グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦! 作:三流FLASH職人
「じゃあ、お互い自己紹介しましょうか。」
喫茶・軽食の店『ほだか』の奥のテーブル2面を使って対面するていぼう部と野クル他2人。
ていぼう部顧問のさやかが手を合わせてそう提案する。
「あいよー、あたしはさっきも言ったけど、ていぼう部部長の黒岩悠希ですー。」
クツを脱いでソファーにもたれながら、だらしなくアグラをかいてそう言う黒岩。
「うわ・・・みっともねー。」
「部長、他校の皆さんの前なんですから、もっとこう・・・」
夏海と大野がたしなめるも、黒岩はせからしかねーと手をひらひらさせながら
次にいきんさい、とジェスチャーする。
「2年の大野真です、今日から三日間よろしくお願いします。」
立ち上がり、ぺこりと頭を下げる大野。対面する野クルの面々と恵那、リンは
立った時のその長身ぶりに思わず『うぉっ』『ふぁ~』『(デカい・・・)』と漏らす。
うっ、という表情で赤面して着席する大野。
「1年の帆高夏海です!趣味は体を動かす事、好きな食べ物はナポリタンとカツサンド!
よろしく!!」
元気よく立ち上がってそう宣言する夏海。ちょうど向かいに座っているなでしこが
対抗して「よろしくー!」と右手を上げる。
「あら、今『ほだか』って、ひょっとして・・・?」
鳥羽先生の指摘にびしぃっ!と指さして笑顔で答える夏海。
「さすが先生、正解ッス!ここあたしン家。今ナポリタン作ってもらってるから!」
その提案に全員がおお~、となる。ちょうどお昼過ぎでお腹も限界に近かった所だ。
「1年の鶴木陽渚です、裁縫が得意で釣りはまだまだ初心者ですけど、よ、よろしく・・・。」
後頭部を掻きながら、えへへ、という顔で挨拶する陽渚。一同はよろしくー、と返すが
その中でなでしこだけが『およよ?』と言いつつ陽渚の顔をじっと見つめる。
「んー・・・」
「え、な、何ですか・・・?」
と、なでしこが陽渚をびしぃっ!と指さし、叫ぶ。
「ああーーーーっ!『編み棒ソード』の鶴木さん!ひとつ下の!!」
その絶叫を聞いた陽渚は、背中にぞわりとした寒気を感じた。そう、あれは確か小5の時
家庭科の時間で付けられたあだ名だった・・・
「え・・・え?あの、どこかで会ってましたっけ?」
「私だよー、ほら、6年生の時に高学年合同授業で一緒だった各務原なでしこ!」
グイグイ来るなでしこに困惑する陽渚。確かに小学生の時は中部地方にいたが、山梨ではなく
静岡の方だった。仮にそこで会っていたとしても全く覚えが無いんだけど・・・。
両手で自分の顔を指差し『ほらほら』とアピールするなでしこだが、陽渚は記憶のどこを
探してもその顔が出てこない、しまいに『むぅー』と膨れるなでしこ。
「こらこら無理言うな、なでしこ。」
そう言ったのは隣に座るリンだ。スマホを操作し、その画面を陽渚のほうに向ける。
「鶴木さん。これで分からない?」
その画面をテーブル越しに、ぐぐっ!と顔を近づけて見入る陽渚。瞬間『あっ!』と
目を見開き、頭上に電球が灯る。
「思い出した!調理実習女王の各務原さん!っていうか・・・え?え??え???」
スマホ画面に写る中一のなでしことなでしこ本人を交互に見る、目鼻口のパーツは確かに
一緒だが、その体系は完全に別人だ。スレンダーといっていい今の彼女に比して、
スマホの中の彼女は顔も体もふっくらと丸かったから。
「なるほど、『鶴木』=剣でソード、なんやね。」
「説明しよう!伝説の編み棒を手にした陽渚嬢は勇者となり、あらゆる敵の装備を解き
防寒着からシュラフ、果てはテントにまで編み変えてしまうのだーーーっ!」
両方の部長がすっかり『いつものノリ』で解説を入れる。
当人二人は「久しぶりだねー」と手を合わせてぶんぶん上下させている。
というか野クル側は誰も『調理実習女王』にツッコまないのか・・・
「で、私がていぼう部顧問の小谷さやかです。ライフセーバーの資格も持ってます
海釣りは危険もあるので指示には従ってくださいね。」
はーい、と答える山梨勢の面々。ていぼう部の面々はジト目で『先生が一番危険ですけど』
な感想を心で呟く。
続いて野クル側の自己紹介に移る。
「野クル部長の大垣千明ッス!いや~まさか臼州まで来るとは思ってなかったッス。」
「っていうか、さっきから『野クル』って何?」
夏海の質問に千明が、ああ、という表情で返す。
「野外活動サークル、略して『ノクル』なんスよ。去年出来たばかりでまだサークル扱い
