第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「17週間もあれば我々国防軍は、未知領域を我が物に出来るであろう」
-国防地上軍参謀総長 フリッツ・ヘルダー上級将軍-


北西作戦計画

-第三帝国領 ミッド・リム グライセ宙域 テン・テンペスツ星系 惑星ヴォーテックス 北西総軍司令部 第4演習場-

ヴォーテックスは本来国防軍西方総軍の司令部が設置されていた。

 

そしてコルサントで本格的にチス・アセンダンシーに対する侵攻計画が持ち上がり、その前準備として西方総軍は北西総軍に改変された。

 

今や北西総軍はチス・アセンダンシーと亡命帝国の国境沿い全てに接する軍となった。

 

国防軍における総軍とは各宙域軍を取り纏めた軍集団を取り纏める上位の司令部が総軍であった。

 

その為いざチス・アセンダンシーに侵攻する際はこの北西総軍がそっくりそのままアセンダンシー攻略軍に変貌出来る訳だ。

 

その北西総軍は現在、ヴォーテックスにて1個軍規模の演習を行なっていた。

 

表向きは新設された北西総軍の防衛能力向上演習であったが実態は対チス戦を目的としたものであった。

 

「あそこにいる部隊が全て西部から移動した第18軍です」

 

北西総軍司令官副官部のヴェレガー中佐が演習視察に来た総軍司令官や参謀長、各軍司令官達に手を伸ばして伝えた。

 

中佐の手の先には演習モードの重レーザー砲を放って前進するAT-AT部隊の姿があった。

 

国防軍の演習システムは基本的にトレーニング用のバトル・ドロイドを使用して実戦に近い形で行われる。

 

その為地上に展開されたバトル・ドロイドやインペリアル・アサルト・タンクはAT-ATの重レーザー砲を喰らう度に撃破判定を受けて機能を停止した。

 

「ほうあれが」

 

「動きとしては悪くないじゃないか」

 

上級将校達がエレクトロバイノキュラーで遠方の部隊も見渡し、軍全体が”()()”でどのような動きかを確認した。

 

第18軍は第14擲弾兵団、第17擲弾兵団、第26擲弾兵団、第30擲弾兵団によって構成されている。

 

視察団が見ているのは第26擲弾兵団所属の第271擲弾兵師団の装甲大隊であり歩兵部隊の突破口を切り開いていた。

 

「司令官は確かクーヒェラー君だったね?」

 

北西総軍司令官、エーヴェン・ヨーペルム・ヴィーツベン元帥は軍司令官の名前を尋ねた。

 

ヴィーツベン元帥は国防軍の中では比較的古典派に位置し代理総統に取り入って昇進した者や若い将校とは違って代理総統から距離を置いていた。

 

第18軍司令官のゲルドリヒ・クーヒェラー上級将軍も同じような人物であり僅かだが交流があった。

 

「はい、ついでですが参謀長のマーケス少将は暫くコルサントでの職務がある為ハッセル准将が代理を務めております」

 

「となるとヘルダーが計画立案に任命したのは彼か」

 

「正式な下達はされていませんが恐らくは」

 

ヴィーツベン元帥はエレクトロバイノキュラーを下ろし煙草を口にした。

 

すぐにヴェレガー中佐が煙草に火をつける。

 

本来ヴィーツベン元帥がこの場で煙草を吸うのはご法度であった。

 

第三帝国、特に代理総統が嫌煙家であり禁煙方針を打ち出していた為軍施設などで煙草を吸うのはタブーとされていた。

 

尤も多くの将兵が代理総統の目の前では吸わなくなっただけで彼の目が届かないところでは側近ですら喫煙を嗜んでいた。

 

特に軍隊という場所は娯楽も少なくストレスの溜まる空間だ。

 

煙草の1つもなければ息抜きすら難しい。

 

何よりヴィーツベン元帥のような軍歴の長い将校は喫煙が癖になっており、彼自信そこまで代理総統を心酔していないことも合わさって喫煙に抵抗はなかった。

 

周りの軍司令官や参謀長達も彼に続いて何人かが煙草を吸い始めた。

 

「そういえばチスと亡命帝国の様子はどうだ。こちら側の演習も向こうは察知しているはず」

 

ふとヴィーツベン元帥は尋ねた。

 

そこで帝国情報部出身者で北西総軍情報部長をカイト・クリューヴィン宇宙軍大佐が問いに答えた。

 

「現状国境付近に異常はないそうです。北部へ展開中の主力軍が南下してきたという報告もありません」

 

「相変わらず連中は戦力を外領域の方に向けているのか」

 

第6軍兼プラクシス宙域軍司令官、ヴェルダー・ライヒェウ元帥は自身のエレクトロバイノキュラーを下ろして他の軍司令官達に尋ねた。

 

ライヒェウ元帥はヴィーツベン元帥同様共和国軍時代からの将校である。

 

2人が対照的に違うのは代理総統を肯定的かそうでないかの点のみであった。

 

ライヒェウ元帥は代理総統を比較的肯定しており、国防軍の拡大も今日までの勝利も全て国防軍と代理総統の力によるものと判断していた。

 

「はい、度々大規模演習を行っているという報告は入っていますが」

 

「だが我々向けではないのだろう?一体何と戦うつもりなのやら」

 

「外から来る敵にでも備えているんでは」

 

「ハッ、ありえん」

 

ライヒェウ元帥はプラクシス宙域艦隊司令官のヴェルゼ・リーベンベルグ提督の発言を一蹴し煙草の火をねだった。

 

提督はライターで火をつけようとしたが上手く火がつかず仕方なくヴィーツベン元帥のライターを借りることとなった。

 

ヴィーツベン元帥自身リーベンベルグ提督の発言を信じるつもりはなかったが可能性として考慮に入れるべきだろうとは思っていた。

 

この銀河は何が起こるか分かったものではない。

 

「何はともあれ、だ。第18軍は北西総軍でも上手くやれるということが今回の演習で証明された。後は錬成して参謀本部の連中を待つだけだ」

 

ライヒェウ元帥は煙草の煙を吐きそう評した。

 

演習中の各部隊を視察して回ったが特に問題はなく、前線の装甲部隊もしっかりと突破口を形成しており第18軍の戦闘能力は証明された。

 

ヴィーツベン元帥も「ああ」と頷いた。

 

「元帥!それに皆さんお揃いで」

 

敬礼しこの第18軍司令官でありベルシャール宙域軍司令官予定のクーヒェラー上級将軍は各諸将に握手して回った。

 

ライヒェウ元帥に握手した後直属上官たるヴィーツベン元帥には一番最後に握手した。

 

後ろでは彼の副官とヴェレガー中佐が握手を交わし雑談をしていた。

 

そういえばあの2人は同じアカデミーの同期だったなとヴィーツベン元帥はふと思い出した。

 

「さっき司令部を訪れた時はまだ艦隊の方にいると聞いたが」

 

「グラウス中将の艦隊と調整中でして、それで先ほど地上司令部に降りたところ元帥方が視察に来たと聞いて急いで挨拶に向かった次第です」

 

ヴィーツベン元帥らがいる地点はもう最前線ではなかったがそれでもかなり前線に近い地点だ。

 

クーヒェラー上級将軍はこのまま前線視察を行って司令部に帰投するつもりでいた。

 

その為彼の副官や護衛の兵士は皆E-11やE-22で武装していた。

 

クーヒェラー元帥もコートの下にアーマーを着てベルトにはRK-3ブラスターをホルスターにしまっていた。

 

「そうか、わざわざありがとう将軍」

 

「いえ、では私は夕方までにはヴォルテグラスに到達してみせますよ!それではまた」

 

