ダンブルドア先生ですが、わざわざスリザリン仕様の飾りを用意しておいて後からグリフィンドール仕様に変更するところが煽りポイント高いと思います。
無事に最後のイベントを乗り切ってから数日が経ち、クィディッチの寮対抗戦もハリーが疲労によって体調を崩したことによってレイブンクローの勝利となった。もちろん崩したのではなくメアリーが崩させたというのが真実だ。
そして、今日はついに学年末パーティーの日である。大広間は現時点で点数がトップのスリザリンカラー一色。グリーンとシルバー、それに蛇といったものばかり。壁一面を蛇を描いた大断幕が覆っている。
スリザリンは七年連続で寮対抗杯を獲得したとお祭り騒ぎだ。
「アラン! テンションが低いぞ! 優勝したのにうれしくないのか!?」
平常心の俺とは対照的にドラコはテンションが高く今にも踊りだしそうである。
「いや、自分の所属している寮が優勝すればそれはうれしいんだが……」
「だがなんだ?」
結局はグリフィンドールに駆け込みで点数が入って負けるなんてこと言えるわけがない。
「いや、発表はまだなんだからはやまるのはいけないかなと」
「この飾り付けだぞ。これでうちの寮が優勝でなければ嫌がらせがすぎる」
完全にその通りなのだが、言えないのがもどかしい。ドラコと話しているとダンブルドアが明るい雰囲気で話し始める。
「また一年が過ぎた。前年と比べて少しでも君たちが学んでくれていればいいのじゃが……そして、夏休みに今年学んだことを忘却の彼方へ放り投げ、また新学期が始まるのじゃ。じゃが、その前にここで寮対抗の表彰を行うとしよう」
順位は低い順から四位がグリフィンドールで三一二点。三位がハッフルパフで三五二点。二位がレイブンクローで四二六点。そして一位は我らがスリザリンで四七二点
点数の発表の同時にスリザリンの生徒たちは一斉に歓声を上げて足で床を踏み鳴らした。俺もしっかり参加させてもらった。理由は原作と点数が同じだったためである。これで原作から乖離することはないだろう。
「スリザリン諸君、よくがんばったのぅ」
『よくがんばったのぅ』という言葉からのグリフィンドールの大逆転。大広間の飾り付けといい煽りがすぎる。俺が普通の生徒であれば激怒しているところだ。
この言葉を受けて騒がしかったスリザリン生たちに一抹の不安がよぎり一気に静かになる。
「しかしじゃ。わしが留守にした日から今日までのことも考えなければなるまい。よって、駆け込みの点数をいくつか追加で与えるとする。まず最初はロナルド・ウィーズリー」
ロンが驚いた顔をしている。そして、最高のチェスの試合を見せた事が称えられ、グリフィンドールに五〇点が与えられた
グリフィンドールから大歓声が巻き起こる。点数は原作通り。これで三六二点。一発でハッフルパフを超えて三位。パーシーが他のグリフィンドールの監督生に自分の弟だと自慢している。
タスさんの方が不利な条件で倒したため彼女も同じように評価されて逆転してしまうかもしれないと少し不安になった。
「次はハーマイオニー・グレンジャー」
火の海の中で冷静に論理パズルを解いた事が称えられ、グリフィンドールに五〇点が与えられた。ハーマイオニーは机に顔をうずめてうれし泣きをしている。まあ、ここからでは見えないので原作の描写からの憶測にすぎないが。
そしてこれも俺の方が短時間でクリアした自信があるが……まあ、答えを予め知ってただけで論理もクソもなかったが。
そして、これでグリフィンドールは四一二点。
「三番目はハリー・ポッター。……強靭な精神力と人並みはずれた勇気。さらに、敵対していた者にさえ手を差し伸べる優しさを称え、グリフィンドールに一〇〇点を与える」
他の二人と比べてえらい抽象的だな。それなのに二倍の点数とかとち狂っている。ヴォルデモートが生きていたなんて言えるわけがないし、クィレル先生の話題を出したくはないだろうから仕方ないか。
まあこれで、グリフィンドールが五一二点で、スリザリンが四七二点あと……あれ? スリザリン負けてね。いや、ちょっと待て、原作だと六〇点だったろ。なにいきなり桁変えてんだ。原作と違ってクィレルを助けたからそれで増えているのだろうか。「敵対していた者にさえ手を差し伸べる優しさ」という評価点が増えている。
グリフィンドールのテーブルから今回一番の大歓声が上がって逆にスリザリンのテーブルはお通夜と化した。
「スリザリンの諸君。そんなに暗い顔をするでない。君たちの寮にも駆け込みの点数は与えられる。ティ・スラグホーン、デア・マキナ、メアリー・スー、ジェーン・ドゥ、アラン・スミシー。彼らはその団結力で怪物と植物をてなづけ、チェスの試合は誰一人欠けることなく勝利、トロールを完封し、論理パズルを高速で解いた。そして、さらに寮の垣根を越えて大切な物を守ることに貢献した。彼らの絆をたたえ一人一〇点ずつ、つまり合計で五〇点を与える」
なんで俺たちのやったことまで知ってるんだ。ハリーたちのこともそうだが留守にしてたなら知ってるはずがない。特に俺らは彼らと違ってどうやって侵入したか詳しいことは話していないのだ。クィレルが犯人なのも知っていたように思えるし、わざと俺たちやハリーたちに挑戦させたのか?
