第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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-希望は絶たれ絶望にすり替わる-


新共和国の崩壊/中編

-アナイアレイター 第一作戦室-

かつてこのエグゼクター級スター・ドレッドノートは帝国地上軍の大将軍カシオ・タッグの所有物だった。

 

帝国軍内部でも保守的な彼はこの艦を眺めてはいつも「ターキンの道楽に付き合わなければスーパー・スター・デストロイヤーを後何隻建造出来たんだろうかな」と不満を漏らしていた。

 

そんな彼もやがては命を落としこの艦は名前を変えられ海賊の物となっていた。

 

誠実だったタッグ大将軍の旗艦が不誠実極まりない海賊の船になるなんてなんという皮肉であろうか。

 

当然そんな事を第三銀河帝国が許すはずがない。

 

アナイアレイターは親衛隊や帝国軍の特殊部隊によってすぐに取り返された。

 

そして新たに大将軍となったマクシミリアン・ヴィアーズ大将軍のものとなったのだ。

 

現在このアナイアレイターはシャンドリラの軌道上にいた。

 

銀河内戦時代では活かしきれなかった己の力をフル活用しシャンドリラ駐留艦隊と防衛艦隊を蹂躙していた。

 

やはりエグゼクター級の有用性はまだこの時代においても大きい。

 

無敵の帝国艦隊は未だ健在だ。

 

やはり帝国に勝とうなど自殺行為だったのではないかと死にゆく者達は最期目に焼き付けられた閃光と共に思うだろう。

 

そして無敵の帝国地上軍も同じく健在であった。

 

 

 

-シャンドリラ 旧新共和国防衛軍本部-

大量のターボレーザーやレーザー砲、ミサイル発射管に囲まれシールドで完全に守られた旧本部には同地に駐留する新共和国軍のほとんどが籠っていた。

 

すでに首都周辺は陥落し残された残存兵員は要人達の脱出する時間を稼ぐ為要塞と化した旧本部に立て篭もった。

 

電撃的に展開された帝国軍の大攻勢をこの兵力ではもう止める事は出来ない。

 

防衛艦隊は1時間掛からぬうちに壊滅し地上もあっという間に制圧された。

 

なんとか本部まで撤兵するのが精一杯で撤退中に反撃など到底出来るものではなかった。

 

「センサーを起動し周囲を警戒しろ、いつ敵がきても…おかしくない…」

 

前線でエレクトロバイノキュラーを手に持った軍曹は部下達に命令を出した。

 

彼が率いる部隊も手痛い損害を受けてきた。

 

兵士の1人が土嚢で固めた塹壕の中からバイノキュラーで遠くを覗き込む。

 

センサーだけでなく目視での警戒も重要だ。

 

そして彼は異変に気がついてしまった。

 

バイノキュラーの倍率を上げ画像をより鮮明に写す。

 

その姿を見た瞬間彼は青ざめた。

 

「軍曹!敵のスノーウォーカーです!!」

 

「ついに来たか…警報を鳴らせ!戦闘準備だ!」

 

「こちらディフェンスライン57、敵のAT-ATウォーカーを確認、これより防衛戦に入る」

 

通信兵が司令部に伝達し警報を鳴らした。

 

銃器を持った兵士達が一斉に塹壕の中へ飛び込みブラスター・ライフルを構える。

 

ジャガーノートやリパルサー・タンクが砲台と同時に一斉砲撃を始めた。

 

ホスの戦いではこちらの攻撃が全く通用しなかったが今回ばかりはそうはいかない。

 

また射程圏外の歩兵隊はブラスターを構えたままだった。

 

「よし撃て撃て!敵を近寄らせるな!」

 

「軍曹、状況はどうか」

 

軍曹が命令を出すと前線指揮官の大尉が姿を表した。

 

軍曹と副官の伍長は敬礼した。

 

「敵のウォーカー機甲師団です、数はおよそ10台ほど」

 

「このまま防衛線は維持できるか?」

 

「難しい所です…敵が…」

 

「軍曹!敵の砲撃です!」

 

3人が振り返り上を見上げると赤色の光が大きく空へ舞い上がっていた。

 

「一体何をするつもりだ」と大尉は不思議に思った。

 

