ニ刀装甲兵、突貫する!   作:鋏人

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どうも、鋏人です。

風邪で倒れました。皆さんもどんな原因で体調を崩すかわからないのもありますので、お気をつけください。

では、どうぞ!


第三話 師匠

0600、喧しい起床ラッパの合図によって、俺は叩き起こされた。

昨日の襲撃事件の後、今後の処理については提督にやって貰うことが確定したので、俺は今日からこの鎮守府の新人艦娘──娘じゃないな、息か──として訓練を受けることになった。

一応空き部屋を俺の部屋として利用することになったが、それがなんと鎮守府の端にある部屋だった。半分物置小屋と化していたので掃除だけで昨日の残りは終わってしまった。

 

起床ラッパが鳴った途端に目が覚めたのは自分の体じゃないようで気分は良くない。だが便利であるのは確かなので十分に利用させてもらう。

 

支給された軍服は憲兵さん達のお下がりだったが、そんなところで頓着する理由はないし、すぐに新品を用意すると言われているので気にすることはない。

一日のスケジュールは持たされた紙に書いてあったのでそれを軽く流して読む。どうやら最初は朝礼だそうだ。さっさと靴を履いて、憲兵さん方と落ち合って朝礼の場所へ向かう。二、三日程度は道を覚えるためにも朝だけ付き合ってもらうという話になっていた。

 

「おはようございます。」

「おはようございます、随分と慣れていますね。」

「勝手に体が起きたので、釣られて頭もすっきりしました。」

「ハッハッハ、それはいい。朝が肝心ですからね。」

 

少しだけ話して朝礼の場所に着くと、憲兵さん達と別れて少し離れた場所に立つ。提督が手招きをしてきたので提督の近くに立つ。

 

「朝礼の後に涼のことを発表するから、自己紹介を頼んだよ。」

「分かった。」

 

朝礼が始まり、点呼と提督の話、そして俺には到底分かりそうにもない難しい話と質疑応答があって、朝礼は終わった。

 

「それと、今朝は君達に報告しなければならないことがある。

新人が入ることになった、来てくれ。」

 

呼ばれて台の上へ上がると、「え?男?」という反応があちこちから聞こえてきた。それを見て楽しんでいるのか、提督の頬は緩みっぱなしだ。

 

「えー、初めまして。霞野涼といいます。昨日ここに来たばかりで右も左もわからない物ですが、追い付けるよう努力しますのでよろしくお願いします。」

 

当たり障りのない自己紹介をしてちらりと提督を見ると、小さく頷いて言った。

 

「聞きたいことは山ほどあるだろうが、一旦朝礼は終わりだ。朝食にしてくれ。その後は0830までに第三水雷戦隊と訓練隊、涼は執務室へ。」

 

動揺が冷め切らぬ中、台から降りて皆の流れる方向に沿って動いていく。その流れの中で、

 

「おい、お前。そこのお前だよ新人。」

 

呼ばれてふと後ろを振り返ると、男と同じように眼帯をした艦娘がいた。

 

「えっと、初めまして?おはようございます?」

「いや固くなるなって。オレは天龍、天龍型軽巡洋艦一番艦、天龍だ。お前、名前は霞野涼だったな?」

「ええ、天龍さんはどうして声を掛けられたんですか?」

 

ほぼ同年代と見られる相手に敬語で話すと大分違和感があるが、それは相手も同じだったようだ。

 

「敬語はいいって、なんかお前そういうキャラじゃなさそうだし。

さっき提督の言ってた第三水雷戦隊の隊長をさせてもらってる。昨日の一件も色々と話を聞きたいからな、朝食一緒にどうだ?」

「お言葉に甘えさせてもらうかな。よろしく天龍。」

 

軽い握手をして天龍の後に続いて食堂に入ると、中は艦娘でごった返していた。その中で見たことのある背中を見つけると案の定、武蔵さんだった。しかし俺は武蔵さんを見つけたことより、武蔵さんとその周りの艦娘が食べているものに目を回した。

 

「なぁ天龍、なんか朝っぱらから馬鹿みたいにヘビーなもの食ってるやついるんだけど。」

 

そう、なんと武蔵さんとその周りの艦娘が食べていたのは、普通の人間で換算すると四人前はあるだろう肉だった。

 

「ん?あぁ戦艦艦娘のことか?戦艦は艤装もそうだが使う人間も大量のエネルギーがいるからな、仕方ない。」

「あの体のどこにそんな容量が………」

「やめろ、女のそういうとこに触れると死ぬぞ。」

 

そう言われてそれもそうだと思い、列に並ぶとすぐに順番が回ってきた。

 