なんで。」
その言葉にていぼう部一同目を丸くする。自分たちはこれで結構伝統のある部活なんだが
クラブをイチから立ち上げるのそのバイタリティに感心しきりだ。
「犬山あおいです~、釣りは初心者やけど、よろしゅう。」
おっとりした関西弁であおいがそう続く。夏海と陽渚は思わず目線を彼女の胸元に集める、
身長は高くないのに胸は大野先輩と互角?あやかりたい・・・
「各務原なでしこです、以前静岡に居たので釣りは少し経験あります。と言っても
お父さんに2,3回連れてってもらっただけなんだけど・・・」
「なでしこちゃんは料理も達者やでぇ~、食べるほうもやけど。」
うんうん頷く山梨勢、本人はえへへ、と頭を掻いてニヤけ顔だ。
「斉藤恵那です。野クルには入ってないんだけど、まぁキャンプ仲間ではあります。
釣り、楽しみにしてます。」
短めの挨拶を負える恵那に続いてリンが立ち上がる。
「志摩リンです。あの・・・先日はおじいちゃんがお世話になりました。」
その言葉にていぼう部の面々が、あっ!という顔をする。
「おお!あの爆釣じーちゃん、マジで凄かったなぁ、もう釣りまくりで。」
「あー、志摩さんのおじーちゃんやったか、バイク乗っとったし、なんか納得ったい。」
「ダンディなお爺さんでしたよね・・・映画俳優みたいな。」
各々の感想に千明が対面から同意する。
「キャンプしてるじーさんってなんかシブい人多いんだよな、あたしも一人知ってるよ。
『肉、食うかい?』って。」
「だから誰やそれー。」
前々から聞くその千明の人物像に、リンは思わず心の中で唸る。
「(まさか・・・いや、まさかな。)」
「最後に私が野クルの顧問、鳥羽美波です。社会科の教師ですけど、昔からキャンプしてて
いろいろ勉強しながら顧問やってます、至らぬところもあると思いますが、どうかよろしく。」
ぺこりと頭を下げる鳥羽先生に全員が拍手する。だた、ていぼう側と山梨側でその心中は
大分違うのだが・・・
-さやか先生と違っておしとやかで優しそう、なんか『頑張る新任教師』って感じでいいなぁ-
-呑むまでは奇麗な鳥羽先生なんだけどねー、小谷先生に迷惑かけなきゃいいけど-
「おいっしいーっ!鉄板ナポリタンって何でこんなにおいひぃの~。」
満面の笑顔でパスタを頬張るなでしこ。対面の夏海はへっへっへー、という表情で
我が家の人気商品を誇る。
「(ベストの固さにゆでられた麺に、適度に絡むケチャップが鉄板の焦げにより香ばしさを加え
ベーコンの脂身がえもいわれぬ旨味をかもし出している、しかも鉄板の熱により冷めないから
クドさからくる飽きにも無縁・・・ウマい、しか出てこない。)」
心で食レポするリン。空腹も手伝ってか、ボリュームのあるナポリタンがお腹はもちろん
心まで満たしていく。
「さて諸君、この臼州キャンプのテーマだが・・・」
食後、千明が眼鏡を光らせて神妙な表情で一同に話し始める。
「なにせ旅費がめっちゃかさんでる今回の旅行、なので現地でいかに節約できるかが
大きな課題だ!」
こくりと頷く山梨勢。夏休み中のバイトで資金には余裕があったはずだが、さすがに
臼州まで来てしまうと交通費でほとんど吹っ飛んでしまう。なのでいつものような
観光地浪費の旅は望むべくもない。
「そこでっ!食事はていぼう部さんの協力を得て、釣った魚で賄うことを目標とする!」
ごくり、と唾を飲み込む一同。海なし県の彼女たちにとって海釣りは楽しみであると共に
果たしてそう上手くいくのか、最悪ライスだけの食事で凌ぐハメにるのか、と不安が襲う。
「伍島合宿と同じだよなー」
「ねー」
夏海と陽渚が顔を見合わせて笑う。もっとも伍島は釣りのメッカであり、そう考えると
今回の合宿は前より厳しいものになるかもしれない。
「・・・今夜の食材はすでに用意してます。なので明日の朝昼夜、そして明後日の朝食分
頑張って確保しましょう。」
大野が小声でそうハッパをかける。実はていぼう部側はある程度釣りの予定を立てており
釣果と食材も最低限は見込める目途は立っている。
「ありがたい、ここの食事と今夜まで面倒見てもらえるとは・・・よしみんな、気合入れて
釣りするぞーーっ!」
「「おーーーっ!」」
気合いのスイッチが入った所で、さやかがぽんっ!と手を叩いて宣言する。
「じゃあさっそく出発しましょうか、まずはキャンプ場へ移動して設営ね。」
全員が一斉に席を立つ、いよいよ臼州、芦方釣りキャンプ、ここに開幕!
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