砲撃しようにもこちらには分厚い鉄壁の惑星シールドを展開している。

 

波の攻撃で打ち破る事など不可能だ。

 

それなのに何故…と思っていると誰も予測出来ない事が起こった。

 

「敵の攻撃が!うわぁ!!」

 

塹壕内で大きな爆発が起き多くの兵士が吹き飛ばされた。

 

奇跡的に生き残った兵士も肉が抉れ出血している。

 

爆風が辺りを包み一時的に戦場を包んだ。

 

軍曹も大尉も伍長も目を手で覆い被せた。

 

「なっ何が…」

 

「シールドを突破したのか…」

 

大尉の引き攣った声を完全無視する形で次々と塹壕やシールドの内側にエネルギー弾は降り注いだ。

 

装甲の脆いタンクなどは一撃で破壊されジャガーノートのような硬い機体であっても無傷では済まされなかった。

 

轟音と土煙が辺りに漂う。

 

絶望的な状況の中兵士達は心が折れた者も多く塹壕から飛び出て撤退しようとする者まで現れ始めた。

 

指揮官達もそれを止めなければいけないのは分かっているがもうどうしようも無かった。

 

こうして第一の戦線が崩壊したのは最初の攻撃から僅か5分後の事だった。

 

 

 

 

攻撃の最初の一手は大成功だった。

 

軌道上爆撃をしようにもあの惑星シールドは到底敗れるものではない。

 

しかしこのウォーカーは一味違った。

 

AT-ATの背中に大きなキャノン砲のようなものを備えたこのウォーカーの名前は全地形対応メガキャリバートランスポート。

 

通称AT-MTやAT-MT1と呼ばれるこれまたコルサントの秘密施設で発見した幻の新兵器だ。

 

このAT-MTの背中を覆い被すほどのメガキャリバーキャノンは単一だと少し強力なだけな大砲に過ぎない。

 

シールドも突破出来ないし威力としても顎の重レーザー砲とあまり変わりはない。

 

しかしこの機体にはある特性があった。

 

それはAT-MT3機のメガキャリバーキャノンの制御システムを1機にリンクし合成ビーム・キャノンを作り出す事だった。

 

合成ビーム・レーザーの亜種であるこのキャノンは3機のエネルギーを一まとめにするだけではない。

 

一点に纏まった砲弾はシールドすら強引に打ち破る程の威力を誇った。

 

通常のターボレーザー砲よりも威力は上だ。

 

しかも専用のエネルギータンクが備わっている為補給やエネルギー切れの心配はない。

 

『閣下、砲撃の第一次が終了しました』

 

「了解准将、このまま進撃と同時に散開し防衛網を突破する」

 

『了解です』

 

長年の部下であるアイガー准将からの通信が切れた。

 

彼はブリザード・フォース所属でエンドア戦では基地の司令官と宇宙軍との合同部隊であるテンペスト・フォースを任されていた。

 

しかし思わぬ攻撃で敗北を受けた後彼はなんとかエンドアに残っている全ての戦力を集めた。

 

軌道上の艦隊は撤退し地上にポツンと彼らは取り残されてしまった。

 

その為一時期は捨て身の特攻戦術でせめて反乱軍に打撃を与えようとしたアイガー准将だが彼にも希望の光が見えた。

 

救援に来た上官のヴィアーズ大将軍のおかげでエンドアに取り残された全員が救出されたのだ。

 

結果新共和国軍はそんな彼らの存在を全て忘れ今日に至る。

 

当然屈辱的な敗北を彼らが忘れるわけないだろうが。

 

ヴィアーズ大将軍が直接指揮を取るエリートAT-ATのブリザード1は退却する敵兵を掃討しながら徐々に進んだ。

 

彼らの第一目標はホス戦と同じくシールドジェネレーターだ。

 

あれを破壊すれば軌道上爆撃も更なる部隊の展開も可能になる。

 

地上の四方八方も、宇宙も全て帝国軍が塞いでいる。

 

もはや孤立無縁の状態で本部を直接叩く事は二の次でもよかった。

 

「閣下、ラクマー将軍とロット将軍の部隊が防衛ラインの突破に成功、現在第二防衛ラインで戦闘中です」

 

