ハリーポッターと物語の怪物たち   作:私の為の物語

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感想・評価ありがとうございます!
実験作の本作ですが、よろしくおねがいします!


第4話 生き残った男の子

 昼食をとり終えた俺たちは、コンパートメント内を埋め尽くすお菓子を食べ始めていた。

 「食った食った」

 初めて食べたが日本食もうまいもんだな……じゃなくて! 何をのんきに昼食をとってんだ。このままでは非常にまずい。こんななんでもありなオリキャラを原作の重要キャラクターにあわせるわけにはいかない。物語が大変なことになる。特にハリー・ポッターは隣にいる。なんとかして怪物たちを隔離しなければ……。

 しかし、そんな俺の心配を知らない怪物たちは楽しそうにお菓子を食べている。しかもデアは巨大な重箱の中身の大半をお腹に収めたというのにまだ食べたりないようで、次々とお菓子の包み紙を開けてそれらをすべて平らげている。

「カエルチョコレートって本当にカエルみたいに動くんだよねー。映画で見たものより本物ぽかったから最初に見たとき驚いちゃった」

 カエルチョコレートはカエルの形をしたチョコレートである。それだけならマグルの世界でも存在するかもしれないがこれは魔法界のもの。チョコレートに魔法がかかっていて本物のように動く。

 マグル生まれの俺から見たら色がチョコレートとはいえ茶色いカエルに見えるので食べるのは少し勇気がいる。それは前世の記憶がある彼女らにも言えることだと思うのだが、彼女は躊躇なくうごめくチョコレートを口の中に入れた。この十一年でなれたのだろうか。

「私の分もあげるわ」

「いいの!? ありがとう」

「メアリーはカエル嫌いですからね」

「カエルの形をしてるだけでただのチョコレートだよ?」

「その形が想像以上にカエルなのよ。動きも本物のようだし茶色いカエルにしか見えないの。わざわざそれを食べるのなら私は普通のチョコレートを食べるわ」

「じゃあちょっと待ってて」

「あっ、別にいいわ!」

 メアリーの静止を聞く前にデアが受け取ったカエルチョコレートの箱を握り潰す。そしてひしゃげた箱の中から見るも無残な姿となったカエルチョコレートだったものを取り出してメアリーに渡そうとする。

「姿がカエルじゃなくなれば大丈夫だよね!」

「ありがとう。でも私にはまだ動いているように見えるのだけれど」

 彼女の言うように眼球だったであろうものはぐりぐり動いているし手や足もぴくぴく動いている。見方によっては悪化していると言えるだろう。

「やっぱり完全に動きを止めないと駄目だよね」

 もう一度箱の中に入れ直すと手と手の間に入れて何度かグッと握りつぶし球状にした。明らかに体積が減っている。彼女の怪力によって圧縮されてしまったようだ。

「はい、これでただのチョコレート。こっちはおまけのカード。握りつぶす前にちゃんと抜いておいたから大丈夫だよ」

「え、ええ。助かるわ」

 ひきつった笑みで球状となったチョコレートとカードを受け取る。チョコレートにはおまけとして魔法使いや魔女の写真と情報が載ったトレーディング・カードがついている。その種類は五百種類を軽く超えるらしい。

「カードはロウェナ・レイブンクローだったよ。私のはヘルガ・ハッフルパフ」

「ワタクシのはゴドリック・グリフィンドールでしたわ」

 いつのまにかカエルチョコレートを食べ終えていたタスさんがカードを皆に見せた。

「すみません、少し待ってください」

 まだカエルチョコレートを開けていなかったジェーンが急いでそれを開けて食べる。

「ゆっくり食べていいよー」

 言われたように早く食べるのをやめ、ゆっくり咀嚼する。全部食べきったところで自分の分のカードを公開した。

「おまたせしました。私のはサラザール・スリザリンです」

「へー、ホグワーツの創設者がそろったね。すごい偶然」

 ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナレイブンクロー、サラザール・スリザリンはホグワーツ魔法魔術学校を創設した四人である。それぞれのホグワーツにはそれぞれの苗字からとった四つの寮があり、創設者たちはそれらの初代寮監を務めた。