クーヒェラー上級将軍は軽く冗談を言って視察団から離れた。

 

ヴィーツベン元帥は軽く微笑み煙草を吸うとヴェルガー中佐に「そろそろ宇宙へ上がろうと思うのだが」と次の視察地点への移動を求めた。

 

この銀河が星を跨いで戦争をするようになってから地上と宇宙の連携は不可欠となった。

 

その為ヴィーツベン元帥が地上軍の元帥であっても宇宙軍の様子も視察しなければならない。

 

「分かりました、移動のラムダ級をこっちに手配しますので暫くお待ちください」

 

「頼んだよ」

 

敬礼してヴェルガー中佐は待機させていた視察用のラムダ級にコムリンクを用いて通信を繋いだ。

 

再びヴィーツベン元帥は煙草を吸い、もう小さくなった煙草を地面に落として足で消火する。

 

今はまだ演習だがやがては実戦になる。

 

しかも相手はかつての同胞、裏切り者とそう簡単には割り切りたくない。

 

「レジスタンス相手だったら楽にやれるんだがなぁ」

 

心のうちから出た感想がヴィーツベン元帥の口から漏れた。

 

やがて同胞殺しなどどうでも良くなる未来がくるとも知らずに。

 

 

 

-第三帝国領 コア・ワールド コルスカ宙域 コルサント星系 惑星コルサント 第9FF装甲擲弾兵師団司令部 中庭-

ジークハルトの楽園のような日々は一旦終わりとなった。

 

シャンドリラへの家族旅行から帰ってきたジークハルトに待っていたのは新たに自身の指揮下に入る部下達の挨拶と各部隊への訓示だった。

 

元々第9FF装甲擲弾兵軍団は4個連隊によって構成される軍団であったが師団へ格上げの際に実質的には更に4個連隊増強された。

 

8個連隊による師団、本来師団というのは親衛隊も国防軍も5個連隊か多くても6個連隊で構成されるものだ。

 

8個連隊とは16個連隊で構成される兵団の半分に相当し、ジークハルトは師団という名の半個兵団の指揮官となった。

 

されどジークハルトは各部隊への訓示をそつなくこなし、残る部隊は1つとなった。

 

第69FF義勇擲弾兵大隊、元はミンバンに展開された第404FF義勇擲弾兵師団所属の歩兵大隊である。

 

大隊の将兵の殆どが占領地や非第三帝国領から志願した者達であり、すでに所属している第30FF義勇擲弾兵大隊と同じ種類の部隊であった。

 

第69FF義勇擲弾兵大隊は親衛隊ケラー宙域艦隊が輸送船の手配を戸惑った為到着が遅れ、着いたのは2日前であった。

 

大隊の兵士達はコルサントに到着するなり兵舎で自身の部屋を割り当てられ、次の1日は数少ない休暇を与えられた。

 

兵士達はコルサントの街と休暇を心ゆくまで満喫し今日に至る。

 

結果一部の兵士達はコルサントで遊び過ぎた故か若干疲れ顔だったが、コルサントに来てすぐ訓示を受けるよりはいいだろうというジークハルトの気遣いだった。

 

師団長ジークハルトは数百名の将兵の前に置かれた壇上に立ち、堂々と訓示を行った。

 

壇上の側には准将に昇進した副師団長のアデルハイン准将とセキューター級”ライアビリティ”艦長メルゲンヘルク上級大佐、参謀長オルト・クラインバッハ大佐、第21FF航空旅団長ハイネクロイツ上級大佐、そして師団に属する8人の連隊長と2人の大隊長が並んでいる。

 

大隊は一番手前に大隊長ハンメルン少佐が立ち、その背後に中隊長達を先頭に各中隊ごと整列していた。

 

「大隊総員Achtung(傾注せよ)!師団長に敬礼!」

 

数百名の将兵が第三帝国式敬礼をし、全員が「Heil!」と叫んだ。

 

ジークハルトは将兵に敬礼を返し、腕を下ろすと数秒の間をおいて訓示を始めた。

 

「第9FF装甲擲弾兵師団長ジークハルト・シュタンデリスである。まずミンバンでの軍務、ご苦労であった。諸君らの働きと苦労、そして仲間を失った苦痛は私も承知している」

 

彼の大隊将兵に対する労いの言葉は確実な本音が含まれていた。

 

ミンバンの最前線はナブーやアンシオンの戦い以上に激戦であったしジークハルトだって戦場の厳しさや仲間を失う悲しみを理解しているつもりだ。

 

「そんな諸君らに対し私から言うことは何もない。諸君らは既に故郷の為、第三帝国の為に忠義を尽くした兵士だ」

 

かつての連隊長も師団長もこれほどまでに自分達を認めてくれる者はいなかったと兵士達は感じた。

 

皆使い捨ての兵士だと、義勇兵なのだからそれは当たり前だという態度だった。

 

しかし目の前の師団長は違う。

 

既に多くの兵士達がジークハルトに落とされ始めた。

 

「諸君、我が師団へようこそ。私は諸君らを歓迎し同じ仲間として迎え入れよう。私からは以上だ」

 

「大隊総員!師団長へ敬礼!」

 

Sieg heil(勝利に賞賛を)!」

 

訓示が終わり、再び彼らは敬礼を交わした。

 

ジークハルトは壇上から降りて義勇兵大隊の前に立つ。

 

ハンメルン少佐がジークハルトが降壇し終えたのを確認し叫ぶ。

 

「大隊総員!行進準備始め!」

 

大隊の兵士達が地面につけていたブラスター・ライフルを持ち上げる。

 

「第1中隊、前へ!」

 

第1中隊の兵士達が中隊長のビュルーガー大尉と共に前に出た。

 

ハンメルン少佐は続けて口を開く。

 

「大隊総員、前進始め!!」

 

ハンメルン少佐が敬礼し行進を始め第1中隊が大隊長に続く。

 

第1中隊の次は第2中隊、第3、第4と列が続き師団の上級将校達の前を横切った。

 

ハンメルン少佐は敬礼し前へ進んだ。

 

ジークハルト以下14名の将校達も敬礼を返す。

 

第69FF義勇擲弾兵大隊の中庭での隊列行進は凡そ3分間行われ、ジークハルト達は兵士の姿が見えなくなるまで敬礼で見送った。

 

第4中隊最後列の兵士が門を出て姿が見えなくなった瞬間ジークハルトが号令を出す。

 

「総員、休め。以上で訓示を終了とする」

 

周囲の緊張感が解け、連隊長達は各々バラバラに動き出した。

 

仲間の連隊長と話し始める者、思いっきり背筋を伸ばす者、制帽を一旦脱ぐ者。

 

彼ら親衛隊将校とて人間だ、ドロイドと違って同じ姿勢で居続けられてなんともない訳ではない。

 

アデルハイン准将辺りはすぐに「台どかすぞ!」と周りの衛兵や将校を集め始めた。

 

顔馴染みのハイネクロイツ上級大佐とメルゲンヘルク上級大佐がすぐに合流し、遅れてクラインバッハ大佐と第330FF装甲擲弾兵連隊長のメーレンハイト中佐が加わった。

 

3人とも上級大佐に昇進しアデルハインに至ってはすぐに准将へ昇格した。

 

半個兵団に近い師団の副長が上級大佐のままではという配慮もあるのだろう。

 

それにアデルハイン准将はジークハルトに変わってサラストやナブーでの陽動といった正面戦闘で戦果を上げている。

 

准将に昇進しても何の問題もない戦果だ。

 

「私も手伝おう」

 

ジークハルトが手伝おうと4人に合流するも「ああ人手は足りてるから大丈夫」と断られた。

 

