他の作者様方のように魅力的なキャラクターを描写していけたらいいなと思っていますのでよろしくお願いします。
第1話 色あせる世界
メアリー・スー。
理想化されたオリジナルキャラクターを揶揄する言葉。
作者の自意識が過剰に投影された、原作のストーリー・世界観・キャラクターなどの設定を根本的に破綻させてしまうオリジナルキャラクターや原作のキャラクター、あるいは他のオリジナルキャラクターよりも強く、優秀で英雄的な活躍をし、自分ひとりであらゆることをやってのけ、なんでも解決し、原作の主要キャラから慕われ、異性と恋愛関係になるようなキャラクター。
他にも世界観を破綻させずとも、「そのキャラクターの都合のみで世界が回っているようにすら見える状態に陥ったキャラクター」といった意味でも用いられる。
元々は思春期の少女たちが書いていたとあるSF作品の二次創作小説に登場しがちな、非現実的で願望を具現化したようなオリジナルキャラクター揶揄した小説のキャラクター。内容は最年少かつ最優秀で、原作キャラクターから尊敬や愛をよせられ、しかも驚くような能力を持ち原作キャラクターをさしおいて大活躍し、実は他人と違う外観や出生の秘密があり、死ぬときは劇的に死んで全員が悲しみに包まれるというもの。
今では名前が一人歩きをしてしまい定義や本質が定まっていない。究極的にはそれらは存在せず、呼ぶ方が勝手に定義しているだけにすぎないのかもしれない。
だが、そんなことは原作の登場人物たちには関係ないのだ。彼らにとって原作ににない要素はすべて異物であり、己の世界を侵食する忌避すべき怪物である。
作者の自己満足から生まれた物語の怪物は理想で既存の世界を塗りつぶし、キャラクターの人格を歪め、原作のすべてを破壊しつくすだろう。
そして最後にはその焼野原にて惜しまれながらその生涯を終えるのだ。
そう、この物語のように……。
*
頭が痛い。めまいもする。この違和感はなんなんだ。
見知った自宅のリビング。なんてことはないイギリスの一般的なものである。
俺が座る椅子もそれらが囲む食卓も。それは両脇に座る両親も同じ。
ただ一つこの部屋で異常なのは目の前に座る男。銀色の長い髭と髪を持つ老人である。
先に両親と話をしていた彼は次は俺に話があるらしい。半月型の眼鏡をかけた彼に呼ばれ、ここに座っている。
彼は衣服からして今時誰も着ないような古風なローブと一般的な人間から逸脱していた。そして彼がある単語を口にしてからそれは決定的になった。
「はじめまして、アラン。ワシはダンブルドア教授。ホグワーツ魔法魔術学校で教師を務めておる。君は魔法使いじゃ」
魔法使い。それは現実には存在しないはずだ。なぜなら魔法が存在しないからである。
錬金術によって科学は発展したが、同時に他の物質を金に変えることは不可能だということもわかった。賢者の石や五大元素なんてものはない。魔法はオカルト、もしくはファンタジーである。
しかし、なぜだか俺は彼の言うことに納得してしまった。いや、俺は知っている。この世界に魔法どころかドラゴンや妖精が存在していることを。魔法どころではなくダンブルドアと名乗るこの男さえ俺は知っている。そう、初対面のはずなのに俺は彼を知っているのだ。
「すみません。どこかで会ったことありますか?」
「君と会うのは初めてじゃよ」
その青い瞳はまっすぐ俺を見つめている。
俺にも彼と会った記憶は一切ない。ならばなぜ俺は彼を知っている?
