季節外れのクリスマスパーティー回で気分だけでも涼んでもらえれば幸いです。
決闘クラブでハリーが蛇語を使ったことで彼がスリザリンの継承者ではないかという疑惑が広まっていたが、ジャスティンとグリフィンドールのゴースト、ほとんど首なしニックが石化した状態で見つかったことで決定的になった。
怒ったジャスティンに腹をたてた彼がスリザリンの怪物をけしかけたというわけだ。
前回のクリービーも彼がうっとおしく思ったと理由づけができ、前々回のミセス・ノリスも言わずもがな、ホグワーツの生徒たちが共通でいじわるな管理人と認識しているフィルチの猫であり動機は十分である。
その日以降、その噂は瞬く間に広がった。さすがホグワーツ、噂の広がるスピードが尋常ではない。
クリスマス休暇に入ったが、残っている生徒はごくわずか。秘密の部屋が開かれたという噂とハリーがスリザリンの継承者だという噂が同時に広まっており、現に犠牲者が何人か出てしまっている現状では、ホグワーツに残りたいと思う方がおかいしい。帰れるのであれば家に帰るのは当然である。俺だってできるだけ今年のホグワーツにはいたくないのだ。
そのはずなのだが俺は一旦は帰省したものの早めに帰ってきた。タスさんから学校でクリスマスパーティーを催すと言われ、それに参加することにしたからである。
理由は簡単、そんなことを野放しにできないが、同時にそれを完全に止めさせることも俺のスペックでは不可能。ならば参加するしかない。
今日がそのクリスマスパーティーの当日。たった今、ホグワーツへと帰ってきたところだ。荷物を持って男子寮へ向かう前に談話室で声をかけられた。
「アランじゃん! おかえりー、あとメリークリスマス!」
「ただいま。メリークリスマス」
外では大雪が降っている冬まっただ中だというのにデアは元気が有り余っている。俺にも少し分けてほしい。
他にいるのはドラコ、クラッブ、ゴイル。タスさんたちの姿は見えない。主催者であるタスさんがいないのはおかしいし、メアリーたちもクリスマスパーティに参加すると言っていた。
タスさんが自分が主催したパーティーに来ないのはありえない。メアリーたちは一旦帰省すると言っていたがデアが帰ってきているので帰ってきているはずだ。
「タスさんたちはどうした?」
「みんな大広間でクリスマスパーティの準備中。あたしはタスさんに説明頼まれたからここにいるんだ」
「説明ってなんだ? ただクリスマスパーティをするだけだろ?」
「そうなんだけど段取りとかあるじゃん? まあ、あたしもよく知らないけど」
「知らないのに説明できるのか?」
「うーん。説明用にメモをもらってきたからその通りに説明するよ」
「そうか。まあ、とりあえず説明を頼む」
「りょーかい」
まず最初に記念撮影。子供のパーティーの場合は、時間が経過するほど子供がグズったりケンカしたり、トラブルが発生するリスクが高まるため、記念撮影は最初に済ませておく方がベター。
「そこまで子供じゃないだろ」
「メモを読んでるだけだからあたしに聞かれても」
「すまん。だけどどうやって記念撮影をするんだ? 誰もカメラなんて持ってないだろ」
俺の言葉にドラコが反応し、自慢気な顔で話しかけてくる。
「僕が父上に頼んで今日のために最新式のカメラを買ってもらったんだよ」
「ドラコも参加するのか?」
「なんだ、知らなかったのか」
「俺はパーティーをするとしか聞いてないからな。誰が参加するかは知らないんだ」
「そうだったか。クラッブ、ゴイルも参加する。まあ、カメラは用意してやったから感謝するがいい」
「ありがとう。タスさんも喜んだろうな」
「最新式だから少々値は張ったがうちは裕福だからね。大したことではない」
「それならありがたく使わせてもらうよ。それとメリークリスマス」
「突然どうした?」
「そういえば言ってなかったと思ってな」
「どうせクリスマスパーティで言うことになるんだ。わざわざ今言う必要はあるまい」
「そうなんだが、デアに言った手前言わないのもあれだろ?」
「そんなものか」
「えーっと、説明続けていーい?」
「ああ、すまない。話を中断させてしまった」
デアが説明を再開する。記念撮影の次は、乾杯。そして食事と歓談に続く。
お腹を満たしたところで何種類かゲームをする。数回ゲームをして疲れたところでデザートタイム。
そして最後にプレゼント交換をして終了。
「以上だよ!」
「割と普通の流れだな」
「クリスマスパーティーに普通じゃないこととかあるの?」
「タスさんならありえるかもしれないだろ」
「そうだね。あっ、プレゼント交換するんだけどちゃんとプレゼントは用意した?」
「ああ。タスさんから用意しておいてくれと言われてたからな」
「ならよかった」
「そういえばゲームってなにするんだ?」
「うーん、よくわからない」
「よくわからないってなんだよ」
「よくわからないはよくわからないだよ」
「……俺のほうがよくわからないんだが、まあいい。それで俺は何をすればいい?」
「なにもしなくていいかな。すぐ終わるから説明終わったら談話室でアランと待っててほしいって言われたから」
「わかった。とりあえず荷物置いてくるわ」
「オッケー。ゆっくりでいいよー」
なら、俺が動く必要はないな。荷物を男子寮に置いた後、お言葉に甘えてデアと談話室で待っているとタスさんの宣言通り、すぐに彼女たちが帰ってきた。
*
「メリークリスマス! さあクリスマスパーティをはじめますわよ! 最初は記念撮影からですの」
タスさんの一声でクリスマスパーティーが始まった。始まったのだが、大広間の一角、スリザリンテーブルの一部を占領したその場の空気はいいものとは言いづらい。
それもそのはず参加者はおれといつもの怪物たちに加え、ドラコたちスリザリン生、それとスリザリンの後継者と噂されているハリーにロンとハーマイオニーの原作三人組。