「師団長殿は先に休んでろよ。それにほら」

 

ハイネクロイツ上級大佐は軽く肘で突いて指を差した。

 

指の先には執務室で待機しているはずの副官のヴァリンヘルト大尉の姿があった。

 

しかも慌てたように急いでこちらに走ってくる。

 

「どうした大尉、何があった」

 

「さっき親衛隊本部からホロ通信が掛かってきました!モーデルゲン上級大将が閣下にお話したいことがあると」

 

「何?」

 

ジークハルトは上級大将の名前が出た瞬間様々な可能性を想像した。

 

ケッセルで親衛隊が大敗を喫したことはジークハルトも知っている。

 

その為すぐにケッセルへ送られるのではという不安もあったし、将又大セスウェナへの侵攻が始まるから南方へ派遣されるのではという可能性もあった。

 

「急ぎではないので午後の間に来てくれればいいとのことでしたが」

 

その一言で少しは安心した。

 

急ぎではないということだからきっとすぐの派兵ではないのだろう。

 

「分かった。昼休憩が終わったら本部に行くぞ」

 

「はい!」

 

ヴァリンヘルト大尉はすぐにスピーダーを止めている駐機場に向かった。

 

ジークハルトはアデルハイン准将らに困った顔を向けた。

 

「モーデルゲン上級大将閣下は相変わらず人使いが荒いらしい」

 

「だな、念の為に各隊の即応と司令部くらいはすぐ動けるようにしておく」

 

「ああ、助かるよ」

 

そう言ってジークハルトは制帽を被り直し、自身の執務室へ戻った。

 

急ぎではないと言ったが早めに向かう準備はしておかねば。

 

あの休みの日々が恋しく感じると思いながら。

 

 

 

 

-ケッセル王国領 アウター・リム・テリトリー ケッセル宙域 ケッセル星系 惑星ケッセル ケッセンドラ駐屯地-

ある退役した兵士が昔こう言った。

 

戦争とは勝っている時は本当に楽しいと。

 

戦勝の高揚とは正に麻薬のようなものであり、従軍した兵士は勿論の事、銃後の国民とて歓喜に沸く。

 

そして今のケッセルは正にそのような状態にあった。

 

かれこれ3年前より無敗を誇る第三帝国の親衛隊を完膚なきまでに叩きのめしたのだ。

 

ケッセル国民でなくとも寒気に湧くであろう。

 

フォルモスやリトル・ケッセルといったケッセル王国領では国民がケッセル王室たるヤルバ家と軍を讃えていた。

 

戦地となったケッセルでは多くの将兵が祝勝を上げていた。

 

当然ジェルマンとジョーレンの分隊もだ。

 

彼らはUウィングの前で配給分の酒とケッセンドラ駐屯地の酒保で買ってきた分を並べて祝勝会を開いていた。

 

「この偉大な星の偉大な勝利に乾杯!!」

 

サイネスが乾杯の音頭を取り、全員がグラスを交わして継がれた酒を飲み干した。

 

配給酒は基本的にケッセリアン・エールというリトル・ケッセル産のエールであり、味はそこまで悪くなかった。

 

しかしジョーレンは内心コレリアン・エールの方が美味いという感想を抱いていた。

 

尤も味の好みの問題でもあるし何より戦勝を生き残った仲間と共に飲むというこの空間がエールの味を引き立たせる。

 

それが仮に偽りの仲間だったとしてもだ。

 

「つまみもジャンジャン買ってきた!どんどん食って勝利を祝おう!俺たちは本当によく働いた!」

 

「ああその通りだ!俺は連中の下士官将校どもを5、6人以上やってやった!」

 

アルメトはヌーナのフライに齧り付きながら自身の功績を誇った。

 

実際彼はレジスタンス軍でもやっていけるほどの優れた狙撃手だ。

 

「ああ本当によくやったよ、AT-STの攻撃受けても生きてたしな」

 

「ったりめーよ!俺は足が速いんだわ」

 

アルメトはジェルマンのそう返すとエールを飲み干し、今度はウイスキーに手をつけ始めた。

 

「ほらちゃんと氷入れろ」

 

アイストングでベンネがアルメトのグラスに氷を入れる。

 

「ありがとうな」と礼を言ってグラスにウイスキーを注いでいるとドイスが「いるか?」と炭酸水に入ったボトルを手渡してきた。

 

「何から何まですまねぇな、それっとととととっ。よし、あとは混ぜて」

 

炭酸水を入れてウイスキーとよくかき混ぜるとアルメトはブランデーの炭酸割りを飲んだ。

 

「ああっ!美味いっ!これどこ産だぁ?」

 

グラスを置き、ボトルを手に取るとアルメトはウイスキーの産地を確認した。

 

ボトルにはエリアドゥと書いてあった。

 

「ああエリアドゥぁ」

 

「それちょっと薄くないか?」

 

「ん?いやこれくらいが丁度いいの」

 

濃いめのウイスキーが好みのベンネは炭酸が比較的多めに作られたアルメトのウイスキーの味を尋ねた。

 

尤も一度ベンネがウイスキーを作っている所を見たサイネスからすればベンネに作るウイスキーが単純に濃過ぎるだけだ。

 

「しかし功績でいえばドイス、よくもまあ輸送機に取り付いてデトネーターで始末するなんて策に出たな!」

 

ジェルマンは村内の防衛戦でドイスが行った勇気ある行動を讃えた。

 

ジェルマンとジョーレンも今まで散々無茶をやってきたが同じような事をやる兵士はそういないだろうと思っていた。

 

だが分隊に1人いた。

 

このアンバランの傭兵は見かけ以上に勇気と無茶をやる人物だ。

 

「別に、AT-STの足にインプローダーを括り付けるほどの命知らずじゃないさ」

 

ドイスは2人の行動をいじりながらエールを飲み干した。

 

だがすかさずドイスの肩を掴んだサイネスが彼の行動を咎めた。

 

「何を言うかこのばかたれぇ!毎度毎度無茶をやってるのはお前だろぉ?もう少し命を大切にせんかぁ!」

 

「大切にはしてるさ、それに弾は当たらんと思ったら当たらんもんだ」

 

「そうかぁ?」

 

「そうだ」

 

確かに将兵の中には稀に全く弾に当たらない人種がいる。

 

そう言った類いの将兵はドイスが言ったらようなメンタルの者が多いのだろう。

 

ドイスのいうようなメンタル面での話は意外と重要かも知れない。

 

ジョーレンがそんな事を思っていると別の分隊の隊員が2人ほど酒盛りの場に来た。

 

2人とも種族はトワイレックで彼らも酔っているような表情だった。

 

「よぉお前達スカウト・ウォーカーをやったらしいなんだ、大したもんだ」

 

「ああ、何の用だ?」

 

ジョーレンが尋ねた。

 

トワイレックの片割れが笑いながら答えた。

 

「なぁに、俺達の分隊でも酒盛りしててな。分隊長殿がウイスキーがないから他所の分隊から貰ってこいって言うんだ」

 

「そんなことか、1本くらいなら譲ってやるよ。あんま高くねぇけどな」

 

そういうとジョーレンはウイスキーのボトルを2人に手渡した。

 

他の分隊員達も反対せずに「分隊長によろしく」と快く送り出そうとした。

 

「ありがとう、お礼と言ってはなんだがうちの分隊からも何か持っていっていいぞ。例えばアンバラ産のラムとかあるぞ」

 

アンバラという言葉を聞いてドイスが反応を示した。

 

彼はアンバランでありアンバラ本星の生まれである。

 

故郷の名前を聞いて反応を示したのだとこの時ジェルマンとジョーレンは思っていた。

 

