グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦!   作:三流FLASH職人

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しまりん回


第10話 木漏れ日の道

「道の駅、芦方しらぬいにとうちゃーくっ!」

 車が道の駅に到着するや否や、早速大はしゃぎで外に出て駆け回るなでしこ。

「あっついのに元気やなぁ・・・」

「ホンマやねぇ、早よ中に入ろ、ゆだってまうわー。」

 千明の言葉にあおいが続く。クーラーの利いた車内から炎天下の駐車場は流石に堪える、

恵那も鳥羽先生も手うちわで自分を扇ぎながら暑そうに頷いて車を降りる、さやかだけは

まぁ慣れっこという表情で車に鍵をかけ、余裕の足取りで続く。

 

 単に『暑い』と言っても山梨と熊元ではその質が違う、彼女らの地元と比べてここの熱さは

『蒸す』ではなく『焼かれる』イメージが強い。不快指数はそこまで酷くないが、この太陽光線に

焼かれ続けるのはお肌と体力に良くない印象がひしひし伝わってくる。

 

「ふぃ~」

 建物の中に入り、ようやく人心地つく一同。館内は地元の産直市になっていて、野菜や干物から

お土産の饅頭やグッズが売られている。

ただ、今回の遠征は旅費にほぼ全振りの貧乏旅行だ、お土産を買うにも無駄遣いは出来ない。

そんな事情でう~んと唸る一同に、鳥羽先生が思わぬ助け舟を出す。

「ひとり1000円までなら私が出しますよ。」

「「マジでぇっ!?」」

 

 途端に散り散りに土産物を物色する一同。さやかは「よっ、太っ腹!」と鳥羽先生の肩を叩く。

「今回は食事をほぼお世話になってますから、まぁ多少はね。」

にこりと頷いてそう返す鳥羽先生に、さやかはうっ!という顔をした後、ひきつった笑顔を返す、

給料日前には金欠になり、ていぼう部に飯をたかりに来る自分とはえらい違いだなぁ、と。

 

 

 七浦レモンロードの交差点、その手前の自販機コーナーにバイクを止めた黒岩は、

後ろのリンに声をかける。

「何か飲むたい?おごるっとよ。」

メットを脱いでそう提案する黒岩に、リンはありがとうございます、と軽く頭を下げる。

「じゃあカフェオレでお願いするっとよ。」

リン即興の熊元弁に思わずぷっ!と吹き出す黒岩。見た目あまり感情表現が豊かそうでなく

クールな表情の彼女がさらっとウケを取ってくるのはなかなかに反則だ。

 

「こっからちょっとキツい道に入るっけんど、大丈夫?」

交差点の先、山道に続く細い道路を指差して言う黒岩。確かにここまでの整備された道とは違い

うっそうとした森に向かうその道路は入り口からして険しさを漂わせる。

「あ、はい。険道は結構走りましたから。」

そう返すリン、彼女は今年の春先に静岡のツーリング仲間、綾ちゃんと行った畑薙大吊橋への

道中を思い出していた。あの果てしなく続く山脈デスロードを思えば平地にポンとある

山道程度どうという事はない、と思う。

 

 ジュースを飲み終わり、んじゃ行くばい、との黒沢の言葉にバイクの後ろにまたがるリン。

キックしてエンジン始動、リンだけの臼州の思い出、プチツーリングのスタートだ!

 

 散らばる落ち葉、ひび割れたりわだちで凸凹が出来たアスファルト、所々切れている

ガードレール、崖から染み出る雨水、そんな中を右に左にぐねぐね曲がり、駆け上がって行く。

それは確かにかつて経験した険道と同じだった、ただひとつの点を除いて。

 

「(奇麗だな・・・)」

 うっそうと茂った木々は、道路以外の景色をほとんど見せなかった。代わりに目に

飛び込んでくるのは、垂直に差し込む夏の太陽と、それを遮る木々や葉っぱによる

美しい木漏れ日と、地面に落ちる光と影のコントラスト。

 まるで光のシャワーを浴びながら走っているような錯覚すら起こすその美しさは、

風景とはまた違った絵になる光景だ。路面が、ガードレールが、山肌が、そして

自分達までが光と影に彩られ、そして駆け抜けてゆく。

 

 リンは思う、確かにこれは自分が今まで知らなかったツーリングの楽しさだ。

生い茂る木々と夏の太陽が描く世界に身を浸すのはバイクならではかもしれない、

徒歩だと大変だし、車ではこの狭い道路、曲がるのにすら苦労するだろう。

バイク乗りだけに許されたようなその世界にいることに思わず嬉しくなる。

 

「(やっぱいいな、バイクって。)」

 

 山頂にある道路開通の石碑前、一度バイクを降りて休憩する。ここからの景色だけは

木々に阻まれること無く、空と海と町を開放する。

「おおーーっ!海だ、山だ、街並みだーーーっ!」

思わず叫ぶリン。一人の時なら叫びたいのをぐっと堪えることもできただろうが、

乗せてきてもらった身の上ならば、その感動を隠すほうが失礼と言うものであろう。

 

 と、ポケットの中からヴーッ、と振動音。スマホを取り出しチャット画面を開く。

既に道の駅に到着した仲間からのメッセージだ。

 

”リンちゃん、今どこ?”

”先生がお土産千円奢ってくれるってー”

”足湯もあるで~、来たらみんなで浸かろ~なぁ。”

”名物しらぬいアイス、なんと100円だぜ!諦めていたスィーツゲットだ!”

