グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦! 作:三流FLASH職人
「やれやれ、ヒドイ目にあった・・・」
千明が頭をバスタオルで拭きながら皆と合流する。泥酔状態のまま砂浜で寝こけていた
鳥羽先生を皆で担いで搬送している最中にリバースアタックをモロに食らって
風呂に入り直していたのだ。
皆がたむろしている食事テーブルでは、各々が夏の夜を楽しんでいた。
「ツモ!サンシキジュンチャンドラドラ。」
「ひええぇ・・・また?志摩さんめっちゃ引き強い。」
カード麻雀に興じているのはリン、恵那、夏海、黒岩の四人だ。といっても完全に
リンの独壇場と化しているが。
「リンちゃん麻雀できたんやねー、誰に教えてもろたん?」
「ん?お母さんだけど。」
あおいの質問に答えるリン。と、ちょっと下を向いて青い顔になり続ける。
「でももう母さんとは麻雀したくない・・・お父さんもお爺ちゃんも同じこと言ってた。」
「そのお母さん、どんだけ強かとね。」
「あ、アキちゃんおかえりー、こっちで花火しようよ~。」
「お!いいねぇ~夏の夜と言えばやっぱコレだぜ!」
なでしこの誘いに花火に混ざる千明、早速ロケット花火に手を伸ばす。
線香花火を堪能している大野や色変わり花火で空中に絵を描いている陽渚の横でセットし、
ビンに次々と立てて連続発射!パパパパーンと景気よく炸裂するロケット花火。
「花火にも性格出るなぁ~」
「確かに。」
と、そのロケット花火を目で追いかけていたなでしこが、天を仰いで声を上げる。
「うわーーーー満月だーーーーーっ!!」
その声にえ?と反応する一同、全員が砂浜に出て天を仰ぐ。
「ホントだ!」
「奇麗やね~」
「今日は大潮だったから・・・」
ちょうど彼女たちのいるキャンプ場からは海を臨む空の反対、山側から登った月は今ようやく
その蒼い光を砂浜に降り注ぎ始めたところだった。
「少し歩けば海に反射する所までいけっけど、どぎゃん?」
黒岩が後ろ指を道路に向けてそう提案する、この蒼い月が海に反射すればさぞかし・・・。
「「行くーーー!」」
満場一致で夜の散歩となった、キャンプ場の先は曲がり角になっており、そこを曲がれば
月がギリギリ海にかかる位置になる、そこにある堤防を先まで歩いていく一同。
「う、うわあ・・・・」
「ほぁ~~~」
「世界が蒼いよ!すっごいっ!!」
「・・・奇麗。」
満月と海の織り成す蒼の世界。天からはその白金の月光が夜の闇を青く照らし、
海に落ちた輝きは波に反射されて宝石のようにきらめいている。
空の闇、海の闇が満月によって照らし出され、海面に映る月がまた闇を、天を、そして
彼女たちを照らし出している。
幻想的な世界。
そう、世界は幻想的な美しさを当たり前のように内包しているものだ、見ようとしなければ
それは決して見ることが出来ず、物語の世界の中だけの物のように思うだろう。
でも、それを求めて歩けば、走れば、旅すれば、きっとそんな素敵な世界を
見ることが出来る。
だからアウトドアは素晴らしい。
「海って・・・すごいね。」
そう呟いたのはリンだ、自分の地元ではまず拝めないこの光景、それを演出している
海という青の、水の星の力。
しばらく言葉も無く堪能した後、各自スマホでその世界を写真に収め、キャンプ場に帰還。
その後はテーブルで写真品評会となった。
今撮影した景色の確認もあるが、野クル+2名が撮ったキャンプ写真にもていぼう部の面々は
