はいどうも、鋏人です。
ようやく一話、ここからスタートです!
では!どうぞ!
自身を霞野涼と名乗った青年は、目の前の人物からの尋問を受けていた。
「───えーつまり、出自も理由も、何ひとつ分からず、名前だけ覚えていた、と。」
「そういうことになる」
「一般教養とかはあるか?」
「そこも問題ないな、あんたの格好を見て軍服だと認識出来たし。ただ第二次大戦までの歴史は知ってるが、ある一点を境にその先を全く知らない。」
「分かった………これで一応こちらからの事情聴取は終了した。今度は涼、お前の聞きたいことがあれば機密に抵触しない範囲で話そう。」
そう言われて、少しの間頭を捻った涼は、今一番不自然になっている歴史についての記憶を聞くことにした。
「なんで、こんな施設が日本にあるんだ?もう日本に軍はないはずなのに……」
「それについては───話すと長くなるな。楽にしていてくれ。」
そう言って自身も楽な体制で椅子に掛けると、天井を向いて悲しげな表情をしてみせた。しかしすぐに顔を涼の方に戻すと、狭い部屋に十分届く程度の声で話し始めた。
「じゃあ、話していこうか。この世界の現状についてね。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
きっかけは、大体60年程前だった。その頃まだ私は生まれていなかったから、先輩方から聞いた話に過ぎないがね。
太平洋のど真ん中、そこに突如現れた人型の生命体。最初は未知の生命体で、人と似ているから穏和な対応を取ろうとしたんだ。────けれど結果は失敗。向こうは人間の使者団が近づくや否や小型の砲台を出現させて船を沈めた。勿論それに激怒した各国の軍が攻撃を始めたんだが、一体と思われていたそいつが海底から仲間を引き連れて軍を殲滅した。
───そう、殲滅。幸いにも映像はあったが、生存者は誰一人としていなかった。そして東西南北あらゆる場所でそいつらの仲間と思われる人型生命体が出現した。どれも禍々しい姿で、そしてどんな兵器でも──核ですらも──全く効力を持たなかった。
その当時人類は70億人もいたらしいが、たったの三年やそこらで人類は30億程度になっていた。
そんな中で、アメリカと日本のある場所でやつら───深海棲艦と呼ぶようにしているんだが、ともかくそれが襲来したとき、海の中から人間と酷似した生命体が現れたんだ。────嘘じゃないさ、本当のことだとも。そして彼女達は、あっという間に深海棲艦を撃滅してみせた。彼女達は自分たちを『艦娘』と名乗り、人類のために戦うことを表明した。
彼女達は様々なことを教えてくれた。敵は艦娘や、同時に発見された『妖精さん』なる存在による武器以外では傷ひとつ付かないこと、『艦娘』は海から出てくる者だけではなく、人間も成れること、それを指揮する『提督』が必要であることも。
それが公表されたときの喜びは如何ほどだったか、想像に君も難くはないだろう。なんて言ったって、勝ち目のなかった戦に光が射したんだから。
けれど、たったひとつだけ、人間から艦娘になるには欠点があった。それは────
彼女達の持つ『艤装』を完全に扱えるのは、女性だけだった、ということだ。男性でも一部を扱うことは出来る、今も完全に艤装に適合した男性を探す取り組みはあるが、未だ見つかっていない。そして主戦場は海の上だ、つまり今戦場に立っている兵士は………全員、女性だ。しかも、大人だけじゃなく『女の子』と言うべき年齢の子すらいる。
馬鹿馬鹿しいだろう?けれど人類は、そうやって耐えるしかなかったんだ。
勿論このことは一般に知らされていない。そうなれば女児の出生届が極端に低くなるのは火を見るより明らかだからだ。
改めて名乗ろう、私は日本海軍所属『呉鎮守府』の提督、横地大翔少将だ。
ここまで話を聞いてしまった君は悪いが日本国軍の管轄から抜け出すことは不可能になった。勝手に話しておいて申し訳ないが、機密漏洩阻止のため、協力してもらう。
───あれが見えるかね?あそこにいるのは年端もいかぬ女の子だが、彼女達も艦娘だ。駆逐艦クラスのな。
そう睨むな、私だって好きで戦わせている訳ではない。変わってやれるなら変わってやりたいものだよ。けれどそれが出来ない、男だから、ただそれだけでな………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
話を聞き終えた涼は、震える声で
「じゃあ、ここに来る途中、偶然見えた女性は───」
「そう、皆兵器だ。」
ため息を漏らす大翔と、天を仰ぐ涼。自分が変われたら、と思っていることは、誰の目にも明らかだった。
「なぁ、提督さん」
「どうした?」
「とりあえず、現状については分かった。さっき言ってた、俺は軍の管理下だって。最初に何をしたらいいんだ?」
俯いていた顔を上げると、拘束を外してついて来いという風に手招きした。それに従ってついていく途中で、かなり日焼けしたとみられる長身──180cmはある──と出会った。