 ホグワーツでは生徒の性質や適性から所属する寮を決めており、判断基準は彼らの教育方針が元になっている。グリフィンドールであれば勇気や騎士道、ハッフルパフなら優しさや忍耐強さ、レイブンクローなら勤勉さや学力、スリザリンなら狡猾さや断固たる決意などである。スリザリンはそれ以外にも蛇語、機知に富む才知、やや規則を無視する傾向、そして純血であることなどが条件にあり、選民思想が激しい。

 ただし、グリフィンドールやレイブンクローも学ぶ者を選ぶべきだと言っているので選民思想自体はある。

 ただ一つ例外なのはハッフルパフ。ただ一人彼女だけは選ぶべきではないと言った。そのため他の寮に入れなかった生徒を広く受け入れる為に劣等生の寮というイメージがあるが、優秀な生徒もおり、最も闇の魔法使いの排出率が少ないという特徴も持つ。

 逆に一番高いのはスリザリン。その選民思想と純血主義が原因だと思われる。一つだけ他の寮から浮いており、仲間うちの結束を強くせねばならないのも手伝っているのだろう。

 排出率が高いのは次点でレイブンクロー、次がグリフィンドールである。

「集まったのは偶然なんかじゃありませんの。そうなるようにワタクシが調整したのですわ!」

 タスさんが言うには彼女が創立者たちのカードが集まるように乱数調整したらしい。確かに意味不明な舞をよいよい踊っていた気がする。しかし、なぜこんなにめんどさいことをしたのだろうか。ただ単にこの状況を見せたかっただけかもしれない。

「なんでわざわざこんなことをしたんだ? またエンターテイメントか?」

「そうですわ! 皆が選ばれる寮に合わせましたの!」

 タスさんがとんでもないことをドヤ顔で宣言した。

「じゃああたしはハッフルパフ!? うーん、でも頭良くないし妥当かなー」

「それは違います。ハッフルパフの生徒たちは優しい努力家なんですよ」

「そうね。苦労を苦労と思わないなんて良い意味で化け物よ。さすがデアだわ」

「えへへー、ありがとう。でもメアリーは頭いいってことだよね。いいなぁ」

「そんなことないわ。私は頭悪いもの」

「あれ? レイブンクローって頭いいんじゃなかったっけ?」

「あってるわ。レイブンクローは勤勉な者や学力の高い者が集まるはずよ。でも、私は勉強が嫌いなの。なのになんでレイブンクローなのかしら」

「そう? メアリーは頭良くて勉強できるじゃん」

「別に頭がいいわけじゃないわ。デアは高校生、それも一年だったのだからほとんど中学生と同じでしょう。私は大学生だったのだからあなたよりできてもそれが当たり前なの。証拠に社会人だったジェーンの足元にも及ばない」

「でも、勉強以外にもいっぱい魔法界のこと知ってたし」

「それは原作を知ってるからよ。それ以外のことは全然だし、細かいところはわからないもの」

「組み分けは生徒の希望を取り入れつつ行われるし、性質がかぶっている場合もある。適性があれば特徴がすべて一致しなくても入れるんだからメアリーがレイブンクローでも変じゃないだろ」

 寮の組み分けは、組み分け帽子という創設者たちが作った魔法の帽子を用いて行われる。帽子には意志が宿っており、かぶった生徒のと性質や才能を読み取って、生徒が行きたい寮やその家の血筋も考慮して寮を選択する。

 だから、例えば代々グリフィンドールの家系ならグリフィンドールに選ばれることが多い。親の影響で性質が似るとも考えられるが同じ寮に選ばれやすいことには変わらない。

 このため条件にすべて一致していなくてもその寮に入ることができる。グリフィンドールにも勇気がなさそうな人が入ることもあるし、ハッフルパフにも悪の魔法使いになった人もいる。レイブンクローだからといって必ずしも学年トップクラスに成績がいいわけじゃない。それに、選民思想の強いスリザリンにだって純血以外の魔法使いはいるしマグル生まれもいないことはない。