「もらってこいドイス、後ベンネとアルメトもなんか略奪してこい」

 

「了解だっ!」

 

「いや俺は別に…」

 

「いいから行こうぜ!」

 

もう酔いが回ってきたのかふらつくアルメトを2人が抱えながらトワイレックの2人と共に別の分隊の方へ行った。

 

トワイレックの2人は「そんなに全部持ってくのは勘弁してくれ」と懇願していたが。

 

残った3人は暫く彼らを見送っていたが姿が見えなくなった辺りで再び飲酒に戻った。

 

「…全く、散々ぱら命は大切にしろって言ってんのにな」

 

悲しい顔でサイネスは酒を煽った。

 

「ドイスのこと?」

 

ふとジェルマンが尋ねた。

 

戦闘中でもサイネスがドイスを咎めていたのをジェルマンは目撃していた。

 

「ああ、今奴の故郷は第三帝国に侵略されもう故郷には帰れない状態だ。だからヤケになってるんじゃないかと思うんだが」

 

「……故郷に帰れない、か」

 

ふとジョーレンは自分自身のことを思い起こし、ドイスと重ね合わせた。

 

故郷の惑星に帰れない辛さはジェルマンもジョーレンもよく分かっている。

 

その上でジェルマンはふと呟いた。

 

「…じゃあなんでドイスはアンバラの反乱軍に参加しなかったんだ?傭兵ならアンバラの反乱軍にも参加出来たろうに」

 

「それは……本人に聞いてみないことには分からんが」

 

「まあ人には人なりの事情がある、よしとこう」

 

3人は互いに頷き合い、勝利の美酒を心ゆくまで楽しんだ。

 

 

 

 

-第三帝国領 首都惑星コルサント 国防地上軍参謀本部 北西方面特別調査室-

参謀本部は対チス・アセンダンシー作戦計画の立案の為、北西方面特別調査室を参謀本部内に設置した。

 

室長は作戦計画の立案を任されたマーケス少将が就任し参謀本部作戦部の面々から室員を集めた。

 

当然この特別調査室というのは仮の名であり、参謀総長ヘルダー上級将軍は「すぐに新しい名前が与えられる」と言われた。

 

「これがウェイランドで親衛隊が入手したチス・アセンダンシー領内の星図だ」

 

室長となったマーケス少将はホロプロジェクターで壁に映し出された星図を指揮棒で差した。

 

少将の周りには少将が第18軍から連れてきた作戦参謀と参謀本部作戦部から出向した参謀達がいた。

 

中には作戦部部長、ヘルヴォン・グラインデルク上級大佐もいた。

 

「主要なハイパースペース・レーンは”堡塁(リダウト)”から通ずるこの道のみだ」

 

「となるとハイパースペース・レーンが複数使えない以上相当狭い進撃路になりそうですね」

 

参謀のフォーフマン少佐はそう感想を述べた。

 

マーケス少将は頷き前提の説明を続けた。

 

「その為我々は敵首都のシーラ、そして第二首都たるコーミットをホズニアン、シャンドリラの時と同様に電撃的に制圧する必要がある」

 

参謀達は頷き、各々概算的な作戦を脳内で考え始めた。

 

コーミットの発展具合はチス・アセンダンシーと中立条約を提携し国防軍の高官達を交流に行った際に入手した状態だ。

 

今ではコーミットグラード、チスグラードと呼ばれ未知領域のチス・アセンダンシー領では第二の首都と化している。

 

元より艦隊の停泊地もあり軍管区機能も有していた為、ここを抑えるのは重要であった。

 

「以上が未知領域方面における作戦の前提条件だ。これに合わせて我々は北西部アウター・リムの侵攻作戦を行う」

 

今度は北西方面のアウター・リムの星図が映し出された。

 

元々北西部アウター・リムはクローン戦争中独立星系連合の勢力下にあった。

 

戦後第一帝国による占領政策が敷かれ、現在はチス・アセンダンシーに亡命した帝国軍勢力によって統治されている。

 

「連中の出方にもよるだろうが少なくともマイギートー、オード・トラシを占領して可能であればムウニリンストまで進軍したい」

 

「しかし少将、仮に敵が最奥のサーティネイニアンまで後退し徹底抗戦を行う場合、長期戦になると予想されますが」

 

参謀本部作戦部のバルケンリンク中佐がマーケス少将に尋ねた。

 

マーケス少将は間を開けず中佐の問いに答えた。

 

「そうなる前にミナシーかボロスク辺りで連中の主力を撃滅すると私は考えているが、連中がサーティネイニアンに篭って戦う時には既にシーラは堕ちているはずだ。未知領域の戦力と北西部戦力で一気に押せば最後の砦も堕とせると踏んでいる」

 

バルケンリンク中佐は納得したように「分かりました」とそれ以上質問はしなかった。

 

「現段階で投入可能な戦力は第4、第6、第8、第9、第10、第14、第16、第18軍に加えて第4装甲軍が決定している。宙域軍から抽出される部隊についてはまだ未定だ」

 

国防軍は各総軍か軍集団に所属しているナンバー付きの軍に加えて宙域軍(Sector Army)と呼ばれる各宙域の駐屯軍が存在している。

 

北西総軍麾下の宙域軍からどの程度戦力を抽出するかは各軍との調整が必要な為まだ未定であった。

 

「次は敵戦力についてだが……時間だな、一旦休憩に入ろう」

 

マーケス少将は部下達に休憩を命じ、自身もコップに水を入れて休憩に入った。

 

参謀達も殆どが部屋を出てこっそり煙草を吸いにいったり、用を足しにいったりとばらけた。

 

部屋に残ったのはグラインデルク上級大佐だけとなった。

 

「お疲れ様でした」

 

「ああ、だが集まった面々は皆優秀な参謀達だ。これならいけるよ」

 

グラインデルク上級大佐は当然と言わんばかりの表情で頷いた。

 

彼にとってここにいる参謀達は皆優秀な同僚であり部下だ。

 

銀河最強の地上軍たる国防地上軍の頭脳を司る参謀本部の参謀達だ、無能な訳がないと言いたげな表情であった。

 

マーケス少将は安堵したような表情でポケットから煙草の箱を取り出した。

 

「誰も見てないし1本吸うか?」

 

「そうですね、では頂きます」

 

そう言ってマーケス少将から煙草を1本貰おうとした。

 

2人はこの後に人さえ入ってこなければそのまま火をつけて一服嗜んでいただろう。

 

何せ入ってきたのはフリースト・パールス中将、参謀本部の参謀次長である。

 

「参謀次長!」

 

煙草を急いでしまい、2人は敬礼してパールス中将を迎えた。

 

コア・ワールド貴族の娘を妻に迎え、自身も洗練された礼儀作法を身につけているパールス中将は代理総統らのお気に入りであった。

 

「別に総統に告げ口したりしないから、構わず吸ってくれ。私がここに来たのは遂に認可が出たということを知らせに来たんだ」

 

「ヘルダー総長の仰った通り早いですね」

 

パールス中将はタブレットを操作し2人に計画の認可を見せた。

 

「総統の認可と共にここの部署の名前も変わる。調査室から北西作戦室にとなる訳だが」

 

「表向きは北西部の防衛計画の立案、ですが実際には」

 

「その通り、今まで通り対チス戦の草案を練ってもらいたい」

 

中将から了承を得た2人は煙草に火をつけ、吸い始めた。

 

パール酢中将にも1本差し出したが中将は「まだ仕事があるから」と断った。

 

「そういえば頼んでいた宇宙軍と空軍の参謀達の招集はどうなりましたか?」

 

国防軍はスターファイター隊を1つの独立軍種として独立させることを数年前に決定した。

 