「ジア将軍の501軍団は?」

 

「南側の対空砲網を全て無力化したとの事です、現在同様に進軍中」

 

どの部隊も破竹の勢いで進んでいるようだ。

 

少なくとも第一の防衛ラインは突破に成功したらしい。

 

「距離的に最もジェネレーターに近いのはどの部隊だ?」

 

「それに関してはやはり我が部隊です、戦線が完全に崩壊しているのも同様」

 

「そうか…各部隊は敵の殲滅を優先させろ、ジェネレーターと敵本部には我々が乗り込む」

 

揺れる機体の中ヴィアーズ大将軍は確実に命令を出した。

 

横を見渡せばアイガー准将のテンペスト1やフレジャ・コヴェル少将のブリザード2が見える。

 

後方にはホスの戦いで戦死したスターク大佐の親族のブレス・スターク少佐が指揮するブリザード4もいた。

 

ホス戦は帝国側の完全勝利だったわけではない。

 

ネヴァー准将やスターク大佐と言った勇猛な将兵達を失ってしまった。

 

軍人として死は見慣れているが見慣れていると言って悲しさがまるでない訳ではない。

 

借りは返す、ただそれだけだ。

 

「ジェネレーターまでの距離は」

 

「172.8です、しかしこのままいけば敵の防衛ラインと衝突します」

 

「構わん、全隊隊形変更」

 

漆黒の機体に真紅のコックピットアイが光るエリートAT-AT数十台が距離を取り適切な位置へ移動する。

 

その合間を埋めるようにAT-STマークⅢやAT-MPマークⅢが隊列を作る。

 

「フォーメーションを取る、“()()()()()()()”だ!」

 

正式に命令を受けたブリザード・フォースの全隊が隊形を一瞬のうちに作った。

 

ヴィアーズ隊形。

 

その原型はやはり彼を一躍有名にしたホスの戦いにあった。

 

ウォーカー戦術の中でも防衛砲塔群を撃破するのにこれほど有効的なものはない。

 

結果ホスの戦いでは不利な状況下で勝利を収め今日まで受け継がれて来た。

 

その立案者たるヴィアーズ大将軍が再びこの戦術を使う。

 

それはきっと壮絶な戦いになるだろう。

 

『閣下、敵の防衛部隊を発見しました!』

 

勇気に溢れた若きスターク少佐の声が響いた。

 

まずは彼にやらせるのもいいだろう。

 

「よし少佐、戦列を崩さず敵を制圧しろ、このまま面の攻撃に移る」

 

『了解です!さあ仕事だ!』

 

「無茶はするなよ…」

 

聞こえるが若干小さめの声でヴィアーズ大将軍は忠告した、

 

彼としては前任のスターク大佐のように若き彼を失いたくはないという思いがあるのだがこのスターク少佐は全くそんな事を気にしていなかった。

 

ブリザード4の砲撃が敵部隊を吹き飛ばす。

 

やはり顎の重レーザー砲は様々な地上兵器を凌駕している。

 

当たったら即死どころの話ではなく、当たらなくても死亡や重傷は避けられない。

 

新共和国兵士やビークルやロケット弾で応戦するがエリートAT-ATの装甲に傷一つ付かない。

 

とはいえ隙間に入られ弱点を攻撃される可能性もあるので先行したAT-STマークⅢが歩兵を掃討しAT-ATの進路を切り開く。

 

数分も掛からずに新共和国の歩兵部隊は全滅してしまった。

 

所詮はテロリストから成り上がった正規軍擬きだ。

 

いくら指揮官が優秀でも練度差などはどうしようもない。

 

「敵の主力部隊です、戦力的には3個大隊ほど」

 

「タンクやジャガーノートも数十台以上あります」

 

2人のパイロットは冷静かつ的確に情報を提供した。

 

以前のパイロット達とは違うがこの2人も相当優秀なベテランパイロットだ。

 

「全てのAT-ATを先行させ防御を取る、AT-STとAT-MPは対空戦闘準備だ」

 

「はい閣下」

 

レバーを引きウォーカーを前進させる。

 

他のウォーカーも大体同じ速力で進んでいた。

 

