第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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-銀河から再び民主主義の日は消えた-


新共和国の崩壊/前編

 

-帝国領 ディープ・コア特別警戒区-

ハイパースペースから二隻のエグゼクター級と数千隻の帝国艦が姿を表した。

 

ナイフのような姿をしたスター・ドレッドノートに率いられた帝国艦隊は前方の小さな白色の衛星まで進んだ。

 

データによればここに帝国軍の施設があるらしく仮にそれが機能していないにしても一旦の補給地点にしようとしていた。

 

帝国艦隊が現在保有しているインペリアル級はおよそ6,210隻。

 

今回はそのうちの4,200隻が戦線に投入された。

 

現在マジノ線で敵の主力艦隊を攻撃しているのは2,000隻。

 

恐らく敵艦隊はアクバー元帥の主力数百隻を筆頭にライカン将軍やメイディン将軍などの艦隊含めて2,000隻以上が参戦しているだろう。

 

単純な戦力で言えば互角、現在帝国艦隊がほぼ全戦力をマジノ本隊に向けているので実質的には帝国有利だ。

 

だがいつ他の防衛線から敵艦隊が参戦してくるか分からない。

 

そうなれば有利は不利に変わるだろう。

 

その為にも早急にホズニアン・プライムとシャンドリラを陥さなければならない。

 

「第一軍は現在マジノ線の敵艦隊と交戦中、アクバー本隊への攻撃に成功し衛星内まで撤退させたとの事」

 

「早いな…アクバー元帥なら後3時間は持ち堪えると思ったのだが」

 

「例の砲艦隊の効力が凄まじかったそうです、やはりあれは量産し全艦に設置すべきでしょう」

 

ルサンキアのブリッジに数名の高級将校のホログラムの姿があり会議を開いている。

 

ホロテーブルにはマジノを攻撃する帝国艦隊の姿があった。

 

「周辺艦隊が動き出しているようですがプラン通り応戦するとオイカン元帥が」

 

「そうだな…例の砲艦で軌道上爆撃を開始し新共和国の地上軍を殲滅しろ」

 

『上級大将…その…』

 

『アキシャル砲の軌道上爆撃は未だ未知数な点が多く…』

 

『今使用するのは危険です…』

 

参謀将校達は少し躊躇いシュメルケ上級大将に進言した。

 

実際の所その場の全員がアキシャル・シージ・レーザーキャノンの事を疑っていた訳ではなかった。

 

あの兵器の力は凄まじくそれはアクバー元帥の艦隊に対して証明済みだ。

 

だからこそだった。

 

あの兵器は理論上惑星シールドを展開していようとたった一撃で基地を丸ごと消し炭にする事が可能だ。

 

どんなに艦隊や基地が抵抗しようと砲撃している艦を撃破しない限り止める事は出来ない。

 

一方的なワンサイドゲームの戦場すら作り出す事ができる。

 

だからこそ将校達は躊躇いを覚えた。

 

戦場での一方的なワンサイドゲームはただの虐殺だ。

 

あの軌道上爆撃はそれが可能であり無抵抗の敵を痛振り弄ぶ事となる。

 

以前なら良かったが現在はその事が明るみに出た場合何を言われるか分からない。

 

「それは初めてデス・スターを使った時もそうだ、どんな物も最初とは危険が付き物だ」

 

「ですが…」

 

「そうまでいうなら多少出力を落とすのもいいだろう、だがやらねばならない」

 

シュメルケ上級大将は断固として退く事はなかった。

 

むしろ将校達の方が退き気味だ。

 

「再び帝国の秩序と威信を銀河に広く渡らせる為には痛みが必要だ、馬鹿げた国家を起こす新共和国がまず最初の痛みを知る事となる」

 

「つまり…新共和国はその先駆けで今後も同様の事を行うと?」

 

「当然だ」

 

隣で話を聞いていたモーデルゲン上級大将は彼に尋ねた。

 

即答だ。

 

「帝国に逆らう愚か者には痛みで教えなければならない、そして痛みを教え立ち直らせるのが我々の義務だ」

 

「その為に親衛隊と帝国軍が存在している」

 

フューリナー上級大将がそう付け加えた。

 

「この戦いはその一連の作業のうちに過ぎん、我々が目指す“恒久的な平和”のな」

 

シュメルケ上級大将は諭した。

 

そして会議をじっと聞き続けたヴィアーズ大将軍はそんな彼をみてふと思った。

 

彼の姿はどこかターキンに似ていると。

 

 

 

-第一親衛艦隊副旗艦 アークセイバー艦内-

「余った弾薬は全て厳重に保管しておけ、艦隊戦の時引火したら大変だ」

 