「けれど私はまったく条件に当てはまらないわ」

「さあ、誰だかわからない父さんがレイブンクローだったんじゃねーか?」

「可能性はあるわね。あとはお兄様もレイブンクローだからお母様にその適正があるか」

 リリスさんは抜けているイメージしかない。言動がふわふわなうえ、娘の入学して初の見送りに寝坊したのでレイブンクローという感じはしない。

 しかし、原作にもそのような変わり者がいたのでその可能性はある。そのキャラは他人と物を見る視点が違うというある意味天才と言える人物だったので彼女もそういうパターンなのかもしれない。

「それにその年で大学生レベルの学力だったら学力が高いって判定されると思うぞ」

「完全に不正じゃないの」

「なにをいまさらな事を言ってるんだ」

 納得できないと言ったように首をかしげるが、彼女が夢魔の力を使えば好きなように結果を捻じ曲げられるのだからすべてが不正である。そんな彼女にジェーンがフォローを入れる。

「メアリーは頭いいですよ。自信がないだけで才能はあります」

「いえ、あなたの方が頭いいわよ。さっき学力の差を年の差だと言ったけれどそれを差し引いてもあなたの方が勉強できるわ」

「勉強ができるのと頭がいいのは違います。メアリーは頭がよすぎるんですよ。物を見る視点が普通の人と違うので他の人が考えない可能性まで考えてしまうんです」

「私は凡人だわ」

「そんなことないです。凡人ならその自信のなさはありえません。凡人なら世界のすべてを思いのままにできるならやりたい放題いします。しないならわざわざその力を人に話すことはせずに自分のために使うでしょう」

「凡人だから自信がないのよ。力が効かない可能性や力を失う可能性がある。自分と互角以上の相手だっているかもしれない。中身は凡人以下の一般人なのよ。そんな人たちと敵対したらどうにもならないわ。これでどうやって自信を持てというの?」

「二人の話に割って入って悪いが世界をどうこうできる時点で凡人じゃねーぞ」

 ただ、あくまで能力面での話であり、たしかに、凡人が力を手にしてもこの程度なのかもしれない。それにしても怖がりというか自意識過剰というか……。あ、そうか、自意識過剰の化け物なのか。メアリー・スーだもんな。

「中身が凡人以下じゃ駄目なの。世界のすべてを思いのままとはいうけれど、それには生命力が足りないわ。理想的な天才ならこんな力くらいどうにだってできるでしょう」

 制限はあるとはいえ世界のすべてを自由にできる可能性のある力をこんな能力扱いとはどれだけ理想が高いんだ。こいつの天才のハードルは高すぎる。

「そういう考えすぎるところが頭がいいんです。ですが、理想が高すぎます。理想は理想です。別に常に最高でなくてもいいんですよ」

「わかってるわ。でもそれを考えても私は劣ってる。ダメ人間なの」

「じゃあメアリーより知識のないあたしもダメ人間だね!」

「違うわ。デアは前向きだし明るいし優しい、私と違って根性もあるもの」

「違くないよ。メアリーが言ってるのはそういうこと。謙遜もしすぎると人を傷つけるんだよ」

「そうです。誰かに勝っているところは自信に持っていいんです」

「それはあくまで私の得意な部分がその人の苦手な部分に勝っているというだけで得意分野なら絶対勝てないわ」

「いやいや、ジェーンが言ってたが理想が高すぎるぞ。それは誰だってそうだ。人それぞれ得意分野が違うんだから当たり前だろ。すべての人間の得意分野に勝った人間がいるならそいつは神だ」

