「ラムダ1からラムダ2、3へ・・・司令部から先行したフィシュアイ隊は既に全滅したとの模様だ。・気を引き締めて掛かれ!」
マドラス基地守備隊機械化混成部隊の一つで有るMS部隊ラムダ小隊はRAGー79アクアジム三機で沿岸部に有る港の増援へと向かっていたのだが、司令部からの幸先悪い通達に戦車兵上がりのライス少尉はすぐ後ろに追随する二機のアクアジムへと注意を促したのだ・・・
「わーってますよ。」
「相変わらず慎重と言うか・・・ちょっとビビり過ぎてはいませんか?」
こんな感じで軽口を叩くのは先程アメリアとヒルダをナンパし返り討ちに有った軍曹二人組で有る。そしてそんな二人の上官で有るライスはまったくこいつ等と来たら・・・といつもの様に内心思いながらハァ・・・と深く溜息をついた。
「良いか二人共・・・これは演習じゃ無く実戦だって事を本当に分かってるのか?」
「はいはい甘く見ていると早死にするんでしょう・・・分かってますって?」
ライスからのいつもの小言にラムダ2のアクアジムからうんざりした様に両手が少し上がると、それにですよ?とその隣のラムダ3からも同調すると同時にククっと笑い声が上ったのだ。
「噂じゃジオンよりも優秀なMS持つ連邦が巻き返しを始めたって聞きますし・・・これは手柄を立てるチャンスなんじゃ?」
「確かにここで敵機の一機や二機でも倒せば出世間違い無しだなっおい!?」
長引く戦争に戦線が停滞しアジア大陸の中でも比較的端に位置するのも相まって、ここマドラス基地にMS隊と言われる物が出来て早一か月・・・まだ一度もMSで実戦をした事も無いのにも関わらずハイテンションな二人を無視したライスは不安を感じながら目的地で有る港へと辿り着いた・・・
「おい何だよコレは・・・」
「確か俺達よりも先にベータの連中が先行してた筈・・・」
一方的に攻撃を受けたのか・・・二人が原型を留めていない程に破壊されたベータ隊のアクアジムの無惨な姿に呆然とすると、コイツはマズイな・・・と元戦車兵の勘が早くここから逃げろと警笛を鳴らすのが聞こえたライスはチッと舌打ちすると機体を驚いたまま固まっているラムダ2と3の方へ向けた。
「これよりラムダ隊は一旦この場から離脱し基地司令部との交信が出来る位置まで後退する。」
「ちょっと待てよ隊長!?こいつ等をこんな目に遭わせた奴をそのままにして逃げる気かよ!!」
ベータ隊の仇を討ちたいのか興奮するラムダ2がライスのラムダ1に詰め寄ると、おい止せって・・・と相棒よりも少し冷静なのかラムダ3が止める様にその肩を掴んだのだ・・・
「良く見ろって・・・ベータだけじゃ無く沿岸警備をしていた61式まで全滅してんだ。ここは隊長の言う通り下がって増援を待った方がよく無いか?」
「チッ・・・分かったよ。」
ラムダ2も完全には納得してない様だがラムダ3の説得に応じたのかライスのアクアジムから離れると、それでは行くぞ!とライスのアクアジムは元来た道を戻り始めた。
(周囲のミノフスキ粒子が戦闘濃度まで上がっている・・・ベータの連中からの救援要請が届かなかったのは恐らくこの所為だな・・・)
ここで警戒すると見えない敵機を余計に刺激すると思い足早に港から離れようと考えたライスだったのだが・・・
「おいおい獲物が逃げんじゃねえよ・・・?」
ザバっと海から港へと上がって来たジオン機らしいMSが前方に立ち塞がるのを見たライスはやはり見逃してはくれないか・・・と苦笑いを浮かべながら背後のラムダ2とラムダ3へ叫んだ。
「ブレイク!俺がコイツの相手をする。お前らは司令部へ救援を頼むぞ!!」