「わかりました」

 

「第12中隊の砲撃と第四連隊の突撃が始まったら我々も進軍する、それまでは砲撃中隊の支援だ」

 

「了解」

 

「あっそれと今回はダーク・トルーパーはなしだ、通常のトルーパーを乗せていく」

 

「了解しました」

 

ジークハルトは部下の数人に指示を出していた。

 

いよいよ戦闘の時まで数時間を切っている。

 

「連隊長、ファイター隊の装備だがやっぱシグマ=トゥエルヴの方がいいか?」

 

「いや制圧戦ならオメガ=トゥエルヴの方が役立つだろう、ボマーにはちゃんとイオン魚雷も」

 

「分かってる、インターセプターともこれでおさらばだな」

 

アドバイスを貰いに来たハイネクロイツ少佐はしっかり固定されている愛機を見つめそう言った。

 

ジークハルトはタブレットで物資を確認しながら疑問に思い尋ねる。

 

「おさらば?どうしたんだ急に」

 

「いや親衛隊から新型のインターセプターに乗り換えるよう言われてな」

 

「そうか…だがそれなら上官である私に一言あるはずだが?」

 

「まだ極秘なんだよ」

 

あえてジークハルトの顔を引き寄せ彼は耳打ちした。

 

それを聞いた瞬間ジークハルトは目を補足し不審な顔を作った。

 

「そういう事言っちゃいけないんじゃないのか?」

 

「いいんだよ大隊長閣下だし、それに明日にでも連絡が来るだろう、生きてればな」

 

「冗談きついっての、お前こそ堕とされて一緒おさらばすんなよ」

 

「言ったな?任せとけって、それじゃあな」

 

明るい声のままハイネクロイツ少佐は手を振り愛機の元へ去って行った。

 

ジークハルトも軽く手を振り返した。

 

すると反対側からヴァリンヘルト中尉とアデルハイン少佐がやって来た。

 

「中佐、後1時間後に出発だそうです」

 

「それと全兵器の収容及び整備が整いました、いつでも戦闘できます」

 

「分かった、出発まで兵士たちをなるべく休ませておけ」

 

「わかりました」

 

ヴァリンヘルト中尉は頷き走って伝えに行った。

 

タブレットを近くの棚に置くとジークハルトはアデルハイン少佐を引き連れてブリッジの方へ向かった。

 

ハンガーベイを離れると2人は軽く雑談を始めた。

 

「そういえばお前が結婚してもう7年か?」

 

「大体それくらいだな、どうした急に?」

 

「いやふと昔のこと思いだしてな…縁起が悪いって言われそうだが」

 

「全くだ」

 

2人は苦笑いしながら通路を歩いていた。

 

彼らにとってはある種懐かしい光景だ。

 

「…ようやくだな」

 

「ああ、これでようやく()()()にも顔向け出来る」

 

「新共和国に仇討ちを誓ったって誰かが還ってくるわけじゃないさ…だが」

 

「言わないでいい、そんな事百も承知だ」

 

「そうだったな」

 

アデルハイン少佐はあえてジークハルトの言葉を区切った。

 

彼にそんなこと言わせたくはない。

 

誰だって分かっている、その上で我々は戦うのだ。

 

「今日で新共和国は…終わりだ」

 

それは過去の亡霊たちに誓った復讐戦の言葉だった。

 

 

 

-ホズニアン・プライム軌道前哨基地-

惑星軌道上の新共和国艦隊はいつもより閑散としていた。

 

それでも六十隻余りの艦が駐留しているのだから大したものだ。

 

いずれはこの艦隊ももっと規模が縮小するであろうが。

 

ちょうど惑星の時間帯でいえば今は昼間だ。

 

そのせいか民間の船舶の動きは活発になっている。

 

あと少しすれば帝国艦隊が来るとは知らずに。

 

最初に異変に気づいたのは到着の約5分くらい前だった。

 

「中佐、ハイパースペース内に1,000m級の大型船舶の艦影を検知しました」

 

「艦識番号は?幸い艦隊がいないもんだから軌道上はスカスカだが一応聞いておこう」

 

「それが…探知できません…確かに存在はしているのですが…」

 

「存在しているのに探知不能とはどういう事だ、待ってろ今問い合わせる、あぁもしもし?」

 

中佐は回線を開き地上の管理所まで連絡を取った。

 

その間にも士官達は熱心にコンソールを操作し艦影を探知していた。

 

「ああ…分かった、管理所だと今日は1日大型の船舶の到来はないそうだぞ」

 

「ですが確かに艦影は…」

 

「機器の故障かもしれん…後は記入漏れ、不法侵入…」

 