 

 その情報におお!と歓喜するリン。足湯に浸かりながら食べるアイスは格別だろうし、

何よりこれで諦めていたお土産が買って帰れる、ありがとう・・・先生。

「よか先生たいね~、さやかちゃんにも見習わせたいばい。」

黒岩が後ろからスマホを覗き込んでそう話す。その言葉にリンは真剣な目で黒岩を見返す。

「そんな事無いですよ、小谷先生が居なかったらここには来れなかったんですから。」

 

 リンは話す、自分たちの夏キャンプがマナーの悪いナンパ野郎によって出来なくなっていた事、

そんな中おじいちゃんや亀ヶ浜キャンプ場の管理人さん、鳥羽先生の協力を経てこの

臼州キャンプの計画が立ち上がった事。

 だが、やはり一番の決め手となったのが小谷先生の存在だった、鳥羽先生と年齢の近い

女性教師で、野クルと同じ女子だけの部活の顧問、その先生と連絡を取り合い、

合同合宿と言う形で両校から公認で許可を取り付けた事、それこそがこの長距離遠征を可能に

したのだから。

 

「まー、さやかちゃんもたまには教師らしいトコ見せんばね。」

ふっ、と息をついて黒沢が返す。彼女自身さやかとの付き合いは長く、確かにアクティブで

行動派なところは尊敬できる点だ、自分がややグータラな性格だから尚更だろう。

 

 リンは、んーと唸りながらスマホを睨んでいる。友人たちに返す返事に何か面白い

返し方はないものかと思案しているようだ。

「あ、ちなみに皆がいる所はあそこばい。」

街角の一点を指して言う黒沢、確かに道路の脇にだだっ広い施設が見える。

リンは彼女の意図を察し、その方向を写真撮影して添付ファイルに沿えて返信する。

 

”今ここー”

”みんなはここ”

”ふふふ、お前らがゴミのようだ”

 

「んじゃ行くばい。」

「はい。」

 

 光と影の道を、風を感じながら駆け降りていく1台のバイク。リンはは名残惜しそうに

景色を目で追いながら、ある決意を固めるのだった。

 

 

 道の駅にて無事合流し、皆で足湯に浸かりながらアイスを頬張る。

「足元にマッチ、口にポンプ、これ以上のマッチポンプがあるだろうか・・・」

「まさに頭寒足熱だねぇ。」

「アヒー、アイスうっま!」

「温泉にスイーツ、いつものキャンプのノルマ達成できたわぁ~」

足湯を堪能する面々、黒岩となでしこに至ってはその頬をぺたんとテーブルにつけ

スライムみたいな表情でくつろいでいる。

 

「とろけてますねー。」

「各務原さーん、黒岩に付き合ってるっとオヤジになっちゃうわよ~」

両教師がその様を見てそう嘆く、黒岩はさやかに「せからしか~」と反論し、皆の笑いを誘う。

 

 そして車に戻り移動開始、次の目的地は釣具屋だ。午後の部に備えて、各組ていぼう部から

依頼されたエサや仕掛けを購入するためである。ほどなく『たこひげや』と看板のある

釣具店に到着する。

 

 彼女らを出迎えたのは胸に店名のエプロンを羽織った、見事なツルツル頭のじーさんだった。

「おー小谷先生来たね、その娘らが山梨の生徒さんね?」

「ええ。みなさん、こちらキャンプ場の管理人で、ここの店長の赤井繁松さん。」

さやかが皆にそう店長を紹介する。と、リンはその見覚えのある顔にハッとする。

「あ、あの・・・志摩リンといいます、おじいちゃんがお世話になりました。」

ぺこりと頭を下げるリンに、赤井店長はうん?と首をひねった後、おお!と手をポンと打つ。

「あー、お嬢ちゃんか、新城さんのお孫さんは。」

 こくりと頷くリン、それを見て取って、生徒たち一同がああ!という顔をする。

リンに聞いていた、彼女のお爺さんを接待して、この釣りキャンプのキッカケを作った人物、

そうか、彼もまたこの臼州遠征を取りなしてくれた一人なんだ、と。

 

「どーかね、芦方は楽しかと?」

そう問う店長に、一同ハイ!と元気よく答える。そりゃ良かったばいと豪快に笑う。

「しっかし、よか名前ばいねぇお嬢ちゃん。」

「え?」

「シー(海)と、マリン(海)、両方入っとるたい、なかなか無かよ~。」

一同が一斉にあっ!という表情をする。確かにすごい偶然だ、しかもその彼女が海なし県の

住人とは・・・

 

 

 うーみっ、うーみっ、しーまりんっ♪おいしい、おいしい、しーまりんっ♪

『・・・泳いだらふやけた、ぷるんぷるんになっちった。』

 

 -芦方名物、水菓『シー・マリン』-

 

 あおいが脳内妄想でリンの頭の形をした水菓子のCMを垂れ流して、思わずむふふと笑う。

 

 

「さぁ、買い物終わり。」

「いよいよ決戦や!負けへんでぇ~」

「2夜連続罰ゲームだけは何としても回避するっ!!」

 エサと仕掛けの調達も終わり、いよいよ浜に戻って最後の釣り勝負だ。

果たして勝つのは誰か、阿鼻叫喚の犠牲者となるのは誰か、その時はもう間近に迫っていた-




道の駅『芦方しらぬい』のモデルは実在する道の駅『芦北でこぽん』ですが、アイスや足湯は
フィクションですのであしからず。
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