第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「(第三帝国のステルス・シップは)脅威だが本領は出ていない」
-チェストレル・ニメッツ提督-


【番外編】楽器達の釣人狩り

-大セスウェナ連邦領 アウター・リム・テリトリー ジュリス宙域 ステンド星系 惑星ステンド FCISAジュリス宙域支部-

FCSIAは大セスウェナ連邦の対外情報機関であり、様々な手段を用いて日々諜報活動を行っている。

 

1つはスパイ活動、出先機関による情報収集などのHUMINT(Human Intelligence)

 

1つは盗聴、レーダーによる電子情報での諜報活動であるSIGINT(Signals Intelligence)

 

最後の1つはホロネットや政府の出版物など公開情報を分析するOSINT(Open-Source Intelligence)である。

 

これらの能力を駆使してFCSIAは軍情報部との連携でFCSIAは連邦に対して有益な情報を提供し続けた。

 

この惑星ステンドでもSIGINTの一環として第三帝国に対する通信傍受が行われていた。

 

傍受部門の作戦室では数十人の職員がヘッドセットをつけて第三帝国の通信網を監視している。

 

職員は皆ISB時代と同じ白い制服に黒いズボンを履いて左胸には階級章、両胸のポケットにはコードシリンダーを入れていた。

 

肩章は大セスウェナ連邦の地宙航空軍及び海兵隊と同じショルダーループのもので菱星と色別で表した階級章がついている。

 

銅色の階級章をつけたマウティム・フェンバー中尉は今日もハット・スペース周辺の通信を傍受していた。

 

3年前にFCSIAに入局した彼は定期昇進で少尉から中尉となり、大尉昇進ももう間も無くだとされている。

 

そんなフェンバー中尉はある情報を確認し、すぐに傍受記録をコピーした。

 

記録の簡易内容を自身の小型端末に書き留め、日時を記録する。

 

傍受記録のコピーが終わったらすぐにコピーの入ったデータチップを取り出し席を立った。

 

早歩きで室長のエルダッツ中佐の下へ向かった。

 

道中すれ違った給仕ドロイドの「飲み物は必要ですか?」という問いにも「デスクに置いてくれ」とぶっきらぼうに答えた。

 

それだけ急いで伝えなければいけない情報なのだ。

 

「中佐!たった今ハット・スペースの通信網を傍受した所プロトコルID-03が発令されました…!」

 

データチップと共にフェンバー中尉は急いでエルダッツ中佐に報告した。

 

こうした宙域支部の室長は佐官クラスの人間が就任する規則になっている。

 

エルダッツ中佐も室長に就任するに当たって少佐から中佐へと昇進した。

 

中佐は受け取ったチップを再生機器に入れ、自身も内容を確かめつつ支部長と義勇軍派遣司令部に連絡を取る準備を行なった。

 

フェンバー中尉はその様子を固唾を飲んで見守った。

 

「内容は確認した、恐らくこれはブラフじゃない。すぐ司令部と支部長に連絡するから引き続き傍受を頼む」

 

「はい!」

 

「後チップはまだ借りておくぞ」

 

「はい!」

 

フェンバー中尉は敬礼し自身のデスクへ早歩きで戻った。

 

中尉が今出来ることといえば引き続き傍受を行なって少しでも早く敵の情報を入手することだ。

 

中尉の姿がエルダッツ中佐から見えなくなると呼び出した相手が全員ホログラムで現れた。

 

1人はジュリス宙域支部長のアンドウェル少将、そしてもう1人はケッセル義勇軍派遣司令部ステルス・シップ艦隊担当のチェイスリアム・ニメッツ少将である。

 

エルダッツ中佐は2人の少将に敬礼し報告を始めた。

 

「第三帝国がハット・スペース周辺にプロトコルID-03の発令を行っていることを傍受によって突き止めました。私見ですが義勇軍のステルス・シップ狩りを目論んだものかと」

 

プロトコルID-03とは旧第一帝国時代から使われている友軍に対するハイパースペース運用プロトコルだ。

 

IDはInterdictionを指しIとDの頭文字を取っている。

 

このプロトコルはインターディクション・フィールド、つまり重力井戸を発生させるインターディクター艦が活動する際に用いられるものだ。

 

語末の03とはプロトコルの段階であり、01は完全なハイパースペース・レーンの封鎖、02は迂回の推奨、03は航行に注意せよというものでID-03が最もレベルの低いプロトコルであった。

 

このインターディクター艦は重力井戸でハイパースペースから艦船を通常空間に引き摺り出すだけでなく、クローキング装置を無効にする能力もあった。

 

つまりステルス・シップの姿を見つけ出し仕留める能力がある。

 

その為中佐の報告に2人は顔を見合わせやはりかという表情を浮かべた。

 

『衛星監視のフィックス中佐からも同様の報告を受けた。少なくともインターディクター級が一隻、ハット・スペースに向かっていると』

 

「ではやはりプロトコル発令はブラフではなく…」

 

『残念だが本当だろう。派遣艦隊には私から報告をしておく。撤退させるかどうかはまだ先の話になるがな』

 

エルダッツ中佐はもうニメッツ少将がケッセル王国へ派遣したステルス・シップ艦隊を引き上げさせるつもりだと確信していた。

 

