ハリーポッターと物語の怪物たち   作:私の為の物語

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またしても時間が空いてしまい申し訳ありません。
それにしても夏休みですね。投稿頻度が上がる季節なのでしょうが、私はまったく上げられる気がしないです……。


第7話 Juring Club

 メアリー・スーがその怪物性をいかんなく発揮した引きこもり事件以降、俺の視点から見れば穏やかな時間だった。

 校内での事件を挙げるのであれば寮対抗のクィディッチでうちがグリフィンドールに負けたくらいである。

 ハリーはブラッジャーが彼だけを襲うようなハプニングが起こったのにも関わらず、マルフォイとのシーカー対決に勝利しスニッチを捕まえた。さすが主人公様である。その代償に骨折し、さらにロックハートが治療したせいで骨が消滅してしまったがそれもまた主人公としての責務だろう。

 なにはともあれスリザリンは負けた。しかも最新型のニンバス二〇〇一を全員分揃えて全力で当たったのにも関わらず。つまり、選手自身の実力が足りないということを逆に証明してしまった形になる。

 その日からドラコはよりいっそうクィディッチの練習に打ち込んでいるようだ。原作では描写されていなかったのでお金に物を言わせているだけの選手だと勘違いしていたが、案外努力家だったらしい。

「なに考え込んでるのー?」

 玄関ホール前でデアに話しかけられる。

「最近平和でいいなと。うちのチームがクィディッチに負けたくらいでさ」

「……コリンのこと忘れてる?」

「あ、そうだった。石化したんだったな」

「そんな重要なこと忘れないでよ」

 グリフィンドールのコリンがバジリスクの視線の犠牲になったが、原作と同じくカメラごしであったおかげで死ななかったので物語上の問題はない。

「悪い。原作通りだったから忘れてた」

「忘れないでしょ普通。一人犠牲になってるんだよ?」

「筋書き通りなんだから問題ないだろ」

「おおありだよ!」

 珍しく少し怒っている様子のデアだが、俺にはその理由がわからない。筋書き通りに進んでいるのだから問題はないはずだ。

「よくわからんが、それ以外は平和だったよな」

「そうだけどさー」

 デアと二人で話すのは珍しい。彼女は他の寮の生徒の和にも積極的に入っていくし、基本的に複数人といるので俺だけと話すことはあまりない。

 こういうのもたまにはいいかと思っていると後ろから声をかけられる。

「どこが平和だったんだ」

「平和そのものだったろ? そりゃクィディッチで負けた誰かさんは平和じゃなかったんだろうけどさ」

 声の主の方へ振り向くとその先にいたのはやはりドラコだった。

「代表選手でないアランにとやかく言われたくはない。とはいえ僕もチームも穏やかでは無いのは確かだがな」

「意外だな。もっと噛み付いてくると思ってた」

「負けたのは事実なのだから言い訳できん。なに来年は勝つさ」

「なにを根拠に」

「僕もチームもあれから練習量を増やした。それに来年はお前たち全員がチームに参加するんだろう?」

「うん! 来年はあたしたちもがんばるからね!」

「ならば負けるはずがない。特にタスさんがいれば」

「そうだといいがな」

 あいつら舐めプする気満々だからもしかしなくても普通に負けそうなんだよな。

「そうだ。僕がしたかったのはクィディッチの話じゃない。うちのゴイルの薬が爆発した件だ」

「あーそんなこともあったな」

 魔法薬学の授業中に何者かが「フィリバスターの長々花火」をゴイルの薬に入れ、爆発した中身が雨の如く降り注いだのだ。

「なぜ犯人が見つからない。どうせグリフィンドールの奴らに決まってるんだ」

 犯人はハリーたちなので正解である。スネイプ先生の気をそらすために事件を起こした。

 なぜそんなことをしたのかはおいおい話すとして、色々あったがすべて原作のまま。完全に想定通りなので俺からすれば平和だったというわけである。

「アラン、あれはなんだ?」

 そしてまた一つ原作イベントが始まる。それは怪物たち、特にタスさんが食いつくであろうものだ。

 掲示板に張られた告知の羊皮紙にドラコが気がついたのが皮切りだった。彼が気がついた時点で人だかりができており目立っていたので仕方ない。

 人だかりの中にはメアリー、ジェーン、タスさん、それにクラッブ、ゴイル、パンジーの姿もあった。彼らに気づいたデアが真っ先に合流しようと向かっていったので俺とドラコもそれに続く。

 それに気がついたパンジーがドラコに手を振る。

「あっドラコだわ。こっちよ~」

「みんな集まってどうしたの?」

「『決闘クラブ』をやるんですって。私としてははしたないことはしたくないけどどうしましょう」

「『決闘クラブ』か。僕の実力を見せるにはおあつらえ向きだな」

「うーん。ドラコが参加するなら私も参加しようかしら。後継者に襲われる心配はないけれど自衛できたほうがいいのよね」

「クラッブとゴイルも参加するだろう?」

「ああ。これなら暴れても問題ないからな」

「魔法はわからんが腕力には自信がある」

「そ、そうか。まあ、魔法が使いたかったら僕が教えてやろう」

「さすがドラコ! 決闘に使える魔法もたくさん知っているのね」

「当然だ。なにせマルフォイ家の長男だからね」

 ドラコたちが言うように決闘クラブが始まる。マーカス先輩が犠牲になったいざこざのときにタスさんが作ろうとしていたものであり、飛行訓練の後にドラコがハリーに吹っかけた魔法使いの決闘をするためのクラブでもある。