司令官の中佐は指で思い当たる節を数え考え始めた。

 

その間にも技術士官達が機器の不調がないか整備し始めた。

 

「中佐、機器には異常はありません、正常に稼働中です」

 

「となると記入漏れか不法侵入か…とりあえず警戒レベルを引き上げよう、全哨戒機に忠告しておけ」

 

「了解しました」

 

「記入漏れだと管理所に報告する事となっていますが」

 

下士官の言葉に中佐は唸り声をあげ帽子を取り頭を掻いた。

 

入出船舶管理所の連中は記入漏れの事になると物凄くうるさい。

 

「そんな事はあり得ない、そちらの間違いだ」だの「そんなミスあるわけがない」だの絶対に間違いを認めようとしない。

 

さっきだってものすごい不機嫌な対応をされた所だ。

 

もう一度かけ直して記入漏れを指摘したら怒鳴られるのがオチだろう。

 

「…軍本部に連絡して対応を待つか」

 

「ですが後30秒で出現します」

 

「なんだと…急がないと…」

 

あたふたする中佐を完全に無視した形で彼らは現れた。

 

「これは…帝国軍のスター・デストロイヤーです!!」

 

「バカな!?今元帥の艦隊が抑えているはずだ…とにかく惑星を封鎖し全ファイター隊を展開しろ!!」

 

中佐は焦り取り敢えず命令を出した。

 

基地では警報が鳴らされ数百機のスターファイターが飛び立った。

 

だが一歩遅かった。

 

「中佐!敵艦隊が砲撃してきます!」

 

「シールド展開!急げ!」

 

「間に合いません!ブリッジに直撃します!」

 

「嘘だぁ!!そんなバカなぁ!!」

 

中佐の情けない声と共にブリッジにターボレーザーの一撃が貫きブリッジの全員を跡形もなく消し飛ばした。

 

 

 

ハイパースペースから出現した帝国、親衛艦隊の動きは迅速を極めた。

 

たかが六十隻程度の艦隊で数千隻の大艦隊の足止めを出来る訳が無い。

 

僅かな時も稼げず親衛隊地上軍の降下を許してしまった。

 

既にセキューター級スター・デストロイヤーを旗艦とした降下揚陸隊がホズニアン・プライムのあちこちで戦闘を始めている。

 

本来なら軌道上爆撃で更地にもでしてもいいのだが代理総統の意向でそれは却下された。

 

ジークハルトとストライク・フォースや第六親衛連隊も降下し支援を開始した。

 

「あそこに砲火を集中しろ!対空砲を潰すんだ」

 

『了解、座標セット』

 

AT-MPマークⅢ数機がミサイルを三発発射する。

 

この最新鋭機は顎の部分にAT-STのようなレーザー砲を備え付けられ近距離にも多少対応出来るようになっている。

 

だが以前から問題になっていた装甲の脆さはまだ解決されておらず課題は残っていた。

 

ミサイルが友軍を狙うターボレーザーを全て破壊した。

 

徐々に対空砲網が薄まり代わりに煙火が立ち込めていた。

 

『連隊長、友軍のセキューター級が支援を求めています』

 

「ポイントはどこだ」

 

『エリア-22です、ここからざっと1200メートル前後です』

 

「現地の地上部隊は」

 

『苦戦中です』

 

「持ち場を離れる訳にもいかん…ストライク2と3は共に来い、後付属機のAT-STもだ」

 

『了解』

 

ジークハルトを乗せたストライク1とアデルハイン少佐を乗せたストライク2が後ろに続く。

 

他にも親衛隊使用のAT-STマークⅢが続いた。

 

上空ではTIEインターセプターやTIEファイターとXウィングやAウィングが戦闘を開始している。

 

だが堕とされるのはどれも新共和国側のXウィングやAウィングばかりだ。

 

パイロットの練度や機体性能の前に物量が違いすぎる。

 

それは地上でも言える事だ。

 

まともな防衛線も展開出来ぬままウォーカーの機甲師団や機甲兵団に戦線を蹂躙されチリジリになって逃げている。

 

元々新共和国軍の地上戦力はお世辞にも高いとはいえない。

 

その上軍縮までなされているのだから今までの何倍も弱体化しているだろう。

 

「あれだな…戦闘中の中隊を下がらせてウォーカーで潰すぞ、AT-ST隊は先行しろ」

 

『了解連隊長!行くぞ!』

 

6機のAT-STマークⅢがノシノシと音を立てながら先行する。

 

その間にジークハルトは機体のコムリンクを開いた。

 

「戦闘中の地上中隊聞こえるか?」

 

『こちら指揮官マインツ大尉だ、どうされたか』

 