「全AT-MPは命令と同時にミサイル一斉発射、我々も一斉射で戦列から弾き出すぞ」

 

『はい閣下』

 

『了解大将軍、全機第一群発射容易』

 

ブリザード・フォースを支援するイージス・フォースから通信が入った。

 

ブリザード・フォースとテンペスト・フォースのAT-ATも顎の重レーザー砲をチャージしている。

 

「敵部隊砲撃を開始」

 

タンクと砲台が一斉に砲撃を始めた。

 

エリートAT-ATの装甲はやはり破れないが少しぐらつかせた。

 

しかもある一点を集中的に攻撃しなるべく致命的なダメージを与えようとも努力している。

 

なるほど少しはやるらしい。

 

しかしそれすら無意味だ。

 

「ミサイル一斉発射、全機フルパワー斉射!」

 

放たれたミサイルとレーザー弾が爆炎を作り出し砲塔やビークルを破壊する。

 

顎のレーザー砲がチャージされている合間にも両耳に値する部分からブラスター弾が放たれ敵に休む隙を与えない。

 

次々と砲塔が破壊され兵士たちも死んでいく。

 

元々これ程の戦力差があるのだ。

 

むしろこれがあるべき姿で今までが異常というべきだろう。

 

テロリストの弱小組織にしてはよく頑張った方なのだ、反乱同盟も新共和国も。

 

結局最終的に勝つ事など不可能なのだ。

 

希望はいつか断たれる。

 

それは2年か30年かの違いでしかなった。

 

新共和国が滅び去る運命は既に決まっていたのだ。

 

「敵部隊が退却していきます」

 

「なるべく逃さず殲滅だ、敵ビークルを破壊しAT-STを突入させる」

 

「了解、目標を敵ビークルへセット」

 

破損し煙を上げたタンクやジャガーノートが応戦しつつ後退して行く。

 

それでも優秀なパイロット達の砲撃には敵わず一台つづスクラップに変わっていった。

 

それだけでは飽き足らずエリートAT-ATのミサイルランチャーが敵を掃討する。

 

あっという間に新共和国のビークルは全て破壊されてしまった。

 

エリートAT-ATの真横からAT-STマークⅢが現れ逃げ遅れた敵兵や逃げる敵兵全てを蹴散らす。

 

また一つ防衛ラインが壊滅した。

 

ここまで一方的ではないにしても他の戦線も同様だろう。

 

四方八方から帝国地上軍は進撃しつつある。

 

「ジェネレーターを目視で確認」

 

「パワーチャージ、なるべく近づけるんだ」

 

ジェネレーターを必死に守ろうとする敵のジャガーノートがブリザード1に攻撃してきた。

 

「テンペスト支援を頼む、ブリザード・フォース全隊はこのまま進撃しろ」

 

『はい閣下、全隊ジェネレーター周辺の敵を狙え』

 

後方から現れたテンペスト・フォースのウォーカー部隊が次々と敵部隊を蹴散らしていく。

 

その間にヴィアーズ大将軍はコックピットのバイノキュラーを取り出し照準を合わせた。

 

ジェネレーター自体に攻撃能力はなく本体は無防備同然だ。

 

AT-ATの重火力なら余裕でその装甲も粉微塵に出来る。

 

「射程内に友軍なし」

 

「エネルギーチャージ完了」

 

パイロット達から次々といい報告が流れてくる。

 

ならもう躊躇う必要はない。

 

Target. Maximum fire power!(最大出力で撃て!)

 

放たれた二発の光弾がシールドジェネレーターを貫き一瞬で爆破させた。

 

吹き飛んだシールドジェネレーターの破片は地面に散らばり煙と共にシールドがどんどん消えていった。

 

『流石です大将軍!』

 

「気を抜くなアイガー准将、このまま地上部隊を展開する、パイロット敵本部までの距離は?」

 

「ここから60メートルほど先です、トルーパー隊を展開させましょうか?」

 

「頼む、出番だゼヴロン」

 

コムリンクに向かって彼は息子の名前を発した。

 

ホログラムが現れヴィアーズ大将軍の一人息子、ゼヴロン・ヴィアーズ少佐が姿を表した。

 