 そんな自分の力を発揮して目立てるイベントに怪物たちが、特にタスさんが参加しないわけがない。ドラコの言葉を聞いた彼女たちは全員目をキラキラさせている。

「第一回目が今夜八時からだって! あたしたちも参加しようよ!」

「当然ですわ! 参加しないなんてありえませんの! 今夜も魅せて目立って楽しませますわよ!」

「そうするべきでしょう。今年に入ってからはそういうことはしてませんので自身の実力を知ることのできるいい機会です」

 全員が参加する気であるというのは間違いであったようだ。ただ一人、メアリーだけは微妙そうな顔をして黙っている。

「まだハロウィーンのことを引きずっているのか?」

「いえ、そんなことは……あるわね」

「気にすんなって」

「でも、また迷惑を……」

「その判断は俺らがする。だから参加しておけ。あーだこーだ言っても逆に迷惑だ」

「わかったわ。私も参加するわよ」

 どうせメアリーが参加しなくても他の奴らが参加するのであれば何も変わらない。「メアリーも参加しましょう」とジェーンがうるさくなりそうだしな。

「とはいえ全員ルールは守ってくれよ」

 言って聞くような奴らではないのはわかりきっているが言わないよりはマシだろう。

「なんだお前らも参加するのか」

「俺は乗り気じゃないがな。ドラコたちは乗り気なんだろ? こいつらの相手は頼んだぞ」

 実際は講師の先生が決闘の練習相手を決めるので生徒側で自由に組めるわけではないが冗談で言ってみるが、ドラコは俺の問いにしかめっ面で答えた。

「遠慮しておくよ」

 彼と同様にクラッブ、ゴイル、パンジーも怪物たちの相手はしたくはないようである。

「俺たちより暴れそうな奴の相手は断わりたい」

「腕力が魔法みたいな奴はちょっとな」

「私は人間だから化け物の相手はできないわ」

 あんなに乗り気だった彼ら全員から相手をするのを断られる彼女たち。パンジーに至っては化け物扱いである。しかし、残念ながらそれは事実なので怪物たちも否定はしない。

 ということで決闘クラブに参加することになった俺らは玄関ホールを後にした。

 

*

 

 大広間は決闘クラブ用に机や椅子が取り払われており、いつもより広く感じる。それらの変わりに金色の舞台が用意されており、そこで決闘をするようだ。

 校内で事件が起きていることもあり生徒のほとんどが参加しているように思える。参加すると言っていたドラコたちはもちろん、グリフィンドールのハリーたちや上級生であるリリンさんやロンのお兄さんたちの姿も確認できた。

 マグル全員が武器の扱い方を知っているわけではないのと同様に戦闘に用いることができる魔法をうまく使える生徒の方が珍しいからである。

 「闇の魔術に対する防衛術」の授業はあるが、とある事情で一年に一回先生が変わるため一貫した授業が難しく、俺らの学年に至っては去年が座学中心のクィレル、今年がペテン師のロックハートとまともに授業を受けられていない。今年の一年はもっと悲惨である。

 なので少しでも自分の身を守れる術を学ぼうと集まるのは必然と言える。とはいえ結局、このクラブの講師もロックハートなので何の意味もないのだが。

「そういえばアラン。決闘クラブって○△クラブって聞こえないかしら?」

「なんて?」

 自分の杖を手に握り締めた彼らと決闘クラブが始まるのを待っている最中、メアリーが俺に話しかけてきたが彼女の発したその単語が聞き取れない。

「決闘クラブって○△クラブって聞こえるって思うのだけれど?」

「そのなんとかクラブっていうのがわからないんだが」

「あー確かに! 決闘と○△って語感が似てるよね」

 デアにはメアリーが言いたいことがわかるらしい。なんとなく語感が近いのは俺にも理解できるが言葉としては聞き取れない。

「その○△ってなんだ?」

「○△は○△だよ?」

「いや、まったくわからん」

「アランならわかると思ったのだけれど」

「私たちはわかりますけどアランさんはわからないですよ」

 ジェーンにもわかっているっぽいがどういうことだ。

「俺だけに伝わらない?」

「日本語なんです。蹂躙は日本語でジュウリンと言うんです。なので蹂躙クラブと日本語で言うとジュウリンクラブ、決闘クラブ、日本語っぽく言うとデュエリングクラブ、語感が似てるという話です」

