書き溜め分なのでまたしても長くなりますが、秘密の部屋編解決までよろしくお願いします。
今回のプロローグはTASさんです。
第1話 二人の有名人
TAS。
ツールアシステッドスピードランの略称。
エミュレータ上の操作で行うことによるスピードラン。可能な限り速くゲームをクリアできる操作記録を作成し、これをエミュレータ上で再生するものである。
主に、理論上で速度面における極限値を目指す参考記録的な目的で行わる。
TASにて行われる操作のうち主なものは、ムービーの追記、メモリビューア、フレームレートの操作の三つ。
ムービーの追記。メモリ上のデータを小まめにセーブしながらゲームの操作を記録していき、失敗した時は直前のデータをロードし直して良い結果のみを残す。
メモリビューア。メモリ内容を表示させ、特定アドレスのメモリ内容からアイテムの出現やエンカウントなど、ゲーム内の処理内容を把握する。
フレームレートの操作。スローモーション状態、またはコマ送りでプレイして、正確で細かい動きを実現する。
他にもあるが、主に上記三つの機能を駆使して、通常プレイでは成功確率がかなり低く簡単に再現できないような現象を何度も発生させるなど、ゲーム上の仕様をフル活用し、タイムを短縮する。
これらは、コンピュータゲームで言うチートのように、外部操作で直接メモリを書き換えるわけではない、書き換えるとしてもあくまでゲーム内でのメモリ動作を利用するため、実機上で再現は理論上は実行可能である。
TASは一種の芸術的な目的で行われることもあり、ただ単純に理論値を目指すだけではなく、大道芸のような「魅せる」操作を取り入れる事がある。当然のことだが、魅せる事によりタイムが遅くなってはいけない。
しかし、同様の作業だがスピードランを目的としないツールアシステッドスーパープレイであれば話は別で、魅せることを目的に魅せるための操作を追求できる。
もし、物語にツールアシストした者が登場する場合、疑似的な未来予知、未来予測ができ、無限の反応速度を持った、最適な行動をとり続ける存在となる。
そんな存在が二次創作のオリジナルキャラクターとして登場するならその原作のキャラクターにとっては理想の主人公、メアリー・スーと同じくらい危険な存在である。
スピードランではなくスーパープレイであれば魅せる操作を行うだけいくらかマシかもしれないが、そんなことは原作キャラクターたちには関係ない。
そもそも原作に存在しない要素はすべて異物であり、忌避すべき怪物なのである。
ツールによってアシストされた怪物は理論上は可能であるが現実的でないことを超絶的なテクニックを用いて達成し続けるだろう。
そして、ただ魅せるプレイをするためだけに一見不可解な行動を繰り返し、原作を蹂躙しながらこの物語をゲームとしてクリアするのだ。
そう、この物語のように……。
*
去年、普通の少年と言って差し支えなかった俺は、突然知りえない情報が頭に浮かびはじめ、この世界がハリー・ポッターという小説のシリーズだということを知り、その後、原作には存在しないオリジナルキャラクターの少女四人と出会ったことで、この世界は原作の世界ですらなく、それを元にした二次創作の世界であるということに気がついてしまった。
世界すら魅了しこの世の理を捻じ曲げる夢魔、理想の主人公、メアリー・スー。
因果の認識と時間操作能力で良い結果のみを残し続ける妖精、ツールアシステッドスーパープレイヤー、ティー・エー・エス。
圧倒的な身体能力を誇り物理と魔法に完全な耐性を持つ竜人、終演の女神、デア・エクス・マキナ。
変幻自在な擬態能力によりありとあらゆる存在へと姿を変えるドッペルゲンガー、名無しの権兵衛、ジェーン・ドゥ。
俺は去年、物語の怪物である彼女たちが物語を破壊しないように立ち回ろうとしたが、結局彼女たちはそのバグとも言えるオーバースペックな設定で原作を蹂躙していった。だが、最終的に致命的な原作乖離だけはないまま第一巻の期間である一年目を乗り越えることができたのだった。まあ、クィレルが生き残ったのが致命的ではないならの話だが。
一年目を乗り越えたからと言って安心することはできない。ハリーポッターシリーズは全七巻。今年は第二巻、秘密の部屋の期間であり、その物語の開始はすぐそこまで迫っている。
とはいえ、怪物たち本人も好き勝手に暴れてどうにもならなくなってしまったときに困ることはわかった。さらに、そうなったときに一番困るのは誰か……ということもなんとなくだが、予想がついた。つまり、なんだかんだ今年もなんとかなるだろう。そう思わなければあんな怪物たちの相手などしてはいられない。
ということで、世界が崩れる恐怖を頭から振り払った俺が今なにをしているかというと、ダイアゴン横丁にて物語の怪物たちを待っているところである。
去年、ホグワーツ魔法魔術学校で一年生だった俺は一年経ったので当然二年生になる。二年になれば新しい教材が必要になるのは必然。彼女たちから「だったらダイアゴン横丁で一緒に揃えない?」と手紙で誘われたため、了承の手紙を送り、本日、彼女たちと待ち合わせをすることになったというわけだ。