「今すぐ前方の対空基地を破壊する、一旦後退して再度攻勢に備えてくれ」

 

『了解した、全隊後退だ!』

 

物分かりのいい指揮官だ。

 

こういう場合意地でも撤退しない指揮官もいる。

 

手柄を横取りされたくないからだとか任務がどうとかそういう理由を並べて悪戯に兵力に損失を出す。

 

敵よりもこう言った無能な味方の方が100倍厄介だ。

 

その間にもAT-STマークⅢは戦果を挙げていた。

 

両耳に相当する部分に付いているツイン・レーザー砲の火力で敵兵は鎖のように連なりバタバタと倒れていった。

 

ブラスター・ライフルで応戦するがそんなもの効くはずがない。

 

ツイン・レーザー砲の餌食となりその命を散らすだけだった。

 

『間も無く敵の掃討が完了します!』

 

「よくやった、こちらもも砲撃態勢に移る」

 

コックピットの天井から双眼鏡のようなターゲットスコープを取り出し覗き込んだ。

 

 

 

 

AT-ATの主兵装であるMS-1連動方式重レーザー砲が放たれる。

 

この強力な重レーザー砲は輸送船程度ならたった一撃で撃破する事すら可能だ。

 

対空基地を破壊することなど雑作もない。

 

基地は木っ端微塵に破壊された。

 

『…よくやった中佐!今降下する!』

 

「バエルンテーゼ大将、貴方でしたか」

 

ジークハルト直属の上司であるゴットバルト・バエルンテーゼ上級大将から通信が入った。

 

彼は帝国時代からの上官だ。

 

今でも多くの部下から“バエルンテーゼ将軍”のあだ名で慕われている。

 

彼はジークハルト達だけでなく周辺の全部隊に通信を繋げていた。

 

『喜べ我が師団の到着だ!諸君と共に戦いに来たぞ!』

 

あちこちの部隊から歓声が上がる。

 

彼の声と彼の師団の名だけで一気に士気が跳ね上がった。

 

それもそのはずだ。

 

彼の師団、延いては彼の兵団とその附属連隊はあのコルサント戦で最も戦果を挙げ最も勇猛に戦った部隊として帝国軍や親衛隊中に名が知れている。

 

親衛隊は嫌いでもバエルンテーゼ上級大将と彼の部隊は好きだという将校すらいる。

 

セキューター級から展開された彼の師団は撤退する敵を掃討しつつ確実に一歩ずつ前進していた。

 

『連隊長、第四連隊の攻撃が始まりました、どうしますか?』

 

控えさせた他の連隊員から通信が入った。

 

このまま第四連隊の打撃力で中央の防衛を突破しバエルンテーゼ上級大将の師団と共に突撃すれば多大な戦果と共に首都を陥せるだろう。

 

「全隊、バエルンテーゼ師団を護衛しつつ前進する、どうですか将軍」

 

『なら先に行くのは君達だ中佐、第六連隊の連隊旗を立ててやれ』

 

「ですが…」

 

『支援の中隊は他にもいる、むしろ先行して我が師団を導いてくれ』

 

「要は露払いですね」

 

『確かにそうとも言うな、さあ行け!』

 

「わか利ました、第六親衛連隊全隊に次ぐ、予定通りこのまま首都を突っ切るぞ」

 

コムリンクの先から威勢の良い返事が聞こえた。

 

バエルンテーゼ師団の到着より第六親衛連隊の到着の方が早かった。

 

数十機のウォーカーとタンク、ジャガーノートが隊列を組み前進する。

 

防御陣形を取りつつもいつでもジャガーノートの機動力を活かせるようにしていた。

 

「トルーパーをいつでも展開できるようにしておけ」

 

『了解』

 

「距離後120メートルです、前方に第四親衛連隊を発見」

 

パイロットが報告しジークハルトもエレクトロバイノキュラーで確認していた。

 

敵は四方から打撃を受けて次々と戦線を破棄し内へ内へと撤退している。

 

既に惑星の80%以上は親衛隊が制圧した。

 

もはや逃げ道などない。

 

「センサーを起動して探知して伏兵を確かめる、ミサイル・ランチャーの用意もだ」

 

「はい中佐、センサー起動」

 

「ミサイル装填」

 

2人のパイロットが機体を操作し命令をこなす。

 

AT-ATドライバーと呼ばれるこの鋼鉄製の化物のパイロット達は皆精神的にも肉体的にも屈強な兵士達だ。

 

仮に時期が破壊されても過酷な環境を生き延びる事が出来るような装備を身につけそうならぬよう血の気が引くほど訓練を重ねてきた。

 

この2人もそうだ。

 

