Muv-Luv change the Alternative ~advent of crimson glint~   作:傍観者改め、介入者

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あけましておめでとうございます。

今年度もよろしくお願いします。

アニメも終わり、最後の最後に第一話以来出番のなかったあの少女。

頼むから死なせないでほしい。最良で宗像さんらと一緒にあそこで離脱してくれ

間違っても最後まで行ってほしくないですねぇ・・・・・

まさか佐渡島でとかやめろよ・・・・・ほんとやめてくださいおねがいします。

というかクーデター篇で命の恩人と殺し合いしていたとか、知らないでしょうねぇ

知っていたらまあ、「誰だよこの脚本書いた奴!!!」とか怒鳴りそうです。



第十五話 届く未来と・・・・

ガルム中隊の参戦で、大阪、京都の戦線が押し上げられた。しかしそれも一時的なものになってしまうのも時間の問題だ。

 

彼ら自身が痛感している展開範囲と、遊撃範囲が限定されてしまうこと、さらにいえば、遊撃と兼任で帝都防衛の任を背負っていることがあげられる。

 

そうでなくても、第二防衛ラインは食い破られ、最終防衛ライン、絶対防衛ラインも丸裸同然の今、いつ帝都が落ちても不思議ではなく、彼らの任務は過酷を極めている。

 

 

京都が戦線に入ったことで、もはや予断の許さない状況と化しており、御所周りも慌ただしくなっていた。

 

京都御所は程なくして放棄されるだろう。そして将軍殿下もまた、京都を離れなければならない。

 

すでに、煌武院悠陽を含めた非戦闘員は帝都を離脱。病床となりがちな政威大将軍もその前に離脱しており、それを守護したのは斯衛軍の師団。

 

彼らの上層部も理解しているのだ。連邦軍の力を以てしても帝都は守り切れないと。自分たちは戦略を誤ってしまったと。

 

それは内閣閣僚も悟り始めた残酷な事実ではあるが、まだ諦めていない者がいた。

 

 

「—————くそっ、連邦軍の初動が遅すぎたんだ。もっと早く派兵が決まっていれば。」

 

少なくとも、広島辺りで止められた。第七艦隊の配置が整えば、朝鮮半島にだって逆襲できた。ウェイブは悔しさにこぶしを握り締めていた。

 

彼は商人でありながら、ロンド・ミナ・サハクの師事を受け、フェアネス・ツヴァイクレ氏との交流を深めた彼は、ある意味でリオンを超える影響力を有していた。

 

彼女らから託された、アストレイの後継。ゴールドフレーム・フルバーニアン。機体整備は既に終わっており、彼が乗り込むだけであった。

 

だが彼は、その事実に悩みを抱えていた。結果として多くの兵士、民間人を救うことが出来たが、届かなかった現実も思い知らされた。ここから兵士一人分の働きをしたところで、なにを変えることができるのか。

 

しかし、判断が遅すぎた全てに憂鬱な感情を抱く彼を、支える女性がいた。

 

「—————それでも貴方が、貴方方が救った命があります。それを私は誇りましょう。その行いを誇りましょう。だから、その無念を背負うのであれば、私にも分けてください」

 

恭子は悔しさをにじませるウェイブの手をやさしく握りしめる。

 

「—————これでもう、俺も前線に出なければならなくなった。ガルム中隊は大阪で今も逃げ遅れた部隊の撤退を支援している。そして、京都でもだ」

 

二方面に部隊を分け、前面にディルムッドが展開。京都ではジグルドが作戦行動中だ。

 

「あの野郎。無茶しやがって—————今行くぞ、ジグルド、ディルムッド。恭子さん?」

 

 

「—————ええ、わかりました。機体受領、確かに承りました」

誰かと通信をしていたらしい。彼女がする相手と、あの言葉遣いから察するに、目上の人間だろうか。

 

「—————どうかしたのかい、まさか高位の者の出陣はだめとか、そういうものかい?」

 