大いに興味を掻き立てられた。
「おおー富士山!一度は生で見たいよな~。」
一枚目を見せたなでしこがスマホをスライドさせつつ、ふっふっふと笑う。
「富士山ええで~、写真ぎょうさんあるでな~。」
「田舎のおばあちゃん久々だな。」
リンのツッコミを聞きながら、なでしこのスマホに見入るていぼう部の面々。
「うぉー、やっぱすげぇ!」
「自然の山とは思えんね、形整いすぎばい。」
「かわいい・・・」
「『ちくわ』っていうんだよ。えへへ、ありがとー。」
大野が眼鏡の下からでもわかるほど顔を和ませて恵那のスマホに見入っている。
「でもその犬、暗殺刺客のライセンス持っとるんやで~、油断したら殺されるんやで~。」
「ひっ、ひぃっ!」
あおいが目を泳がせまくって放ったホラを真に受け、恐怖に顔を引きつらせる陽渚。
「うひ~、見とるだけで寒そうな湖ばい・・・」
「いや実際凍えたし、山中湖。」
「なんだこの鹿!ゆるキャラ・・・にしてはデカいし。」
「あー、鳥羽先生ここでもお酒飲んでる。」
旅。それを続けて来た彼女たちのスマホには、その想い出の景色がぎっしりと詰まっている。
山に、湖に、川に、橋に、そして海。
そんな彼女たちの思い出に、ここ芦方はどう映るだろうか。
一同そんな思いを共有したのか、その後は皆の撮影会となった。
魚釣りでパートナーを組んだ者同士、共にバイクで走った二人、豊かな胸を持つ両名、
思いがけず再会した幼馴染、、そしてお互いこのクラブを引っ張る部長同士・・・あらゆる
組み合わせで肩を抱き、笑い合い、オチャらけあってカメラのワンカットに収まっていく。
・・・最後にテントで爆睡する先生方の写真を撮りに行ったら、二人とも下着姿で寝こけていて
皆の失笑を買ったことを付け加えておこう。
夜明け前、海岸の波打ち際にひとりの影。裸足を波に洗わせて、遠く水平線を望んで
たたずんでいる。
「あれ?各務原さん?」
「みたいだなー、早起きだねぇ。」
テントから起き出した陽渚と夏海が海岸に立つ人を見てそう話す。あの薄い桃色の髪の毛は
彼女で間違いないだろう。
「なんや、なでしこちゃんもう起きとったんか。」
「なでしこは夜から朝に代わる景色、好きだって聞いた。」
あおいやリンも起き出して合流、他の皆もぞろぞろとテントから這い出てくる。
「なーんか気持ちよさそ、私も行こっと。」
恵那の言葉に皆が賛同し、こぞって海岸に駆け出す。南国の潮騒も今日でお別れだ、
最後に波打ち際を堪能するのも悪くない、と。
だが、皆がばたばたと近寄ってきても、クツと靴下を脱いでばしゃばしゃと水音を立てても
なでしこは動かなかった。
「なでしこ・・・」
千明が声をかける横で、リンがやれやれという顔で一言。
「・・・泣くなよ。」
ぽん、となでしこの肩に手を置くリン。その後ろではていぼう部の面々が『え?』という表情。
「だって・・・だって・・・」
肩をすくめてそう嘆いた後、なでしこは振り向いて皆に向き合う。その顔を涙で
くしゃくしゃに歪めて。
「帰りたくないよぉ~」
天を仰いでそう嘆くなでしこ。千明はやれやれ、と手を広げて返す。
「おいおい子供じゃあるまいし~」
「だって・・・だって・・・」
-もう一生、会えないかもしれないんだよ-
そのなでしこの言葉に一同は、はたと気付く、彼女の真意に。
山梨県と熊元県、その距離は女子高生の彼女たちにとってあまりに遠い。
片道でも8時間、旅費にしても2万超え、そしてその長い距離の間には、多くの街と、