ハリーたちはドラコがスリザリンの後継者ではないかと疑っているし、俺たちも純血の魔法使いでないとはいえスリザリン生なので警戒されてしまう。ドラコたちはグリフィンドールのハリーがスリザリンの後継者だと騒がれている現状をよく思っていない。
こんな状態で楽しくクリスマスパーティなどできるはずがないのである。タスさんはいったい何を考えてこのメンバーでやろうと思ったのか。
案の定、一番最初のプログラムからして抗議の声が上がった。
「後継者かもしれないスリザリンの奴らと記念撮影だって? 冗談」
最初に声を上げたのはロン。だったらなんでスリザリン生主催のパーティーに参加したのか聞きたい。
「後継者様ならいつも君の隣にいるだろう? さすが生き残った男の子。スリザリンの後継者様までご兼任なさるなんて頭が下がるね」
売り言葉に買い言葉。ロンに言い返すのはいつものパターンでドラコ。彼の言葉にハリーの顔が曇る。ハーマイオニーがさらにそれに対して言い返した。
「ハリーは後継者じゃないわ。あなたもそう思っているわけではないでしょう? だったらそんな煽るような真似をするわけがないもの。もし、ハリーが本当に後継者なら明日には犠牲者が一人増えるわね」
「穢れた血の癖に賢いじゃないか。お前こそ石化にならないよう気をつけたほうがいい」
「お褒めの言葉とご忠告ありがとう。ついでにあなたの寮の誰かさんに私を石にさせないように言っておいてくれると助かるわ」
「僕かもしれないのによくそんな口が利けるね」
「それはそれで犯人がわかって好都合だわ」
「そのときはお前は石になってるから犯人が誰か教えられないけれどいいのかい?」
「対策くらい考えているわよ」
「そうかい。なら安心して石にできるな」
ロンを置いてハーマイオニーとドラコで口論が始まってしまう。タスさんはいつもどおり楽しそうにそれを見ているし、メアリーはおろおろしているし、ジェーンは規則違反をしない限りは止める気がなさそうである。
やはりこういうとき一番に止めるのはデアだった。
「みんな仲良くパーティーを楽しもうよー」
「今この状況でスリザリン生と仲良くできるわけないだろう」
「だったらなんでスリザリン生主催のパーティーに参加したんだよ」
俺の問いにハリーが答える。
「スリザリンの後継者は純血。祖先に妖精がいるタスさんが後継者のはずはないからね。それにデアたちも。君だけはマグル生まれと言っているだけで本当は純血かもしれないけど」
「それにしたって他のメンバーが純血主義のドラコたちだろ? わざわざそんなのに参加しなくてもよかったと思うんだが」
「今日まで参加メンバーをちゃんと知らなかったんだよ。タスさんに聞いても他の寮の人もたくさん誘ってるとしか教えてもらえなくて」
他のグリフィンドールの二人が頷く。さらにそれにスリザリンのドラコたちも乗っかった。
「僕らもそうだ。折角の機会だから他の寮の連中に純血の偉大さを説いてやろうと思っていたのに僕ら以外の参加者はスリザリンの後継者様に血を裏切るものと穢れた血、あとはお前らだけっていったいどういうことだ!」
「そう言われても主催はタスさんだから俺は知らんぞ」
「……ということだが、タスさん、説明してくれるんだろうね?」
「僕らにも説明してほしい」
タスさんがドラコとハリーの二人にじっと見つめられる。
「あら、そんなに見つめちゃ嫌ですわ。惚れちゃいますわよ」
「今はそんな冗談を言っている場合ではない」
「話をそらさないでくれるかな?」
「ちょっと、二人とも怖いですの。メリークリスマスですわよ? メリークリスマス」
二人はついに無言になりタスさんを睨んだ。主人公とライバルだからか変なところで息が合う。
「はいはい。わかりましたわ。ホグワーツの状況を分析すればわかったことだと思うのですがまあいいですわ。なぜこのメンバーになったか、それは……」
タスさんの解説フェイズ。解説もなにも少し考えれば当然のことだったが、スリザリンの継承者が話題になっている中、スリザリン生の中で一番言動が継承者らしいドラコに加えて継承者だと噂されているハリーまで参加するとなれば参加したいと思うほうが正気を疑う。
そもそも今年はホグワーツに残っている生徒自体が少なく、彼らしか集まらなかったのは必然と言える。
「……ということで、当然っちゃ当然ですわね」
タスさんの解説が終わり、頭に手をやったハーマイオニーがハリーとロンと小声で話している。
「その可能性を考えないわけではなかったけど本当にそうなってしまうとは思っていなかったわ」
「考えていたなら僕たちにもそれを教えてほしかったよ」
「まあまあ。ほら、でもこの状況は好都合かもしれない。ドラコが後継者かわかるかも」
ハリーたちはやはりドラコが後継者だと思っているようである。その彼もスリザリンの後継者については気になっているようでその単語に反応した。
「なんだ、こそこそとみっともない。後継者の話か?」
彼の言葉に返したのはまたもやロンだった。
「ドラフォイさんはお耳がよくていいですね。僕にも聴力を分けてほしいくらいだよ」
「血を裏切るものは耳が悪いらしい。僕はドラコ・マルフォイだとずっと言っている。なんだまったく。事情はわかったがこんなやつらと集合写真とはね」
「僕もこいつらと記念撮影なんてごめんだね」
「みんななんでそんなにピリピリしてるのー? 最近までもうちょっと仲良しだったじゃん?」
デアが不思議そうに聞く。ロンがそれに不機嫌そうに答えた。
「なんでだって? それをスリザリンの君が言うのかい?」
「あたしがスリザリンだからどうしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ。君たちスリザリンの誰かが継承者の敵を石にして回ってるからだろ」