今ここで貴重なステルス・シップを失う訳にはいかない。

 

撤退はなくとも最前線での隠密偵察は当分の間控える必要があった。

 

やはり第三帝国も一筋縄ではいかないなと中佐は感じた。

 

彼らは兵力、技術共にケッセル王国に勝っている。

 

いつかやがて、我々が本格的に加勢に入るまで持つといいのだが。

 

暗い空気感がインターディクター級の到来と共に流れ始めた。

 

 

 

 

-第三帝国領 ケッセル宙域 エニード星系近郊 小惑星帯付近-

ケッセルに住む人々が俗に言うエニードの玄関口、エニード星系付近の小惑星帯を三隻の軍艦が航行していた。

 

艦隊はインターディクター級スター・デストロイヤーが一隻、護衛艦のアークワイテンズ級司令クルーザーが二隻。

 

インターディクター級の艦名は”アキュペテント”、艦長はエリック・リヒター親衛隊大佐。

 

エニード星系に展開した親衛隊はリトル・ケッセル方面に集中展開しており、主力との合流はエニード本星の周回軌道上まで向かう必要があった。

 

インターディクター級は常時微弱なインターディクション・フィールドを展開しており、少なくともステルス・シップがセンサーに映るようにしていた。

 

「艦長、エニード星系に入りました。もう間も無く本星に到着します」

 

ブリッジで直立不動のままリヒター大佐は副官のユルク中尉から報告を受けた。

 

エニード星系に入ってから艦隊は常時警戒態勢を維持しており、ステルス・シップ艦隊の襲撃を警戒していた。

 

艦載機の21機のTIEブルートと3機のTIEボマーはいつでも発艦出来る態勢であり、この状態でもステルス・シップを狩ることは出来た。

 

「友軍艦隊は迎えには来てくれないんだな」

 

リヒター大佐は苦笑交じりにボヤいた。

 

ユルク中尉は「いつ来るか分からないケッセル艦隊の警戒の方が優先だそうですので」と付け加えた。

 

インターディクター級はインペリアル級より貴重な特殊兵装艦だ。

 

その為通常であれば護衛艦隊だけでなく受け入れ先の部隊からも合流が来るのだがエニードに展開中の親衛隊はそうではなかった。

 

ケッセルでの大敗以降敵の逆襲を恐れた前線部隊は各艦艇をリトル・ケッセル方面へ配置しケッセル艦隊の奇襲を警戒した。

 

その為”アキュペテント”の出迎えの為に送れる部隊はなくなっていた。

 

「我々の歓迎よりも明日来るかもしれない敵の警戒が優先か。まあ当然の判断だな」

 

「そう怒らんでくださいよ、偵察艦を二、三隻沈めれば彼らの反応も変わりますって」

 

ユルク中尉は不機嫌そうなリヒター大佐を宥めた。

 

リヒター大佐は初戦のホズニアン・プライム戦でプロカーセイター級を率いて敵艦隊の撤退を阻止するという戦功を上げた。

 

この功績により大佐に昇進し建造が中止されていたインターディクター級の艦長となった。

 

その後はあちこちの戦いに参戦した。

 

モン・カラ、サラスト、キャッシーク、ミンバンなど。

 

親衛隊が保有するインターディクター級の中でも特に経験豊富な艦となり、上級大佐、准将の昇進も内定していた。

 

その反面若干正確に難があり彼の副官になった者が最初に覚えるのは如何に彼を宥めるかであった。

 

既にリヒター大佐はプロカーセイター級の艦長時代から合わせて3人の副官を持ったことがあるが、皆口を揃えて後任にいう言葉は「艦長はおだてれば落ち着く」である。

 

「大セスウェナのステルス・シップだろうがなんだろうが所詮は小型艦。特殊兵装さえ剥がしてしまえばこちらのものよ」

 

Ⅶ級ステルス・シップを始めとしたステルス・シップ艦隊の運用を初めて成し遂げたのが第三帝国ならそれを撃破する方法を生み出したのも第三帝国だ。

 

リヒター大佐はステルス・シップ狩りは釣りのようなものだと考えていた。

 

それも竿で1匹ずつ魚を釣るのではなく網を用いて大量に捕獲するやり方に似てる。

 

インターディクション・フィールドという網でステルス・シップという魚を打ち上げて仕留める。

 

相手は輸送艦や中、小型艦からすればコロ・クロー・フィッシュのような脅威かも知れないが、インターディクター級からしてみればステルス・シップなど小魚に過ぎない。

 

そう言った慢心と功名欲しさかリヒター大佐は若干浮き足立っていた。

 

それ故なのだろうか、初動の反応が若干鈍かったのは。

 

艦隊が小惑星帯の中頃を通り掛かった時、戦いの合図は始まった。

 

小惑星帯から突如として一斉に飛翔体が放たれたのだ。

 

アキュぺテント”のセンサー士官が警報音と共に報告する。

 

「30発以上の飛翔体を確認!対艦型の震盪ミサイルです!」

 

最初その報告を聞いた時リヒター大佐は迷った。

 

アキュぺテント”本艦を狙っているのか、それとも僚艦のアークワイテンズ級を狙っているのか。

 