「斯衛軍の機体を動かすなと、殿下はおっしゃられたの。ですが、私の知り合いが抜け道を用意してくださったのです」

 

「—————帝都だけではありません。本当は、大阪にも救援に向かいたかったのですが、それは叶わぬ話。されど、貴方の信頼に値する者がいれば、託すことが出来ます」

 

こそばゆい気持ちになるウェイブ。ジグルドのことを信じてもらえるのはいいが、ここまで信用されたら、何としてもお力になりたい。

 

「—————少し時間がかかりますが、行きましょう。私の新たな機体が、そこにあるというそうですから」

 

そしてウェイブは、彼女の機体を見て確信したのだ。この帝国ならば、この世界はこちらのモビルスーツを製造できる基礎技術力を有していると。

 

 

 

一方、四国にて防衛に成功した帝国本土防衛軍だったが、足止めを食らった状況だった。

 

キラを九州に残し、四国へと侵入するBETA群を叩く。そうすることで、近畿地方への挟撃を防ぐ策がたてられたのだ。当然、アスランは四国に反撃の余力を与える為、移動することとなった。

 

「くそっ、キラがいないと火力が足りないか!」

 

圧倒的な近接格闘能力で寄るものをすべて叩き切るアスランだったが、対人能力で光る格闘能力も、軍団の前では非効率でしかない。

 

「もう少し火力を求めるべきだったか、こいつにも」

 

戯言を吐きながら、これで10万ほどのBETAを切り捨てた事になるアスラン。

 

「ザラ大佐! ここは我らに! 丸一日戦闘を行っているではありませんか!」

 

「案ずるな。キラほど負担は大きくない」

 

すっかり帝国軍と仲良くなっていたアスラン。圧倒的な実力で味方を救い続け、命を掬い続ける。

 

キラと同じく彼は救世主扱いだった。

 

「くそっ、やはり奴らの物量は馬鹿にならないな。反撃しようにも、これでは時間がかかり過ぎてしまうっ」

 

旅団規模のBETAをどうにか殲滅出来たアスランたちではあったが、挟撃を成功させるためには時間が足りない。

 

前面にガルム中隊が展開しているとはいえ、彼らは総勢16機。しかも、中隊を二つに分けており、一部が救出任務に従事している。

 

いつ絶対防衛ラインが瓦解するか分からない。

 

 

————馬鹿な真似はするなよ、ディルムッド、みんな!

 

逸る気持ちを抑えながら、アスランは四国を守護し続けるのだった。

 

 

そして、ブラヴォー5らに伴われ、輸送艦に収容された甲斐志摩子は意識を取り戻した。

 

「—————なんで、私—————あの時————」

思わず体を抱きしめてしまった志摩子。確かにあの時レーザー照射を受けたはずなのに、生きている。そして知らない医務室に寝かしつけられていた。

 

「あれ? なんで、なんで涙が————止まらないよぉぉ……」

 

極限状態から解放され、薬物で思考制御されていた状態から解き放たれた彼女は、感情を抑えつけることが出来なかった。

 

戦場で殺されかけた恐怖、結局唯依の足手まといだったかもしれない自分への失望。ぐちゃぐちゃになった心を壊さないことが精いっぱいだった。

 

「—————私は、私、は——————」

 

仲間はどうなったのだろうか、今も戦っているのだろうか、それとも————

 

 

「目が覚めたかな、お嬢ちゃん」

 

そこには初老の白衣の男性がいたのだ。どうやら手当てをしてくれたのは彼らしい。

 

「ああ、手当は看護婦がしたのでな。それほど重傷を負っていたわけではないし、服装が服装だ。席を外させてもらったよ」

 

柔和な笑みで微笑んだ老人。その笑みだけで涙が止まらない。自分は助かったのだと、自分だけが一足先に助かってしまったのだと。

 

「—————私を、助けてくれた人は—————」

 

「ああ、ジグルド君か。君の機体に弾頭を当てて済まないと言っていたよ」

 

 