何度も戦いを経験し訓練だけでなく実戦の経験もあるエリートだ。

 

「センサーに反応ありません」

 

「わかった、全機ミサイル斉射の後一斉突撃、親衛隊の力を思い知らせてやれ」

 

ジークハルトは柄にもなく味方の士気を上げる為わざと強気になった。

 

AT-ATから放たれたミサイルの流星群はそんな彼の言葉を体現するかのように破壊と殲滅の先兵を担った。

 

 

 

最も白熱した戦いを繰り広げているのはスターファイター隊だった。

 

もはや軌道上での防衛は不可能だと悟った新共和国のスターファイター隊は次々と大気圏に降下した。

 

当然帝国軍のスターファイター隊も追わないわけにはいかず両軍は軌道上で、大気圏で、ホズニアン・プライムの空中で戦い続けた。

 

ハイネクロイツ少佐のシュワルツ中隊もそうだった。

 

飛行大隊所属の各中隊をそれぞれの中隊長に任せ彼はシュワルツ中隊と共に遊撃に打って出た。

 

元々バランスの良いこの中隊だ。

 

遊撃は功を奏し次々と戦果を挙げた。

 

今も友軍機の背後に着いた敵機を撃破し味方を救うハイネクロイツ少佐の姿があった。

 

「ボマーとブルートは前方のコルベットをやれ、他は露払いだ」

 

『了解!』

 

中隊機が各々編隊を保ったまま散開しそれぞれ獲物を狙い始めた。

 

コルベット艦に狙いを定めるTIEボマーとTIEブルートは対空砲火を避けながら艦に近づく。

 

当然足の遅い爆撃機を狙おうとXウィングやAウィングが攻撃に出るが全て他のTIEインターセプターに撃破されてしまった。

 

トップスピードで敵機を狙い撃破するハイネクロイツ少佐の機体は長い飛行機雲を作っていた。

 

飛行機雲を彩るように破壊され爆発した敵機の火球が連なり線を作り出す。

 

「このぉ!」

 

ペダルをさらに踏み込み両翅のレーザー砲を放つ。

 

回避や防御が間に合わず両翼とコックピットにモロに攻撃を喰らったXウィングが爆発し爆ぜた。

 

これでコルベット艦を護衛する敵機はあらかた片付いたはずだ。

 

『シュワルツリーダー、間も無く爆撃開始します』

 

「敵の砲火に気を付けろ、ボマーと言えど喰らったらただじゃ済まんぞ」

 

『わかってます、攻撃開始します』

 

3機のTIEボマーが一斉にプロトン爆弾やブロトン魚雷を放った。

 

偏向シールドが消えたコルベット艦に対して爆撃は有効だ。

 

更にTIEブルートのフルバーストも相まってコルベット艦は大きな爆発を起こし跡形も無くなった。

 

『コルベット艦を撃破しました!』

 

『敵部隊、散開して後退していきます』

 

「地上にだけは行かせるな、大勢の味方がいる…いやこのまま第六連隊を支援するぞ」

 

『なるほど、了解ですリーダー』

 

「さあ着いて来いよ坊主ども!」

 

再び機体のペダルを思いっきり踏み込み機体の加速度を全開にする。

 

それに続くように部下のTIEインターセプターやTIEボマー、TIEブルートが続く。

 

あちこちで爆発が起こり煙で空が濁っている。

 

どれもよく見れば物量に押し潰されぐちゃぐちゃになった新共和国の機体だ。

 

可哀想とは微塵も思わないが恐ろしいとはちょっとだけ思う。

 

「大隊長閣下、聞こえてるか?」

 

ジークハルトのストライク1に彼は通信を繋げる。

 

『そっちはどうだ少佐、我々は今中央に向かって進軍中だ』

 

「オーケー支援する、空も大気圏も更に上の宇宙も新共和国はもう負け気味だ」

 

『だろうな、こっちも敵は次々と撤退している」

 

「そいつは結構、見えてきたぜ、ついでに敵機もな!」

 

引き金を引き友軍を攻撃しようとするAウィングやYウィングの編隊を蹴散らす。

 

「全機、敵スターファイター隊と地上部隊をウォーカーやタンクに近づけるな、全部蹴散らせ」

 

『了解!』

 

再び中隊が散開し対空砲や敵のジャガーノートをスクラップに変えていく。

 

ハイネクロイツ少佐もギリギリの低空飛行で地上の敵兵に機体のレーザー砲を浴びせていく。

 

オーバーキルもいい所だ。

 

肉片と成り果てた敵兵は大きく宙に舞い上がり最期思いっきり地面に叩きつけられた。

 