両親は今年も仕事が忙しく来れないため、一人で買い物に行くことになっていたが、ぼっちにならずにすんでよかった。怪物たちと行くくらいなら一人のほうがマシな気はするが、怪物とはいえ去年一年間共に過ごした友人であり、久しぶりに会えるのが嬉しくないといえば嘘になる。
グリンゴッツ銀行でお金をおろした後、待ち合わせ場所である喫茶店で待っているのだが、誰一人として来ない。待ち合わせ時間まではまだ数分ある。エス一家は待ち合わせ時間ぴったりにくるはずなのであと数分の辛抱である。
すでに飲んでしまい空になっているコーヒーカップを見つめてぼーっとしていると扉の開く鐘の音が鳴り、少し店内が騒がしくなった。
「なんでピエロ?」
「ピエロと女の子? なんだ? パフォーマーか?」
客が小声で話す内容で待ち人が来たことを確信する。
顔を見上げると、白塗りのピエロと二人のよく似た容貌の少女が俺の前に立っていた。二人のよく似た少女はどちらも小柄で耳が少しとがっている。例えるのならファンタジー世界のエルフの耳のようだ。
片方の背が少し高く、そちらは髪をまっすぐにおろしており服装がシンプルである。一方低い方は髪が現実ではそうはいない縦ロール、煌びやかなドレスとアクセサリーを身につけている。
小さい方の少女が物語の怪物の一人、ティー・エー・エス。通称タスさん。大きい方の少女に見える女性がその母親のタバサさん。ピエロは父親のデニスさん。見た目通り仕事は道化師で家族そろってサーカスで働いている。
「やぁ、待ったかい?」
「少しだけですよ。コーヒーを飲んで一休みする時間があってよかったです。時間通りですし」
「そのはず。時間はピッタリに調整した」
「ええ、そのはずですわ。アラン、久しぶりですわね!」
「久しぶりだな、タスさん。デニスさんとタバサさんもお久しぶりです」
俺が会釈するとエス一家も同じように返してくれる。
これでエス一家は揃ったが、時間が過ぎたというのにマキナ一家とその関係者たちの姿が見えない。
「マキナさんたちはいつくるんでしょうか?」
「あと三十分はかかる」
「また寝坊ですわ。ですのでそれまで少しショッピングでもしません?」
「無駄に使うお金はないが、なにも頼まないのにここにいるわけにもいかないからいいぞ」
「タバサの予測が外れた場合、ここに誰もいないのはまずいし僕たちはここで一休みしているよ」
「私の予測は絶対」
「万が一もある。それとも僕と二人で過ごすのが嫌なのかい?」
「そんなはずはない」
「ではワタクシたち二人で行ってきますわ」
「お二人ともお願いします。三十分後にはまた来ます」
席を立ち店の外へ出た。店の前のフローリシュ・アンド・ブロッツ書店には人だかりができていて、帽子やローブの色である黒で染まってしまっている。
教材をこの書店で買うつもりなのでこのままだと無事に買えるか少し心配だ。
「書店混んでるな」
「当然ですわ。今日はあの有名なギルデロイ・ロックハートのサイン会が行われるんですもの」
「だろうな。あそこに書いてあるのが見える」
上の階の大きな横断幕に彼のサイン会が行われると書いてある。自伝「私はマジックだ」の発売に合わせたイベントであるらしい。
「本日午後一二時半から四時半までだってよ」
「アランは彼のことも今日起こることも知っているはずですのに驚きませんの?」
俺は彼のことを知っている。今日起こることも。
俺は小説、ハリー・ポッターの原作の情報が頭の中に浮かぶため、知らないはずの情報を色々知ることができるのである。
ギルデロイ・ロックハートは闇の生物との遭遇に関する数多くの著作で知られる魔法界の作家で、半純血の魔法使い。
顔立ちがよく女性に人気のある彼は、勲三等のマーリン勲章を授与され、闇の力に対する防衛術連盟の名誉会員で、週刊魔女のチャーミングスマイル賞を五回連続で受賞するなど盛りに盛った経歴の持ち主である。
ホグワーツ魔法魔術学校のレイブンクロー寮の卒業生で、今年一年間、闇の魔術に対する防衛術を担当する。
去年担当だったクィレルは賢者の石を狙ったことにより当然クビになったため、今年は彼が受け持つことになった。ちなみにクィレルは正当な裁判を受けたのち、今はアズカバンにて収容されている。
今年は彼が担当に変わったので教科書も新しい物を買わなければならない。今日はそれらを買いに来た。
手紙で来たその教科書の一覧をタスさんに見せる。
基本呪文集(二学年用)を除いた、七冊はロックハートのものだ。
「今日、これらを買いに来たハリーがたまたま彼に会って一緒に写真を撮って最新刊と一緒に全部無料でもらうんだろ? 知ってるよ。手紙が来た時点でお前の性格上この日に合わせることくらい去年一年間でさすがに予想がつくようになった」
「折角合わせたのにつまりませんの」
タスさんはおもしろくなさそうに口をとがらせるが、すぐに表情を戻した。
「まあ、いいですわ。それよりギャンボル・アンド・ジェイブス悪戯専門店にいきますわよ。欲しいものがありますの」
「わかった。だが校内に持ち込み禁止の物は買うなよ」
「承知いたしましたわ」