「提督、こんな所にいたのか。今日の演習の結果を────そいつは誰だ?」
ずれた眼鏡を直して真っ直ぐに涼を見つめる。その目には疑いの光がありありと浮かんでいた。
「やぁ武蔵。彼は霞野涼、ここの近くで倒れていたから引き込んだんだ。別に怪しい人物ではないから安心してくれ。」
「いや怪しさしかないのだが……貴様が言うなら仕方があるまい。下手な真似をするなよ。」
鋭い眼光に射抜かれて、涼はその雰囲気に恐怖して
「分かり、ました。失礼のないように……」
小さくそう言うだけで精一杯だった。それを見て満足したように頷いた武蔵は、「執務室で待っているぞ。」とだけ告げて大股で歩いていった。
「あれ、怖すぎ。小さい子泣くぞ…」
「しょうがないさ、君は部外者って扱いだからね。」
そうして奇異の目に晒されて歩く中で、先程の女性の警戒した雰囲気とは別の方向性を持ち、かつ自身に向けられた悪意に似た雰囲気を感じ取った。
(何処だ、何処にいる?近くじゃない───)
直後、右目が痛みを発し、誰かの声が聞こえた。
(男なんて、どうせ全員────)
突如として見える世界が変わり、暗い部屋で拘束されて目の前の男を見上げていた。視界に映る薄汚い笑みを浮かべた男は、この男とは似ても似つかない。そしてそれが腕を振り上げた所で───
「ッ───!?」
「どうした、体調がよくないか?」
「……いや、問題ないです。」
突然立ち止まったことを不審に思ったらしい大翔だったが、問題ないと返した涼に「そうか」とだけ言ってまた歩き出す。そうして機械油の臭いが充満した建物へ入って行った。
「時雨の艤装は点検終わって──まだ木曽はやれてなかったよね。非番明け近いしそっちやろうか。───親父さーん!木曽さんの艤装手伝ってー!」
「あいよ!お前たち、掛かるぞ!」
セーラー服を着た女性が、工具片手に右へ左へ走り回り、人間の半分もいかない背丈の小人が、その容姿に似つかわしくない濁声を上げてこれまた工具を両手に鎧のようなものを分解し、また組み立て、動作を確認していく。
「すげぇ───ここは?」
「ここが呉鎮守府の工廠だ。ここで資源を使い武器の開発、艤装の建造、修理などを行う。」
「なんだろう。ロマンが詰まったって表現が合ってるかわからないが、そんな感じだ。」
二人が話していると、それに気が付いた女性が周りの小人へ一言言って大翔の所へやってきた。
「提督さん!どうしましたか?」
「空の艤装はあるか?少し前に保護した身元不明者の艤装適合試験がしたい。」
「こちらの方は?」
「はじめまして、霞野涼といいます。つい先日ここの提督に助けてもらいました。勝手に敷地に入ってしまった上記憶喪失なもので軍の管理下ということになりました。」
「そうなんですね!私はここで働く艦娘の一人、『工作艦 明石』です!よろしくお願いしますね!」
フレンドリーな対応をされて驚きながらも、差し出された手を取り握手した。
「さて涼、今から君の艦娘の艤装に対する適性を調べる。さっきも話した通り女性しか艦娘にはなれないが、一部だけでも動かせれば、それを使った船や沿岸警備などを行ってもらう。いいかね?」
「了解しました、それで、肝心の艤装は何処に?」
「あれだ。」
大翔の指を指す先には、無機質に置かれた鉄の骨が鎮座していた。
「なんか、他のと比べて明らかにヤグそう。」
「何故だか動いてくれなくてな、まぁ適性調べるだけならどれでも変わりはしない。」
「今から始めます、利き腕を出してください。」
「はい。それで、どうしたら?」
「これを腕に当てるから、右腕以外を動かしてみて。」
右腕を差し出し、明石が艤装の腕に当たる部分を涼の腕を沿わせると、突然艤装が涼の体の方に絡み付いた。
「えっちょま何なになに?え?これどゆこと?なんか補食されそうになってるんだけど!」
しかし涼がどれだけ叫べど大翔と明石はポカンとして動かない。
「止めてくれっておい!止まってないでこっち止めて!」
叫ぶ涼を気にも留めず、勝手に涼の体に合わせたかのように変形する艤装、それが完全に涼の体にフィットしたとき────
「陸上棲兵です!なんでこんな所に──」
陸軍の装備を持った小人が駆け込んできて、涼の目の前で腹を貫かれた。
「な……?んだよ、これ?」
腕から生えたブレードに酷似したものと、人間とは思えない容姿。
「(そうか、こいつらが───)
深海棲艦──!」
無意識の内に艤装の初期行動制限を使用者権限で破棄し、誰に教えられた訳でもないのに格闘姿勢を整える。
「この、殺人鬼が!」
目の前でその小人を殺さんとするブレードを叩き壊した。
ファファファのファ!?
なんで!?なんでいるの深海棲艦!?
いやマジで戦闘なくて死にそうだったから入れたけど……世界観的にセーフだからヨシ!(現場猫)
さて、次回の『二刀装甲兵、突貫する!』は~?
「これが、艤装……!」
力を手にした涼は、眼前の敵を駆逐せんと動く。
次回第二話「人類の造った奇跡」
お楽しみに!
むた次回の前書きにてお会いしましょう、それでは!