だからといって地上のウォーカーの方がもっと恐ろしい。

 

空爆はまだ生き延びる余地がある。

 

しかしAT-ATやAT-STマークⅢのようなウォーカーはそうはいかない。

 

何処へ逃げようと追ってくるしスターファイターの何倍も恐ろしい火力を浴びせてくる。

 

どんなにブラスター・ライフルを持っていようと意味を成さない。

 

火力を打ち出す前に絶命するか仮に攻撃出来たとしても焦げ目すら付かない。

 

そんな絶望的な戦いの中それでも新共和国軍の兵士達は戦っている。

 

『前方、新共和国元老院複合施設です』

 

AT-ATのパイロットがコックピットの中で指を指して言った。

 

第六親衛連隊の第一目標だ。

 

『ハイネクロイツ、対空砲の面倒を頼む、その間に我々が突っ込む』

 

「任せろ、全機聞こえたな?」

 

『了解!』

 

『はい!』

 

『ええ!』

 

『隊長、複合施設より敵機です!』

 

目を抜けると十数機のスターファイターが複合施設の格納庫から姿を表した。

 

完全に防衛しに来たようだ。

 

「片付ける、中央に火力を集中して敵を分断する」

 

『了解!』

 

中央に集まりしっかりと編隊を組んだシュワルツ中隊が一斉に攻撃する。

 

回避しきれなかった敵機が爆発を起こした。

 

「各個撃破だ!」

 

中隊は全機反転して右に避けた新共和国軍機を狙った。

 

背後を取られてしまったAウィングやXウィングの編隊は次々と数を減らしていく。

 

なんとか逃げ切ろうとするがTIEインターセプターからは逃れられない。

 

エンジンが炎上し犠牲となった。

 

だがただでは連中もくたばらない。

 

『隊長敵機が!』

 

「なっ!?ジークハルト!」

 

ジークハルトのストライク1に1機のXウィングが激突する。

 

幸いギリギリのところでXウィングの耐久が限界になり少し逸れたが左の前足の部分に直撃した。

 

鋭いナイフで切った後のように足が斜めに切断される。

 

『足が切断されました連隊長!』

 

パイロットがAT-ATの状況を報告する。

 

コムリンク越しでわからなかったがこの時ジークハルトは相当焦っていた。

 

大きな振動と共に機体が滑り落ちる。

 

『不時着だ!残りの足で機体を支えろ、全員衝撃に備えろ!』

 

ストライク1が残った足で大地を踏み締めゆっくりと座ったような姿勢を取る。

 

その様子を戦闘も忘れハイネクロイツ少佐はじっと見守っていた。

 

それが仇となった。

 

『中隊長敵機が!!』

 

「なっ!」

 

炎上したAウィングが真っ直ぐハイネクロイツ少佐のTIEインターセプターに突っ込んでくる。

 

ギリギリのところで操縦桿を回し機体を逸らせたが左翼部分のパネルを大きく抉られエンジンも損傷してしまった。

 

「クソっ!しくじった!!」

 

警告音のサイレンが鳴り響く中彼は失敗に苛立った。

 

もうこの機体は長くは持たない。

 

屈辱的だが死ぬよりはマシだとなんとか機体を維持しながら武装や必需品を取り出した。

 

『隊長!』

 

部下の心配そうな声が聞こえる。

 

「大丈夫だシュワルツ3、シュワルツ2は残りの中隊の指揮を取る、俺は悔しいが地べたに張り付いて戦ってくる」

 

『りょっ了解!』

 

「俺以外もう堕とされんなよ!じゃあな!」

 

そう言うと通信機をパイロットスーツのポケットに仕舞いシートの左側に備え付けられたレバーを引く。

 

ハッチが開き座席シート毎ハイネクロイツ少佐は機体から弾き出された。

 

パラシュートが開きゆっくりと地上に落下していく。

 

機体はどうやら主人を失って真っ直ぐ敵のジャガーノートに突っ込んだようだ。

 

すまない事をしたなと彼は心の中で密かに思った。

 

普通ならこのまま落下にもを任せて地上に降り立つが彼は一味違う。

 

シートベルトを外しハイネクロイツ少佐は背中に付けたジェットパックを点火しシートを思いっきり蹴り更に加速度を付けた。

 

噴き出された炎が彼に再び空を操らせる。

 

彼は鳥のように空を駆けた。

 

「1機くらいは貰っとくか…」

 

独り言を挟むとハイネクロイツ少佐は両方のホルスターからブラスター・ピストルを引き抜いた。

 

ピストルを一回転させると1機のXウィングに狙いを定めた。

 

彼は真っ直ぐ進みXウィングと衝突しそうな距離まで接近した。

 