「デュエリングとジュウリンが似てるから英語で決闘クラブと聞くと蹂躙クラブに聞こえるってことか。俺にわかるわけないだろ」

「アランには日本語について知れるのだから話せるものだと思っていたわ」

「情報が知れるからといって話せるかどうかは別だろ。外国語の教科書を読みながらなら完璧に会話できるかって話だよ」

「無理ね」

「そういうことだ。それはそれとしてお前らにとっては蹂躙クラブであってるのかもしれないな。だからこそ取り返しのつかないことをすることだけは勘弁してくれ」

 彼女たちの答えを聞く前に舞台上へとロックハートとスネイプが現れて話を始めた。この二人がこの決闘クラブの講師である。

「はい、みなさんお静かに。私の周りに集まってくださいね」

 ロックハートは舞台に立つとミュージカル俳優のような大袈裟な身振り手振りをして説明をし始める。

 彼の提案で『決闘クラブ』が開かれることになったらしい。自分の経験を元に俺たちを鍛えてくれるとのことだが、彼自身はまったく経験していないので何の参考にもならない。

 著書に書いてあることはフィクションだが一応事実を元にしているためそっちを読んだ方が本人に教わるよりわずかにマシな可能性すらある。

「私の助手をお願いしたスネイプ先生です。決闘についてごくわずか、ご存知らしい。それで今回助手をお願い申し上げたわけですね」

 決闘についてならロックハートに比べればどの先生も詳しいだろう。しかもスネイプ先生は数年後に闇の魔術に対する防衛術の授業を受け持つくらいには詳しい。どちらを参考にした方がいいかは明白である。

「さてさて、スネイプ先生を慕うみなさんに朗報です。私と彼が見本として模擬戦をしても『魔法薬』の先生が消えてしまうことはありません。心配ご無用ですよ」

 わざとかそれとも天然か。おそらく後者であろうペテン師に馬鹿にされ神経を逆撫でされたスネイプ先生は鬼の形相で彼を睨んでいる。そんな状況でも普段の笑顔を絶やさないロックハートはある意味ではすごいのかもしれない。

 二人は向き合うとそれぞれ一礼をする。決闘ではお辞儀をするのがマナーであるとヴォルデモートが原作で力説していたので相当大事らしい。

 ロックハートは大きな動きで仰々しく、スネイプ先生は嫌そうに小さくだった。お辞儀に限って言えばヴォルデモートはロックハートのほうを賞賛しそうである。

 お辞儀をした二人は杖を構えるとそれを相手へと向ける。

「まずは作法に従って杖を構えます。三つ数えたら魔法を唱えます。もちろんですが模擬戦なので殺し合いじゃありません」

 互いに殺意はないと説明する彼だが、スネイプ先生の方もそうであるかは疑問である。しかし、さすがに先生も殺意があっても本当に殺すつもりはないだろうから間違いではないのだろう。

「一、二、三」

 数を数えながら杖を振り上げたのは二人同時だったが先に呪文を唱えたのはスネイプ先生だった。

「エクスペリアームス!」

 原作を知っている人からすればおなじみであり、原作ではここで初出である武装解除呪文。赤い閃光がロックハートへ放たれたと思うと、彼は舞台から吹き飛ばされ、その後ろの壁へ叩きつけられる。そのまま床の上へと滑り落ちると動かなくなった。

 マルフォイをはじめ、スリザリンの生徒たちから歓声が上がる。他の寮の生徒はそんな露骨なことはしないが大多数の生徒は同じ気持ちでありそうである。

 心配そうなハーマイオニーに対して、ハリーとロンはどうでもよさげどころか若干口元が笑っているので間違いない。

「それではみなさんわかりましたか!」

 床の上で大の字になっていたロックハートだったがさすがプロのペテン師。ふらふらとだが立ち上がって何事もなかったかのように言った。髪はぼさばさになり被っていたはずの帽子はどこかへいってしまっているため虚勢にしか見えないのが悲しい。

「今スネイプ先生が使ったのは『武装解除の術』です。なので私は杖を取り上げられてしまったわけですね。たしかに、生徒たちに今の術を見せたのはすばらしいお考えです。しかし、遠慮なく一言で申し上げれば、あまりにも見え透いていましたね。止めようと思えばいとも簡単に止められたでしょう。ですが、生徒に見せた方が有意義だと思いましてね。また、私としては……」

 ほとんど嘘である。忘却術以外がまともに使えない彼に武装解除呪文を止める手立てはほぼない。それにそんな彼がスネイプ先生のやることを想定できるはずがない。

 だが、武装解除呪文は手軽で有効な呪文であり、その利便性を生徒たちにアピールするのには呪文をくらったほうがよかったのは確かである。

 しかし、そんなことは関係なく無駄なことをべらべらとしゃべる彼にスネイプ先生の顔がまた歪む。さすがに今回は彼も気がついたのか一度咳払いをすると長い演説を終わらせた。

「ゴホン、模範演技はこれで十分! みなさんにも二人組に別れてやってもらいたいと思います!」

 先生たちが壇上から降りると生徒を二人にわけていく。

 原作通りならハリーはロンと組もうと思っていたがスネイプ先生にドラコと組まされ、ロンは同じグリフィンドールのシェーマス・フィネガン、ハーマイオニーはうちの寮のミリセントと組まされる。

 ハリー以外の二人は誰と組んでもかまわないがハリーに関してはドラコと組んでもらわないとストーリーの筋書きが変わってしまう。

 しかし、目立ちたがり屋のタスさんはハリーと組んでドラコの役目を奪いかねない。組み合わせは生徒の意思では決められないがタスさんなら先生たちの行動を調整して自分の都合のいいように誘導できる。

