッセル宙域艦隊を構成していた3つの星系艦隊から成る宇宙艦隊である。

 

まずケッセルを防衛するケッセル星系艦隊、次にゼルム周辺を防衛するゼルム星系艦隊、最後にフォルモス周辺を防衛するフォルモス星系艦隊。

 

帝国崩壊後、ケッセル王国が実権を持つようになってからは更に六隻のインペリアル級とベラトール級を一隻購入した。

 

その為”公式的”にはインペリアル級十八隻体制であり、ケッセル星系艦隊とゼルム星系艦隊の2個艦隊が臨時の首都防衛艦隊として編成され、親衛隊を迎え討った。

 

「艦隊防空はスターファイターとアークワイテンズに任せろ、残りの全艦艇で敵艦隊を叩く」

 

「はい!」

 

テシック大提督の指示でケッセル星系艦隊の戦闘艦艇から次々とターボレーザー砲が放たれる。

 

特に”キング・ケッセル”の砲火力はインペリアル級とは比べ物にならない程の威力と規模だった。

 

六隻と十五隻、艦の数は圧倒的に差があるのにも関わらず正面砲火では未だに負けていなかった。

 

むしろ親衛隊艦隊の方が若干押され気味だった。

 

前衛を務めるインペリアル級”レヘムサ”はケッセル星系艦隊の集中砲火に耐えられなくなりつつあった。

 

何せ機雷の被害を直で受けた艦であり、僚艦のインペリアル級同様他のインペリアル級よりもダメージを蓄積しやすくなっていた。

 

しかもケッセル星系艦隊は艦隊中央に集中砲火をかけており、”レヘムサ”の負担は増大した。

 

結果、ヴェルケンダール中将が手を打つより先に”レヘムサ”の限界が来てしまった。

 

船体に大きな爆炎が上がり、続け様にあちこちから炎と爆発が広がる。

 

レヘムサ”はゆっくりと爆発が船体全てに広がり、艦列から離脱した。

 

脱出ポッドが放たれ、乗組員を乗せたラムダ級やTIEボーディング・クラフトが地上や他の艦に向け飛び立った。

 

こうして惑星レヘムサの名を冠するインペリアル級はこの戦い一番最初に沈んだインペリアル級となった。

 

「インペリアル級一隻撃沈!」

 

「よし!いいぞ!」

 

キング・ケッセル”艦長、ドレスタ・パルコビル上級大佐は握り拳を作り戦果を喜んだ。

 

テシック大提督はあくまで冷静に、されど的確に敵艦隊への攻撃指示を出す。

 

「右翼艦隊は奇襲時の敵艦に集中砲火を掛けろ、残りはこのまま敵艦隊を分断する」

 

序盤の奇襲で最も被害を被ったのは侵攻艦隊左翼前列の艦であった。

 

何せベラトール級一隻とインペリアル級六隻分の集中砲火を喰らったのだ。

 

辛うじてインペリアル級は持ったがヴィクトリー級やアークワイテンズ級は何隻かが確実に轟沈した。

 

ケッセル星系艦隊三隻のインペリアル級と付属艦のプロカーセイター級やヴィクトリー級が砲撃を敢行する。

 

次々と八連ターボレーザー砲を喰らい、親衛隊のインペリアル級は被害を増していった。

 

そして”へレムサ”同様、限界が来た艦から列を離れ沈んでった。

 

「インペリアル級二隻大破!一隻は戦列を離れる模様、もう一隻は……爆発が広がっています!敵艦はもう間も無く撃沈します!」

 

「おお!」

 

撃沈するインペリアル級は運悪くブリッジにプロトン魚雷の直撃を受けて指揮系統が崩壊し、そのままなし崩し的に被害が広がって沈んだ。

 

改修を受けたアークワイテンズ級やヴィクトリー級が放つプロトン魚雷も敵に対してしっかりとした効力を出していた。

 

ターボレーザーが破ったシールドと装甲にプロトン魚雷が命中し更に船体を傷つける。

 

砲戦の後、親衛隊艦隊は二方向に分裂しつつあった。

 

「敵艦隊が分断されていきます!」

 

防衛艦隊参謀長のカスターニェ少将は戦況を確認し勢いよく報告した。

 

このまま敵艦隊を分断し、包囲殲滅は難しくとも組織的戦闘を麻痺させられることは出来ると喜んだ。

 

しかしテシック大提督はそこまで楽観視している訳ではなかった。

 

「いや、意図的に分かれてる。ベラトール級の火力を避けつつ僚艦のインペリアル級を確固撃破するつもりだろう」

 

テシック大提督は暫く考え艦隊に命令を出す。

 

「艦長、”キング・ケッセル”を左に傾けて敵艦隊の片割れを叩く。アドベリーノ司令官を呼び出せ」

 

「了解」

 

すぐに右翼艦隊を率いるケッセル星系艦隊司令官のアドベリーノ中将のホログラムが現れた。

 

中将は大提督に敬礼し指示を仰いだ。

 

『なんでしょうか閣下』

 

「敵艦隊は二手に分かれこちらの主力艦を潰して回るつもりだ。”キング・ケッセル”で左翼艦隊の支援に回るから中将は右翼艦隊を率いて敵を押さえてくれ」

 

『お任せください!』

 

「任せたぞ」

 

お互いに敬礼しアドベリーノ中将のホログラムは消失した。

 

「回頭左25度、火力を敵右翼艦隊へ集中せよ」

 

キング・ケッセル”の巨大な船体が左に向けて回頭しその惜しみない火力を分かれた敵艦隊の側面に叩きつけた。

 

親衛隊艦隊の注意はインペリアル級と”キング・ケッセル”に分かれ、双方に対する決定的な一撃を与えられなくなった。

 

友軍を支援しようともう一つの親衛隊艦隊が”キング・ケッセル”の側面に迫り来る。

 

ベラトール級とはいえインペリアル級六隻とヴィクトリー級数隻分の集中砲火には流石に被害を被ってしまう。

 

そうならないようにアドベリーノ中将の右翼艦隊が”キング・ケッセル”の側面前に出て親衛隊艦隊を食い止めた。

 

「敵艦を一隻たりとも総旗艦に近づけさせるな!死ぬ気で食い止めるぞ!」

 

右翼分艦隊旗艦、インペリアル級”ホノグル”のブリッジでアドベリーノ中将が決死の抵抗を見せた。

 

インペリアル級の数では負けているケッセル星系艦隊であってもプロカーセイター級などの中型艦を合わせれば互角以上に戦える。

 

ヴィクトリー級やプロカーセイター級が火力支援を行い、アークワイテンズ級やグラディエーター級が迫り来るTIEファイター部隊を迎撃した。

 

「敵ベラトール級の妨害で思うようにインペリアル級の撃滅が進んでいません」

 

「左翼艦隊はベラトール級側面の敵艦撃破に専念せよ。数の上ではこちらが上だ、敵艦隊を撃破して側面から攻撃を喰らえばあのドレッドノートとてこちらに全力を向けている余裕はなくなるはず……」

 

トラキュレント”のブリッジでヴェルケンダール中将は険しい表情を浮かべつつも冷静に指揮を取った。

 

現在親衛隊艦隊は苦しい状況に置かれている、だからこそ相手も苦しい状態のはず。

 

ケッセル艦隊はベラトール級と最初期の奇襲で優位に立ってはいるがやはり数的優位は親衛隊艦隊にある。

 

ヴェルケンダール中将が命令を出した通り、左翼の六隻のインペリアル級で側面援護の敵艦隊を撃破すれば今度はベラトール級だ。

 

側面からの集中攻撃を与えれば流石のドレッドノートも沈むであろう。

 

かなりの損害は出るだろうが確実に敵艦隊を撃滅させられる。

 

ヴェルケンダール中将は損害を覚悟してここでの戦闘で敵軍を撃破することを決意した。

 

だがそれこそが思う壺だったと後に知ることになる。

 

次の魔の手はすぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

―ケッセル 惑星内 第一防衛線―

ケッセル艦隊の妨害の影響で上陸中の地上軍にも一部被害を受けたが、主力の殆どはケッセルに上陸出来た。

 

機動戦の為司令部はプレハブ基地をほんの一部だけ設置し、即座に指揮を執った。

 

突撃部隊たる装甲師団の各部隊が地上に展開次第、突撃を開始した。

 

Ⅲ号、Ⅳ号AT-ATを先頭にケッセルの燃料採掘場に向けて前進する。

 

ケッセル王国地上軍は当然採掘場の前方に防衛部隊を展開し対ウォーカー用の防御陣地を構築した。

 

塹壕を掘り、地雷をばら撒き、歩兵砲兵を配置して敵を迎え撃つ。

 

「大佐、偵察隊から報告です。地雷原3キロ地点まで敵のウォーカーが接近中」

 

第12機械化旅団長、メヒャト・エルゲドリス大佐は前線の様子を表したモニターに目をやった。

 

モニターには既に数が記載されているようでアサルト・ウォーカー1個大隊、スカウト・ウォーカー2個大隊、専属の防空部隊と装甲部隊の基本的な戦闘団が接近しつつあった。

 

