グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦!   作:三流FLASH職人

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出張で投稿期間が開いてしまった・・・お待たせ。


第12話 珍味とクジと贅沢料理

 どどん!という効果音が聞こえてきそうなほどのまな板の上のこの迫力!!

「これ、あたしが捌くの・・・?」

 千明の言葉に全員がこくりと頷く。まな板に乗せられた60cmのボラの持つ威圧感は

流石の一言だろう、何せその魚体は下手すると千明のふくらはぎより太いのだから。

1円玉にも匹敵するサイズのウロコはヨロイさながらで、その眼は死んだ魚の目とは

程遠い眼光で千明を睨み据えている・・・気がする。まぁ実際まだ生きているんだけど。

 

「大丈夫、まずはココ、少しウロコを削いでからトドメを刺してあげて。」

後ろから刺すポイントを示しつつ大野がそうアドバイスする。千明はおっかなびっくりながらも

その部分のウロコを何とか落とし、包丁の先を沿えて構える。

「い・・・行くぜ!」

意を決して包丁を突き込む。ズムッ!という音と共に魚体がぴくりと動き、そして止まる。

「や・・・殺ったズラ。」

「ご苦労様、後は任せて。」

 憔悴しきった表情でこぼす千明。入れ替わりに大野がまな板の前に立ち、そのままボラを

ウロコ取りから3枚おろしまでよどみなく処理していく。

 

「大野さんホント、スゴいなぁ・・・」

「ホンマやで、解体ショー見とるみたいや。」

関心するなでしこ達に陽渚が説明を入れる。

「大野先輩は魚屋さんですからねー。」

一同思わず納得する。とても女子高生の手際の良さではないと感じていたが、なるほどプロか、と。

 

 他の魚の下処理はすでに終わっており、最後のボラも捌けた時点でなでしこが、ていぼう部の

皆に笑顔で言う。

「じゃあ言った通り、ここからは私たちに任せて。」

「ああ、楽しみにしとるばい。」

「余った魚はこのフリーザーパックに入れて、冷凍庫に入れといてねー。」

黒岩と夏海がそう返し、調理場からぞろぞろ退室するていぼう部4人。さてさて、山梨っ娘の

彼女たちがあの魚をどう料理するか、ちょっと楽しみではある。

 

「じゃあユウ姉は、約束通りさやかちゃん達のお相手よろしく~。」

 夏海が嬉しそうに黒岩の背中を押す。黒岩はちょ、ちょっと待て、斉藤さんが来てから、と

逃れようとするが、当人たちの前に押し出されてあれ?と首をかしげる。

 鳥羽、さやか両先生はまだ飲酒を始めておらず、テーブルに並んで何やら書類にペンで

書き込んでいる最中だった。

 

「何しとっと?」

「学校に出すレポート書いてるのよ、両校の交流活動だし、経過と結果の提出義務あるの。」

さやかがそう返す。鳥羽先生も「学校にいい報告が出来そうですよ。」と笑顔で返し、書類に戻る。

昨日とは打って変わった先生らしい先生たちに一同おお~と感心する。

 その後、ていぼう部の面々は鳥羽先生からの色々な質問に応えたり、さやか先生からの

野クルの生徒たちの印象や感想を受け答えする。

 

 そうこうしているうちに恵那が料理を持ってやって来る。

 

「おまちどうさまー、まずは先生方のおつまみから。」

「いよっしゃあーーっ!」

「待ってましたぁーーっ!」

 クーラーボックスからすかさず日本酒を取り出す鳥羽先生と、缶ビールをひっつかむさやか。

先生らしい先生、ここで終了。

 

「キスの骨せんべいと、バリのゼンマイ(腸)の煮付け、ボラのソロバン(幽門)の塩焼きでーす。」

 骨せんべいはすっかりお馴染みだが、他2品は初めてお目見えする料理だ。どれどれ?と

ゼンマイの煮付けに箸を伸ばす鳥羽先生。

「ん!」

口に入れた瞬間、目を見開いて固まり、すかさずコップの酒をキューッと一気に煽る。

「これは日本酒に合うーーーっ!合いすぎるーーーっ!!」

ぷっはぁ!と満面の笑みで息を吐きながらそう吐き出す鳥羽先生・・・いやもうグビ姉でいいか。

 

「んーっコリコリしてて香ばしくって・・・ビールが美味すぎ!ヒャッホウ最高っ!」

ソロバンの塩焼きを頬張りながらそう叫び、缶ビールをごっごっごっ、と一気にカラにする

ビールバカ。

「じゃあ、私もご相伴に預かりますか。」

そう言ってさやかの隣に座る恵那、煮付けを箸でつまみ、一口して言う。

「ちょっとクセがあるけど美味しいね、こういうの現地ならではでいいよね~。」

 