名前を国防航宙空軍(Raumfahrt-Luftwaffe)とし、ローリング大将軍が総司令官に就任し、ハルツ・イェシェンク将軍が参謀総長に就任した。

 

マーケス少将は基本的には地上軍の人であり、どうしても詳細な情報や敵の撃破にどの程度時間を有するかはそれぞれの分野の専門を呼ぶ必要があった。

 

「今日到着して明日面会になる。ドロマ宙域の宙域艦隊と宙域空軍の参謀達だ」

 

「想定より早いですね」

 

「国防軍も本気ということだ、して作戦計画の方はどうだ」

 

マーケス少将は躊躇うことなく「順調です」と答えた。

 

「チスと亡命者の一軍は強力ですが主力の野戦軍を叩き潰してしまえば戦意を失うでしょう。我々と違って領域もまだ狭い方ですし」

 

「つまり如何に敵戦力を引き摺り出して会戦で叩き潰すかが重要というのが君の考えだね?」

 

マーケス少将は頷いた。

 

比較的近場に首都がある大セスウェナ連邦と違ってチス・アセンダンシーと亡命帝国の首都は最奥にある。

 

その為急襲で一撃を加えて数日のうちにとは行かないだろうが、敵の主力を引き摺り出して撃破すれば同様の心理的効果は得られる。

 

チスには物理的にも精神的にも戦えなくなってもらい、その上で勝つというのがマーケス少将の狙いであった。

 

「連中の主力は大多数が国境沿いではなく後方に位置していますが未知領域であればオーンフラ、北西だとボロスク辺りを狙えば引きずり出せるでしょう」

 

「敵の戦略的価値の高い惑星を主力を引き摺り出す餌に使うわけか」

 

「大体はそんなところです」

 

今日まで徹底して勝利を重ねてきた国防軍ならではの発想だ。

 

彼らは1ミリとて会戦や戦闘で負けるという発想がなかった。

 

「この調子ならヘルダー閣下も満足されるだろう。草案が上がってくるのを待ってるよ、長居したな」

 

「いえ、お構いなく」

 

マーケス少将とグラインデルク上級大佐はパールス中将に敬礼し室内から出るまで見送った。

 

誰もがこの時は気づいていなかった、見ようとしなかったのだ。

 

世の中がそう思い願った通りに動くとは限らないことに。

 

 

 

-第三帝国領 首都惑星コルサント 親衛隊本部-

本部に向かったジークハルトはいつも通りモーデルゲン上級大将の執務室へ向かった。

 

殆ど顔パスに近いとはいえコードシリンダーと制帽とベルトのバックルについた将校ディスクを確認し、執務室への入室許可が降りた。

 

執務室前のエントランスではモーデルゲン上級大将の副官や親衛隊地上軍司令部の幕僚が集まっていた。

 

執務室に通されると室内ではモーデルゲン上級大将がホロ通信で会議を開いていた。

 

「ああ、うん。私も侵攻軍司令官は交代でバルフェルライチュ自身は弁務官区駐屯軍司令のままでいいと思う。シュヴェーツも侵攻地上軍司令官に据え置きでいい」

 

ホログラムは上級大将がいるテーブルの前にあり、薄くジークハルトの姿が見えたのか指で近くの寄るよう命じた。

 

ジークハルトはなるべく足音を立てずに上級大将に近づく。

 

「ああ、分かった。すまんが来客だ、また掛け直すよ。ああ、総統閣下にはシュメルケから話を通せばなんとかなると思う。それじゃあ」

 

ホログラムが途切れ、通信が切れたらしい。

 

ジークハルトは敬礼し「お邪魔でしたか」とモーデルゲン上級大将に尋ねた。

 

上級大将は椅子にもたれ掛かり、「いやもう終わるところだった」と告げた。

 

「フューリナーからだ、国家弁務官区の人事についての話でな。ケッセルでの件がやはり響いているらしい」

 

「敗北の責は誰かが負う必要がある、というわけですね」

 

「言い方が良くないな、少なくともゼルム星系はまだ我が方の手にある」

 

ケッセルでの大敗は当然ジークハルトも知っている。

 

当然ケッセル王国という中小国相手に大敗を喫したという事実が親衛隊にとっては認め難いことというのもよく理解出来た。

 

モーデルゲン上級大将から殆ど詭弁のような発言が出てくるのも仕方ないだろう。

 

「…まあ当面の間、我が親衛隊は君とナブーの話で持ちきりになるだろう」

 

「それは勘弁願いたいですね」

 

「これが将軍の責務ってやつだ、さてそれでは本題に入ろう。国防軍が密かに対チス戦争の作戦計画を立案し始めている」

 

ジークハルトは驚いた。

 

てっきり最初に制裁として侵攻を始めるのは統一条約からも脱退した大セスウェナ連邦だと思っていた。

 

数日前に見た報告書にもケッセルの地上戦で大セスウェナ連邦軍と思わしき部隊やステルス・シップなどが確認された記載されていた。

 

ケッセルへの援助は大セスウェナ連邦の方が遥かに上だ、にも関わらず攻めるのはチス・アセンダンシーとはどういう了見なのだろうか。

 

「一体何故今になってチスへ侵攻などと考え出したのでしょうか」

 

ジークハルトは思わずモーデルゲン上級大将に尋ねた。

 

「カーレリス提督の情報部がケッセルへ物資を輸送するチスの輸送艦を捉えた。大セスウェナ連邦は義勇兵を送っているがチスの青虫どもはそれ以上にケッセルを支援していた」

 

「と言いますと?」

 

「連中が持っていたベラトール級、あれは恐らくチスから来たものだ。もっと正確にいえばチスに亡命した旧帝国の連中が貸し与えたものだと分析している」

 

ベラトール級ドレッドノート、全長7.2キロにも及ぶ巨艦はこれでも帝国のドレッドノート族の中ではまだ小さい方だ。

 

しかし小さいからと言ってこのドレッドノートを保有している、或いは建造出来る国というのはそう多くない。

 

第三帝国、ファースト・オーダー、大セスウェナ連邦、クワット、そして亡命者達を迎え入れたチス・アセンダンシー。

 

クワットは第三帝国の傘下である為そう言った心配はないと踏んでいたし、大セスウェナ連邦とファースト・オーダーからそういった類の艦船が動いていないことは把握している。

 

となれば残りは最も謎の多いチス・アセンダンシーのみ。

 

かつてサンクト宙域艦隊にはベラトール級も配属していた為それが流れたのではないかと情報部は分析した。

 

第三帝国はケッセル王国を過小評価すると共にチス・アセンダンシーの脅威度を過大評価したのだ。

 

「親衛隊はあくまで国防軍の作戦計画に従って部隊を未知領域に投入するつもりだ。恐らくは大セスウェナ攻略も同様の形になるだろう」

 

「我が師団もそちらに投入ということですか」

 

短い休暇だったとジークハルトは覚悟を決めた。

 

作戦計画が完成し実行に移されるまでに数ヶ月から1年は掛かるだろうが、それでも次の行き先が決まったのは確かだ。

 

師団の錬成も早めなければならないと訓練計画も考え始めた。

 

だがモーデルゲン上級大将からの返答は予想外のものだった。

 

「いやまず最初に送るのは第1FF装甲兵団からだ、君の師団は暫くコア・ワールドに残ってもらう。君に任せたいことは他にある」

 

そういうとモーデルゲン上級大将はタブレットをジークハルトに手渡した。

 

「辞令?」

 

「第9師団長との兼任で我が親衛隊アカデミーの対ウォーカー戦闘の指導教官をやって欲しい」

 