そう指示を出したライスのアクアジムが駆け出すと同時に腰からビームピックを引き抜くのを見たラムダ3はその意図を感じると・・・ちょっと待てよ!?と怒る様に叫ぶラムダ2の腕を引っ張ったのだ・・・
「あの人は自分を囮にして俺達を逃がそうとしてんだよ!分かんねえのか!?」
「ああ!分かってるからムカついてんだよ・・・カッコつけやがってあの野郎!」
そんな相棒の様子にラムダ3の軍曹は、ったくよ・・・と困った様な声を上げると自機に持たせてるミサイルランチャーを構えた。
「一回だけだからな・・・一回援護したら離脱する。良いな?」
「そう来なくっちゃな・・・3カウントで撃つぞ!」
そうククっと笑いながら答えるラムダ2も自機のアクアジムが持つミサイルランチャーを構えると悪戦苦闘しているラムダ1を援護しようとジオンの水陸両用MS MSMー07ズゴッグへと狙いを定めたので有る。
「コイツっ!!」
「いい加減しつこいんだよっ!!?」
一応はジムの直系機とは言え水中用の居地仕様で有るアクアジムで戦う必死なライスに向かってイラっとした対MS戦も想定したズゴッグのパイロットはアクアジムが振るビームピックを掻い潜りながら引いていた右手を一気に振りに抜いたのだ・・・
「しまったっ!?」
ズゴッグの固定兵装アイアンネイルによる鋼鉄の爪によってアクアジムの右腕を肩ごと打ちぬかれたライスがギョッとするとアクアはジムはそのまま背中から吹き飛んでしまう。
「これでお終いだ・・・」
「クッ・・・」
トドメを刺そうとズゴッグの右手の爪からビームが発射しようとした瞬間・・・ドンっ!とライスの目の前で爆炎がズゴッグを襲ったので有った。
「今ですよ隊長!?」
「早く離脱しろって!!」
そう言いながら更に撃って来る二人に目を見開いたライスはあのバカ共!と怒りながらもこの窮地を救ってくれた事にククっと笑みを浮かべた・・・
「そこまでされちゃあ・・・意地でも逃げてやらなきゃなっ!!」
そう叫んだライスがフットペダルを踏み込むと二人の撃ったミサイルによりダメージを負ったのか怯んでいるズゴッグに向かってバーニアを吹かしたアクアジムを起しながら体当たりをかましたのだ。
「ウォっ!!?」
水中用と言う事も有り緊急時のみしか使用出来ない奥の手を使ったライスのアクアジムがバーニアを使っての特攻に泡喰ったズゴッグのパイロットは更に思わぬダメージを負ってしまった。
「メインカメラが・・・」
「推進剤持てよ!」
その隙に離脱しようと思ったライスのアクアジムがラムダ2達と合流しようとした瞬間・・・この野郎!!と精度の劣るサブカメラを使ってのズゴッグからのビーム攻撃にラムダ1の右足が撃ち抜かれたので有った・・・
「チッ・・・お前らはさっさと離脱しろ!!」
そう起き上がりながら怒鳴ったライスに了解・・・と答えたラムダ3がクッ・・・と悔しそうな声を上げるラムダ2と共に離脱をするのを見送ったライスはズン・・・ズン・・・と地面を揺らしながらゆっくりと歩いて来るジオン機にククっと苦笑いを浮かべた。
「こんな機体にコケにされて随分と怒ってる様だな・・・?」
そんなライスの予想が当たっていたのか・・・忌々しい奴め!と行動不能となったアクアジムに向かってズゴッグが確実に仕留めようとコクピットに向けて右手を押し当てて来るのを見てライスが諦めた様に目を閉じた・・・
(もし神が居るのならこのピンチを救ってくれるんだろうな・・・)
正直ライスは冗談でそう思ったのだが・・・気まぐれ天使が近くに居たのか、ドカンっ!!と轟音を立てながら突っ込んで来るRGMー79「G」陸戦型ジムの姿に目を見開いたので有った。