悩んだ末、リヒター大佐は判断としては間違いを犯した。

 

「対空防御!とにかく本艦を守れ!」

 

「ミサイル、間も無く着弾!」

 

レーザー砲によって数発が撃墜されるものの、殆どの震盪ミサイルは目標に命中した。

 

アキュぺテント”の僚艦が眩い爆発に包まれた。

 

「ミサイル、僚艦の”ACC-1804”、”ACC-1805”に着弾!僚艦のブリッジに命中し応答ありません!」

 

乗組員の報告を受けすぐにリヒター大佐がブリッジのビューポートからアークワイテンズ級の様子を見た。

 

ミサイルがブリッジに直撃し炎と共に煙を出している。

 

次点で四連レーザー砲などの兵装とエンジン部分に被害が多かった。

 

少なくとも船体上部のレーザー砲は破壊され、左エンジンも大破していた。

 

「エニードへ救援要請!」

 

「通信妨害を受けています!」

 

「だったら信号弾を撃てよ、確実に飛んでくるはずだ」

 

緊急時に用いる救援要請の信号弾は単に光を発するだけでなく救難ビーコンとなる。

 

主力艦が前衛展開しているとはいえ本星の軌道上艦隊はすぐ救援に来るだろう。

 

アキュぺテント”から3発の信号弾が放たれ、眩い光を放つ。

 

「僚艦から救援要請が出ています」

 

「どこからだ?後敵艦隊がミサイルを撃ってきた地点を探り当てて砲撃を加えろ、そこに敵はいる!」

 

リヒター大佐の命令を受けてすぐにブリッジの乗組員達が探りに出た。

 

放たれたのは小惑星帯にある3箇所の地点で映像では何もない空間であった。

 

そこへすぐに”アキュぺテント”のレーザー砲が放たれた。

 

ターボレーザー砲ではなかったがこれでもステルス・シップ程度の小型艦を撃破するには十分の威力であった。

 

当然敵は既に移動している為砲撃破全て当たらなかったが牽制にはなった。

 

その間に詳しい被害報告が入ってきた。

 

「二隻ともブリッジの乗組員は全滅、右翼の”ACC-1805”は退艦準備を進めていますが左翼の”ACC-1804”は復旧作業を進めています」

 

「あれじゃあもうどうにもならん。”ACC-1804”は船体下部左翼砲塔だけ自動砲撃モードにして退艦準備。”ACC-1805”は直ちに退艦するよう伝えろ」

 

「了解…!」

 

司令塔を失い、エンジンを失ったアークワイテンズ級がステルス・シップに潰されるのは目に見えていた。

 

少なくともアークワイテンズ級は3機のTIEブルートを発艦出来るのでそれを出して”アキュぺテント”のスターファイター隊と合流させるつもりだった。

 

「ダルグム上級大尉、直ちにスターファイター隊全機発進だ。本艦はフィールドの出力を一段階引き上げるから少しは敵が見えやすくなるはずだ」

 

『了解、ボマー隊の対艦攻撃でなるべく沈めます』

 

アキュぺテント”第1艦載機中隊のダルグム上級大尉はコムリンクでリヒター大佐に返し、発艦準備を進めた。

 

アキュぺテント”のハンガーベイから次々とTIEブルートの編隊が出撃する。

 

最後に3機編隊のTIEボマーが発艦し全てのスターファイターが展開された。

 

「ブリッジより全機、小惑星帯でのナビゲーションはブリッジで行う。このまま回線を維持されたし」

 

ブリッジの飛行士官がスターファイター全機に命令を出す。

 

その間にリヒター大佐はブリッジの技術士官達に命令を出した。

 

「インターディクション・フィールドの出力を上げろ。フィールドの影響でクローキングを取り外す」

 

「了解、フィールド出力をセカンドフェーズに移行」

 

「フィールド、敵艦に干渉。クローキング・システムの32%が消失」

 

黒く長いヘルメットを被った兵器技術者達がコンソールを操作しインターディクター級の機能を引き出す。

 

インターディクション・フィールドによって形成された重力井戸空間が敵艦のクローキング装置に干渉し、若干だがその姿を見せた。

 

「センサー及び映像に艦影発見。モニターに映します」

 

ブリッジのモニターに3箇所の小惑星帯の映像が映し出された。

 

キャリオン・スパイク”の正統進化を思わせるその船体は青いラインが船体に引かれていた。

 

「各機、指定した艦に攻撃を集中せよ」

 

センサー士官から受け取ったデータを基に飛行士官が攻撃位置を指定する。

 

ブリッジの砲術士官も念の為に各砲塔へ砲撃地点を指定していた。

 

「アークワイテンズ級二隻は痛かったが…一撃で本艦を沈められなかったのが運の尽きだ。砲塔に爆撃、どちらか好きな方で沈めてやろう」

 

リヒター大佐は笑みを浮かべ敵艦を沈める算段を立てた。

 

攻撃力、攻撃手段共に我々が優勢、このまま防御を続けるだけでもいずれ友軍が来て終わり。

 

リヒター大佐は完全に勝利を確信していた。

 

敵対する大セスウェナ連邦宇宙軍のステルス・シップの艦長達と同じく。

 

