第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「我々は23年待ってラクサスに帰ってきた、もう3年待つくらいどうってことないさ」
-7ABYのラクサス撤退に際してある新分離主義連合宇宙軍中将 の発言より抜粋-


ラクサス・セカンダス攻勢

-第三帝国領 アウター・リム・テリトリー タイオン・ヘゲモニー ラクサス星系 惑星ラクサス・セカンダス 首都ラクサロン-

ラクサロンの行政府区画はこの3年のうちに第三帝国の総督府の官庁街へと改良された。

 

かつて分離主義元老院ビルと呼ばれた建物も、今や第三帝国の総督府である。

 

ありとあらゆる占領行政機関が展開し、第三帝国のストームトルーパーが日夜警備についている。

 

行政府の中央にはモフグロットンがタイオン・ヘゲモニー全体の行政を統括していた。

 

かつて辺境惑星デシックスの総督だったモフグロットンだが、今や第三帝国のモフにまで出世した。

 

尤も碌でもない人間から変化していないことは確かだ。

 

モフグロットンは駐屯する国防軍の武力を背景に第三帝国の交換と連んでラクサスでの権力を欲しいままにした。

 

無論悪政を甘んじて受け入れるほどラクサスの民は柔ではない。

 

ラクサスやオッサス、フェルーシアでは未だ武力闘争が続いており、その度に治安維持として派遣されたFFISOの任務部隊が出動していた。

 

今回はその話し合いということで長官のハイドレーヒ大将自らラクサスに訪れる”はずだった”。

 

1機のラムダ級シャトルが総督府のハンガーベイに着陸し、ストームトルーパー1個分隊とFFISOタイオン・ヘゲモニー支部の将校から出迎えを受けた。

 

ハッチが開き、先にFFISOの特殊戦術部隊の隊員が先に2名降り立った。

 

彼らは白いアーマーに一般的な地上軍トルーパーと同じヘルメットを被り、ゴーグルをつけていた。

 

その奥から今回、大将の代行として派遣されたベレーク中佐がシャトルから降りた。

 

中佐はISB時代から継承されたFFISOの白いロングコートを着て、黒い制帽を被っていた。

 

「ようこそ、ラクサスへ。タイオン・ヘゲモニー支部、総督連絡員のバンテル少佐です」

 

少佐は第三帝国式敬礼でベレーク中佐を迎え、中佐は簡易式敬礼で返した。

 

バンテル少佐は彼の側にいる凡そ1個分隊はいる特殊戦術部隊トルーパー、通称STFトルーパーに目をやった。

 

ハイドレーヒ大将ならともかく、一介の中佐が引き連れてくることは中々ない。

 

少佐は思わずベレーク中佐に尋ねた。

 

「そちらの部隊は中佐の護衛ですか?」

 

「ん?ああ、その通りだ。ネーベル少将が念の為にと持たせてくれた」

 

ベレーク中佐は得意げに語った。

 

彼は自らの護衛にSTFトルーパーが付けられたのが余程嬉しいのか表情は常に何処か誇らしいものであった。

 

中佐は保安将校には似合わず割りに穏やかなインテリといった顔付きで、実際に名門のテパシ帝国大学を卒業したインテリのエリートである。

 

珍しく性格は良い方で同僚や後輩、部下の出世を素直に手助けしたり喜べる人物であった。

 

尤もFFISOの将校らしく何処か他者を見下し、暴力を行使出来るという愉悦感は備えていたが。

 

そんなベレーク中佐はバンテル少佐の何処か羨ましそうな表情を見てこう付け加えた。

 

「なぁに、少佐も中央に来て出世すればSTFの1個分隊くらいすぐに指揮下に入るさ」

 

「ハハハ、まあとにかく、グロットン総督がお待ちです」

 

そういってバンテル少佐はベレーク中佐を総督府の執務室へ連れて行った。

 

その頃、モフグロットンは執務室でベレーク中佐を待っていた。

 

彼は今でも帝国軍の制服を着ていた。

 

「総督、ベレーク中佐の代理チームが到着しました。現在、バンテル少佐が出迎えに行っています」

 

総督事務次官のハインツマンがタブレットを持って報告に来た。

 

事務次官は第三帝国の官僚が着る一般的な勤務服を身に纏い、口髭を生やしていた。

 

モフグロットンは時計を見て「もう来たのか」と呟いた。

 

「それで、やはりハイドレーヒ長官は来ないのか」

 

モフは改めて聞き直した。

 

「はい、ですので副官のベレーク中佐が代理ということできました」

 

ハインツマン事務次官は物静かな声音でそう答えた。

 

事務次官の答えを聞いてモフグロットンはどこか嬉しそうだ。

 

厄介な人物と会わなくて済む、そんな雰囲気だった。

 

返答から僅かに間が開いた為、事務次官は「何か問題でも?」と尋ねた。

 

「いや、むしろ気が楽なるよ。あんな蛇みたいな人が目の前に座れちゃ話なんて出来やしない。御しやい中佐相手にこちらの要望を叩きつけよう」

 

「そんなこと言ってるとFFISOに告げ口されますよ」

 

ハインツマン事務次官が冗談を込めてそう呟くとモフグロットンは豪胆に笑い返した。

 

彼の精神はデシックスの総督時代から随分と豪胆になっていた。

 

「なあに安心しろ、このラクサスを統治出来る人間はこの銀河で私しかいないのだからな」

 

そう言ってモフグロットンは高笑いを浮かべた。

 

ハインツマン事務次官も困ったような笑みを浮かべていたが悪い気はしていなかった。

 

少なくとも彼らは今日という日を平穏無事に過ごせると考えていた。

 

ベレーク中佐に強気に出て要望を押し通し、仕事が終わればいつも通りブロッサム・ワインを開けて美人を相手に楽しい夜を過ごすつもりでいた。

 

しかしそれは幻想であるということを彼らは数時間後に思い知ることになる。

 

既に連合=レジスタンス合同軍はすぐそこまで迫っていた。

 

ラクサスには先行して侵入した偵察特殊部隊が破壊工作の準備を終え、あちこちに待機していた。

 

そのうちの1隊にはジェルマンとジョーレンが率いる暗殺部隊も含まれていた。

 

彼らはA-280CFEやA300を手に持ち、悪政図るモフグロットンや本来くるはずであったハイドレーヒ大将を殺す為に今日まで己を研ぎ澄ませていた。

 

見えないところで必死に偽装しながら彼らは準備を重ねてきた。

 

時にはかつての宿敵であった勢力から力を借り、作戦に必要な人員と物資をかき集めこの一戦に臨んだ。

 

銀河の暗がりの中で彼らはひたすら準備し続けていたのだ。

 

ラクサス・セカンダス攻勢、暗がりからの一突きはその成果の一つであった。

 

 

 

 

-第三帝国領 タイオン・ヘゲモニー デゼヴ星系 惑星デゼヴロ-

デゼヴロ周辺は第三帝国の勢力圏となった。

 

それでも第三帝国にとって重要な惑星はデゼヴロではなく、ラクサスやリアンナ、ベルダロンであり、デゼヴロには小中規模の部隊しか配備されていなかった。

 

惑星内部には国防地上軍の1個連隊のみが展開し、軌道上にはヴィクトリー級三隻、アークワイテンズ級六隻の機動部隊が配備されていた。

 

しかもこの機動部隊も周辺星系とのパトロール艦隊も兼任している為、九隻の艦艇が軌道上にいることもまずない。

 

地上軍1個連隊も大隊でいいのではないかという意見が出始めており、全体的に縮小傾向にあった。

 

何せレジスタンス軍が攻撃を開始しても戦場となる地域はフェルーシアかラクサス、もしくは手前のフローンであり、デゼヴロが戦場になる可能性は低かった。

 

その為デゼヴロの駐留部隊は完全に緩み切っていた。

 

駐留機動部隊司令官のエヴェーレン大佐もそのうちの1人だ。

 

彼は勤務中であってもアルコール飲料を飲み、勤務中であっても乗艦であるヴィクトリー級の艦長と雑談ばかりしていた。

 

服装も乱れており、詰襟は基本留まっておらず、時には服務規程で定められている将校ディスク付きのベルトもつけていなかった。

 

この日はベルトは付けていたが相変わらず襟は留まっておらず、雑に着ていた為軍服も乱れていた。

 

無論周りの将兵達はこのような姿を見ても誰も気にしない。

 

一応の敬礼だけして状況を報告した。

 

「星系全体に大規模な通信障害が発生しています。ラート中佐のパトロール隊とも交信が難しい状況です」

 

「ああ、そう。どのくらいで直りそうなの」

 

「復旧の目処は立っていませんがまあ2、3時間したら直るでしょう」

 

副官のケイネル中尉の報告を聞き、大佐は如何にも興味なさそうな声音で返した。

 

エヴェーレン大佐は本来の帝国軍であれば大佐になれるような人材ではなかった。

 

エンドア、帝国の崩壊、第三帝国になってからの急激な軍備再建の結果エヴェーレン大佐のような人間でも大佐になってしまい、地方部隊の指揮官に任命された。

 

本人も大尉か上手くいったら少佐で退役するつもりだったのだが思いの外長引いてしまったとボヤいていた。

 

「大佐、ハイパースペースよりジャンプアウトする物体あり。友軍艦艇及び民間の艦艇ではありません」

 

ブリッジのセンサー要員が報告した。

 

「ではレジスタンスか?全艦隊とスターファイター隊に戦闘態勢に入るよう命じろ。多分何もないと思うんだがな」

 

「ラート中佐の隊にも帰還するよう命じましょうか」

 

「ああ、うん、お願い」

 

機動部隊がゆっくりと戦闘配置に移行している間にハイパースペースの艦影は姿を現した。

 

ハイパースペースから次々と艦艇がジャンプアウトする。

 

正面にはスターホーク級一隻、MC80スター・クルーザー二隻、MC75スター・クルーザー二隻、その僚艦としてネビュロンBエスコート・フリゲートや新共和国クルーザーが確実に十隻以上展開していた。

 

しかも艦隊の周りにはスターファイター隊が待機しており、まだ戦闘準備の整っていない機動部隊に襲いかかってきた。

 

「レジスタンス艦隊です!」

 

「見れば分かる!早く迎撃しろ!」

 

大佐は命令を出したが大分遅すぎた。

 

Xウィングに護衛されたBウィングやYウィングが対艦攻撃を敢行し僚艦のアークワイテンズ級を何隻かが大破した。

 

「”ACC-12-445”、”ACC-12-553”大破!」

 

「TIEファイター部隊を出せ!迎撃するんだ!」

 

最初の一撃が入ったところに続けてレジスタンス艦隊が砲撃を加えた。

 

ヴィクトリー級は優秀な中型艦艇であるが、だからといってスターホーク級やMCスター・クルーザーの砲撃を喰らって無傷でいられるかと言われればそうではない。

 

着実に被弾を重ね、機動部隊は損耗していった。

 

『”ヴェスパー”より、シンドゥーラ将軍へ。左のヴィクトリー級はこちらで仕留めるので将軍は旗艦のヴィクトリー級をお願いします』

 

「”ヴェスパー”了解した。爆撃機と護衛機隊は私に続いて、中央突破を図るわよ!」

 

ゴーストは接近するTIEブルートやTIEインターセプターを撃墜し、部隊の進路を切り拓いた。

 

