グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦! 作:三流FLASH職人
「さ~て、いよいよ最後の釣り対決たい。」
「者ども、準備はいいかーーーっ!?」
「「おーーーっ!」」
両部長の掛け声に応えるていぼう部&野クル+2名。目指すは夕食と明日の朝食の
おかずの確保、そして何より罰ゲーム(夕食時グビ姉とビールバカの接待)の
最下位を何としても避ける事だ!
「時間は午後7時まで、それじゃあ・・・開始!」
さやか先生が手を叩くのを合図に、全チーム一斉に堤防に駆けていく。ちなみにキスは午前で
夏海&あおいチームが釣ったのがまだあるので、今回は釣ってもポイント対象外。
なので全員が砂浜からでは無く、堤防からの釣りでの勝負を選ぶ。
そんな中、全力ダッシュして真っ先にポイント決めしたのが大野だ、相棒のなでしこに
荷物を全部任せていち早く釣り場を確保する。追いついてきたなでしこが「ここでいいの?」と
問うのに対し、大野は笑顔でうん、勝ったも同然!と相槌を打つ。
「あたしらは午前の貯金があるから、私はシーバス、あおいちゃんは付けエサ釣りお願い!」
「はいな、まかせとき~」
午前の部でトップだった夏海&あおい組は堤防の突端に陣取る、ちなみに採点は
午前の部+午後の部なので、よほどヘタを打たない限り自分たちが最下位はないだろうと、
より沖を狙える場所を確保し大物を狙う、シーバスの一匹でも釣れれば確実に最下位は回避出来る。
「な、夏海に取られた~。」
午前の部で『三方攻め』で釣果を上げた陽渚チーム、今回も同じ作戦で行くつもりだったが
その場所を夏海に先に押さえられてしまう。陽渚、千明、リンの足では夏海の健脚には
及ばなかったのだ。
「うう~、なつみぃ~!」
「悪いね、ひ~な、早い者勝ちぃ。」
夏海と陽渚チームの千明は昨日の犠牲者だ、今日こそは罰ゲームを回避したい両者だが
果たしてこの場所取りが明暗を分ける・・・か?
黒岩と恵那はあまり堤防の先にはいかず、砂浜側を向いて仕掛けの準備をする。
「黒岩さん、どうするの?」
「ふっふっふ~、まぁ仕掛けを御覧じろ~。」
ニヤつきながら彼女が用意したのは午前中に夏海たちが使った仕掛けに似ていた。
「キス狙うの、カウントされないよ?」
その恵那の返しにもやはり、ふっふっふ、と不敵な笑みを返す。
「キスがダメやから砂浜がダメっちゅうことはなかよ、狙うはカレイったい。」
そう、キスがNGということで他の連中の注目が砂浜に行っていない、競合する相手が
居なければ砂浜に潜むカレイは彼女たちで独占できる、オカズとしても価値の高いこの魚を
ゲットすれば罰ゲーム回避は余裕だろう。
と、堤防に響く声、なでしこだ!
「きたよきたよーっ!」
え、もう?と全員が注目する。大きくしなるのべ竿がからしてリリースサイズではあるまい、
入れ食い状態から釣り上げたのは、金色に輝く魚体だった。
「うん、お見事。」
隣りで声をかける大野、よく見ると彼女もいつの間にか同じ魚を釣り、すでに下処理に
入っていた・・・いつのまに!?