 

 

 

 

「敵アークワイテンズ級二隻、退艦開始を確認。ですが一隻砲塔が自動砲撃モードになっているようで小惑星帯を砲撃しています」

 

ヴァラコード級ステルス・シップ”ブリッスル”のセンサー士官が艦長に報告した。

 

艦長のランドル・マービン・モーデン中佐はブリッジからエレクトロバイノキュラーで様子を確認した。

 

セスウェナ帝国アカデミーを卒業したモーデン中佐は他の宇宙軍将校とは違いすぐにクローキング技術の研究部門に配属された。

 

彼は今日に至るまでクローキング装置搭載のステルス・シップに乗り込み経験を積んできた貴重な指揮官だ。

 

その為ステルス・シップ艦隊に対する思い入れは誰よりも強い。

 

日陰者と揶揄されインペリアル級のような主力艦隊組に後指を差されようともステルス・シップから降りるつもりはなかった。

 

そういった経緯からか彼は今回の義勇ステルス・シップ戦闘群の司令官を務めており、ステルス・シップ艦隊全体の指揮も取っていた。

 

「”サブリケット”、お前の射角なら魚雷1発で黙らせられるはずだ。一撃入れてやれ」

 

モーデン中佐がコムリンクで僚艦に指示を出すとすぐに返答が返ってきた。

 

『”サブリケット”了解した』

 

ヴァラコード級”サブリケット”の艦長、メヘルダ少佐は意気揚々と攻撃準備に出た。

 

艦首の魚雷発射管にプロトン魚雷を詰め、速やかに放つ。

 

放たれたプロトン魚雷はそのままアークワイテンズ級の四連レーザー砲に命中し一撃で破壊した。

 

『攻撃に成功した、直ちに移動する』

 

サブリケット”はクローキングを維持したまま移動を開始した。

 

モーデン中佐は「よくやった」と褒め称えた。

 

中佐が率いるヴァラコード級は自身の”ブリッスル”合わせて四隻いる。

 

メヘルダ少佐率いる”サブリケット”、ケッセル・ランの中で囮を引き受けたブレイル少佐率いる”バタンガ”、そしてセームズ少佐率いる”ヴァレンズ”。

 

現在この領域で攻撃を行ったのは”サブリケット”、”バタンガ”、”ブリッスル”の三隻であり、セームズ少佐の”ヴァレンズ”だけ別行動を取っていた。

 

ステルス・シップ艦隊は小惑星に隠れ、宇宙空間に姿を隠した。

 

「敵インターディクター級、インターディクション・フィールドの出力を増大。各艦のクローキングが妨害されています」

 

技術士官のトルクス中尉はコンソールで可能な限りクローキングを維持しつつそう報告した。

 

ヴァラコード級の重力井戸をすり抜ける能力はまだ限界がある。

 

ハイパースペース・ジャンプ自体は妨害されないのだがクローキングの効力は妨害されてしまう。

 

それもインターディクター級のような重力井戸発生装置搭載の専用艦ともなれば尚更だ。

 

「覚悟の上だ、今更どうしようもない」

 

制帽を持ち上げて金髪の髪をかきあげると制帽を被り直して再びエレクトロバイノキュラーに目をやった。

 

ヴァラコード級のブリッジは一般的なスター・デストロイヤーのブリッジより遥かに小さく、アークワイテンズ級やクエーサー・ファイア級のブリッジが最も近い形状をしていた。

 

長方形のブリッジに艦長、副長そして操舵手にエンジンとクローキングの技術士官2名、センサー士官、通信士官、砲術士官の8名が詰まっていた。

 

「……来たな、ウェレン少尉、数は」

 

「ファイター27機、ボマー3機!」

 

「アークワイテンズからも出てきたか」

 

目視でスターファイターの襲来を確認したモーデン中佐はコムリンクで各艦に指示を出した。

 

「全艦、第二地点に移動し対空戦闘用意。こっちは数撃てないんだからしっかり狙いを定めろ」

 

ヴァラコード級の前後合わせて8門の魚雷発射管と3門のレーザー砲が対空戦闘の準備を行った。

 

このヴァラコード級は生産性重視のⅦ級ステルス・シップよりも純粋な火力が高い。

 

Ⅶ級が魚雷発射管5門、レーザー砲2門、ミサイル発射管4門に対し、ヴァラコード級は魚雷発射管8門、レーザー砲3門、ミサイル発射管6門である。

 

こうした性能の差には生産性だけでなく大セスウェナ連邦がターキン・イニシアチヴという技術集団を接収出来た事、銀河協定に縛られず開発が出来た事の2点が大きな要員だ。

 

ヴァラコード級三隻の魚雷発射管に対空用プロトン魚雷が装填され艦長の指示を待った。

 

「副長」

 

「はい」

 

モーデン中佐はふと副長のヴィルター・エルミス上級大尉を呼んだ。

 

「今から来る連中の何機持ってけると思う」

 

中佐はエルミス上級大尉に尋ねた。

 

上級大尉とは大セスウェナ連邦が旧帝国だった頃からの馴染みであり最も信頼のおける部下の1人だ。

 

彼ならすぐに優秀なステルス・シップの艦長になると確信していた。

 

