暗躍する請負人の憂鬱    作:トラジマ探偵社

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今更ですけど、姫殿下の容姿はPixivの画像検索すると出てくる艦これの女性提督です。


第31話

 皇悠のところへ向かう道すがら、改めて俺は十六夜夜子を問いただす。

 

「夜子……さん、でいい?」

「夜子でいいよ、兄さん。さんはいらない」

「そうか」

 

 正直、どういう扱いをしていけば良いのだろう。兄として接するも何も家族なんていたことないから、どんな接し方が正しいのか解らない。そもそも家族って何だ? 遺伝子上の両親とは何か違うのか? 

 

 そこら辺は時間が解決することを信じて、これだけは確認しなければならない。

 

「このまま姫殿下と一緒にいるつもりか? 俺を殺す云々はどうするつもりだ」

「兄さんは私を殺さないんですか?」

「死にたいんだったら、勝手に一人で死んでろ」

「私は一人で死ぬのは嫌。家族が欲しい。居場所が欲しい。どうして兄さんは一緒にいようとしてくれないの?」

「そんなの俺に言われても困る」

 

 今まで家族なんていたことない人間に急に家族だ何だと言われて今更受け入れる事なんて、俺には無理だ。

 

 しかし、皇悠が夜子を加入させると決めたのならこれだけは言っておこう。

 

「許可なくと言ったら変だが、無闇矢鱈と人を殺そうとするのは禁止だからな」

「私は殺しのために生まれてきたんだよ」

「魔法師の存在意義を出すな。そうやって兵器としての価値観しか見出してないから、排斥されるんだよ。望み通りのことは俺も努力するから、ちゃんと言うことを聞いてくれ」

「……わかった」

 

 人間扱いされたいなら、人間らしい振る舞いをしてくれないと困る。ただでさえ人殺しは忌避されるのに、平然と殺して当たり前の価値観だから、魔法師は世間から排斥されるんだよ。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 決勝が始まった。

 

 勝てば総合優勝が決まる一高と対峙する高校は八高だった。場所は八高が力を入れて実習している森林フィールドだ。

 

 八高は確か北海道のどこかにあるのだが、寒冷地帯や高山地帯といった厳しい生活環境において有益な魔法の野外実習を取り入れているらしい。魔法を取り入れたスキーやってるらしい。しかし、精密機械であるCADは凍雪の環境下では使用が困難を極めるらしい。

 

 閑話休題。

 

 これまでの一高の試合運びは十文字克人が強固な守りを形成して他二人が相手モノリスへ攻撃を仕掛けるものだ。それぞれが一級の腕前だから、連携は取らずに各人の実力に任せた力押しが目立つ。十文字克人以外なら八高のメンバーなら倒すことが可能であると判断できるが、十文字克人には束になっても勝てない。先ず『ファランクス』を貫くことが出来ない。これまで通りなら先ず突撃してくる二人をどうにかこうにか迎撃して十文字克人を持久戦に持ち込むことだろう。『ファランクス』は攻撃に使用できないから、通常の魔法だけなら何とかなる。戦いをスルーしてモノリスを狙うにしても、十文字克人に守られるとモノリスを開く専用魔法を撃ち込めないのでリスクがあまりにも大きい。

 

「勝てるか?」

「何とでもなるかと」

「ファランクスに気を付けろ。相手は十師族だからな」

 

 まさか『ファランクス』で攻撃してくるということなのか? 

 

「それは有り得ないでしょう。いくらなんでもレギュレーション違反になるから、下手したら死人が出ます」

「志村くん、師族会議からの通達で十文字克人へ十師族としての圧倒的な力を見せるようにという通達がありました。彼なら十師族の力を見せるためならやりかねません」

 

 それ本気で言ってる? 

 

 自分たちの力を見せるためなら他の人はいくら怪我しようと構わないというのだろうか。一条のレギュレーション違反が反則を取られなかったように、大会委員と十師族はかなり深く癒着しているのかもしれない。これは邪推だし、どうせもう勝とうが負けようがどうでもいい。スパイ容疑で拘束されるし、テロは起きるし、妹が出来るし、矢面に立たされるし、四葉に目をつけられるし、報酬や臨時収入の件が無ければ全部放り投げている。それも日本が戦争するのと比べたら、全然軽い方だろう。

 

 妙なプライドやら倫理観を持つのはやめるべきだな。

 

 試合が始まった。

 

 十文字克人が前に出て、他二人は自陣のモノリス近くで待機している。攻め方を変えてきたのだろうが、前進守備をする腹積もりというワケでもなく、十文字克人による単独制圧をかけるつもりなようだ。

 

 一人で来るとは迂闊だ。

 

 十文字克人が前進し、撃破地点を指定して迎撃態勢を整えさせる。強行突破を決めている十文字克人がゾーンへ侵入。八高メンバーによる魔法の攻撃がかけられる。無論『ファランクス』で防御される。

 

 十師族の魔法力を超えられないから、どんな攻撃も『ファランクス』の前では容易に弾かれてしまう。北条氏の小田原城か美濃の稲葉山城だろうか。難攻不落の移動城塞に例えれる。移動型領域干渉が十八番であることから、足を止めずに悠々と前進してくる。『ファランクス』の堅さは随一だろう。マトモな手段では勝ち取れないが、消耗も大きくて長時間の維持は厳しいだろう。このまま『ファランクス』を維持させて消耗を狙おう。

 

 だが、足を止めることは出来なかった。おもむろに十文字克人は駆けだし、正面から攻撃している1人に突進する。ショルダータックルの姿勢だ。直接攻撃する気か。

 

 レギュレーション違反以前の問題だと思ったら、突き出した肩の前面に『ファランクス』が展開される。よし来た! 