向こうのパイロットは視認が遅れ相当焦っている。

 

その隙を突きハイネクロイツ少佐はXウィングのコックピット部分に飛び乗った。

 

コックピットのキャノピーにピストルを押し当て引き金を引く。

 

何も出来ないパイロットはそのまま弾丸を喰らい絶命した。

 

再びジェットパックを点火しその場を離れると今度は近くのビルに着陸した。

 

ため息混じりに苦笑を浮かべる。

 

「たく…()()()()()()()()()()()()()()()()()だけで十分だっての…」

 

 

 

ほぼ崩れ落ちる形でなんとか機体を安定させたジークハルト達は機体の中で装備を漁っていた。

 

「白兵戦だ、2人とも武器は」

 

「我々にはこいつが、どうぞ連隊長も」

 

そう言ってAT-ATパイロットWD-210が特殊なE-11を投げ渡した。

 

しっかり掴むと彼は武器の状態を軽くチェックする。

 

「後部のトルーパー隊は大丈夫か?」

 

『全員異常なし、後命令を連隊長』

 

「先行して他の地上部隊と合流しろ、ストライク2」

 

『大丈夫ですか連隊長』

 

心配そうなアデルハイン少佐の声が聞こえた。

 

「全く問題はない…ウォーカー隊の指揮は君が取れ、全隊に命令、歩兵部隊を展開して前方元老院複合施設を制圧する」

 

『了解、トルーパーを下せ』

 

AT-ATやジャガーノートから大勢のフューラー・ストームトルーパーが降り立つ。

 

WD-211ともう1人のパイロットWD-212もブラスター・ライフルを構え命令を待つ。

 

ジークハルトはホルスターにピストルを仕舞いヘルメットを被り直すと2人に命令を出した。

 

「さあ、行くぞ」

 

そう言うと3人はコックピットから出て外の戦場へと移った。

 

弾丸が飛び交い建物や戦闘車両が爆発する戦場では命など儚いものだ。

 

放たれたたった一発の弾丸が命を奪い取り死をもたらす。

 

痛みに悶えながら、あるいは死んだ事すら気付かないまま一生を終えてしまう。

 

そんな戦場に彼らは飛び込んだ。

 

「雑魚に構うな!一気に施設を陥すぞ!」

 

「了解中佐!みんな続け!」

 

連隊旗を持ったヴァリンヘルト中尉がブラスター・ライフルを打ちながら味方を誘導する。

 

勇猛果敢に進み続ける旗手を見たストームトルーパーや士官達は勇気付けられ旗に続いて彼らも進んだ。

 

ジークハルトもライフルで伏兵を倒しつつ部隊を統率した。

 

本来連隊長のような指揮官が前線で戦うなど稀だが帝国や親衛隊ではよく見かける光景だ。

 

特に非常事態が重なるとこうなる。

 

その為にも指揮官達は高度な訓練を受け一般兵以上の練度を保つ必要もある。

 

まあこれはジークハルトの持論だが。

 

1人の敵兵士を撃ち倒すとアデルハイン少佐のストライク2の砲撃で複合施設のバリケードが破壊された。

 

「いいぞ!進め!」

 

ブラスター・ライフルを撃ちながら、ブラスター砲を運びながら多くの兵士達が進んだ。

 

敵の砲撃をシールドなどで防ぎつつ持ってきたブラスター砲を組み立てる。

 

何度も訓練を受けている為さほど時間はかならないはずだ。

 

改良された親衛隊仕様のEウェブ重連射式ブラスター砲はやはりわずかな時間で組み上がった。

 

この兵器の火力や連射力は今まで多くの反乱軍、新共和国軍の兵士の命を奪ってきた。

 

それはこの時代とて変わりはない。

 

逃げる敵兵や瓦礫を盾にして戦う敵兵をEウェブは次々と蒸発させていった。

 

たった一発だけで撃たれた者はピクリとも動かず文字通り血液が蒸発してしまったのか血すら滴らない。

 

だが奥から重火器を持った数個分隊規模の歩兵隊が集まってきた。

 

互いに引き金を構える。

 

相手の重火器ではこちらも少しばかり被害を食らうだろう。

 

覚悟の上かと全員が思ったその時空から新共和国兵の足元に何かが投げ入れられた。

 

数秒後その球体状の何かは爆発を起こし兵士達のほとんどを巻き込んだ。

 

爆発の煙が煙幕のように立ち込め視界が一気に悪くなったがその向こうの何者かは一発ずつ確実に生き残った敵兵を仕留めていた。

 

連隊の数人が振り返ると彼らの背後には黒い人影が宙に浮いていた。

 

「なんとか間に合ったようだな」

 