エルゲドリス大佐はペンを持ち、タブレットに軽いメモを取る。

 

「連中が地雷原に足を踏み入れだしたら例の特攻兵器を使用しろ。準備は出来てるか?」

 

大佐の問いに報告に来た副官の中尉は「完璧であります」と返した。

 

「よろしい、連中は恐らく地雷を吹っ飛ばして進撃路を作るはずだ。それまで辛抱強く待つよう前線部隊に言ってくれ」

 

「了解…!」

 

中尉が離れるとエルゲドリス大佐は再びモニターを見つめた。

 

モニターには敵部隊だけでなく味方部隊の配置も書かれている。

 

前線には配下たる第24機械化連隊の歩兵部隊が塹壕に入っており、こちらの戦車部隊やウォーカー部隊も逆襲部隊として待機していた。

 

ケッセル王国地上軍は1個兵団を5個旅団34,000名以上によって構成され、その1個旅団は3、4個連隊6,912名によって構成されいる。

 

エルゲドリス大佐の第12機械化旅団も3個連隊6,912名によって成り立つ機械化歩兵の部隊であり、ケッセル防衛師団と共にケッセルを守る第1星間兵団がより上位の部隊であった。

 

更に王国政府は国民に総動員をかけ、数十を超える郷土防衛旅団とかき集めた義勇兵旅団を作り上げた。

 

この2つのタイプの旅団は常時維持されている正規旅団に比べると幾段か練度は落ちるしムラが出来るだろう。

 

それでもいた方が大助かりだということは大佐も重々熟知していた。

 

「我々が抜かれると……次は54郷土防衛旅団か」

 

あの連中に親衛隊の機甲部隊と出会わせたくないなとエルゲドリス大佐は心の中で思った。

 

第54郷土防衛旅団の兵士は殆どが惑星ホノガーから動員されたノーグリ達だ。

 

大佐の最終的なボスであるクラリッサとケッセル王室はどういう訳かあのエイリアン種族達も手懐け、ケッセル王国の同胞として迎え入れた。

 

その為ノーグリも多くが郷土防衛軍に動員され、一部の旅団はケッセルに展開された。

 

エルゲドリス大佐は彼らを信用していない訳ではなかった、むしろクラリッサが手懐けたのだからと信用する努力をしていた。

 

この37歳でオリーブ色の髪色をした大佐はケッセル生まれではない、生まれはインナー・リムの惑星だ。

 

されどあのクラリッサという若きケッセルのお嬢様に心の底から忠誠を誓っていた。

 

他の同期の旅団長達もそうだ、皆彼女に忠誠を誓い帝国軍からケッセル王国軍の将校となった。

 

それだけ彼女には計り知れない魅力があったのだ。

 

だからそんな彼女が連れてきた動員兵を少なくとも信用の面では当てにしていた、問題はこれから対峙する第三帝国の方だ。

 

彼らはエイリアン種族、近人間種族に対して病的な嫌悪感と抹殺をしなければならないという使命感を持っている。

 

エルゲドリス大佐がインナー・リムに配置されより銀河系の情勢に過敏であったとしても理解出来なかったであろう。

 

大佐には初対面では驚く程度でも全て抹殺しようというほどの意識は持ち合わせていないからだ。

 

だがエイリアン種族を見つけたら必ず殺さなければならないと思っている第三帝国は違う。

 

ノーグリの旅団なんて見つけたらまず捕虜は取らないだろう、必ず皆殺しにされる。

 

総動員だから仕方ないとはいえ既に虐殺の悲劇の種が撒かれているのだ。

 

これは何としても防がねばならない。

 

「いいか幕僚ども、連中の機甲部隊は我々の旅団で食い止めるぞ!」

 

司令部にいた全ての幕僚や連絡員達が「了解!」と大佐に呼応した。

 

1人1人の顔を見る、みんないい表情だ。

 

旅団正面に展開した親衛隊装甲部隊は導爆索を用いて進撃路を切り開き、AT-ATを先頭に装甲部隊が突入した。

 

勿論これは上空の哨戒機が確認している。

 

『エアロゾンデ6より司令部へ、敵装甲部隊が進撃を開始した。座標を送る』

 

「エアロゾンデ6了解、そっちも撃ち落されるなよ」

 

コールサイン、エアロゾンデ6は偵察能力を獲得したTIEリーパーであり地上の防空範囲外を飛んで情報を収集していた。

 

意外にも空での撃ち合いはケッセル王国空軍のスターファイター部隊が優勢であった。

 

ケッセル内に集められたスターファイター隊は親衛隊が連れてきたスターファイター隊よりも数が多かった。

 

集めた情報は司令部のモニターに映し出される。

 

「大隊長、指定した座標に特攻機を突っ込ませろ。連中の足を止めるんだ」

 

『了解!』

 

前線を維持する各大隊に与えられた地上特攻兵器が起動し塹壕の上に掛けられた通路を通っていく。

 

ガタガタ揺れて土が落ちる塹壕の中で兵士達はこれから死に往く兵器達を見上げた。

 

無論多くの兵士が「ほんとにこれ使うんだ」とか「役に立つんかな」と白けた目で見ていた。

 

そう思うのも無理はない、何せ彼らの頭上を走っていくのはクローン戦争時代のヘルファイア級ドロイド・タンクなのだから。

 

所定の位置についたヘルファイア級は大隊司令部の操縦班が突撃モードを起動し、敵に向けて一斉に走り出した。

 

最前列の塹壕にいるストームトルーパー達がエレクトロバイノキュラーでドロイド・タンクの行く末を見つめた。

 

「おお無事に走ってるぞ!」

 

「あんなん動き出した瞬間整備不良で車輪が吹っ飛ぶかと思ったのに」

 

「どうせすぐ撃ち落されるよ」

 

兵士達の期待は散々だったがヘルファイア級は任務達成の為に通常のヘルファイア級が誇る2倍の速度で走った。

 

ヘルファイア級は1つの進撃路につき6輌の小隊が突撃した。

 

そしてある地点を超えた瞬間ドロイドの頭部に設置された左右30発の震盪ミサイルを一斉に発射した。

 

一斉に放たれた震盪ミサイルは当然ウォーカー部隊にも確認されていた。

 

すぐに後方のAT-AAや前線防空のAT-MPマークⅢが迎撃に入る。

 

地対空ミサイルやレーザー砲による弾幕を放って震盪ミサイルを撃ち落としていった。

 

その間にもヘルファイア級は接近していく。

 

一番先頭のAT-ATが全火力を持って迎撃に当たったが、ヘルファイア級は狭い進撃路の中でも器用に回避した。

 

すぐにヘルファイア級はスモーク弾を放って周囲の目を晦ます。

 

「スモークで見えなくなった」

 

「もしかしてほんとに上手くいくのか…?」

 

兵士達はこの意外な結果に少しずつ希望を持ち始めていた。

 

AT-ATやAT-ST1がスモークの中に大量のレーザー弾を放ってなんとか殲滅しようとしたが撃破出来たヘルファイア級は1輌だけだった。

 

生き残ったヘルファイア級は本来の役目を果たす。

 

AT-ATやAT-STの足元に衝突して何度も大爆発を起こし、ウォーカーの巨体を地面に打ち倒したのだ。

 

前足を破壊されたAT-ATが頭から地面に崩れ落ちる。

 

これでも内部のパイロットと歩兵は生き残っているのだからAT-ATの頑丈さが分かるだろう。

 

しかし、ウォーカーは動けなくなった。

 

その巨体の影響で後続の部隊は迂回する他なくなり、一時的に部隊の足が止まった。

 

そしてこれこそが狙いであった。

 

「装甲部隊の進撃が一時停止しました」

 

「よぉし!砲兵隊、送った座標にありったけの弾を敵部隊に叩き込め!上空の航空隊も余力があったら敵装甲部隊に空爆を頼む!」

 

エルゲドリス大佐は旅団の砲兵隊に砲撃と航空支援を要請した。

 

旅団砲兵隊はSPHA-Tとプロトン砲を用いて砲撃を開始した。

 

更に上空のTIEボマー3機が空対地攻撃に参加した。

 

本来は惑星内に入ってきたアークワイテンズ級やレイダー級を撃退する為の部隊だったが敵艦が惑星内に入ってくることは少なかった為対艦攻撃隊も爆撃に参加していた。

 

ターゲットを定めてありったけプロトン魚雷を足の止まっている装甲部隊に叩きつけた。

 

砲兵の砲撃もほぼ同時期に目標へ弾着した。

 

プロトン魚雷、プロトン砲、ターボレーザー砲、これら全てを喰らって無事でいられるウォーカーはまずいない。

 

本来そこにいた装甲部隊は全てが黒色の残骸となった。

 

一瞬にして先発の装甲部隊は壊滅したのだ。

 

AT-ATは1個中隊中3台のみが生き残り、AT-STやAT-MP中隊は全滅に近い状態だった。

 

「敵装甲部隊壊滅!」

 

「いいぞ!砲兵隊は直ちに陣地転換!前線部隊と哨戒機は偵察の目を絶やすな!」

 

報告を受けエルゲドリス大佐は今までにないほど喜んだ。

 