唯依と戦術機談議で熱くなるジグルド・F・アスハ。その人が自分の命運を救ってくれた。まるで白馬の王子様の様だった。

 

颯爽と戦場に現れ、きっと誰かを救うために戦っているのだろう。

 

「——————助けてくださって、ありがとう、ございます」

 

志摩子に出来ることは、もはや祈るだけだった。まだ戦場にいる仲間の安否を祈るだけ。

 

「ドクターハサン、急患です!」

 

「わかった、すぐに向かおう」

 

老人—————ハサンと呼ばれた男性は病室を後にし、自分ではない誰かの命を救いに行く。衛士だけが、軍人だけが戦っているわけではないことを、あらためて思い知る志摩子。

 

————唯依、みんな。どうか無事で—————

 

 

その頃、志摩子の祈りは届かず、嵐山中隊はデータリンクの制限という致命的な条件によって窮地に陥っていた。

 

そう、断続的に流れてくるBETA群は、広範囲に浸透するように侵攻を強めていた。九州、四国で打ち漏らした、悪く言えば素通りした健在な個体軍団が迫るのだ。

 

 

そして、ブラヴォー小隊はこの戦域を離脱し、最前線の空へと飛び去って行った。それはいい。優先されるのは最前線の最激戦地域である。

 

だが、その選択は実戦経験の浅い彼女らに致命的な隙を生み出すことになった。

 

 

「なぜだ!? 愛宕はまだ生きていたはず!? なっ!?」

 

嵐山の防衛が完了した際、残る愛宕の撤退を支援するために急行したのだが、もはや手遅れの状態だった。

 

砲撃陣地は化け物の巣窟となり、生き残っているものは存在しない廃墟だったのだ。

 

 

原因は、戦車級が山脈を利用し、浸透し過ぎてしまったためだ。突撃級などとは違い、小回りの利く彼らはこの山地を利用し、愛宕砲撃陣地を強襲。乱戦状態となった戦場に遅れてきた突撃級の襲来。

 

これはガルム中隊が光線属種掃討に固執するあまり、その他の中・小型種を軽視してしまったが故に起きた連邦軍のミスだった。

 

ジグルドたちは真面目にBETAを分析していた。だが、帝国の、この星の戦術を理解しきれていなかったのだ。

 

光線属種の脅威は確かに存在する。しかし、軍人を最も殺したのは戦車級を筆頭とした、中小型種による圧倒的な物量。彼らの立場であれば、近づかなければ取るに足らない相手。

 

上空での制空権を確保できる自分たちならば、その脅威に怯える必要性すらない。

 

だが、この星の軍人にとって空を飛ぶことはタブーとされ、彼らの戦術に適合しない。

 

 

 

結果として絶望的な電撃作戦の前に、砲撃陣地は崩壊してしまっていた。

 

さらに、斑鳩少佐からのデータリンクの情報提供を受け取り、中国地方は既に帝国軍が完全に駆逐されており、近畿地方では神戸の防衛網は既に消滅。明石の防衛拠点とは連絡がつかない状況だった。同様に丹波、宮津の拠点も通信途絶、現在に至るまで情報は更新されていない。

 

文字通り、帝都を守る第一防衛線は、完全にその機能を消失したといって過言ではない。

 

 

さらに悪いことに、中国地方山陰方面より散発的に上陸を繰り返すBETA群を迎撃する存在がいないことで、東進を続けるBETA群の規模が倍増。

 

なお、日本海に展開していた帝国海軍は、光線属種との交戦で少なくない被害を受け撤退。戦艦2隻が中破するなど、無視できない損耗を受けていた。

 

 

またキラ、アスランと交戦しない個体種の大量の侵攻により、九州、四国よりも近畿が陥落寸前という前代未聞な状況となっていたことを知る。

 

そして先ほど大阪は、帝国陸軍、国連軍による組織的な抵抗は完全に沈黙。ディルムッド率いるアルファ小隊が何とか侵攻を食い止めている状態だった。つまり、ディルムッドはキラとアスランと同様に身動きが取れない状況となった。

