2006年 夏
一つの西洋風の大きな屋敷が爆発した。原因は無下限。最強の呪術師、五条悟が二級術師庵歌姫と一級術師冥冥が呪霊によって屋敷に閉じ込められ行方不明になったため、彼女らを救出するために無下限術式を使用したこと。
そして彼女らを閉じ込めていた呪霊は最強の術師五条悟、最多の術師夏油傑、そして
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「五条!!私はね、助けなんて―――」
――庵歌姫は油断していた。呪霊と戦闘する際の極度の緊張状態が五条によって助けられ急速に解けたこと。最強、五条悟がいること。その他もろもろの理由がありある意味当然とはいえ油断していた、その事実は揺らがない。そしてその油断のつけを払わせようと油断している彼女の背中に生き残っていた呪霊が襲いかかろうとしていた。
だが彼女の背後の呪霊を見ても最強である五条は動こうとしない。それは彼女をどうでもいいと思い、見捨ているわけではない。巻き込む可能性があること、それもある。
だが最も大きな理由は最も早く救える術師がそこにいたからだ。
「――油断しすぎやで、庵ちゃん。」
その瞬間、呪霊の側面にまるで新幹線がぶつかってきたことを幻視してしまうほどの衝撃が入った。
そして庵が気がついたらそこには先程までの油断していた自らの命を刈り取ろうとする気概は既になく、ただただ自らが何処から、誰に、何故、攻撃されたかもわからない呪霊が這いつくばっていた。その様は呪霊の形状からか、まるで芋虫のようだった。
「ほれ夏油、ギリギリ祓わんといたけどこれでええか?」
「ありがとう直哉。後で取り込んどくよ。」
先程まで戦闘(と言うにはあまりにも差がありすぎたが)をしていたにもかかわらずまるで学校の世間話をするかのように喋っているのは傑、そして直哉。高専においても屈指の術師だ。
「げっ、直哉!」
「歌姫センパ〜イ、無事ですか〜?」
「硝子もいたんだ!!」
「心配したんですよ、二日も連絡なかったから。」
「硝子、あんたはあの2人や直哉みたいなキモオタになっちゃ駄目よ!!」
「誰がキモオタや。そういや悟。帳は?」
その瞬間、その空間は一瞬の静寂を帯びた。その後五条が補助監督を置き去りにし帳を下ろし忘れたことで指導(鉄拳)を受けたのは言うまでもないだろう。
◆◆◆◆
五条は悪態をついていた。それには特段重い理由があるわけではない。自らの頭部の痛みの八つ当たりというだけの五条の年頃にはよくあることだ。
「ってて、そもそもさぁ、帳ってそこまで必要?別にパンピーに見られたってよくね?呪霊も呪術見えねぇんだし。」
「駄目に決まっ「いるにきまってるやろ!帳でパンピーから隠れて戦うって言うのはカッコええしロマンがあるやろ!このロマンは古くはウルトラマンとか仮面ライダーとかみたいに自らの正体を隠して戦う変身ヒーローから続くロマンやで。それは脈々と受け継がれ今のアニメ、漫画でも生かされとる。正直このロマンは男で興奮せんやつはおらんやろ。闇に紛れて悪を討つ。このフレーズは男の遺伝子が魂が身体が術式が頭がカッコエエって叫んどるんや。たとえば最近のやと―――」
硝子は逃げた。彼女は以前直哉のオタク談義に捕まり、朝から夕方までひたすらアニメの話を聞き続けると言う拷問で花の日曜日という貴重な一日を潰された体験を受けたことがあるのだ。
故に彼女は逃走した。どうせ直哉は一人で数時間も喋り続けたりノートに何か書いてたりする。その姿を彼女は目撃したことがある。さらに先述の体験もある故に彼女は反射的に逃亡した。
彼女が逃亡してから少し、部屋に誰が入ってきた。
「!硝子はどうした?」
「直哉のアニメ談義から逃げました〜。」
「・・・直哉、ほどほどにな。まあそれはそれとしてこの任務はオマエ達3人に行ってもらう。・・・なんだ。その面は。」
「「「いや別に」」」
「正直荷が重いと思うが天元様のご指名だ。依頼は二つ。『星漿体』、天元様のとの適合者、その少女の護衛と、抹消だ。」