グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦!   作:三流FLASH職人

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第5話 パートナー決定!

「テント設営おわったー!」

「こっちも出来たぞー。」

 

「うそっ、もう!?」

「早ーい・・・」

 

 亀ヶ浜キャンプ場、受け付けを済ませた一行は早速テント設営に取り掛かったのだが、

野クル側の5人が3つのテントを設営し終わった時、ていぼう部の4人はまだ2つ目に

取り掛かったばかりだった。

「さすが本職たいねー。」

「まーもう何度もやってますからねー、慣れっすよ慣れ。」

黒岩の言葉に千明が答える。ていぼう部はこの夏初めに伍島合宿でテントを立てて以来

一年生二人にとってはまだ2度目の設営、冬以前からずっと立てている野クル側とは

さすがに手際で差が出る。

 

 野クルの面々に色々指導して貰って、ようやく二つのテントを完成させるていぼう部。

 

「さて、ここでイベントがあるったい!」

 黒岩が皆に向けてそう話す。何事かと注目する面々の中、陽渚は部長にまたキツネの耳と

尻尾をイメージする。ああ、また何か企んでる・・・

 

 黒岩はやおら右手を上げる、手にしているのは5本の竹ひご、その根元を隠すように握っている。

「ここからこっちとそっちで一人ずつペア組むったい、それで釣果勝負すっけんね~。」

おお!と全員が興味深そうなリアクションを見せる。

 確かにこのまま釣り合宿しても、どうしても野クル側同士、ていぼう部側同士で固まる

傾向になるだろう。だがお互いがひとりずつペアを組めば否応なしにコミュニケーションが

取れるだろうし、対決風味にすればより盛り上がる事間違いない。

 

「こっちは4人そっちは5人やっけん、1組だけ3人になっけど、その組はラッキーたい。」

ん、と野クル勢に竹ひごを握った手を突き出す、なるほど、これクジなんだ。

大垣を先頭に、全員が竹ひごのクジを引く。根元には青、赤、黒、そして白のペイントがある。

クジを回収し、白を一本抜いて今度はていぼう部側の大野、夏海、陽渚がくじ引きをする。

 

青組:黒岩悠希、斉藤恵那

赤組:大野真、各務原なでしこ

黒組:帆高夏海、犬山あおい

白組:鶴木陽渚、大垣千明、志摩リン

 

「おー、やったな鶴木、3人やっけん有利やぞ。」

「うぐ・・・」

 言葉に詰まる陽渚。確かに人数が多いなら有利だが、その分教える手間が増えるともいえる。

野クル唯一の経験者である各務原さんは大野先輩とのペアだし、あそこがトップの可能性が

極めて高い。大丈夫かな~、と不安な表情。

「鶴木さん、ご指導よろしくたのんまっせ~!」

「まっせー。」

うう、大垣さんと志摩さんから発せられるキラキラとした信頼の視線が痛い・・・

 

「で、勝負って、なんか賞品でも出るの?」

夏海のその質問にニヤリ笑って返す黒岩。

「最下位にはバツゲームが待っとるたい、みんな頑張れ~。」

その言葉にびりっ!と場の空気が張り詰める。

 

「これは負けられへんなぁ~。」

目を泳がせながらあおいがそう呟く、それを受けて野クルサイドにむ~ん、という空気が漂う。

「にゃっはっは、その意気その意気。よろしくね犬山さん!」

「あおいでええよ、勝つで夏海ちゃん!」

「おうっす!」

パン!と両手を合わせる黒組の二人、なかなかやる気マンマンである。

 

「ひょ、ひょっとして肝試しとか、怖いのやるの?い、いま夏だし~~」

罰ゲームの内容を脳内想像して軽くパニックななでしこを大野が諫める。

「大丈夫、このへんに心霊スポットは無いし、それに・・・」

「それに?」

「私が絶対釣らせてあげるから大丈夫、任せて!」

胸を張り、少し鼻息を荒げてそう宣言する大野。釣り歴&歴代釣果ダントツトップの大野は

自分の為よりも誰かのためにならこそ張り切れる性格をしている、その意味でなでしこにとって

頼もしい相棒になるだろう。

 

「お~、みんなヤル気満々たいね。斉藤さん、うちらも負け・・・あれ?」

黒岩が恵那の姿を見失ってきょろきょろする。と、背後から恵那の声。

「あ、黒岩さん、ちょっと動かないで、もうすぐ終わるから。」

「・・・何ね?背中にゴミでも付いとっと?」

いや、背中じゃない。なんか後頭部をもぞもぞされとっとが・・・髪型乱れとった?

と疑問に思いながらも斉藤のされるがままに静止する黒岩。

 

「はい完成。」

 恵那が手をぽんぽんと叩きながら『作品』をお披露目する。と、夏海と陽渚はぷーーーっ!