 

苦肉の策として母艦アーガマは光線属種の射程範囲内に進軍し、ただでさえ少ない8機の小隊各機をローテで回す異常事態。物資が途切れた瞬間、連邦軍としては撤退するしかない。

 

不幸中の幸いにして、紀伊水道に接する和歌山、奈良等の近畿南部への侵攻は阻止されており、ガルム中隊所属のアルファ小隊の活躍がなければ、南部と北部からの挟撃の憂き目に帝都は見舞われていただろう。

 

山陰からの上陸の影響は大阪だけにとどまらない。近畿方面北部より襲来するBETA群は舞鶴を瞬く間に飲み込み、篠山の防衛ラインを食い破ったのだ。

 

 

 

第二帝都、東京では滝元官房長官が連邦軍の参戦でも帝都陥落は免れないのではないかと心中で諦念が支配しつつあった。

 

「———————状況は混沌としている。九州、四国の間引きがなければ、近畿は壊滅状態となるだろう。彼らを動かすことは出来ん—————」

 

現状、ガルム中隊の参戦で亀岡、大阪の陥落は免れているが、大阪方面は司令部が機能していない。在日米軍も撤退しており、第二帝都から発進した第七艦隊主力が間に合うかどうか。

 

 

現在ジグルドたちは、それ以外の最激戦区、高槻、八幡方面へと急行しているのだ。京都陥落待ったなしの最悪の状況下で、彼らは最前線へと飛び込んでいる。ここで時間を消費している場合ではなかったのだ。

 

そして、再出撃となったブラヴォー5らも八幡を目指している。母艦であるミカエルも京都に進駐し、艦砲射撃などで漸減行動に移っているが、効果は薄い。

 

 

八幡方面の絶対防衛ラインを守るには最低限砲撃支援が必要となるが、その砲撃支援が間延びしたことで、守備隊も少なくない被害が出ている。

 

 

 

 

話を戻し、元々嵐山基地と愛宕の砲撃陣地は、それを支援する重要な拠点であった。

 

 

だが、嵐山基地は少なくない損害を出し、愛宕砲撃陣地は救援が間に合わず陥落。

 

 

兵士級、闘士級の強襲により基地機能は半数が消失。嵐山は後に基地放棄と爆破が決定される。

 

「どうなってるんだよ!! 連邦軍の人たちがこの一帯は殲滅したんじゃないのかよ!」

 

「まって安芸! ファング3、山城さん!! 光線属種の存在は!? 先ほどから姿が見えないわ!」

 

連邦軍人たちの愚痴を言う石見だが、唯依が宥める。あの人たちがそんなことをするはずがないと。

 

「この付近にはいないみたいですわ、まさか彼ら、レーザーだけを狙って…‥」

 

 

その選択は実に合理的だ。飛翔が可能であれば、戦術の幅が広がる。しかし奴らの物量は侮れない。下手に飛翔して全滅となる可能性もある。

 

「無駄口を叩くな、新米ども!! 戦闘中に考え事か!! 死ぬぞッ!!」

 

 

「「「りょ、了解!!」」」

 

 

小型種の戦車級を射殺しながら、石見安芸少尉を含む三人は返事をする。如月中隊長も言及こそしていないが、先ほどから支援砲撃だけで一方的にBETAがやられている。

 

細々とだが、どこかの艦隊が放っているのか、それともまだ付近で生存している部隊があるのか。

 

——————基本通りの動きをしていれば、絶対に大丈夫なんだ!!

 

弟は、末代までの恥と言われた。家族に強く、刻まれるようにそう言われた。

 

——————味方誤射による戦死。無駄に被害を広げた————ッ

 

弟は、戸籍からも抹消された。家の恥、存在することすら許されなくなった。

 

—————死の8分を乗り越えて、絶対に‥‥‥絶対に‥‥‥っ?