「鳳翔さん、和定食ひとつ。」

「はいはい、そちらの方はどうされますか?」

「えっと、同じのお願いします。」

「和定食二つですね、少し待ってくださいねー。」

 

とても大人しそうな女性、鳳翔さんが注文を受けて横の妖精さんと一緒にあっという間に定食二つを用意した。

 

「はいお待たせ、和定食二つね。」

「ありがとな、」

「ありがとうございます。」

 

受け取って席に座り食べ始めると、何人か小さい子が寄ってきた。

 

「天龍さん、一緒に食べていいかしら?」

「おういいぜ雷、涼も構わんよな?」

「全然、人数が増えるのはいいことだ。」

 

そう返すと、雷と呼ばれた少女の他に三人がやってきて、隣に座る形になった。

 

「いただきます!」

『いただきまーす!』

 

元気の良い挨拶に頬が緩む。それに気付いて天龍に見られてはたまらないと横を見れば、寧ろ天龍の方が頬が緩んでいた。

 

「おーい、箸止まってるぞ?」

「はー、やっぱり駆逐艦は最高だわ。ちっこくてかわいー」

 

犯罪に手を染めてそうな発言だったが聞かなかったことにしよう、よし、俺は何も聞いてない。

 

「天龍、聞きたいことがあるんじゃないのか?」

「おおそうだったぜ、忘れちまうとこだった。」

「何々?聞きたいー!」

「電達も聞いていいのです?」

「いいぜー、それでな涼、昨日の陸上棲兵の襲撃のときさ、戦ってた艦娘ってお前のこと?」

 

どうやら天龍は昨日戦闘をしていた艦娘の存在を妖精さんから聞いていたらしく、事後処理にも参加していたらしい。

 

「んー、正確にはもう一人。紺のセーラー服で、三つ編みだったな。怪我したから昨日医務室に運んだけど。」

「時雨か?」

「時雨?」

「お前の言ってるやつの名前だ、覚えとけよ。昨日の戦闘の後片付けのとき、明らかに銃撃や爆破による傷じゃないのがいたんだよ。それで昨日艤装を纏った男が走り回ってたって聞いて確認したんだ。あれ、どうやったんだ?」

 

あー、頭とか胸とか、色々と潰れたおかしな死体は確かに作ったな。けどこの子達の前で流石に直接言うのはやめておくか。なんか電って言ってた子達には聞かせるのもエグいし。

 

「涼、話のエグさは気にするな。皆見てきてる。」

「………分かったよ。なんも不思議なことはしてない。単純に拳だ。おかしいってのはぽっかり胸に穴空いてたやつか?」

「それと、頭が飛んでたやつ。」

「あいつらかー、片方は屋根上から落下してその力を使った。もう片方は──説明し難いな、掃除機みたいに吸い込んで砕いた。胸の無い方はそのまんまだ、一発ボカンとやった。」

「……」

 

格闘戦を仕掛けていたとは夢にも思わなかったのか、俺の言葉を聞いて天龍は固まってしまった。やっぱりエグ過ぎだろ、言ってて自分でも驚くわ。話し終えて天龍の様子を窺うと───

 

「………フフフ───」

「どうした?」

「アッハッハ!お前マジかよ!拳?オレですら刀使ってるのに?艤装使って近接格闘するやつオレ以外に見たことねぇぞ!?」

 

おもいっきり笑っていた。興奮と笑いの両方のツボを刺激してしまったらしく、膝を叩いての大笑いが止まらなかった。仕方ないので近くに座った子達を見れば、少し青ざめた表情をしていた。

 

「えっと、朝からごめんなさい。」

「──あ、いいわ気にしなくて!それより、私は暁型駆逐艦の雷。こっちは電、それと眠そうにしてるのが暁姉で、あなたの隣にいるのが響姉よ。」

 

さっと見渡して「よろしくね」とだけ言うと、ようやく笑いの世界から帰ってきた天龍をみる。

 

「いやー久しぶりにめちゃくちゃ笑った!涼!お前面白い奴だな!」

「いやそこで判断されても困るんだが……」

 

天龍が一人でまたツボに入りかけた所を、雷が一発ツッコミを入れてその場は終わりになり、天龍に付いて執務室へ歩いていった。

 

「お、二人とも来たし、始めようか。

第三水雷戦隊の皆は教導役お疲れ様、今後は通常の任務に加え、訓練隊の実戦でも支援してもらう。

そして訓練隊は訓練完了おめでとう。これからは暁の水平線に勝利を刻むために皆努力してほしい。当分は第三水雷戦隊の皆に世話になるから、しっかりするように。天龍、今日の内容は決まっているのか?」