スターホーク級”ヴェスパー”のブリッジで指揮を取るヘイル少将は的確な砲撃指示でヴィクトリー級を轟沈に追い込んだ。

 

本来の歴史ならただの艦長で終わっていた人間も戦争の影響で将官にまで上がった。

 

シンドゥーラ将軍とX、Aウィングの護衛機隊によって敵のスターファイター隊は蹴散らされ、爆撃機隊の道が開けた。

 

「道が開けたわ」

 

『了解!直ちに爆撃を開始する』

 

先行したBウィングが合成ビーム・レーザーを放って偏向シールドを打ち破り、損害を与えた。

 

更に後続のYウィング部隊がお手本のような爆撃を繰り出し、ヴィクトリー級に致命傷を与える。

 

大佐を乗せたままヴィクトリー級は轟沈した、避けられない運命だった。

 

残りの艦船やTIEファイター部隊も蹴散らされ艦隊は地上戦に移行した。

 

艦隊から送り込まれたレジスタンス地上軍3個旅団は直様地上に展開し、戦闘を開始。

 

連隊本部が降伏を選択するまで2時間も掛からなかった。

 

レジスタンス軍はこれで少なくともラクサスと帝国を分断した。

 

ラクサス・セカンダス攻勢最初の戦いはレジスタンスの勝利で始まった。

 

 

 

 

 

-第三帝国領 惑星ラクサス 軌道上-

連合=レジスタンス合同軍の主力部隊はラクサスを目指した。

 

まずヘラ・シンドゥーラ将軍率いる先遣隊がデゼヴロを制圧し、退路を遮断。

 

その間にアクバー元帥麾下の艦隊は惑星オッサスを目指し、トゥーク提督率いる本隊がラクサスへ向かった。

 

更にフェルーシア方面にはヤヴィン4から出撃したライカン将軍とマクォーリー将軍の部隊が攻撃を仕掛けた。

 

惑星ベルドロンはカラーニ将軍の隊が担当し、リストロング司令官はラクサス攻略部隊の副司令官として、3年前に失われた背を向けたラクサスへ戻った。

 

最初にデゼヴロが奇襲を受けた時から僅か1時間以内の出来事である。

 

たった1時間で旧連合領の至る所の惑星で連合軍とレジスタンス軍が出現し、攻撃を仕掛けたのだ。

 

まさに電撃戦、ホズニアン・プライムとシャンドリラの再現であった。

 

しかも合同軍は数的優位を活かしてホズニアン、シャンドリラよりも広大な領域の制圧に着手した。

 

彼らはこの1回の攻勢でラクサスを含めた旧連合領の殆どを奪還するつもりでいた。

 

連合=レジスタンス合同軍は今日まで情報部が集めた情報とFCSIAからの提供で得た情報を掛け合わせて確実に強襲を成功させた。

 

元々旧連合領の兵力は大多数が北西部が南方に移転していた為、常駐の守備軍では苦戦は免れなかった。

 

更にDER搭載の特務艦が攻勢開始地域の全域で通信妨害をかけた為、殆どの惑星は奇襲を受けても外部への増援要請を送れずにいた。

 

駐屯の国防軍は各地で分断され厳しい戦いを強いられた。

 

それは奇襲を受けたラクサスも同じである。

 

まずラクサス防衛艦隊を撃破する為にトゥーク提督率いる第1連合艦隊がジャンプアウトした。

 

サブジュゲーターⅡ級のイオン・パルス砲を含めた一斉砲撃で艦隊に最初の一撃を与え、優勢のまま艦隊戦に突入した。

 

防衛艦隊司令官のルフェッツ中将は必死の抵抗を見せたが、百戦錬磨のエリート指揮官であるトゥーク提督には押し負けていた。

 

しかもこの艦隊はあくまで軌道上の防衛艦隊を抑える為のものだ。

 

砲撃開始から10分後、メイディン将軍率いる第2艦隊がハイパースペースからジャンプアウトした。

 

メイディン艦隊は防衛艦隊の妨害を一切受けず、地上への上陸戦を開始した。

 

地上に設置中だったSPHAの移動砲台群は軌道爆撃によって破壊され、固定砲台型のターボレーザー砲も次々と破壊された。

 

ラクサスの地上には惑星制圧の為にバトル・ドロイド3個軍、連合地上軍1個軍、レジスタンス地上軍1個軍という大規模な野戦軍が展開された。

 

メイディン艦隊は一部の艦隊戦力をトゥーク艦隊に援護として回し、残り全てを地上への支援に向けた。

 

無論防衛艦隊は上陸する敵を阻止しようと意地でも阻止部隊を展開しようとした。

 

そうした焦りによって乱れた艦隊行動の隙にトゥーク提督は強烈な一撃を加えた。

 

再チャージを終えたサブジュゲーターⅡ級”サブジュゲーター”からイオン・パルス砲が放たれた。

 

イオン・パルス砲の最大出力射はインペリアル級すら一撃で無力化出来る。

 

阻止に出ようと移動を開始したインペリアル級一隻とアークワイテンズ級二隻、ヴィクトリー級三隻が直撃を喰らって無力化された。

 

そこへ次々とターボレーザー砲が叩き込まれ、完全に戦闘能力を失ったところに艦艇を奪取する為のドロイド・コマンドー部隊を乗せたポッドが放たれた。

 

防衛艦隊は一気にインペリアル級の機動部隊を失い、劣勢に立たされた。

 

その間に上陸部隊は最後の部隊を展開し終えていた。

 

「提督、最後の地上部隊が展開し終わったとメイディン艦隊から報告が!」

 

「そうか、では残りの艦隊も沈めてしまうとしよう」

 

報告を受けてトゥーク提督は戦術を変えた。

 

今までは防衛艦隊を抑え込みつつ攻めに回っていたが、もうそうする必要は無くなった。

 

トゥーク提督は艦隊を殲滅する方向に回った。

 

「各艦、敵中央へ火力を集中し包囲を狭めろ。メイディン艦隊の増援は後方へ回り込んで左翼の艦隊を分断せよ。以上の指示を全艦隊へ」

 

「はい!」

 

トゥーク提督の指揮は的確であった。

 

連合艦隊が包囲を縮めている間にメイディン艦隊の一部が連合艦隊から見て左翼の敵艦隊に背後から強襲をかけた。

 

事前に襲撃を察知していたのか、防衛艦隊の予備隊がこれを阻止したが敵に圧迫をかけることは出来た。

 

連合艦隊は時間を掛けつつも確実に防衛艦隊を押し潰していった。

 

無論、これでは時間が掛かり過ぎるという意見もあった。

 

特に参謀長のメル・スーシェン少将はより大胆な攻撃を敢行するべきだと主張した。

 

彼はトゥーク提督と同じニモーディアンであり、彼の友人達は皆3年前の戦いで戦死するか第三帝国に捕虜に取られてしまった。

 

友人達は幼虫の頃から互いに食料を分け合って生き抜いてきた親友である。

 

「閣下!左翼の386機動部隊に突撃を命じましょう。メイディン艦隊の増援と合わせて一気に左翼を分断出来るはずです!」

 

提督はこの状況で機動部隊を突撃させても突破は難しいことを理解していた。

 

敵艦隊はインペリアル級を喪失したとはいえまだ戦力は十分残っている。

 

予備隊でメイディン艦隊を阻止したように、艦列の縮小か突撃の最先端に火力を集中して突撃を頓挫させるだろう。

 

やるにしても”サブジュゲーター”のチャージが終わってからというのがトゥーク提督の見解であった。

 

提督は指示を出さず周囲の様子を確認した。

 

スーシェン少将の意見に賛同している参謀達は多かった。

 

それに通信士官やセンサー士官、ブリッジの下士官兵達も一部がそういった雰囲気だった。

 

無論反対意見を持っている者も少なからずいた。

 

副官のパーロ中佐や”コンフェデレーション”艦長のカン=ツェー・ベルミン大佐は表情から見て参謀長の意見には反対であった。

 

これでどう宥めるかはある程度決まった。

 

「参謀長、気持ちは分かるがせめて”サブジュゲーター”のイオン・パルスがチャージし終えるまで待て。今のままでは敵艦隊の突破は難しい」

 

「しかし早期に敵艦隊を撃滅して地上の支援に回ればその分だけ素早くラクサスを我々の元に!」

 

「落ち着けメル・スーシェン。不確定な突撃で少なくない将兵を死地にやることは出来ん。タイミングを待て、我々には兵力も時間も友好国も全て揃っている。連中への仕返しは確実にやらねばならん。もう暫く気持ちを抑えろ」

 

トゥーク提督は穏やかな声音で部下達の生き急ぐ気持ちを宥めた。

 

少将は冷静になり、「申し訳ありません」と謝罪した。

 

「何、そう長くはないさ。23年、我々は耐え抜いたのだ。それに比べればもう間も無くだよ」

 

トゥーク提督は笑みを深め、慎重に確実な一歩を踏み出した。

 

 

 

 

-チス・アセンダンシー領 未知領域 シーラ星系 首都惑星シーラ 首都クサプラー 参謀本部-

「納得行きません、前回の演習で結果は出たはずです。国境沿いに展開した新しい戦力を合わせてもパヴロフ将軍の案で防衛が成功するとは思えません」

 

プライド将軍は参謀総長の執務室でシャポシニコフ元帥に向かって冷静に、チス・アセンダンシーの首脳部が決定した防衛計画に反対した。

 

シャポシニコフ元帥は途中まで黙って彼の話を深く聞いていたが、途中で我慢していた咳が止まらなくなり、プライド将軍も心配する表情になった。

 

元々シャポシニコフ元帥の体調が最近優れないという噂は聞いていたし、前回の演習で会った時もかなり具合が悪そうだった。

 

「……閣下が無理をして、我々の意見を上層部に伝えて下さっているのは百も承知です。しかし…!」

 

「分かってるとも、私も君の意見が正しいと思っている。君はチスにも帝国にも他に例を見ない類稀な存在だ。だから、君の意見は君が直接言って実行させなさい」

 

シャポシニコフ元帥は穏やかな声でプライド将軍にそう伝えた。

 

将軍ほどの人間でもこの発言には首を傾げた。

 

イマイチ理解していないことを悟ったのかシャポシニコフ元帥は微笑を浮かべ、彼に新しい人事を伝えた。

 

「今日、君がシーラに呼び出されたのは他でもない。私は近々参謀総長の任を解かれる、体調もそうだが私は十分働いた」

 

「しかし閣下ほど優れた参謀総長はおりますまい。私がキャルヒーコルで勝利を手にしたのも、閣下がチス軍と帝国軍の統合を見事に成し遂げたからです」

 

異なる軍隊を1つの軍隊として運用するのは極めて困難なことだ。

 

指揮系統の違い、軍事ドクトリンの違い、軍隊内における伝統の違い、アイデンティティの違い、階級制度の違い、編成の違い、アセットの違いなど様々な違いが多い。

 

それを時には共通化させて、時には折り合いをつけて戦えるようにする。

 

これは困難なことであり、新共和国も結局は成し遂げられなかったことだ。

 

それをシャポシニコフ元帥は持ち前の頭脳と穏やかな人柄によって亡命より6年、正確に言えばもっと長い期間の間で成し遂げてきた。

 

今や帝国軍とチス・アセンダンシー軍は同じ指揮系統の下で戦える、仮に指揮官がチス人であろうと人間であろうと文句を言う将兵は今や大っぴらには存在しない。

 