「スリザリンの継承者だからってスリザリンの生徒とは限らないじゃん」
「君もハリーがスリザリンの後継者だって言いたいのか」
「そうは言ってないよ。でも、犯人が絶対スリザリンの生徒とは言い切れなくない?」
「いいや。絶対スリザリンの誰かだね。だって君たちの寮には純血主義者がたくさんいるじゃないか。そこのマルフォイとか継承者に適任だろ?」
自分がスリザリンの継承者に適任と言われてうれしかったのか、ドラコの機嫌が少しよくなったように感じる。
「ドラコは継承者じゃないよ!」
デアがすぐさま否定してしまったせいですぐに元に戻ってしまったが。そして、さらに彼女が失言をする。
「ドラコは蛇語を話せないからね。話せなかったらスリザリンの怪物は扱えないでしょ?」
「デア! そこまでだ!」
デアはドラコをかばうことだけに意識を向けたせいで知っていてはおかしい情報があるのを忘れてしまったようだ。スリザリンの怪物を扱うのに蛇語が話せる必要があるなんて情報は原作を知ってる人間とサラザール・スリザリン本人、そして真のスリザリンの後継者であるトム・リドルしか知りえない情報である。
「急に慌ててどうしたの?」
彼女は自分が失言したことにまったく気がついていないようである。
「なんで君、スリザリンの怪物を扱うのに蛇語が必要だって知ってるんだい? もしかして君が継承者じゃないのか?」
他の怪物たちは彼女の失言に気がつきフォローしようと口をはさもうとするが、先にロンが突っ込む。
「違う。違う。だってみんな知ってるでしょ? スリザリンの怪物が……あ」
ここでようやく自分の失言に気がついたようだ。そう、普通はスリザリンの怪物がバジリスクだと知っているのはおかしい。
「あ、ってなにさ」
「あー、アンダンゴ食べたいなって」
「アンダンゴ?」
「いや、ニホンって国のデザートなんだけど急に食べたくなって」
「なんで急に食べ物の話になってるんだ。それよりもスリザリンの怪物の話をしてくれよ」
「そうだったそうだった。えっと、うん、そうだね。……どうしよう」
デアは困ってしまい黙り込む。先ほど口を挟もうとしていたメアリーが彼女をフォローした。
「知ってるわけじゃなくて、予想よ。そうよね?」
「え? あー。うん、そうそう。予想!」
「へー、どんな?」
「えっと……」
「サラザール・スリザリンの特徴は純血主義だったこと。でももし後継者の条件が純血であることだけならスリザリンの継承者が務まるのならわりと誰でもなれてしまうでしょう?」
「それなら僕もなれるからね。だけどそれがなんだっていうんだい?」
「彼は蛇語使いでもあった。だったら純血よりも蛇語が扱えることということを条件にしたと考えるのは自然なこと。ホグワーツのみんなも蛇語が使えるハリーのことを後継者だと思っているでしょう?」
「でも、ハリーは違う!」
「ええ。違うのよね。まあ、私はハリーのことをあまりよく知らないから断言はできないけれど」
よく知らないというのは完全に嘘。原作知識のせいで本人よりも彼のことを知っているはずである。
「ただ蛇語を後継者の条件として考えてもいいと思うの」
メアリーはちらちらとハーマイオニーのほうを見てアピールしている。彼女ならば後継者の条件に関して想定して自分の意見に賛同してくれると考えたのだろう。
そして、その考えは正解だったようだ。ロンが答える前に彼女がそれに答えた。
「そうね。スリザリン寮のシンボルが蛇だし、パーセルタングであることが条件であることはありえるわ」
「だからってスリザリンの怪物を扱えるかどうかには関係ないだろ」
「あるわ。彼は自分と自分の後継者以外には怪物を扱えないようにしたはず。だから怪物を扱うのに蛇語を必要とさせた……という予想をあなたたちは立てたのね?」
「ええ、そういうことよ」
「さすがハーマイオニーだね! あったまいい!」
「いえ、このくらいすぐにわかったはずなのに考えが及んでなかったわ。でも、パーセルタングが条件ならハリーは当てはまってしまうわよ」
「僕は継承者じゃない」
ハリーがすぐさま否定する。ハリーが継承者と疑われて一番おもしろくないのはドラコである。
折角、自分が継承者かもしれないという流れだったのにデアに否定され、継承者の条件はメアリーの言ったパーセルタングであることという流れになってしまった。ドラコは蛇語を話せない。よって自分は継承者だと思われなくなってしまったということである。
「そうだ。グリフィンドールのポッターよりもスリザリンの僕の方がふさわしい」
「でも君、蛇語が話せないだろ?」
ロンがドラコを煽る。ハリーが継承者であることを否定したいのかドラコを煽りたいのかどっちなんだ。どっちもか。
「話せないとなぜわかる」
「マキナがそう言ってたじゃないか」
「そうか、お前はマキナの言ったことはすべて信じるのか。そうかそうか。おい、マキナ、こいつに僕が後継者だと言ってくれ。そしたら僕はスリザリンの後継者になるらしい」
「そうは言ってない。蛇語が話せないのがそんなに悔しいのかい? グリフィンドールのハリーですら話せるのにね」
「お前も話せないだろう? 血を裏切るものめ」
「お前『も』ということはマルフォイは蛇語を話せないの?」
ここで主人公らしい洞察力で目ざとく反応したハリー。オリキャラたちのせいでちょっと影が薄い気がしていたが気のせいだったようだ。
「だから話せないとは言っていない。なぜ話せないと決め付ける」
「○×□△○×□△○×□△」
ハリーがシューシューと音を発する。何回か聞いたのでわかるがおそらく蛇語である。なにを言っているかはちんぷんかんぷんだが。
「なんだいきなり。蛇語が話せるって言う自慢かい?」
「そうじゃなくて蛇語が話せるなら僕が何言ったかわかるでしょ? なんて言ったか当ててよ」