 

視野が、彼女の未来が、彼女にとって無視できない雑念によって狭まっていく。基本通りの動きに固執し、非常時の動きが必要となった時———————

 

「——————あっ」

 

彼女が最後に見たのは、死骸と思われていた要撃級が動き始め、片腕を消失した状態で襲い掛かってくる光景だった。

 

 

 

 

もうここには、英雄はいない

 

 

 

 

 

 

「安芸ィィィィィィ!!!!!」

能登少尉が絶叫する。目の前で友人が、仲間が、管制ユニットごと押しつぶされる光景を見て、平静でいられるはずがなかった。

 

無論唯依も、初めて出てしまった仲間の死の光景に、ショックを受けていた。だが、薬物投与がその動揺を許さない。仲間の死が薄っぺらく思えてしまう自分の感情を、主観的に感じ取ることも出来ずに、あるがままの事実として受け入れるしかなかった。

 

受け入れることを強いられていた。

 

機体から流れ出る赤い液体。それだけで、彼女の未来がこの瞬間に終わったことを明確に、鮮明に、彼女らにつきつけるのだ。

 

「安芸っ、 そんな…‥ッ」

 

「援護しなきゃ、援護しないとっ!! 安芸ッ、安芸ッ!!」

 

 

「バイタルを確認しろ、能登少尉!! 奴はもう何も言わん! ここも撤退する! これ以上ここを守護する理由はない」

 

彼らがいなくなった途端に2名が死んだ。要撃級の強襲を何とか退けたものの、彼女らには多くの薬物投与を強いてしまった。

 

しかも、殺したと思われた個体からの逆襲というあまりにもあっけいない最期。ファング3がすぐに仇をとったが、やはり経験不足は否めない。

 

————何と情けない。彼らがいないだけで部下を死なせてしまった。

 

 

 

————後は任せる。何とか頑張ってくれ、必ず帝都は死守する!

 

 

彼らのエールを無駄にしてしまった。今はただ彼女らとともに生き残る、それだけが未来なのだ。

 

 

次々とマーカーロストする友軍機。訓練兵たちの命が散っていく。弾薬にはまだ余裕があるが、戦術薬物の効力も使えば使うほど短くなる。

 

 

そして嵐山中隊は残存機6となっており、一名は連邦軍に保護されている。まだ学徒兵にさえ満たない見習い兵士にしてはよくやっているといっていい。

 

 

その嵐山基地撤退の支援へと急行する最中、それは起きる。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

何かが機体に引っ掛かり、バランスを失った彼女は致命的損傷を負うことになる。

 

「な、何が—————」

 

森林に潜んでいた戦車級に取りつかれてしまったのだ。機体損傷した状況下での生存は不可能。まさか彼女らよりも先に行くことになるとは考えもしなかった。

 

「隊長ッ!! 如月隊長ッ!!」

 

「そんなっ、隊長がッ…‥」

 

第一小隊は無事に突破出来たようだった。ファング4、ファング9から隊長を呼ぶ悲痛な声が聞こえる。レーザーによる撃墜の危険性も考慮される状況、その被害がなかったことは、彼女ら二人にとっては幸いだった。

 

彼女らがついに知らないことではあるが、周辺のレーザー属種はブラヴォー小隊の活躍によってほぼ狩り尽くされており、高度制限についてはそれほど考える必要はなかったのだ。

 

結果的に、如月大尉は既定高度を維持したがゆえに、森林に潜む戦車級の接触範囲に入ってしまい、高度を維持できなかった二人は助かったのだ。

 

訓練通りの規定、動きだけでは生き残れない。訓練上りの彼女らにとって、それは惨い戦場だった。

 

「早く行けっ!! 八幡の最終防衛ラインを目指せ!!」

 

「りょ、了解っ!!」

 

戦車級に取りつかれ、脱出装置も機能しない。否、脱出装置が機能したとしても、この戦域ではもはやどうにもならない。

 

——————進退窮まったか

 

情けないことだ。高槻、大阪、八幡では彼らは戦い続けており、壮絶な戦域となっているだろう。こんな場所で、彼らと共闘できずに果てるのは無念であり、最後まで皇帝陛下、将軍殿下に忠義を尽くせない不忠を悔やむ。