「今日はやけに素直だな」
「折角二人きりのデートですので」
「意味的には男女が日時を決めて会うことだから間違ってはないな」
「冷静に返されてもおもしろくありませんわ。少しは動揺してくれればいいですのに」
「そんなことだろうと思った」
「もし違っていたらどうしてましたの? 他の子に同じように返したら怒られても仕方ないですわよ」
「もし、違ってたら謝るしかないから全力で謝る。そもそもお前以外にはさすがにこう返さないしな」
「もしかして……それはワタクシだけが特別ということですの?」
「なんかそれっぽい感じで返してからかおうとしてるが無駄だぞ」
「やっぱりつまらないですわ」
「それにお前だけがが特別なわけじゃない。お前以外にデア、メアリー、ジェーンは全員、俺の中ではカテゴリが女の子ではなく怪物になってるからな」
「怪物なんて普通の子に言ったら怒られますわよ。まあ、ワタクシは怪物でもなんでも目立てているのなら別にいいですし、他の三人も気にしないと思いますけれどね。さっそく店に向かいますわよ」
無駄な話が終わり、タスさんと共にギャンボル・アンド・ジェイブス悪戯専門店と向かった。
*
ギャンボル・アンド・ジェイブス悪戯専門店ではゆっくり店内を見回ってからタスさんが普通に何個か商品を買った。
買いものを終えると時間が丁度良く潰せたのでそのまま喫茶店へと帰り、二人が座っていたテーブルに再度、座っている。
すぐに店のベルの音と共にドアが開き、騒がしい話声が聞こえてきた。
「また、母さんは寝坊して」
「ごめんね~。まだ眠かったんだ~」
「デア、あなたもです! 昨日早く寝るように言ったのに!」
「いやー、色々気になることがあってさー」
「ごめんなさい。昨日も早く寝たのだけれど起きれなかったの」
「メアリーは夢魔なんですから仕方ないですよ」
「ならリリスも仕方ないのかもしれないね。でも、みんなで来られてよかったよ。エスさんたちやアラン君には迷惑をかけてしまったからそこは駄目だけれど」
店に入ってきたのは見目麗しい少年、悪魔のような風貌の女性、厳しそうな印象の女性、ドラゴンを思わせる羽や角を生やした少女、人形と間違えそうな白髪の少女と彼女とうり二つの黒髪の少女。マキナ一家とその関係者である。
店内をきょろきょろと見回しているので話しかけようとしたが、その前にデアがこちらに気がつき、手を振りながら近づいてきた。
「あっ、いたいた。久しぶり!」
彼女に続いてジェーンとメアリー、さらにそれに続いてリリンさん、リリスさん、マキナ夫妻がこちらに気が付く。
これで物語の怪物たちが全員そろった。
「お久しぶりです。遅れてしまい申し訳ありません」
「こんにちは。すみません」
「アランくんもタスさんも久しぶり。元気そうでよかった。遅れてしまってごめんね」
「ごめ~ん。いや~今回も起きれなかったよ~」
「リリス! ちゃんと謝りなさい!」
「え~、謝ったよ~?」
「はぁ。……遅れてしまってすみません。デアもちゃんと謝りなさい」
「うん。ごめん、起きれなかった」
「遅れてしまい申し訳ない。お詫びにここの代金は私が支払うよ」
「おかげで休憩時間がとれたので大丈夫です」
「ああ、ゆっくりできてよかった」
「問題ない。あなたたちが遅れてくることはあらかじめわかってた」
「そうですわ。待ち時間にアランとデートできましたしね」
「えぇぇぇ! タスさんとアランって付き合ってたのぉぉぉ!?」
さっきのネタをまだ引っ張っているタスさんの冗談を信じたデアがオーバーに驚き聞いてくる。
「そんなわけあるか。ただ、暇だったからタスさんの買いものに付き合っただけだ」
「付き合ったは付き合ったのね。意味は違うけれど。二人の仲がよさそうでなによりだわ。応援しているわよ」
俺の答えにメアリーが冗談交じりに茶化す。デートうんぬんという話の流れからかジェーンが対抗意識を燃やした。
「メアリー、私たちもデートしましょう」
「デートって私たちずっと一緒にいるじゃないの」
「そうですけどデアともずっと一緒じゃないですか」
「いいじゃない。別に一緒な事にはかわりないわ。この後も教科書を買いに行くのだから実質デートよ」
「そういうことじゃないんですけど」
メアリーがジェーンの話をはぐらかしていると基本なにも考えていないデアも適当に話に参加してきた。
「これはあれだね! アランとタスさん、メアリーとジェーン、あたしと兄さんで実質トリプルデートだね!」
「日時や場所を定めて男女が会うって意味だし、男女のペア以外にも、愛し合う二人が会うことをデートと呼ぶこともあるらしいから間違ってはないな。メアリーとジェーンが愛し合ってるならだが」
こっちがいじられるのは嫌なのでデアのいい加減な発言に便乗させてもらう。これで対象をメアリーとジェーンに移せるだろう。
メアリーには茶化した罰を受けてもらおう。逆にジェーンは喜んでくれるかもしれないしな。
「もちろん私は愛してます。メアリーはどうですか?」
恥ずかしげもなく言いづらいセリフを言い放ったジェーンがメアリーに問う。