AT-ATの中隊に対してあれだけの損害を人的被害なく与えられたのは奇跡に等しい。

 

砲兵は戦場の女神と古来から言われたものだがこの光景はその状況を端的に表している。

 

TIEボマー隊の支援も敵の損害を与えるのにかなり貢献してくれた。

 

「やりましたね大佐!」

 

副官の中尉がこの戦果に喜んで声を掛けてきた。

 

「ああ、だが連中の出鼻を挫いたが本隊はまだだ。さて、絶対抜かれるなとはいったがどこまで耐えられるか……」

 

エルゲドリス大佐はこの程度で親衛隊の足が止まらないことを知っていた。

 

むしろ今から果てしない激戦が始まるのだということも理解している。

 

事実、第12機械化旅団はこの6時間に渡る敵装甲部隊の猛攻を受け、旅団戦力の1/3が戦闘不能になるほどの損害を被ることになる。

 

だが第一防衛線は最後まで維持され、決して突破されることはなかった。

 

第12機械化旅団は義勇兵旅団や第二防衛線の支援を受け親衛隊の攻勢を頓挫させた。

 

既に親衛隊地上軍の雲行きは怪しくなりつつあった。

 

 

 

 

第12機械化旅団は敵の攻勢を辛うじて受け止めていたが当然危険な状況に陥っている旅団もいた。

 

エッセンドラの第51郷土防衛旅団は第14機械化旅団と共に正面防御陣地に展開し迫り来る親衛隊の攻勢を防いでいた。

 

ケッセンドラ方面では親衛隊が航空優勢を取っており、TIEボマーの爆撃で地雷原を撤去し進撃を開始した。

 

塹壕内の兵士達が必死に抵抗したが歩兵の持つ力とAT-ATの持つ突破力では大きな違いがある。

 

最初の塹壕は抵抗虚しく突破され、今では各地の防御陣地で浸透した部隊との交戦が発生していた。

 

ある小さな村に展開した第51郷土防衛旅団の歩兵1個小隊は親衛隊の歩兵部隊とAT-ST1台によって厳しい状況に追いやられていた。

 

AT-STの断続的な中型ブラスター砲射撃によって村のほぼ全域を取り囲んだ小隊シールド内から動けなかった。

 

しかも兵員輸送機と2-Mホバー・タンクがシールド内に突入してきたのだ。

 

「スマート・ロケット班!回り込んでタンクを殺れ!Eウェブ班は歩兵を寄せ付けるな!」

 

小隊長のメデリカ中尉が小隊の各班に命令を出す。

 

村内の塹壕や土塁、建物内にはEウェブ・ブラスター砲が設置されおり、通常の歩兵と共に敵の侵入を防いだ。

 

各所の遮蔽物や塹壕内には多くの動員兵がE-11やE-10を用いて親衛隊のストームトルーパーと戦っている。

 

動員兵といってもここにいる兵士達は予備役に登録したまだ質の良い兵士であり、第三帝国の侵攻が確認された数ヶ月前から訓練を受けた。

 

その為練度は現役の兵士と遜色ない。

 

だがAT-STとその随伴歩兵相手では練度が高くとも苦戦は免れなかった。

 

「小隊長!AT-STが侵入してきます!」

 

近くで戦っていた一等兵が指を差してスカウト・ウォーカーの侵入を伝えてきた。

 

メデリカ中尉は塹壕から頭を出してその様子を確認した。

 

「まずいな……こっちの対戦車兵は1個潰されてるってのに……」

 

「塹壕から一旦引き上げますか?」

 

ベネリタ軍曹はE-11で敵兵を3人撃ち殺しながら中尉に尋ねた。

 

AT-STはScout(偵察)ウォーカーと名乗りながら其の実一番得意なのは塹壕内の歩兵を皆殺しにすることだ。

 

8.6メートルの巨体で歩兵を見下ろし、頭上からレーザー砲とミサイル・ランチャーをばら撒いて殲滅する。

 

その為塹壕内にいても安心は出来なかった。

 

「いや、ここで塹壕から出れば兵員輸送機と戦車に薙ぎ倒される。せめてどっちか潰せればいいんだが……」

 

メデリカ中尉がそう呟いた瞬間、M-2ホバー・タンクが突如吹っ飛んだ。

 

建物を通り抜けて敵の裏を取った対戦車班がタンクの撃破に成功したのだ。

 

「よし!!よくやったぁロケット班!軍曹、俺の隊で援護するから先に分隊を率いて塹壕から出ろ。輸送機O-527、聞こえるか?」

 

『はっきり聞こえます、どうぞ』

 

「敵の輸送機とやり合って塹壕からの離脱を援護してくれ。出来るな?」

 

『お任せください』

 

小隊に指示を出して離脱の用意を開始する。

 

小隊の損害はまだ少ないがこれからどうなるか分からない。

 

特にAT-ST相手では最悪全滅する可能性も十分あり得るのだ。

 

厳しい戦いになる、そう確信した瞬間ベネリタ軍曹が「小隊長あれを!」と上空を指差した。

 

「Uウィング…!?なんでこんなところに…」

 

「マークをよく見てください、義勇兵の空中強襲大隊のマークです」

 

「呼んでた増援がついに来たか…!」

 

Uウィングはまず地上にレーザー砲を放ってAT-STと周囲の歩兵部隊、兵員輸送機を全て撃破した。

 

そのまま小隊シールド内に進入し、中に入ってきた輸送機を撃破するとブラスター・タレットを放って周囲のストームトルーパーを薙ぎ払った。

 

安全地点を確保したUウィングは地面スレスレで停止し、操縦手のジェルマンとジョーレンが兵士たちに叫んだ。

 

「左ハッチを開ける!全員準備を!!」

 

ブラスターを持った猛き男達が戦いの準備を始めた。

 

「よし!全員私に続け!!」

 

分隊を率いるグランゼット少尉がハッチの解放と共に真っ先に地上へ降り立った。

 

その後を戦意に満ち溢れた傭兵達が大声と共に突撃した。

 

ベンネ、サイネス、ドイスの3人が真っ先に突撃してブラスター弾を叩き込む。

 

アルメトはE-11s長射程ブラスターを用いて後方から援護し1人ずつ確実に敵兵を減らしていった。

 

「くたばれ!この!」

 

サイネスは銃剣をつけたDC-15LEの銃床で敵兵の頭を叩き割り、銃剣を突き刺す。

 

彼をカバーするようにドイスがアンバラン・ブラスター・ピストルを敵兵に放った。

 

彼らの勢いに押され生き残った敵の将校は撤退命令を下した。

 

ストームトルーパー達が牽制射撃を行いながら村から出ていく。

 

敵兵がいなくなったのを確認しベンネが「へっどうだちょび髭の雑魚ども!」と異性のいい声を上げた。

 

「こいつらが義勇兵か」

 

メデリカ中尉は塹壕から顔を出し到着した兵士達を眺めた。

 

「小隊長でいらっしゃいますか?」

 

「貴官は」

 

「グランゼット少尉であります、空中強襲B中隊所属の第1副小隊長です。増援要求を受けて1個分隊を展開しました」

 

少尉は敬礼しメデリカ中尉も「私が小隊長のメデリカだ」と挨拶を交わした。

 

本格的な話し合いになる前に中尉は小隊シールドの冷却と兵士の配置を命令した。

 

「1個分隊と言ったが何人いる」

 

「10名編成であります。さっき降りたのが私含め8名、パイロット兼兵士が2名です」

 

ベンネ、サイネス、ドイス、アルメト、そしてジェルマンとジョーレンの2人以外にも3人の地上軍トルーパーがいた。

 

彼らは少尉が前の小隊から連れてきた兵士である。

 

「分かった。では少尉、君はさっきの戦闘で撃たれてダウンした俺の副隊長に変わって右側面の指揮を取ってくれ。だが分隊の数人はこっちに欲しい」

 

「分かりました、ルースコット!タイドゥ!後そこの4人来てくれ!」

 

グランゼット少尉は分隊員を呼び集めた。

 

Uウィングを近くに停泊させたジェルマンとジョーレンは丁度走って現場に向かってるところを少尉に呼び止められた。

 

分隊員は少尉の前に乱雑に並んだ。

 

「分隊を分ける、私とトルーパー3人は今から右側面の支援に向かうから6人はここで敵を食い止めろ。タイドゥ」

 

「はい!」

 

少尉はジョーレンを偽名で呼んだ。

 

「お前を班長に任命する。5人を率いて親衛隊を蹴散らせ、いいな?」

 

「了解!」

 

「それではな!ケッセル王国の為、諸君らの奮闘を期待する!」

 

グランゼット少尉は3人の地上軍トルーパーを率いて右側面に向かった。

 

彼はまだ若い将校だが的確な判断力とリーダーシップがあった。

 

この戦いを生き延びればやがて優れた地上軍の指揮官となる確証がジョーレンの中にあった。

 

それがレジスタンスの脅威となるか味方となるかはまだ分からなかったが。

 

「班長か、やったなタイドゥ」

 

「早速俺たちに命令をくれ」

 

他の面々も反対せずに受け入れてくれた。

 

やはり良い仲間たちだ。

 