スリザリンが五二三点となり首位に、グリフィンドールが五一二点で二位に転落したさっきとは逆にスリザリンのテーブルから今回で最大の大歓声が上がり、グリフィンドールのテーブルはお通夜と化した。
だが、俺はまだグリフィンドールの追加点があるのを知っている。ネビルが規則違反をしようとしたハリー達を止めようとており、その勇気が評価され一〇点を貰うのだ。
そうすると、スリザリンとグリフィンドールが両方五二二点となり、同率一位となる。ああ、俺たちがスリザリン生だから同率一位にする展開か、それなら許容範囲だ。
「勇気にもいろいろある。敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる」
ダンブルドアが話を続けた瞬間、スリザリン生たちの歓声がまた一瞬にして消える。
「しかし味方の友人に向かっていくのも同じくらい勇気が必要じゃ。そこでわしはネビル・ロングボトム君に二〇点を与えたい」
「なんだあいつ、畜生すぎる」
ボロッと素直な感想がこぼれてしまった。同率一位で仲良くゴールかと思ったら原作より一〇点追加し、ギリギリグリフィンドールが優勝するようにしやがった。
グリフィンドールのテーブルから爆発と錯覚するような歓声が聞こえてくる。ハッフルパフ、レイブンクローのテーブルからもスリザリンが一位から転落したことによる歓声が起こっている。
お前らはスリザリンに負けてるんだがな。嫌われっぷりがひどすぎる。これは俺らがいる七年間でどうにかなるものなのか疑問に感じてしまった。
一方スリザリン生たちはお通夜ムードを通り越してほぼ全員が生気を極限まで失い亡者のようになっている。例外は当然俺らだけ。
「あー、負けちゃった。まあいっか。来年がんばろー」
デアはいつも通りのお気楽さですでに気持ちを切り替えている。というかそもそもあまり興味がなさそうだ。
「……えっと、……仕方がないわ。こっちだってスネイプ先生に贔屓してもらっていたし」
メアリーがダンブルドアの贔屓を擁護するが彼のものはスネイプ先生のものより悪質である。
一度希望を奪い、そして希望を与え、最後にまた奪うのはスネイプ先生よりたちが悪い。しかも数点づつちまちまと、とかいうのではなく、でかい点数をガンガン与えて勝たせるとかいう最低限の体裁すら保たれていない。
「そうですけどね。私たちもハリーたちと同じことをやってるんですよ。確かに人数は多かったですが五人と三人です。それに私たちの方が早く安定して護りを突破したはずなのになんでハリーの十分の一、ロンとハーマイオニーの五分の一なんですか? これならルールなんて意味がないじゃないですか! メアリーも、みなさんも頑張ったのに!」
「メアリーもワタクシたちも自身は寮の点数なんて気にしてないですわよ」
「うん、別にどうでもいいわ」
「でも、ルール通りにみなさんが評価されないのは気にくわないです」
結果に対して点数が低かったのが気に入らないようでジェーンはしかめっ面になっている。
「こういう勝負事に一番こだわりそうなタスさんは気にしてなさそうだな」
「だってこれ出来レースですし。そもそもあなたがグリフィンドールを勝たせるように言ったんじゃないですの。まあワタクシが調整したのは駆け込み前の点数を原作と同じにするところまででしたけれどね。ワタクシたちの点数が入って同点くらいかと思っていたのですがまさか逆転勝ちまで持っていくとは。露骨すぎて逆におもしろいですの」
ダンブルドアが声を張り上げて手をたたくと飾り付けがスリザリンからグリフィンドールのものへと変わった。
「グリフィーんドールが首位ということは、飾り付けを変えねばならん」
わざわざスリザリン用のものを用意しておいてそこからグリフィンドールのものに変更するところがなかなかえぐい。ジェーン以外の怪物たちは気にしていないが。デアなんかグリフィンドールの席まで行って彼らを祝っている。
「グリフィンドールおめでとう! ハリーもおめでとう!」
「いや、ごめん。君たちのおかげでなんとかなったの僕らだけいっぱい点数もらっちゃって。同じくらいもらえてたらスリザリンの優勝だったのに」
「いいのいいの。負けは負けだよ」
ついさっきまで固まっていたドラコがハリーのもとへ移動していた。
「僕もお前たちやアランたちと共に行動していれば勝っていたね」
