天哉side
「緑谷くんに教えて貰った住所が正しければここか」
僕と兄さん、そして母さんは今、昨日緑谷くんから教えて貰ったGrünes Tal先生がいると言われている医院(?)の前に来ているのだが、そこには今にも倒壊しそうな廃屋があるだけだった。
「本当にここなの?」
「とにかく入ってみよう」
母さんの疑問も最もだが、今日手術をしてもらう兄さんの言葉通り中に入るとそこには既に手術着に着替えたお医者様がいた。
僕が声をかけようとすると。
「やあ、待ってたよ」
「緑谷くん!?。何でここに!!」
「何でって、ここは僕が経営する医院だからだけど?」
……。
驚きのあまりに意識が一瞬飛んでしまった。
僕はここがGrünes Tal医師が経営する病院と紹介された筈だ。
なのに緑谷くんが経営!?。
どういうことか頭を悩ませていると隣で兄さんが笑いだしていた。
「良いか、天哉。Grünes Talのはドイツ語で“緑の谷”って意味がある」
それを聞いて僕の頭の中で理解した。
詰まる所Grünes Tal医師は緑谷くんということだ。
「じゃあ、早いところ
そう言うと緑谷くんは兄さんを連れて手術室に入っていった。
それと同時に手術中と書かれた蛍光灯が点灯する。
「天哉。あの友達に任せて大丈夫だったの?」
母さんが不安そうな顔をして話しかけてきた。
僕も緑谷くんの事を詳しく知らなければ母さんと同じように思っていただろう。
「大丈夫。緑谷くんなら」
そして5分もしない内に緑谷くんは手術室から出てきた。
「緑谷くん、兄さんは!」
僕が緑谷くんに聞くと親指を立てて。
「大丈夫、手術は成功だよ。明後日から現場復帰できるよ」
兄さんを見ると麻酔で眠っているが、足の傷などは完全に治っていた。
「緑谷くん、治療費の事だが」
僕がそう言うと。
「それなら、3000万円ね」
その言葉に母さんは驚いていたが…。
「払ってみせるさ。一生かかっても」
すると緑谷くんは笑うと。
「それを聞きたかった」
きっと緑谷くんは本当は3000万なんて要求するつもりはないのだろうな。
きっとそれに見合った活躍をしろとかそういうことだろう。
そして2日後の職場研修の日。
「行くぞ天哉、イヤ、Ⅱ世。着いてこい」
「すぐに追い付く。イヤ追い越してみせる」
僕は兄さんの元で職場研修をしていた。
一佳side
私たちは今、職場研修の為に念仏という名前のヒーローの事務所と思われる場所に来たのだけど。
「どうみても寺だよね」
そこに在ったのは寺だった。
私たちが呆然としていると門がゆっくりと開き、背丈だけなら爆豪よりも背の高い紫色の袈裟を着た男性が立っていた。
「雄英高校1年B組の皆さんですね。お待ちしておりました。こちらへ」
するとその男性が石段を登り始めたので私たちも後を追って登り始める。
私は格闘技の経験があるからある程度は着いて行けるが他のクラスメートたちはもう既に何人かは息が切れている。
「どうしました?。まだ半分も登っていませんよ」
そんな一言を言われ、黒色は何か思い付いたのかその男性の影に入ろうとしていた。
しかし失敗していた。
「無駄ですよ。この先に登るための山道には不思議な磁場が発生していましてね、異形型以外の個性を封じてしまうんですよ」
用はずるは出来ないって事ね。
そして登り初めて5時間後、私たちはようやく境内に辿り着けた。
するとそこには頭を丸め、袈裟を着た大勢の人たち(少なくとも200人はいる)が念仏を唱えていた。
「この人たち全員サイドキックなのか?」
泡瀬の言葉を否定するように男性は横に首を降り言葉を続ける。
「ここにいる殆どの者は死穢八斎會の組員だった者たちですよ。そして、本殿で座禅を組んでおられる方こそ、坊主ヒーロー、念仏さんです」
あの人が、プロヒーロー念仏。
座禅を組んで座っているだけなのに、立っていられない程の威圧感を私は感じていた。