【P5R】主すみ詰め合わせ【二次創作】 作:KOMOREBI
すみれが自分のために仕事も家事もしてくれる蓮に対して罪悪感を覚えるお話です。
本作品には以下の注意事項がございます。
・ATLAS様の「ペルソナ5ザ・ロイヤル」の二次創作作品です
・無印版ではなく、完全版の方のその後ですので、本編のネタバレが含まれています
・よく言えばスピーディー、悪く言えば展開が早すぎる
・稚拙な文章
以上のことが許せる方はどうぞ楽しんでいってください。
この作品はフィクションです。実在する人物、団体、事象、宗教とは一切関係ありません。
※主すみ既婚の妄想です※
「ふーっ……」
グッと伸びをして、疲れを身体から逃がす様に息を吐いた。
流石に長時間ブルーライトを浴びすぎたか。仕事だからと言って長時間続けるのは良くないな。
そんなことを考えながら、蓮はチラッと壁掛け時計に視線をやった。短い針は丁度6の数字を指している。
すみれの練習が終わるのが夜8時。
今日はいつもよりも早く終わるらしく、「今日こそ洗濯と食事の片付けは私がやります!」と意気込んでいた。
適当な所で仕事を切り上げ、パソコンを閉じる。夕飯を作り始めるには少し早いか、そう考えて椅子から立ち上がり、部屋をぐるっと見渡した。
蓮とすみれで分かれているので、それぞれの部屋はそこまで広くない。
とは言えすみれは自室をほとんど使わない。寝る時も大抵は、なんと喧嘩中すらも、すみれは蓮のベッドに潜り込んでくる。
2人分の散らかしを片付け、時計を再び見る頃には丁度いい時間になっていた。
帰ってきてすぐに入れるようにと、早めに風呂を掃除しお湯を溜めた。
風呂を出てキッチンに向かう。蓮もすみれも料理をするので他の設備よりもいいものにしたが、結局練習で忙しい日々を過ごすすみれはあまり使っていない。
冷蔵庫を開けて数秒中身を見つめる。
献立とスケジュールを頭の中で構築し、疲れたすみれのためにと鶏を使った料理にすることにした。
数十分後、あとは最後の仕上げだけとなったところで時計は8時20分前を指していた。
鍋に入った料理を見て、食べるすみれの姿を想像する。喜んでくれるかなと愛する妻を想い、ふっと笑う。
手を洗ってエプロンを脱ぎ財布とスマホを持つと、蓮は玄関へ向かった。
壁にかかった車のキーを手に取る。
とその時、片手に持っていたスマホがブーッと言って振動した。
ドアノブにかけかけていた手を引っ込めてスマホを見る。
送信主はすみれ。
『すみません、今日はまだ終われそうにありません。夕飯は先に食べていてください』
スマホのロック画面には可愛らしい飛び切りの笑顔をこちらに向けるすみれを背景に、そう綴られていた。
キーをフックに戻し、リビングに帰る。
ドカッとソファに座ってスマホの画面を眺め呟く。
「少し頑張りすぎなんじゃないかなぁ……」
『分かった。応援してるよ』
短く一言、それと猫のスタンプを送った。
本当に一瞬だけ練習から抜けてきたのだろう。既読が付くことはなくもちろん返信も無かった。
1分ほど何かを期待して変化のないスマホ画面をただ見つめて過ごした。
いつもと何かが違うすみれからのメッセージに少し違和感を覚えつつ、ぼーっとしている訳にもいかないとソファを立ち上がる。
キッチンに置いたままだった、料理の入った鍋やらを冷蔵庫にしまい、風呂場へ向かう。
チラッと湯が溜まったのを確認して、少しや間悩む。
先に風呂に入ってしまうべきか。洗濯機を早く回したい。
とそこまで考え、結局蓮は入浴を断念した。すみれは汗だくになって帰ってくるだろうし、そもそも入浴中に迎えの連絡が来ては困る。
風呂の扉を閉め、洗濯の準備をする。
新婚の時は顔を真っ赤にしながらしていた下着類の洗濯も、今やそれが日常となっている。
この下着エロいな、今度着させてやろう。
そんなしょうもない妄想を膨らませつつ、手馴れた様子で洗濯機を回し始めた。
ルブランに住んでいた頃はわざわざ外に出てしかも長い時間を奪われていたのになんて楽なんだろう。
スタートボタンを押して洗面所を出る。
それから数十分後。
スマホを開きいつ迎えに行けばいいかと連絡を取ろうとしたところで、玄関の方でガチャっと言う音がした。
続いて「ただいまぁー」という覇気の無い声が聞こえて、蓮は小走りで玄関へ向かった。
バッと玄関に出ると、大きく重そうなバッグをギリギリ地に着いていないかという位置でだらんと持ち、疲れきった様子で佇むすみれがいた。
もはや靴を脱いで家に入るのも面倒くさいと言った様子だ。
ふっと顔を上げ蓮を見ると、誤魔化すようにへらっと笑った。
「蓮くん……、遅くなって、すみません」
「おかえり。先お風呂入るよね」
すみれの笑顔に答えるように微笑んでそう言った。
重そうなバッグを受け取ると、すみれはゆっくりと靴を脱いで家に上がった。
顔を俯かせたまま、すみれが固まる。そして顔を見せないまま、静かに震えた声で言った。
「お風呂、の前に…………ちょっとだけ、ぎゅってしてくれませんか……?」
「うん。おいで」
すみれの言葉を聞き、蓮は即答してすみれを迎えるために両手を開いた。