「ボマー1に護衛3で来るでしょうから良くて9機、多くて12機と言ったところでしょうか」

 

「もうちょい上を狙ってみようか、俺の予想じゃ15、6は手堅いな」

 

モーデン中佐には確固たる自信があった。

 

エルミス上級大尉の予想通り、敵の対艦攻撃機隊はTIEブルート3機、TIEボマー1機の編成で飛んできた。

 

4機ともプロトン魚雷を装填し与えられた座標と目視確認で敵艦隊を撃破しようと目論んだ。

 

「敵機、接近中。間も無く有効射程距離に入ります」

 

「まだだ、撃たせて油断させてから連中の襲う…!」

 

センサー士官のコーリス少尉は続けて報告を行った。

 

「敵機魚雷発射、数は4発。ダミーエリアにまもなく着弾!」

 

報告から数秒後、放たれたプロトン魚雷は全て移動前の地点に命中し爆発を起こした。

 

撃沈の有無を後続のTIEブルート隊に任せて対艦攻撃機隊はその場を離脱しようとした。

 

もう敵はいない、全体がそう思ったのが運の尽きだ。

 

「魚雷1番から8番まで一斉射!全砲門開け、撃て!」

 

三隻のヴァラコード級から一斉にプロトン魚雷が放たれ、自動追尾のまま背中を見せるTIEブルートとTIEボマーに命中した。

 

爆散し3方向に4つの光が飛び散る。

 

突然の攻撃に動揺した残りのスターファイターは編隊に乱れが生じ、動きが乱雑になった。

 

そこにレーザー砲の対空射撃が襲う。

 

ブリッスル”のレーザー砲は少なくとも1門につき1機のTIEブルートを仕留めた。

 

被弾したTIEブルートがコントロールを失って近くの岩場に衝突し爆散する。

 

その様子はブリッジでも確認出来た。

 

「いいぞ野郎ども!よくやった!」

 

モーデン中佐は中佐にとって最高の宝である乗組員を褒め称えた。

 

生き残ったTIEブルートはダルグム上級大尉の命令で一旦退避しヴァラコード級の周りから離れた。

 

コーリス少尉はすぐに敵機の撃破報告を行った。

 

「敵機、TIEボマー3、TIEブルート16機撃墜。敵残存兵力は後退していきます」

 

「艦長の予想通りになりましたね、本当に16機やれるとは」

 

エルミス上級大尉は内心驚いていた。

 

魚雷発射の正確なタイミング、レーザー砲手の命中精度、そして何より敵が起こす混乱をモーデン中佐は正確に把握していた。

 

モーデン中佐がエルミス上級大尉を優秀な艦長になると思っていたように、エルミス上級大尉もモーデン中佐が次世代のステルス・シップ艦隊を率いる将官になると確信していた。

 

「態々リトル・ケッセルに戻って色々融通して貰ったのが効いたな。ホロ戦術と予備装甲の艤装が上手くいった」

 

インターディクター級が来るという報告は事前にニメッツ少将達に聞いていた。

 

その上で本国からの帰還を促されたがモーデン中佐ら艦長達はパルトン准将同様に撤退を拒み、むしろ友軍の脅威を減らす為戦うことを選んだ。

 

その為に戦術を練り、リトル・ケッセルで手に入れた装甲板と大型ホロプロジェクターを用いて最初の偽装戦術を行った。

 

敵が砲撃か爆撃で沈めに来ることは既に分かっていたことだ。

 

だから偽装で相手の目を騙くらかし、油断したところを敵艦かスターファイターに一撃入れようという算段を練った。

 

結果としてこの戦術は大成功を収めた。

 

「全艦次の地点へ移動せよ。作戦の第二段階へ移る」

 

攻撃をしたら即移動、機動力とステルス性で可能な限り相手の目を暗ます。

 

敵は網の中にステルス・シップを追い込んだつもりかも知れないがそれは逆だ。

 

インターディクター級という大魚がモーデン中佐の張った網の中に掛かったのだ。

 

狩られるのは向こう側、そう教育しなくてはならない。

 

 

 

 

 

残存機の報告によりどういう状況になったかはリヒター大佐も理解していた。

 

カモフラージュによる待ち伏せ戦法、大佐はたった三隻のステルス・シップ相手にクルーザー二隻とスターファイター16機もの損害が出ていることに焦りを覚えた。

 

「…スターファイター隊は待機、戦術を変える」

 

「了解…!」

 

生き残った14機のTIEブルートは安全地点まで退避し、命令を待った。

 

「エニードからの増援はまだ来ないのか」

 

リヒター大佐は通信士官に尋ねた。

 

既に信号弾を撃ってからかなりの時間が経っている。

 

通信士官は「2分前に救援部隊が出撃したとの報告が」とリヒター大佐に伝えた。

 

どれほどの快速艦であろうとエニード本星からこの玄関口に来るまでには数十分以上の時間が掛かる。

 

ここでステルス・シップ艦隊に背を向けて逃げる訳にもいかない為、やはり単独で戦うしかないとリヒター大佐は腹を括った。

 

その間に”アキュぺテント”は90度回頭して小惑星帯に全砲塔が向けるように位置を整えた。

 