COMPNORの青年グループで教育を受けた彼は優秀な高級将校としての活躍を期待され大尉で卒業した。

 

その後父と共に幾つかの激戦を潜り抜け彼は少佐に昇進した。

 

一見英雄を父に持った若きエリートのように見えるがゼヴロンは父や他の仲間にも見せていない一面があった。

 

「部隊を率いて施設内を制圧しろ、捕虜の事は気にしなくていい」

 

『了解とうさ…大将軍』

 

「どっちでもいいさ、お前の活躍を楽しみにしているぞ、ウォーカーを降下モードへ」

 

エリートAT-ATが両足をゆっくりと曲げ地面スレスレまで近づけた。

 

無防備にならないよう他のウォーカーが警戒している。

 

後部のハッチが開き将校とトルーパーが一斉に飛び出した。

 

他のAT-ATからも40人ほどのトルーパーが次々と出ていく。

 

その先頭を突っ切り勇猛果敢に部隊を率いているのがゼヴロンだ。

 

父であるヴィアーズ大将軍はそんな息子を遠くから見る事しか出来なかったが彼を信じる事は出来た。

 

ゼヴロンの部隊がそのまま司令部を陥落させたのは僅か50分後の出来事だった。

 

そしてシャンドリラに再び帝国の国旗が漂った。

 

 

 

 

 

-コルサント 総統府-

ホズニアン・プライム陥落とシャンドリラ陥落の一方が通達されたのは丁度大臣や長官達による会議が開かれている頃だった。

 

丁度その時総統はコレリアから来た大使と会食を開いており会議には参加していなかった。

 

物静かな会議の中その一報を届けに来た士官は会議室のドアが開くと走って向かってきた。

 

あまりにすごい足音を立てていた為警備兵やその場の全員が彼の方を向いた。

 

最初に口を開いたのは防衛大臣のブロンズベルクだった。

 

「どうしたのだ少佐、何かあったのか?」

 

少佐の階級を持つ士官は一瞬間を置き呼吸を整えた。

 

全員の意識が集中する中彼はその全員に聞こえるようにはっきりと言った。

 

「帝国軍最高司令部と親衛隊最高司令部より報告です…」

 

理由を大体察した彼らは顔をこわばらせ耳を澄ませた。

 

十中八九この時間帯で軍司令部からの報告は新共和国攻撃の事だろう。

 

「帝国軍及び親衛隊第一軍、第二軍は本日…ホズニアン・プライムとシャンドリラを…攻略したとの事です」

 

その報告を聞いた大臣や長官達は安堵と歓喜の入り混じった声を上げ隣にいた者達と握手し始めた。

 

皆口を揃えて「よかった」や「これで一安心だ」などと口走っている。

 

警備兵達も若干表情が緩んでいた。

 

「それは素晴らしいニュースだ、早速総統閣下にも連絡せねば」

 

「既に別の士官を回しております、今頃報告し終わっている頃でしょう」

 

「それは手際がいい、よくやった少佐」

 

「君も早く歓喜を分かち合いたいだろう、報告ありがとう少佐、戻りたまえ」

 

少佐は敬礼すると会議室を後にした。

 

彼がいなくなると全員が一旦席を戻し落ち着いた。

 

「勝ったか…ひとまずは安泰だな」

 

「いや、我々に取ってこの後が正念場だろう、特に新共和国領や加盟国の処遇だ」

 

「勝利を聞いて我が国に服属する惑星も増えるだろう、さてどうするか」

 

政治家にとって戦後処理は戦時中よりも激務に追われる。

 

それは勝っても負けても同じ事だ。

 

特に敗北者にとっては死んでしまった方が楽なのではないかと思える事もある。

 

「何はともあれ諸君、まずは祖国の勝利に乾杯しようではないか」

 

ハインレーヒ長官は軽く水の入ったコップを持ち上げた。

 

他の大臣や長官も同じく持ち上げている。

 

「祖国の勝利と繁栄を祝い、prosit(乾杯)!」

 

高く上げられたコップは乾杯の音を立て勝利を感激する一杯とされた。

 

 

 

-クワット 会長執務室-

ホズニアンとシャンドリラの陥落は帝国に与するありとあらゆる惑星にいち早く伝わった。

 