「え? ……えっと、……ま、まぁ嫌いじゃないわ。十年間くらいずっと一緒にいるのだし、親しい……のよね?」
メアリーは対照的に曖昧な表現でお茶を濁している。
「ええ、親しいに決まってます。嫌いじゃないのもわかってますよ。嫌いならあなたが私の傍にいるわけないですからね。それで、愛してますか?」
「え、いや、だから嫌いじゃないわよ?」
「嫌いじゃないのはわかってますので愛してるかどうか知りたいんです」
「……あっ、デートといえば。ねぇ、お兄様? お兄様は結局誰と付き合うのかしら? 夏休み中、ほとんど毎日誰かしらとデートしていたわよね」
リリンさんに話を振り話題を切り替えようとしている。明らかに無理があるがそれだけ切羽詰っているのだろう。
親たちの話に混ざっていた彼だが、妹の呼びかけにしっかりと反応し答えた。この辺りがモテる理由なのだろうか。真似すれば俺も……いや、違うわ。夢魔だからだわ。俺が真似してもなんの意味もないわ。
「誰とも付き合わないよ」
「とっかえひっかえで楽しんだというわけね」
「人聞きの悪いことを言わないでほしいな。そもそも、デートをしていたわけじゃないからね。遊びや買いものに付き合ってほしいと頼まれて一緒に出掛けただけだよ」
「このままだとメアリーに誤魔化されてしまいますが、答えは次の機会に聞くとしましょう。それで、リリンさん、それはデートです」
「デートかもしれないけど、恋愛的な意味じゃなくて社交的な意味の方だと思うよ」
「相手は全員女性でしたよね?」
「そうだね。でも異性だからといって必ずしも恋愛関係になるわけじゃない」
「異性間で友情が発生するかどうかは人によって見解は違います。私はあり得ると思っていますが、リリンさんの場合はあり得ないと思います」
「兄さんは夢魔だもんね。目を見ただけで女の子たちはメロメロだよ」
「即お持ち帰りからのゆうべはお楽しみでしたね。毎日女の子とやりたい放題でなによりだわ。さすがです。お兄様」
「そんなことできてないよ。夜には一人で家に戻ってきていたじゃないか。それにしても半分夢魔とはいえその年でその発言は女の子としてどうなんだい? 兄としては少し心配だよ」
その年もなにも前世と合わせたら三十路超えているはずだし、中身は男だから女の子でもない。しかも下ネタオッケーのうえ夢魔なのだからあまり問題なさそうではある。
「というか夢魔という話ならメアリーもそうじゃないか。アラン君と親しいようだけど友達としてだろう? 恋愛関係だというなら話は別だけれどね」
「アランと私は親しいのかしら?」
「そこからかよ。一応去年一年間はつるんでたし、今日も集まったし親しいだろ。あと、俺はお前に恋愛感情はない」
「そ、そんな。あんなに愛し合ったのに……しくしく」
メアリーがわざとらしくその場で崩れ落ちる。そんなことしてるから話が長くなるんだろ。それにジェーンから憤怒のオーラが滲み出てるからやめてくれ。
「そういうのいいから。で、本音は?」
「いや、それはあなたと同じであるわけないわ」
「ほら、夢魔だからといって必ずしも異性と恋愛関係になるわけじゃないだろう?」
彼女……彼の場合は恋愛対象が女性だからな。また話が違う気はする。俺も俺でなんか精神に違和感あるし。
「うーん、メアリーの場合またなんか違うと思いますけど。そうなのかもしれませんね」
「ああ、友人として出かけただけだよ」
「兄さんはそう言うけどさ。女の子たちはたぶん付き合ってほしかったんだと思うよ?」
「まあ、私も女性側の意見としてそう思います。彼女たちの気持ちをもっとちゃんと考えてください」
「私はよくわからないけど、もしそうならそれを無視するのはよくないわ」
「妹たちからの当たりがきついよ……アランくん助けてくれ……」
女性陣(一人中身が違うやつがいるが)に責めれられて悲しそうな顔になっている。メアリーは人の事言えない気がするがそれはそれだ。
さすがにリリンさんに味方がいなさすぎるしフォローするか。
「まあ、モテモテってことでいいじゃないですか。俺みたいにモテないよりはいいですよ。ただ、彼女たちの言うようにちゃんと考えないと修羅場になりかねないので殺されないよう気を付けてください」
痴情のもつれで友人の兄が殺されるとかはやめてほしい。このままだとリリスさんは悲しみの向こうへたどり着いてしまいそうである。ナイスボートは見たくない。
「アラン君、他人ごとみたいに言ってるけど君の状況も相当だからね」
「何言ってるんですか。リリンさんと違って女の子に囲まれるなんて状況にはなりませんよ」
俺はリリンさんのように顔立ちが整っていない。それに性格も斜めに構えていていけすかない。他に特別なにかあるわけでもなく、こんなんがモテるわけがないから痴情のもつれなんてありえない。
「いや、今の状況を客観的にみてほしい。デアにメアリー、ジェーン、タスさんと女の子に囲まれてるじゃないか」
「……女の子? ああ、確かにそうですね」
言われてみればそうである。ただそれは外から見た場合の話。俺からしたら全員怪物でしかないので、怪物に囲まれているという認識だったので全く気が付かなかった。
「ホグワーツでもそうなのはスリザリンの人から聞いている」