無論まだまだ問題点は数多くあれど、礎を作ったと言う点でシャポシニコフ元帥は十分な仕事を成したと言えるだろう。

 

プライド将軍のような強烈な性格を持つ人間でさえシャポシニコフ元帥のことは素直に高く評価していた。

 

「だが人と同じように軍も変化する。いずれ交代する時が来た、それが今というだけだ」

 

シャポシニコフ元帥は肩の荷が降りたという雰囲気で語った。

 

そして彼は眼前にいる新しい星に指名した。

 

「そしてその後任は君だ、プライド将軍。新しいチス=帝国軍参謀総長には君が使命された」

 

「私ですか?」

 

思わずプライド将軍は聞き直した。

 

元帥は静かに頷いた。

 

「君は上級将軍に昇進し、参謀総長となる。これからは君達若い世代が”来るべき脅威”にも第三帝国にも負けない軍隊を創るんだ」

 

シャポシニコフ元帥は席を立ち、プライド将軍の方に寄った。

 

彼の手をしっかり握り後の事を託した。

 

「閣下は参謀総長を退任した後どうされるおつもりですか」

 

将軍は思わず眼前の元帥に尋ねた。

 

「もう前線に立てる身体ではないが……そうだな、暫くは国防省の次官をやらないかと言われている。それも無理なら高等アカデミーで教鞭でも取るつもりだ」

 

身体は限界に近づいているとはいえ彼の職業軍人魂はまだ衰えていなかった。

 

この忠誠元帥は人生最後の1秒まで軍務に奉仕するつもりでいた。

 

「閣下に及ぶかは分かりませんが、私も閣下の後任に恥じぬ職務を全うします」

 

プライド将軍は敬礼し、参謀総長となる覚悟を決めた。

 

また銀河の歴史が大きく動き出そうとしていた。

 

 

 

ー大セスウェナ連邦領 アウター・リム・テリトリー セスウェナ宙域 エリアドゥ星系 首都惑星エリアドゥ 連邦軍統合本部ビルー

エリアドゥは同じアウター・リムにいてもラクサスの反対側に位置する惑星である。

 

その反対側の戦争に彼らは秘密裏に携わり、勝利の為のお膳立てをした。

 

連合にもレジスタンスにも物資を供給し、戦争に必要な情報を与え続けた。

 

これが第三帝国にバレたら大変なことになる。

 

連邦は明確に第三帝国の支配秩序に中指を立てて、抜けていったのだ。

 

その連邦が第三帝国と明確に敵対しているレジスタンスと連合に戦争遂行の為の支援を行った。

 

これだけで第三帝国は宣戦布告に足る理由を手に入れた。

 

尤も気づいていればの話であるが。

 

現在大セスウェナ連邦では大規模なスパイ狩りが実行されており、可能な限り情報を遮断しようとしていた。

 

こうしたスパイ狩りはFCSIAの担当であり、大セスウェナ連邦の正規軍たる連邦軍はそこまで深く関与していなかった。

 

特に彼ら対防局は防衛計画の作戦立案が仕事であった為、こうした話とは無縁の存在であった。

 

「おっホルト提督ですよ」

 

対防局のオフィスでホロネットを見ながら昼食を取っていたベネリス大尉はそう呟いた。

 

彼は統合本部ビル内の売店で売っているバンサ肉のバーガーを食べていた。

 

彼の周りには先輩や同期の大尉や少佐が同じようにテレビを見ていた。

 

「武器貸与法の審議だからな。アドバイザーとして必要だろうよ」

 

ホロネットを見る将校達の間に割って入って昼食のロント・ラップが入っていた袋を丸めながらペレール上級大佐はそう呟いた。

 

袋をごみ箱に捨て、上級大佐は一緒に買ったコーヒーに手を付けた。

 

今対防局は昼休みの最中であり、多くの将校達が昼食を取るなりタバコを吸いに行くなりして休みを取っていた。

 

基本的に統合ビルの将兵達や職員はビル内の売店か食堂で食事を摂ることになっていた。

 

食堂はビュッフェ形式で各々が好きに取捨選択するスタイルで、味はそれなりで人気はあった。

 

それでも忙しい部局の将校達は食堂に向かう暇すらない為、売店で昼食を買うのが流行りだった。

 

基本的にはパンやサンドイッチ、バーガーが好まれていたが、中には簡単に作れるヌードルで食事を摂るケースもあった。

 

「っすね、でもこの調子だととんとん拍子で承認されそうです」

 

対防局のラウス少佐は楽観的にそう発言した。

 

彼らが見ているのは連邦議会の上院で行われている武貸与与法の審議の様子である。

 

法案の中身は大セスウェナ連邦の同盟国に対し、武器や軍需物資、必要によっては復興資材を貸し与える法案である。

 

こうした法案は同盟国を強化するだけでなく、その国との繋がりをより強固なものとし、国際政治の場である程度の地位を獲得出来る為重要であった。

 

「まあ何より、国境近くに来た第三帝国軍の事を知れば誰だってこれくらい認めるだろうよ」

 

ペレール上級大佐の発言を遠くで聞いていたアイゼンハール少将は顔を顰め俯いた。

 

何せ国境近くにいる第三帝国軍をどうにかするのが彼らの仕事であり、それが中々に厄介であった。

 

表情を暗くしているアイゼンハール少将を見たバスト提督は彼に声を掛けた。

 

「また第三帝国軍の部隊が新たに配備されたらしい」

 

「ええ、専門の1個鉄道旅団とそれの輸送艦らしいですね」

 

鉄道旅団は惑星内に軍用の鉄道を敷いて後方の兵站線を強化する任務が与えられた。

 

つまり連中は連邦領を本格的に占領するつもりであった。

 

「君達が作ったシミュレーション・プランを見た。まず連中はここ(エリアドゥ)に来ると考えてあったな」

 

少将は頷いた。

 

アイゼンハール少将はコーヒーを一口飲んでから話した。

 

「どうしてもエリアドゥと第三帝国の国交沿いは近いですから、首都で一戦交えるのは避けられないでしょうね。特に第三帝国はコルサント、ホズニアンで成功体験を得てますから、3年前と同じ戦法で来るでしょう」

 

電撃戦の勝利は第三帝国軍に良くも悪くも大きな影響を与えた。

 

3年前の新共和国に対する絶対的な勝利は彼ら自身すらも考えつかなかった大きすぎる勝利であった。

 

将兵達は良くも悪くも自身が付き、自分達が銀河最強の国軍であることを自覚した。

 

その自覚通りに大セスウェナ連邦と事を構える時も同じことをするだろうとアイゼンハール少将は踏んでいた。

 

「問題はセスウェナとエリアドゥの防衛戦力でエリアドゥを守り切れるかということです。勿論全滅する覚悟で戦えば盟主閣下と市民の避難は出来るでしょうが」

 

「そんな弱気なことあのプランには書いてなかったぞ?」

 

バスト提督は冗談交じりにそう呟いた。

 

見抜かれていたかとアイゼンハール少将は苦笑を浮かべ諦めて全てを話した。

 

「ええ、これはあくまで受け身の作戦です。やりようによってですが我々は連中の攻勢主力を一網打尽に出来るかもしれない」

 

「どうするつもりだ?スカリフでやられたみたく、こちらからスターファイター隊で奇襲でも掛けるのか?」

 

バスト提督の問いにアイゼンハール少将は首を横に振った。

 

こちらから打って出ても主力の撃破は確実性がないし、何より戦争を遂行する際に大義名分が失われる。

 

だからアイゼンハール少将はある作戦を秘かに練っていた。

 

「エリアドゥで戦うことは防げないでしょう。ですのでむしろここで敵を”()()()()()”」

 

アイゼンハール少将の頭の中にはどうすれば帝国艦隊が到着して1時間、2時間以内に可能な連邦領域から限りの艦隊をエリアドゥに展開するかのシミュレーションがあった。

 

彼はエリアドゥを第三帝国にとっての墓場にするつもりでいた。

 

遠く離れた大セスウェナからも光り輝く将星が世に解き放たれようとしていた。

 

 

 

 

-惑星ラクサス 首都ラクサロン 第三帝国総督府-

戦闘が始まり、軌道上を連合=レジスタンス合同軍が抑えるとついにジェルマンとジョーレン達も動き出した。

 

ハイドレーヒ大将とモフグロットン暗殺の為に鍛え上げられた暗殺分隊が密かに総督府に突入した。

 

まず見張りのストームトルーパー2名を軽く始末し、ジェルマンが総督府のシステムにアクセスし施設内に侵入する。

 

総督府では敵軍の来襲を受けて混乱していた。

 

国防軍の駐屯軍は部隊を展開して防衛に当たらせたが一部で抵抗勢力による破壊活動が行われており、被害は甚大であった。

 

しかもタイミングが悪かったのは丁度ラクサス駐屯軍司令官のアルフ・リクスヴェルト将軍が不在だったということだ。

 

リクスヴェルト将軍はフェルーシアの駐屯軍の視察に向かっており現地には副司令官兼タイオン・ヘゲモニー第8軍司令官のオルトセル中将しかいなかった。

 

中将は軍司令官だが非常に官僚軍人的な人間であり、まずフェルーシアにいるリクスヴェルト将軍に連絡を取った。

 

当然通信は妨害されており繋がらず、仕方なく彼が司令官代理として正式な出動命令を通達した。

 

この僅かな司令部の混乱が発生している裏で連合=レジスタンス合同軍は地上軍を展開した。

 

ラクサスにはタイオン・ヘゲモニー第8軍の他に第37軍、そして親衛隊第148FF装甲擲弾兵団が駐留していた。

 

この星は仮にも元連合の首都である、第三帝国とて簡単に明け渡す訳には行かなかった。

 

第148FF装甲擲弾兵団は先んじてタムウィズ・ベイ方面に展開し、迫り来るドロイド軍の侵入を防いだ。

 

一方国防軍はタイオン・ヘゲモニー第8軍を首都ラクサロンの防衛に回し、残った第37軍を合同軍が展開した方面へ向かわせた。

 

各所で地上軍による野戦が始まっており、上空では制空権を巡って空軍のTIEファイター部隊とXウィングやAウィング、ドロイド・スターファイターが空戦を繰り広げていた。

 

一応タイオン・ヘゲモニー第8軍がラクサロン市民の避難誘導を行なっていたが、一部では解放の時が来たと市民が暴徒化して手が付けられない状態になっていた。

 

既に第6宇宙港は市民の手によって占拠され、武装した市民が外部から来る国防軍部隊と戦闘を繰り広げていた。

 

「総督府周りの防衛にもっと兵力は回せないのか…!?」

 

「あの副司令官、こっちには絶対に兵力回してくんないよ…!」

 

「とにかくモフグロットンだけでも安全地帯に避難させねば…!」

 

総督府の職員達は通路を早歩きしながらそう吐き捨てた。

 

ジェルマン達は1班を率いて作戦開始地点まで侵入していた。

 

2班は予備プランの設置に向かわせており、この間にジェルマンはシーカー・ドロイドやドロイド脳を改造したマウス・ドロイドを走らせて情報収集を行なっていた。

 

「総督の執務室周りだけ電子妨害が展開されてる。流石はISBの後継」

 

「ってなるとISBのタクティカル連中がいるな。なんとか見れるか?」

 