 

第一小隊の生き残りは、ブラヴォー小隊が切り開いた空によって、八幡へと無事にたどり着くだろう。第三小隊も、第二小隊もよく頑張っている。

 

彼女らも程なくしてここを通るだろう。

 

——————ならばせめて、部下どもの露払いをさせてもらうまで————ッ

 

 

そして、如月中尉は自爆装置を押し———————

 

周囲に集まっていたBETAの群れを道連れにしながら、壮絶な最期を彩ったのだった。

 

「あぁ……ああぁ……」

 

圧力注射による薬物投与でも誤魔化しきれない中隊長の最後。しかし、中隊長の最後の行動で、周辺のBETA群は薙ぎ払われた。

 

————いろいろな人に恩を貰って、このまま死ぬわけにはいかないっ

 

 

————このまま死ねない—————

 

 

唯依の心を支配するのは、ただそれだけだった。もはや永遠に恩を返す機会が失われた人たちに恩を返す方法は生きること。生きて信念を貫くこと。

 

もうそうすることでしか、恩をお返しすることができない。そして、他の誰かにその恩を捧げる必要があるのだ。

 

「——————ここもいつ増援が来るか分からない。行こう」

 

残ったのは、先行した第一小隊の2名、第二小隊は自分と能登少尉、離脱した志摩子を除けば2名、第三小隊は上総だけ。初陣にしてはなかなか粘っていると言えるのは、客観的な事実であるが、それは感情論を排した冷徹な計算と言える。

 

深刻なのは隊長機を失い、経験の浅い篁唯依が先任であること。中隊規模の戦術機部隊が今や約半数となっていることだ。

 

先ほどデータリンクからみるに、多方面から再度浸透したbeta群によって嵐山は包囲されつつあるのだ。この場にいてはまず生き残れない。

 

しかし、この包囲された状況を座して待つわけにもいかない。

 

彼女らは生きる未来を探るべく、自力での脱出方法を思案するのだった。

 

 

 

 

その数刻後、京都周辺の防衛ラインにて。

 

 

「ここで防衛ラインを!? ここは八幡、ということはここが絶対防衛ラインの一角————」

 

志摩子を収容したブラヴォー5、7、8は再度出撃をして京都の戦場に戻ってきた。ここで大規模な戦闘が行われていることを察知し、補給を終えてから急行したのだ。

 

 

ここを抜かれた場合、帝都は火の海になることが確定している。ここも死守せねばならない。

 

 

第二帝都を出発した第七艦隊主力はもうすぐ紀伊水道を通過。あと数時間後には砲撃支援を行える状態となるだろう。希望はある。ここで粘れば援軍は来る。

 

「貴様らは、連邦軍の」

 

そこには、ウルフ中隊と呼ばれる帝国陸軍の面々が防衛行動中であった。すでに御所周りの撤退は完了しており、見慣れない機体と斯衛軍の新型が暴れまわったとのこと。

 

 

最終防衛ラインの死守が求められ、彼らはここで陣を張っていたのだ。

 

「ここが帝都絶対防衛ラインと聞き及んでいます。他のガルム中隊が救援に向かっている中、ここを落とされるわけにはいきません」

 

「勝手ながら、助太刀いたします」

 

ブラヴォー5、7,8が共闘を提案する。それに対し、ウルフ中隊は—————

 

「…‥国連とアメ公に頼るよりはましか。共闘を受け入れよう。貴様らには、俺たちの生徒を助けてもらった恩があるからな」

ウルフ中隊の隊長、真田大尉は荒島や守備隊であった彼女らの教官に相当する人物であった。意外な縁に、ガルムの面々は驚く。

 

ウルフ中隊は帝都御所の守りを当初担っていたが、輸送艦による退避が完了し、各地の劣勢続きの戦場を渡り歩き、補給を受けつつも脱落者を出さずに戦闘継続していたのだ。

 