景色と、そして人。それらを飛び越えて彼女たちが再会する可能性は限りなく小さいだろう。
いくつもの偶然が重なり出会った仲間。同じ時間を過ごし、竿と魚と格闘し、寝食を共にして
そしてわずか3日間で親友といえる間柄になった。
でもそれは間もなく終わる。帰ったら彼女たちは再び遠い遠い所の同じ年代の女子に
戻ってしまうのだ、全てを思い出という引き出しに、スマホという箱に押し込んで。
「なんや・・・辛気臭いのはゴメン、やで・・・」
「馬鹿野郎、泣かせんじゃねぇや。」
あおいと千明が感化されたように肩を震わせる。恵那も指をそっと目にやり、熱いものを
拭き取ろうとする。
陽渚は黙って下を向き、せり上がってくる嗚咽を懸命に堪える。
「なんだひな、泣いてんの?あはは・・・」
ぼろぼろ涙をこぼしている夏海が強がるようにそう肩を叩く。大野は眼鏡の奥を滲ませながらも
優しく笑う。
やれやれ、と小さく息を吐いたのは黒岩だ。すぅ、と息を吸い込み・・・
「釣り人になるな~ら~、ちゃんと心に止めておきましょ~♪」
その歌を聞いて大野が、あ、と意図を察し、人差し指をぴっ!と立てて続ける。
「時化た顔してたら~アタリ~だって気付け~ない♪」
そう、せっかく楽しい時間を過ごしたのに、泣いちゃったら台無しじゃない、と。
「地球を釣る時~は、どうせな~ら~裏側まで~♪」
夏海が半分涙声で、それでも元気に続ける。
「いつかGETしちゃ~う、魚FROMブ~ラジ~ル~♪」
山梨?近い近い、私たちはブラジルの魚だって釣っちゃうんだから、との思いを込める陽渚。
そんな歌を、歌詞を聞いて思わず泣いたまま笑顔になる山梨の少女達。
「「ザワザワな~コ・コ・ロ・じゃ、ウキウキは~揺・れ・な・い、
ゴミは持ち帰~る釣ったもの~は~食べ~る~♪」」
ここで過ごした三日間を凝縮したような歌を歌う、ていぼう部の4人。
「「「おおな~み~こな~みざっぶーん!今日だって~ノ~フィッシュ~じゃっぽーん!
で・も・釣り止められない♪」」」
梨っ娘達も歌に合流する。この曲は確か少し前に流行ったアニメの曲だ、うろ覚えながらも
今の思いを込めて全員で合唱に入る。
「「「な・な・い・ろの海に、フ・ル・キャ・ス・ト、しようよ『GO!GO!』
可能性、無限大 WORLD~広がって『イェーーーイ!!』」」」
全員がジャンプする。そう、世界は広がった、遠くの地から来た、遠方の来賓を迎えた。
皆で歌い、飛ぶ。この一瞬の親友との最後の時間、夏の終わりのこの瞬間を胸に刻むために。
「「「ト・ビ・ウ・オ・に乗って、雲・突き抜けるよー『いよいっしょぉーっ!』」」」
まるで曲に合わせて寄せてくる波をナワトビのようにジャンプして飛び越え、歌い続ける。
「「「まだ・まだ・これ・から~、釣れ・ない・あな・タモ~」」」
「若いっていいですねぇ。」
「ええ、ホントに。」
そんな彼女たちをテント際から見守る鳥羽美波、小谷さやか両先生。
「私たちも、また会えるかしら?」
そう問うさやかに美波は、手で酒のおちょこを持つ仕草をしつつ笑顔でこう返す。
「ええ、もちろん。」
エア乾杯をしてエア飲酒し、ぷっ、と吹き出す両先生。なんだ、私たちもあの娘たちと
大して変わらないじゃない、と肩を組んで大笑いする。
「あははははははは・・・」
「ぷっ・・・はっはっはっはっは。」
海からの風が、少女たちの歌を運んでくる。
-ロマンロマン求~めてっ!釣・り・の・世界へ~♪♪-
必殺・きららジャンプ!
ヤングチャンピォン烈「・・・え?」