ジョーレンが尋ねるとジェルマンは辛うじて画像が拾えるマウス・ドロイドのカメラをタブレットに映した。

 

「これはFFISOの特殊戦術部隊です」

 

タブレットに映る白いアーマーの兵士を見てフェレック曹長はそう呟いた。

 

ジェルマン達はこのタイプの特殊部隊とまだ戦ったことがなかった。

 

「練度はどうだ」

 

「ISBのタクティカルと遜色ありません」

 

「なら勝てるな」

 

ジョーレンはブラスターを構えた。

 

すると2班から連絡が入った。

 

『予備プランの設置、完了しました』

 

「了解した、今から作戦を伝える。使用プランはA2C、予備プランを作動させてから我々で総督府を強襲する。2班は迂回して背後を突け、挟み撃ちにするぞ」

 

『了解』

 

通信を切り、ジョーレン達は5人の分隊員にアイコンタクトを送った。

 

全員がブラスター・ライフルをしっかり握り締め、完全な戦闘態勢に移った。

 

ジョーレンは分隊に移動を命じた。

 

その頃、軌道上で地上軍のメイディン将軍はあることを地上にいるジェルマンとジョーレン達に伝えようとしていた。

 

「キル・チームとの連絡はまだ付かないのか」

 

艦隊旗艦、ネビュラ級”レパルス”のブリッジで副官のリンジー中佐に尋ねた。

 

「キル・チームは作戦行動に入ったと考えられます。探知を回避する為こちらからの通信であっても一切遮断しているかと」

 

中佐は冷静に分析し、司令官に報告した。

 

メイディン将軍は困ったような表情でラクサスを見つめていた。

 

将軍はジェルマン達にハイパースペース・ジャンプ前に伝達されたある情報を地上のキル・チームに伝えたかったのだ。

 

FCSIAが掴んだ、暗殺作戦における重大な情報。

 

それは暗殺対象であるハイドレーヒ大将がラクサロンに不在ということだ。

 

どういう訳か彼は突如ラクサス行きを取り止め、コルサントに残ったとFCSIAは情報を掴んだ。

 

「せめてこの情報だけでも彼らに伝えたかったのだが……」

 

「少なくともラクサス総督はまだあちらにいます。作戦は続行してもいいでしょう」

 

リンジー中佐の意見は尤もだったがメイディン将軍にはまだ不安要素があった。

 

それでも一度走り出した列車を止めることは出来ない。

 

作戦の全ては前線の彼らに託された。

 

 

 

 

地上戦開始から3時間後、総督府の施設で突如爆発が起きた。

 

警備のストームトルーパー2名、総督府職員3名が死亡し、ストームトルーパー3名、職員5名が負傷した。

 

爆発地点に消火班とストームトルーパー分隊が突入した。

 

消火活動中に他の箇所でも爆発が起こり、総督府の警備はそちらに集中した。

 

反乱同盟時代からの古典的な戦法だが、それ故に隙が出来た。

 

ジョーレンに率いられ特殊部隊が前進する。

 

隠密かつ拙速に、可能な限り戦闘を避けつつも警備のストームトルーパーは始末していった。

 

ある程度まで前進したところでジョーレンは部隊をストップさせ、別行動中の2班に連絡を取った。

 

「2班、調子はどうだ」

 

『もう間も無く位置に付きます』

 

「ではこちらは先に始める。執務室前で会おう」

 

『了解』

 

通信を切ってジョーレンは1班に合図を出した。

 

2名の隊員がサーマル・デトネーターを手に取って前に出る。

 

その間にジェルマンとジョーレンがブラスター・ライフルを構えつつ身を少し前に出した。

 

前方にはSTFトルーパーとストームトルーパーが警備の為に待機していた。

 

奥の方では分隊長らしき人物が執務室の誰かと連絡を取り合っていた。

 

「それで、一応まだ移動しないんですね?了解……はい、待機します」

 

ぶっきらぼうな口調で通信を切り、他の隊員に指示を出した。

 

「全員、次の命令が出るまでここを死守だ。ストームトルーパー隊も我々の指示に従ってもらう」

 

各員は頷き、それぞれブラスター・ライフルを構えて戦闘配置に着いた。

 

分隊長の階級章は上級軍曹のものであり、この場にいる誰よりも階級は上だった。

 

本来ストームトルーパー相手なら1人ずつ始末して暗殺することも出来ただろうがSTFトルーパー相手ではそうもいかない。

 

既に執務室からの脱出路は塞いである為多少手荒な真似をしてもなんとかなる。

 

ジョーレンは隊員2名の肩を叩いて、サーマル・デトネーターを投擲するよう指示した。

 

2人は起爆スイッチを押し、優しい力なれど確実に相手に届く分だけの力でサーマル・デトネーターを投擲した。

 

コロコロと音を立てながら爆弾は転がっていく。

 

それに気づいたSRFトルーパー分隊長は全員に「身を隠せ!」と叫んだ。

 

直後サーマル・デトネーターの爆風が警備のトルーパー達を襲い、そこへジョーレン達の一斉射撃が叩き込まれた。

 

既に2名のストームトルーパーが死亡し、辺りは一様に戦場となった。

 

「撃ち返せ!絶対に執務室に入れるな!」

 

軍曹の命令と共にSTFトルーパー達が反撃のブラスター弾を撃ち込んだ。

 

STFトルーパー達が用いているのはE-22や改造されたE-11ブラスター・ライフルであり、十分な殺傷能力を持っていた。

 

それに一般の将兵より正確な狙いでジェルマン達も身の危険を感じるケースが多々あった。

 

「まず数を減らせ!」

 

そういってジョーレンは優先的にストームトルーパーから狙いを定めた。

 

確実に数を減らし、弾幕射撃の圧迫を減らすつもりだった。

 

「フォーレン伍長!」

 

1人のSTFトルーパーが分隊長の命令でポーチからソニック・インプローダーをもぎ取って投擲した。

 

レジスタンス軍特殊部隊もフェレック曹長が「グレネード来るぞ!」と叫んだ。

 

しかしここでジョーレンが前に出た。

 

全長15センチそこらしかなさそうなグレネードをジョーレンは見事に撃ち抜いた。

 

「伏せろ!」

 

ジョーレンや近くにいたジェルマンはその場で伏せた。

 

上空で爆発したソニック・インプローダーが縁を描いて周囲に爆風を撒き散らした。

 

幸いにもこれで負傷したり、視覚や聴覚に異常が出た隊員はいなかった。

 

「行くぞ!」

 

ジョーレンは周囲の爆発が消えるのを確認すると戦闘を続行した。

 

まず手前にいるSTFトルーパーのE-22を破壊する。

 

そのトルーパーは即座にホルスターからSE-14Cを引き抜いて応戦し、その間に仲間から予備のブラスター・ライフルを受け取った。

 

「増援が来るまで耐え凌げ!」

 

分隊長は守勢を維持した。

 

ここは敵地のど真ん中、王手はかけたとはいえ排除は簡単だ。

 

その事はジェルマンもジョーレンも承知だった。

 

「ジェルマン、シーカー飛ばせるか」

 

「予備なら1体持っている!」

 

モン・カラで補充したシーカー・ドロイドを起動し、敵に悟られないよう移動した。

 

ドロイドは最前線にいるSTFトルーパーの近くまで接近し電気ショック・プロッドを押し当てた。

 

「うわああああああ!!」

 

痺れて一瞬動けなくなったところにジョーレンはブラスター弾を撃ち込んだ。

 

東部に直撃して斃れた瞬間に彼は弾幕が薄くなったところへ一気に飛び込む。

 

それをジェルマンや他の分隊員が援護射撃で支援する。

 

接近を阻止しようと即座に反対側の柱にいたSTFトルーパーはブラスター・ライフルを向けて発砲しようとした。

 

しかし一歩遅かった。

 

ホルスターから引き抜いたA180ブラスター・ピストルを放ち、早撃ち勝負に競り勝った。

 

前衛のトルーパーが片付いたことにより分隊はもう少し前に前進出来た。

 

「取り敢えず2人やりましたがどうしますか?」

 

「格闘戦は……いや制圧という点では相手の方が上手かもしれん。ならば」

 

ジョーレンはA300にグレネード・ランチャーのアタッチメントを取り付けた。

 

「2班、状況を」

 

『間も無く攻撃開始します』

 

「後1分待て、それとなるべく敵から離れろ」

 

『はい…!』

 

ジョーレンは全員にグレネード・ランチャーのアタッチメントを付け、先ほどの2名の隊員にはサーマル・デトネーターを手にするよう命じた。

 

全員の準備が整った為、ジョーレンは命令を出した。

 

「2班の攻撃が始まったら一勢にグレネードを投擲、可能な限りの火力を投射して連中を制圧する」

 

「よし聞いたな、全員配置につけ」

 

隊員達が散開し、戦闘配置についた。

 

STFトルーパーによる銃撃はまだ続いていた。

 

分隊長は近くにいたSTFトルーパーにあることを尋ねた。

 

「警備隊の増援はまだ来んのか!」

 

「急行していますが何分施設の反対側に大多数の部隊が展開しています!到着は早くとも10分後かと!」

 

「遅すぎる!」

 

そう不平を漏らした瞬間背後から飛んできたブラスター弾がそのSTFトルーパーを貫いた。

 

分隊長は急いで遮蔽物に身を隠し、反撃を撃ち込んだ。

 

「後方から敵の増援!数は5!」

 

急いで味方に急襲を知らせ、背後にも兵員を配置する。

 

挟み撃ちの形となり、STFトルーパーも3名戦死したがそれでもまだストームトルーパーを合わせれば数的には優勢である。

 

最低後10分は耐え抜かなければと考えていた矢先に正面で何かが射出される音が聞こえた。

 

しかもそれはサーマル・デトネーターの嫌な起爆カウントダウンの音と共にだ。

 

「退避!」

 

分隊長は叫んだが数秒ほど遅過ぎた。

 

爆発によって前の方にいたSTFトルーパー3名とストームトルーパー4名が巻き込まれた。

 

更に爆煙の奥からブラスターの一斉射撃が飛んでくる。

 

生き残っていた数人のストームトルーパーも全員撃ち倒され、残りは4人のSTFトルーパーだけとなった。

 

Move up(前進)!」

 

ジョーレンの指示によって1班の隊員達が前進する。

 

2班は誤射しないように精密射撃を展開しつつ、1班と合流した。

 

「後退だ!後退!」

 

分隊長が殿を務め、その隙に3人が執務室ドアまで後退した。

 

「このまま制圧しろ!」

 

「させるか!」

 

ジョーレンが命令を出していると分隊長がジョーレンに飛びかかった。

 

彼は奥の方まで吹っ飛ばされ、分隊長が取り出したエレクトロバトンを寸前で受け止めた。

 

バトンから発せられるスパークが周囲に飛び散っている。

 

「ジョーレン!」

 

「先に行け!部隊指揮は曹長が!」

 

「了解!」

 

ジョーレンの命令を聞いてフェレック曹長が分隊を率いて奥の方へ突入した。

 

分隊が執務室の方へ向かうのを見届けるとジョーレンは右手でバトンを抑えつつ、左手でA300を手に取った。

 

A300の銃床で思いっきり相手の頭を殴り付ける。

 

分隊長は衝撃で数百センチほど吹っ飛ばされ、急いで態勢を立て直した。

 

