グビ姉vsビールバカ、南海の大決戦!   作:三流FLASH職人

7 / 18
第6話 ヤマを越え、そして大ヤマが来る!

「な、なでしこと・・・」

「お、大野の・・・」

「「お料理がんばるぞっ!」」

 おー、ぱちぱちぱち、と拍手が起こるここ、キャンプ場の炊事場。

陽渚でおなじみ恒例の魚捌き初挑戦を盛り上げるべく、本日釣果のあった二人に

料理番組風に挨拶をさせる・・・退路を断つとも言うが。

 

 大野は魚屋の娘で、捌きの腕は一級品なのだが、こういうノリにしれっと乗っかれない

内気な性格が災いしているだけだが、もう一人のなでしこは別の事情がある。

 単に料理の腕前だけなら、なでしこも普通の女子高生そこのけのレベルだ。ただ彼女は

血が苦手で、生き物を〆る経験もない、魚のドメ差しから内臓取りは未知の領域だった。

 

 ていぼう部のモットーは『釣ったら食べる』である。外道や毒魚、リリースサイズはともかく

ちゃんと料理して美味しく頂ける魚はちゃんと食べるのが決まりである。

命を頂く、というテーマを正しく捉えているからこそ、この部活が学校創立から続いている

伝統ある部活になったのだ。

当然、本日2匹のガラカブを釣ったなでしこには、その命を有難く頂く義務があるのだ。

 

「じゃあまず、見本を見せますね。」

「は、はいぃ。」

両腕を胸に当てて体を縮めながら、青い顔で大野が手にしたガラカブを凝視するなでしこ。

「ガラカブは生命力が強く、釣ってもしばらくは元気ですから、先にトドメを差します。

こう、エラの上から延髄を断つ感じでぐっ、と。」

トン、と大野の包丁が魚の頭を素通りし、獲物はスッと大人しくなる。

 

「「おおー。」」

野クル側から思わず声が漏れる。その手際の良さは女子高生では無く料理人のソレに近い。

そのままウロコを落とし、腹を裂いて内臓を取り出す動作に一切の淀みはない。

「はい、出来上がり。」

ガラカブは明日朝の味噌汁の具材とダシに使うとのことなので下ごしらえはここまでとなる。

「じゃあ、やってみよう・・・って、各務原さん?」

当のなでしこは顔を手で覆い、ふるふると震えていた。

「あう~・・・ワタシ血を見るの苦手なんですよ~」

 

「って、いつから見て無かったの?」

夏海の指摘に、なでしこはそれこそ死んだ魚の目をして返す。

「ト、トドメを刺すとこから・・・」

「最初っからじゃないか!」

思わぬヘタレたなでしこに千明が檄を飛ばす。隣のあおいと恵那は、あの無敵の

なでしこちゃんにまさかこんな弱点が、とむしろ感心する。

 

「誰かを思い出すたいね~。」

「・・・う”」

黒岩の指摘に陽渚がシブい顔をする。あそこにいるのはほんの4か月前の自分だ、

はぁ、と息をついて意を決し、とことこ調理台に歩を進める。

「大丈夫だよ各務原さん、私なんて最初はしょっちゅう気絶してたけど、でも出来るように

なったくらいだから。」

 

 その言葉に大野がうんと頷き、なでしこは、よ、よし頑張ってみる、と両腕をぐっ!と握る。

かつて小6の時、家庭科や体育などの合同授業で一緒だったひとつ下の鶴木さん、彼女は

忘れているかもしれないが、なでしこは覚えている思い出があった。理科の合同授業で

カエルの解剖のビデオを映写機で見た時の事。

動物の苦手な彼女は、画面に腹を見せたカエルが出ただけで気絶し、保健室に直行とあいなった。

で、なでしこはと言えば、腹を裂かれてカエルの体液が見えた瞬間に失神、気が付くと

保健室のベッドで陽渚と仲良く寝ていたのだ。

「・・・あの鶴木さんが今じゃ魚釣って捌くんだもん、私だって負けられない!」

包丁を持ってイカリ肩になるなでしこを見て、大野が力を抜くようたしなめる。

 