と吹き出した後に爆笑、大野は口元を抑えながら苦しそうにうずくまる、どうやらツボに

入ったようだ。さやかもまたその頭を見て楽しそうにケラケラ笑ってる。

そらそうだ、何せ黒岩の頭の上に髪の毛で結ったケモノ耳がぴょこん、と生えているのだから。

 

「なんか黒岩さんって狐のイメージがしてねー。」

「他校の上級生によく出来るなお前、チクワと今生の別れになったらどーする。」

へらへらと頭を掻く恵那に、リンが物騒なツッコミを入れる。が・・・

「こりゃ見事たい、この器用さがあれば釣りも余裕ばい!」

スマホの手鏡モードで自分の頭を眺めつつ、思わず『気に入った』という顔をする黒岩。

 

 

 その後、キャンプ場から車とバイクで『ていぼう部』部室に移動。あらかじめ用意しておいた

竿や仕掛け、エサ、そしてライフジャケットを各自に配る。

「今日の釣り場はここの堤防たい。各自釣り方は自由、勝負は明日やっけん今日はしっかり

釣り方を覚えるとよかよ。」

黒岩の言葉に続いて、さやかが皆に真剣な目で告げる。

「くれぐれも安全に配慮してね、ライフジャケットがあるからと言って決して油断しないで。

危険に気付いたらお互いどんどん声をかける事。」

「「はーいっ!」」

皆の同意を得たさやかは、鳥羽先生にも皆の監視をお願いする。快く了承する鳥羽美波。

お互い生徒の安全を預かる顧問の身、ましてや一方は遠方からの遠征ともなれば両者とも

無事に皆を家に帰すことが何より重要だ、さすがにこの状況では両者の『お愉しみ』も

控えざるを得ないだろう・・・まぁそれは後で・・・フフフ。

 

 

「穴釣り?」

 なでしこは大野に渡された竿と仕掛けを見ながら問う、釣りの経験と言ってものべ竿の

サビキ釣りしか知らないなでしこにとって未知の領域だ。

「うん、この仕掛けを岩の隙間に落とし込んで『根魚』を狙うの。」

ブラクリと呼ばれる仕掛けで釣るこの方法、実は年中安定した釣果がある。釣れない時期には

皆がこの穴釣りに集中するのでそうでもないが、他の大物が狙えるこの時期、根魚はあまり

釣り人の関心を引かない、それだけに今ならハズレのない釣り方と言える。

「いよーっし、頑張る、ぞっ!」

 

「まずはキャスティングを覚えてー。」

あおいに仕掛けの投げ方をレクチャーする夏海。例によって狙いはシーバス一本のようだ。

「えーと・・・40cmくらいまで巻いて、手で糸を抑えて、後方確認やったな。」

「そうそう、そんで振り子の要領でびゅいんっ!って。」

「おーっし、行くでぇぇっ!」

ビュン!

ドボォン!!

「うわ!目の前に着弾したわ!?」

「あ・・・ごめん。ベールを空けるの言うの忘れてた。」

にゃははっ!と笑う夏海の顔を見て不安になるあおい。大丈夫なんかなこの娘・・・

 

「こんな感じ?」

「うひー、臭っさ!」

リンと千明が3連針に差したオキアミを陽渚に見せる。うん、良い感じ、と笑顔で返す。

彼女ら白組がチョイスしたのはカワハギ仕掛けのウキ釣りだ。陽渚得意のアジゴ釣りは

時期を外してるし、キスもこの時期は大型化していて遠投が必要になる。

かといってノベウキだとエサ取りが大量に沸いてタナに辿り着く前に付けエサが無くなってしまう。

 部長や大野、たこひげ屋の店長などに色々聞いて試行錯誤した結果、最近はこのカワハギ釣りの

仕掛けで本命のカワハギをはじめバリやブダイ、タカノハ等の釣果を上げていたのだ。

 元々『おいしい魚を釣って食べる』のが好きな陽渚にとって、釣れる魚を釣っておいしく

食べられるなら釣りの方法にはこだわらない。ましてや罰ゲームが掛かっているとなれば

尚更である。

 

「フカセ?」

「そうたい、こうしてエサ付けて海に流すだけ、簡単やろ。」

黒岩が恵那に仕込んでいるのは、陽渚と同じオキアミの付けエサを使った釣方だ。

ただしオモリは極力使わず、沈めるのではなく海に流す感じの釣り方。

当然エサ取りの小魚が難敵だ、撒き餌を上手く使ってエサ取り魚を誘導し、仕掛けを沈める必要がある。

グレやチヌなど釣り人のお目当てを釣るのに適した、やや上級者向けな釣り方。

 

 こうして各自夕方まで釣りのテクニックを実践で磨き続けた。さて、初日の釣果は・・・?

 

「大野・各務原チームが圧勝やね。」

 穴釣りで見事15cmオーバーのガラカブを8匹ゲットした彼女らが本日のトップだ。

他のチームは全員がボウズだった。もっとも陽渚チームと黒岩チームはいわゆる外道を

何匹か釣ったのだが、ルアー釣りの夏海チームはアタリさえなかった。

 

「やっぱエサ使ったほうがええんとちゃう?」

不安げに夏海に問うあおいに夏海は平然と笑顔で返す。

「大丈夫だって、シーバス一匹釣ったらもう勝ったも同然だし。」

そうは言うがここまで手ごたえが無いと正直勝てる気がしないのだが。

「・・・しゃあない、釣れんかったら一緒にバツゲーム楽しもか。」

はぁ~、とため息を吐きながら青い顔と泳いだ目をしてあおいが呟く。

 

「さ、片付けしてキャンプ場に帰るわよ。向こうの調理場で食事の準備始めましょ。」

さやかが柏手を打って皆を誘導する。隣では鳥羽先生もうんうん頷いて、初日の無事に安堵する。

 

 

 初日の『その時』は、もう間近に迫っていた・・・。

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