『こちらトリントンコントロール・・・ブラック・ウィドウへA滑走路への侵入を許可します。』
「ブラック・ウィドウ了解・・・タキシングを開始するぞい。」
管制タワーのマリアからの指示に黒く塗装されたミデアの操縦桿を握るアレクサンダー=ウォルフ大尉は滑走路の手前で機体を止めると次の指示を待ちながら離陸前に行う最後のシステムチェックをし始めた。
「しかし・・・しっくりこんなぁ・・・」
「借り物の機体なんですから無茶は厳禁ですよ大尉?」
隣から聞こえて来る心配そうな副操縦士で有る少尉の声に分かっておる!とウォルフが答えていると離陸準備良いですかブラックウィドウ?と管制官のマリアから通信が入った。
「こちらブラックウィドウ・・・全てオールグリーンじゃぞ!」
『了解ですブラックウィドウ・・・それとミリィ達の事を頼みます・・・』
「それは嬢ちゃん達に言うんじゃなマリア・・・ワシの役目はこ奴等を無事に運ぶのが仕事だからのう?」
そう言いながらウォルフからワーハッハッハッと大笑いされたマリアはそれもそうですね。とクスっと微笑んだ。
『それではアメリア達にさっきの伝言をお願いします。』
「分かった・・・それじゃあそろそろ出るぞいっ!!」
マリアからの言付けを預かったウォルフがスロットルを全開にすると、ブラックウィドウへ離陸を許可します。と聞こえて来たマリアからの通信にウォルフはブレーキを解除すると滑走路を加速し始めた・・・
「V1、V2・・・テイク・オフ!!」
「行っくぞい!」
計器の数値を読み上げる副機長の声に応じてウォルフが操縦桿を引くと・・・どうか全員無事に帰って来てね?と離陸して行ったカスケード隊を乗せた黒いミデアを見送ったマリアは祈る様に両手をギュッと握ったので有った。
~~~
「さてと・・・それじゃブリーフィングと行きますかね。」
ウォルフが操縦するミデアが水平飛行に移った所で始まったブリーフィングにアメリアは早速苦笑いを浮かべた。
「ジャック達の第二小隊との通信が途絶えたのはここです。その直前に墜落したミデアを見つけた。とミリイからの通信が入ってから既に一時間以上経ってます・・・」
「その言い方じゃジャック達が全滅した様に聞こえるぞアメリア・・・?」
そんな抗議の声を上げるイエーガーにですが・・・と答えたアメリアは顔を伏せた。
「ミリィと連絡がつかない以上・・・最悪の事態を想定していた方が絶対に良いと私は思います。」
「それはそうだが・・・」
軍人として死と隣合わせと言うのは重々承知で有るイエーガーからムスっとした顔が浮かぶと、なあ・・・もうちょっと前向きに考えねえか?とチャーリーから手が挙がった。
「ミリィのホバーと連絡がつかないのも何かのトラブルかも知れねえだろ。」
「僕もチャーリーの意見に賛成だね・・・生きている前提の方がモチベーションも高いし」
合わせて意見を述べて来るショウにそれはちょっと違うんじゃね・・・?とチャーリーがツッコみだすと・・・バシッとアメリアから自分の頬を叩く音がブリーフィングルームに響いたのだ・・・
「すみません・・・そうですよね。ジャック達の事をちょっとネガティブに考え過ぎてたようです。」
「そりゃあ良かったぜ・・・それでどうするよ指揮官様?」
そう言いながらチャーリーが揶揄う様にククっと笑っていると・・・そろそろ当該空域に入るぞい!と聞こえて来たウォルフからの機内放送にハッとしたアメリアはすぐに指示を飛ばし始めた。
「今回の作戦は第二小隊の救援がメインです!もしジオン機と遭遇した場合はくれぐれも戦闘を行わずに離脱に専念する様に・・・良いですね?」
「「「イエス・マム!!!」」」
アメリアの言葉にショウ達三人がMSデッキへと駆け込んで行くのを見送りながらアメリアも無事で居て居て下さいね・・・とミリイを心配しながらその後を追った。
~~~
「チッ・・・かなりミノフスキー粒子が濃い様ですね。」
「これじゃあ基地との通信は無理の様じゃな・・・」
隣の副機長から聞こえるボヤキ声にウォルフがノイズしか聞こえないヘッドセットの通信チャンネルを変えようとした瞬間・・・ピピピっ!とロックオンアラームが鳴り響き出した。
「大尉っ!!?」
「任せろいっ!!」
焦る声を上げる副機長に向かってそう叫んだウォルフは目一杯右足のフットラダーを踏み込むと操縦桿を思いっきり右に捻りミデアを急旋回させると、ちょっとウォルフ大尉!?とMSコンテナのアメリアから抗議の通信が入って来た。
「悪いがちょっと口を閉じてた方が良いぞい・・・」
『敵機の攻撃なら早く射出して下さい!』
「こんな状況で出来る訳無かろう!?」
無茶を言うアメリアを叱咤したウォルフの操縦するミデアはチャフ発射!と叫ぶ副操縦士によって発射された金属板によってロックオンが外れると至近距離で地上から撃たれたと思われる弾頭が炸裂したので有る・・・
「レーダー!一体どこから撃って来たんじゃ!?」
「ミノフスキ粒子の濃度が高い為曖昧ですが・・・恐らくカスケード隊第二小隊と通信が途絶したポイントの近くです!」
レーダー官からの報告にコイツは厄介じゃのう・・・と呟いたウォルフは同じ思いなのかコクっと頷く副機長を見た。
「悪いが・・・一旦離脱するぞい?」
『何故ですか!?』
「このまま降ろすのはリスクが高すぎるんじゃ・・・どうか分かってくれんかのう嬢ちゃん?」
補給部隊として積み荷を無事に運ぶ事を信条にしているウォルフの事を知っているアメリアは分かりました・・・と頭を抱えながら答えた。
『ならば・・・少し離れたこのポイントで降ろしてくれませんか?』
「了解した。無理を言ってスマンが・・・頼むぞい!」
そう言いながらミデアを旋回させたウォルフが指定のポイントでハッチを開いた・・・
「それでは皆さん・・・準備は?」
ウィーンと開くハッチを見ながらウィスキードッグに搭乗するアメリアが首を傾げた。
「いつでも!」
「どこでも!!」
「行くぞっ!!!」
そんな声を上げるショウ達三人が搭乗したRGM-79量産型ジムはウォルフの操縦するブラックウィドウから射出されるとオーストラリア大陸に広がる白い砂漠へと降下して行ったので有った。