大佐は1人で戦術を考えた。

 

このままレーザー砲を撃ち続けて小惑星帯の外に追い込むかそれとも精密射撃で確実に仕留めるか。

 

前者の方法は最も安全かつ相手を追い詰めるのに適していた。

 

幸いにも小惑星帯の範囲からいって24基の四連レーザー砲があれば全範囲に砲弾を叩き込める。

 

だがそれで本当にいいのだろうか。

 

戦術長のヴェルデン少佐が同様の戦術を打診してきたがリヒター大佐は待ったをかけた。

 

連中とて広範囲砲撃の可能性は十分承知の上隠れ蓑に使っているはずだ。

 

であれば再び偽装でもされたらいよいよ対処にしようがない。

 

「技術士官、プロトコルID-03の中で定められた最大の出力でフィールドを再展開。網を強めろ」

 

「はい」

 

プロトコルIDは友軍艦艇や民間船舶が通常空間に引き摺り出されるのを防ぐ為に事前に警告するものだ。

 

その為インターディクション・フィールドを形成するインターディクター艦にも制限が掛けられる。

 

これは14BBYに発生したイモビライザー418クルーザーの事故から得た教訓であり、インターディクション・フィールドの無制限展開はプロトコルID-01を発令する必要があった。

 

それでもクローキング装置の妨害にはプロトコルID-03の規定範囲のフィールドで十分なはずであった。

 

『艦長、シャトルの用意完了しました』

 

甲板士官のフローツ大尉がリヒター大佐に報告した。

 

スターファイター隊が撃退された時点でリヒター大佐は偵察兼目眩しとしてある方法を思いついた。

 

この”アキュぺテント”にはTIEシリーズのスターファイターだけでなくラムダ級T-4aシャトルも搭載されていた。

 

様々な用途に使える為グラディエーター級以上の官邸では必須装備となっていた。

 

リヒター大佐はこのラムダ級に偵察用のプローブ・ドロイドを詰め込んで小惑星帯に展開し、偵察を行おうと考えた。

 

「直ちに出せ、待機中のスターファイター隊は護衛機を展開してラムダ級を守れ」

 

『了解!』

 

畳まれていた二枚羽根を展開し、ラムダ級が”アキュぺテント”のハンガーベイから出撃した。

 

すぐに3機編隊のTIEブルートが護衛に付き小惑星帯内まで同行する。

 

「敵がラムダ級を狙うようであれば直ちに反撃を叩き込め。連中をここで殲滅するぞ」

 

リヒター大佐は腕を組み、ラムダ級の報告を待った。

 

その間にラムダ級は小惑星帯に突入し機体のハッチを開いた。

 

ハッチの中から大量のプローブ・ドロイドが放たれる。

 

プローブ・ドロイドは浮遊しながら指定された小惑星に張り付き、偵察活動を行った。

 

ドロイドの映像が”アキュぺテント”のブリッジに映し出され、乗組員が解析を始めた。

 

暫くすると解析をしていた1人の三等兵曹がリヒター大佐に報告した。

 

「艦長、敵艦と思わしきものを発見しました!」

 

「なんだと!?」

 

リヒター大佐は三等兵曹のいるブリッジの窪みに降りてモニターを見た。

 

そこには小惑星帯で身を隠しているが最初よりもクローキングが剥がれた艦の姿があった。

 

大佐がすぐに座標を聞いた。

 

「座標は」

 

「KO-05です」

 

「砲術長に座標を送れ、砲術長は座標を受け取ったら直ちに砲撃を集中しろ。三隻だろうが範囲攻撃で仕留められるはずだ。無理だったら小惑星帯から追い出せ」

 

「はい!」

 

三等兵曹から送られた座標を基に砲術士官達が”アキュぺテント”の24基の四連レーザー砲に砲撃地点を示す。

 

リヒター大佐はブリッジの通路に上がり勝ち誇ったような表情を浮かべた。

 

ようやく敵を追い詰めるチャンスが来たのだ。

 

「全砲門、目標の入力完了しました」

 

「では最大出力で撃て、奴らを逃すな」

 

リヒター大佐の命令と共に”アキュぺテント”の全砲門が火を吹いた。

 

黄緑色のレーザー砲が次々と放たれステルス・シップが隠れている地点を砲撃する。

 

これでも火力はインペリアル級のターボレーザー砲より低いがステルス・湿布のような小型艦を破壊するには十分な威力だ。

 

レーザー砲は小惑星を砕き、さらに次の砲弾が砕かれた岩石を蒸発させた。

 

「敵艦隊、移動を確認」

 

「追い詰めろ、スターファイター隊は回り込んで雷撃の用意だ!」

 

砲塔は回転して逃げるステルス・シップを追撃した。

 

その間にTIEブルートが回り込んでレーザー砲を放った。

 

数発がステルス・シップに命中するも偏向シールドによって全弾阻まれた。

 

反撃でレーザー砲が放たれ2機撃墜されるも相手の足を止めるには十分だった。

 

その間に放たれたレーザー砲が艦尾の偏向シールドを破って命中した。

 

「艦尾に命中!」

 

「足が止まった今が狙い目だ、火力を集中してトドメを刺せ!」

 