「アルメトはあそこの塔に登って狙撃、ベンネとドイスは前衛で敵兵を迎え撃て。サイネスとルーシー、後俺で中距離援護を行う」

 

「了解だ、班長殿」

 

「ウォーカーやら戦車が来たら下がって構わん。アルメトも危険と感じたらすぐに陣地を転換しろ。俺たちは生き延びた分だけ敵を殺せる、分かったな?死ぬなよ」

 

分隊員全員が頷き、各所の配置についた。

 

サイネスを含めた3人は塹壕の中に入り、敵を迎え撃つ準備を整えた。

 

「DC-15とはな、俺はよくカービンの方を使っていた」

 

ふとジョーレンがサイネスのブラスターを見て昔のことを思い出した。

 

まだ10代前半の子どもにDC-15ブラスター・ライフルは大き過ぎる。

 

その為予備役青年隊の子ども達が使うのはDC-15Aの方だった。

 

「色々なブラスターを試してきたがコイツが一番しっくりくる」

 

「赤い糸で繋がってるってやつだな」

 

「嫁がライフルなのは勘弁だな、美少女にでもなってくれれば気が乗るってもんだが」

 

2人はジョークに苦笑しブラスター・ライフルを構え直した。

 

その間にジェルマンが飛ばしていたシーカー・ドロイドが何かを捉えた。

 

「敵発見!前方2キロ付近の森林内に敵!数は確認出来る範囲でAT-ST1、オキュパイア2、兵員輸送機多数!」

 

すぐに近くの塹壕に控えていたメデリカ中尉が飛び込んでジェルマンのモニターを見た。

 

指で軽く兵員輸送機の数を数え敵戦力を判断する。

 

「まずいな……ほぼ3個小隊分の敵が来てる……さっき返り討ちにしたのを合わせたら丁度1個中隊、連中ブチギレて中退のほぼ全戦力でやってきやがった…!」

 

中尉が悪態をついた次の瞬間、ジェルマンのシーカー・ドロイドは敵兵によって撃墜されモニターは真っ暗な画面に戻った。

 

これで偵察は不可能になった訳だが大体の敵戦力は把握出来た。

 

メデリカ中尉はすぐに村内に設置した大型通信機で大隊司令部に連絡を取った。

 

流石に1個小隊で1個中隊を押し返すのは無理な話だ。

 

司令部に増援か撤退かの判断を仰ぐ必要があった。

 

「こちらC中隊第3小隊のメデリカ小隊長、現在我が小隊は前方2キロ地点で敵1個機械化中隊と対峙中。このまま現在地の防御地点を維持するのは不可能と判断した。直ちに増援か撤退の許可のどちらかを要求する」

 

『こちら大隊司令部、そちらの地点には既に増援が向かっている。間も無く到着するのでもう暫く現地点を維持されたし』

 

「増援…?了解した……可能な限り維持を行う」

 

通信を切り中尉は「本当に来るのか?」と内心疑いながらも塹壕に戻った。

 

2キロ地点にいた敵の部隊はもう森林を抜け、エレクトロバイノキュラーを使えば簡単に見える位置にいた。

 

「司令部はなんと?」

 

「増援が来るからここを守り抜けだそうだ。増援が来る頃には全滅してるかもしれんのにな」

 

それでもやるしかないとベネリタ軍曹は苦笑を浮かべながらもブラスターを構えた。

 

AT-STは徐々に前進し、その巨大な足音の振動がこちらまで響いてくる。

 

兵員輸送機は先行しかなり近くまで接近したところで中に入っていたストームトルーパー達を下ろした。

 

2機の兵員輸送機の背後には大凡20名近くのストームトルーパーが隠れていた。

 

「トルーパー隊を先行させてこっちを乱すつもりだな」

 

「全く戦術を変えない辺り、相手の指揮官はアホだね。これなら勝てるよ」

 

「そうだといいんだがな」

 

兵員輸送機は発射管からスモーク・グレネードを投擲し正面に視界不良の領域を作った。

 

相手の目を奪って精密射撃やスマート・ロケットの攻撃を防ぐ役目を果たしていた。

 

中尉はすぐに「来るぞ!総員警戒!」と兵士達に戦う準備をさせた。

 

彼の合図とほぼ同タイミングでレーザー砲とブラスター弾の一斉射撃が始まった。

 

レーザー弾は近くの外壁を吹っ飛ばし、ブラスターの雨は建物に穴を開けた。

 

暫くして煙幕の中から親衛隊の兵士達が突っ込んでくる。

 

だが敵兵は警戒を怠っていた。

 

もう少し慎重になるべきだったのだ。

 

そうであれば近くに設置されていたレーザー・トリップ・マインにも気づくことが出来たはずだ。

 

「撃て!」

 

中尉の命令で一斉にブラスター・ライフルによる射撃が行われた。

 

煙幕から出てくるストームトルーパーが1人、また1人と斃れていく。

 

2輌の兵員輸送機からレーザー砲とEウェブの援護射撃が繰り出されるが攻撃は止まなかった。

 

塔に立て籠もったアルメトが暗視スコープ付きのE-11sでEウェブの砲手を1人ずつ潰していく。

 

素早い狙撃で砲手陣は全滅し、兵員輸送機は前進を開始した。

 

「輸送機が出てくるぞ!!」

 

ジョーレンの報告と共に2輌の兵員輸送機が煙幕の中から姿を現した。

 

すかさずスマート・ロケットが放たれ1輌はすぐに撃破された。

 

ジェルマンとジョーレンはもう1輌の兵員輸送機の周りにいるストームトルーパーを片付ける。

 

A300とA280CFEの正確な射撃でトルーパーは1人、また1人と撃ち倒されていった。

 

サイネスも負けじと敵兵に青いブラスター弾を叩き込む。

 

「ベンネ!援護してくれ!あの輸送機を潰す!」

 

「おう!」

 

N-20タイプのサーマル・デトネーターを手にしたドイスはブラスターの中を潜り抜け、兵員輸送機に突っ込んだ。

 

背後をベンネがカバーしBK-34の連続射撃で周囲の敵兵を薙ぎ払った。

 

「あそこに敵がいるぞ!輸送機をっ!」

 

2人に気づいたストームトルーパーの伍長も塔の上からアルメトが狙撃した。

 

2人の援護のおかげでドイスは無事に兵員輸送機に近き、攻撃のチャンスを手にした。

 

直様サーマル・デトネーターを起動し兵員輸送機に投げ入れる。

 

「伏せろ!!」

 

ドイスとベンネはすぐ地面に伏せ、その僅か数秒後に兵員輸送機は内部から大爆発を起こした。

 

機能が停止しリパルサー・リフトを失った輸送機はそのまま車体が地面に落ちる。

 

「よくやったドイス!」

 

ジョーレンはドイスの働きを褒め称え、塹壕内の3人はすぐにドイスの下へ向かった。

 

遮蔽物となった輸送機の裏に隠れ、敵兵を蹴散らした。

 

「またとんでもねぇ無茶しやがって!」

 

「仕方ねぇだろ!それに俺はまだ生きてる」

 

立ち上がったドイスは再びブラスター・ピストルを持って再び戦いに向かった。

 

サイネスは5年ほど前から彼と共に傭兵稼業をやっているがずっと死に急いでいるような戦い方だ。

 

サイネス自身もブラスター・ライフルの銃剣や銃床で近接戦を好む戦い方だがドイスはもっと命知らずだ。

 

Eウェブの弾幕射撃が飛んでこようとサーマル・デトネーターが降ってこようと躊躇いなく突っ込んでいく。

 

アンバランはもっと冷静で知的な種族かと思っていたが彼を見ているとまるで印象が変わる。

 

「敵の増援!30人くらい入ってきる!」

 

ジェルマンが部隊全体に叫び、後方で援護射撃を行っていた兵士達が前に出てきた。

 

メデリカ中尉の小隊はジェルマン達が来るまでに8人がブラスター弾に当たって負傷し、今の戦闘でも既に3名が負傷した。

 

小隊の1/5が戦闘不能な状態にも関わらず小隊の戦意が衰えないのは彼らが祖国を守らんとする意思があるからだろう。

 

「輸送機O-528、右方面から回り込んで歩兵隊を蹴散らせ!O-526は正面の援護!」

 

中尉の小隊は50名の兵と5輌の兵員輸送機で構成されている。

 

輸送機も各所の遮蔽物や建物の影に隠れて砲台が割として戦っていたが敵を撃退するには機動力が必要だった。

 

ジェルマン達が前衛で敵と撃ち合いをしている間に兵員輸送機が狭い通路を通って後方へと潜り込んだ。

 

2門のレーザー砲と取り付けられたEウェブの一斉射撃で敵兵を蹴散らす。

 

「よし!このまま連中を蹴散らして押し返せば…!」

 

「小隊長!AT-STが!!」

 

煙幕の中からAT-STが現れ、挨拶と言わんばかりに建物の影に隠れていた2名の兵士をブラスター砲で吹き飛ばした。

 

兵士達はすぐに自身の危険を察知しブラスター弾を放ちながら後退を開始した。

 

メデリカ中尉もすぐに指示を出す。

 

「対戦者班は3方に分かれ同時攻撃!それまで我々で引き付けるぞ!」

 