ジョーレンは立ち上がって太ももに巻き付けていた銃剣用のバイブロ=ナイフを引き抜いた。

 

この距離ではA300の利点は活かせない。

 

ジョーレンはA180ブラスター・ピストルに持ち換え、先に牽制射撃を放った。

 

分隊長は発砲する前に回避し距離を詰めてエレクトロバトンを振り回した。

 

バトンを避けつつジョーレンもナイフを振るう。

 

相手はSTFトルーパーのベテラン、格闘戦は並みのレジスタンス軍特殊部隊員より強いかもしれない。

 

可能であれば近接戦には持ち込みたくなかったが、こうなっては致し方ない。

 

バトンを避け、相手の掴んで抑える。

 

その隙に相手の左腕にバイブロ=ナイフを突き刺し、左足をブラスター・ピストルで撃った。

 

痛みに苦しみ表情を歪める分隊長だったが力を振り絞って危機を脱し、左手でもう1本のエレクトロバトンを振るった。

 

不意打ちの影響で分隊長に突き刺していたバイブロ=ナイフを引き抜いた瞬間にナイフを叩き落とされてしまった。

 

手持ちの武器は最早A180だけとなった。

 

A180を右手に持ち換え、相手に牽制射撃を叩き込む。

 

1発が左肩のアーマーに当たって弾け飛び、その隙にジョーレンが飛び掛かった。

 

姿勢が崩れ、先程とは真逆の体勢となった。

 

ジョーレンは分隊長がエレクトロバトンを振り回す前に手を打った。

 

隠し持っていたもう1本のバイブロ=ナイフを腹部のアーマーがない部分に3回刺した。

 

痛みで悶え、エレクトロバトンを離しそうになった瞬間に立ち上がって分隊長の顔面に蹴りを入れた。

 

分隊長は口を切ったのか血を吐き、刺傷箇所を押さえていた。

 

そこにジョーレンがやってきて彼の頭を掴んだ。

 

「相手が悪かったな」

 

そう言ってジョーレンは分隊長の喉を掻っ切り、A300を手にして彼の頭を撃ち抜いた。

 

相手はSTFトルーパー、首を切っただけでは抵抗されるかもしれん、そういった判断が重要になってくるのだ。

 

その間にジェルマン達は執務室前のSTFトルーパーの生き残りを殲滅し、遂に突入出来る状態にあった。

 

奥の方からA300を手に持ったジョーレンが走ってやってくる。

 

「クリア」

 

「では作戦を始めよう」

 

工兵技術を持つ隊員が爆弾をセットする。

 

いよいよ暗殺作戦の本題が始まろうとしていた。

 

 

 

 

執務室では銃声が響く度に対立意見による論争がヒートアップしていた。

 

ベレーク中佐はSTFトルーパー部隊と共に脱出すべきだと進言したが、ハインツマン事務次官らは総督府で爆発が起こっている以上まだここにとどまるべきだと主張した。

 

モフグロットンはどちらかといえばベレーク中佐寄りだったが逃げている途中で爆発に巻き込まれて死にたくはない為、どっちつかずのまま執務室に残っていた。

 

銃声はどんどん近くに迫っており、中佐やFFISOの将校や随行員は諦めてブラスター・ピストルを手に持ち、パワーセルや冷却ガスのチェックを始めた。

 

「総督、総督も可能な限り武装を。ブラスターは撃てますよね?」

 

ベレーク中佐はモフグロットンに尋ねた。

 

彼は頷き、仕方なく執務室のデスクに閉まっていたRK-3を取り出した。

 

ベレーク中佐やバンテル少佐も同じRK-3を持っていた。

 

「応援部隊は後どれくらいでくるんだ」

 

ハインツマン事務次官が報告に来たまま閉じ込められた総督府警備隊の大尉に尋ねた。

 

大尉は標準的な帝国地上軍の制服に制帽を被っており、彼だけはSE-14Cを所有していた。

 

「後3分ほどで到着するかと……」

 

「遅い!クソッ!爆発に兵力を割き過ぎなければ……」

 

総督府内の連続爆発で総督府警備隊のトルーパーは多くが現場に急行し、執務室への部隊展開が遅れていた。

 

だが部隊を回すように指示を出したのはモフグロットンやハインツマン事務次官だ。

 

数々の判断ミスで今彼らは動けなくなっていた。

 

「外の様子はどうなっているんだ!?」

 

モフグロットンが大尉に尋ねた。

 

「最後の報告だとドロイド軍の波状攻撃を受けて第368歩兵師団が突破されたと……」

 

「もうラクサロンの目と鼻の先ではないか!!」

 

ハインツマン事務次官は声を荒げた。

 

ラクサス守備軍は辛うじて戦線を殆どの戦線を維持していたが、ドロイド軍の連続攻勢を受けて一部の師団が突破された。

 

更に厄介なのがそこに回り込んできたレジスタンス地上軍の精鋭機甲部隊が戦線を拡張した為、突破口が広がってしまった。

 

急いで予備隊を回しているが連合=レジスタンス合同軍はラクサロンに近づきつつあった。

 

「中佐、護衛分隊との連絡が途絶しました」

 

ベレーク中佐が連れてきたカルスター随行員が中佐に報告した。

 

中佐はバンテル少佐と顔を見合わせSTFトルーパー隊の全滅を悟った。

 

それと同時にもう間も無くここに敵が入ってくることも悟った。

 

「少佐、悪いが中央に紹介は出来なさそうだ。随行員は全員警戒に当たれ!皆さんはドアから下がってください、最悪爆破されます」

 

ベレーク中佐は自分の死も悟った。

 

文民達を下がらせ随行員達を前に出す。

 

自身もブラスター・ピストルを構え、最悪に備えた。

 

モフグロットンはデスクの裏に隠れ、ハインツマン事務次官は場慣れしていないのかただ後ろに下がってあたふたしていた。

 

「一体どうしたと言うんだ中佐!」

 

ハインツマン事務次官が尋ねた瞬間、設置された爆弾が執務室のドアを吹き飛ばした。

 

周囲にドアの破片が飛び散り、一斉にブラスター弾が室内に叩き込まれる。

 

伏せるのが遅れたハインツマン事務次官が真っ先に撃たれ、その後に周りの職員や随行員が負傷した。

 

無論随行員やベレーク中佐達も反撃する。

 

だがRK-3やSE-14Cの連射速度ではA280-CFEやA300には敵わず、火力負けした。

 

それにただの随行員や保安将校では練度で特殊部隊員に遠く及ばない。

 

STFトルーパーで勝てない相手に彼らが勝てるはずもなかった。

 

正確な射撃で前衛の随行員を全滅させ、執務室内に突入した。

 

「クソッ!」

 

侵入を防ごうとしたがベレーク中佐は肩にブラスター弾を1発喰らって倒れ、その間に警備隊の大尉やバンテル少佐は撃ち殺された。

 

銃撃戦に巻き込まれてハインツマン事務次官ら職員は全滅していた。

 

モフグロットンも銃撃戦に参加していたがRK-3がブラスター弾に寄って破壊され、それ以降はデスクの裏で隠れていた。

 

しかし室内を抑えた特殊部隊員によってデスクの奥から引き摺り出された。

 

「モフグロットンを発見しました、しかしハイドレーヒ長官は見当たりません」

 

フェレック曹長はジョーレンにそう報告した。

 

ジェルマンは「どうする」とジョーレンに尋ねたが、彼はその質問には答えずベレーク中佐にブラスターの銃口を向けて尋問を始めた。

 

「ハイドレーヒはどこに行った。居場所を言え」

 

痛みに悶えながらベレーク中佐は吐き捨てた。

 

「教える訳ないだろう……反乱分子がッ…!」

 

刹那、中佐の頭部を赤い弾丸が貫いた。

 

ジョーレンが中佐を殺害したのだ。

 

「やはり保安将校はこの程度じゃ割らんか」

 

ジョーレンも何人かのISB将校や随行員を尋問したが誰も口を割る事はなかった。

 

今度はモフグロットンの方に向かった。

 

「あんまり時間はないぞ」

 

ジェルマンはそう進言した。

 

「分かってるがハイドレーヒを見つけるまでは任務は終われん」

 

そう言って同じようにジョーレンはモフグロットンにA180の銃口を突きつけた。

 

「同じ質問をする、ハイドレーヒはどこだ。喋らなきゃあそこの中佐と同じ運命を辿る」

 

彼は引き金に指をかけたままそう脅した。

 

対尋問訓練を受けているベレーク中佐とは違い、モフグロットンはベテランだがあくまでただの総督だ。

 

脅せば簡単に喋った。

 

「ハイドレーヒ大将はいない…!今日突如予定がキャンセルになって今撃った中佐が代理で来た!本当にここにはいないんだ!」

 

ジョーレンはジェルマンやフェレック曹長と顔を見合わせた。

 

情報将校のジェルマンは彼の表情を見て嘘をついていないことを判断した。

 

フェレック曹長もジェルマンの判断に賛同した。

 

その様子を見たモフグロットンは更にジョーレンに縋りついた。

 

「お前達の狙いはハイドレーヒ大将だろう!?なら私は関係ないはずだ!私は降伏する!命は助けてくれ!」

 

シンプルな命乞いだった。

 

ジョーレンは呆れたような顔で静かにブラスター・ピストルを向けた。

 

「確かにハイドレーヒ大将は我々の最優先目標だが、お前もそうだ」

 

その一言と共にジョーレンは引き金を引いてブラスター弾をモフグロットンの心臓に撃ち込んだ。

 

彼はあり得ないものを見るような表情で絶命し、地面に斃れた。

 

ハイドレーヒ大将はまだだったが少なくともラクサス総督の暗殺問任務は達成出来た。

 

「総員総督府より退避、離脱して司令部に連絡を取るぞ」

 

「了解!」

 

ジョーレンの命令で総督府からの脱出が始まった。

 

まず警戒の2班から離脱し、その後1班が脱出した。

 

こうして”()()()”ハイドレーヒ暗殺作戦は失敗に終わった。

 

 

 

-惑星ラクサス 首都ラクサロン近郊-

ジェルマンとジョーレンが総督府を強襲している間に主力野戦軍は更にラクサロンに近づいていた。

 

国防地上軍第368歩兵師団の防衛線を突破したドロイド軍とレジスタンス地上軍第4機甲師団は次の戦線にぶつかった。

 

第4機甲師団は部隊を再編成し、敵の防衛部隊が飽和するのを待った。

 

第4機甲師団長のマレーア・シャンドソール少将は指揮車両のスピーダーからエレクトロバイノキュラーを用いて、状況を確認した。

 

「師団長、全隊突撃準備完了しました」

 

副官のパルスター大尉が敬礼して報告にやってきた。

 

大尉はモン・カラマリであり、家族は代々宇宙軍人であった。

 

しかしパルスター大尉は父と喧嘩して嫌がらせで地上軍の軍学校に入った。

 

「もう少しドロイド軍に任せろ、ヒューレン司令官から要請が出たら直ちに出撃だ」

 

少将はエレクトロバイノキュラーを下ろして指揮車両から飛び降りた。

 

彼の眼前には量産化に成功したX-1ヴァイパーが待機していた。

 

レジスタンス軍もようやくあのAT-ATと対等に戦える兵器を手に入れた。

 

「しかしこのままドロイド軍が突撃すれば損害は馬鹿になりません」

 