アキュぺテント”のレーザー砲が一斉に放たれる。

 

レーザー砲は全弾目標に命中し大爆発を起こした。

 

爆炎と煙が消え、視界が開けるとそこにはステルス・シップの残骸と思われるものが宇宙空間を漂っていた。

 

「これはやりましたよ!敵艦は三隻とも轟沈です!」

 

ユルク中尉はそう喜んでいたがリヒター大佐はまだ疑いの目で見ていた。

 

敵艦を撃破したにしてはパッと見ただけでも残骸が少なすぎる。

 

それにあの爆発も妙だ、いくらステルス・シップが脆い艦とはいえたった一撃で沈むのはおかしい。

 

「上級大尉、残骸の周りを飛び回って状況を報告しろ」

 

『了解…!』

 

リヒター大佐は念の為に確認の為の部隊を送ったがもう遅かった。

 

次なる手は既に打たれていた。

 

 

 

 

 

インターディクター級の砲撃が命中した”ブリッスル”は艦内で損害報告が行われていた。

 

「艦尾に被弾、ですが戦闘及びクローキングに問題はありません」

 

「負傷者は」

 

すぐにモーデン中佐が尋ねた。

 

義勇軍としてケッセルに向かう時、モーデン中佐は乗組員を全員無事に連れて帰ると決めていた。

 

その為被弾した時点で乗組員の状態が一番の気掛かりであった。

 

「マルテ一等宙士が頭を打ってアデム中尉に診てもらってますがそれ以外は大丈夫です」

 

エルミス上級大尉の報告を聞きモーデン中佐は微笑んだ。

 

これで心置きなく作戦を続行出来ると。

 

モーデン中佐は”ブリッスル”の被弾を利用して一気に相手の目を暗ます方法を実行した。

 

エアロック付近に備えていたパーツと燃料タンクを一斉に放出し燃料タンクに引火した瞬間に最大船速でその場を脱した。

 

視界不良の爆発は撃沈のカモフラージュと離脱の際の煙幕代わりになりだいぶ時間が稼げた。

 

「作戦の第二段階に移行する、1番から6番のミサイル発射管に特殊煙幕弾を装填」

 

「1番から6番にミサイル装填」

 

砲術士官のエコレス中尉がコンソールを操作し特殊煙幕を詰め込んだミサイルを発射管に装填する。

 

「各砲塔、撃ったらすぐにファイターが来る。しっかり堕とせよ」

 

『了解!』

 

準備は整った。

 

モーデン中佐は命令を出した。

 

「煙幕弾、撃て!」

 

発射管の安全装置が解除されハッチが開く。

 

6つのミサイル発射管から特殊煙幕弾が放たれた。

 

6発のミサイルがインターディクター級に向けて一斉に飛んでいく。

 

まだセンサーが生きているインターディクター級はレーザー弾を放ってミサイルを迎撃した。

 

煙幕弾はインターディクター級に着弾しなかったものの役割は果たした。

 

インターディクター級の周りに電子妨害入りの煙幕を展開し相手から目を奪った。

 

「かなり近くで被ってくれたが……多分長くないな。”サブリケット”、”バタンガ”、目標に向けて集中攻撃。本艦も対艦魚雷を放って援護」

 

三隻のバラコード級から12発の震盪ミサイルと18発のプロトン魚雷を放った。

 

電子妨害の影響でインターディクター級はセンサーに障害が生じ迎撃に支障が出た。

 

辛うじて震盪ミサイルは全弾迎撃出来たが12発のプロトン魚雷だけは回避しきれなかった。

 

船体の側面に被弾し爆発を起こす。

 

「プロトン魚雷12発命中」

 

「ですがインターディクション・フィールドの消失は確認出来ません」

 

「十分だ、後は”()”に任せればいい」

 

 

 

 

 

 

側面に魚雷が命中したことにより”アキュぺテント”の艦内が揺れ、警報が鳴り響いた。

 

ただ不幸中の幸いだったのは重力井戸発生装置には被弾しなかった為フィールドの消失も暴走もしなかったことだ。

 

「ダメージコントロール!被弾箇所に偏向シールド集中!」

 

「艦内に火災発生、現在消火班が急行中!」

 

プロトン魚雷の直撃は流石のスター・デストロイヤーとはいえ十分な打撃になった。

 

微弱な揺れが続き、艦内に若干不穏な空気が流れているのをリヒター大佐は感じた。

 

冷たく少し痛い空気だ。

 

「窮鼠猫を噛むとは誰かが言っていたが……恐らくこれは……」

 

噛みついてきたネズミがタトゥ=ラットとウォンプ・ラットでは痛みも被害も違う。

 

それにアークワイテンズ級二隻とTIEブルートとボマー合わせて18機を撃破して”アキュぺテント”にダメージを与える敵が追い込まれたネズミと言えるのだろうか。

 

リヒター大佐は今までステルス・シップとの演習で友軍相手に勝利を重ねてきた。

 

親衛隊のステルス・シップも国防軍のステルス・シップも自身とこの”アキュぺテント”の敵ではなかった。

 

しかし今は違う。

 

これが演習と実戦の差なのか、それとも第三帝国のステルス・シップと大セスウェナ連邦のステルス・シップの性能の差なのか。

 