が、釣った魚を見たなでしこは、うぇ~という表情で嘆く。
「ネ、ネションベンだよぉ~・・・」
はい?という顔をする一同。大野がウィキさながらの解説を入れる。
「アイゴ、地方によってアイノバリ、バリなどと呼ばれる、『ネションベン』は駿河地方の
呼び名で、ちなみに英名はラビットフィッシュ、棘に毒があるから気をつけて。」
はい、と魚掴みとハサミをなでしこに渡す大野。見てて、と自分の釣ったバリのトゲを
ハサミで落としていく。
「え?これ、食べられるの・・・?」
かつて父に連れて行ってもらった釣りで、なでしこが一番印象に残っている魚がこれだった。
父の隣で釣っていた人がこの魚を釣り上げるなり「ネションベンか」と打ち捨てたその魚は
その臭いニオイと黄色い魚体から印象深かったのだ。
「昨日食べたお刺身がこの魚。大丈夫、処理をきちんとすればとても美味しいよ。」
「なんですとー!?」
昨日の美味を思い出し、とたんに乗り気になるなでしこ。
トゲをハサミで全て落とし、頭から背骨を切り離し、内臓を引き出す。そのぐるぐる巻きの
内臓を見たなでしこが「ひぇ~」という顔をする。
「ちなみに、地方によってはこのぐるぐる内臓を食べる所もある。」
「はへ~、そうなんだ。」
感心するなでしこ、この匂いのきつい部位を食べる方法があるんだね~と呟いた瞬間
彼女の目がキラリと光る。
「ねぇ大野さん、だったら・・・」
「おーおー、あそこは爆釣ねぇ。」
さやかが堤防を奥へと歩きながら思わずそう嘆く。さっきから大野&なでしこ組は
竿を入れる端からばんばん釣り上げている、もちろんフグなどの外道やリリースサイズもあるが
バリ、カワハギ、ブダイやチダイなど美味しい魚を続々とゲットしている。
その様を愕然と見入る他の面々、午前中最下位だった大野・なでしこチームの大マクリに
やばい!と焦ってエサを付け、竿を振る。
「やられた・・・エサ溜まり見切っとったね、大野の奴。」
午前中、黒岩&恵那組はフカセで釣果を上げた。しかしエサ取りを誘導するためにかなりの
撒き餌を海に流していた。
大野はそれを見逃さなかったのだ、自分の釣りもそこそこに、黒岩の巻いたエサがどこに
流れ、どこに溜まるかを逐一チェックしていたのだ。
「あー、どうりでさっきの大野さん・・・変だと思ったのよね。」
腕組みしたままそう語るさやか。大野はていぼう部一番の力持ちで面倒見もいい、いつもなら
積極的に荷物持ちを買って出る彼女が、先程だけは荷物を全部なでしこに任せて一目散に
ポイントに走って行ったのだが、そういう事だったか。
「なんか来たで!」
そう言って竿と格闘を始めたのはあおいだ。夏海もいょっしゃ!と色めき立ち、自分の仕掛けを
回収してタモ網を構える。15分ほどの格闘の末、無事に釣り上げたのは30cmオーバーのイサギだ。
「あおいちゃん凄い、よっ名人!」
「ほめ過ぎやで~、ただのビギナーズラックやんか。」
とはいえ午前の部トップのこの組が、釣り人に人気のこの美味な魚をゲットしたのは
大きいだろう。安全圏が見えたことで余裕の笑みが見える二人。
「やばいやばいやばい、このままじゃ私達が最下位だよ!」
「あわわわわ・・・つっ、鶴木ちゃん、なんか秘策はないのか、必殺技とか!」
おろおろするリンに続いて千明が陽渚に無茶振りをする。
「・・・大丈夫だよ、この分だと晩御飯はきっと豪華になるよ。」
あきらめの境地のオーラを漂わせながらウキを眺める陽渚に、二人は罰ゲームを想像して
青い顔になる。諦めたらそこで試合終了ズラ!と千明が檄を飛ばす。
と、その陽渚のウキがズボッと沈む。3人がキターと活気づき、他チームも何が来た?と
注目する。
が、引きはあれどほとんど走らないその引きに、多分根魚の類だろうと意図するのだが・・・