「そうなんですか。一応他のスリザリン生ともつるんでるんですけどね」
ドラコにクラッブ、ゴイル、それにルームメイトのザビニにノット。
「そうなのかい? 「いつも美少女に囲まれてる」って聞いたんだけどね」
「初耳です。もし、その人に会ったら違うと訂正してもらっていいですか?」
「いいけど事実なんじゃないのかな? 兄の私が言うのもあれだけどメアリーは文句なし、ジェーンはそのメアリーと瓜二つ、タスさんもかわいらしいし、デアは少しばかりやんちゃだが、それはそれで元気でいいんじゃないかな。そんな彼女たちと一緒にいるんだろう?」
「お兄様のほうが絶対かっこいいのだけれどね」
「メアリーのほうが絶対理想的なんですけどね」
「リリスさんに評価していただき光栄ですわ」
「ちょっと! あたしだけ容姿を褒められてないんだけど!」
「うーん、いや、確かに、そう言われると美少女で間違ってはないんですけど、なんかこう、違うんですよね」
「まあ、君も彼女たちも恋愛どうこうってわけじゃないのは見ればわかる。だからそう言っておいたよ。でも、そうなったら彼女たちを絶対傷つけないように気を付けてね」
「なりませんよ。気を付けるなら俺より、リリンさんでしょう? タスさんとジェーンならいいんでしょうけどメアリーとデアはシャレじゃすみませんからね」
「私とデアで姉妹丼ね。お兄様ならあり得るかも。面白そうだから私はいいわよ」
「メアリー、冗談でもやめてください」
「あ、はい。ごめんなさい」
「ワタクシは賛成ですの!」
「メアリーもタスさんも何言ってるの。兄さんもそれだけはマジでやめてよ」
「そんなことしないよ! 考えなくてもわかるだろう! まったくメアリーはそんな言葉どこで覚えてくるんだ!?」
久しぶりにあってみんなテンションが上がっているためか楽しい(?)会話に花を咲かせていると親たちの会話がひと段落したようでアダムさんに話しかけられる。
「楽しそうなところ悪いね。そろそろ教科書を揃えに行こう。なにかイベントをやっているみたいで混んでいるから時間がかかりそうだから」
料金を払い、ギルデロイ・ロックハートの待つフローリシュ・アンド・ブロッツ書店へ彼の教科書を買いに向かった。
*
書店に集まっているのは彼のファンであるマダムばかり。その他には彼の教科書を買いに来たであろう少年少女たちがちらほらと見受けられる。少女の中には彼のファンが大量に含まれているが。
ドアの前で整理係の魔法使いが困惑しながら仕事をこなしている。
「奥様方、お静かに……ああ、押さないでください……」
押し合いへし合いする人ごみに揉まれながらもなんとか前へ進んでいく。身体能力の高いデアとリリンさん、アダムさんがかき分けてくれるので他の人たちよりは楽に進むことができた。
「すごい人ごみだねー」
「ロックハートさんの噂は聞いていたけどこんなに人が集まるなんて」
「ああ、怪我人がでてしまいそうだ」
三人の後ろをついていくと、噂のロックハートの姿が見えてきた。
彼は原作の描写と同じく椅子に座っており、その前にはサイン用の机が用意されている。その周りには彼の写真が大量に張られ、その中の彼はウィンクしながら白い歯をキラキラさせていた。
そして、本物の彼はというと三角帽子と青っぽい色のローブという出で立ちでサインを描いており、そんな彼を背の小さな男性がカメラで撮っている。原作通りであれば日刊予言者新聞のカメラマンである。
彼がいるということはハリーやロンたちもここにいるはずなのだがこの人だかりでは見つけることは難しい。
机の方へと目を向けていたロックハートがその顔を上げると椅子から勢いよく立ち上がった。
「あなたはもしや、ハリー・ポッターでは?」
ロックハートとハリーという二人の有名人が居合わせたことに対して周囲が興奮したささやき声を上げ、周囲が道を開けるとすぐさまロックハートがハリーへ近づき、その腕をとって、机の前へと連れ出した。
二人が前へそろったことで拍手の嵐となり、カメラマンの男が二人にシャッターを切る。輝く白い歯を見せながら笑顔を作るロックハートとは逆にハリーは緊張からか恥ずかしさからかうまく笑えていない。
写真を撮り終えるとロックハートはハリーの肩へ腕を回し、手を叩き、静粛にと合図をする。そして彼はハリーに教科書である自身の自伝をすべて無料でプレゼントをすることを発表した。また拍手の嵐となったが続いて、ホグワーツの今年の闇の魔術の防衛術の教師を担当することを発表した。
ようやく演説が終わり、またまた歓声と共に拍手の嵐になる。そんな中で、ロックハートはハリーに自分のすべての著書をプレゼントするとようやく彼を解放した。
ハリーはよろよろと赤毛の女の子、おそらくロンの妹であるジーニー、の前へと移動し、彼女が買ってもらった大なべにプレゼントされたそれらを入れる。自分の分は自分で買うらしい。
そんな彼に近づく人影が一つ。丁度居合わせたドラコである。原作ではこのままだと喧嘩になりかけるので仲裁をしに俺も近づいていく。
「今どんな気分だい? 生き残った男の子、ハリー・ポッター。ただ書店に立ち寄っただけで一面大見出し記事とはね」
