作戦会議という名のネタバレ回です。
九月一日当日。二回目なので特に問題もなく怪物達と集まり、ホグワーツ特急に乗ることができた。
コンパートメント中で怪物達に囲まれた俺は周りで誰か聞いていないことを確認し、今年の「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の内容の確認と今後の計画を立てようとしている。
「今年は秘密の部屋が開かれるんだよな?」
「そうそう、秘密の部屋。あとなんだったっけ。でっかい蛇! 目を見ると石になるんだよね」
デアが興奮気味に言う。若干間違っているため、彼女の前に座っているメアリーが訂正した。
「バジリスクよ。目を直接見ると死ぬわ。間接的に見ても石になってしまうの」
「そうだったっけ? どっちにしても見たら駄目だからあたしはやばいんだよね」
「メアリーがいるから大丈夫ですけどね」
「そうですわ。問題ないですの。なので今年も魅せて目立って楽しませますわよ!」
心配そうにしているデアとは逆に楽しそうなタスさんはいつも通り自信満々に答えている。
「原作から乖離しないようにほどほどにな。それで、そのために原作を確認したいんだが」
「確認もなにもアランが言ったように秘密の部屋が開かれるんですの。それだけですわよ?」
「いや、もっと細部の確認だよ。それに原作を読んでない読者がいるかもしれないだろ?」
「読者? 視聴者の間違いじゃないですの?」
「二人ともなに言ってるの?」
俺の発言とタスさんの発言が食い違い、他の三人はどちらの発言の意味も理解できずに頭に疑問符を浮かべている。
「なんでもいい。とりあえずみんなの知識があってるか確認しよう」
「わかりましたわ」
「オッケー。あたしは一回映画見たっきりで忘れてるしね」
「私も大まかな流れしか覚えていないから助かるわ」
「そうですね。そしてちゃんと計画を立てないといけません。去年は無計画でなんとかなりましたが今年は相当危険ですから」
ここから原作のネタバレに入ります。二次創作を読んでいる時点で原作を読んでないわけないけど。
今年の事件の原因は秘密の部屋が開かれること。秘密の部屋はスリザリンがホグワーツを去るときに造った部屋。中にはスリザリンの怪物、バジリスクが住んでいる。
バジリスクは常に凶暴な大蛇。牙の毒は腐食性が高く強力で不死鳥の涙でなければ中和できない。牙の毒も危険だが最も危険なのはその一睨みであり、まともに目をあわせた者は即死する。間接的に見たとしても石化してしまう。
蛇語を話せるパーセルマウスでもない限り、ほとんどの魔法使いだけでなく、闇の魔法使いにとっても危険であるこの生き物の危険性は文句なしのレベル五。ドラゴンやアクロマンチュラと同様に最高レベルである。
なぜスリザリンがこんな部屋と怪物を用意したのか。それは彼の教育方針に由来する。
彼はマグル生まれを教育するべきではないと考え、純血の生徒のみ受け入れるべきだと考えていた。もちろん他の創立者たちは反対し、彼は学校を去った。
そのときに彼の意志をつぎ、学校のマグル生まれをすべて殺してくれる後継者のために秘密の部屋を作り、バジリスクを用意した。
巧妙に隠してあり現在では伝説として残っているだけである。そのため教師陣もその存在に気づいていない。
「これであってるよな?」
「あってると思うわ」
「それでそれがなにか問題ありますの?」
「問題大ありだろ。直接目を見たら死ぬんだぞ」
「こっちにはメアリー・スーがいるんですのよ。つまらないくらいに安心安全ですわ。行きたいなら今日の夜にでもバジリスクに会いに行ってもいいですわよ?」
「いや、やめとく。それに秘密の部屋を開けるのには蛇語を話せる奴が必要だろ?」
秘密の部屋を開ける鍵、それは蛇語。スリザリンは自身の後継者の条件の大前提としてパーセルマウスであることを定めたようである。バジリスクを制御するのにも蛇語が必要なこともその証だ。
よって蛇語が話せなければ部屋には入れない。
「ジェーンがパーセルマウスに変化すればできるかもしれないけどな」