徐々に記憶が戻る。
彼はアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。ホグワーツ魔法魔術学校の校長である。
いや、これは記憶が戻っているわけではない。
ホグワーツはイギリスの魔法学校。年少の魔女や魔法使いが魔法についての理論や実技を学ぶための七年制かつ、全寮制の教育機関。その年の九月一日時点で十一歳である魔女や魔法使いに入学資格が与えられる。
知らないはずの情報が頭に流れこんできているのである。
先ほど感じた違和感がさらに強まり、頭痛もめまいもひどくなる。そして突然世界がその色を失う感覚に陥った。
「具合が悪いようじゃが大丈夫かの?」
「大丈夫です」
「大丈夫ですよ。うちの子は丈夫ですから」
ダンブルドア先生が心配して声をかけてくれるが対して母さんは心配していない。否定はしたが実際具合は悪いというのに息子に対してそれはないんじゃないだろうか。
「それならいいのじゃが。それで、君は自分が魔法使いと言われたのに驚かないのじゃな。自覚があったのかのう?」
そんな自覚これっぽちもなかった。しかし、今は自分が魔法使いだと知っている。だから驚かない。
魔法がありえるならこの現象も魔法で説明がつくのかもしれないとも思ったがどうも違うらしい。なぜか俺にはそれがわかる
とりあえずこの場が丸く収まるようにそれらしい答えを言っておくことにした。
「驚いてはいます。ただ自覚というかなんとなく心辺りがあったので」
「そうかの。魔法使いが存在する証明に魔法を使おうとも思っておったのじゃが」
彼がローブの裾から杖を取り出し、それを振ると彼の目の前にあったティーカップが宙に浮く。
ウィンガーディアム・レヴィオーサ。「浮遊術」。ホグワーツでは一年生の「呪文学」で習う。
また知らないはずの情報が頭をよぎった。このウィンガーディアム・レヴィオーサというのは呪文なのだろうか。
「魔法を使うのには呪文は必要ないんですか? ビビデバビデブーやチチンプイプイといったものです」
「呪文はあるが必要ではないのじゃよ。訓練すれば唱えなくても今のように使えるというだけじゃ。ほれ、ウィンガーディアム・レヴィオーサ」
俺の頭によぎったものと同じ呪文を唱えると今度は俺ごと俺の座っている椅子が浮き始めた。少し驚いたがそれよりも俺が知らないはずの情報が正しい情報だということに驚いた。
「ということは杖も必要ないということでしょうか」
「いや、残念ながら杖は必要じゃな。一応杖を使わずとも魔法を扱うことは可能じゃがそれはとても難しいことじゃ」
俺が杖に意識を向けると今度はその杖のことが頭に浮かぶ。
ニワトコの杖。伝説の死の秘宝のひとつである。三十八センチ、ニワトコ、セストラルの尾。
死の秘宝? セストラル? どちらも聞いたことのない単語だ。だからといってこの人にそれについて聞くことはできない。おそらくこれは俺が知っていては不自然なものなのだろう。
「その杖はニワトコでできているみたいですが他の杖もそうなのですか?」
「確かにこの杖はニワトコでできているのじゃが、杖の材質には他にも色んなものが使われる。しかし、よくニワトコだとわかったの」
「あーなんとなくです。俺、木には少し詳しいんですよ」
大嘘である。その証拠に両親は訝しんでいる。木の種類の見分けなんかほとんどつかない。頭に浮かぶ情報通りにニワトコ製だったということはやはりこれらの情報は正しいものであるらしい。
「他に今したい質問はあるかの? なければ魔法について他にも説明することが山ほどあるのじゃが」
「ありません」
「では説明を始めるとするかの」
聞きたいことはあるがこれ以上は俺が知らないはずの情報を聞くことになってしまう。
俺がうなずくと彼はもう一度杖を振ってティーカップを元の位置に戻すと魔法についての説明を始めた。
説明が進むたびに知らないはずの知識が増え、それに比例して世界が色を失う感覚が強まっていく。色を失うとは言っても白黒になるわけではない。ただ、現実味が薄くなっていく。
そう、それはこの世界が想像上の絵空事のように思えてくる感覚である。
「以上で退屈な話は終わり、これがさっき話した入学許可証じゃ。なにか質問はあるかの? なければワシはお暇させてもらうのじゃが」
最後に入学許可通知を受け取り、質疑応答に入ると同時にとある情報が頭の中に浮かんできた。
ハリー・ポッターシリーズ。イギリスの作家J・K・ローリングによる児童文学、ファンタジー小説。
一九〇〇年代のイギリスを舞台に、魔法使いの少年ハリー・ポッターの学校生活や、ハリーの両親を殺害した張本人でもある強大な闇の魔法使いヴォルデモートとの因縁と戦いを描いた物語。
そして理解する。
俺が生きてきたこの世界は魔法の存在するファンタジー小説の物語の世界であったのだ。
そして、先ほどから感じていた違和感の理由もわかった。
そもそも俺は十一歳。自分が魔法使いと言われて冷静でいられるような年齢ではない。俺もついさっきまで年相応の人格だった。自分が魔法使いと言われ、魔法を目の辺りにすれば飛び上がって喜んでいたことだろう。
それなのにこんな斜めに構えたいけ好かない野郎になってるということに違和感を覚えなかったこと自体が違和感の原因である。
世界が色あせる。目の前の現実なのにまるで映画のようにリアリティがない。実際、小説なのだから当たり前である。
周囲の音が感じられなくなっていく。ダンブルドア先生が俺になにか話しかけているがもうなにも聞こえない。
先ほど実際に白黒には見えているわけではないと思ったがあれは間違いだったようだ。目の前が白黒になったと思うと黒い部分さえ薄くなり視界が白で染まっていく。
頭痛とめまいが一層強くなり、俺は意識を失った。その薄れゆく意識の中で最後に頭の中に文字列が浮かぶ。
『ハリーポッターと賢者の石』
これが九月から俺の過ごす一年間の題名である。
こんな感じで色々メタい情報が思い浮かぶ主人公くんですがどうでしょうか。
文字数多いかなと切ったら少なくなってしまいました。
次からはもう少し多くできると思います。
物語の怪物たちと題しているのにも関わらず、出てきませんでしたね。ごめんなさい。次は出しますのでどうかよろしくお願いします。