 とはいえ、世界を思いのままにできるメアリーはこの物語では神と言っても過言じゃない。デアも機械仕掛けの女神だ。どちらも悪神なんだろうが。

「そう、みんな何かしら短所があるんだよ。だから長所で補いあうんじゃん」

「お兄様は完璧超人だわ」

「確かに兄さんはすごいけどあたしの方が身体能力は高いんだって本人がこないだ言ってたよね。これもそうだけど魅了の力ならメアリーの方が断然上でしょ?」

「私には中身が伴っていないの」

「この流れ、杖を買った時と同じじゃん。兄さんも完璧な人格者じゃないよ。あたしもそうだしそれはたぶん他の人も。だから日々成長していくんだよ」

「失敗しない人なんかいないんですから自信を持ってください。自信さえあればあなたは誰にも負けません」

「それは聞き捨てならないですわ! エンターテイメントならワタクシは絶対負けませんの!」

 ここまで黙って聞いていたタスさんが異議を唱えた。いい感じにまとまりそうだったのになんてことをしてくれたんだ。メアリー・スーが自重しなくなったらどうするんだよ。

「あくまで、そういう意気で物事に臨めってことで本当に無敗というわけじゃないだろ」

「でもみなさん想像を超えることを簡単にするのでライバルとして申し分ないですの」

「なに言ってるんですか。誇張抜きに自信さえあればメアリーは常勝無敗ですよ?」

「そうですわ。なのでぜひ自信を持っていただきたいのですが」

 生命力が確保できるのであれば彼女は無敵といっても過言ではない能力を有しているので、常勝無敗は誇張ではない。彼女がやりたい放題した瞬間に世界は崩壊するだろう。まじでやめてほしい。

 タスさんは期待を込めた目でメアリーを見ているが、見られた方は高速で首を横に振って否定している。この状態であればやりたい放題はしないと思うので安心である。

「まあいいです。私はメアリーのそういうところが好きですよ」

「そう言うジェーンもスリザリンだから天才ってことだよね。色んな資質がないと入れないんだから」

「そんなことないですよ」

「メアリーには謙遜するなって言っておいて自分もしないでよ。あたしは臨機応変に姿形が変えられるジェーンにぴったりだって思うな。ただ、悪い魔法使いっていうのはちょっと怖いかな」

