グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦! 作:三流FLASH職人
「なんだ、休みなのか?」
熊元県芦方町、亀ヶ浜海水浴場に隣接したオートキャンプ場の管理棟ログハウスの前でそう嘆く一人の老人。
口には立派なカストロ髭を蓄え、小脇にバイクのヘルメットを抱えて残念そうにため息をつく彼の名は『新城肇(しんしろ はじめ)』。
バイクで日本各地を放浪し、夜になるとキャンプ場を見つけて自分の時間を楽しむ典型的なアウトドアライフマンである。実家は愛知県だが、ここ数年は日本そのものが地元だと言わんばかりの放蕩ぶりを発揮している。
最近は山梨に住む娘夫妻の子、孫娘に当たる女子高生の志摩リンもキャンプにハマっており、春先には少しの距離を共にバイクで走るなど、老いてますます充実した日々を送っていた。
彼の旅のモットーのひとつに『行き当たりばったりを楽しむ』というのがある。
久々に臼州を訪れた彼は、お目当ての阿蘇の数々のツーリングコースを堪能した後、宿泊できるキャンプ場を適当に検索して、ここ亀ヶ浜にやってきたのだが……
海水浴場に隣接したこのキャンプ場、海開き前のこの時期はまさにガラガラで、肇にとって快適な夜を過ごせると思っていたが、受付のログハウスは誰もいなかった。
ネットでは年中経営となっていたが、海水浴シーズンを外した今はやってないのかもしれない。
田舎で人気のない場ならそういうこともまぁあるか、ときびすを返しバイクにまたがろうとしたその時、彼の前に1台の軽トラが指示器を灯して停車する。
「なんね、キャンプに来たかねー?」
運転席から顔を出し大きな声でそう語る、肇と同じくらいの年齢の老人。
頭髪は奇麗に抜け落ちており、潔いまでのツルツル頭に手を当てて屈託なく笑う。
「すまんとよー、今の時期は客おらんでね、受付に人おけんのよ。」
頭にぺしぺしと手を当てながら車を降り、肇の前に立つ陽気なじーさん、その胸には『たこひげや』と書かれたエプロンが纏われている。中央に描かれたタコの絵が
この男のハゲ頭と見事なシンクロを見せていた。
「ああ、結構あるよそういうのは。」
肇も笑顔で返す。同世代の露骨な九州弁に心地よい旅気分を感じたのもあるが、この程度でいちいち腹を立てていたら旅など楽しめるはずもない、むしろこういうトラブルも旅のいい思い出になるものだ。
「で、泊まれるのかね?」
「もちろんたい、今受付すっけん待っとってや。」
軽トラを駐車場に止め、ばたばたとログハウスのカギを開け、受付の窓から書類とペンを肇に渡す。
応じた肇が住所氏名と連絡先を記入して拇印を押し、料金の500円を支払ってパンフレットを受け取る。
それに目を通した肇は、ここの売りのひとつに興味を引かれる。
――レンタル釣り具無料、調理場使用OK!釣った魚に舌鼓を打とう――
「釣りが……出来るのかね?」
興味津々の肇。キャンプの食材はこれから買い出しに行く予定だったが、出先で釣りをしてそれを夕食に出来るとは、いかにも面白そうではある。
「ああ、ウチは釣具屋やっとるけんね。釣りは面白かよー、やりんさいやりんさい!」
がっはっは、といった顔でそう進める男。確かにエプロンのたこひげやの文字の下には小さく『釣り具、エサ販売』と書かれている。
「ちょっと待っとってな、店行って釣り具取ってくっけん!」
「ああ、その間に設営してるよ。」
釣り具サービスとか言っておきながら常備していないのがいかにも繁盛していない
キャンプ場らしい、と苦笑いしながらテントの設営にかかる肇。
海水浴場のキャンプ場ならもう少し先、海開きしてから一気に収益を上げるスタイルの経営なのだろう。
梅雨明けすぐの今はむしろ繁忙期直前の準備期間と言ったところか。
テント設営が終わる頃、ちょうど軽トラが帰ってきた。だが荷台に乗っているのは
どう見ても新品の釣り道具の数々だ、竿は透明ケースに収まっており、リールには値段タグが付いたままである。
「好きなの選ぶとよかよ、釣りは初めてかね?」
「いや・・・ある程度は知っているが、いいのかい?これ新品じゃないか。」
竿を吟味しながらそう返す肇に、その禿げ頭のじいさんこと『たこひげや』店長の赤井繁松が笑って答える。
「おまはんの選んだのをこれからレンタル用にすっけん、使用者第一号たい。」
どうやらレンタル用の釣り具を置いてなかったのではなく、使用者がいないからしばらくソレ用を用意していなかったようだ、思わぬところで運がいいな、とほくそ笑む肇。
仕掛けを作り、エサを用意して浜に出る。この時期なら釣れるのはチヌ、グレ、スズキ、それにキスといったところらしい。
とりあえずグレ用の仕掛けを用意して、砂浜の際にある堤防の先に足を進める二人。
と、その堤防の先で竿を出している4人組を見つける。平日の夕刻に釣りをしているだけでもあまり見ない光景だが、それ以上に肇を驚かせたのがその面々の見姿だった。
見た目麗しいセーラー服、聞こえるのはきゃっきゃと黄色い声、釣りとは縁の遠そうな、ちょうど孫娘と同年代の少女たち。
「女の子が釣りとは、ははっ、微笑ましいじゃないか。」
「あー、あの娘達は地元のていぼう部・・・釣りクラブの子たちたい。」
ほう、と髭を撫でながら関心する肇。そういや孫娘のリンの仲間もキャンプの部活をやっていたと聞く、最近の女の子も結構アクティブじゃないかと思わず笑みがこぼれる。
「おーい、ていぼう部ーっ!今日の釣果はどぎゃんねー?」
いきなり中の人が超大物な件(大塚さん&千葉さん)