まあ、そうなるわな。話せるかどうか、一番簡単な試し方である。そして当然ドラコは蛇語がわからないので聞き取れるはずがない。少し間が空き、ドラコがなんとか言い訳を考えつき口を開いた。
「……聞こえなかった」
「そう、じゃあもう一度。○×□△○×□△○×□△」
「わざわざ言うほどの内容じゃないね」
必死にごまかそうとしているが、彼が蛇語を話せないのはバレバレである。
「ただ、わからないだけだろう? マルフォイ家っていっても大したことないじゃないか」
「ウィズリーにはそんなこと言われたくないがね」
「はい、喧嘩はそこまでー。これでドラコが蛇語を話せないのがわかったでしょ? だから継承者じゃないよ。仲良く記念写真を撮ろう!」
「話せない演技っていう可能性があるじゃないの」
「うっ。確かに……。ハーマイオニーは鋭いね」
「話せないとは言ってない」
「本人はこう言っているけれど?」
「そうなんだけどドラコは継承者じゃないんだって。だって自分でそう言ってたもん」
「なんで言ってしまうんだ!?」
「ということはやっぱり話せないんじゃないか」
「ほら、ドラコは後継者じゃないでしょ?」
「いえ、あなたちが口裏を合わせて嘘をついている可能性があるわ。だからマルフォイが後継者じゃないとは言い切れないわね」
「えー? 嘘なんかついてないのにー」
議論が硬直してしまった。これでは話が進まないので困ってしまう。
ハーマイオニーの言うように現状では俺らが嘘をついている可能性が否定できない。
真実しか話せなくなる真実薬でも飲めば証明できるが、その薬は貴重品。おいそれと用意できるものではない。タスさんであれば一瞬で用意してくれるのだろうが、それは結局俺らスリザリン側が用意したものなので信用に足るものにはならないだろう。
グリフィンドールの三人に真実薬を渡して半分飲んでもらい、効果を確かめてもらった後にもう半分をドラコに飲んでもらうとかなんとかできそうな方法は存在するが、それでも納得する保障はない。疑い始めればきりがないからである。
「それでどうするんだ? このままだとクリスマスパーティーはお開きになりそうだぞ」
一番それを嫌がりそうなタスさんに話を振る。この状態で話が進まないのであればクリスマスパーティーは中止になるだろう。俺はそれでもいいが、そんなことを主催者であるタスさんが許すとは思えない。なので彼女になんとかしてもらうのが確実かつ楽である。
「そうですわね。……あなたに任せますわ」
「俺に任せられても困るんだが。タスさんが何とかしてくれよ。お前なら簡単に済むだろ。真実薬でもなんでも使って解決してくれ」
「なんでも使っていいんですの!?」
「この世界に常識的に存在するものなら常識的な範囲内でなんでもいい」
「それだとつまらないのであなたに頼みますわ」
「俺は頼まれないぞ。俺としてはこのままクリスマスパーティーが終わるならそっちのほうが楽だからそれでいいしな。でもタスさんはそうはいかないだろ?」
「そうですわね」
「なら自分でやってくれ」
「それはそうなんですけれどワタクシとしてはみなさんと協力してクリスマスパーティーを成功させたいのですわ。ワタクシ一人が頑張っただけのパーティーなんて全員ががんばったパーティーと比べればまったく楽しくありませんので」
「いいこと言ってる感じ出してるが、ただ単に俺らを巻き込みたいだけじゃないのか?」
「そうとも言いますわね」
「やっぱり巻き込みたいだけなんじゃないか」
俺の突っ込みに対して楽しそうに笑うタスさんだが、俺は楽しくない。このままだと話も進まなさそうなのでさっき思いついた真実薬の案を適当に上げる。
「わかった。ならさっさと話を進めよう。俺の案は一つ、真実薬を使う。これが一番手っ取り早いだろ? ハリー達の誰かが半分飲んでドラコが半分飲めばドラコが継承者ではないことが証明できる」
「普通に考えたらそうなりますわよね。去年ワタクシが作成したのを複製したものが何個かあるのでそれを使いますわ」
タスさんのことだからありきたりな案に対して不満を持つものだと思っていたが、逆におもしろそうににやっとしながらいつもの袋から真実薬が入っていると思われる小瓶を取り出した。
デアたちはまだ継承者がどうたらこうたらと話し合っているようである。
「だからドラコは継承者じゃないって言ってるでしょ!」
「スリザリンのあなたが嘘をついている可能性があると言っているの」
デアの主張にハーマイオニーが先ほどと同じように反論する。それに対しジェーンがフォローした。
「私は両親がわかりませんしアランさんはマグル生まれ、デアとメアリー、タスさんは人以外の生物の血が混じっているので純血ではありません。なのでスリザリンとはいえ純血の魔法使い以外の敵である継承者をかばうわけがありません」
「どうだか。継承者に味方をすることで仲間に入れてもらおうとか考えているんじゃないのかい?」
ロンの言い分に対してメアリーが答える。
「信じてほしいけれど信じられない気持ちもわかるわ」
「ここまで言うのなら本当にマルフォイは継承者ではないのかもしれない。蛇語を話すこともできないしマルフォイなら継承者だったらとっくに自分が継承者だと言いふらしてると思う」
「生き残った男の子様はスリザリンの生徒に僕が継承者でないと信じてしまうらしい」
「誰も信じたなんて言ってないよ。ただ、君が蛇語を話せないのは事実だけれどね」
「僕も蛇語を話せないなんて一度も言ってないんだがね」
せっかくハリーが信じてくれそうだったというのにドラコが煽ったせいで撤回してしまった。本当にこのままでは話が進まないのでさっさと真実薬を飲んでもらうことにする。
「はい、ということでここに真実薬があるので互いに飲んで真実を話してください。これ以上あーだこーだ言っても話は進みません。さっさと飲んだ飲んだ」