笑いながらそう言ったドラコをジーニーが睨みつけながら主張した。
「見ればわかるでしょう? ハリーが望んだことじゃないわ」
「そんなことはわかっている。ポッター、ガールフレンドに冗談というものを教えておけ」
ガールフレンドという言葉にジーニーが真っ赤になった。ドラコはというとこちらに気が付き、そんなことは気にもとめず俺に話しかけてくる。
「アランじゃないか。お前もあいつの本を買いに来たのか?」
「ああ、教科書だからな」
ドラコの問いに応えるとロンとハーマイオニーがロックハートの教科書セットを抱えて現れた。
「なんだ、君たちか。わざわざどうも。マルフォイ家長男の君が僕たちなんかに構ってる暇はないだろ」
ロンが嫌味を言うとドラコも負けじと言い返す。
「君を古本屋以外の本屋で見るとわね。新品の本をこれだけ買ったら君のうちじゃ、破産するだろう? なに、僕が父上に頼んでお金を出してもらおうか?」
「いいや、大丈夫。ウィズリー家は誇り高いマルフォイ家様にわざわざ目をかけてもらうほどの家じゃないだろ? 血を裏切るものは血を裏切るものとしてなんとかやるさ」
「言うじゃないか。まあ、必要なら手を貸そう。家に余裕があればだがな」
「君の家に余裕がなければうちなんてとっくに消えてると思うけど?」
「そうかもしれんが、お前らのほうが生き延びる可能性もある。そのときは助けろ」
「その頼み方で助けてもらえると思ってるのかい? まあ、君らしいけどね」
原作だと喧嘩になりかけてハリーとハーマイオニーに止められていたが大丈夫だったらしい。俺が来るまでもなかったな。
「アランく~ん。お友達~?」
「お母様、ふらふらしてると迷子になるわ」
「そうだよ。今日ここにくるまでだって迷子になりかけたじゃないか」
「毎回毎回なんでリリスは子供達より勝手なことをするんですか!」
「まあまあ、イーヴァ落ち着いて」
「そんなに怒ってもいいことないよ?」
「お母様、お父様。あの子がハリー・ポッターですわ」
「へぇ、案外普通の子なんだね」
「だから私はそう言った。ちゃんと予測していたのに」
「予測能力。タスさんのお母さんに化けるのもありですね」
彼女たちも親たちと共にロンたちと同様に教科書セットを持ちながら騒がしく合流した。
「ロン! 何しているんだ? こんな人混みからは早く退散しよう」
続いてロンのお父さんであるアーサーさんが呼びかけてくる。
「これは、これは、これは……アーサー・ウィズリーじゃないか」
さらに畳み掛けるようにドラコのお父さんであるルシウス・マルフォイが現れた。息子の方に手を置いた彼はドラコそっくりの薄ら笑いを浮かべている。
そんな彼にアーサーさんはそっけなく答える。
「ルシウス、なんの用だ?」
「君の部署の仕事は大変そうですな。とはいえ、抜き打ち調査をあれだけやれば当然残業代で給料の方は潤うでしょうし仕方ないでしょうな」
ルシウスさんはジーニーの大なべの中から使い古した「変身術入門」を取り出して言った。
「どうもそうではないらしい。まさか、働いた分の給料がもらえないのでは……。いやはや、わざわざ魔法使いの面汚しになっているというのに哀れなものですな」
息子たちと違いアーサーさんは原作通り顔を真っ赤にする。
「魔法使いの面汚しの定義が君と私では異なるようだ」
原作通り、ハーマイオニーの両親もこの店に来ていたようで、ルシウスさんが心配そうに彼らを見ていたグレンジャー夫妻の方を見る。
「そのようですな。こんな連中と付き合ってるようでは……マグル生まれどころかヒトですらないとは……」
ジーニーの持っていた大鍋が宙を飛んだ。すかさずタバサさんが杖を振ると空中でピタリとその動きが止まる。
アーサーさんがルシウスさんに飛びかかる前にアダムさんが静止した。
「ここは書店の中です。他のお客様の迷惑になりますしやめたほうがいいですよ。ほら、喧嘩しても痛いだけですし」
「やるのなら外でやってください。外なら魔法でもなんでも使いたい放題ですので」
「折角私が止めているのになんでイーヴァは煽ってるのかなぁ!」
フレッドとジョージもイーヴァさんに便乗して叫んだ。
「よし! やっちゃえ! パパ!」
「アーサー、だめよ!」
ロンのお母さんであるモリーさんも叫ぶ。人々が喧嘩に気が付き後ろへ下がる。その空間を見逃さなかったデニスさんがそこに移動した。
「はーい! みんな注目! そこのお二人さんも一旦落ち着いて!」
色とりどりの花火を打ち上げながらピエロが叫ぶ。
「さぁさぁ、始まります魔法使いの決闘。右手の赤毛の魔法使いはアーサー・ウィーズリー。マグル製品不正使用取締局の局長であるこの人。魔法使いにもマグルにも平等な彼は一部の魔法使いから血を裏切るものと呼ばれています。そうです、聖二八一族の一つウィーズリー家だけでなくブラック家の血も継いでいる彼は由緒正しい純血の魔法使い。その実力は折り紙つきだ!」
アーサーさんは純血と強調されるのが嫌なのかしかめっ面を崩さない。