「タスさんは誰と組むつもりだ?」

「さぁ? 決めていませんわ。でも、そうですね。折角なのでハリーと組んでみるのは面白いかもしれませんわ」

「そう考えると思った。話の筋書きが変わるようなことはやめてくれ」

「ワタクシがそう言われてやめると思いまして?」

「思わない。だが、俺でもすぐに思いつくような程度のことをしてもおもしろいか? そんな簡単に想定できることをがエンターテイメントか?」

「へぇ、ワタクシの扱い方がわかってきたみたいですわね。おもしろいですわ」

「今年何度も言っているが二年目だからな」

「あなたの言うように簡単に想定できてしまうことをしてもつまらないですわね。わかりましたわ。ハリーはドラコと組んでもらいますの」

「お前らはお前ら同士で組んでくれ。原作では存在しないお前ら同士の組み合わせの方が想定外のことが起きるだろ?」

「それはそれで安直じゃありません?」

「展開が奇抜だからといっておもしろいとは限らないだろう? 奇抜なだけで終わったら意味がない。安直な展開の中に新しいことを入れた方がおもしろい場合もある」

「つまらない場合もありますわ」

「だが、おもしろい可能性があるのに試さないお前じゃない」

「そうですわね。やってみて駄目ならやり直せばいいだけの話。ですがあなたはどうしますの? ワタクシたち四人を二つの組に分けたらあなたがあまりますわよ」

「リリンさんと組めないか? あの人も原作には存在しないキャラクターだから丁度いいだろ」

「承知いたしましたわ」

 タスさんを説得しているとスネイプ先生がロンとフィネガンを、ハーマイオニーとミリセントを、ハリーとドラコを組ませてくれたので原作と同じ流れだ。

 後はオリジナルキャラクター同士で組めるようにタスさんが調整してくれればいい。

「じゃあ調整を頼んだ」

「この決闘クラブが始まる前に済んでますわ」

「なんで始まる前に済んでるだよ。オリキャラ同士で組むのを話したのは始まった後だろうが」

「あの時点でワタクシはその話を聞いた後だった。それだけの話ですわ。ワタクシにとって時間の概念はあってないようなもの。そんなことよりもこうして生きているワタクシたちをキャラクター扱いするあなたの感性のほうが疑問ですの」

「すまん。キャラクター扱いされていい気はしないな」

「別にそれはいいんですの。単に興味深いと思っただけですわ」

「俺には原作の物語と同様にこの世界も物語上の事柄にしか思えないってだけだ。情報が頭に入ってくるようになってから妙に現実感が薄くてな」

「そこのお二人さん。楽しいおしゃべりも結構ですが今から練習とはいえ決闘をするのです。さっき私がスネイプ先生と模範演技をしたときのように緊張感を持ってくださいね」

 ロックハートに注意される。彼には珍しくまともなことを言っているが、彼自身が緊張感を持って決闘をしたというのには同意しかねる。

「仲むつまじい二人を引き裂く真似をするのは心苦しいがこのままでは練習中にもおしゃべりしかねません。ミス・ティー、いえ、タスさんでしたね。彼女はそこのミス・マキナと組みなさい」

「よろしくお願いしますわ。あなたなら相手にとって不足はありませんの」

「えへへ。ありがと。楽しくできるといいね!」

「アラン君はそこの……」

「ミス・ドゥーはミス・スーと組むように」

「メアリー、私と組んでくれてありがとうございます」

「……なんの話かしら。決めたのはスネイプ先生でしょう?」

「そういうことにしといてあげます」

 ロックハートが俺と組める同学年の生徒を探すが残っていた最後の二年生であるメアリーとジェーンがスネイプ先生によって組み分けられてしまった。二人の口ぶりからしてメアリーがスネイプ先生の行動を捻じ曲げたようであるが。

「もう同学年の生徒は残っていないみたいですね。……下級生も残っていないので上級生と組んでもらうことになってしまうのでよろしいか?」

「大丈夫です」

 よろしいもなにも上級生であるリリンさんと組めるのは願ったりかなったりである。

「ではリリン君と組んでください。リリン君! 君はアラン君と組んでもらってもいいかな?」

「ええ、アラン君がそれでいいなら」

「リリンさんが相手なら安心できます。失敗した呪文を当てられる危険性がありませんから」

「ありがとう。僕の実力を買ってもらえてうれしいよ。よろしく」

「よろしくお願いします」

「これで全員を組み分けられたようですね」

 ロックハートは壇上に戻ると決闘を始めるための号令をかけた。

「相手と向きあって! そして礼!」

 俺と向き合っているリリンさんが礼儀正しく深々とお辞儀をした。それに習って俺も同様にお辞儀をする。

「杖を構えて。私が三つ数えますので、武器を取り上げる術をかけてください。武器を取り上げるだけですからね。みなさんが怪我をするのは嫌ですからね。それでは……一、二、三!」

「エクスペリアームス!」

「エクスペリアームス」

 彼が三と言うと俺とリリンさんがほぼ同時に武装解除呪文を唱える。俺の方が若干唱えるのが早かったが杖から赤い閃光が放たれたのはリリンさんのものだけだった。俺の呪文は失敗してしまったようだ。