「軍司令官達もそれは覚悟の上だ」

 

シャンドソール少将は大尉の肩を軽く叩き、諭すように言った。

 

「いいか大尉、重みない犠牲こそドロイドの最も恐るべき点だ」

 

少将の発言は正に今前線で起こっている事柄を正確に表していた。

 

国防地上軍が構築した前線にインペリアル・アサルト・タンクによく似た連合軍のAAT-2ホバー・タンクとバトル・ドロイドが突撃し続けている。

 

対戦車火器やブラスター砲、野砲が部隊を次々と破砕していく。

 

「行ケー!行ケー!」

 

「ウワーッ!ヤラレタ!」

 

砲撃や銃撃で次々とドロイドが破壊されていく。

 

勿論バトル・ドロイドもE-5ブラスター・ライフルを発砲し続けているが、殆ど弾幕射撃で命中率は低かった。

 

それでも前線のストームトルーパー達は疲弊していた。

 

彼らはここまで損害を気にしないドロイド軍の突撃を経験したことがなかった。

 

「クソッ!何体突っ込んで来るんだ!」

 

「オーバーヒートした!」

 

あるストームトルーパーはE-11を投げ捨ててSE-14Cで応戦した。

 

Eウェブ・ブラスター砲も冷却中にAAT-2の副砲を喰らって陣地ごと破壊された。

 

武器のオーバーヒートやドロイド軍の物量に押され、最前線の塹壕陣地は崩壊しつつあった。

 

既に各所でバトル・ドロイドに取り付かれ、塹壕を奪われ始めた。

 

「ミンナー!急イデ入レ!」

 

安いドロイド・コマンダーが指揮を取り、塹壕の中にバトル・ドロイドを入れた。

 

一度塹壕に入ったドロイド軍は雪崩のように陣地を制圧していく。

 

崩壊を悟った前線中隊の大尉が撤退命令を出した。

 

その間にも塹壕の上ではホバー・タンクに掴まったバトル・ドロイド達が奥へ突き進んでいく。

 

うち何輌かはリパルサーリフト反応型車両地雷によって破壊されたが、生き残りは関係なく突き進んだ。

 

防衛部隊は明らかに追い詰められていた。

 

ドロイド軍の犠牲をものともしない突撃戦法に武器と兵員が吸われ圧迫されていた。

 

部隊は後退して防衛線を再構築したが、再びドロイド軍の大損害を受けて再び突破されかけていた。

 

「大隊長!敵軍の攻勢が激しすぎます!これ以上はここも持ちません!」

 

前線の大尉が塹壕内の大隊本部にやってきて状況を報告した。

 

大隊長の少佐は他の将校や先任下士官と顔を見合わせた。

 

「……他の大隊の状況はどうだ」

 

「どこも似たような状況です!リヒェール少佐の大隊は本部の近くまで敵が来ていると…!」

 

「大隊長!師団長命令です、各所前線大隊は現地点を放棄し第二線に後退せよと」

 

通信兵が少佐に伝え、少佐は思いっきり机を叩いた。

 

ブリキ野郎相手に陣地を失うのがたまらなく悔しかったのだ。

 

それでも今の大隊にドロイド軍の物量を止める力はなかった。

 

ラクサロン南東方面に展開したタイオン・ヘゲモニー第8軍の部隊は徐々に押し込まれていた。

 

既に1個師団の防御線が崩壊し、最後の予備戦線も突破されつつあった。

 

それでもドロイド軍の損害は大きかった。

 

幾つかの部隊は大損害を喰らってほぼ行動不能になっていた。

 

突破された戦闘地域の大地には破壊されたAAT-2やバトル・ドロイドが焼けこげてそこら中に転がっていた。

 

その様子を上空から見たものがいるとするならばそれはきっと地上の黒いシミに見えるだろう。

 

だが1兵士の目線で見た時それは想像を絶する地獄である。

 

それでもドロイド軍は突撃を辞めなかった。

 

ドロイドは機械である、故にその殆どが破壊された仲間を見てもなんとも思わないし自らがブラスターで撃たれてもなんとも思わなかった。

 

ドロイドも戦車もすぐに再生産出来る。

 

だから強い、これこそが重みのない犠牲だった。

 

無論攻勢には限界がある。

 

軍が保有するバトル・ドロイドやAAT-2が全て撃破されれば当然戦闘は出来なくなる。

 

「司令官、これ以上の物量戦法ではそろそろ限界です。最精鋭の機甲師団を突入させ、レジスタンスの第4機甲師団にも要請を出しましょう」

 

ドロイド軍参謀長のジェンリー少将がそう進言した。

 

軍司令官のヒューレン将軍は小さく頷いて指揮車両に設置されたコムリンクで要請を出した。

 

将軍はリストロング司令官と同じく人間種であり、クローン戦争時代からの将校である。

 

分離主義に人種は関係ないということだ。

 

「イリ准将、直ちに機甲師団を突入させて突破口を開け」

 

すぐに将軍はシャンドソール少将に連絡を取った。

 

「少将、少将の師団を率いて突破口を開いてください。ラクサロンまでの進撃路、お願いします」

 

『お任せください、必ず切り開きます』

 

そう言ってシャンドソール少将の通信は切れた。

 

コムリンクを戻し、ヒューレン将軍は参謀長にあることを尋ねた。

 

「ラクサロン突入部隊は準備出来ているな」

 

「はい!ドロイド・コマンドー1個大隊、ドロイデカ1個大隊、マグナガード1個小隊、特殊作戦ドロイド1個分隊、いつでも突入出来ます」

 

バトル・ドロイドの中でも特に最精鋭をかき集めた戦闘部隊だ。

 

仮に人間の兵隊が市街地に篭ったとしても制圧は容易だ。

 

「2個機甲師団の攻撃が開始したら直ちにメイディン将軍に連絡してラクサロンへの突入準備を」

 

「はい!」

 

ラクサロンまであと一歩であった。

 

レジスタンス地上軍第4機甲師団はすぐに前線部隊と合流し突撃を開始した。

 

X-1ヴァイパーの1個大隊が前線を食い破り、機動力に優れる戦車部隊が戦果を拡張した。

 

一方イリ准将が率いる連合地上軍の機甲師団は最新鋭のスーパー・タンクを装備していた。

 

名はポグル・ザ・レッサー級スーパー・タンク、クローン戦争中に戦死したジオノージアンの名前をつけている。

 

レッサー級スーパー・タンクは標準搭載の簡易型偏向シールドで砲撃を防ぎ、逆に重レーザー砲を撃ち返す。

 

前線に回されたAT-STマークⅢやM2ホバー・タンクが迎撃に向かうが殆ど太刀打ち出来なかった。

 

無論歩兵部隊も同様であり、迎撃不可能なまま突破を許し続けた。

 

『師団長!直ちに装甲部隊の応援を!このままでは敵装甲部隊を止められません!』

 

前線の連隊長から師団長のファルパー准将に応援要請が要望された。

 

しかし師団が有するⅢ号AT-ATやⅣ号AT-ATは別戦線に駆り出されており、展開出来るのは1個中隊もなかった。

 

「敵の装甲部隊を地雷原に引き込め!砲撃で完全に破砕する!」

 

『了解…!』

 

連隊長は不満げな声音で通信を切り、ファルバー准将はすぐに幕僚達を呼んだ。

 

上空ではレジスタンス軍のスターファイター隊が定期的に爆撃を繰り返しており、戦闘地域では定期的に揺れが続いていた。

 

師団が展開する偏向シールド内に侵入し空戦を続けているのだ。

 

それは師団司令部も同じである。

 

塹壕内に設置された師団司令部は定期的に揺れと砂埃に見舞われた。

 

「空軍のTIEボマー隊で機甲部隊の足を止めたい。なんとかならんか」

 

「恐らく無理ですね……上空でのレジスタンス軍の攻撃が激しすぎて爆撃機隊を送り込めないと」

 

「軌道爆撃はどうだ」

 

「艦隊は抑え込まれていてこちらに支援を回せません」

 

結論から言えば手詰まりであった。

 

機甲部隊を止める方法は幾つかある。

 

砲撃を叩き込んでウォーカーや戦車を破壊する方法か、こちらも同等以上の機甲部隊を叩き込んで突破を防ぐ。

 

或いは爆撃機による爆撃か宇宙艦隊による軌道爆撃。

 

こうした方法のうち3つが使えず、頼みの綱は師団が有する砲による迎撃だけであった。

 

「チッ!軍司令官に増援要請をっ!」

 

ある1発のプロトン爆弾が国防地上軍の陣地に落ちた。

 

もしこの爆弾がただの塹壕陣地や或いは防空陣地に落下したならあくまでただの損害でしかなかっただろう。

 

しかしそうはならなかった。

 

プロトン爆弾はファイパー准将や師団幕僚を集めた司令部に落下し、全員を纏めて吹き飛ばした。

 

爆弾を投下したハイエナ級ボマーはすぐにTIEインターセプターによって撃墜されたがもう遅かった。

 

師団長と師団幕僚を失った師団は混乱状態に陥った。

 

師団長と幕僚の喪失は正に頭脳を失ったも同然である。

 

本来なら副師団長が即座に職務を引き継ぐべきなのだが、状況の確認が上手くいかず引継ぎが遅れた。

 

その間に一切の命令が下らず、隷下の連隊は混乱し統率を失った。

 

各連隊は連携が取れず、連隊ごとバラバラに戦闘を続けた。

 

無論これでは2個機甲師団の阻止は不可能である。

 

防衛線は崩壊し、ついにラクサロンへの長い道のりが開けたのだ。

 

 

 

-惑星ラクサス 軌道上 艦隊戦領域-

「イオン・パルス砲、充填率90%!後5分後に次弾発射出来ます!」

 

「よし!”カラニア”と”フィヤロ”は現状のまま援護を頼む。全艦、後5分持たせろ!」

 

今回サブジュゲーターⅡ級”サブジュゲーター”に乗り込んで分艦隊の指揮を取るラン=リー・クーシェン少将はひたすらにイオン・パルス砲のチャージを待った。

 

既に何発かのイオン・パルス砲を喰らって帝国宇宙軍のラクサス防衛艦隊は右翼艦隊が崩壊していた。

 

後方から回り込んだメイディン艦隊の増援は突破に成功し右翼艦隊の1/3を包囲殲滅した。

 

そのまま連合艦隊左翼は敵右翼に圧力をかけて包囲網を縮めた。

 

現在も抵抗を続けるインペリアル級やヴィクトリー級にプロヴィデンスⅡ級やレキューザントⅡ級が砲撃を叩き込んだ。

 

主力艦の集中砲撃を喰らって偏向シールドは破れ、艦の船体に直接砲撃が叩き込まれた。

 

スター・デストロイヤーの船体に大きな爆発が起こる度に艦内にいる乗組員将兵達が重傷を負い、或いは即死し宇宙へ投げ出された。

 

「イオン・パルス砲、充填率95%まで到達。後2分で発射出来ます!」

 

「司令官!敵のインペリアル級が一隻!全速力で本艦に突っ込んできます!」

 

センサー士官のニモーディアンの中尉が冷や汗をかきながら報告した。

 

ブリッジに緊張が走る。

 

インペリアル級がイオン・パルス砲の発射を阻止する為に特攻を仕掛けてきたのだ。

 