「おう、まだまだハードなの続くからな、付いて来いよ。」

 

俺をひとり置いて話は進む。というか天龍が言った内容を聞いて訓練隊の方がフリーズしてるんだが、余程なのかな。

 

「それなら良かった。それじゃ解散だ。天龍、頼んだよ。」

「分かってるって提督。ほらお前ら、いくぞ。」

 

敬礼して出ていく天龍とそれに続く五人、そしてさっきガチガチに緊張していたもう六人が出ていって、足音もしなくなった頃、提督がようやく口を開いた。

 

「……さて涼。君の存在はもう上に知らせたけど、扱いは雑だ。どうせ偽報告だと思っているのだろう。そこで君には実力を付けて貰い、他鎮守府との訓練にて本物だと明かし、立場を作りたい。いいかな?」

「了解。先ずは訓練からだとは思うけど、どうするんだ?」

「うん、本来なら上から定期的に艦娘の適正検査があってそこで適正の見つかった子が来るけど、今回の君みたいな飛び入りのレアケースもある。そのためのコースが用意してあるから、今日から一週間で最初に座学と艤装を使う訓練、その後に演習や実戦を通して学んでもらう。あぁそれと───」

 

提督が執務室の中央にあった机から葉書程度の紙を取り出して渡してきた。読め、ということだろうか。

渡された紙の上面には何も書いていなかったので、裏を向けると───

 

戦闘用呼称(コードネーム)?」

「そうだ、いつまでも名前を使う訳にはいかない。艦娘も名前で呼ばれることはないからね。

勿論今すぐ考えろって訳ではないが、思い付いたのがあるなら────」

「今決めた、いや、思い出した、に近いか?」

 

その言葉を遮って、ふと頭に浮かんだ呼び名を口にした。

 

「───コードネーム(偽りの名を)クローサー(終わらせる者)だ。」

「………クローサー、君の訓練には最初は鹿島という艦娘がつく、実技に関しては別の艦娘となるのでまたその時に伝えるよ。質問事項は?」

「ない。」

「では、私に付いて来てくれ。鹿島の下まで案内する。」

 

執務室を出て少し歩くと、見たことのある景色があった。

 

「ここは、医務室の近くか?」

「そうだよ、最初の内は簡単な訓練でも、慣れない環境で体調を崩すことも多い。だから基礎訓練の場所は医務室の近くにあるんだ。」

 

確かにそうだな。もしも駆逐艦の子が見た目通りの年齢なら、体調崩すで済むかもわからないし。それにしても、あらゆる場所で妖精さんが働いているんだな。あ、でも思ったよりサボりがいる、人間味があってかわいいな。

 

「──ここだ。場所は覚えておいてくれよ。もし忘れたら誰でもいいから『教導室』の場所を聞けばいい。」

「忘れるつもりはないけど了解。」

 

そう言い置くと提督はさっさと帰ってしまった。中に声を掛けると「入ってください。」と言われたので、ドアを開けて入る。

 

「はじめまして、涼さん。私は練習巡洋艦『鹿島』。これから一週間の間あなたの座学を担当します。よろしくお願いします。」

「はじめまして、鹿島さん。霞野涼改め、コードネーム『クローサー』です。一週間どうぞよろしくお願いします。」

「真面目な方ですね。嫌いではありませんよ。

 

では、座学の方を始めたいので、そこの椅子に掛けて机にある紙を見てください。それを教科書としてやっていきます。」

 

────こうして、俺の鎮守府での生活がスタートした。

 

「艦種について分かりましたか?」

「一通りの特徴は、」

「ではテストしましょうか。」

 

一日目──艦種とその特徴、及び相性関係。

 

「──ですから、艦隊戦での陣形は以上が基本となり、提督の能力如何では変形して更なる効力を発揮します。」

 

二日目──艦隊戦を行う上での基礎的な陣形とそれぞれの特徴。

 

三日目から、進みが良いと言われてより実践的な内容をやった。具体的には鹿島さんが問題を出し、俺が答え、回答の問題点を指摘してもらう形だった。

この辺りから、知ってもいない筈の知識が数多く存在することが分かった。寧ろ記憶を失っていたのだからこれが正常なのだろうけれど。戦略面と自身や味方の行動による心理的影響の内容は苦手だが、戦術レベルでの適切な判断は得意だった。戦略を考えるのは提督の仕事であるから、艦娘は戦術クラスでの判断が出来れば現時点では十分だと言われた。

 

そして七日目に、これまでの全てを複合したテストを行い、やっぱり戦略的な面や心理的内容で失点したものの、他の面では十二分の成績だったらしい。結果は見せてもらえなかった。

 

そして、今日からようやく艤装の訓練に入れるそうだ。どんな人が来るのか楽しみに待っていると、待ち合わせの場所にやってくる人影が見えた。

 

(あれだ!)