 と、リンがなでしこの前に出て、思わぬアドバイスを披露する。

「なでしこは料理得意なんだから、魚を『殺す』んじゃなくて『美味しい料理にする』って思えば?」

その言葉に、なでしこがぱぁっ!と明るい顔になり、びしっ!とリンを指差す。

「それだよリンちゃん、ありがとう!」

 

 8匹目を捌き終える頃には、なでしこのその包丁捌きは大野に迫るレベルに達していた。

一同が拍手喝采する中、陽渚は夏海に「アッサリ抜かれたじゃん。」と皮肉られる。

 

「さーて、夕食の前に風呂入っとく?」

「さんせーいっ!」

 黒岩の提案に山梨勢全員が手を上げる。何せ初の魚釣り挑戦、手には魚やオキアミの匂いが

こびりついており、とてもこのまま食事をする気にはなれない。ましてや初の臼州での半日、

南国の太陽に晒された体は汗ばんでおり、食事の前にはぜひともさっぱりしたい所である。

 

 -かぽーん-

 キャンプ場の管理棟にある浴場は思ったより広く、女子高生9人が一気に入れるだけの

余裕がある。それでも海水浴シーズンは満員の人でごった返すのだが、今は海も終わっており

そもそも本来なら浴場は閉まっている時期なのだが、管理人の赤井店長の好意で開放して

貰っているのだ。

「ふぃ~、暑い夏に入るお風呂もいいねぇ。」

「マッチポンプで熱湯をかける感じだ・・・」

湯船でくつろいでそうこぼす恵那とリンに、隣にいる黒岩が「気が合うね~」とほっこり顔で

返す。

 千明は洗い場で懸命に指にこびりついたオキアミの匂いを落とそうとやっきになっている。

それを横目で見ながらあおいは「(ルアー釣りもええトコあるやないか)」と夏海と

アイコンタクトして笑い合う。

 大野となでしこは絶賛料理談義中だ、お互いレパートリーを教え合ったりコツを伝授したりと

他の面子が入ってこれないハイレベルな話に花を咲かせる。

 

「ん?」

そう発したのは黒岩だ。誰かがいないことに気付いて皆に問う。

「そういや・・・鳥羽先生はどぎゃんしたと?」

「・・・あれ?」

「そういやいないね。」

ていぼう部の面々がいぶかしがる。保護者とはいえ彼女も今日一日疲れているだろう、

風呂は食事の後派なんかな?と山梨勢の方を見る。

 

「ああ、先生はお酒飲んでますよ、多分。」

「多分やなくて確定やろ~。」

「今日は道中の新幹線でも飲んでなかったし、確信を持って言える。」

恵那、あおいに続いてリンがキラリと目を光らせてそう断言する。

「鳥羽先生、お酒飲めるっと・・・?」

さーっ!と青い顔になる黒岩。それに気付かない千明が能天気にこう続ける。

「先生のアダ名『グビ姉』ですからねー、呑むと正体無くして怖いっすよ~。」

 

 その瞬間、風呂場の空気がぴしっ!と固まる。

 

「大変だよ、小谷先生も一緒だよ、付き合わされてたら大変だよ!」

「まずいで、鳥羽先生に付き合わされたら完全にアルハラになってまうで!」

なでしこの言葉にあおいが追随する。山梨勢は一斉にやばいな、という顔をする・・・が!

 

「大野、夏海、鶴木っ!」

「「はいっ!!」」

ていぼう部全員が真っ青な顔をして一斉に立ち上がる。明らかに山梨勢より危険レベルが

1段階高い表情で一斉に駆け出す。

「え、え?どうしたの??」

思わず追随し、風呂から上がる一同。更衣室に飛び込み、あわただしく服を着替える。

「うかつやった、呑むなとは言っておいたが、相手に勧められたらってケースが・・・」

「もしかして・・・小谷先生も酒癖やばいの?」

恵那の質問に夏海がシャツを着ながら返す。

「みなさんは近づかない方がいいです!あの人はマジでやばいっすから!!」

 

 訓練されたレンジャー隊員の如く一気に着替え終わった一同が、管理棟を抜けて

テント前の食事テーブルに到達!

 

 

 

 -そこで、彼女たちが見た物は、果たして-




自分の地元では『ガラカブ』ではなく『ガシラ』です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。