E-11を放ちながら塹壕内を駆け抜け、AT-STの掃射がきた瞬間に中尉と近くにいたベネリタ軍曹が伏せた。

 

お陰で間一髪助かったが彼らの後ろにいた兵士2人は直撃を喰らって戦死した。

 

この状況を見てジョーレンはなんとかせねば小隊が全滅すると確信した。

 

「スカウト・ウォーカーを俺達で潰すぞ、足にこいつをつければ確実に倒すことは出来るはずだ」

 

ジョーレンはそう言ってサーマル・インプローダーを取り出した。

 

ベンネが真っ先に「そいつは無茶だぜ?」と感想を述べる。

 

「全員フラッシュ・グレネードは持ってるな?俺とルーシーでこいつを足に括り付けて反対側の輸送機まで走るからお前達でまず随伴の目を潰してくれ」

 

「マジでやるつもりなんだな!?」

 

「オーケー分かった、任せろ」

 

サイネスはすぐに了承しフラッシュ・グレネードを手にした。

 

ベンネも散々悩んだ挙句、フラッシュ・グレネードをバッグから出した。

 

ドイスは既にフラッシュ・グレネードを手にし合図を待った。

 

「アルメト、お前フラッシュ・チャージ持ってるか?」

 

ジョーレンはコムリンクを繋いでアルメトに尋ねた。

 

『ああ、あるぜ。状況的にAT-STの目を潰せばいい感じか?』

 

「流石だ狙撃手、5秒カウントするから一気に撃て」

 

『了解だ!』

 

ジェルマンとジョーレンはサーマル・インプローダーに吸着剤を付け、走る準備を整えた。

 

輸送機の影から状況を確認し、ジョーレンはカウントの準備を始めた。

 

3人は近くに寄り、投擲の準備を終える。

 

「それじゃあ行くぞ……5、4、3」

 

周囲に底知れぬ緊張が走る。

 

遠く離れた塔の中でアルメトもフラッシュ・チャーを放つ専門のアタッチメントを取り付け、カウントの終了を待った。

 

「2、1、投擲開始!!」

 

地上と空中にフラッシュ・グレネードとフラッシュ・チャージが放たれ、数秒して両者一気に炸裂した。

 

辺りが眩い光に包まれ視界が奪われる。

 

その中でジョーレンが叫んだ。

 

「行くぞ!!」

 

眩い白い光の中をジェルマンとジョーレンが駆けた。

 

敵兵の中には2人の存在を察知してE-11を放つ者もいたが不正確な射撃は全て外れた。

 

AT-STは塔に狙撃手がいることを察知してそちらに集中が集まっていた。

 

「まずい!!」とアルメトは直ちに撤収し、彼がいた塔にはレーザー弾が撃ち込まれた。

 

その瞬間、ジェルマンとジョーレンがAT-STの両足にサーマル・インプローダーを取り付ける。

 

そのまま一気に反対側の兵員輸送機の残骸まで走り抜け急いで地面に伏せた。

 

大気を圧縮する独特の音と共にサーマル・インプローダーは巨大な爆発を引き起こした。

 

当然AT-STは破壊され、周囲にいたストームトルーパーも巻き込まれた。

 

兵員輸送機の残骸に隠れていたジェルマン達は皆無事で爆煙が過ぎ去ると共に立ち上がって状況を確認した。

 

「スカウト・ウォーカー撃破!!」

 

別の兵士が真っ先に大声を上げて全体に報告した。

 

攻撃が成功したことに安堵した2人だったがすぐに塔の方向を見て分隊の仲間を心配した。

 

「アルメト、無事か!?」

 

『ああ、辛うじて生きてる…!こっちは援護射撃を続行する』

 

コムリンクの先からは元気そうなイシ・ティブの声が聞こえた。

 

2人は再び安堵しブラスター・ライフルを持って戦闘に戻った。

 

だが再び来る最悪の報告に表情を曇らせた。

 

『こちら偵察班!森林部からAT-ATが来てる!!数1!!』

 

「オイオイマジかよ…」

 

ブラスターのスコープを覗くとそこには本当にAT-ATがいた。

 

後方に控えていた残存輸送機と合流し小隊に接近しつつあった。

 

「小隊シールドじゃアイツの主砲は良くても3発が限度だぞ…!!」

 

メデリカ中尉は苛立ちをぶつけた。

 

AT-ATを歩兵が倒す為にはある程度の視界不良と高低差のある領域での戦闘でないt勝ち目はなかった。

 

例えばここにジェダイがいれば話が別だがそうでない以上小隊が全滅する覚悟で戦ってもAT-ATは道連れには出来ない。

 

ただ1個小隊が全滅し、その骸をアサルト・ウォーカーの良大な足に踏み潰されるだけだ。

 

流石にこれは無理かと中尉が撤退の判断を鵜出そうとしたその時、後方から赤いレーザー弾が数発放たれた。

 

レーザー弾は全て森林から出たAT-ATの顔面に命中し、そのまま顔面を吹き飛ばした。

 

操縦手、砲手、車長を失ったAT-ATは地面に崩れ落ちる。

 

「AT-AT撃破!」

 

「何が起きた…!?」

 

「小隊長あれを!!」

 

ベネリタ軍曹が指を差した先には友軍のAT-ATがいた。

 

しかも1台だけではなく3、4台以上いる。

 

「これが司令部の言っていた増援か…!」

 

メデリカ中尉を始め、多くの兵士達がウォーカーの到来を喜んだ。

 

ブラスターを片手に両手を振り上げ「ありがとう!!」とか「敵を蹴散らしてくれ!」と声援を送った。

 

その様子を指揮車型AT-ATの中である男が見ていた。

 

パルトン准将、これから地獄を作り出す張本人が。

 

 

 

 

 

「第2戦闘団全隊へ、作戦通りウォーカー部隊で突破口を切り開く。戦車隊はウォーカー隊の突破が成功次第連中の腹ン中を食い破れ。ちょび髭のクソどもにセスウェナの男がなんたるかを教えてやれ!」

 

まるでスポーツを楽しむかのような笑みでパルトン准将は各隊に指示を出した。

 

ハッチからペリスコープを下ろし、周囲を見渡す。

 

先ほど撃破したAT-ATは側面から進撃中の部隊だったようで機甲戦力を失った影響で友軍と戦っていた親衛隊は撤退を開始した。

 

あの村の中から手を振り歓声を上げる兵士達の姿はパルトン准将の脳裏にしっかりと焼きついていた。

 

パルトン准将は塹壕のような戦闘が停滞するものは大嫌いだったが、意地でも敵に喰らいついて戦い続ける兵士達には一兵卒であろうとエイリアン種族であろうと無条件に敬意を表した。

 

あそこにいる兵士達は本物の勇者であり誰しもが尊敬すべき人だと考えていた。

 

無論今引き連れている第2義勇兵戦闘団の将兵達もそうだ。

 

そしてそんな彼らに報い、勝利の栄光を与えるのが自分の仕事だとパルトン准将は息巻いていた。

 

彼が乗るAT-ATから早速軽ターボレーザー砲が放たれ、前線へ急行中のM-2セイバー級ホバー・タンクを撃破した。

 

続いて後方のAT-AT達が断続的に軽ターボレーザー砲を発射し兵員輸送機や戦車を次々と破壊していく。

 

親衛隊にも精神が屈強な奴はいるようでスマート・ロケットを用いて反撃に来る兵士もいたがすぐに中型ブラスターによって薙ぎ倒された。

 

「いい狙いだキャヴァルリー4、キャヴァルリー5!どんどん撃て!」

 

『准将、2キロ先に大隊クラスの指揮車両を確認。後退を始めています』

 

「了解、キャヴァルリー7は牽制射撃で足を止めろ。キャヴァルリー9はちょいと遠いがトドメを刺せ。こいつの射程なら確実に行けるはずだ」

 

『了解!!』

 

偵察のスカウト・トルーパーからの報告を受けて、突撃陣形を構成した右翼方面のAT-ATから直様軽ターボレーザー砲が放たれる。

 

指揮車両型ジャガーノート・タンクの前後に砲弾が直撃し下手に動けなくなった所をトドメの1発がジャガーノートの側面を撃ち破った。

 

更にもう1発の砲撃を受けてジャガーノート・タンクは爆散した。

 

指揮車両の撃破を確認したパルトン准将は「いい腕だ!」と2台のウォーカーを褒め称えた。

 

第2義勇兵戦闘団の進撃速度は凄まじくほぼ一方的な暴力にさえ思える程の光景であった。

 

ウォーカー部隊が横合いから殴りかかってきたことにより親衛隊のケッセンダ攻略部隊は大混乱に陥った。

 

しかも指揮車両や補給地点が優先的に攻撃された為部隊は更に麻痺した。

 

「さあどうだァ?親衛隊にはもっと骨のある奴はいないのか?」

 

『准将、右方向7キロの地点に敵AT-AT1個小隊を確認。そちらに向かっています』

 

敵を探すパルトン准将に丁度いい獲物が現れた。

 

早速現れた敵を倒そうと息巻いていた所にまた別の報告が入ってきた。

 