 俺の持っていた杖が吹き飛び彼の手に収まる。

「さすがリリンさん。綺麗にやられちゃいました」

「上級生だから当然だよ。アラン君の方が反応が早かったし成功していたら私の負けだった」

「でも失敗したので俺の負けです」

「二年生なら失敗しても仕方ない。私も君くらいのときは使えなかった。練習したらできるようになるよ」

「去年タスさんに教えてもらいながら練習したんですけどそのときもうまくいかなくて代わりに衝撃呪文を教わったくらいだったんです」

「そうなのかい? まあ、比較的簡単な呪文とはいえすぐにできるわけじゃないさ。ゆっくり繰り返し練習すれば必ずできる」

「そうならいいんですけど」

「……そうだ。よかったら今度私が教えるよ」

 武装解除呪文は原作でハリーが多様するくらいには便利な呪文である。俺が使える戦闘用の呪文は衝撃呪文しかないのでレパートリーは増やしておくに越したことはない。

「ありがとうございます。ぜひお願いします」

「時間のある時にレイブンクローに来てね。うちの寮は合言葉がなくても入れるから」

「謎解きしないと入れないじゃないですか」

「考えれば誰でもできるレベルのものだよ」

「簡単に言ってくれますね」

「本当に簡単なんだ。やってみればわかるよ」

「そうだといいですけど」

「あとは……そうだ、話が変わるけどメアリーのフォローありがとう」

「いえいえ、友人ですから」

 一応の枕詞がつくがそれをリリンさんに言う必要は無い。

「メアリーもそうだけどデアもジェーンも精神的に危なっかしいところがあるからこれからも気にかけてくれると助かるよ。それにタスさん、彼女も」

「メアリーはともかく他は大丈夫だと思いますけど。そもそもメアリーですらなんであんななのかわかりませんし」

 本来なんでもありなチート使いまくりの怪物共が困ることなどないはずなのだ。むしろそのせいで俺が困ることになっている。

「全員同じくらい危ういと思うよ。確かにみんな同年代の子達より大人びてる見えるかもしれない。でも十歳ちょっとの女の子だろう?」

「そうですね」

 怪物たちを心配してくれているリリンさんには悪いが彼女たちの精神年齢は十歳ちょっとなどという代物ではない。本来の年齢は前世を合わせるとその二倍以上なのだからそれなりに大人びているのは当然である。その割には精神年齢が幼い気もするがそれはそれだ。

 唯一前世が存在しないタスさんにいたっては年齢という概念があるかすら怪しい。

 俺の素っ気ない返答にリリンさんは眉をひそめる。

「うーん、アラン君って彼女たちのことを同年代の女の子だと思ってない節があるよね?」

「そんなことないですよ。みんなとは仲の良い女友達ですから」

 前半は嘘。実際は同年代でもないしカテゴリーが怪物なので同年代の女の子などとは微塵も思っていない。友人とは思っているため後半は嘘ではないので許してほしい。

「そうは言うけどアラン君はそもそも彼女たちを異性として認識していないような気がするよ」

「仲がいいと言ってもあくまで友達ですからね。俺はまだ恋愛とかそういうのわからないので」

 図星をつかれた俺が適当に誤魔化すと納得してくれたようでリリンさんが頷く。

「ごめん、そうだよね。君も十歳ちょっとの男の子なんだよね。普段言動が落ち着いてるから勘違いしてしまうけれど」

「ええ、買い被ってくれていたのは嬉しいですけれど俺は年相応の人間ですよ」

「その言い回しは年相応じゃないと思うよ」

「褒め言葉として受け取っておきます。まあ、みんなのことは年相応の友人としてできる範囲でフォローしますから」

「ありがとう。よろしくお願いするよ。アラン君も何かあったら私を頼ってほしい」

「はい。よろしくお願いし……」

 突然俺の言葉をさえぎるように爆音が鳴り響いた。音がでかすぎてどこから聞こえたかわからない。耳がキンキンする。

 しかし、その発生源がどこかは簡単に想像がつく。原作にはなかったことなのでオリジナルキャラクターのうちの誰かがやったことである。そのうちリリンさんがやっていないのはわかっている。ジェーンはルールを守る優等生なので武装解除以外の呪文は使わない。メアリーがこんな派手なことをするわけはなく、デアがとんでもないのは身体能力のみ。となると消去法でタスさんだとわかる。

「武器を取り上げるだけだと言いましたよね!」

 慌てたロックハートが耳を押さえながら大声で叫ぶ。

 タスさんは彼の言葉を無視して爆音の原因であろう爆風を発生させ続けた。それを意にかいさないデアが「エクスペリアームス」と鞘に入れたままの刀の先をタスさんに向けながら唱え続けている。うん、これは絶対に成功しないやつだ。

 武装解除呪文を唱えずにほかのことをしている生徒はタスさん以外にもいる。というかロックハートの言うことを守って武装解除呪文を唱えた生徒の方が少ない。失敗して呪文が暴発する者、決闘の方に気を取られて自分の使える呪文を唱えて勝ちにいく者、それに対抗する者、それらの呪文や呪いが外れて飛んできたものを対処する者など、これらの者の方が圧倒的に多い。