突然のことにまだ納得がいっていない様子のジークハルトにモーデルゲン上級大将は説明を加えた。

 

「君はアンシオンの戦いでAT-ATとの戦闘を経験したな。その上で麾下の部隊には対ウォーカー戦の訓練を主軸に入れていると」

 

「はい、と言っても基本は如何に連携するかを中心にしています。アンシオンの頃は相手がAT-ATとなると性能で優劣はつけられませんでしたから」

 

Ⅲ号AT-AT、Ⅳ号AT-ATが普及する以前は同じAT-AT同士の戦いとなると性能は互角、後は操縦手達と部隊運用の腕によって勝負は決まる。

 

こうしたかつての同胞と対峙し勝利する為には基本的な練度は元より部隊間での連携が不可欠であった。

 

「我々がチスと対峙する以上亡命勢力が持っていた旧帝国製の兵器と激突するのは避けて通れない。そこで君のような経験を持った指揮官が兵達を教育して新しい戦いに適応出来るよう鍛えて欲しいのだ」

 

当面の敵であるチス・アセンダンシーと大セスウェナ連邦は第三帝国同様に旧帝国製の兵器を用いてくるだろう。

 

これらに対抗し戦闘で優位に立つには事前の訓練が必要不可欠であった。

 

その任をジークハルトに託そうというのだ。

 

「…分かりました、お受けしましょう」

 

「任せたぞ、ケッセルで巻き返す為には意味が育てた将兵の力が必要だ」

 

 

 

 

-第三帝国領 コア・ワールド フェダル星系 惑星フェダル 統一条約会議場-

第三帝国が旧第一銀河帝国復活の為に立案した統一条約は大セスウェナ連邦が離脱した後も度々条約加盟国で会議を開いていた。

 

しかし実態は第三帝国が支配地域を広げ、傀儡国を増やす為の道具であり条約文に書かれた理想は元からないようなものであった。

 

議長国たる第三帝国はその権限と国防軍、親衛隊といった軍事力を背景に支配を強めた。

 

各惑星への強制収容所の建設、FFISOを用いたエイリアン種族の逮捕や強制移動、そして軍の駐留などが押し通された。

 

こうした第三帝国の要求を跳ね除け反対意見を述べ続けられたのが離脱した大セスウェナ連邦と、今のなお第三帝国の土俵で戦い続けるファースト・オーダーであった。

 

今回フェダルで開催された統一条約会議も第三帝国のケッセル侵攻に対し、ファースト・オーダーの代表が抗議を唱え続けていた。

 

本来統一条約会議の代表は外務大臣か副大臣、もしくは全権委任を受けた特別公使が任命されるものだ。

 

その為ファースト・オーダーも今までは外交の窓口であるファースト・オーダー外務総局の長官が今まで代表を務めてきた。

 

しかし今回はケッセル侵攻を受け外務総局長官の他にファースト・オーダー最高指導者のレイ・スローネ大提督が会議に乗り込んできたのだ。

 

スローネ大提督は今回の侵攻を徹底的に批判し、第三帝国の即時撤退を訴えた。

 

「アンシオンの時とは違い、第三帝国は旧帝国領たるケッセル王国に統一条約への加盟推進も中立条約の締結も行わなかった。その上での今回の侵攻は統一条約の理念に反しているといっても過言ではない!」

 

「我々第三帝国はハット・スペース領域の安定かと治安維持の為の行動であり、これは理念に違反などしていない!むしろ秩序形成という第一帝国の理念そのままである!」

 

スローネ大提督と第三帝国側の代表であるヨーフェン・リーベンドロプ外務大臣と弁論による熱戦を繰り広げていた。

 

殆どの代表は彼女らの熱戦を黙って観戦していた。

 

どちらかに有利になる野次を飛ばしてどちらかを怒らせるようなことはしたくない。

 

殆どの代表が心の中でとにかく早く終わってくれと願っていた。

 

それはクワットの代表とて同じであった。

 

「この調子じゃあ後1時間は言い合いだな」

 

「ええ…」

 

クワット外務大臣のファイパー・アンドリムはため息混じりにそう呟いた。

 

ファイパー外務大臣はクワットの十の貴族家(The Ten)に名を連ねるアンドリム家出身者である。

 

クワット国際経済大学院を出たファイパーはそのままクワット・ドライブ・ヤード社の国際営業部に配属され、30年クワット社で働いた。

 

2年前に退社したがすぐにヴァティオン・クワット会長から外務大臣就任の話が持ちかけられそのまま外相に就任した。

 

クワットの外交とはその120%が軍需外交であり、営業部から外務省にスライドするケースは稀ではなかった。

 

隣で帰りたそうな表情のハンナ・フォーレン補佐官も営業部で10年ほど働いていたと後で聞いた。

 

「しかしこのままファースト・オーダーは即時撤退を訴えるつもりなんですかね」

 

「さあな、だが言葉で納得して帰ってくれるほど第三帝国が、いや侵略をやる国が優しいとは思えない」

 

既に第三帝国から今回の戦いで失われたインペリアル級の補填分を建造する要請を受けているとクワット本社から報告を受けている。

 

恐らく彼らはまだ戦争を続けるだろうし戦線は拡大するだろう。

 

「そういえば本社からケッセルの生産についてですが…」

 

フォーレン補佐官が全てを言い切る前にファイパー外相が止めた。

 

手元のメモ用タブレットに文字を書き、こっそりと彼女に見せる。

 

椅子には耳がある

 

ファイパー外相が書いた文の内容をフォーレン補佐官は完璧に理解した。

 

誰も信じていない嫌な奴らだ。

 

恐らく全ての席に第三帝国は盗聴器をつけ、防諜を行っているのだろう。

 

営業部での経験が活きたファイパー外相はすぐに気がついた。

 

明らかに雑談の多い代表の周りには警備の親衛隊員が近づいて上から見下ろしている。

 

フォーレン補佐官は優秀な人間だがまだこのような経験は少ない。

 

「まあ少しは聞いてやろうじゃないか、あの2人の話を」

 

「はい」

 

一旦は聞くふりをして2人は口での会話を止めた。

 

するとフォーレン補佐官がタブレットに文字を書き、ファイパー外相に手渡してきた。

 

目線はそのまま、視界に入る範囲にタブレットを移動させ一読する。

 

王国軍 要求数”、そう書かれた文の下に詳細な兵器の数が記されていた。

 

どうやらケッセル側もまだ戦うつもりらしい。

 

この戦いは少なくとも数年は続くだろうとファイパー外相は想定した。

 

その間までに外交がどう動くか、我々の仕事がどう増えるか。

 

ファイパー外相は困ったような笑みを浮かべたが内心で楽しくなりそうだと喜びを浮かべていた。

 

 

 

 

-第三帝国領 首都惑星コルサント 国防軍最高司令部-

国防軍最高司令部は第三帝国”()()()”武装勢力たる帝国国防軍の最高司令機関であり、この歴史はクローン戦争期の共和国軍最高司令部まで遡る。

 

クローン戦争の開戦と同時に銀河共和国は正規軍たる共和国軍の編成に着手した。

 

故シーヴ・パルパティーン最高議長は非常時大権を用いて共和国防衛連合(Republic Defense Coalition)条約を発動、各惑星防衛軍を共和国軍に統合した。

 

共和国軍はクローン・トルーパーだけでなくジュディシアル・フォースと惑星防衛軍の将兵を管轄する必要があり、それらを一元的に指揮指導する為に設立したのが共和国軍最高司令部であった。

 

最高司令部はクローン戦争の様々な作戦を統括し、19BBYのニュー・オーダー宣言以降は第一銀河帝国の誕生と共に帝国軍最高司令部と名を改めた。

 