『閣下、前線のAT-AT1個中隊が引き返してそちらに向かっています。前線部隊が追撃を用意していますがそちらの接敵の方が早そうです』

 

「何?了解した…さてどちらに誰を向かわせるか」

 

右からはAT-AT1個小隊、そして前線から引き返してきたAT-AT1個中隊が左側に現れた。

 

どちらにせよ返り討ちにする自信はあるが送る部隊は考えねばならない。

 

パルトン准将が数秒考えていると別のAT-AT中隊から進言の通信が入った。

 

『閣下、ここは我が第1機甲師団の第4機甲大隊にお任せを』

 

『我々で敵小隊を撃滅し、目標進撃地点まで前進します』

 

名乗りを上げたのは第1機甲師団所属の第4機甲大隊、ベレーサル少佐とアイブルームス中尉だった。

 

基本的に大セスウェナ連邦軍の機甲大隊は12、13台のAT-AT1個中隊を中心に僚機のAT-ST、24、26台のAT-ST2個中隊、そして防空中隊、戦車中隊によって構成されている。

 

ベレーサル少佐の機甲大隊も同様であり、アイブルームス中尉の機体を含む13台のAT-ATを所有していた。

 

「分かった、右側の敵は君達に任せる。キャヴァルリー・フォース全隊、左からくるAT-ATを撃破しにいく。数の上では同数だが我々は負けん!」

 

キャヴァルリー・フォースのAT-ATは左旋回し、迫る敵の迎撃に向かった。

 

道中、反対方向に進むベレーサル少佐のAT-AT部隊に敬礼しながら。

 

パルトン准将の隊は敵AT-AT中隊と遭遇するまで後退中の親衛隊車両を数十輌単位では破壊した。

 

やはりAT-ATの行手を阻めるものはAT-ATくらいしかないらしい。

 

親衛隊のAT-ATとパルトン准将のAT-AT部隊が対峙した瞬間、戦場の空気はガラッと変わった。

 

「敵アサルト・ウォーカー視認、報告にあったⅢ号型4台、Ⅳ号型が8台」

 

「性能は無論向こうの方が上、それでいて射程距離は向こうのほうが長い」

 

第三帝国のAT-ATが擬似的に備えている合成ビーム・レーザーはAT-ATだろうと一撃で破壊する。

 

これはパルトン准将達にとっても十分驚異だ。

 

だがこの機甲戦闘に人生を賭けている准将は勝機を編み出していた。

 

「全隊、煙幕を展開し2キロ前進。スコープを熱源探知モードに切り替えろ。キャヴァルリー・エスコート1、煙幕が張られたら暫く中で待機だ」

 

AT-ATの背中から大量のスモーク・グレネードが投擲される。

 

グレネードが周囲を取り囲み、視界を奪った。

 

これで親衛隊のAT-ATは合成ビーム・レーザーが使えなくなったが同時にこちらの目も奪われた。

 

散々訓練でやってきた戦術だ。

 

親衛隊のAT-AT中隊は全砲門を用いた一斉射撃を煙幕の中でに放って敵を包囲殲滅しようと試みた。

 

メガキャリバーキャノンと通常の重レーザー砲が一斉に放たれる。

 

「全隊被害報告!」

 

放たれた砲撃は殆どが外れたがパルトン准将のAT-ATには後部装甲に1発だけ被弾した。

 

尤も装甲は抜かれず実態は殆ど掠っただけの状態であったが。

 

「各機問題ありません」

 

「では戦闘続行だ、各小隊熱源の方向に向かって一斉射!撃て!」

 

軽ターボレーザーが放たれその殆どが煙幕を取り囲むAT-ATに命中した。

 

数発の軽ターボレーザーを喰らったAT-ATは流石に耐え切れず爆散し、12台のうち4台のAT-ATが撃破された。

 

頭を失った首の部分から黒い煙を上げ、AT-ATが地面に倒れ込む。

 

AT-AT本体の熱源は隠せても砲撃時の熱源は感知出来る。

 

敵に敢えて撃たせることで煙幕の中からでも位置を割り出し狙い撃つ戦術だ。

 

そして反撃を防ぐ為にパルトン准将からすぐに陣地転換の命令が出た。

 

その間に親衛隊のAT-ATは前進しつつ反撃を撃ち込んだ。

 

勿論キャヴァルリー・フォースは移動が完了し砲の狙いは正確ではない為全弾外れた。

 

そしてこれが狙いだった。

 

再び3台のAT-ATが煙幕の中で爆発を起こし、地面に崩れた。

 

『こちらキャヴァルリー・エスコート1-1!AT-ATの撃破を確認!煙幕内より退避する!』

 

煙幕の中でずっと控えていたAT-ST部隊が一斉に振盪ミサイルをAT-ATの弱点に叩き込んだ。

 

AT-AT1台につき4台のAT-STによる弱点同時攻撃、撃破には十分な火力だ。

 

「よくやったエスコート1!全隊、離脱を援護しろ。残りは5台だ!一気に片付けるぞ!」

 

左側面に回り込んだキャヴァルリー・フォースのAT-ATが一斉に軽ターボレーザーを放つ。

 

親衛隊のAT-ATは備え付けの振盪ミサイル発射管からミサイルを放ち、範囲攻撃を繰り出した。

 

しかし放たれたミサイルは後方に控えさせていたAT-AA1台とAT-MPマークⅢ3台のの迎撃用ミサイルによって破壊された。

 

逆にミサイルを放ったことにより再びAT-ATの位置を熱源で捉えることが出来た。

 

各小隊ごとにターゲットを割り振り、攻撃に専念する。

 

90度旋回して親衛隊のAT-ATが応戦に出たがもう手遅れであった。

 

正面から軽ターボレーザー砲の集中砲火を受け、次々と撃破されていく。

 

「左に12度ずらせ、今だ!」

 

最大出力の軽ターボレーザー弾が最後の敵AT-ATに直撃し右前足が吹き飛んだ。

 

更にキャヴァルリー2の援護射撃が被弾箇所に命中し二度目の爆発を引き起こす。

 

それでもなお抵抗するAT-ATだったが右側に回り込んだキャヴァルリー3とキャヴァルリー4の集中砲撃を受けてバランスを崩し、AT-ATは横向きに地面へと打ち倒された。

 

『今ので最後です!』

 

「ああこっちでも見えてる。各隊センサーで周囲に生き残りがいないか確認しろ、偵察隊は何か見つけ次第報告を入れろ」

 

徐々にスモークは薄れ、代わりに破壊されたAT-ATの黒い煙が周囲w薄く取り囲んだ。

 

キャヴァルリー・フォースのAT-ATはゆっくりと旋回し敵後方への進撃準備を開始した。

 

『准将、第14機械化旅団のウォーカー隊が逆襲に成功しこっちに向かっているとのことです』

 

「ほう、つまりこっちに差し向けたAT-AT分の穴を上手く突いたって訳か。全隊直ちに前進開始!第4大隊と合流して部隊全体の向きを変える。14機械化の連中に追いつかれるなよ!」

 

各車長から威勢の良い返事が返ってくる。

 

パルトン准将の戦闘団が側面を突き突破に成功した結果、ケッセンダ攻略部隊は対応に追われ前線部隊の一部を反撃として送り込むという選択を取った。

 

その結果前線部隊は薄くなり虎の子として控えていた機械化旅団のAT-AT部隊の逆襲を喰らい前線は崩壊した。

 

更に予備の旅団も投入されケッセンドラ方面全域でケッセル王国軍の反撃が始まった。

 

お陰で親衛隊は完全に混乱し一部では無秩序な撤退が始まっていた。

 

どれもこれもパルトン准将が最初の楔を打ち込んだ結果でありケッセンドラでの趨勢を決めたのは紛れもなく彼だった。

 

『こちら第4機甲大隊ベレーサル少佐、我が隊は目標進撃地点に到達。現在長距離射撃で撤退台中の敵部隊に攻撃中』

 

「こちらキャヴァルリー・フォースのパルトン、今そっちに合流しようと移動中だ。そっちにもう敵はいないようだな」

 

第4機甲大隊は特にアイブルームス中尉の活躍により敵AT-AT小隊を早期に撃破し目標地点まで進撃した。

 

アイブルームス中尉のAT-ATが敵ウォーカーに向けて長距離射撃を敢行し、見事弱点である首元に命中させて一撃で敵ウォーカーを撃破したのだ。

 

更に中尉のAT-ATは敵の指揮車両型ジャガーノート・タンクを行動不能にし、中にいた連隊長とその幕僚達を全員生捕にした。

 

無論アイブルームス中尉の活躍だけだった訳ではないが彼はパルトン准将が想定した通りの大戦果を上げた。

 

『ええ、逃げてく兵員輸送機かオキュパイア辺りが大多数です』

 

「地点を第47機械化大隊と交代して指定する地点まで移動しろ。それと空輸の準備も頼む」

 

『了解!』

 

「直ちに第67機甲連隊を呼び出せ。奴らにも移動の準備を命ずる」

 

パルトン准将の問いにAT-ATドライバーは「どちらへですか?」と尋ねた。

 

するとパルトン准将は再び無邪気に近い笑みを浮かべて答えた。

 