 ハリーとドラコも多数派でハリーは「くすぐりの呪文」を、ドラコは「踊りの呪文」をそれぞれに使ったようだ。その証拠にドラコは笑いをこらえて震えており、ハリーが不思議な踊りをしている。

「やめなさい! ストップ!」

 ロックハートが一旦止めようと叫ぶがほとんどの生徒が聞かずに続行する。誰も彼の話を聞かないことをわかっていたのかスネイプ先生が魔法を終わらせることのできる呪文を唱えた。

「フィニート・インカンターテム!」

 呪文によって魔法の効果が終わり、ドラコの笑いが止まり、ハリーはステップを止め、タスさんも爆発を止めた。

 緑の煙が辺りに充満し、ネビルとハッフルパフのフレッチリーは息を切らせながら床に横たわり、ロンは顔が青白くなってしまっているシェーマスに謝っており、ミリセントはハーマイオニーにヘッドロックをかましている。

 多数の者は杖を持っておらずそれらは床に転がっている惨状だ。

 ハリーがミリセントからなんとかハーマイオニーを引き離して落ち着かせると先生たちも鼻血を出した生徒などの負傷している者の対処を行った。

 大多数の生徒がボロボロ。ルール無用で無茶苦茶やっていた生徒は言うに及ばず先生の言ったことを守っていた生徒の大半も他から飛んできた呪文を食らってうめいている。

「これは武装解除呪文より先に非友好的な術から身を守る術をお教えしないといけないいうですね」

 ロックハートが大広間の真ん中で面を食らいながら当たり前のことを言う。ホグワーツの生徒たちが言うこと聞いて平和に終わると思っていたようだがそんなわけがない。先に防衛呪文を教えた方がいいのは当然である。

 とはいえ一番シンプルな防衛呪文である盾の呪文ですら比較的簡単というだけで魔法省の役人の中にも満足に唱えられない者がいるわけで。誰でも楽に使えるようになるというほど簡単ではないことを考えると先に攻撃呪文を覚えるのもありかもしれなかった。この惨状では正解だったとは言えないが。

 彼がまた模範演技をしようとスネイプ先生を一瞥するが、無駄なことに付き合うわけもなく無視して顔をそらした。

「自ら進んで模範演技をしてくれる人たちはいますか? ……ロングボトムとフレッチリー、君たちはどうかな?」

 彼の提案は一瞬でスネイプ先生に却下された。

「それはやめておいた方が懸命でしょう。ロングボトムはどんな容易な呪文でも大惨事を起こすことができる才能をお持ちだ。フレッチリーだった物を医務室に運び込みたいのであれば推奨しますが如何なされますかな」

「それならばワタクシたちがやりますわ!」

 またタスさんが余計なことを言い始める。しかし、スネイプ先生は原作通りの組み合わせを提案をした。

「マルフォイとポッターでよいのでは?」

「彼らよりワタクシたちの方が適任ですの! デアはワタクシの呪文を受けても無傷でしたわ。さきほどの爆音の呪文ですわよ。ということはつまり、デアはそれほどの防御呪文が使えるって事じゃありません?」

 デアは防衛呪文どころか呪文そのものが使えない。ただ単にドラゴンの特性で魔法が効きづらく、その中でも耐性が高いというだけである。

 しかし、ロックハートはそんなことは知らないため彼女たちとハリーたちのどちらにやらせようか悩み始めた。

「どうしましょうか」

「ワタクシたちだけで終わりってことではないですわよね? その後にドラコとハリーがやってなにか問題でも?」

「そうですね! 君たちに任せてみましょう!」

「それと盾の呪文ならジェーンが得意ですわ。フリペンド!」

「プロテゴ」

 タスさんがメアリーに向けて衝撃呪文を放ち、それをジェーンが盾の呪文を使って弾く。わざわざメアリーに向けて放ったのは彼女に危機が迫ればジェーンが守ると思ったからだろう。

「あなたならそうすると思いました。メアリーを巻き込まないでください」

「確かに盾の呪文がお上手なようですな。では最初にマキナとタスさん。次がドゥとスー、最後にポッターとマルフォイだ」

 ジェーンの盾の呪文を見たスネイプ先生が順番を決めた。

「そうしましょう!」

 ロックハートがデアとタスさんを大広間の中心へと誘導すると他の生徒たちは下がって空間をあけた。

「マキナ。このようにするといいでしょう」

 杖を振り上げた彼は適当に杖をくねくねさせて杖を落とした。

「おっとと、私の杖がダンスを踊ってしまいましたね」

 杖を拾い上げた彼をスネイプ先生が嘲笑する。

「わかりました! なんか踊ってみればいいんですね!」

「いえ、そういうわけでは……」

「えー? じゃあわかんないやー」

「まあ、いいでしょう。それなら君の防衛呪文を見せてください」

「無理だよー。あたしはそんなの……」

「無理じゃありませんわ。呪文でもなんでもいいので適当に防いでくださいまし。いいから早くやりますわよ!」

「わかった!」

「では三つ数えたら始めます。杖を取り上げるだけですよ。それ以外のことはしないように。一、二、三……それ!」

「エクスペリアームス!」

 タスさんは意外にも普通に武装解除呪文を唱える。デアへと放たれた赤い閃光は彼女の刀に切り捨てられて掻き消えた。

「ほいっと! これでいいのかな?」

 防御呪文を使っていないのにいいわけがない。

 武装呪文が物理的に消滅させられるという意味不明な状況にロックハートはあっけに取られているが、スネイプ先生は慣れた様子で首を振っている。

「まだまだですわ! フリペンドマキシマ! フリペンドデュオ! ヴェーディミリアスマキシマ! ヴェーディミリアスデュオ! インセンディオマキシマ! インセンディオデュオ! ペトリフィカス・トタルス! ディフェンド! グレイシアス! インペディメンタ!」