ハリーに真実薬の小瓶を無理やり渡した。
「いきなりどうしたの?」
「だから真実薬だって。一年生のときに最初の授業でタスさんが作ってたろ? 飲むと嘘がつけなくなる薬だよ」
「覚えてるけど」
「なら話は早い。半分飲んでドラコに渡してくれ。自分で飲めば本物かどうかわかるだろ? それで本物って確認できたものをドラコが飲めば互いに本当のことを話せるってわけだ」
めんどくさいので完結に話をまとめたのだが、ロンが突っかかってきた。
「いや、飲んじゃダメだ。毒かもしれない」
「そんな面倒なことするか。早く話を進めたいんだ。早く飲んでくれ」
「毒殺なんて直接的なことするとも思えないし、するんだったらスリザリンの怪物で殺そうとするはずだから飲んでみていいんじゃないかしら?」
ナイスだハーマイオニー。さすが秀才。話が分かる。
「わかった飲んでみるよ」
ようやくハリーが飲んでみる気になった。これで話が進む。
「半分飲んだよ。なんか変わった気はしないけど」
「もし、飲んだものが本当に真実薬であれば嘘が言えなくなるはずよ。なにかいい質問はないかしら……」
それなら簡単。ハリー達しか知りえない情報を問えばいい。
「前に「魔法薬学」の授業中、誰かが魔法薬の中に「フィリバスターの長々花火」を入れた事件があったよな?」
俺の問いにハリーを含めた三人組の顔がこわばった。
「そんなことあったかしら?」
「うーん。僕も覚えてないや」
「うん。あったね」
ごまかした二人と違い、真実薬を飲んだハリーは肯定した。
「その犯人は誰だ? ハリーたちか?」
「そんなわけないじゃないの。私たちがそんなことする必要なんかないもの」
「そうだ! なんで僕たちが疑われなきゃならないんだ!」
「いや、僕らが犯人だよ」
「ってなんでハリーは本当のこと言っちゃうのさ!」
「……あなたたちの言うように本当に真実薬のようね」
頭に手をやりながらハーマイオニーが真実薬だと認める。そして、それを聞いたドラコが怒りを露にした。
「あれはお前らの仕業だったのか。あれのせいでゴイルの薬が爆発したんだぞ!」
「俺の薬が爆発して大変だったんだ!」
「よくもそんなことをしてくれたな! 今ここであの時の礼をしてやる!」
彼に続き、ゴイルとクラッブが喧嘩を吹っ掛けようとする。
「喧嘩をしたいなら好きにしていいが、それをする前に真実薬を飲んで自分の無罪を証明してくれ」
「なぜ僕らがお前の言うことを聞かなければならないんだ。この穢れた血め」
「なんでって話が進まないからに決まってるだろうが。俺を穢れた血と呼ぶのは構わないがドラコが真実薬を飲んで後継者じゃないと言ってくれ」
「僕が後継者じゃないと言うメリットはなんだ? 後継者でないと言わせたいのはお前らの都合だろう?」
それもそうである。ドラコが自身で後継者でないと言うメリットはない。彼は自身が後継者であると思われていた方が気分がいいのだから。
「あーもうめんどくさい。メアリー、なんとかしてくれ」
話が進まなさ過ぎてめんどくさくなってしまった。彼女に頼んでドラコに真実薬を飲ませ、さっさと話を進める。
「いいの?」
「ああ、今回は仕方ない」
「メアリーとなにを話しているんだ。僕と話しているところだっただろうに」
ドラコが文句を言ってくるが無視。
「頼む」
「わかったわ」
一瞬無表情になった彼女は悪魔のごとき艶やかな笑顔を作るとドラコの方へ振り向いた。
「フォイフォイ。真実薬を飲んで欲しいの」
「いや、でも僕にメリットが……」
「……お願い」
「わかったフォイ!」
彼女は悪魔のごときというか悪魔そのものの力でドラコの意思を自分の都合のいいように捻じ曲げた。えげつないしキャラ崩壊につながるが話が進まないので許してほしい。クラッブとゴイルが納得できないと首をかしげているがこの際ささいなことだ。
ハリーがドラコに真実薬を飲ませる。
「飲んだがどうすればいい?」
「じゃあ、質問に答えて」
「ああ」
「君がスリザリンの後継者?」
「違う」
「誰がスリザリンの後継者か知ってる?」
「知らない」
「黒幕が誰かは?」
「知らないと言っているだろう。僕はなにも知らない。残念ながらね」
この流れは原作でハリーたちがスリザリンに潜入してドラコから話を聞いた時と似た流れだ。どうせ原作でも知るはずの情報なのでここで知られても影響はないはずである。
「うーん、君のお父さんだったら何か知らないかな?」
「詳しいことは話してくださらないんだ。僕も前に後継者が現れた時のことを聞いたが教えてくださらなかった。そもそも五十年も前だから父上が通っていた頃より昔の話だ。ただ父上はすべてを知っているとおっしゃった。しかし、僕がそのことを知りすぎていると怪しまれるとおっしゃっるんだ」
「なにか教えてもらったことはないの?」
「一つだけ教えてもらった。前回『穢れた血』が一人死んだ。だから、今回も誰か死ぬことになるだろう。どうだグレンジャー、犠牲者になりたいか?」
「なりたくないのでさっさと『秘密の部屋』について知ってることを全部話してくださる?」
ハーマイオニーが不機嫌そうに返すが、ドラコはドラコで少し困り気味に応答する。
「そう急かすな。……しかし、正直に言ってこれ以上のことは知らない」
「前に継承者が現れたってことは『部屋』が開かれたことがあって、さらに開けた者がいたってことよね?」
「ああ」
ハーマイオニーの問いに続いてハリーが質問をする。
「なら前に『部屋』を開いた犯人が誰か知ってる?」
「残念ながら知らない。ただ、誰だったにせよ見つかったのであればアズカバンにでも捕まってるんじゃないか?」
「アズカバン?」
「魔法使いの牢獄だ。まったく魔法使いだというのにそんなことも知らないのか。嘆かわしい」
「他に知ってることは?」
