暗躍する請負人の憂鬱    作:トラジマ探偵社

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第13話

 なんやかんやがあって九校戦に出ることになった。

 

 出ると言っても新人戦だけだし、メンバーが魔法師社会では有名人の二人なだけあって存在が霞んでしまうので大して目立つ要素は無い。

 

 しかし、三高内では俺が皇悠の護衛をすることが出回っているらしく、彼らの中では『姫殿下に実力を認められてる凄腕』なんて認識がされてそうで胃がキリキリしてくる。他人のせいで目立つのは不本意だった。

 

 期待されても、負けない戦いをして苦戦を演出させるので期待外れみたいな顔されても困る。それと、一色の俺を見る目がヤバい。なんか怒ってそうな感じというかなんというか。

 

 そんなことより、俺の九校戦における目的が決まった。

 

 一高の優勝阻止。三高の優勝。そして、十師族三人の敗北だ。司波兄妹? 世間的には一般人で通っているので目立とうがどうでもいい。むしろ利用させてもらう。ちなみに三高の優勝は無頭竜が賭けた相手が三高だったので、一条は敗北させるが三高は掻っ攫うつもり。

 

 一高では、司波深雪が新人戦のミラージ・バットとアイス・ピラーズ・ブレイクに出場が内定。司波達也はエンジニアとして新人戦女子のみ担当することで内定した。エンジニアに関しては、彼が『トーラス・シルバー』を擁していることで有名なFLTという会社に出入りしていたし、更に仲間内の会話から『トーラス・シルバー』だということが分かった。コンビ名だとは知らなかったし、片割れがまさかのアフロのオッサンだとはイメージが壊れそうだな。ということで司波達也がエンジニアとして出るのは、アマチュアの大会にプロが出るようなおとなげないものを感じさせる酷いものだが、まだ彼はきちんとライセンスを取得していないし、何より学生なので問題ない。

 

 女子は恐らく勝てる見込みは低いだろう。しかし、ここで勝っておかないと一条を敗北させないといけないので三高優勝を目的にするなら、司波深雪に勝たせておくことを許容しても、それ以外は勝っておかなければいけない。しかも、大きな妨害は許されないという縛りプレイが存在しているので、ぶっちゃけ無理ゲー。

 

 そんな事はいつも通りなので、徹底的に相手の戦術を精査しよう。

 

 先ず七草真由美。先天的な特殊能力で『マルチスコープ』という遠隔視系知覚魔法を使い、多角的に知覚した情報から、あらゆる角度から魔法を行使する。魔法による射撃戦なら無双出来るだろう。スピード・シューティングとクラウド・ボールに出場するのは確定で、戦術は2年間全く変更は無いので今年も同じだろう。

 

 次に十文字克人。4系統8種全てをランダムにブッパして防壁を幾重にも作り出す無茶苦茶な魔法『ファランクス』を使い、射程はともかく最強の防御力を誇る。アイス・ピラーズ・ブレイクとモノリス・コードに出場が決定しており、アイス・ピラーズ・ブレイクではファランクスで防御をしてファランクスで相手の氷柱を圧し潰す力技だ。モノリス・コードでは防御担当で、こちらもファランクスによる防御で相手の魔法攻撃の一切を遮断する。

 

 最後に一条将輝。対象内部の液体を瞬時に気化させる魔法『爆裂』を使う超攻撃型。アイス・ピラーズ・ブレイクとモノリス・コードに出場予定。攻撃力だけを見るなら、十師族でもトップクラスだろう。モノリス・コードでは爆裂は使えない縛りプレイだが、それを補って余りある攻撃力がある。逆にアイス・ピラーズ・ブレイクでは制限が無い。

 

 一応、司波兄妹も上げておこう。司波深雪は他の追随を許さない圧倒的な魔法力による正攻法。司波達也は恐らく魔法式の無効化を使って一方的な攻撃をしてくるだろう。

 

 結論。どうやって勝てばいいんだ? 