「そう、ならもし来年以降に同じようなことが起こったら僕を助けてよ」
「なぜ僕がお前なんかを」
「だってそうしたら点数を貰えるでしょ? スリザリンの人は得があれば助けてくれるからね」
「ふん、まあいい。得があればだがな。ってその手はなんだ?」
ハリーがドラコに手を差し出す。
「握手だよ。これからもよろしくねっていう」
「握手か。普通ならグリフィンドール生とそんなことはしない……が、生き残った男の子直々の申し出だ。断るわけにもいかんだろう」
ドラコはいつものように偉そうにハリーの手を取り握手をした。
原作であればあり得なかった光景だ。物語の筋には影響がないが、少し心配である。ただ、二人が仲がいいのは悪いことではないだろう。
「ドラコばっかりずるい! あたしも!」
わりといい雰囲気だったというのにデアがぶっ壊す。彼女らしいといえばらしい。
「いいよ」
「ありがとう! 生き残った男の子と握手したかったんだ!」
デアがハリーの手を取ってブンブンと振っているとメアリーがネビルの傍に移動する。
「えっと……スー、でいいんだよね?」
「え、ええ。でもメアリーでいいわ」
「う、うん。メアリー、僕に何か用かな? いや、僕の傍に来たから。違ったらごめん」
「いえ、えっと、その、私と握手してくれないかしら?」
「なんでハリーじゃなくて僕なの?」
「気を悪くしたらごめんなさい。私と同じで自信がないはずなのに、がんばっててすごいと思ったから」
「僕とメアリーが同じ? そんな僕なんて……、メアリーと違ってとろいしドジだし……」
「私もそうなのよ。それにあなたと違って勇気もないし」
「僕だってないよ。今回だってなんであんなことできたか自分でもわからないし……うん。確かに似てるかも。似た者同士今後もよろしくね」
「ええ、よろしくお願いね」
二人が握手をするとパンジーやらミリセントやらタスさんやらジェーンも握手会に参加し始めた。
「私はドラコと握手したいわ」
「別に同じ寮なんだからいつでもできるよね。それよりタスさんが減点されてなければ私たち余裕で勝ってない?」
「そうですわね。でもワタクシが取った点数を引くと四分の一くらいはなくなりますけれど?」
「タスさんは減点も多いですけれど加点も多いですから」
スリザリンの成績上位ツートップ候補を前にハーマイオニーが泣きはらした目を誤魔化しながら話しかけてくる。
「あなたは加点ばかりでしょう? 変身術マスターの優等生ってグリフィンドールでも有名なのよ?」
「グレンジャーさんにはかないません。グリフィンドールの才女だって有名じゃないですか」
「そう言われる照れるわね。……そうね、折角の機会だし、今度からハーマイオニーって呼んでもらっていいわ」
「ワタクシは! ワタクシはどうですの!?」
「あなたは筆記科目絶対満点の天災妖精って言われてるわ」
「才女さんに天才とほめていただき光栄ですわ」
「たぶん思っている天才ではないわ。災いの方よ。授業中いつもなにかやらかしてるから」
「そちらの方がインパクトがあっていいですの!」
「そ、そう。あなたがそれでいいならいいのだけれど」
みんな誰かに話しかけているので俺もロンに話しかけてみる。
「テストどうだった?」
「聞かないでくれ。来年はホグワーツにいないかもしれない」
「でも友達に才女って言われてるハーマイオニーがいるじゃないか。彼女に教われば上位に入れると思うんだが」
「きみの友人に優等生と天災がいるだろう。それで、きみの成績は上位かい?」
「俺が悪かった。関係なく無理だな」
俺に至ってはある程度情報が頭に浮かんできてくれるのにも関わらず良い成績ではない。俺らの会話にドラコが入ってくる。
「はっ! これだから血を裏切るものとマグル生まれは!」
「なら君はできたってことかい?」
「当たり前だ。僕は由緒正しい純血の家系だからね」
「そうか、ならぜひ、来年はマグル生まれのハーマイオニーの成績を超えてくれ」
「うっ。ま、まあ、今年は調子悪かったからな。来年は首席さ」
グリフィンドールとスリザリンの生徒がだべっている。少し喧嘩腰な所もあるが、原作のギスギス感よりはるかにマシである。さっきは仲良くなるのは無理だと思ったが、このままであれば寮間にあるひずみを無くしていくことも可能かもしれない。