「だからないと言っている」
「じゃあ他に君のお父さんが何か言ってた?」
「父上は僕には目立たないようとおっしゃった。スリザリンの継承者にすべて任せろ、この件には関わるなと。今父上が魔法相が先週、僕たちの館を立ち入り調査したせいで手一杯ということもあるだろうが……」
「ということはつまり、君は継承者じゃないし継承者が誰か知らないけど君のお父さんは継承者が誰か知ってるってこと?」
「そうおっしゃっている。僕は継承者じゃないし誰がそうなのかもわからないが、父上がおっしゃるには知っていると」
「君がお父さんから継承者が誰か聞き出すことは可能?」
「それは不可能だね。さっきも言ったが父上は僕が今回の件と関わるのをよしとしない。僕が頼んでも教えてくださらないだろう」
しばし沈黙が流れる。これ以上情報が出ることはなさそうだ。
「これ以上質問がないなら魔法薬学での借りを返させてもらいたい」
ドラコは真実薬を飲む前のことをばっちり覚えていたようである。
「ハリーたちはドラコが継承者じゃないって信じてくれたか?」
「うん。真実薬の効果は飲んだ僕がわかってるし、ドラコは継承者じゃないみたいだね」
ロンとハーマイオニーも同意見なようでうなずいている。
「よし、じゃあ喧嘩していいぞ」
「そういうクリスマスパーティーも面白いかもしれませんわ!」
俺は適当に言っただけだったがタスさんものっかってくる。しかし、仲良くしようと言うデアと校則違反を嫌うジェーンはそれをよしとしなかった。
「よくないし面白くないよ! そもそもみんなで仲良く記念写真を撮るための話し合いだったじゃん! なんで結局喧嘩することになってるの!?」
「俺の薬が爆発した原因がこいつらだったんだから当たり前だろうが!」
「それに加勢して何が悪い!」
「僕も言わなくていいことを色々言わされてしまったからね。そのくらいしても罰は当たらないだろう?」
「ですが決闘は校則違反です。ゴイルさんたちの気持ちはわかりますがここは我慢してください」
「それはわかっている。スリザリン生として規則を破るような馬鹿ではないつもりだ。だが、身内を傷つけられてただ引き下がるのもスリザリン生でない。純血でないかもしれないジェーンにはわからいかもしれないが」
「それは……」
ドラコの言い分にジェーンが言いよどむ。
まあ、彼女も規則規則言ってはいるが、メアリーが傷つけられれば規則など頭から飛んでしまいそうな性分なのである。スリザリンに適性があるだけあって一番彼らに性質が近い。
「……いえ、私にも気持ちはわかります」
「なら、いいじゃないか」
「ですが規則を破ることを肯定することはできません」
「なぜだ? 気持ちがわかるんじゃないのか?」
「気持ちはわかります。ですが、あなた方がそれをすることで私の身内が困るんです」
「だが、僕らも引くわけにはいかないのもわかるよな」
「私が引かないのもわかってくれますよね」
互いに引く気がない彼らの雰囲気に耐えきれなくなったデアがとんでもないことを口走り始める。
「あのさ、この際ドラコ達とハリー達で協力したらどう?」
「こいつらと協力? どうして突然そんなことを?」
「ドラコは継承者になりたいんでしょ?」
「なれるのならなりたいが、継承者は別にいるじゃないか」
「だったら今回の継承者を倒しちゃえば?」
「君は何を言ってるんだい?」
「継承者から継承権を奪っちゃえばドラコが継承者になれるじゃん」
「そういうものなのか?」
「知らないけどなれるよー」
スリザリンの継承者の条件はスリザリンの血を継いでおり、蛇語を話せる者なので無理である。
「だが、父上は関わるなとおっしゃっている」
「ばれないようにすればいいんだよ。後継者になった後に報告すれば喜んでもらえるって」
「確かに僕がスリザリンの後継者になれば大層お喜びになられるだろうが」
「ならいいじゃん」
「だが後継者には協力せねば……」
タスさんがこのような機会を逃すわけもなくその瞳を爛々と輝かせてデアの案を押した。
「しなくてもいいんじゃないですの? ハリー達に協力しているフリをして偵察していたら後継者が倒されてしまったのでその後を継ぎましたとかなんとか言っておけば丸く収まりますの。それよりチャンスを生かすことを考えた方がいいですわ」
「……継承者になるには協力する他にないか」
「冗談じゃない。誰がスリザリンと協力だなんて!」
ロンは気が進まないようだ。しかし、ハリーとハーマイオニーは乗る気であった。
「いいんじゃないかな。お父さんから色々情報が聞けそうだしね」
「スリザリンに内通者がいるのは好都合よ。裏切られる危険もあるけどメリットの方が多いわ」
「二人とも本気で言ってるの!?」
「そうだけど」
「ええ、もちろんよ」
「マーリンの髭! 正気じゃないよ! それに今の継承者をどうにかできたとして、ドラコが継承者になったら今度はそれをどうにかしなくちゃいけなくなるじゃないか!」
「別に継承させなければいいだけよ」
「おい! 話が違うぞ!」
「あら、失言だったわ。聞かなかったことにしてちょうだい」
「するわけないだろう!」
普段は青白い顔を赤くしているライバルに対して、ハリーは俺達にも協力を申し出てきた。
「どうせならアラン達にも協力を頼みたいんだけどいいかな?」
「ああ、協力させてもらうよ」
俺が即答するとタスさんが意外そうな顔をする。
「協力したところで話の本筋からは外れないだろ?」
「そうですわね。問題ありませんわ」
「だったら協力して解決したほうがいい」
去年までの俺であればわざわざ原作を逸れるようなことは拒否しようとしただろう。だが去年、原作にないことが起こっても物語の本筋から逸れてしまうようなことはなかった。
ならば、怪物たちを利用して、物語の進行に最低限必要な条件を達成していくほうが簡単だ。