 水色の衝撃、緑の火花、炎が最大威力と連弾放たれ、それに続いて動きを止める呪文、切断呪文、氷結呪文、妨害呪文が飛ぶ。

 ここまでなら去年と同じ。しかし、タスさんはさらも呪文を続ける。

「コンフリンゴ! コンファンド! シレンシオ! インカーセラス! オブスキューロ! ステューピファイ!」

 順番に爆発呪文、錯乱呪文、沈黙呪文、縄で対象を縛る呪文、目隠し呪文、失神呪文。去年より攻撃呪文のレパートリーが増えている。

 しかし、それでもデアには関係ない。そのすべてを武装解除呪文と同じように刀一本で防いだ。

「去年より多いから大変だったよ!」

「まだまだ余裕そうですわね。すべて刀で捌けるってことはそういうことですの」

 いつものようにタスさんは上着を脱いで羽で飛翔する。

「もう一度ですわ! 今度は妖精の魔法も追加ですの!」

 一年のときに禁じられた森でやったように指を鳴らしながら魔法使いの呪文と妖精の呪文を並行して発動させつつ、姿くらましを連続ですることで全方位から呪文を放つ。

 去年より密度の上がった呪文の嵐に包まれてデアの姿が見えなくなった。

「ここまでしろとはいってませんよ! 杖を取り上げるだけです!」

「デアならこれくらい平気ですわ! むしろこれでも足りないくらいですの!」

 ロックハートが止めるが彼女はそのままそれを続けた。

 彼女は技量は高いが魔力量が高いわけではないのでこの量の魔法を使えばすぐに疲れる。一分ほど続けるとそれをやめた。

「やった! 全部防げた!」

 魔法の嵐がやむとその中から無傷どころか息すら切れていないデアが現れ、それを見たロックハートが呆然とする。

 余裕の表情のデアに対してタスさんは疲れてしまい息が切れてしまっていた。

「はぁ、はぁ、はぁ。……ほとんど全力をぶつけてこれは少しショックですわね」

「でもすごかったよ? 楽しかった!」

「それなら練習したかいがありましたわ。ただ、一つも体に当てられなかったのは悔しいですけれど」

「タスさんが使える魔法が増えたようにあたしも身体能力が上がってるからね。じゃあ今度はあたしの番!」

 へらへらと笑っていたデアの姿がその場から消え風が巻き起こる。一瞬で距離を詰めるとタスさんの前へ移動し、そのまま彼女が持っている杖に手を伸ばした。

 人間に反応できる速度ではないがタスさんは未来のことを知ることができるし、無限の反応速度も持ち合わせる。バシっと音がなるとその場から彼女の姿が消えて再度同じ音がなり、デアの後ろ側に距離をとって移動した。

 だが、反応速度が人外なのはデアも同じ。音がした瞬間に振り向き、またもや一瞬で距離を詰めた。

「これで終わり!」

 デアが叫びながら杖を奪おうとした瞬間、タスさんの杖先から光があふれて辺りを包む。

「わっ! 目が!」

 ドラゴンの弱点は目。そこだけには耐性というものが存在しない。奪おうと杖に注目していた彼女は強い光を直視してしまった。彼女は刀を取り落とし、両手で目を覆う。

「これで終わりですわ!」

 タスさんはデアと同じ台詞を吐きながら彼女の取り落とした刀を拾った。デアにとって刀は杖、よって杖を取り上げられたデアの負け。

「負けちゃったし目が痛いー。なんで無言呪文が使えるのー? 使えないって言ってたのに!」

「無言呪文じゃありませんわ」

「なら妖精の魔法? でも杖から光が出てたじゃん!」

「ええ、普通の魔法ですの」

「だったらなんであたしに呪文が聞こえなかったの?」

「企業秘密ですわ」

「えー、教えてよー」

 二人が話しているとあっけに取られていたロックハートが我に返った。

「タスさんの勝利ですね! いやはや、二人ともすばらしい攻防でした。みなさんも襲われたときはこのように身を守り、できれば反撃してください」

 誰も言葉にはしないが生徒たちは「それは無理」という顔をしている。あんなものをまともな原作キャラや俺のような一般人に真似しろという方が無茶な話である。

 スネイプ先生は首を横に振ると次へと進めた。

「諸君が同じことをできるなどとは微塵も期待してはおらん。次、ドゥとスー。特にドゥの使う盾の呪文は初歩的だが有効な防御呪文だ。唱えられるようになれば身を守るのに使えるだろう。ただし、習得できればの話ですがな」

