ニ刀装甲兵、突貫する!   作:鋏人

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はいどうも、鋏人です。

本作初戦闘です。気合い入れて書きましたので、どうぞご覧ください。

では、どうぞ。




第二話 人類の造った奇跡

「この、殺人鬼が!」

 

そう叫んで目の前に立つ深海棲艦が持つブレードを叩き壊した涼。機械のようなその瞳が涼を見据え、瞳孔に当たるのだろう部分が収縮して驚きを表現する。

 

「おら!お前の相手は俺だ!」

 

驚きによって次の行動が遅れた陸上棲兵に対し、興奮状態でまともに思考が出来ていない涼は、無意識の内に敵を最短で仕留める方法を理解していた。

体を低くして深く一歩踏み出し、鳩尾に拳を喰らわせる。しかしその状態でも陸上棲兵は体勢を一切崩さない。反撃とばかりに突き出した拳は、涼によって掴まれて───

 

「死ね。」

 

ラリアットのようにして首を引き千切られた。

 

「これが、艤装………!」

 

荒い息をしながらその死体を見下ろす涼だったが、ふと外で聞こえた音に気付く。

 

「おらおら!撃ちまくって近付けさせるな!今は客人もいるんだぞ!」

 

妖精さん達がライフルを手にして迫る陸上棲兵を迎撃しつつ、機関銃がそれを薙ぎ払っていく。しかし陸上棲兵の持つ銃によって四肢が砕かれて倒れ伏す者や、頭を撃たれて即死する者が見えた。

そして、何を感じ取ったのかはわからないが、優に30はいた敵のうち数体の目が涼と合った。

 

「やば──!!」

 

近くにあった手頃な大きさの艤装に隠れると、金属と金属のぶつかる甲高い音が絶え間なく鳴り続ける。

 

「おい艤装!名前はなんて言うんだ!何が出来るんだお前には!」

 

その声に反応したかのように、首の後ろから出てきたヘルメットのようなものが頭を覆い、そして左目に機械が装着された。

 

「うわっ!何だこれ!?」

 

左目を通して見える多くの情報。それら全てが脳で統合、処理されていく。

 

「基礎情報は後で見るから!なんか戦闘に使える機能ないのか!初戦闘なんだ最低限でいい!」

 

その言葉を理解した艤装は、戦術行動に必要な行動と、それに付随する機能を提示した。それの中のひとつに目ぼしい物を見付けた涼は、敵の方へ向き直した。

 

「『体外式強化骨格(PAギア)』ジェットパック起動!姿勢補助システム、空中制御モード!」

 

地面を蹴ってジェットパックが上向きに青い炎を放つと、8メートルは一気に飛び上がり、天井を軽く突き破ってしまった。しかしそれを気にせず拳を引き絞ると、こちらに銃を向けていた敵を飛び越して─────

 

「喰らえ!」

 

重力と下向きに加速するよう向きを変えたジェットを上乗せした一撃を、陸上棲兵の脳天目掛けて叩きつけた。その頃には後10体程度には敵も減っていたが、戦闘を優位に進められる存在である艦娘がいないことによって五分の戦いとなっていた。

そこに文字通り空から降って湧いた涼の存在は、敵味方問わずに思考を停止するに値するものだった。工廠が襲撃されたことで艤装を扱えるものはいないと思い込んでいたことから、陸上棲兵はいきなり空から降ってきて仲間の脳天をかち割った存在への理解できない恐怖症から。

 

「次!」

 

けれどその中で、当事者たる涼だけは動き得た。子供の喧嘩のように馬乗りになって、

 

「─────!!!」

 

艤装の最大出力が乗った拳で、肋骨ごと心臓にあたる機関を叩き潰した。

 

『◆◆〇☆#%$%$!!』

 

人類には全くもって理解不能な言語で、理解がとても簡単な行動が行われた。丁度敵のど真ん中に着地してしまっていた涼は、全ての敵から同時にフォーカスを貰う羽目になったのだ。

銃弾をもらうのは割り切り、男性特有の筋力と背丈でもって拳を顔面に叩き込むも、多すぎる敵からの銃撃で涼は負傷してしまう。更に涼を艦娘と勘違いした妖精は、攻撃に巻き込まれぬように少し遠くへ避難してしまった。

 

「くっ───」

 

その内の幾つかが右目の眼帯を掠め、金色の瞳が覗く。そして異常な視界によって興奮状態が覚めた瞬間、涼の動きが止まって敵からの銃撃をほぼ全て受ける状態になった。

 

「(終わった)」

 

そう頭で考えた直後───

 

 

 

轟音と共に周りの敵が一気に爆散した。

 

「何が──!!」

 

音の源の方を向けば、セーラー服を着て砲台のついたランドセルと篭手に小さな筒を付けたものを両手に持つ、中学生くらいの少女が見えた。

感情を映さない瞳で涼を見ているが、妖精さん達が呼び掛けているのを見て艦娘だと判断した涼が近寄ろうとした瞬間────

 

───地中から陸上棲兵が現れる。

───少女はその光景に驚きつつも銃を向ける。

───それより早くそいつがブレードを突き出す。

───少女の腹に突き刺さって、横に刃を払われて倒れる。

 

その光景が見えた直後、少女の足元が振動して、見えた通りに陸上棲兵が出現した。

 

一歩、引き伸ばされたかのように感じるほどゆっくりと流れる光景の中、ブレードが少女の腹に刺さり始め、苦悶の表情を浮かべる。

 

二歩、地面に流れる血に触れて、それが掌の中で激流へと形を変える。

 