よって協力しないという選択肢をわざわざとる必要はないというわけである。
「お前らもいいよな?」
「もちろんですわ!」
「うん、当たり前だよ!」
「メアリーがするのであれば」
「断る理由はないと思うわ」
怪物たちは全会一致で協力することに決まった。話がまとまったところで、ハーマイオニーが話を進めようと口を開く。
「ならよろしくお願いするわね。早速情報共有をしたいのだけれどいいかしら?」
「そうですわね。早速始めましょう……と言いたいところですけれど、まずは記念撮影をして、ディナーを食べながらでもいいと思いますわ」
「そうだね! まずは記念撮影だよ!」
「そういえばそういう話だったわね。ええ、そうしましょう」
「……スリザリンの後継者を探しているのにスリザリンの連中と協力することになっちゃったよ」
ロンがつぶやくが協力が撤回されることはなく、ドラコたちは協力して記念撮影の場をセットしていった。
「父上が買ってくれたカメラだ。感謝するがいいポッター」
「後継者について聞いてくれるならいくらでもするよ」
「まずカメラについて感謝してほしいものだね」
「うん。貸してくれてありがとう」
「やけに素直じゃないか」
「後継者についてわかるなら素直にもなるよ」
「そういうことよ。それとそこのツリーを一緒に移動してもらえるかしら?」
「穢れた血のお前と一緒に?」
「ええ、あなたも後継者になりたいのならマグル生まれの私でもなんでも利用するべきよ。それの第一歩ということで割り切ってちょうだい」
「不本意だが仕方ないな」
「みんな仲良くなってよかったねー。あっ、重いものはあたしに任せて!」
「打算的に協力してるだけで仲良くなったわけではない気がするわ……」
「いいじゃないですかメアリー。丸く収まったんですし」
「タスさん、これでセット完了か?」
「そうですわ。みなさん位置についてくださいまし!」
「ファインダーを見なきゃどの位置がいいかわからないだろう? それに誰がシャッターを切るかも決めてないじゃないか」
「これだから貧乏人は。あのカメラは最新式でね。遠隔でシャッターを切ることができるし、ファインダーの様子を映し出してくれるから問題ないんだ」
「はいはい、どうせうちのカメラは中古の旧式ですよ」
「まあ、うちにはある筋から譲り受けた試作品があるからずいぶん前からそういうものがあると知っていたが」
「もう自慢はたくさんだ!」
「事実を言ったまでだけれどね」
「もー言い争いはやめてって。折角の記念撮影なんだからみんな笑顔で! じゃあ撮るよ!」
「おい、なんでお前が仕切って……」
「ハイチーズ!」
ドラコが文句を言い切る前にデアはシャッターを切った。一応だがこれでやっと記念撮影が終わった。
*
食事をしながら相談……のはずなのだが相談しているのは原作キャラたちだけ。俺を含めたオリキャラたちは好き勝手に料理を食べている。
事件の真相は知ってるしせっかくのご馳走なんだから食べないと損だからな。
「ウィーズリー、偉そうなこと言ってた割に何もわかってなかったじゃないか」
「スリザリンの君と違って僕たちはグリフィンドールなんだ。よその後継者のことなんか知るわけないだろ」
「まあ、僕たちはポリジュース薬でスリザリン生に化けて君から色々聞こうとしてたくらいだったからね」
「真実薬にここまで効果があっただなんて」
「魔法薬学での授業の爆発はポリジュース薬の材料をくすねるためだったとはな」
「まったく、一か月の苦労が水の泡よ。せっかく作ったのに」
「あって損はないだろう。今後使うこともあるだろうしな。結局継承者の目星すらついてないが」
「仕方ないじゃないの。スリザリン生のあなたがわからないんじゃわかるわけないわ。だから今後は後継者を探すこと目標になるわ」
「あと、怪物の正体がなんなのかもだ」
「それは蛇って話になったじゃないか」
「あくまでデアたちの予想だけどね」
「蛇の怪物といっても何種類も存在するわ。そのうちのなんなのかを突き止める必要がある。継承者を倒すなら怪物の対処方法を探さないと」
「それと誰かが石化するときは必ず僕に謎の声が聞こえる。関係あるかどうかはわからないけど無関係とは思えない」
「結局情報が足りないのには変わらないわね。できるのは何か不審な者がいないか気を配るのと図書館で蛇の怪物について調べることくらいかしら」
「あとは、僕が謎の声を聞いたらみんなに伝える」
「事件が起きたらスリザリンの君たちと合流して君たちの中に犯人いないと確認」
「それでポッターが犯人じゃないともわかるな。それはそれとして僕らは父上を含めたスリザリンのOBに情報を聞いてみるよ。何回もねだれば教えてくださるかもしれない」
「お願いするわ。先生たちに聞くこともできるけれど話してくれそうにないのよね。なんとなく隠しておきたいように感じるの」
「父上もそのようだからな」
「要するに今まで通りだけどあなたたちが協力してくれるってだけね」
「そういうことになるらしい。こちらは継承者から継承権をはく奪できるのなら不利にならない範囲で協力する」
「それでいいわ」
「ならば情報交換は完了、交渉も成立ということだな」
ハリーたち三人がうなずく。俺が料理を食べているうちに話し合いが進んで話がまとまったようだ。
「アランたちはさっきから食べてばかりだけどそういうことでいいの?」
「そういうこととは?」
「僕らに協力するってことでいいのかなってこと」
「ああ、問題ない。みんなもそうだよな?」
「当然ですわ。みなさんと楽しめことは大歓迎ですの」
「もちろん! どんどん頼ってよ!」
「ええ、協力してほしいことがあったらなんでも言ってくださいね」
「なんでもはできないけれどね」
俺はあくまで物語が原作に添う範囲でしか協力してほしくないから当然だ。