釣り上げた獲物の針を外すべく目の前に持って来た時、陽渚はそのまま気絶して後ろに倒れ込む。
あわやの所でリンと千明が支えるのだが、その二人もその獲物を見て悲鳴を上げる。
慌てて駆け寄った大野がその獲物を魚掴みで取り押さえる。
「陽渚ちゃん、お手柄!」
そう言って速攻でその獲物に包丁を突き立てて息の根を止める、そのままそのヘビのような
長い体を持ち上げて一言。
「ウツボ!珍味ですよ、滅多に釣れない逸品です。」
陽渚は気絶したままで、千明とリンもあわわ口をした状態でその怪獣の様な獲物を見やる。
「ポ、ポイント高いんですか?」
「うん、かなり。」
尻もちをついたまま、よっし、とハイタッチをする千明とリン。二人の間には陽渚の口から
出た魂が漂っているのがなんともシュールだ。
「うーん、またキスだねぇ。」
黒岩・恵那のチームは計算外の事態に陥っていた。カレイを狙った仕掛けだったが、
釣れるのは皮肉にもポイントにならないキスばかり。
「まぁ、美味いけんよかったい。」
黒岩はそう言いながらも危機感を募らせたらしく、仕掛けをワームに変更、狙いをコチ系に
切り替える。かつて鶴木に教えたマゴチ狙いの仕掛けだ。
大野・なでしこチームが文句なしのぶっちぎり独走を続ける中、残る3チームによる
シーソーゲームが熾烈を極めていた。
まず黒岩がやや小さめのヘゴチをゲット、続いてリンが強烈な手ごたえからの35cmのブダイを
獲得、このファイトで手が震えた彼女はしばらく戦線離脱したほどの大物だった。
夏海は他2チームの猛追についにシーバスを諦めてフカセに移行、ほどなく30cm級の
チヌ(クロダイ)をゲットして突き放す、あおいもその後カワハギをゲットし再度安全圏に。
その後も小さな魚を釣り合い、罰ゲームを賭けたチキンレースはいよいよ混沌として来た。
そしてタイムアップ寸前、ここまでボウズだった千明がぐっ!と竿を曲げる。だが竿は
そこから動かず、皆も「あー、根掛かりか」という表情に・・・
-ぐんっ!!-
その瞬間だった、千明の竿が大きくしなる。根掛かりじゃない、何か来た!
収竿の準備をしていた黒岩が思わず声を上げる。
「鶴木、ドラグっ!!」
「あ・・・はいっ!」
陽渚は慌てて千明のもとに駆け寄ると、横からそのリールに手を伸ばす。
「お、大垣さん、竿立てて立てて!」
リールの頭にあるツマミ、ドラグをキリキリと回す。何回転かした時、突然ジィーーッという音と共に
糸が一気に出ていく。
「う、うわっ!?」
驚く千明に構わず、今度はドラグを閉め、糸の出が止まるギリギリの所で止める。再び千明の竿が
ぐぐっ!と曲がる。
「お、大垣さんっ、竿を立てて、ま、巻きながら寝かすを繰り返してー!」
「わ、分かった!やってやんよ!!」
懸命に竿を上げ、リールを巻く千明。この大物なんとしても釣り上げる!
隣りでは大野がリンにタモ網を渡し、扱い方のコツを説明する。
「魚は頭の方にしか泳げないから、必ず頭から掬って。入ったら持ち上げずに、綱引きみたいに
手繰り寄せるのがコツ。」
「うぃ!これは燃える!」
「魚は必ず釣ってる人の真下を通るから、大垣さんの足元に構えて、網を見たら魚は潜るから
下からすくう感じで。」
「わかった。」
リンが網を構える間も千明の激闘は続く、決して早くないその魚のアシからして青物では
なさそうだ。だがその重量感と、千明の仕掛けに食いつく食性を考えたら・・・
「これはアレやね。」
「うん、アレだー。」
黒岩と夏海が顔を見合わせて笑う。個体は大きいが決して珍しくはない、どっちかと言うと
やや外道よりなあの魚だな、と推察。
立てては寝かせながら巻く。時折激しい抵抗を見せた魚が糸を引っ張り出す、だが調整された
ドラグのお陰で糸が切れることは無い。巻いては出されるを繰り返す事15分、ついにその魚影が
水面に姿を現す!