ゆっくりと歩を進め、開かれた蓮の胸の中に収まる。
少し強くぎゅっと抱きしめると、すみれの体が思ったよりも小さくて細いことを思い出した。
確かに新体操で培った筋肉は美しく付いていたが、それでもやはり自分と比べてすぐに折れてしまいそうな華奢な体をしている。
蓮が想像する以上に大きなものを、この小さな体ですみれは背負っている。
せめてそれの一部分でも、自分が担ってすみれを支えなくては。
すみれを抱きしめながら蓮は改めてそう決意した。
数分間そうしたままでいると、すみれが蓮から離れ笑って言った。
「少し、元気が出ました。ありがとう、蓮くん」
その笑顔に惹かれて、蓮は再びすみれを抱きしめた。
◇◆◇
「お風呂上がりました。洗濯、できなくてごめんなさい」
髪をおろし眼鏡をかけ、蓮とお揃いのパジャマを着たすみれが洗面所から出てきた。まだ身体からは湯気が微かに立ち上り、顔も少し赤く染まっている。
「気にしなくていいよ。どうせ俺は時間あるし」
蓮の言葉を聞いて、すみれは申し訳なさそうな複雑な表情を浮かべた。
「ご飯すぐ食べられるよ」
食卓に最後の品を配膳していた蓮が言う。
蓮の作った健康的な料理が2人分、食卓に並んでいる。
どれも蓮がすみれの体調を踏まえ、最高のコンディションで新体操をできるようにと考え尽くされたメニューだ。
予想していなかったいつもと同じ光景にすみれが目を見張って言う。
「えっ? 蓮くんまだ食べてないんですか!? 先に食べてていいって言ったのに」
「すみれと一緒に、食べたかったから」
ニコッと笑ってそう言うと、自分の前の席にすみれを促す。
「嬉しい……ですけど…………。少し、申し訳ないです」
そう言って腰かけ、いただきますと手を合わせてすみれは目の前の料理を食べ始めた。
いつもは楽しく会話が弾む夕食は、とても静かなものだった。
すみれは自分から話を出すことはなく、蓮に話しかけられてもどこか上の空な様子だった。
数十分その様子が続いて、とうとうすみれが食べ終わった。
「ご馳走様でした、今日も美味しかったです。あの、ご飯食べ終わったら話したいことがあるんですけど……大丈夫ですか?」
「え? あぁ、もちろん、いいよ」
◇◆◇
「それで、話って?」
夕飯の後片付けを終え、すみれと並んでソファに座っていた蓮はそう切り出した。
迷っているような感情の読み取りづらい顔をしてからすみれは静かに話し始めた。
結婚してからすみれの練習は世界に向けてより厳しいものとなり、それに比例するように蓮への負担は大きくなっていった。
安定した生活を送るための収入源、自分たちが住む家の仕事、すみれの身体的、精神的なサポート。
全てを負う蓮に、すみれは酷く負い目を感じていた。
結婚する前、同棲していた頃から蓮はすみれのことを支えてきたが、結婚して夫婦になって、その罪悪感はさらに大きなものになった。
「私が、新体操をやっているせいで、蓮くんには迷惑しかけてないで…………。まともな休日も無いし、旅行にも行けないし、新婚旅行も、まだですし、みんなで集まる時も、私だけじゃなくて蓮くんも行けなかったり、私のせいで…………蓮くんの色んなことが制限されてしまって、それが申し訳なくて……辛くて…………どうしたらいいか、分かんなくて…………」
ポツポツと、両の眼にうっすらと涙を浮かべながら、少しばかり震えた声ですみれは自分の思いを告げた。
蓮はそれを静かに聞いていた。
「こんなことなら私……新体操なんか…………」
「すみれ」
言いかけた言葉を、蓮が止める。
名前を呼ばれすみれはふっと隣を向いた。
「すみれ、そんなこと、嘘でも言っちゃダメだ」
少し緊張感のある声色で、窘めるように言う。
「でも、ごめん。すみれにそこまで思わせちゃってるのに、俺全然気づかなかった。ほんとにごめん」
「そんな! 謝らないでください!!」
「すみれ、俺はさ、今の生活に凄く満足してる。もちろん新婚だし、もっとすみれといる時間が長くなったらなとは思うけど」
すみれが一瞬だけ表情を変え、また申し訳なさそうに俯く。
「俺は全然無理してないし、すみれを支えられるならそれが楽しい」
「でもっ!」
急いで反論しようとするすみれを無視して、蓮がさらに続けた。
「すみれは頑張り屋だから。なんでも自分で頑張ろうとしちゃう。人は1人じゃ生きていけない。支え合っていこう」
「夫婦なんだから」
幼い子供を宥めるように、落ち着いた声で笑って言った。
「ごめんなさい……」
「それも禁止。気づいてる? 今日ずっと謝ってばっかだよ。そんな顔してたら可愛い顔が台無しだ」
右手を伸ばし、頬に触れる。
すみれの顔が朱色に染まり再び顔を俯かせる。
「おいで、すみれ」
そう言って蓮はすみれを受け止める体勢を取った。
ポスンと蓮の胸に頭を預け、背中にしっかりと腕を回す。
それに呼応するようにすみれを包み込んで、慰めるようにそっと頭を撫でた。
「もしどうしても辛いなら遠慮なく言って。やってほしい事ならいっぱいあるから」
「はい…………っ!」
すみれの気持ちが落ち着くまでの長い間、蓮は見えない何かからずっとすみれを護り続け、そして2人はそのまま静かに眠りに着いたのだった。