 

『ファランクス』の防御力は世界トップクラスと言っても過言でなく、その圧倒的な防御力を攻撃に転用すれば最強の矛となり得る。この攻撃力に制限を設けられているモノリス・コードにおいて、一般魔法師が十文字克人の防御を貫くことは万に一つも有り得ないだろう。

 

 他者を圧倒的に凌駕する魔法力による『ファランクス』を前面に展開しての突進。最強の盾は最強の矛となる。

 

 十文字克人の『ファランクス』によって八高の選手が弾き飛ばされるのは必然だ。

 

 だが──―。

 

『どういうことなのっ?』

 

 誰かが声を上げる。

 

 歓声は止んで静寂が支配する。

 

『これは一体どういうことでしょうかっ! 十文字選手がその場に崩れ落ちました!』

 

 十文字克人が失神したのだ。

 

 すぐさま残る1人が十文字克人のヘルメットを取り外し、もう一人が倒れている八高選手の容態確認。こっちは背中を打っただけで戦闘の続行は出来る。

 

「つかさは今の解ったか?」

「十文字選手が攻撃した後に何らかの攻撃を受けたのでしょうが、姫殿下はお解りになられたのですか?」

「カウンター攻撃だろう。後から聞けばいい」

 

 外野がうるさい。夜子が静かにしているんだから、見習ってほしいところだ。あ、違った。こっちは興味なしといった様子で眠ってら。

 

 簡単に説明するなら、十文字克人の最強の盾が攻撃に使うなら、その攻撃を逆に利用すれば良いだけの話だ。

 

 魔法名『カウンターファイア』

 

 そのままの意味だが、自身に当てられる魔法攻撃によるダメージを相手に当てられた瞬間に返す魔法だ。俺が開発した魔法で、魔法式は複雑かつ俺にしか解らないように暗号化して使った後は自壊するように起動式を組んだのもあってダメージを返すので精一杯だ。本当なら攻撃魔法を増幅してカウンターすることも可能である。流石に殺しかねないから、殆ど使うタイミングの少ない魔法だ。ちなみに魔法を使った攻撃のみなので、魔法が使われてないただの攻撃には全く力を発揮しない。つまり皇悠の前では役立たずだった。というか、あのメスゴリラの前では俺の固有魔法は役立たずだ。

 

 十文字克人は『ファランクス』を前面に展開してのタックルをした訳だが、それで気絶させるだけのダメージを相手に与える予定だったが、逆に自分がその気絶させるだけのダメージを受けてしまい、予期せぬ出来事で心の準備が出来てなかった事も相まって失神したのだ。これで3対2だ。

 

 当然、一人分多いこっちが有利と言っても過言でなく、精神的支柱で殆ど依存していた一高の2人の動揺は凄まじかった。攻撃に精細さを欠き、何とか踏ん張っているものの防戦一方だ。この体たらくなら、わざわざ倒すまでもなく、一瞬の隙を突いて一人をモノリスへ突撃させ、残る二人で全力援護させることで、モノリスへ突撃した選手が文字を打ち込み終えるまで耐え忍ぶ。

 

「終わりだな」

 

 モノリスが落ち、三高の総合優勝が決まるのだった。

 

「志村くん、あの魔法は……」

「相手の魔法による攻撃を返す魔法で、使おうと思えば誰でも使えますよ。今回使ってしまった訳ですが、きちんと隠蔽工作してるので見た人間は多くても魔法式そのものは世の中に出回ることは無いので安心していいですよ」

「悪辣な魔法を思いつくのね。容易にジャイアントキリングが可能で、今の魔法師社会の秩序は崩壊してしまうわ」

「つかさの言う通りだ。狙う輩は多いから気をつけておけ」

「八高の選手をスケープゴートにしてるのに俺に飛び火するんでしょうか?」

「司波達也ならやりかねない」

 

 何その妙な信頼。魔法式の隠蔽工作は過剰にやってるし、八高の選手へのハッキングだって間に根暗ちゃんを置いたり回りくどく手のこんだ偽装を過剰にしているから、俺に辿り着く要素は無い。根暗ちゃんがハッキングの犯人に仕立て上げているから、万に一つも俺に飛び火する可能性は無いだろう。いや、『俺=ペルソナ』の図式を成り立たせている彼ならば、もしかしたら魔法式の開発者を特定してくる可能性がある。特定してきても否定するだけなんだが、どうにか尻尾を捕まえようとして襲撃してくるか? もしくは魔法を危険視して殺しにかかるか? どっちにしろ厄介だ。目立って良いことは一つたりともない。というか、俺が言えた事じゃないけどスポーツに政治を持ち出さないでほしい。皇悠も十師族もどこもかしこもだ。

 

「姫殿下、俺が目立つのはこれまでにしておいてください。後はもう矢面に立たせないようにしてくれなければ、俺はもう貴方からの依頼は受けない」

「もう手遅れだと思うがな」

「だとしても、これから俺は影に隠れます。目立たせるなら、夜子にしてほしいです」

「それだと何も変わらないんじゃないか?」

「義理の妹で通します」

「頭大丈夫か?」

 

 自分でも無茶苦茶言ってる気がしなくもない。人外に頭の心配されるとか俺もついにヤキが回ったのかもしれない。

 

 何も知らない、考えてないかもしれない観客からの歓声が湧き上がっているが、十師族などの魔法名家は危機感を覚えているかもしれない。どこまで落ちぶれるか分からないが、そもそもテロを許して皇族を危険に晒してる時点で終わっているようなものだし、軍の腑抜け具合は今に始まったことではないから今更だ。

 

 とりあえず、かなり想定外の事態で思ったよりも目立ってしまっても当初の計画に支障はないようだ。

 

 

 

 

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