「なんだハイネクロイツか…脅かしやがって、全隊!前進しろ」

 

ジェットパックを巧みに操りハイネクロイツ少佐はストンと砂煙すら立てず降り立った。

 

ジークハルトが軽く苦笑いしている頃ヴァリンヘルト中尉とストームトルーパーの一団は施設内に突入した。

 

「コマンダー地図を見せてくれ、要人はなるべく捕縛しろ!殺すなよ!」

 

後続のトルーパー達に命令を出した。

 

連隊のストームトルーパー・コマンダーは彼にホログラムでの地図を見せた。

 

「このまま連隊を突入させて施設を制圧する、第一に用心の確保、第二に発着場の確保だ」

 

「バエルンテーゼ上級大将の師団が既にありますが」

 

「まだ足りない、他の師団や兵団も更に展開する必要がある、この大きさなら少なくとも一度に一個大隊並の兵力は降ろせる」

 

「物資も必要だしな、補給地点は必要だ」

 

ハイネクロイツ少佐はジークハルトの言葉に付け加えた。

 

「平らに作られていて物資を置く倉庫にもなりそうだ、コマンダー上級大将に連絡を」

 

「わかりました、通信を繋いでくれ」

 

コマンダーは近くの下士官やストームトルーパーに命令を出し2人の将校はジッと複合施設内を見つめた。

 

「この戦いは勝ちだな」

 

「ああ…残りの部隊は私に続け、まだ足りないはずだ」

 

ブラスター・ライフルを構え直しストームトルーパーの部隊を率いた。

 

そこには冷酷な指揮官の姿しかなかった。

 

 

 

新共和国元老院複合施設の制圧は思った以上に体力と時間を消費した。

 

元々この施設は特権的だとかそう言った不公平感を無くす為に平屋建ての建物になっている。

 

おかげでオフィス間の行き来には時間がものすごく掛かる。

 

何せ横幅1キロメートルを超しているのだから。

 

だが今回はそれが良いように働いた。

 

広い施設を全て制圧するのに少し手間取りその間に新共和国の兵士達は逃げる時間が出来た。

 

それでも逃げられなかった兵士が大半でもう施設の八割を制圧化に置いているのだから第六親衛連隊の練度の高さを示している。

 

だが不思議なのはどこを探しても元老院議員がほとんどいなかったという点だ。

 

逃したにしても船が逃げ出したという報告は受けていない。

 

「このまま直進だ!進め!」

 

ブラスター・ライフルで敵を攻撃しつつヴァリンヘルト中尉は旗を振った。

 

彼に率いられた2個分隊ほどのストームトルーパーが後に続く。

 

まだ銃声や小爆発の音があちこちから響いているが突入した最初の頃よりはだいぶ少なくなっていた。

 

それは市街地や他の施設でも同様で爆発や戦闘の煙は少なくなっていた。

 

もう新共和国軍は組織的な行動を行えない現れだろう。

 

事実新共和国の敗残兵達は降伏するか再集結して撤退戦を行うかの二択に絞られていた。

 

最初からこの戦いに勝ち目などないのだ。

 

数ヶ月前から帝国が勝つ事はもう決まっていた。

 

ただ単純に真実が見えなかっただけだったのだ。

 

そして遂に銀河中がその真実を知る決定的な瞬間が来た。

 

「ここだ!ここを登れば屋上だ!」

 

ヴァリンヘルト中尉とストームトルーパー達が建物の屋上に登った。

 

敵はおらず彼らを狙うスターファイター類もとっくの昔にみんな撃墜されていた。

 

ヴァリンヘルト中尉は連隊旗の旗を取り替えた。

 

これは連隊だけの勝利ではないからだ。

 

旗を帝国の紋章が入った旗に付け替えると中尉は一番高い屋根に登りアンテナのようなものに括り付けた。

 

その光景が誰もの目に入った。

 

風に靡かれ旗は翻る。

 

帝国の紋章は新共和国の元老院を完全に押さえ付けたように見えた。

 

あちこちから歓声が響き渡る。

 

きっと目にした帝国軍や親衛隊の将兵達が勝利を喜び歓喜の声を上げてくれているのだろう。

 

これは勝利だ。

 

2年の屈辱を経て銀河帝国は新共和国に勝利したのだ。

 

今日は新たな記念日となる。

 

新共和国はこうして崩壊した。

 

今日民主主義は再び敗北し泥水の中に叩き落とされたのだ。

 

 

つづく




ようやく新共和国が崩壊しましたね(ニッコリ)
まあ本当の戦いはまだまだこれからだということで

Eitoku Inobeの次回作にご期待ください(大嘘)
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