「私怖いですか?」

「うーん、まあ時々はねー。でもあたしが怖いのは悪い魔法使いだよ。ジェーンは真面目だし他人に気を配るし優しいもん」

 スリザリンが重視することをまとめると機知、臨機の才、決断力、あるていどの規則違反、パーセルタングという資質、それと狡猾さや野心、純血性である。

 対応力は彼女の変幻自在な能力を考えれば当然高い。彼女自身もタスさんに化けていることを疑われたときに顔の傷という理由を咄嗟に応えていたため低くはないだろう。

 パーセルタングとは蛇の言葉である蛇語を話せる人の事である。彼女は蛇やパーセルタングそのものに変身すれば話せるのだからその条件を満たしていると言える。

 純血に関しても同様に純血の魔法使いに化ければ問題ない。

 狡猾さや野心に関してはよくわからないがそれ以外を満たしているのだろう。

「ありがとうございます。私は悪い魔法使いにはなりませんよ。メアリーがなってほしいなら別ですけど。メアリーはなってほしいですか?」

「なってほしくはないわ。なりたいなら私に止める権利はないけれど」

「そうですよね。なので私が悪い魔法使いになることはありません」

「それはメアリーが望めばなるということか?」

「もちろんなりますよ? メアリーは絶対に望まないのでありえませんけど」

 対応力が高すぎて慕っているメアリーに対応しすぎているのだろうか。そうだとしてもなにもかもがメアリーの意志通りという思想は危険である。

「それは大丈夫なのか? 言い方悪いが奴隷みたいなもんじゃないのか?」

「私は奴隷とは違いますよ。奴隷に自由はないですが、私は自由にそれを行っているんですから」

 結局そうするのなら同じことだと思うがどうなんだ? よくわからなくなってきた。

 俺が頭を抱えそうになっているとメアリーが耳打ちしてきた。

「……ちょっと話があるの。席を立ってもらっていいかしら」

 彼女はそう言うと席を立ちコンパートメントから出ようとする。

「どうしたんです?」

「ちょっとトイレに行ってくるわ」

「俺も行きたいんだが」

「なら一緒に行きましょう。個室だし問題ないわ」

「助かる。場所がよくわからなかったんだ」

「……そういうことですね。わかりました、いってらっしゃい」

「珍しい。あたしはてっきり私もついて行きますって言うか、アランがついていくのを許さないと思ったんだけどな?」

「今回はいいんです。そうですよね、メアリー?」

「え、ええ。心配しないでもただトイレに行くだけよ」

「ああ、俺にも他意はないぞ」

「もちろん、わかってますよ」

 わかってくれたジェーンに心の中で感謝しつつメアリーと共にコンパートメントの外に出てそこから一両後ろに移動する。メアリーは周りを確認すると口を開いた。

「さっきの追及しないでほしいの。このままだと藪から蛇が飛び出ることになりかねないわ。」

「それはわざわざ俺と二人になってまで言うことか? ジェーンにああ言っときながら生命力が欲しいとかないよな?」

「真面目な話だよ。口調がこれなら信じてくれるよね」

 メアリーの口調が前世のものに変わる。それと同時に表情も真剣そうなものに変わった。

「ん? わかったよ」

「タスさんが言うようにジェーンは間違いなくスリザリンだ」

「彼女がスリザリンだというのと奴隷云々を追求しないというのに何の関係があるんだ?」

「まず、彼女が俺の奴隷だと思うならそれは間違いだ。彼女が言ったように彼女は俺に縛られてるんじゃない。俺に縛らせてるんだよ」

「いや、縛らせてるんだったら縛られてるんだから一緒だろ」

「全然違う。似ているようで真逆なんだよ。俺が縛ってるなら主導権は俺にあるが、縛らせてるのなら主導権は彼女にある」

 なんとなくわかった気がする。主人と奴隷に例えるなら一見ただの主人と奴隷に見えるが、主人に見えるのは主人を演じさせられている奴隷で、奴隷に見えるのは奴隷の演技をしている主人ということか。なんか違う気もするがだいたいあってるだろう。

「あー、大体分かった」

「本当にわかってる? 彼女は本当に怖い。俺なんか足元にも及ばない化け物なんだよ」

「複製は確かにすごいがあんたの魅了のほうがはるかに化け物だろ」

「彼女の本当に怖いところはそこじゃない。どんな手段を使っても目的遂げること、スリザリンのそれだ」

「そうか? 確かにあんたに執着してる彼女には時々畏怖を感じるが基本的にには優しい子じゃないか」

「アランがそう思ってるのがその証拠。彼女の行動はすべて故意だ。彼女はそう思わせられるように演じている」

「じゃあ彼女の言動はすべて嘘なのか?」

「いや、そうじゃない。むしろいつもほぼ本音で話しているし本心からしたいことをしている。俺がそう望んでいるから」

「なら問題ないじゃないか。結局言いなりになってること以外は」

「だからそれは違うんだって。実際に縛り付けられてるのは俺なんだ」

「いや、でもあんたの言うことならなんでも聞いてくれるんだろ? あんたが危険なことをしなければ問題ないな」

「なんでもなんてとんでもないよ。彼女は彼女のしたいようにしているだけ。俺に決定権なんかない。メアリー・スーである俺を手に入れるために俺の言いなりになっているだけだ」

「そんだけあんたが思われてるってことだからいいと思うけどな。あんた中身は男で恋愛対象は女が好きなんだろ? 違うのか?」

「……そのはずだけど」

「ならいいじゃないか、体が女だろうが彼女は関係ないみたいだし」

 ジェーンの中身がどうかは知らんし、ドッペルゲンガーの彼女に性別なんかあるかわからないが。俺にも変身していたしな。

「あんたが彼女の事を嫌いなら別だが嫌いなのか?」

「嫌いじゃない。自分に都合のいいやつを嫌いになる人はあまりいないと思う。少なくとも俺はそうだよ」

「ならなんでそんなに彼女を拒否するんだ」

「彼女が怖いからだよ。自分に都合がよすぎる奴はたいてい詐欺師だ」

「いやまあ……そうだな。でも彼女は違うかもしれないじゃないか」

「仮に違ったとしても俺は彼女が怖いよ。彼女はどんな手を使ってでも目的を遂げる。俺を手に入れるために」

「いいじゃないか。別に」

 化け物同士くっついてくれれば原作の登場人物とくっつくこともない。くっついてくれるのであればそちらのほうが安全である。

「よくないよ。俺は彼女の隣に立てるような器じゃない。なのに彼女は僕を慕っている。もし、彼女が俺に失望しようものならなにをするかわからない。俺には理想を演じ続けられる能力なんかないからね」

