優雅side
僕は今、緑谷くんにおすすめしてもらったヒーローの事務所の前に来ている。
緑谷くんの話だとここのヒーローは僕と似た“個性”と経歴の持ち主らしい。
別名、鋼の錬筋術師。
それに緑谷くんはきっと僕の秘密を知っている筈だ。
そうでなければ経歴なんて使わない筈だしね。
だけどここであの人に対抗する手段も身に付けておいた方が良いかな。
そして、中に入ると。
「待ってたわよ。本来なら坊やみたいな線の細い子は好みじゃないんだけど、特別よ」
そこにいたのは変な格好をしたオカマがいた。
緑谷くん、僕は本当にここで強くなれるん…だよね。
梅雨side
「それじゃ今日から1週間よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
私が研修先に選んだプロヒーローは何でも夫婦でやっているみたいね。
「それにしても不思議な縁もあったもんだ」
「そうね。まさか緑谷くんや爆豪くんの同級生が来てくれるなんてな」
しかも緑谷ちゃんや爆豪ちゃんと知り合いみたいね。
あの2人、どういう交遊関係があるのかしら?。
帰ったら聞いてみようかしら?
天哉side
「兄さん、足は大丈夫なの?」
「天哉は心配性だな。そんなに心配しなくても大丈夫だ。むしろ前より調子が良いくらいだ」
僕は今、兄さんと一緒にパトロールをしている。
ちなみに緑谷くんにはお目付け役も頼まれている。
足の感覚は戻したとはいえ、まだ全力で動かすとまた悪化するかも知れないから2から3割の出力に押さえてくれと言われた。
それとヒーローネームはインゲニウムⅡ世に変更した。
やっぱり僕にとっては最高のヒーローである兄さんの名を継ぎたかったらというのもある。
だが、兄さんはまだまだ現役で頑張っているので2代目ということでⅡ世の名を着けさせてもらった。
「行くぞ、天哉」
「待ってくれ兄さん」
ただ、今は兄さんと一緒に行動できる。
それが何よりの幸せだ。
今頃他の皆もきっと頑張っているのだろうな。
一佳side
「死穢、八斎會?」
私がここまで案内してくれた男性に話しかけると。
「簡単に説明するとヤクザですよ」
ヤクザ…。
確かヒーローという職業が登場してから少しずつ姿を消していった犯罪組織だ。
「じゃあ、この寺は刑務所か何かなのか?」
物間がそう言うと。
「否。ここにいる者たちは皆、死穢八斎會の若頭に脅迫されていたところを助け出された者たちです。その感謝の気持ちを忘れない為にここに来られたのです。ささ、念仏様にご挨拶を」
『よろしくお願いします』
私たちが挨拶をすると。
「あの世は年中無休なり。よくぞ来られた、雄英高校1年B組の生徒たちよ。それとこの寺は素足で行動するのが原則。制吒迦、履き物を預かってあげなさい」
すると私たちをここまで案内してくれた男性、制吒迦さんが岡持ちのような物を持ってきてくれたので私たちは靴と靴下を脱ぎ、預ける。
「履き物は研修が終わり、帰る際にお返ししますので。それでは部屋に案内しましょう」
そう言われ、物間が真っ先に本殿に足を踏み入れると。
「いっ!?」
物間が踏んだ床板が先程まではなんともなかった筈なのに尖った針のようになっていた。
「そうそう、言い忘れていましたが、この寺で感謝以外の雑念を感じると寺そのものが攻撃してくるのでご注意を」
初めに言ってほしかったけど、もしかしたら最初から言うつもりはなかったのかもしれない。
きっと痛みを知らなければ私たちの成長しないとの考えからだろう。
こんな時なら真っ先に飛び込むであろう鉄哲も飛び込まないのは参道で個性が使えなかったから本堂でもと思っているんだろうか。
何とか寺の攻撃に耐えながら通路を歩いていると不思議な仏像を見かけた。
だけど、その仏像に見覚えがあった。
「緑谷」
黒色の言う通り、それは緑谷に良く似ていた。
只、顔は阿修羅像のように3つあり、腕は千手観音のように背中にもたくさんの腕があり、そして足は4本足で尚且つ右足だけの物が前後左右に向くように着いて直立しいた。
「おや、緑谷さんをご存じで?」
私たちの先頭を歩いていた制吒迦さんが私たちに話しかけてきた。
「緑谷さんは我々にとって感謝するべき対象なのです。彼はこの寺を設計して建築してくださった、素晴らしい方なのです。勿論この寺に使われている木材も緑谷さんが発見し、品種改良したそうです。ちなみにこの仏像は念仏様の友人である“粘りヒーロー・粘着”様という方が作られたそうです」
緑谷って本当に何者なんだろう。
もうヒーローじゃなくても普通に稼げる職業にはつけると思ったのは、私だけじゃない筈だ。
「さあ、あなた方は此方の部屋で寝起きしてください。1人1部屋となっております」
「狭っ!!」
早速文句を言う物間だけど、本当に狭いと思った。
私たちが案内された部屋は窓無しの2畳間だったからだ。
「ここは寝るか、お経を唱える為だけの部屋ですから。ちなみに起床は4時となっておりますので」
こうして私たちの職場体験は始まったのだった。