 

その人物が近くまで来た所で挨拶しようと顔を見て、体が止まってしまった。

 

「僕の顔に何か付いてる?」

「あ、いや違います。」

「そう。言っておくけど命令でなかったら君の訓練に手は貸さないからね。覚えておいて。」

 

刺々しい言葉を放つのは、この前助けてもらった少女だった。

 

「僕は白露型二番艦、時雨。そっちの名前は?」

「コードネーム、クローサー。よろしくお願いします。」

「クローサー、覚えたよ。訓練を始める、ついてきて。」

 

工廠で妖精さんから艤装を受け取り、二回目の艤装装着を行う。艤装にまともな武器が付属していなかったので、用意してもらったアサルトライフルを背中に背負うと、左目の装置に助けてもらいながら海へ歩き出した。めちゃくちゃ歩きにくいし、そのせいで出遅れてしまった。

 

「遅いよ。」

「すみません。」

「だから嫌なんだ………先ずは回避訓練。僕が攻撃するから、それを避けて。僕があのピンまで行ったら開始する。」

 

最初に何かを言ったみたいだったが、海の音に消されて聞こえなかった。けれど訓練の内容は聞き取れたので、彼女が位置につくまでに集中を高めておく。

位置に着いた彼女がこちらを向き───第一撃は、全く見えなかった。

 

「え──?」

 

彼女の方を見れば、振り向きざまに砲を向けたのが分かる姿勢だった。ろくに狙いを付ける時間もなかったはずなのに、砲弾はすぐ横に着弾していた。

小さく砲口が動くのを見逃さなかった左目の装置が、視界に『危険』と表示する。それを見た直後にその場から飛びずさるとさっきまで立っていた場所に砲撃が着弾している。

 

背筋が凍るような感覚がして、全身がその何かを躱わすように訴える。けれど空中では避けることすらままならず、かろうじて片足を持ち上げた。左の大腿に衝撃が走り、ペイント弾が直撃したことを示していた。

 

「一々反応してる暇はないからね。」

 

声がしたと同時に、アサルトライフルを抜いてその方向へ構えると、彼女は既に攻撃を終了していた。腰に取り付けられた筒から円筒型の物体が投射され、地面に白い軌跡を僅かに残して消えた。

 

「雷撃か!」

 

気付くと同時に右に飛び、軌跡から魚雷の方向を推測してライフルを撃つと、鉄と鉄のぶつかる音が小さく響き、迎撃に成功したことを伝える。しかし、彼女へ視線を戻せば、無表情で光のない目でこちらを見据え、砲口を向けられていた。

とっさに左腕を盾にしようとして、三つの衝撃が両手と胸に走り、そのまま着水できずに落下した。

 

 

艤装のお陰で海面に浮かんだ俺は、近づいてきた彼女に声をかけられた。

 

「今日はここまでにする。工廠に戻って艤装を渡したら、自由に過ごして。」

 

そう言って彼女はスケートのように水面を蹴って帰ってしまった。彼女───今後は師匠とでも言うべきなのか?───の技量は素人でも分かる凄まじいものだった。よく考えてみればあの時に撃ち損じなく全ての敵を撃ち抜いていたのだから、当然といえば当然のことではある。

 

「てか、海面を歩く必要性はなかったよな………船なんだしスクリューあるし、」

 

最後に師匠が滑っていった様子を見て漸くそこに考え至った。なんで海面を走るとかいう忍者びっくりの所業をしていたのかわからない。自分の馬鹿さ加減に笑ってしまった。

 

「───よろしくお願いします、師匠。」

 

誰に聞こえる訳でもなかったが、無性にそう言いたくなった。

 





はい、終了です!

指導役は時雨に決まりました!イェーイ!!

……
………私こんな時雨書いてたっけ?確かに距離は遠くしたけど、確かに色々()やったけど!こんな風になるとは思わなかったの!

どうせ未来の私がどうにかしてくれますよきっと。それまで気長にお待ちください。

さて、次回の『二刀装甲兵、突貫する!』は~?

「師匠に驚いてもらおうと思いまして!」

時雨を『師匠』と呼び敬意を示す涼だったが、周囲ね反応は?

次回、第四話 「人を取り巻く人と物」

お楽しみに!また次回の前書きにてお会いしましょう!
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