「左手のブロンドの魔法使いはルシウス・マルフォイ。聖二八一族の一つ、由緒正しいマルフォイ家の家長である彼は自身も純血であり、純血の至上を唱えております。さらになんと彼は服従の呪文かけられた元死喰い人。もちろん第一次魔法戦争にも参加しています。かつて例のあの人の部下であった人物の実力はいったいどれほどのものか!」
元死喰い人だったことを叫ばれてルシウスさんも少し顔が強張る。
「血を裏切るもの対純血主義の因縁の対決! 見なきゃ損だ! その決闘を見守るはしがない道化師であるこの私、デニス・エー・エス。普段はサーカスで働いています。気になった方はぜひ見に来てくださいね」
さらっと自分の仕事の告知までした彼は魔法を使って決闘の場を用意していく。
「周りには防護呪文を張るのでご安心ください! ということで思う存分どうぞ!」
彼を見ていたフレッドとジョージが二人そろっておもしろがっている。
「なんだあのピエロ!」
「あれよあれよの間に場の雰囲気を持っていきやがった」
「ワタクシのお父様ですの」
「へぇーお前んとこの父さん」
「おもしろいな!」
突然現れたピエロに客だけでなく元凶の二人でさえ茫然としているとハグリッドが現れた。
「おっさんたち、やめんかい! ……なんだ? 喧嘩しとったんじゃなかったんか?」
「なんだか馬鹿らしくなってしまった。次は許さないから覚えておいてくれよ」
「それはこちらの台詞だ。なぜ私が許されなければならんのだ。まあ、いい。ほら、……君の本だ」
ドラコに目で合図をするとルシウスさんはすぐに店から出て行った。
「いやぁ、すみません。僕は息子さんたちとも仲良くさせてもらってますよ。では、僕も行かせてもらいますね」
彼もそう言うと店の外へ出ていく。
「あれ? 決闘しないの? じゃあ予定を変更いたしまして私のパフォーマンスをお見せいたしましょう!」
「お客様、おやめください」
「いや、このギルデロイ・ロックハートの顔に免じてやらせてあげてはくれないか?」
「……ですが」
「許してもらえるのであれば『私はマジックだ』の入荷代をすべて私が受け持つ」
「どんどんやっちゃってください!」
「そのパフォーマンス、この私、ギルデロイ・ロックハートも参加しよう!」
店内がさらに騒がしくなり、カメラのシャッター音が鳴り響く。
そんな中ハグリッドが口を開いた。
「アーサー、ルシウスのことはほっとかんかい。息子はマグルや亜人たちと交流を持とうとしているのに親のあいつはあの通りだ」
「熱くなってしまった。すまない。それでこちらの方々はロンの友人たちかな?」
彼が俺らを見ながら聞くとロンが答えた。
「一応ね。スリザリンだからマルフォイの方が親しいけど」
「アラン・スミシーです」
「ティー・エス。タスさんと呼んでくださいな!」
「その母のタバサ。あそこのピエロが夫のデニス」
「デア・マキナだよ」
「デアの母のイーヴァです」
「父のアダムです。さきほどは手荒な事をしてしまいすみませんでした」
「いや、いいんだ。頭に血が上ってしまっていた。逆に助かったよ」
「えっといいのよね? メアリー・スーです」
「姉のリリスだよ~」
「母さん、嘘はいけない。私、リリン・マキナとメアリーの母です。メアリーとデアは私の妹、つまり私は二人の兄ということになります」
「ん? どういうことだい? 君とメアリーの母親がリリスで、メアリーとデアは君の妹。でも、デアの母親はイーヴァだろう? それはおかしくないか?」
「普通そうなりますよね。ちょっと説明します」
リリンさんがリリスさんは夢魔だということを話し、その後その特性により家族関係が複雑になってしまったことを説明した。
何回か説明しているうちにアーサーさんも納得したようでしきりにうなずいている。
「そういうことか! いや、珍しいこともあるんだね」
興味深そうにしているアーサーさんとは対照的にモリーさんは心配そうにリリスさんとイーヴァさん、アダムさんを見て言った。
「その、大丈夫なのかしら? その人間関係とか……」
それにイーヴァさんが答えた。
「再婚と変わりないんですよ。なので問題ありません。というかこの程度で壊れる関係ならそれまでの物だったというだけです」
「私は気が気でなかったんだけどイーヴァがこの通りだから」
「大丈夫~。だって二人とも優しいも~ん」
「リリス、元凶のあなたにはもう少し考えてもらいたいんですがね」
イーヴァさんはため息をつきながら頭に手をやる。
話が落ち着いたのを見計らって最後のジェーンが自己紹介をした。
「ジェーン・ドゥと申します。両親が幼いころに亡くなってしまったのでマキナさんたちの家で過ごしています」
「私もお母様が好き勝手に世界を飛び回ってるからマキナさんたちの家で暮らしてるの」
「夢魔だからね~。一か所にとどまるのが退屈で退屈で」
「リリスさんが夢魔ということはメアリーとリリンは半分夢魔なのかい?」
「はい。お母様と違って普段は隠してますけれど羽根や尻尾が生えてます」
「私の場合はメアリーより特徴が薄いので見た目は人間ですけどね。父の方の特徴も見た目には出てませんし」
「アダムさんもなにか特別な家系で?」