「次の戦場だ」

 

ケッセンドラでの勝負はついた、だがこのケッセルではまだ戦っている兵隊がいる。

 

きっと我々機甲部隊の力を欲しているはずだ。

 

1時間後、パルトン准将率いる戦闘団が燃料鉱山地帯を攻める親衛隊に急襲することをまだ誰も知らないでいた。

 

 

 

 

軌道上では熾烈な艦隊戦が未だに続いていた。

 

親衛隊艦隊は数的優位を生かしてケッセル艦隊を押しているもののケッセル艦隊は未だに粘り強く踏ん張っている。

 

むしろ数的優位を生かして若干でも有利に立てている時点でヴェルケンダール中将は優秀な艦隊指揮官と言えるだろう。

 

何せ相手はあの大提督、オスヴァルド・テシックなのだから。

 

「”アンドリス”、”ポルスティン”中破、いったん後退するとのこと」

 

「両艦の後退を援護。”キング・ケッセル”各員に次ぐ、後少し耐えればすぐに援軍が来る!もう少し踏ん張ってくれ」

 

パルコビル上級大佐は”キング・ケッセル”の乗組員を鼓舞し、もう少し耐えるよう願った。

 

既に親衛隊艦隊はケッセル艦隊に食いついており、ここまでの作戦は成功だったと言える。

 

テシック大提督の正確な指揮統制のお陰で艦隊の損害も少なかった。

 

一方の親衛隊艦隊は正面の敵艦隊を撃滅することに躍起になっていて周囲の警戒が疎かになっていた。

 

ほぼ全ての艦艇の火力を敵艦隊にぶつけている為哨戒艦を回すだけの余裕もなかった。

 

だがここで敵艦隊を撃滅出来れば軌道爆撃で地上の制圧戦を優位に進めることが出来る。

 

現状劣勢と聞く地上の親衛隊も軌道爆撃の火力支援があれば戦況を巻き返せるはずだ。

 

「敵艦隊は傷ついてきている!このまま押し続けろ!」

 

トラキュレント”のブリッジにいるドルベルク准将ら参謀達は既に勝利を確信していた。

 

何せ敵艦隊の半数近くが小破か中破に陥っており、艦隊全体の攻撃力も奇襲を受けた時から下がっていた。

 

参謀達は最初の段階で艦隊戦力の半分を消し飛ばせなかった時点で彼らの負けは決したと推察した。

 

ベラトール級がどれほどの砲火力を発揮しようと親衛隊艦隊は耐えている。

 

むしろ艦隊全体の火力でいえば上なのは親衛隊艦隊であり、やがて劣勢になるだろうと踏んでいた。

 

その結果が今目の前に広がっている。

 

「閣下!このままいけば1時間以内に敵艦隊を撃滅出来ます!」

 

ドルベルク准将はヴェルケンダール中将にそう進言した。

 

中将の方がまだ冷静で落ち着いてものを見ていたが内心はドルベルク准将と同じであった。

 

「このまま敵艦隊の両翼を撃破しベラトール級に集中砲火を浴びせる。あのデカブツをケッセルに叩き落とせば連中はもう戦意を失うはずだ」

 

可能な限りのエネルギーをターボレーザー砲と偏向シールドに回し、攻撃力を高める。

 

ターボレーザーの鈍い音が何度も宇宙空間に木霊した。

 

この宇宙(うみ)から砲撃の音が消えることは当分ないだろう。

 

トラキュレント”にも何度か直撃を受け船体が揺れるも問題なく戦闘は続いている。

 

1発、2発の砲撃が偏向シールドを破って戦隊に直撃したところでインペリアル級の装甲は簡単には破れない。

 

親衛隊艦隊はこのまま戦闘を続け、やがて勝利を掴む”()()()()()”。

 

艦隊の背後から突如何十発ものターボレーザー弾が放たれ、比較的シールドの薄い艦艇の背面にダメージを与えた。

 

何隻かのインペリアル級はエンジンに直撃を喰らい、動かなくなっていた。

 

「なんだ!?状況報告!」

 

揺れる”トラキュレント”のブリッジでヴェルケンダール中将は状況報告を求めた。

 

「安泰の背後から敵襲!ターボレーザーの一斉射撃で各艦のエンジンに被害が出ています!」

 

「映像出します!」

 

ブリッジのモニターに映像が映る。

 

そこには明らかに十隻のインペリアル級とヴィクトリー級、アークワイテンズ級らの艦隊がいた。

 

当然あの艦隊が味方ではないことぐらいすぐに見当がつく。

 

ケッセル側の主役の登場だ。

 

「後方敵艦隊インペリアル級10、アークワイテンズ級20、ヴィクトリー級15!」

 

「砲撃きます!」

 

再び敵艦隊からの一斉砲撃が放たれ艦隊が爆発の光に包まれた。

 

二射目で致命傷を負い、轟沈するアークワイテンズ級も出始めた。

 

インペリアル級ら主力艦にも決して少なくはない被害が出ている。

 

「敵旗艦より広域通信!」

 

「流せ!」

 

もう1つのモニターに敵旗艦インペリアル級”エリーモシナリー”の映像付き通信が映し出された。

 

エリーモシナリー”、その艦名を聞いてブレッツ大佐があることを思い出した。

 

5年、いやもう6年前のエンドアの戦いに参加し第二デス・スター破壊後に消息を絶ったインペリアル級のうちの一隻。

 

13人いるうちの1人の大提督を乗せていたインペリアル級。

 

「まさか…この艦隊のどこかにテシック大提督が…?」

 

彼の疑念はモニターに映る1人の美少女によって無視された。

 

何せそこに映る美少女はこのケッセルを束ねる実質的な最高指導者だからだ。

 

つまり彼女を討ち取れば指導層を失ってケッセルは混乱する。

 

しかし彼女は目の前にいるのにも関わらず遠い存在であった。

 

何せ艦隊の背後にインペリアル級十隻を引き連れて陣取っている。

 

『ご機嫌よう親衛隊の皆様、私はクラリッサ・ヤルバ・パイクと申します。私があなた方にこうして話し合いの機会を設けた理由は1つ、あなた方に降伏をお勧めしに参りましたわ』

 

クラリッサはその愛らしい美人な顔で親衛隊の将兵を小馬鹿にするような笑みを浮かべた。

 

当然”トラキュレント”の中でもクラリッサに対する怒りは爆発した。

 

「あの小娘!!」

 

「閣下!!今すぐ艦隊を反転してあの野蛮人の小娘を抹殺しましょう!」

 

「落ち着け!今艦隊を反転すれば双方から砲撃を喰らうだけだ!」

 

参謀達を宥めヴェルケンダール中将は”トラキュレント”の広域通信を用いてクラリッサの提案に返答を返した。

 

『親衛隊ケッセル攻略艦隊旗艦”トラキュレント”、艦隊司令官のヴェルケンダール中将である。よく聞けケッセルの野蛮人ども、我々親衛隊は皆総統に死ぬまで忠誠を果たすと誓った!つまり貴様らのような劣等種と戯れ、違法産業で生み出した汚れた金を啜り、スパイスで快楽に溺れるしか脳のない野蛮人どもに降ることはないということだ。今に見ていろ、我が艦の砲火力で貴様らの首を吹っ飛ばしてやるからな!』

 

降伏は拒否された。

 

クラリッサは軽く高笑いを浮かべ”エリモシーナリー”のブリッジからヴェルケンダール中将の返答を受け入れた。

 

「残念ですが承知しましたわ、あなた方にも折角ケッセルにお越しになられたのだからスパイス鉱山をお手伝いして欲しかったのですが…仕方ありませんわね」

 

刹那、彼女の目つきが変わった。

 

戦いを楽しむ人間の目つきだ。

 

「では簒奪者の偽りの総統に忠誠を誓った皆様、私を殺してみなさい」

 

その一言共に広域通信は切れ、”エリーモシナリー”のブリッジに控えていたフォルモス星系艦隊司令官、ヒューゴ・トルージェ少将が艦隊に砲撃命令を出した。

 

インペリアル級十隻、ヴィクトリー級十五隻、アークワイテンズ級二十隻の連続砲撃は凄まじいものだ。

 

次々と親衛隊艦隊のエンジンを吹き飛ばし航行不能にしていった。

 

更には正面のケッセル艦隊も攻勢に出る。

 

キング・ケッセル”と共に動けなくなった艦艇への集中砲撃を加える。

 

最初期の奇襲とは比べ物にならないほどの損害が出始めていた。

 

前後からの挟み撃ちで艦隊に損害と混乱を齎し、一部の艦はクラリッサを討てば全てが終わるという短絡的な発想で独断行動を開始した。

 

何隻かのインペリアル級が勝手に後方へ反転し両艦と衝突する。

 

そこへ前後からの集中砲火を受けて取り返しのつかないダメージを負った。

 

「敵、だいぶ混乱していますね」

 

「前門のドレッドノート、後門の増援艦隊、これだけで混乱は確実な上に私がここにいるということをお伝えしたらああなりますわ。何せ私を討てばこの状況を打破出来るかもしれないという希望があるんですもの」

 