高官達は秘書や情報員から耳打ちを受けこの後の仕事を切り替え始めた。

 

それはクワット社の会長であるヴァティオンも同様だった。

 

クワット社の会長でもあるし惑星全体の指導者でもある。

 

そしてクワットは帝国領の中でも随一の重要惑星だ。

 

当然情報は誰よりも早く来るだろう。

 

「そうか…もう陥ちたか…彼女に連絡を取れ」

 

「畏まりました」

 

秘書が命令を受け機器をセットする。

 

その間にもヴァティオンは今後の事や勝利の祝辞のメッセージを考えていた。

 

それと同時に自分がどう動くかも思考を練っていた。

 

「帝国が勝ち再び新共和国は敗れ去る、さて次に覇権を握る帝国は“()()()”か…見極めるとしようか」

 

「準備完了しました」

 

秘書は手馴れた手つきで大きなホロプロジェクターのようなものをセットした。

 

ヴァティオンは一言「ご苦労」とだけ言って彼女を労った。

 

自らしゃがみスイッチを押す。

 

青白い光がプロジェクターから吹き出し徐々に人の形を作り出した。

 

彼女と連絡を取るのは数日ぶりだ。

 

「ご機嫌はどうかな、最高指導者“レイ・スローネ”大提督」

 

ホログラムは銀河帝国の大提督だったレイ・スローネを作り出した。

 

彼女はジャクー戦、延いてはエンドア戦から変わらぬ硬くそして威厳に満ちた表情を浮かべている。

 

『久しぶりだなヴァティオン、君の子会社には世話になっている』

 

「それは結構、新型スター・デストロイヤーと例のドレッドノートはどうだ?」

 

『順調…と言った所だ、後数日で完成する』

 

ヴァティオンは金色の髭を揉みながら彼女の言葉に耳を傾けた。

 

『だがそんな定期報告をしに来た訳ではないはずだ、何があった?』

 

相変わらず鋭い。

 

流石は女性大提督にしてラックスから全てを受け継いだ者だ。

 

他の三下将校とは格が違う。

 

「これは君たちの今後に大きく関わる事だ、よく聞け」

 

スローネ大提督は頷いた。

 

「銀河帝国が今日、新共和国を倒した」

 

その言葉を聞いた瞬間スローネ大提督はハッとした。

 

あり得ないとも言った表情だ。

 

「ホズニアンもシャンドリラも陥落し防衛艦隊はマジノの戦線に籠っている、撤退したとしても打撃は大きいだろう」

 

『帝国は強くなったと聞いたがまさかそれ程とはな、新共和国を倒すだなんて』

 

「我々の支援もあるが…やはり例の総統とその親衛隊組織が大きい、おかげで今の帝国軍はかなり強大になった」

 

『中央政府がやられたのだからもう防衛艦隊はどうしようもあるまい、以前の私たちのようになるのがオチだろう』

 

彼女は遠くにいながらも言葉だけで的確に情勢を読み取っている。

 

そんなスローネ大提督にヴァティオンはわざとらしく言葉を投げかける。

 

「どうするスローネ?このままいけまお前達の存在意義は無くなりそうだ」

 

あの帝国が再び銀河全域を支配すればスローネの一派は必要なくなるだろう。

 

むしろ下手に姿を表しては妙な軋轢を生みかねない。

 

しかし彼女はそんなことすら大丈夫そうな表情を浮かべ鼻で笑った。

 

『我々の信念は変わる事はない、その総統が望むなら我々は喜んで支えよう』

 

「ではもし総統が君達を快く思わない場合は?」

 

『我々に死にゆくつもりは毛頭ないぞ』

 

彼女の目はこう訴えかけている。

 

-牙を剥くなら容赦はしない-

 

今の帝国と敵対する事も辞さない、そういう表情をしている。

 

流石だ、それでこそ()()()()()を実行する生き残り達だ。

 

思わずヴァティオンは笑い始めた。

 

スローネ大提督は表情ひとつ変えずその様子を見ている。

 

「いやぁ見事だ大提督、流石だよ」

 

拍手までしている。

 