「いえ、このままでも話せますよ。このように……○×□△○×□△○×□△」
ジェーンがシューシューと蛇が出すような音を出す。
「適当にやってないか?」
「適当じゃないです。サーペンソーティア」
彼女は魔法を唱え、コンパートメントの床に蛇を出現させる。
「いきなり蛇出すなって」
「これでドアの向こうに行かせて帰ってこさせますね」
ドアを開け、もう一度、自称蛇語を話す彼女。すると蛇がドアの向こうへするすると移動し外に出て、方向を変えてこちらに戻ってきた。
「ほら、本当に蛇語ですよ」
「なんで変化もしてないのに話せるんだ?」
「メアリーがパーセルマウスだからです」
「そうなのか?」
「あれ? 言ってなかったかしら?」
「聞いてない。お前らは?」
「あたしは知ってたよ」
「ワタクシも把握してましたわ」
「知らなかったの俺だけかよ」
「蛇自体は苦手だけれどね」
「蛇語を話せるのに苦手なのか?」
「人間は本能的に蛇が苦手なのよ。アランは知ってると思ったのだけれど」
ヒトの祖先の天敵が蛇だったため、遺伝子に危険だと刷り込まれており、人間のほとんどが蛇が苦手である。諸説あるかもしれません。
「知ってる。でも、蛇語を話せても苦手というのは意外だな。メアリーはアクロマンチュラとも仲良くしてたし」
「私は大丈夫なんですけどね」
ジェーンが蛇語を話し、蛇を自分の膝の上に移動させる。
「あたしには近づけないでよ?」
「ワタクシも蛇語が話せないので危険ですの」
「それで、なんでメアリーは話せるんだ? 夢魔は話せるのか?」
「そういうわけじゃないと思うわ。お母様は話せないから。誰かわからないお父様が話せたか。それか私の魅了の力のおかげか」
「魅了の力のおかげだな」
「私もそう思います」
「だよねー」
「それでいいんじゃないですの」
しきりに蛇を気にしているデアがカエルチョコを食べて言った。
「それでさー、二人が蛇語を話せるし、バジリスクはメアリーがなんとかしてくれるしで今年も楽勝じゃん。計画何ていらないよ。学校生活を楽しもー」
「タスさんが言ったように今日の夜にでもバジリスクを魅了すれば今年は普通に過ごすだけです」
「いえ、そうはいかないわ」
「おもしろいことにそうなんですのよ。それだけだったらつまらなすぎてどうしようかと思うくらいですわ」
「なんでー? バジリスクをなんとかすれば終わりじゃん!」
「今年の事件の出来事の物語としての本質はバジリスクを倒すことじゃないのよ。分霊箱の破壊とグリフィンドールの剣にバジリスクの毒を吸収させること」
「分霊箱ってあれだよね。破壊しなきゃいけないやつ」
「忘れていました。確かにそれをやらないと後あと面倒ですね」
「そういうことですの」
「また、原作未読者置いてきぼりのネタバレだな」
この話には今年の事件の犯人が関係する。スリザリンの継承者は誰かという話である。
メアリーとジェーンは蛇語が話せるが、彼女たちは原作にいないので違う。
原作で蛇語を話せるキャラクターとして代表的なのは主人公のハリー。もちろん主人公の彼は後継者ではない。
スリザリンならドラコと言いたいところだが、彼は蛇語を話せない。
では、誰か。答えはヴォルデモート。もっと言えば日記に宿るヴォルデモートの魂の一部。
彼は魂をいくつかの物体に切り分け、分霊箱というものを作った。肉体が滅びても分霊箱がどれか一つでも残っていれば死なないというびっくり魔法である。その一つがヴォルデモートの本名、トム・リドルの日記なのである。
彼こそがスリザリンの後継者。なぜ日記がバジリスクを操れるのかは置いておこう。
そして、分霊箱は厄介な特性を持っており、強力な魔法特性を持った物でしか破壊できないため、通常の方法では破壊できない。だが、「バジリスクの毒」でなら破壊できるため、今年の最後にハリーが日記を破壊してくれるはずなのだ。
しかも、日記が破壊できれば終わりというわけではない。
グリフィンドールが残した対象の特性を吸収する剣が登場するのだが、これに「バジリスクの毒」を吸収させなければならない。それは原作では今後の展開上必要になるからである。