「でっか!」
「おおおお!おっきいぃぃっ!」
体長だけなら間違いなく今回の釣りキャン一番の大物、水面に顔を出し激しく暴れ、少しでも
気を抜くと糸を引っ張り出しながら潜る。黒岩は「元気やねー」とアゴを撫でて笑みを見せる。
ついに千明の足元で、その大きな魚がお縄と・・・いやタモ網と相成った。
リンはうお重っ!と言いながら網を手繰って、ついには魚を堤防の上まで引き上げた。
「これは・・・」
「コイだーーーっ!」
「あきちゃんすごい、海でコイ釣るなんて!」
「海水に耐えるコイがいたんだねぇ、すごい大発見だよアキちゃん!」
「「なんでやねーーんっ!」」
リン、なでしこ、恵那のボケ(?)にあおいと黒岩、夏海が同時にツッコむ。
「ボラですね。卵は高級食材のカラスミになります。個体差はありますが当たりなら美味しいですよ。」
「ま、あんだけ元気やったらまず当たりたい。」
大野の説明に黒岩が続く。本来は外道として扱われ気味な魚だが、場所によっては非常に美味な
個体も多い、ていぼう部のように『釣ったら食べる』人にとってはいい獲物だ。
「や・・・やったぜ、みんな。我が釣り人生に悔いなし・・・ズラ。」
疲労困憊でへたりこんでいた千明が、その言葉と共にばったりと突っ伏す。
「アキちゃん、君の雄姿は忘れないよ、このボラさんはきっと皆で美味しく頂くから!」
「釣りキャン -完-」
そんな三文芝居を見ながら、鳥羽先生とさやか先生が顔を見合わせて笑う。
釣果も上々、最後にみんなが協力して大物を釣り上げたことに思わず笑みがこぼれる、
若いっていいわねぇ、と。
「結果発表~。」
調理場に戻った面々の前で、けだるそうにそう切り出す黒岩。
「まず午後の部の発表から。1位、大野&各務原コンビ。釣果、いろんな魚たくさん~」
「投げやりだなオイ!」
夏海が突っ込むがまぁ無理なき事、細かく言えばバリ16匹カワハギ4匹ヘダイ4匹ブダイ1匹
クロダイ1匹キュウセン5匹と、他と比較するのが馬鹿馬鹿しくなるほどの獲物の山だ。
「2位、鶴木・大垣・志摩トリオ~。釣果、ボラ一匹、ウツボ1匹、ブダイ1匹、いずれも大物~」
うっし、と手を合わせる3人。特にボラはなんと60cm級、激闘の成果に思わず笑顔。
「3位、夏海・犬山組~。イサギ1匹、チヌ1匹、カワハギ1匹~」
「くぅっ!陽渚たちに抜かれた・・・」
悔しがる夏海に、陽渚はへっへーん!と胸を反らせて威張る。
「4位、あたしと斉藤さん~、ヘゴチ一匹のみ~」
「キスはいっぱい釣れたんだけどねぇ・・・」
諦め顔の黒岩の隣で恵那が苦笑い、明らかな作戦失敗の結果にあーあ、という表情。
で、総合成績。
1位: 帆高夏海・犬山あおいチーム(午前1位、午後3位)
2位: 大野真・各務原なでしこチーム(午前4位、午後1位)
2位(同率):鶴木陽渚・大垣千明・志摩リンチーム(午前3位、午後2位)
最下位: 黒岩悠希・斉藤恵那チーム(午前2位、午後4位)
「と、言う訳で罰ゲームはユウ姉チームにけってーい!」
夏海の宣告と共に、千明が恵那の手を取って「骨は拾ってやんよ」と涙を流す。もちろんウソ泣きだ。
「ちなみに罰ゲームって何をやるんですか?」
「そうそう、聞いてないけど。」
鳥羽、さやかの両先生が不思議そうにそう聞くが、千明たちはまぁまぁ気にせず
先に呑んでて下さいとふたりに退室を迫る。
『呑んでて下さい』という二人にとってのパワーワードに逆らえるはずも無く、嬉々として
食事テーブルにいそいそと移動する。
そんな二人を見て黒岩はやれやれ、という顔をする。恵那はまぁまぁ、と事ここに至っても
割と余裕アリな表情だ。
「それじゃあ夕食の支度に・・・」
そう言いかけた大野に、なでしこが「待って!」とストップをかける。
一同どうしたの?という顔で彼女に注目し、次の言葉を待つ。
そんな皆に、なでしこは高らかにこう宣言する。
「今夜の夕食は、私たち山梨勢に作らせてくださいっ!」
釣りシーン書いてると長くなる・・・2話分のボリュームになってしまった。