ヴァティオンは深く笑みを浮かべ彼女に提案した。

 

「…なら君にプレゼントを用意しよう」

 

『それは興味があるな』

 

「素晴らしいものだよきっと、既に彼らは試している」

 

秘書に顎で命令し資料を持って来させた。

 

重厚感のあるロックが掛かったケースに入れられた特別なデータテープはヴァティオンの指紋により開いた。

 

彼は滑らかな手つきでケースを開けデータテープを取り出す。

 

外に出すと暗証番号を入力しテープを解除した。

 

近くにあったホロプロジェクターに挿入するとすぐにホログラムが浮かび上がった。

 

それはアキシャル・シージ・レーザーキャノンを装備したインペリアル級の設計図だ。

 

「これを君たちに送ろう」

 

新たな波乱を楽しもうとする狂気じみた表情がヴァティオンに浮かび上がっていた。

 

 

 

 

-ホズニアン・プライム 元老院会議ビル-

「そうか…モスマは死んだか…」

 

小さなため息混じりでシュメルケ上級大将は報告を聞いた。

 

すぐに「情報部に連絡だ」と指示を出した。

 

隣にいたフューリナー上級大将が少し心配そうな目で見ている。

 

大方彼の考えは予想がつくがひとまず待ってみる事にした。

 

「ダーク・トルーパーや私の部下の証言もある、間違いない」

 

「大将軍や正規軍はこの事をまだ知らないだろうな?」

 

「情報は止めている、知るはずがない」

 

2人は足早に歩き始めた。

 

傍ではストームトルーパーや士官達が通路を闊歩している。

 

もうすっかり帝国の施設のように感じられた。

 

「モスマが死んだ事はどうでもいい、だが法廷に立たせ処刑出来ないことが問題だそうだろう?」

 

「そうだ…そこは映像を加工してそれらしく見せるしかない、最後の最期まで厄介な女だ、死ぬ瞬間すら手間取らせるなんて」

 

シュメルケ上級大将は少し苛立ちを覚え皮肉を込めて吐き捨てた。

 

本来ならモスマや一部の元老院議員を捕虜にして壇上に立たせ見せしめとして処刑するはずだった。

 

あろう事か彼女は自ら命を断ち己の尊厳と民主主義を守り抜いたのだ。

 

恐らくこちら側の意図を知って。

 

そもそも彼女が事を起こさなければ反乱同盟は誕生しなかったし新共和国も生まれなかった。

 

帝国にとってはまさに悪魔のような存在だ。

 

そんな彼女を見せしめ出来たら相当の効力があっただろう。

 

「奴の死はしばらく軍内部でも内密にしろ、あくまで我々が捕虜に取ったという形にする」

 

「彼女は爆死し遺体すら残っていない、映像を使うにしてもかなり無理が表に出るぞ」

 

「以前の元老院一斉逮捕の時の映像を加工する、それが不可能ならもう文面だけでいい、とにかく奴を我々がこの手で処刑したという事実が必要なのだ」

 

「わかった、定配しておく」

 

すると一瞬だけシュメルケ上級大将は立ち止まった。

 

モスマともう1人思い当たる何かがあったようだ。

 

「…そういえばレイア・オーガナはどうした」

 

ふと思い出したようにシュメルケ上級大将は尋ねた。

 

あまりに唐突すぎた為フューリナー上級大将一瞬ポカンとしていた。

 

「まだ…発見はされていない…恐らく死んだとは思うが」

 

「…まさかな…捜索隊を展開しろ、それと急いで遺体も探すんだ」

 

「彼女が生きているとでも?」

 

「可能性はまだある、それに奴が生きていたら…厄介な事になる」

 

「わかった」

 

2人は別れそれぞれの仕事を始めた。

 

シュメルケ上級大将の嫌な予感はあながち間違ってはいなかった。

 

何せ彼女は、レイア・オーガナはホズニアン・プライムを脱出していたのだから。

 

涙を拭い再び希望を背負って。

 

あの2人、ジェルマン・ジルディールとジョーレン・バスチルを引き連れて。

 

まだ戦いは終わらない。

 

 

つづく




言った通り不定期更新になってきやしたね(他人事)

そんなことより首が痛い
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