「へぇ~、バリって内臓も食べられるんだ。」

意外そうな顔をする夏海と陽渚に大野が返す。

「瀬戸内海東部では好んで食べられている料理、地域の食性によって味が変わるけど、

今日釣れたバリは当たりみたい・・・。」

 

「ソロバンもええ味しとるったい、山梨のみんなもやるもんやね。」

いつの間にかグビ姉の隣にちゃっかり座って皿に箸を伸ばす黒岩、確かに罰ゲーム担当として

2人の接待をする役目なんだが・・・現時点ではむしろ得してないかコレ?

 

「ほらほら、小谷先生もお酒どうですか?この池池ってお酒、煮付けにすごく合いますよ。」

「・・・ですね、ビールだとちょっとエグくなる感じだし、じゃあ一杯だけ。」

普段ビールしか飲まないさやかだが、どうもこの煮付けの癖のある味と合わない。

せっかくだからとコップ一杯に日本酒を注いでもらい、肴と一緒に口にする。

「確かに・・・美味しいわ。」

「でしょでしょ~」

 へっへっへ、という表情でさやかに詰め寄るグビ姉。こういう席で差しつ差されつ出来る

相手が出来たはいいが、せっかく山梨ワインも伊豆の酒も他イロイロもあるのに、ビールしか

呑まないさやかに多少の不満があったのだ。

 

「山梨ワイン美味しい~!何コレ、呑む体内洗浄?」

「熊元芋焼酎いいわー!ドスンと効いてカッカするぅ~」

完全にチャンポン合戦に入った両先生、果たしてこの呑み方がどういう結末を迎えるのか、

地雷原に居座る恵那と黒岩は心で同じ事を祈る、お願いだから暴れないで下さいね、と。

 

 続いてやって来たのは千明とリン。だが持っているのは料理では無く何故か焚火台だ。

すでにその上では炭火がこうこうと燃えていて、持ってきた両名がそのせいで汗だくである。

焚火台をテーブルの脇に置いてふぅ、とひと息つき汗をぬぐう。

「炭火ってことは・・・何かここで焼くの?」

陽渚の質問に、千明は指を立ててちっちっち、と振り、皆に笑顔を見せる。

「まぁまぁ、仕上げに乞うご期待!それではっ!どうぞ~」

 

 その合図とともに、あおいとなでしこが大きな皿を持って登場する。皿の上には

アルミホイルで巻かれた何かがぐるりと並んでいる、皿の外側に向けて串が出ており

ちょうど見た目はアルミホイルを巻いた焼き鳥のセットのようだ。

「ホイル焼き!これは楽しみ♪」

「すっごくキャンプらしい!さすがですね~。」

「でもこれ何の魚?アルミホイルで見えないけど・・・」

嬉々とする大野と陽渚の横で夏海が訝しがる。普通ならアルミで巻いていてもその形や大きさから

何の魚か想像できるものだが、この串は全部が同じようにアルミが巻かれており、見た目での

判別が不可能になっている。

 

「ふっふっふ、そこがミソなんですよ、夏海ちゃん。」

なでしこが猫背でクチに手を当てて、ニヤついた半目でそう告げる。へ?という顔の

ていぼう部一同に、彼女はびしっ!と背筋を伸ばして宣言する。

 

「くじ式おさかなホイル焼き!一本一本が全て違う魚、違う味付けになっております!

何が出るかは焼いてみてからのお愉しみっ!」

 

 おお!何だって!?という表情の一同。魚種はまだしも味付けまで一本一本違うとは、

これは是非ともアタリを引きたいところだ。

「なるほど~これは初日の意趣返しやね。」

 黒岩の指摘にえへへ~と頭を掻くなでしこ。この合同キャンプの初っ端、黒沢はクジ引きで

期間中のパートナーを決めた、これはそのお返しともいえる料理だろう。

 

「魚を選んだらこれで目印を書いて焚火台に乗せて、大体5分が目安だから。」

 リンがテーブルにマジックを置いてそう言う、それに続いたのはあおいだ。

「で、ウチらの分のチョイスはそれぞれのパートナーに任せるわ~」

 え!?という表情で固まるていぼう部。確かにホイルに包んだ彼女たちなら、どれが当たりかは

ある程度察せるだろう。それを避けるために相方に選ばせようというのだ。

 