「ああ、そういうことか。でも、彼女はそれでもいいんだろう?」

「だろうね。ただそれは彼女は最終的には俺が理想を演じ続けられるようになると思っているからだよ。俺が成長できると勘違いしてる。俺にそんな才能ないのにだ」

「彼女はメアリーのこと天才だって言ってたけど?」

「俺が天才のわけがない。天才っていうのは無限の可能性の中から正解を見つけられるやつのことを言うんだ。ありもしない可能性を考えて正解にたどり着けない俺は凡人以下だよ」

「うーん。今までの話を聞くに俺にはあんたが彼女に拒否されるのを怖がって拒否してるだけにしか思えない。ただ自信がないだけじゃないのか?」

「……否定はできない。ただ、説明したように彼女が怖いということは確かだと思う。だから彼女の行動がエスカレートしないように刺激するのはやめてくれるとうれしい」

「了解。今度から善処はする」

「ありがとう。それと今話したことは内緒にしてほしい」

「わかった」

「ただ、彼女は全部わかってるとは思うけどね」

「だからコンパートメント出るときあんな反応だったんだな。それを考えると確かに怖い」

「彼女の怖さをわかってくれてなによりだわ。先に帰ってていいわよ」

 ジェーンの話が終わったからかメアリーの口調がいつもの口調に戻った。

 このまま彼女と共にコンパートメントに帰るつもりだったが、まだやることがのこっているようである。

「まだ用事でもあるのか?」

「宣言通りにトイレにいってくるだけだわ。アランも行く? 別に一緒に入ってもいいけど。話を聞いてくれたのと内緒にしてくれるお礼に色々してあげるわ」

「いや行かんしいらん。一緒に入るわけないだろ。それにメアリーがジェーンを刺激するなって言ったのに何言ってるんだ」

「冗談よ。私にそんな自信ないしそんなことしたら私もアランもどうなるかわかったものじゃないわ」

「さっきの真面目な流れから言われてもわかりづらい」

「ごめんなさい。けれど、好きな子の夢くらいなら見せてあげられるわ。そういう子いる?」

「それも冗談か?」

「いえ、本気よ。できることはこれくらいしかないの」

「じゃあメアリーで」

「わかったわ。今夜は楽しみにしていて。これでも夢魔だからとびきりの夢を見させてあげるわ」

「いや、冗談だったんだよ」

「でしょうね。違ったらどうしようかと思ったわ」

「すまん。今んところいないから保留で。というか借りでいいぞ」

「私はなんでもはしないわよ。デアのようになんでもやるなんて怖くて言えないわ」

「別にいいさ。俺は先に帰ってるわ」

 メアリーと別れて一人でコンパートメントに戻る。俺のいない間にお菓子がずいぶん空になっている。俺の分のお菓子も一部、空になっているが犯人はデアだろう。

「お帰りー。あれ? メアリーは?」

「ああ俺が先に譲ってもらったんだ」

「遅かったですわね。混んでましたの?」

「ああ、そんなところだ。メアリーもすぐに戻ってくるよ」

 座ろうとする俺にジェーンが小声で耳打ちしてくる。

「……メアリーとの会話は楽しかったですか? それと私は別に怖くないですから安心してください」

「どうしたの?」

「なんでもないですよ。ただ、お菓子を食べた犯人を教えてあげただけです」

「え!? 言わないって約束したじゃん!」

「別にいいよ。甘いものばっかり食べるのは飽きるし、そもそもお金を出したのがタスさんだからな」

 俺は平静を装いデアの隣に座る。ジェーンはやはりメアリーが俺とトイレに立った理由がわかっていた。俺とメアリーがどんな話をするかもわかっていて送り出したのだ。

 つまり、メアリーが言うようにジェーンはスリザリンで間違っていなかった。目的のためには手段を選ばない化け物という認識に間違いはないようだった。

 