主砲の八連ターボレーザー砲を全て”サブジュゲーター”に向けて放ち、全速力で突撃する。

 

「後退し距離を稼ぎますか?」

 

艦長のテヤシン大佐はクーシェン少将に尋ねた。

 

しかし少将は豪胆な性格で現状維持を命じた。

 

「いや、このまま敵をイオン・パルスで潰す。各艦は特攻艦に砲撃を集中しろ」

 

「了解!」

 

サブジュゲーター”はその場に止まり敵を迎え討った。

 

両艦のプロヴィデンスⅡ級”カラニア”と”フィヤロ”がインペリアル級に砲撃を叩き込み、大きく損傷させた。

 

艦のバランスが崩れ、インペリアル級の速力は低下した。

 

更に護衛機のヴァルチャー級がエンジン部分に特攻する勢いでプロトン魚雷を放ってエンジンを1基破壊した。

 

これでインペリアル級の速力は大いに低下し、イオン・パルス砲のチャージに十分な時間を稼げた。

 

「イオン・パルス砲チャージ完了、いつでも撃てます」

 

「敵中央艦隊に向けてイオン・パルス砲を放て」

 

少将の指示を聞いてテヤシン大佐がより正確に指示を出す。

 

「砲術長、目標敵艦隊中央。照準誤差マイナス4度」

 

「了解…!」

 

「航海長、25度回頭し射角調整」

 

「はい!」

 

砲撃地点の調整の為、”サブジュゲーター”の船首が敵艦隊の方向に向いた。

 

サブジュゲーターⅡ級のイオン・パルス砲はクローン戦争中のサブジュゲーター級と構造が大きく違う。

 

かつてのサブジュゲーター級はイオン・パルス砲照射の際に船体側面を向けて発射していたのに対し、Ⅱ級は船体正面からも照射が可能である。

 

サブジュゲーター”はそのままイオン・パルス砲の照射角度を合わせて、戦術長が狙いを定めた。

 

「ターゲットロックオン、安全装置解除」

 

「全エネルギー回路問題ありません」

 

「周囲に友軍艦艇なし」

 

士官たちの報告を聞いて艦長が命令を下す。

 

「イオン・パルス砲、撃て!」

 

サブジュゲーター”の側面から禍々しい紫色の電撃が飛び散り、薄い膜のようなものが発射された。

 

その膜は特攻にきたインペリアル級をたった一撃で行動不能に陥れ、そのまま後方の敵艦隊中央にも被害を与えた。

 

イオン攻撃を浴びて艦の電子機器が一切使えなくなった戦闘艦が死んだ魚の様に浮いていた。

 

「前方のインペリアル級行動停止、敵艦隊中央、インペリアル2、ヴィクトリー3、アークワイテンズ4、レイダー4隻機能停止!」

 

「よし!インペリアル級を三隻持って行けた!」

 

テヤシン大佐はガッツポーズを浮かべ、砲撃の成功を喜んだ。

 

すかさずクーシェン少将が命令を出す。

 

「各艦に伝達、全火力を敵艦隊中央に向け艦列を破砕せよ。敵艦隊は崩れている、今が好機だ」

 

「了解!」

 

連合艦隊左翼は砲火を集中し、行動不能になった敵艦を次々と撃沈に追い込んだ。

 

ここぞとばかりにプロヴィデンスⅡ級やレキューザントⅡ級が距離を詰めて、艦のエネルギーを砲に集中して敵艦隊を打ち砕いた。

 

これにより、連合艦隊は確実に帝国艦隊に損害を与えていた。

 

今やラクサス防衛艦隊に無傷なインペリアル級は存在していない。

 

艦隊左翼の集中攻撃に合わせてトゥーク提督の連合艦隊中央も砲撃を集中させる。

 

度々勇気ある帝国軍スターファイター隊が対艦攻撃を仕掛けに来るが犠牲を厭わないドロイド・スターファイターの群れが機体をぶつけてでも攻撃を阻止する。

 

今や軌道上での戦いは艦隊同士の純粋な砲撃戦となっており、その点では連合艦隊が優勢であった。

 

「敵艦隊に再編成の時間を与えるな。穴が開いた艦列に近づく敵艦はすべて排除しろ」

 

トゥーク提督の全体指揮により防衛艦隊は艦隊の再編成が行えず、いつまでもズタボロの状態で戦い続けていた。

 

その為ある一点に攻撃を集中しようにも陣形を構築出来ず、基本的な攻撃戦術を用いる事すら難しくなり始めていた。

 

結果的にほぼ同数であった帝国艦隊と連合艦隊だが、明らかに連合艦隊の損害の方が少なかった。

 

もうすぐ王手というところで突如メイディン将軍から”コンフェデレーション”にホロ通信が入った。

 

『トゥーク提督』

 

「どうされたメイディン将軍」

 

『地上で帝国軍が撤退を開始しました。我々はこちらに援護の機動部隊のみ配置して敵の撤退を阻止に向かいます。その為一時的にこの場を離れるがよろしいですか?』

 

メイディン将軍は端的に状況と行動を説明した。

 

トゥーク提督は特に不満を持つことなく了承し頷いた。

 

「勿論構わんとも。将軍が送ってくださった増援艦隊をそちらに返そう。尤もこの調子でいけばラクサロンの奪還はもうすぐになりそうだがな」

 

『助かります、提督もご武運を』

 

「こちらこそ」

 

そういって両者通信を切り、各々の戦闘指揮に戻った。

 

メイディン艦隊の増援は援護砲撃を展開しつつ、引き下がって軌道上の友軍艦隊に合流した。

 

増援が抜けた分をすぐに補い、再度攻勢を再開する。

 

すると地上の撤退に合わせてか防衛艦隊にも動きがあった。

 

「提督!敵艦隊撤退していきます!」

 

「なんだと!?まさか逃げるつもりか!敵艦隊の推定移動コースは?」

 

すぐにスーシェン少将がブリッジの士官に尋ねた。

 

「恐らく惑星軌道上から回り込んで裏側の撤退する友軍と合流するつもりかと」

 

「この期に及んで逃げるとは…!直ちに追撃しましょう」

 

トゥーク提督は小さく頷き、艦隊全体に指示を出した。

 

「全艦、後退する敵艦隊を追撃する。連中がジャンプアウトする最後の瞬間まで圧力をかけ続けろ!」

 

命令通り連合艦隊は追撃を開始した。

 

帝国艦隊は辛うじて比較的まだ艦列を保っていた艦隊右翼を殿として戦闘の正面に配置し、その間に移動しつつ艦隊の再編成を行った。

 

無論その間にも連合艦隊が執拗に追撃し、ターボレーザー砲やイオン・パルス砲を放って更に損害を拡大させた。

 

帝国艦隊が撤退中の友軍と合流し、ハイパースペース空間へジャンプアウトする頃には艦隊戦力の2/3が消失していた。

 

一方の連合艦隊は損害を僅か3%程度に留め、最も少ない損害でラクサスから艦隊を押しのけた。

 

この軌道上での勝利は今まで戦史の中で燻っていたマー・トゥークという1人の提督の名を第三帝国へ轟かせた。

 

アクバー元帥にも並ぶ名将であり、油断ならぬ浅ましいニモーディアンであると。

 

不遇の名将から不遇の2文字が消えた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

-惑星ラクサス 首都ラクサロン市街地

タイオン・ヘゲモニー第8軍の防衛線が突破されたことにより、ついに市街地内へ突入した。

 

市街地戦ではまず先行して降り立ったバトル・ドロイドの精鋭部隊が橋頭堡を確保し、友軍部隊を突入させた。

 

ラクサロンの街路をX-1ヴァイパーやレッサー級スーパー・タンクが歩兵と共に練り歩いている。

 

無論国防軍とてただでラクサロンをくれてやるつもりはなかった。

 

ラクサロン市街地の防衛を任された第351擲弾兵団が建物に立て籠り、各地に防御陣地を作って抵抗を続けていた。

 

その為市街地に入って暫くは帝国軍側が優位だった。

 

対戦車兵器を持ったストームトルーパーがあちこちのビルから攻撃を仕掛け、追随する車両を撃破していく。

 

AAT-2やT-4Bホバー・タンクが破壊され、随伴歩兵もEウェブ・ブラスター砲を受けて死傷者を出した。

 

突入した機甲部隊はセンサーや偵察兵、プローブ・ドロイドを用いて可能な限り敵の位置を把握しようと努めてはいるが完全に覚えるのは無理だった。

 

制圧するには建物を一軒、一軒制圧していく他ない。

 

『全随伴歩兵と後続の歩兵部隊は周囲の建物を制圧せよ、連合軍、そっちから代わりの随伴歩兵を出せないか?』

 

『ガンシップを突入させたいが市街地の対空砲火が強力過ぎて突入出来ない』

 

『全機、何機か墜ちる覚悟で対空網を破壊するぞ!』

 

市街地に展開されたAT-AAやAT-MPマークⅢ、それに加えて自動対空タレットがガンシップやスターファイターの接近を阻んでいた。

 

既に何機かのHMP-2ドロイド・ガンシップやレジスタンス軍のスターファイターが撃墜されている。

 

それでも代わりの随伴歩兵隊を展開する為にレジスタンス軍スターファイター隊が決死の制圧戦を行おうとした。

 

しかし突如として前線に近いセンサー・アレイが突如爆発を引き起こした。

 

実は新たに市街地に突入した友軍部隊の援護という任務が与えられたジェルマンとジョーレン達の仕業なのだが、この時味方は彼らに気づいていなかった。

 

目標誘導を失った自動対空タレット群の対空攻撃は乱雑なものとなり、上空から最も容易く撃破出来た。

 

『対空砲塔をやった!』

 

『直ちに部隊を展開する!』

 

各地に2機ずつドロイド・ガンシップが機甲部隊の近くに展開し、バトル・ドロイドを展開した。

 

搭載されたバトル・ドロイドはB2タイプのスーパー・バトル・ドロイドであり、B1サイズより性能が良かった。

 

駆け足で部隊に合流し腕部内蔵型のブラスター砲で応戦した。

 

『ガンシップ隊を回収する』

 

連合軍のオペレーターがドロイド・ガンシップに後退命令を出す。

 

ドロイド・ガンシップ隊は一旦戦場から離れ、ミサイルとレーザー砲による航空支援モードに移行した。

 

何機かはAT-AAによって撃墜されたが、代わりに反撃のミサイルを放ってAT-STやAT-MPを破壊した。

 

連合=レジスタンス軍は次々とラクサロン市内への突入に成功した。

 

突破口を塞ごうと帝国軍はAT-AT1個中隊を基幹とした戦闘団を派遣したが、側面援護のX1ヴァイパー隊と交戦し封鎖には失敗した。

 

むしろ後退中にX-1ヴァイパー隊が追撃を敢行した為突破口は更に広がることとなった。

 

その間に別地点でも連合=レジスタンス合同軍が突破に成功した。

 

レジスタンス地上軍第46機械化師団が軌道爆撃の援護を受けて陣地を食い破ったのだ。

 

突入支援の為に連合地上軍第105機械化師団、第116機械化師団が側面援護に入った。

 

同じ師団であっても実は連合地上軍とレジスタンス地上軍の1個師団における兵員数には差がある。

 

連合地上軍の1個師団がドロイド軍1万から2万体、非ドロイド兵1万5,000名であるのに対し、レジスタンス地上軍の1個師団は4万名である。

 