今言えることはここで手加減していればやられるということだ。

 

このインターディクター級が出せる全力を出さねば勝てない。

 

「インターディクション・フィールドの出力を最大まで引き上げろ」

 

リヒター大佐の命令を受けて技術士官が反発した。

 

「しかし艦長、それではプロトコルの規定値を超えてしまいます」

 

「構わん」

 

リヒター大佐は冷たく一蹴するも技術士官は退かなかった。

 

「しかしそれではハイパースペース内に友軍艦がいた場合の被害が…!」

 

「このままでは本艦が潰されるんだぞ…!責任くらい取ってやるから遠慮なくやれ」

 

「了解…!」

 

技術士官はリヒター大佐の圧に押されて重力井戸発生装置の出力を最大まで引き上げた。

 

これによりステルス・シップのクローキング装置は完全に剥がれ、その姿を宇宙空間に曝け出すことになる。

 

そうすればTIEブルート隊でも確実に始末出来る。

 

重力井戸発生装置から放たれるより強力なインターディクション・フィールドが周囲を取り囲んだ。

 

徐々に三隻のステルス・シップのクローキングが消失しその姿が現れた。

 

「敵艦発見!」

 

「直ちにファイターを向かわせろ!」

 

「”()()()()()()()()()”」

 

「何!?」

 

これで勝負はついた。

 

この周辺に展開しているヴァラコード級が全て姿を現した。

 

”アキュぺテント”の艦首に三隻、そして”()()()()()”。

 

最初の段階で攻撃したのは三隻のみ、だからリヒター大佐達は領域にいるのは三隻のみと思い込んでいた。

 

同じ小惑星帯にもう一隻、息を殺してずっと重力井戸発生装置を狙っていた艦がいるとも知らずに。

 

「撃て!」

 

後方に突如として現れたヴァラコード級、”ヴァレンズ”はセームズ少佐の命令で6発のプロトン魚雷を放った。

 

魚雷の姿を確認し”アキュぺテント”のセンサー士官は叫んだ。

 

「敵艦!魚雷発射!」

 

「迎撃しろ!」

 

「間に合いません!間も無く着弾!」

 

アキュぺテント”の右後方の重力井戸発生装置に6発全弾命中し爆発を起こした。

 

最大出力でインターディクション・フィールドを展開している最中に重力井戸発生装置が破壊されたらどうなるか。

 

その答えは初期反乱運動の頃に出ていた。

 

故にこの瞬間までチャンスを狙っていたヴァラコード級”ヴァレンズ”の艦長、セームズ少佐はすぐに退避命令を出した。

 

「180度回頭!直ちに現領域を離脱する!」

 

速やかに”ヴァレンズ”が回転し、最大船速で離脱を開始する。

 

同じようにモーデン中佐も三隻のヴァラコード級を率いて離脱を開始した。

 

その頃”アキュぺテント”は警報が鳴り響き、地獄のような状態が広がっていた。

 

「重力井戸発生装置のバランスが崩壊!まもなく暴走します!」

 

「直ちに停止しろ!!」

 

「無理です!!重力井戸、まもなく爆縮!暴走します!」

 

「そんなぁ!?」

 

アキュぺテント”に破滅が訪れた。

 

暴走した重力井戸のエネルギーが”アキュぺテント”の船体を襲う。

 

あちこちに爆発が広がり暴走した重力井戸が周囲のTIEブルートを引き寄せた。

 

重力井戸のエネルギーが爆縮した”アキュぺテント”は大爆発を起こし、爆沈した。

 

「敵インターディクター級轟沈!」

 

「よし!!いいぞ!!」

 

爆散するインターディクター級を眺めながらモーデン中佐はガッツポーズを浮かべ、自分の好きなスポーツチームが勝った時のように喜んだ。

 

ヴァラコード級は旋回して反対側にいる”ヴァレンズ”と合流した。

 

「セームズ少佐、よくやったぞ。いい当たりだ」

 

コムリンクで”ヴァレンズ”を指揮するセームズ少佐の指揮を褒め称えた。

 

『ありがとうございます、お陰様で良い役を頂きました』

 

「次は君が囮をやりたまえよ。さあ諸君、敵が来る前に離脱しようじゃないか」

 

艦列を組んだ四隻のヴァラコード級は一斉にハイパースペースにジャンプした。

 

エニード星系近郊の戦いはモーデン中佐らの勝利に終わった。

 

戦争全体で見ればなんて事のない局地戦だがこれから起こるエニード攻勢を考えれば重大な意味があった。

 

インターディクター級の喪失によるハイパースペース・ジャンプの阻止は攻勢の頓挫を防いだ。

 

彼らは正に小さな影の英雄であったのだ。

 

 

 

つづく




Eitoku Inobeです!今回は珍しく戦闘メインのお話を書いてみましたよ!

雪はドサドサ降り注いでEitoku Inobeのお家がレニングラードになっちゃった!!(大絶望)

味の感想ですが冷たかったです

НемецкийがНемецкий以外の人間に対する冷たさと同じものを感じましたよ

雪は雪でも雪のように潔白な人間でありたいものですな、Eitoku Inobeでした
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