その途中、彼女らと出会い、エル・バートレット少尉はその最新の近況を聞くことが出来た。

 

「嵐山の!? では、無事にここまでたどり着けたのですね!?」

ブラヴォー5は少女の仲間らがまだ生き残っていることに安堵する。ジグルドとともに救った命がここまで来た。

 

 

 

その後を知りたいと思うのは自然だろう。だが、次の言葉で彼女らは愕然となる。

 

 

 

「結構やられていたな。残っていたのは5機ほどだ————新兵とはいえ、あそこまで生き残ってくれた。無念ではあるがな」

 

 

「そ、そんな—————」

 

ブラヴォー5、エル・バートレットは悲しみを隠せない。助けたと思った命はすでに失われていた。このことは戦闘終了後に隊長に言うべきだろうと判断した。

 

18人中すでに12名がこの世にいないのだ。拾った命があったとしても、この戦場はこれほどまでに厳しい。

 

 

 

——————この地獄で、つい貴方を思い浮かべてしまう私は、まだまだ未熟なのでしょうね

 

 

エル・バートレットもまた、約20年前の大戦で救われる側だった。命運が消えかけた瞬間、白い機体と赤い機体に救われたのだ。

 

そう。あれは赤い彗星の名が一躍有名になった一戦。

 

低軌道戦線という名の戦いだった。彼女はその時、一隻のシャトルの中にいた。

 

漆黒の空に煌く、赤い彗星。宇宙を駆ける原点にして最強無双。リオン・フラガ。

 

 

自分を救ってくれたリオン・フラガには恩を返すことが出来ず、その片割れであるキラ・ヤマトに恩を返したいと軍門をたたいた。

 

そして、今日に至る。自分たちも出来たつもりだった他の者に恩を与える行為。しかし、救えなかった事実がのしかかる。

 

「全部救えるなどと思うなよ! 貴様らの介入で、犠牲者は格段に減っている。神様になった気分で気落ちするな。そこまで帝国は落ちぶれちゃいない!」

 

隊長格である真田大尉はエル・バートレットの沈痛な面持ちを理解し、乱暴な物言いだが気にするなと気遣う。

 

「————ですが、このエリアは死守しなければなりません。それが隊長たちの命令であり、この国の未来につながると信じていますので」

 

「ふっ、未来とは、大きく出たな、連邦軍」

 

ウルフ中隊と共闘することになったエル・バートレット少尉とブラヴォー7、ブラヴォー8。今度こそ目の前の命を救うと決意する。それに、隊長たちももうすぐここに来る。

 

—————だが、悪くないな

 

真田は思う。こんな頼もしい援軍でありながら、傲慢さを見せない中隊。連邦軍は本当に国連とは違うのだと悟るのだ。

 

————そうだな。私も死ぬわけにはいかないか

 

 

 

一方、彼女らを全員救うことが出来なかったエルたちではあったが、今生きている命を優先しようと切り替える。ここで止まればだれかが死ぬ。

 

——————私の今を繋いでくれたあの人の為にも、今度は私が、誰かの未来を繋げるんです!!

 

それは避ける必要があった。自分の今を守ってくれた人がいるからだ。

 

「ブラヴォー5より、ブラヴォー7,8! ウルフ中隊とともに戦線を維持する! 第二帝都から急行する第七艦隊が来るまでの時間を稼ぐッ! 紀伊水道から北上する第七艦隊の現着まで耐えるのよ!」

 

「了解した!」

 

「ああ。ここで死ぬつもりはない。一網打尽にしてやる!!」

 

今も京都で尽力するウェイブの助けになるのだと、三人は意気込んでいた。

 

 

 

 




彼女らの死亡を書くことに、強い抵抗感を覚えました。

原作をプレイするほど心を抉られる。2週目以降、序盤をプレイすると猶更です。

この戦いで甲斐志摩子は生存しましたが、本当に意識改革しないと次で死にます。このままでは。

なお、没展開として

・最初の邂逅で、彼の目前で志摩子がレーザーに撃墜される。

がありました。

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