なのにも関わず、なんとこの剣、俺や怪物たちには用意できない代物なのである。この剣は「真のグリフィンドール生だけが組分け帽子の中から取り出すことができる」のだ。つまり、スリザリン生である俺たちでは不可能であり、タスさんにも生成できない一部アイテムらしいので、原作通り、ハリーに引っ張り出してもらう必要がある。
「ということだ。思ったより面倒だな」
「そお? 別になりゆきに任せるだけで大丈夫そうだけどなー」
「そうですわ。そんなに根を詰めても楽しめませんわよ!」
「でも、しっかり考えておかないと詰むかもしれないわ」
「メアリーがいるとはいえ無計画は危険すぎます」
「俺もそう思う。原作から乖離したら冗談じゃすまないぞ」
「あたしは大丈夫だと思うけどそんなに心配なら考えた方がいいかもねー」
「ええ、細かいところはあなたたちで考えておいてくださいな」
「うーん。みんないるならある程度は大丈夫なような気がしてきたわ」
「メアリーもですか? わかりました。私が考えておきます」
「俺も協力するよ」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。私もああ言いましたが、メアリーがいる以上どうとにでもなりますら」
「同感だが、なにかあったら協力させてくれ」
「承知しました」
物語の怪物たちを乗せたホグワーツ特急は去年と変わらず緑の中を走っていく。
*
駅に着いた後、去年とは違いボートではなく馬の引いていない馬車で学校まで移動した。
大広間へと移動し、スリザリンの机へ移動して座り、一年生が来るのを待つ。
グリフィンドールの机できょろきょろしていたハーマイオニーがこちらに気が付き話しかけてきた。
「久しぶりね」
「ああ、久しぶり。なにか用か?」
「ハリーとロンを見てないかしら」
「あ、忘れてた」
「なに? なにか知ってるの?」
知っている。今ここにハリーとロンはいない。なぜなら汽車に乗ることができなかったからだ。
彼らは諸事情により九と四分の三番線への入ることができなかった。そのため、アーサーさんの持つ空飛ぶ車を無断で使ってホグワーツへ向かっている。
原だからといってこれを知っているのは不自然であるため、知らないということにしておく。
「いや、ごめん。姿は見てないよ。いないのか?」
「ええ、フレッドとジョージの話では九と四分の三番線へ行くまではいたらしいんだけど」
怪物たちもそれぞれ知らないと答えた。タスさん以外は。
「そうですわ。すぐに到着するはずですの」
「そういえばタスさんは予言ができるのよね! なにか教えてくれない?」
毎回毎回、タスさんは余計な事を言ってくれる。でも予言としてなら大丈夫か。
「二人は汽車に乗り遅れて別の手段でこちらに向かっているところのはずですわ。すぐに来ますので安心してくださいな」
「なら大丈夫ね。ありがとう。安心したわ」
ハーマイオニーは自分たちのテーブルへと帰っていく。
タスさんが意外そうに俺を見て言った。
「てっきり止められると思ったのですけれど話してよかったんですの?」
「予言として言うだけなら別に問題ないと思ってな」
「今年は反応が悪くてつまりませんわ」
「はいはい、それより一年生がこっちにくるみたいだぞ」
大広間にマクゴナガル先生につれられた一年生が列になって入ってくる。緊張した面持ちが懐かしい。こいつら怪物達は緊張などしていなかったが。
去年同様、組分け帽子による組み分けの儀式が始まった。同学年以外、特に下級生で名前のついているキャラクターが少なく、さらに学年まで明記されているキャラとなるとその数はグッと少なくなる。
ロンの妹ジーニーが原作と同じグリフィンドールになり、他のキャラクターも原作通りの寮へと組み分けされたので原作乖離はしていないと思う。
組分けが終わるとそのまま一年生の歓迎会兼夕食会へと移った。テーブルには去年と同じく肉ばかりのご馳走が出現する。
「牛肉、鶏肉、豚肉に羊肉! やっぱりお肉おいしい!」