 

 いや、過去の映像や練習状況を見て勝つ方法を考えてみるけど、俺自身が本気出して戦うならともかく一般魔法師が勝つ事は魔法力に圧倒的な差が生じている現状では、どう逆立ちしたって勝てそうにない。正攻法では。

 

 どうにか方法を考えつつ、モノリス・コードの練習を程々にこなして迎えた九校戦。その前日。

 

 俺はメスゴリ──―皇悠の護衛を依頼されてるので、三高の選手団とは別行動で横須賀基地にある海軍の軍令部から会場となる富士演習場へ向かう事になっている。

 

 車内は運転席にレーサー……遠山つかさ、助手席に俺、後部座席に四十九院と皇悠という組み合わせだ。男性が一人しかいない現状、俺は肩身の狭い思いをしていた。

 

 メスゴリ……姫殿下が乗っているということで運転に気を使いまくるあまり無言になっているつかさちゃんに話しかけられる雰囲気に無く、かといって後ろでは皇悠が四十九院が夢の世界に旅立っている。当初……初顔合わせの時点でガチガチに緊張していた四十九院であったが、今ではすっかり手懐けられたらしい。護衛であることを忘れ、メスゴリラの膝に頭を乗せて静かな寝息を立てている。

 

「志村も膝枕しようか?」

 

 ギロッ! 

 

 隣からの物凄い視線に冷や汗が止まらない。断ってもアウトの流れじゃね、コレ? 

 

「俺よりも遠山さんにお願いします」

「つかさは宿泊先についてからだ」

 

 えっ、マジで? 

 

「姫殿下の膝枕……」

 

 デレッとだらしなく顔を緩ませているのだが、果たしてつかさちゃんの脳内ではどれだけの百合の花が咲いてるのだろうか。この人、将来結婚できるのか怪しくなってきたな。後ろのメスゴリラもだが。

 

「人の事をメスゴリラだのと思うのは志村だけだろうな。いい度胸だ」

 

 ついにエスパーにも目覚めたか、このメスゴリラ。誰得だよ。

 

 ふざけるのも大概にして、ここからは真面目な話だ。

 

「姫殿下、四十九院沓子が護衛につかせることは断っても良かったのではないですか?」

「なんだ、反対してこないものだから、てっきり賛成しているものだと思っていたのだがな。単純に使える手札は多ければ良いというだけでは納得しないか?」

「それでまだ年端も行かない少女に命を懸けさせるって……魔法師である前に一人の人間ですよ」

「そうだな。その一人の少女ですら都合良く利用しようとするのが政治というヤツだ」

 

 随分と都合の良い答えだな。何でもその言葉を使えば良いと思っているのか。

 

「これは四十九院家からの『お願い』を聞いた形だ。娘の将来を見据えた上で十師族側につかせるより、私達側へつけた方が良いという判断をしたのだろう。白川家にルーツを持つ四十九院家は魔法名家より古式魔法師との繋がりが深い。多くの古式魔法師がついている私と繋がりを持たせておいて、家を残していけるようにするのが狙いだろう」

「魔法師側か姫殿下側で明暗が別れましたからね」

 

 皇悠の下には伝統ある古くから続くガチの名家である古式魔法師が存在している。魔法師の開発で得られるハズだった利益が存在しなかったことがあるが、彼女の血統と古式魔法師の多くが現代魔法師に恨み節だった事が多くの支持を得られた要因だった。寺社仏閣に多く存在する古式魔法師は皇悠のシンパと考えられ、逆に姫殿下の下につかない古式魔法師は脛かどこかに傷を持った家が多かったりする。

 

 こうして考えると、物凄い分断社会が構築されていることに気づけた。まだUSNAとかの方が平和だろうな。

 

「なんじゃ? ワシのことで話してるような気がしたんじゃが……」

 

 ようやく起きたか。しかし、膝から頭を上げることはない。それだけ心地良いということか。

 

 すっかり手懐けられてしまった四十九院は、上に兄はいても姉はいないらしく皇悠にすっかり甘えるようになってしまっていた。皇悠は満更でもない様子で、頭を撫でている。

 

 だが、忘れてはいけない。

 

 後ろで笑顔を絶やさず四十九院の頭を撫でている女はキング・コングのメスバージョンみたいな女だということを。

 

 

 

 

 




連続投稿はここまでです。

一般魔法師が十師族に勝つってどうすればいいんですかね。原作主人公みたいなチートじゃないと勝つのは難しいと作者は思います。
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