2019年6月28日──これは、私がこのハーメルンに産声を上げた日です。そして私は、私自身によってこの物語を閉じてしまいました。
2021年5月30日、この日をもって、私は再出発します。もう二度と、あのような真似はしません。
本作はリメイク前の前作の流れを踏襲しつつ、前作の執筆中になかった設定や後付けとなったものを本筋に組み込んだものです。前作のような中身の薄い作品にしてしまわぬよう努力しますので、どうぞご覧ください。
では、どうぞ。
ほぼ全てを失くした状態で、目が覚めた。土砂降りの雨の中で、何をするでもなく立っていた。
「おい!君!そこで立ってる君だ!どうしたんだね!?」
軍服を着た男が背中側から近寄ってきた。
──なぜ俺は後ろが見えてる?なぜそれを軍服と認識している?
全く意識を向けていなかった周囲に意識を向ければ、小さな草木の葉の一枚一枚、遠巻きに俺を警戒していた小動物も見える。……なぜだ?
「あ……?」
それを認識した途端に頭の中で凄まじい激痛がして、泥の中に膝を着き、何故か握っていた掌が緩んだ。そうして最後に見えたのは、帽子が落ちるのも構わず誰かが走ってくる姿だった。
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倒れ込む青年を見て、より一層脚の回転を速くした。偶然日課の散歩中に立ちすくむ彼を見て、考えるより先に体が動いたのは軍人としての性だろうか。倒れた彼を抱き起こし、手首の血管に指を当てた。
「脈は───ある。よし、誰か連れて来なければな。」
命の糸がぷつんと切れたかのように倒れるのだから余計に焦った。私の鎮守府周辺で事故死など堪ったものではない。
私の名は
深海棲艦は今から約60年程前に突如として出現し人類を殺し尽くさんとする、今現在最大の敵対勢力だ。それまでの兵器では一切傷を負わず、玩具のような砲で軽々しく空母や戦闘機を落としたと聞いている。私のような『提督』と呼ばれる人間と、また選ばれた人間が進攻を食い止めているのが現状だ。
なんとか彼を肩に乗せて引き摺る格好で歩いていく。土砂降りの雨のせいで軍服が水を吸い重くなるが、人命のためならばこの程度どうということはない。引き摺る片
方とは逆の手で携帯電話を操作して助けを呼んだ。
「聞こえるか?私だ。」
『どうした相棒?水音が酷いが──』
「男手を何人か寄越してくれ、救急だ。」
『───ッ分かった!すぐに行かせる!』
電話に出てくれた私の相棒は、一切私の言葉を疑うことなく行動に移してくれた。ほんの二分足らずで屈強な憲兵達が彼を私から受け取り、凄まじいスピードで鎮守府へ運んでいった。
「助かった、流石に歳を取ったな。人ひとり程度運べないとは。」
「いえ、提督殿は頭脳労働ですし、肉体労働は我々の仕事であります。」
「そうか、何はともあれありがとう。……しかし不自然だな、この大雨の中、たった一人で立ちすくんでいた。」
「
「だとしたらもっといい場所があるだろう?あの波止場の辺りに立ってればそのままお陀仏なんだから。」
「───謎は深まるばかりですな。」
「全くだ。」
不自然過ぎるが、その不自然さがかえって彼がスパイてあったりする可能性を否定する材料になる。これは一波乱ありそうだと私は脱げた帽子を拾った。
あれから丸一日、青年が目を覚ました。そう聞いた私は手早く必要事項を紙に纏めるとあっという間に医務室の前にたどり着いた。青年は薄く目を開けて、天井の眩しさに気付いたのか一瞬目を閉じて、今度はしっかりと両目を開いた。
「ここは、どこ?あなたは、誰?」
思ったよりも言葉がしっかりしていることに驚きながらも、私は自分の名前を名乗った。
「私はこの『呉鎮守府』の提督をしている、横地大翔だ。君は気を失う前のことは覚えているかい?」
「……確か、気付いたらあそこにいて、その前は──覚えてない。あの時の人は、あなただったのか……ありがとう。」
手摺につかまりながら漸く身を起こした彼の目は、左と右で瞳の色が違っていた。左は深い海の底のような青、右は輝くような黄金色。そして黄金色の方だけが目まぐるしく動いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めたら、視界がとても眩しかった。けれど両目は閉じている。気のせいかと思って両目を開けるが、すぐに閉じた。眩しかったのは間違いではなかったらしい。
「ここは、どこ?あなたは、誰?」
初めて口が動いた感じがした。まだ口元の感覚に慣れていない。
「私はこの『呉鎮守府』の提督をしている、横地大翔だ。君は気を失う前のことは覚えているかい?」
「……確か、気付いたらあそこにいて、その前は──覚えてない。あの時の人は、あなただったのか……ありがとう。」
目をまともに開いて、目の前の男を見て話をした。そのはずなのに周りの様子が見えすぎて、頭が混乱してしまいそうだ。
「後で詳しく話を聞く。何か必要なものはあるか?」
必要なもの、必要なもの……この鬱陶しい視界を塞げるものがいいな。
「眼帯」
「え?」
「右目に対応した眼帯が欲しい。」
「分かった、取りに行かせる。それまで少し待っていてくれ。」
そう言われて目を閉じる。もう一寝入りするか───
──きて、起きてくれるか?」
体感一瞬だった。さっきの男に揺り起こされて、手にあった眼帯を受けとると、手早く着ける。よし、これで少しは───うん、いい。
確かにあの後ろまで見える鬱陶しい視界は消えて、なんとなく馴染む視界になった。
「さて、君のことを聞かせてくれ。と言っても、何も覚えていないんだよな?」
「いや、ひとつだけ覚えてることがある。」
「ほう、聞かせてくれるかい?」
唯一残っていた記憶。それがちゃんと形を持つのに手間取ったが、ようやく形になった。
「名前、俺の名前は───」
この瞬間は、俺にとって生涯忘れることはないだろう瞬間のひとつになった。だって────
「涼、
───俺が、『霞野涼』として、産声を上げた日なんだから。
はい、終了です。
前作では神様転生から始まりましたが、本作ではこっちの世界からスタートです。
けど最初にいくのが呉なの変わってないですね、なんでだ?
もう初手意味不明過ぎる上にタグがほぼ息してないって思った人、感想欄に来なさい悪いようにはしないから。
ま、まあ次から原作も仕事するし、他所はね?
さて、次回の『二刀装甲兵、突貫する!』は~?
「じゃあ、話していこうか。この世界の現状についてね。」
絶望が広がっていった様が、大翔の口から語られる。
「じゃあ、ここにいる女性は皆──」
「そう、兵器だ。」
残酷な現実が突き付けられる。
次回第一話「Hello World. 残酷な世界」
お楽しみに!
また次回ね前書きにてお会いしましょう!