そして第一次銀河内戦の敗北から立ち直った第三帝国は代理総統の指導の下、国防軍最高司令部として再びこの世に姿を現したのだ。

 

しかし歴史ある最高司令部は今や代理総統の参謀本部(イエスマン)に成り下がった。

 

ブロンズベルク罷免事件以降、代理総統は国防軍を完全に掌握し自身が最高司令官となることで最高司令部を実質的なイエスマンの集団に作り変えた。

 

ウィンヘルト・カイティス大将軍が最たる例であろう。

 

カイティス大将軍自身の事務能力は極めて高く、軍を組織たらしめるには必要な人材であった。

 

されどカイティス大将軍は代理総統のカリスマに誑し込まれ、最高司令部総長となったカイティス大将軍は代理総統の忠実なイエスマンとなった。

 

彼が最高司令部の場で代理総統が出した作戦に拒否を示すことはなく、むしろ代理総統に対して異を唱えた将軍や提督を抑えることに従事した。

 

口癖は「総統閣下の仰る通り」、軍の調整や統制を纏める事務能力を評価する将軍や提督はいても総統のおべっか使いの姿には難色を示した。

 

そんな最高司令部総長の執務室に1人の地上軍中佐が呼び出された。

 

名前はベンハート・ヴィンター・ロンゼルベルク、国防軍最高司令部の第一参謀であり様々な作戦計画に携わってきた。

 

ロンゼルベルク中佐はカイティス大将軍の執務室前に立ち、ドアをノックした。

 

「ベンハート・ロンゼルベルク中佐であります」

 

「入れ」

 

「はい!」

 

ロンゼルベルク中佐が執務室に入ると彼はすぐに目の前の2人の将軍に敬礼した。

 

1人はこの執務室の主人カイティス大将軍、もう1人は国防軍最高司令部統帥部長のアルフェード・ヨーデル将軍に対してだ。

 

2人の将軍は敬礼を返し、カイティス大将軍は中佐にソファーへ座るよう促した。

 

ロンゼルベルク中佐は「失礼します」とヨーデル将軍の反対側のソファーへ座った。

 

「大将軍より任務があると聞き参上しました」

 

「ありがとう中佐、君は地上軍の参謀本部が今新しい作戦計画の草案を作っていることを知っているか?」

 

「…噂程度ですが」

 

最高司令部のオフィスに出勤する際、参謀本部の方向へ見慣れない将校達が通っていく姿をロンゼルベルク中佐は目撃していた。

 

後で他の同僚に聞いたら第18軍の参謀達が参謀本部と何かしていると教えられた。

 

その何かまでは分からなかったがカイティス大将軍の問いで理解出来た。

 

「今、参謀本部の方で対チス・アセンダンシー侵攻作戦の計画草案が練られている。暫くしたら草案がこっちにも上がってくるだろう」

 

「私の任務は代替案の作成ですが」

 

「いや、少し違うな」

 

ヨーデル将軍はロンゼルベルク中佐の予想を否定した。

 

それからヨーデル将軍は続けて彼に命令を出した。

 

「中佐、既に君が対未知領域侵攻作戦を独自で考えているという話は聞いている」

 

「…ああ、否定はしません。しかしまだ完成していない上にこれを提案するつもりは」

 

「いやいや、我々は君の着眼点と能力に目をつけただけだ、批難するつもりはない。君に任せたいのは作戦の最終計画案を立案することだ」

 

「私がですか?」

 

ロンゼルベルク中佐は思わず聞き返した。

 

今回の作戦は恐らく100万人は下らない地上軍将兵と幾つもの宇宙艦隊、確実に1,000機は超えるスターファイターがどうウインされるはずだ。

 

その作戦計画の最終案を自分に任せると言われれば聞き返したくもなるであろう。

 

大部隊の作戦計画に携われることに喜びを感じない訳でもないが同時に重圧もあった。

 

「立案と言っても参謀本部が出してきた草案に総統の御意向を含んで纏めるだけだ。それに君1人では荷が重いだろうから宇宙軍から1人、サポーターを連れてくる予定だ」

 

「サポーター?」

 

「エルゼルト・マーケンライト宇宙軍中佐、確かアカデミー時代の友人とシュマイザー准将には聞いたが」

 

「はい、しかし今奴はタイアン宙域艦隊の…あっ」

 

エルゼント・マーケンライト中佐はロンゼルベルク中佐の友人である。

 

2人がパントロミン帝国アカデミーの士官候補生だった時に出会い、その後最初の配属先が同じインペリアル級だった。

 

それから暫くマーケンライト中佐はタイアン宙域艦隊の人事幕僚に任命され、この瞬間ロンゼルベルク中佐はタイアン宙域の場所を思い出した。

 

所属は北西総軍、つまり今回の作戦の主力だ。

 

「調整には輸送を担当する宇宙軍との連携が不可欠だ、しっかり頼むぞ」

 

「はい」

 

これから忙しくなりそうだ、ロンゼルベルク中佐は2人から渡された資料を手にしながらそう思った。

 

だがこの作戦は第三帝国の命運が掛かっていると何処となく感じていた。

 

そこでロンゼルベルク中佐はふと2人にあることを尋ねた。

 

「そういえばこの侵攻作戦、もう既に名前は決まっているのですか?」

 

第三帝国が行う軍事作戦、特に攻勢作戦には正式名称の秘匿も込めて名前がつけられる。

 

例えばコルサント奪還なら白作戦、対新共和国作戦なら黒作戦。

 

恐らく今回の作戦にもそう言った類の名前がつけられるだろう。

 

「ああ、総統閣下から認可をいただく際に名称が決定した」

 

カイティス大将軍はそう答えた。

 

ロンゼルベルク中佐が資料のタブレットをスライドさせるとそこには名称が記されていた。

 

同時期にカイティス大将軍がその名前を読み上げる。

 

赤髭(バルバロッサ)、これがこの作戦の名だ」

 

以降、対チス・アセンダンシー作戦の名称はバルバロッサ作戦と記載されるようになる。

 

人は揃ってきた。

 

皆が第三帝国の勝利を信じて突き進んでいる。

 

この作戦が第三帝国にとって最後の栄光の時になるとも知らずに。

 

 

 

-コルサント 国内予備軍司令部-

同じ頃、国内予備軍では対ウォーカー戦を将兵達に叩き込む為デノンから1人の将校が呼び出された。

 

ゼヴロン・ヴィアーズ大佐、アーヴァラ7でレジスタンス軍の新兵器と戦ったヴィアーズ大将軍の子息は対ウォーカー戦の指導教官として打って付けであった。

 

アーヴァラ7の功績で大佐に昇進した彼は若く、父と共に軍内にその名が通っており、将兵の憧れの的であった。

 

ゼヴロンは同じく指導教官に任命されたスターク中佐と共にデノンからコレリアン・ランを通過してコルサントまで移動した。

 

普段は移動といえば大抵”アナイアレイター”かスター・デストロイヤーに乗って戦場へ向かうが今回は違う。

 

国内予備軍が手配してくれたゼータ級シャトルは快適かつ速やかに目的地まで連れて行ってくれた。

 

少なくとも派遣将校としてコルサントには半年はいることになるだろう。

 

ゼヴロンは司令部のエントランスでスターク中佐と共に司令官のフロールム上級将軍を待っていた。

 

「コルサントなんて久しぶりに来ましたがやはりデノンとはあまり変わりませんね」

 

惑星デノンはインナー・リムの中では最も発展したエキュメノポリス惑星と言っても過言ではない。

 

コルサントとほぼ同レベルにまで進歩したデノンは第二帝国時代、ベアルーリンと首都候補を争うほどの規模があった、

 