 デアとジェーンが、タスさんとメアリーが場所を入れ替わる。今度はジェーンとメアリーが向き合った。

「メアリーの本気を見せてください」

「ええ、本気で行くわ」

「嘘ですね」

「どうかしらね。この通りよ」

 メアリーが服をすべて脱ぐ。肌には黒い影がうごめき、頭には角、背中には翼、そして尾てい骨から尻尾が生え、夢魔の姿になる。万全の状態で挑むということだろう。ジェーンと違い本来の姿を隠すのはやめたようである。

 二人がお辞儀をするとそれを確認したロックハートが先ほどと同様に三つ数えた。

「三つ数えたら始めてください。……一、二、三」

「インペリオ!」

「プロテゴ」

 若干早く呪文を唱えたのはメアリーだった。初手から許されざる呪文を唱えるというとんでもないことをした彼女は本当に本気で勝ちにいくつもりらしい。

 しかし、ジェーンもほぼ同時に盾の呪文を唱えていた。

 だが、そもそもメアリーの「服従の呪文」は緊張からか呪文の効果が発揮される前に杖が手からすっぽ抜けてしまったせいで失敗してしまう。彼女の杖はジェーンの後ろへ放物線を描いて飛んでいった。

 ジェーンがメアリーの杖を追って後ろを向くとその杖から赤色の閃光が放たれる。杖が自発的に武装解除呪文を使用したのだろう。

「プロテゴ」

 不意を打たれたはずのジェーンは難なく盾の呪文を再度唱えて武装解除呪文を防ぎ、逆に反射された閃光が杖を吹き飛ばし、そのまま彼女の手へと飛んでいく。

 メアリーもそれを見ているだけのはずがない。肉体労働が嫌いな彼女には珍しく、翼で飛行してジェーンへ突進し、彼女に自分の杖を奪われるのを阻止しようとする。

 それを見たジェーンの顔から余裕が消え、驚愕の色に変わった。

「っつ!? プロテゴ!」

 咄嗟に唱えた盾の呪文によって障壁が現れ、メアリーが突進した勢いのままそれにぶち当たる。

「痛ったい!」

「すみません! 大丈夫ですか!?」

「大丈夫よ。それとこっちこそごめんなさい」

「なんでメアリーが謝るんですか? えっ!?」

 ジェーンの杖が手から離れてメアリーの手に収まった。

 彼女は意味がわからず困惑している。彼女の視界内では今起きたことを把握することができなかったからだ。

「どういうことですか?」

「あなたが私に気を取られている間に私の杖が武装解除の呪文をもう一回撃ったの」

「それが見えていたから謝ったんですね」

「騙してごめんなさい。杖も返すわ」

「ありがとうございます。私が油断してしまったというだけなので気にしないでください」

「運がよくて助かったわ。最初の武装解除呪文が防がれたときはどうしようかと」

「本当に成功させるつもりであれば唱えるのはインペリオ・ディアボリカ、杖が自発的に動くのも知っていますしそこまでは想定通りでした。ですが、まさかデアのように突っ込んでくるとは。メアリーはそういうのは苦手なのだと思っていたので」

「間違ってないわ。現に体を動かすのは苦手だもの。だから逆に意表がつけるかなって思ったのよ」

「すっかりしてやられました」

「たまたまよ。それに姿もそのままだし。本気で来られたら勝てないわよ」

「メアリーも全力だったとは言えないのでおあいこですよ」

「メアリーさんの勝利です。ですが、陽動とはいえ許されざる呪文を唱えるのは好ましくありません。みなさんは正々堂々と決闘しましょう」

 忘却術で人の手柄を横取りしてきたペテン師が正々堂々を推奨するとはこれいかに。

 まったく参考にならない怪物たちの決闘が終わり最後の組の番となる。

「最後はマルフォイとポッターですな」

 スネイプ先生がそう言うとロックハートが咳払いをして二人を大広間の中心へ誘導する。

 ようやくドラコとハリーの決闘が始まった。怪物たちが大人かったうえに行動が道を外れることが多くなったドラコも珍しく道なりに進んでくれたのでここからは元の物語のままだった。

 決闘が始まるとドラコが蛇を呪文で出し、ロックハートが対処に失敗。蛇がハッフルパフのジャスティン・フィンチ・フレッチリーの前に飛んでいき、彼が襲われそうになったのでハリーが蛇語を話すことでそれを止めた。しかし、蛇に襲わせようとしたと勘違いした彼はハリーに怒って大広間を出て行った。

 珍しく怪物たちの被害者をゼロに抑えられた俺は上機嫌でその日の決闘クラブを終えることができたのだった。




怪物には怪物をぶつけんだよ!
ということで怪物同士でやりあう決闘クラブでした。被害者をなくそうとしたら原作キャラクターの出番が激減することに……。

今回の勝敗ですが、決闘クラブのルール上かつ、勝利条件が杖を取り上げる場合の話なのでルール無用でやりあった場合の話は別になります。当然ですがその場合も状況によって結果は変わるのではないでしょうか。

スネイプ先生にやられた後のロックハート先生のセリフが好きなので7割ほどそのままになってしまっております。このくらいであれば規約上問題ないのでしょうか。問題があれば対応する所存です。

原作キャラクターの出番が減ってしまったので次回は出番を増やしていきたいと思っております。
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