その為レジスタンス地上軍の1個師団は実質的な1個兵団であり、少将が指揮を執るのが妥当だとされた。

 

突破に成功した第46機械化師団は尖峰隊の第487機械化旅団を市街地に突入させ、制圧を開始した。

 

エリートAT-TEやT-4Bヘビー・タンクが街路を進み、その後に歩兵を乗せたA-A5スピーダー・トラックが続いた。

 

こうしてラクサロンは2方向から侵入を許し、市街地での戦闘が始まった。

 

ラクサロンで起こる戦闘はそれだけではない。

 

『こちら第2中隊!直ちに増援を!武装した市民軍の攻撃を受けてる!』

 

『大隊本部より第2中隊へ、すまないが増援は展開出来ない。現在本部も抵抗勢力の襲撃を受けている!戦線を縮小して対処せよ!』

 

『それじゃあ防げない!うああ!!』

 

ある中隊本部にサーマル・デトネーターが投げ込まれ、大爆発を起こした。

 

似たような出来事は各地で巻き起こっている。

 

武装した市民軍はまるで訓練された兵隊のように連合=レジスタンス合同軍の進撃に合わせて武装蜂起を引き起こした。

 

実際立ち上がった市民軍は全員が事前にレジスタンス軍特殊部隊員によって訓練を施された人々であった。

 

ジェルマンとジョーレンの隊と同じく、メイディン将軍が指揮を執る特殊部隊が先行偵察と抵抗勢力の教育の為に秘密裏にラクサスへ侵入していた。

 

短期間だったが彼らの教育には意味があった。

 

今や市民軍は明確な指揮系統を持ち、統率の取れた準正規軍となった。

 

正面から来る友軍に合わせて、破壊活動を行っていた。

 

ある隊は後方の補給物資集積地点に襲撃を受けて一時的に前線へ補給が遅れなくなった。

 

またある部隊は市民軍の攻撃を受けている際に正面から1輌のT-4Bヘビー・タンクと1個歩兵小隊の攻撃を受けて壊滅した。

 

ラクサロンに展開する部隊は眼前の合同軍だけでなく陰に潜んで好機を待つ市民の抵抗勢力の事も考えなければならなくなっていた。

 

この負担は想像以上に大きい。

 

帝国軍は全域で押し込まれ始めた。

 

それでも司令部はまだラクサロンを死守しようとしていた。

 

だがそこへ衝撃的な報告が入って来る。

 

モフグロットンが暗殺されたという報告が今になって司令部に齎されたのだ。

 

総督の死はオルトセル中将の顔色を青く染め、今まで考えもしなかった撤退という言葉を脳裏に過らせた。

 

「それで総督府の連中は何をしてるんだ?」

 

「指揮系統が混乱しており……少なくとも一部では資料の破棄が始まったようですが……」

 

「連中は撤退するつもりなのか!?」

 

幕僚達に動揺が広がった。

 

現状帝国軍は劣勢とはいえ完全に敗北が決まった訳ではなかった。

 

それでも総督府の職員達は撤退するつもりだった。

 

オルトセル中将も心のうちでは撤退に意志が傾き始めていた。

 

それを悟ったのか作戦参謀の1人、ブレンスベルク大佐が進言した。

 

「第6宇宙港は奪還不可能ですが総督府後方の帝国軍軍用宇宙港はまだ健在です。撤退するならここしかないかと」

 

彼は小声でオルトセル中将にだけ聞こえる声で呟いた。

 

中将は最初、怪訝な表情を浮かべたが少し考えてし考えを変えた。

 

もうオルトセル中将はこのまま戦線を維持出来ないと確信していた。

 

既に宇宙艦隊は押し込まれており、反撃の手立てはなかった。

 

「…第37軍をラクサロン市外に後退させ、撤退戦の準備をさせろ。グレスト少佐!」

 

「はい!」

 

「直ちに総督府へ資料の破棄と全職員の宇宙港への移動を命じろ。我が軍は防衛線を総督府官庁街、その手前に引き直して撤退までの時間を稼ぐ!」

 

「つまり……」

 

中将は苦痛な表情を浮かべながら断言した。

 

「”ラクサスを放棄する”…!」

 

この段階で惑星ラクサスからの撤退が決まった。

 

司令部の幕僚達も様々な意見を持っていたが全員が共通してこのまま押し返すのは不可能だと悟っていた。

 

少なくともこのままいけば総督府には後3時間足らずで敵が入ってくる。

 

それに現時点で地上軍の最高司令官はオルトセル中将である。

 

命令を受諾した幕僚達は中将に向けて敬礼し、撤退の作戦立案を開始した。

 

まず第37軍司令官のベレト中将に市街地への後退を要請し、次に総督府に退避命令を出した。

 

先に展開していたタイオン・ヘゲモニー第8軍は第37軍の後退を援護し、一部では防衛不可能と判断された地域を放棄して新たに指定された防衛線まで引き下がった。

 

その間レジスタンス地上軍も連合地上軍も前進を続けた。

 

市街地に立て篭もる敵兵もレジスタンス軍の歩兵やドロイド・コマンドーやドロイデカ、そして最精鋭のマグナガード隊が制圧して友軍部隊の道を切り開いた。

 

その間に帝国軍の撤退は急ピッチで進められた。

 

まず文民である総督府の職員を優先して輸送船に押し込み、次に負傷兵を乗せた。

 

無論ウォーカーや装甲車輌といった重装備は全て破棄され、可能な限り人間を押し込めるようにされた。

 

後方では重砲が敵軍の接近を阻止する為に火を吹き、上空では輸送船団護衛の為に国防空軍のTIEファイター隊がレジスタンス軍を食い止めていた。

 

「第347ドロイド師団はまもなくプラザ・スクエアまで到達します。第56機械化師団もまもなく元老院ビルの奪還に入ると報告がありました」

 

「どうします?閣下、メイディン将軍からは敵が撤退を始めていると報告を受けましたが」

 

ジェンリー少将は尋ねた。

 

ヒューレン将軍は迷わずに命令を伝えた。

 

「追撃はレジスタンスと我が軍の野戦軍に任せればいい。我々の第一目標は元老院ビルの奪還だ。56師団に伝えろ、元老院ビルに再び連合旗を掲げろとな」

 

「はい!」

 

ヒューレン将軍の命令で第56機械化師団とシャンドソール少将の第4機甲師団が分離主義元老院ビルに向けて攻勢を開始した。

 

帝国軍の守備隊はX-1ヴァイパーを前に蹴散らされ、元老院ビルの建物内へ引き下がった。

 

ヴァイパーが盾となっている間に大型兵員輸送車がバトル・ドロイド隊を展開し、連合軍やレジスタンス軍の歩兵部隊と共にビル内へ突撃を開始した。

 

ビル側からの銃撃を半ばバトル・ドロイドで盾にしつつ、歩兵部隊はビル内へと侵入した。

 

最初にビルに突入したのはヘルレ連合地上軍大尉率いる1個機械化歩兵中隊だった。

 

ザブラクの大尉はDL-44重ブラスター・ピストルを持って一番先頭で中隊を率いていた。

 

彼の配下にはレジスタンス地上軍の1個小隊とバトル・ドロイド1個中隊が続く混成部隊であった。

 

兵士達は皆持つブラスターも十人十色だ。

 

レジスタンス兵はA280を主として持っていたが、連合兵はE-5C2ブラスター・ライフルというE-5ブラスター・ライフルの生命体兵士用の改良武器を使用していた。

 

「みんな後もう少しだ!踏ん張れや!」

 

目の前に現れたストームトルーパーを射殺しながらヘルレ大尉は味方を鼓舞した。

 

階段には戦死したストームトルーパーや連合、レジスタンス兵の遺体が斃れている。

 

閉所や死角の多い室内戦ではレジスタンス兵や連合兵の犠牲も大きかった。

 

だが大尉は味方がやられる度にすぐに敵兵を撃ち殺し、味方を鼓舞して勢いを殺さずに進み続けた。

 

これで味方の士気は下がらず、戦闘が続行出来た。

 

「グワアア!」

 

あるバトル・ドロイドが移動中にE-11に銃剣をつけたストームトルーパーに刺殺され、撃破された。

 

すぐにブラスター弾が叩き込まれ、そのトルーパーは戦死した。

 

「怯むな!もう少しだ!」

 

DL-44重ブラスター・ピストルを構えながらヘルレ大尉が最後の階段を登り始めた。

 

そのすぐ後に中隊先任のラウ軍曹が続き、連合旗を持ったメイネ一等兵が突っ込んだ。

 

ヘルレ大尉は突撃する前から「その旗はまだしまっておけ」と一等兵に伝えていたが彼は味方を勇気づけたいと連合旗を掲げてビル内に突撃した。

 

「このぉ!」

 

眼前にいた2人のストームトルーパーを射殺し、混成部隊は元老院ビルの屋上を目指した。

 

既に建物の中には後続の歩兵部隊が突入し制圧を完了していた。

 

建物の一部はジェルマンとジョーレンが率いた暗殺チームが派手に吹っ飛ばした為穴が空いており、兵士達の顰蹙を買っていた。

 

「ネール特技兵!」

 

レジスタンス地上軍のフライム中尉が部下を呼び出し、扉を爆破させる。

 

屋上への道が開け、狭いドアから一斉にレジスタンス、連合、バトル・ドロイドが飛び出した。

 

「ワア!ヤッタゾ!勝利ダ!」

 

「何カニ勝ツノハ初メテダ」

 

「戦争自体初メテダ」

 

バトル・ドロイド達も跳ねて屋上まで辿り着いたことを喜んでいる。

 

その間にメイネ一等兵が離さず持っていた連合旗を掲げる為に、屋上の天辺にあるアンテナに攀じ登って旗を振った。

 

そして一等兵は誰にも聞こえないだろうが大声で叫んだ。

 

「みんなぁ!!帰ってきたぞぉ!!うちに帰ってきたぞぉ!!」

 

彼はラクサス出身者であり、ここは文字通りの故郷であった。

 

風に靡く連合旗はエレクトロバイノキュラーであれば十分よく見えた。

 

周りの兵士達も安堵して喜びの声をあげ始めた。

 

新分離主義連合はこの日偉大な勝利を手にした。

 

ラクサスは元老院ビルの陥落から僅か4時間後に完全制圧され、再び連合の下に帰ってきた。

 

オッサス、フェルーシア、ベルドロンも陥落し、各地で連合旗やレジスタンス旗が掲げられた。

 

新分離主義連合の旧領は全て奪還されたのだ。

 

市民達は帰ってきた兵士達と抱き合って勝利を喜び、このまま第三帝国を打ち倒すことを誓った。

 

これは偉大な勝利であるが、同時に始まりでもあった。

 

ラクサス・セカンダス攻勢は成功に終わった。

 

この勝利は第三帝国、新分離主義連合、レジスタンス、チス・アセンダンシー、ファースト・オーダー、そして何より大セスウェナ連邦に大きな影響を齎すことになる。

 

11ABY、銀河は運命の分かれ目の年に入った。

 

 

つづく




どうも、現代のパウル・カレルです(戦犯発言)

ということでナチ帝国最新話です、もうそろそろバルバロッサに入れそうですね(最悪や)

季節の変わり目ですので皆さんも暖かくしたり冷たくしたりしてお過ごしください

Eitoku Inobeでした
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