「一応先祖にドラゴンがいるみたいです。もう薄まってしまって見た目には影響がないんですが、娘のデアだけは先祖がえりでこのとおり」
「角に牙、鱗に尻尾、それと羽もあるんだよ!」
「ずっと気になってたがそういうことだったのか。竜人とは大変珍しい。一度も見たことなかったよ」
アーサーさんがロンと同じようなことを言っている。さすが親子、似ている。
「ほら、僕は学校に夢魔もドラゴンもいるっていってただろう」
「いや、さすがに僕をからかっているのだと思っていたんだが、いやはや……」
ロンが得意げに言うとアーサーさんが謝った。元々話していたらしい。
「それだけじゃない。妖精だっているんだ」
「ワタクシが妖精ですの!」
「私が妖精の血を引いている。ティはその先祖がえり」
「妖精の魔法が使えるって本当かい?」
「本当ですの」
タスさんは店内で指を鳴らすと姿くらましをして一回消え、すぐ横に姿現しをする。
「本当にその年で姿くらましが使えるなんてね。話には聞いていたけどびっくりだよ」
「妖精の魔法ですので校内でも使えるんですのよ」
「他の二人も別の生き物の血を継いでいるのかな」
「俺はただのマグル生まれです」
「私は両親のことがわからないのではっきりは言えませんが、ただの魔法使いです」
ジェーンはアーサーさんたちにばれないようにハリーに向かって口に人差し指を当てる動作をしてからそう主張する。
去年、彼はヴォルデモートが彼女のことをドッペルゲンガーだと言ったのを聞いている。彼がそれを言わないようにやったのだろう。
「そうかそうか。だが、なんだっていい。スリザリンだというのに息子たちを助けてくれたらしいじゃないか。今後も仲良くしてやってほしい」
「こちらこそよろしくおねがいします」
俺を皮切りに他のみんなも口々に社交辞令を口にし始めた。ハーマイオニーは両親にジェーンとタスさんを紹介している。
「こちらタスさんとジェーン。二人とも成績優秀だって話したわよね」
「そう言っている娘さんは去年、首席でしたのだけれどね。ワタクシは三位でしたの。こちらのジェーンが二位」
「私も頑張ったんですけれどハーマイオニーさんには届きませんでした」
ハーマイオニーの両親は学年二位と三位に娘を褒められてうれしそうである。そして、学年トップスリーがここに揃っているという。まあ、それと同時に最下位のやつもいるが。
社交辞令が進められている最中に俺は、大量の本棚の中から教科書を探してレジへ持って行き、店員が提示した料金を払ってみんなのもとへ戻ると話がひと段落ついていた。
ウィーズリー一家とグレンジャー一家は漏れ鍋に戻り、そこから煙突飛行ネットワークを用いてそれぞれの家へ帰るそうだ。煙突飛行ネットワークは魔法使いの家の暖炉はネットワーク化されており、煙突飛行粉という魔法薬を用いることで暖炉を介して遠く離れた場所へ移動できる。ただしネットワークは魔法省に常時監視されており、ネットワークに組み込まれていない暖炉は利用できない。
彼らと挨拶をして別れるとパフォーマンスが終わったデニスさんがこちらに歩いてきた。
「いやぁ、ロックハートってすごいね。あの人は自分をどう魅せたらいいかわかってる」
「あの派手さは見習いたいですわ」
「でも、どう予測してもあの人闇の力に対する防衛術の教授が務まるとは思えない」
タバサさんの予測は正しい。彼は闇に対する防衛術どころか魔法自体が得意ではない。唯一得意なのは忘却術。
彼の功績は他者の記憶を消して、彼らの功績を横取りしたものだ。彼はまるで自分が冒険をし、それを本にしたように見せかけるペテン師である。
「彼の軟派な態度は気に入りませんが、その功績から実力は本物のはずです」
堅そうなイーヴァさんはロックハートのことが気に入らないようである。しかし、その実力は信頼している。まあ、功績も実力も偽物なのだが。
「そんな人がデアたちに教えてくれるんだから心配しないで大丈夫だと思うよ。私も少し引っかかるものはあるけど」
アダムさんも心配ないと言いながら少し心配そうである。
「心配というか予測した結果を言っただけ。この子たちならそれでも大丈夫。心配はしていない」
「そうそう心配しないで~。みんな優秀だから平気だって~」
「あなたは適当すぎますけれどね」
「アランも教科書変えましたの?」
「ああ、全部買ったはずだ」
「では、これで全員が揃えられたはずですのでワタクシたちも店をでましょう」
「そうだね。もう出ようか」
「デア、メアリー、ジェーン、リリン行きますよ! リリスも!」
タスさんの思惑のせいでアーサーさんとルシウスさんのいざこざに巻き込まれたが、無事に教科書は買いそろえることができた。
書店を出た俺たちは一年前と同じ店で食事をすませた。別れ際に九月になったら再度集まって一緒にホグワーツへ向かう約束をしたため今年も怪物たちと登校することになりそうだ。
主人公以外の親御さん大集合のロックハート登場回でした。
恋愛要素を入れようとしてみましたが、ヒロインを怪物としてしか認識していないアランくんが原因でフラグが折られました。彼女たちも恋愛には興味なさそうです。
次回は特急内での怪物たちの作戦会議です。