その為デノンからコルサントへ来てもそれほど目新しさはないだろう。

 

こうした各司令部もデノンにだって存在する。

 

特に帝国軍の施設構造は規格化されている為何処へ行っても殆ど同じだ。

 

それでもコルサントが未だに首都惑星として君臨しているのはそれだけ首都コルサントという伝統が根強く残っているからだろう。

 

「これじゃあバーもデノンの方が良かったりしてね」

 

「ハハ、確かに」

 

そう言ってスターク中佐は給仕が入れたカシウス・ティーを口に含んだ。

 

エントランスには警備のストームトルーパー以外にも休憩に入った将校や誰かを待っている将校で席が埋まっていた。

 

時たまこのエントランスの前を将校達が通っていく。

 

「しかし予備軍は賑やかですね」

 

「規模が大きいからね、デノンの司令部もかなり大きい方だとは思っていたけど」

 

デノンには通常のデノン宙域軍司令部があるだけでなく、第三帝国領の南部を管轄する南方総軍の司令部があった。

 

その為規模で言えばデノンの司令部の方が大きいのだが慣れすぎたせいかそう感じなくなっていた。

 

故郷のことを思い出し、カシウス・ティーの入ったカップを手に取るとある将校の一団がエントランスを通った。

 

「バルバロッサでうち(国内予備軍)から出せる部隊数ですが…」

 

「ああそれに関してだがゼルファー准将の139歩兵師団とクランツ大佐の269歩兵旅団を出そう。上級将軍も納得なさるはずだ」

 

返答した将校の肩章は将官を示す金色であり、襟には少将を示す襟章がつけられていた。

 

だが重要なのはそこではない。

 

あの少将ともう1人いた中佐が話していた内容だ。

 

確かバルバロッサと言ったか。

 

恐らくは作戦計画の名称なのだろうがそんな作戦計画は初めて聞いた。

 

「スターク中佐」

 

「はい?」

 

「バルバロッサって知ってるか?」

 

「さっきの将校の会話ですか?いやぁ私もそんな内容の作戦計画は初めて聞きましたね」

 

スターク中佐はその後に「ヴィアーズ大将軍なら何か知ってるんじゃないですかね」と付け加えた。

 

確かにゼヴロンの父マクシミリアン・ヴィアーズ大将軍は第三帝国の英雄であり、国防軍の中枢に入る人物だ。

 

国防軍の中でも数人しかいない大将軍の階級を持つ人物であり、南方総軍の司令官でもある。

 

故にバルバロッサについて知っていることもあるのではないかとスターク中佐は考えていた。

 

「父さんからそんな作戦がある雰囲気なんて感じたことなかったけど」

 

ヴィアーズ大将軍は公私を分ける軍人だ。

 

息子ゼヴロンに帝国軍の栄光を継いでほしいと願っても実際に行っている職務を家族に見せたことは一度もなかった。

 

だが何かしらの重要な職務にいるなとか何かの作戦の準備に携わっているなというのは雰囲気で分かる。

 

少なくとも最近のヴィアーズ大将軍にそういった空気は感じられないとゼヴロンは思っていた。

 

暫くバルバロッサについて考えているうちに迎えの将校がやってきた。

 

「お待たせしました、フロールム司令官が到着なされましたので今ご案内します」

 

案内係のヴィリウス大尉が敬礼し部下に飲み干したカップを片付けさせた。

 

2人は立ち上がり大尉に執務室まで案内された。

 

暫く歩きエレベーターを1回使うとすぐに執務室前の受付に着いた。

 

「ゼヴロン・ヴィアーズ大佐とブレス・スターク中佐だ、指導教官としてフロールム司令官に挨拶を」

 

「それが今、司令官は面会中でして」

 

「何?誰とだ?」

 

ヴィリウス大尉は少し怒り気味にエントランスの少尉に尋ねた。

 

少尉は焦りながら「親衛隊予備軍の方がどうしても司令官にお会いしたいと」と答えた。

 

「親衛隊だと…?ええい大佐方の面会が先だ、通せ!」

 

「はい…」

 

少尉はヴィリウス大尉の剣幕に押し切られ、仕方なくフロールム上級将軍に連絡を入れた。

 

ゼヴロンもスターク中佐も別に待っても良かったのだがどうも大尉としてはダメだったらしい。

 

実はヴィリウス大尉は筋金入りの親衛隊嫌いであったのだがこの時は2人ともまだそのことを知らなかった。

 

「行きましょう」

 

ヴィリウス大尉に連れられ執務室まで向かう。

 

その途中で執務室から出てきた親衛隊の一行とすれ違った。

 

2人は通常の親衛隊の制服に大佐の階級をつけていたが1人だけFFISOの白い制服を身につけていた。

 

階級は2人とは違い中佐であったがどうも只者ではないらしい。

 

面会を妨害されたことにより2人の親衛隊大佐はこちらを睨んできたがヴィリウス大尉は逆に2人を睨み返した。

 

こちらとしては妙なことで親衛隊に目をつけられるのは好ましくないのだがとゼヴロンは思っていた。

 

「失礼します司令官、ゼヴロン・ヴィアーズ大佐とブレス・スターク中佐をお連れしました」

 

3人は眼前の国内予備軍司令官に敬礼し、フロールム上級将軍も敬礼を返した。

 

「いやすまないな、親衛隊予備軍の連中がバルバロッサで相談があるからといきなり押しかけてきて、よく追っ払ってくれた大尉」

 

「いえ、構いません。では私はこれで」

 

再び敬礼してヴィリウス大尉は執務室を後にした。

 

再び出てきたバルバロッサという単語に気を取られゼヴロンは思わずこのことを聞いた。

 

「失礼ですが上級将軍、バルバロッサとは一体なんですか?」

 

「ああ、南方総軍にはまだ通達が行っていないか。対チス・アセンダンシー用の侵攻作戦計画だよ。うちも兵力抽出ってことで部隊を出さなきゃいけない。親衛隊の方もな」

 

「では何故FFISOの将校がここに」

 

「さあな、連中の言い分としては特別部隊を作るからアドバイスの為と言っていたが……まあよく分からん連中だ、私も深く関わりたくない。とにかく、待たせてすまなかったな」

 

ゼヴロンはその前の言葉に気を取られて呆気に取られた返事しか返せなかった。

 

第三帝国が未知領域の国家へ侵攻、しかもFFISOが謎の特別部隊を作ろうとしている。

 

かつてアイガー少将から聞いたことがある。

 

少将のテンペスト・フォースに同行した親衛隊の特別部隊の話を。

 

突如AT-ATから降車したかと思えば何処かへ進軍し”()()()()”としてエイリアン種族だけを殲滅した話を。

 

その親衛隊の部隊が抹殺したエイリアン種族が本当に反乱勢力だった鹿は今となっては分からない。

 

少なくともアイガー少将はそれ以降親衛隊を戦場へ連れていくのを拒むようになったそうだが他の者はそうではない。

 

一体未知領域で第三帝国は何をするつもりなのか。

 

ゼヴロンの内側に沸いた僅かな疑問が後に第三帝国とゼヴロン、何より父マクシミリアン・ヴィアーズの運命を大きく左右することになる。

 

しかしまだその未来にゼヴロンすらも気づいていなかった。

 

 

 

つづく




わしじゃよ(先手必勝)

いよいよナチ帝国も終わりです!(国家が)

ちなみに史実のバルバロッサもエーリヒ・マルクス少将が最初の草案を出してベルハルト・フォン・ロスベルク中佐が最終起案を行っていたりします

…普通に戦犯じゃねぇかな(困惑)
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