話がまとまったところでタスさんがクリスマスパーティーを進行させる。
「話し合いはこれで終わりでいいですわよね? それに加えてお腹も満たせたのでしたらミニゲームを始めたいのですがよろしいですの?」
「相談しながらだったけどずいぶん食べたからね。僕らはこれくらいでいいかな」
「僕は問題ないがクラップとゴイルはまだ食べ足りないようだ。だが、いつものことだし終わってからでもいいだろう」
「あたしも食べ足りないけど終わってからでいいよー」
クラップとゴイル、デア以外は満足したようなので進めることができるだろう。その三人はいくら食べても満足することはないだろうからいつまで待っても意味がない。食べ足りない分はあとで食べてもらうことになる。
「ミニゲームが終わったらデザートタイムになるのでその時間にでも食べてくださいまし」
「わかった」
「そうしよう」
「オッケー!」
「ということでミニゲームを始めますわよ!」
*
タスさんが持ち込んだ市民とマフィアが争う会話と推理を中心にしたパーティーゲームは思いのほか盛り上がった。
ゲームにおいてタスさんが負けるわけがないと思っていたがそういうわけではないらしく彼女の勝率は七、八割程度。
「勝率よりエンターテイメント優先ですので。そもそもメアリー・スーが関わっている時点で勝敗なんてあってないようなものですの」
デザートタイムの時間にタスさんに彼女の勝率のことで話しかけると彼女がそう返した。
「そういえば去年も同じようなこと言ってたか」
「さあ? 言いましたっけ?」
「覚えてるだろ? タスさんが物を忘れるわけないんだからさ」
「ワタクシが忘れなくてワタクシが忘れることはありますわ」
「何意味の分からないこと言ってるんだ?」
「あなたがわからないなら誰にもわかりませんわよ」
「煙に巻く話はもういい。クリスマスパーティーもいよいよ終わりだろ? お楽しみのプレゼント交換といこうじゃないか」
「あら、そんなに楽しみにしていたんですの?」
「そういうわけじゃないがようやく締めに入れるからな」
「ということはクリスマスパーティがお気に召さなかったんですの?」
「いや、長すぎるんだよ」
「確かにドラコとハリーのごたごたと協力うんぬんがあったおかげで予定より長くなっていますけれどそこまで長時間のパーティではありませんわよ?」
「それはこの時間の話だろ? 俺の体感だと長いんだ。理由を聞かれても答えられないが。さっきタスさんが言った俺にわからなきゃわからないってのと同じようなもんだ」
「パーティーがお気に召さなかったというわけでないのならいいですわ」
頭が頭痛で痛くなるような的を得ない会話を終えるとクリスマスパーティー最後のプログラム、プレゼント交換に移り、それも特に問題なく終わった。
平和で何よりである。
「では、名残惜しいですがこれにてクリスマスパーティーは終了ですわ。プレゼントは寝室に帰ってからゆっくり開けてくださいな。お礼などはまた後日」
「もうちょっと継承者について話たいわ」
「そうかもしれませんが、せっかくのクリスマスですしそういう話は明日にしたほうがいいですわ」
「それもそうね。継承者についてはまた明日からがんばりましょう」
「この僕がいれば継承者なんぞどうとにでもなる。最後かもしれないクリスマスを存分に楽しむがいい」
「まあ、君なら一人で継承者を倒すくらい簡単だろうね。すぐにやっちゃってよ」
「ロン、君はすぐにそういうこと言うから喧嘩になっちゃうんだよ。マルフォイの言い方が悪いからだけどね」
「おい、僕だけが悪いみたいに言うな。こいつが喧嘩を吹っ掛けてくるからだろう!」
「まったく、聖ポッター様の名が聞いて呆れる」
「スリザリンの継承者様なんだから継承者くらい一人で倒してほしいもんだ」
「もー、喧嘩はだめだよ!」
「折角協力することになったのですし、もう少し仲良くいきましょう」
「ええ、私もその方がいいと思うわ」
「俺はもうちょっと仲悪い方がこいつらっぽいと思うけどな」
「どっちにしても今日のクリスマスパーティーはお開きですわ。予定より時間がかかってしまったせいでここに残ってるのはワタクシたちだけになってしまいましたの。早く帰らないと怒られてしまいますわ」
辺りを見回すと大広間に人影はあらず、クリスマス用のイルミネーションだけがその存在を主張していた。
「どうやら本当に早く帰った方がいいみたいだな」
「というわけでメリークリスマス。いい夜をですの」
パーティはお開きとなり、スリザリンとグリフィンドールで分かれる。そして、男女別に寝室で分かれるとドラコたちと少し話した後に床に着いた。
まさかドラコとハリーが手を組むとは思っていなかったが今年の物語に大した影響はないだろう。なにせ秘密の部屋に関してはドラコはなにもできない。クィディッチでシーカーを務めてグリフィンドールに負けるという大役が終わったのだ。もう彼ができることはないのだから少しくらいハリーに協力したところで問題ない。日記に残っているヴォルデモートの魂がなにを知ろうと原作通りに始末してしまえば本人には何も伝わらないしな。
今日一日というか一晩だけだったが俺にとってはこれ以上にないくらい長い一日だった。これ以上長く感じる日がこないようにと祈りながら今年の聖なる夜が過ぎていく。
前回、原作キャラクターの出番が激減したので増やしてみました。
タスさんがクリスマスパーティーを開催したらドラコとハリーが協力することになっちゃったの巻です。
ちなみに彼女が持ち込んだパーティゲームは人狼のオリジナルのつもりです。描写すると無駄に長くなりそうだったのでカットしました。
アランが意味不明な発言をしていますが彼は自身に違和感を感じておりません。自分の異常性に気づけない異常者はこんな言動になるのでしょうかね。
メアリーに続いて次回はデアがやらかします。