本来ヴェルケンダール中将は艦隊をこのまま前進させて正面のケッセル艦隊と乱戦状況に入り、可能な限り後方の増援艦隊の砲撃を防ぐつもりだった。

 

エンドアの戦いでアクバー元帥がランドに言われたのと同じ考えだ。

 

前後から集中砲火を浴びるよりはマシだと。

 

しかしクラリッサは後方にいる。

 

この戦いを終わらせられるかもしれない全ての鍵が後ろにいるのだ。

 

彼女を討てばなんとかなるかもしれないと多くの将校達が簡単に見える方向へ突き進んだ。

 

それこそがクラリッサが張った罠とも知らずに。

 

「功名とはそれだけで麻薬のようなもの、狂ってしまうのも仕方ありませんわ」

 

「僕の名は使わなくてよかったんですか?」

 

マルスはふとクラリッサに尋ねた。

 

ヒルデンロードの名は親衛隊の将兵全てが記憶している。

 

しかもマルスは単に英雄ヒルデンロードの息子というだけではない。

 

彼は何故第三帝国が生まれたかの原因を知っているのだ。

 

そのことを全て話してしまえば良かったのではないかと彼は疑問に思っていた。

 

「あなたの知っていることとあなたの名前はまだ使う時じゃありませんわ。もっと事ご自分を大切になさって」

 

マルスの頬に軽くキスをするとクラリッサは撃破される敵艦隊に目を向けた。

 

「さて、ご理解頂けたかしら?私達の故郷に手を出すとどうなるか、私の大切なものを傷つけた報いを」

 

クラリッサは眼前の光景はやがて第三帝国全土に拡大すると確信していた。

 

この戦いの為に多くの国家が力を貸してくれた。

 

大セスウェナ連邦は義勇兵を授け、チス・アセンダンシーと亡命帝国は武器と食糧援助を授け、クワットはこれだけの艦隊を授けてくれた。

 

ファースト・オーダーはやがて統一条約の中で行動に出るだろう。

 

レジスタンスだってまだ死んだわけではない。

 

第三帝国の敵は増えすぎた。

 

親衛隊艦隊はズタズタに引き裂かれ最早組織的な反撃は不可能になっていた。

 

やがては旗艦”トラキュレント”にも集中砲火が集まり、沈み始めた。

 

クラリッサが引き連れてきた艦隊の登場によってケッセル軌道上での艦隊戦は決着がついた。

 

十五隻いた親衛隊艦隊は旗艦”トラキュレント”を含む十一隻が撃沈し、辛うじて安全圏まで後退出来たのは四隻の中破したインペリアル級と僅かな両艦、そして地上部隊を乗せた揚陸艦隊だけであった。

 

ドルベルク准将ら艦隊参謀は脱出したものの、ヴェルケンダール中将は敗北の責任を取って”トラキュレント”の中で戦死した。

 

同じ頃地上でも決着はついた。

 

ケッセンドラ方面は逆襲を受けて敗退し、燃料採掘場方面の親衛隊も第一防衛戦を突破出来ずに駆けつけたパルトン准将の第2義勇兵戦闘団の突撃を受けて撃退された。

 

ケッセル王室が位置するケッセル城へ向かった部隊も一部が偽情報を掴まされ進撃中にヴィクトリー級艦隊の軌道爆撃を受けて壊滅。

 

ケッセル王国地上軍の粘り強い抵抗と的確な反撃を受けて親衛隊地上軍は各戦線で致命的な打撃を被った。

 

そこに艦隊が包囲殲滅されているという報告を受け親衛隊地上軍は急いで撤退の準備を開始した。

 

兵員の輸送を最優先に殆どの重装備が放棄され、セキューター級はストームトルーパーが鮨詰め状態のまま発艦しケッセルを離脱した。

 

兵員、装備共に地上軍も打撃を受け大敗を喫した。

 

この圧倒的な大戦果にケッセル地上軍、ケッセル宇宙軍共に将兵達が歓喜の声を上げ大勝利を喜んだ。

 

その瞬間将兵達は今まで感じたことのないような興奮と快感に包まれたであろう。

 

クラリッサは約束を違えなかった。

 

このケッセルの戦い、それは参加した将兵達にとって黄金のようなひと時であった。

 

 

 

 

 

 

-第三帝国領 コア・ワールド コルスカ宙域 コルサント星系 惑星コルサント 国防地上軍参謀本部-

ケッセルの戦いの結果はコルサントの本国にも知れ渡った。

 

十五隻のインペリアル級、装甲師団を含む1個地上軍を投入して生きて帰ってきたのは四隻のインペリアル級、装備を合わせれば戦力的にほぼ半分になった地上軍。

 

スターファイターも凡そ1/3が撃墜されたこの結果は正に大敗であり、当面ケッセル攻略軍は攻勢に出れなくなった。

 

ケッセル相手に負っていい損害ではない。

 

今回の戦いには参加せず観戦に回っていた国防軍であったがこの結果は流石に予想外だった。

 

多くの国防軍将校達は親衛隊の無能を批判したがそれと同じくらい入ってきた報告に対しての議論が活発になっていた。

 

特に地上軍の頭脳たる参謀本部では後者の議論と作戦計画の準備が進められていた。

 

『閣下、エンリッヒ・マーケス少将が面会を求めております』

 

参謀総長執務室に無条件で取ることの出来る人物は限られている。

 

このエンリッヒ・マーケス少将は国防地上軍第18軍参謀長である為、即座に入室という訳にはいかなかった。

 

しかしマーケス少将を呼びつけたのは参謀総長の上級将軍(High General)であった。

 

上級将軍は丸メガネを上げ、フロントの警備室に「通してくれ」と頼んだ。

 

暫くして執務室のドアが開き、1人の地上軍少将が入ってくる。

 

第三帝国式敬礼をして「エンリッヒ・マーケス、閣下のお呼び出しにより参集しました」と挨拶を行った。

 

「よく来た少将、みんな一旦休憩だ。私は暫く少将と2人で話がしたいから外に出て休んでてくれ」

 

「了解」

 

執務室の中にいたヘルダー上級将軍の副官や参謀本部の参謀達は皆資料を戻して執務室を出た。

 

ドアが閉まり防音の為に施錠がなされるとヘルダー上級将軍はマーケス少将に近くのソファーに座るよう促した。

 

少将は制帽と革手袋をソファー前のテーブルに置き、静かに座った。

 

反対側にヘルダー上級将軍が座ると早速秘密の話し合いが始まった。

 

「ケッセルで親衛隊の連中が負けたのは知っているな?」

 

「はい、地宙空共に戦力の半分以上が失われたと」

 

「所詮は親衛隊のこと、我々が受けた損害ではないが……ケッセルがここまで強いのは気がかりだ。そこでこれを見てほしい」

 

ヘルダー上級将軍は何枚かの写真が映ったタブレットをテーブルに置いた。

 

マーケス少将が手に取るとそこには宇宙軍情報部が撮影したと思われる輸送艦の写真があった。

 

「カーレリス提督の部署がやってくれた。この輸送艦、どうも出所はサンクト宙域軍のものらしい」

 

「サンクト宙域と言いますと未知領域の」

 

「ああ、連中はケッセルの手助けをしていた。大セスウェナの野蛮人もそうだが連中も我々のことを裏切っていたのだ」

 

ヘルダー上級将軍は忌々しそうに裏切り者達の名前を吐き捨てた。

 

大セスウェナ連邦が義勇兵まで送ってきたことは国防軍の中では周知の事実だ。

 

目に見えた挑発に対し参謀本部は国防軍最高司令部と合同で作戦計画を練り始めている。

 

そして未知領域の裏切り者に対しても同様のことが始まろうとしていた。

 

「少将、これはまだ総統からの認可を受けていない為仮計画となる。今から君に渡す資料を元にある作戦計画を練ってもらう」

 

「”()()()()()()()()”ですか」

 

「そうだ、やがてはやらねばならぬことだがこうも早く障害となって我が帝国の前に立ち塞がってくるのであれば今叩き潰さねばならん。我が国防軍の力を持ってしてな」

 

タブレットをスライドすると次の画面には明確に『未知領域に案する作戦案』と記されていた。

 

連戦連勝を重ねる国防軍が次に目指すのは未知領域、そして裏切り者のいる北西部アウター・リム。

 

「すぐに総統の認可が出て仮ではなくなる。我々は早急に第三帝国の敵を叩き潰さねばならない。そして何より銀河を支配するに相応しいのは我々国防軍だということを人々に知らしめるのだ」

 

参謀本部は第三帝国を次の方向へ導こうとしていた。

 

多くの者達が喜んで同じ方向へ舵を取り、そして沈んでいくのだろう。

 

この日から第三帝国による未知領域侵攻、通称”赤髭(バルバロッサ)”の立案が始まった。

 

 

 

つづく




オデ、現代ノパウル・カレル(自ら戦犯発言)

というわけでナチ帝国75話、いよいよ一波乱ありそうですねぇ

ちなみに冒頭の飯はわしが頑張って選んだ選りすぐりの飯です、コンセプトは普通の飯です

我々が食ってもきっと問題がない飯です(断言)

それでは次のナチ帝国で〜!
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