三歩、激流が渦巻き、水が陸上棲兵を囲む。

 

「吸い込まれて────終わりだぁぁぁ!!!」

 

ブレードが他の部分に当たらぬように引き寄せて、全身のばねを使った拳と激流の力を重ねて、頭部を粉砕した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

右目と左目の焦点が合わずに目眩がするが、一応深海棲艦らしい存在は全滅したようだった。これからはこんな戦闘が日常になるんだと自分に言い聞かせ、俺は命を救ってもらった女の子の所へ歩いていった。

どうやら彼女も戦闘が終わったことを理解していたらしいが、さっきの不意打ちのせいで腹から少し血が流れている。

 

「大丈夫ですか?」

 

興奮が冷め切らぬ頭で、出来るだけ丁寧に話しかける。俺に気付いているのかいないのか、下を向いてふらついていた。心配になって屈み込もうとすると───

 

「さっき拳で戦ってたのはあんたか!」

「お、男ォ?!」

「命の恩人の顔は一目拝ませろ!」

 

妖精さん達が駆け寄ってきて、矢継ぎ早に俺に向かって言葉を投げ掛ける。返答したいけれど、まずは彼女を治療できる場所へ運ばなければ。

 

「ちょっといいか?この人さっき深海棲艦のブレードに刺されたから、治療出来る場所へ運びたい。」

 

そう言うと妖精さん達が口々に心配の言葉を彼女へ向けて発するも、

 

「近寄るな!」

 

凄まじい怒気を放って全員を退けてしまった。それと同時に糸が切れたように倒れ込み、俺は慌てて彼女を支え、彼女の艤装だけ解いて医務室の場所を聞いて走り出した。

 

 

「何を抱えている!」

 

工廠へ行く途中で出会ったあのおっかない女性と医務室への道中出くわしたが、

 

「ブレードが腹に刺さった!深さはわからない!どいてくれ!」

「───!手伝う!医務室は三階だ!速くいくぞ!」

 

それを聞いて脚を止めると、上を見上げて

 

「何処?」

「あの端の所だ!」

「荒っぽくなるけど、許して。」

 

あの人が何かを言うより先に、艤装のブースターを起動して地面を蹴り跳躍する。

 

「何をする気───止めろ!」

 

鎮守府は見る限り頑丈な鉄筋コンクリートの造り、ならば艤装ひとつ程度の重みは耐えてくれる筈───

 

 

予想通り。少々何処かが欠けたような音はしたが、派手に損壊した訳ではないようで無事に着地。そして窓を叩けば仰天した様子の妖精さん達が窓を開けてくれた。

 

「どちら様?」

「それよりこの子を、深海棲艦のブレードが腹に刺さった。」

「緊急だ!止血の用意を!───その人をこっちに、これで大丈夫です。」

「ありがとう。窓は閉めていくから。」

 

そう言って三階から地面へ飛んで着地すると、また鬼のような形相になったあの人が見えた。

 

「鎮守府を破壊する気か!確かにここは戦艦砲にも耐えるよう出来てはいるが、運んでいる患者のことを考えろとあれほ───ん?貴様、所属している艦娘ではないな。何者だ?そのヘルメットを外せ。」

 

大人しく外し忘れた頭部の機械を収納するように艤装へ指示すると、汗で濡れた頭がはっきりと感じられて大分気持ち悪かった。

 

「貴様はさっきの……何故艤装を纏って完全に動ける?どんなトリックを使った?」

「トリック、と言われても───」

「惚けるなよ、」

「武蔵、その件については私から話そう。涼、武蔵、着いて来てくれ、工廠へ行こう。」

 

渋々といった表情で矛を納めてくれた女性──武蔵さん

──と俺は、丁度よく現れた提督と工廠へ行った。

 

 

「───さて話してもらうぞ相棒。なんで男が艤装を扱っている?」

「武蔵、信じられないかもしれないが────

 

 

彼、霞野涼は『完全適合者』だよ。しかも男性の。」

「馬鹿な!そんな筈は────いや、現実として扱えているのは事実なのか。」

「あの、申し訳ないんだが話についていけてない。『完全適合者』って、艤装を使える以外に何かあるのか?」

「いや、全くない。寧ろ艤装が扱えるからこその呼び名だよ。『完全適合者』は、艦娘になる女の子のみに与えられる名前だ───本来なら。

君は世界で唯一人、()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

それを聞いて、驚くよりも先に口元に笑みが浮かんでいた。

 

「どうした、何か可笑しいか?」

 

武蔵さんが聞いてくるが、違うんだ、可笑しい訳じゃない。

 

「いや、嬉しいんだ。」

「嬉しい?」

 

そう、嬉しいんだ。だって───

 

「──だって、俺より小さい子もいるんだろ?そんな子に任せっきりで生きていかない選択肢が出来たのは、嬉しいことに違いないさ。」

 

驚きの表情を隠さない二人に対して、もう一言続けた。

 

「今日、目の前で何人も死んでるのを見た。あの血が、最後に力を貸してくれたんだ。あの人達のお陰で、死なずに済んだ。だから

 

 

この奇跡(流れた血)を無駄にするものか。」

 

決意を固めて、自分に向けて誓った。

 

 





はい、終了です!

幾つも頭のおかしい動きを見せてくれた涼ですが、こんなものでは止まりません。まだまだ行きますよ!

さて、次回の『二刀装甲兵、突貫する!』は~?

流した血を無駄にはしないと誓った涼、直ぐ様訓練が始まる。

次回第三話「師匠」

お楽しみに!
また次回の前書きにてお会いしましょう!
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