こうして学年末パーティーは原作より圧倒的に騒がしく終わっていった。
*
試験結果の発表が行われた。
ハーマイオニーは実技と筆記がどちらもトップクラス、ジェーンは実技はハーマイオニーより上だが筆記が下、タスさんは実技が下だが筆記が上。総合すると学年トップはハーマイオニー、次点でジェーン、三番目はタスさんだった。
メアリーは勉強が苦手と言っていたが、ジェーンの努力のおかげで上の下。ハリー、ロン、ドラコが中の上。俺とその他多数の生徒は平均くらい。
クラッブとゴイル、ネビルが最下位クラス。そして栄えある最下位がデア。うん、まあ当然っちゃ当然である。魔法がほとんど使えないのに退学にならないのがおかしくらいだからな。
試験の結果も出て、荷物もまとめ、家へ帰る準備もした。
今はすでに特急に乗って移動し、その荷物を持ってキングスクロス駅まで帰ってきている。
「はぁ、やっと賢者の石、完って感じだ」
「これでやっと七分の一なのだけれどね」
「来年はなんだっけ?」
「秘密の部屋です。サラザール・スリザリンの残した怪物が校内を徘徊するんです」
「冷静に考えてやばいよな。昨日までいた学校に目が直接あったら死、間接的にでも見たら石になる怪物が住んでるって」
「牙の毒もフェニックスの涙でしか中和する事ができないのよ。今から来年度が心配だわ」
「大丈夫だよー。だって生き物でしょ? メアリーが魅了すればかわいいペットじゃん」
「そうですわ! 来年も魅せて目立って楽しませますの!」
「タスさんは来年も平常運転そうだな」
「やっと僕も合流できたよ」
「あー兄さん、どこいってたの?」
「お兄様のことだから女の子たちに囲まれてたんでしょ? さすがです。お兄様」
「メアリーの言う通りなんだけどいつもより風当たりが強くないかい? 学校であまり話せなくてごめん」
しばらく話しているとマキナ夫妻、リリスさん、エス夫妻、そして俺の両親と合流した。
うちの両親がなにやら延々と社交辞令を話していたが、その辺りのことも終わったので怪物達と別れる。
「また来年ですわね!」
「またねー」
「来年もよろしくね」
「来年もよろしくお願いします」
「じゃあ、またな」
駅からの帰り道で母さんが学校について聞いてくる。
「それでどうだったの?」
「クリスマス休暇で帰った時も言ったが色々大変だったよ」
母さんの次は父さんが問う。
「楽しくなかったか?」
「それは……」
物語の怪物たちに振り回された一年は疲れたし、大変だった。
しかし、なんだかんだいって通常ありえない、原作知識を持っている俺ですらありえないと思う体験の連続は新鮮で楽しかった。
だが、それを言うのは負けた気がする。
「わからん!」
怪物たち相手に俺が物語を守りきれる自信は今年の一年間でなくなったが、彼女たちもわざわざ暴れまわるほどの大馬鹿共ではないこともわかった。とはいえ、原作には存在しない異物であることは変わりなく、色々なことが変わってしまった。スリザリン生と他の寮の溝は狭まったし、クィレルは死ななかった。それに、怪物たちの犠牲者は数え切れないほど増えてしまった。
そう、どうせまた来年も物語の怪物たちに振り回されるのだろう。『やれやれ』退屈しない一年になりそうだ。……と言って絞めるのがヤレヤレ系主人公のテンプレだろう。一回も言えてなかったが……。
これにて賢者の石編完結です。
実験作なのに長文の本作に一巻分完結まで付き合ってくださった皆さん本当にありがとうございました。
ここまでの実験の結果は、『メアリー・スー軍団をそのまま動かせば当然メアリー・スーになる』だと思ってます。賢者の石の段階だと主人公も怪物たちも掘り下げることができませんでした。原作キャラクターのみなさまにはご迷惑をかけてしまい誠に申し訳ありません。
助長な描写や解説が多いせいか長文が過ぎる気がしてます。同じくらいの文字数の作者様方の作品を確認させていただいたところ余裕でアズカバンの囚人編辺りに入ってらっしゃるので私の実力不足です。申し訳ありません。
進めるうちにどちらも改善して行きたいと思っておりますがいかんせん実験作なのでどうなるのかわかりません。そもそもこの実験作に最後まで付き合ってくれる方がいらっしゃるか自体不安なところではありますが、いらっしゃる間は進めていく所存です。
至らぬ点はありますが、今後ともよろしくおねがいします。