「うう・・・責任重大。」

 陽渚が冷や汗をかいて皿に乗るホイルを見る、パートナーがリンと千明の二人いる彼女にとっては

プレッシャー倍増のイベントだ。

「んじゃーあたしはコレとコレ。」

 陽渚とは対照的にあっさり選択する夏海。いっちばーん、と焚火台の火に2本の串を置く。

 

 他の皆も各々、自分のと相方の串をチョイスして目印をつけ、焚火台の上に並べる。

 

「じゃあ、メインといきますか!」

「「おーっ!」」

 千明の合図で一度調理場に引き返す山梨勢。帰ってきた彼女たちが抱えているのは、調理場で

自由に使えるドンブリ・・・

 いやそれはいい。問題はその上にてんこ盛りになっている食材だ!キスの天ぷらと白身魚の

刺身がこれでもかと盛り付けてあるではないか!

「これぞ海なし県民夢の海鮮丼!名付けてタナ式海鮮ドーーン!ヅラっ。」

 

 うわぁ、という顔をするていぼう部一同に、野クル+2名はえへへという表情で返す。

「一度は憧れるよね~、こういう『無駄に盛った一品』って。」

恵那の言葉にうんうんと頷く山梨勢。憧れの海鮮を浴びるように食したいという願望を

そのまま形にしたような丼、っていうか食べきれるのかコレ・・・

 

 各々の前にどん!どすん!と配られるドンブリ。はみ出さんばかりに盛られた刺身と

完全にはみ出しているキス天のこの存在感よ、というか下にご飯あるのコレ・・・?

 

 一同着席し、刺身醤油を回し掛けワサビを添える。ホイル焼きが出来るまではこの丼と格闘だ。

「「いっただきまーーっす!」」

 手を合わせて早速食べ始める。と、すぐにていぼう部の面々はある事実に気付く。

「(なるほど・・・カワハギにヘダイにバリ、いわゆる淡白な味の魚の刺身とキス天。)」

 どえらいボリュームと思ったが、ちゃんと薄味の刺身で構成されている、これならある程度は

消費できそうではある。幸いなことに刺身の下にはちゃんとライスがあり、普通に海鮮丼の

体を成している、これなら・・・

 

「!?」

 最初に気付いたのは夏海だった。一点を掘り進むように食べ進んだ彼女は、飯の下にさらに

刺身の層を発見する。

「2段海鮮丼!?」

ええっ?という反応をした後、同じように食べ進むていぼう部の面々。そして皆が2層目に

辿り着いた時、山梨勢がフフフという表情をする、追加でこう語る千明。

「『タナ式』といったハズですぜ、釣りでタナ(深さ)ごとに違う魚が釣れるのをヒントに

してみたんッス~」

 

 なるほど、下の層にあるのは脂ののったボラや、味の濃い赤身魚の刺身が中心だ。

味代わりと、食べる人の意表を突くこの2層式!これは技ありの一品、そして漁れたてでないと

材料の痛みが怖くて出来ない料理だ。

「やっば、めっちゃ美味い!」

上下の層を交互にかっ込みながら夏海が唸る、陽渚も大野も黒岩も一心不乱に丼を堪能している。

「こんなの完食したら太っちゃうね~。」

「でも美味しい・・・さすがなでしこちゃん。」

 陽渚に続いて大野が食べながら絶賛する。が、そのコメントをなでしこ自身が否定する。

「私じゃないよ、みんなでアイデア出したんだ~。」

「串焼きの方がなでしこの案ね。」

「なでしこちゃんはホイル焼きの達人やからなぁ~。」

 解説を入れながらも山梨勢もこの贅沢丼を堪能する。が、彼女たちは食べながらも未だどこか、

落ち着かない様子なのだが、その理由はやはり夏海によって明かされることになる。

 

「え・・・まだ下がある!まさかの3段構造!?」

 丼の底の方に敷かれていたのはウツボのかば焼きだ、周囲のご飯にタレがじんわり染みており

刺身とはまた違った香ばしさと甘辛いタレの味が堪能できる。

 

「名古屋の『ひつまぶし』を参考にしてみました~、最後はお茶漬けにしてみるのもアリですぜ!」

 そう言ってヤカンを携える千明。香ばしいかば焼きにはお茶漬けがよく合うし、なによりこの量を

完食するのにお茶で流し込むのは助かる。

 

 と、ピピピッ!とスマホのアラームが鳴る。

「焼き魚もそろそろいいかな~、さてさて、誰が何を引いたのかな?」

むふふと言う表情で焚火台に向かうなでしこ。皆も一時箸を止め、自らの印がついた串に

手を伸ばす。

 

 さて、クジ引きの結果は?




カァ~~~~ッツ断層!断層!だんそう、ダンソウ・・・(利根川
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