「がつがつ食べるのはいいですがのどに詰まらせないように気を付けてくださいね」
「サンドイッチならバランスがいいかしら」
「そうですわね。効率を考えるならこのチキンサンドイッチだけを食べ続けるのが最高効率ですわ。まあ、それじゃつまらないのでワタクシはしませんが」
他の生徒たちが新入生や新しい教授の話で盛り上がっていると言うのに怪物たちだけは食べ物に夢中になっている。
新しい教授というのはもちろんロックハートのこと。ホグワーツ内でも彼のファンは多数おり、女子生徒たちに至っては彼の話題ほぼ一色と言っても過言ではないだろう。
女子生徒たちから注目を受けるとなれば裏を返せば男子生徒たちからヘイトを貯めるのは当然でこの短時間で相当なものとなっている。それはドラコも例外ではないようだ。
「まったく、あいつは半純血だぞ。それをスリザリン生とあろうものが嘆かわしい」
「そうよ。ちょっとばかり顔がよくて、勲三等のマーリン勲章を授与されてて、闇の力に対する防衛術連盟の名誉会員で、週刊魔女のチャーミングスマイル賞を五回連続で受賞しているくらいなによ。ドラコだってね……ドラコだってね……。色々すごいんだもんね!」
数少ない例外としてパンジーはいつも通りドラコにお熱なようである。フォローしようとしてできていないが、自分ではできたと思ったのか彼女は怪物達の方へ話しに行った。
「でパンジーはああ言ってるが、実績では完全に負けてると思うぞ」
「僕は由緒正しい純血の家系であるマルフォイ家の長男だからね。その時点で負ける要素はない」
「完全に親の七光りだけどな」
「まだ学生だからな。あいつだって学生のうちに今のようになっていたわけじゃない」
「おっしゃる通り」
「お前はあいつが気にくわなくないのか?」
「別に。どうでもいいさ。ロックハートの顔がいいのは事実だし、実績もあるからな」
「ああ、そうか。お前のガールフレンドたちはあいつのことなんか眼中にないからだな」
ドラコはロックハートに目もくれず食事を取っている怪物達に目を向けると納得したというように言った。
「女友達って意味ならあってるがそれならフレンドだ。そしてあいつらは俺のことも眼中にないぞ。今眼中にあるのは食べ物だけだ」
「違いない。話は変わるがポッターとウィーズリーが魔法をかけた車に乗って暴れ柳に突っ込んだらしい。しかも車で飛んでいるのをマグルに見られたとも聞いた」
「そうか。よかったな」
「よくないだろう。マグル製品に魔法をかけるのは犯罪じゃないがそれを使用するのは犯罪だ。貴重な暴れ柳はダメージを受けるし、飛んでいるのをマグルにみられるなんてこのままだとあいつら退学だぞ」
「いいじゃないか。ドラコとしては都合がいいだろ?」
「なんであいつらが退学すると僕の都合がよくなるんだ? あいつらのことは気に入らないがそれだけだ。ホグワーツの生徒がこんなことで退学なんて冗談じゃない」
「お優しいことで。まあ、心配しなくても明日から普通に授業に出てくるさ」
「なんでわかるんだ?」
「タスさんの予言だよ。それに生き残った男の子がその程度で退学になるわけがないしな」
「それはそれで気にくわんな」
仏頂面のドラコの横で食事を続けた。
今年は去年と違い、賢者の石を学校で守っているなんてことはないため注意事項は少なく終わるとスリザリンの上級生に引率されて寮へと向かった。
こうして今年の計画なんてものはまともに練ることができないままホグワーツ魔法魔術学校での二年目の生活、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」が始まった。
主人公たちはまともな計画をしないまま秘密の部屋編スタートです。
一年目がなんとなくで上手くことが運んだので全員調子にのってます。余裕ぶっこいています。特にアランくん、秘密の部屋でのフラグは割と繊細だと思いますが大丈夫なんですかね。一年目で物語が一回壊れているのを忘れてしまっているのでしょうか。
次回は怪物たちが二年目の授業を受けます。スプラウト先生とロックハート先生の授業メインです。