*

 

 しばらくするとメアリーも帰ってきた。

 俺は自分のカエルチョコレートを食べるのをすっかり忘れていたのを思い出し食べようとするが中身が空っぽであった。デアが食べてしまったようだ。

 俺も自分の寮を知りたかったのでカードがなんだったかを聞くと「これだったよ」とデアにカードを渡された。

「なになに、アルバス・ダンブルドアは、現在ホグワーツ校校長。近代の魔法使いの中で最も偉大な魔法使いと言われているって。闇の魔法使い、グリデンバルドを破ったこととドラゴンの血液の研究と発見、そしてニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などが有名。趣味は室内楽とボーリング……」

「そうかダンブルドアか。……って俺の寮はどこなんだよ!」

「ダンブルドア先生ってことは校長室ってことー?」

 俺の問いにデアが適当に答える。そんなわけあるわけがない。

「先生は確か、学生時代はグリフィンドールだったはずなのでアラン君も同じかもしれないですね」

「ならアランとタスさんは同じ寮ってことになるわよね」

 ジェーンとメアリーの予想はあり得るものだと思ったが、タスさんは首を横に振り否定した。

「みなさん不正解ですわ。アランの寮は安定しないんですの。他の皆は程度の差こそあれ一番適性がある寮があるのにアランだけどれも変わらないのですわ。だから校長先生にしてみましたの。同じカートにいっぱいあったので一番楽でしたわね」

「エンターテイナーの精神はどうしたんだ」

「ハリー・ポッターもこの汽車でこのカードを当てますし逆にエンターテイメントになるかなと」

「その感覚は俺にはわからん」

「主人公と同じ展開ですわよ?」

「ハリーがここで当てるのは今から行く学校の校長の説明をするためと後の伏線を仕込むためだろ。ダンブルドアも今後の展開も知ってる俺らが当ててもな」

 ハリーはマグルの家で育ってきたため魔法界の事を知らない。物語が進むにつれて徐々に魔法という未知のものに触れていく。なぜこのような道筋になっているか。答えは簡単。魔法使いでない読者と同じ目線にすることによって世界観の説明をスムーズにできるからである。

 ここでダンブルドアのカードを当てたのも読者に彼の説明をするためである。ついでに伏線も仕込まれている。

 しかし、これは二次創作。これを読む奴の大半は原作を読んでいるだろう。よって重要人物のダンブルドアのことくらいはさすがに知っているはずであり、伏線もおぼろげかもしれないが覚えているはずなのでここで説明する意味がない。それは物語がわかる俺もそうであるし、タスさんは可能性を大体把握している。他の奴らも原作を知っているので同様である。

「読者目線で話すなんてやっぱりアランはおもしろいですわね」

「あ、ああ。そうだな」

 別におもしろいことを言ったつもりはなかったので面を食った。口には出さないが、俺よりお前らの方が何百倍おもしろいと思う。

「でも、アランだけ好きなところを選べていいなー。あたしたち全員バラバラだからちょっと寂しいよ」

「組み分けには生徒の意志も反映されるから誰でもある程度は選べるわ。絶対ではないけれどね」

「ならやっぱり全員一緒がいいかな。メアリーたちとはずっと一緒にいるから姉妹みたいなもんだし、アランたちとも折角仲良くなったのにすぐバラバラなのは嫌だからねー」

 幼いころから一緒に過ごしていた彼女たちとは違い、俺とタスさんはそこまで親密ではないと思う。少なくとも俺はそう思っているが彼女からしたらすでに仲良くなったということなのだろう。

「一応デアとメアリーは姉妹じゃないですか。私は完全に他人ですけど」

「メアリーとは血がつながってないからみたいなものって言ったけどあたしは姉妹だと思ってるよー。ずっといっしょだからね。メアリーはどうなの?」

「どうかしら。姉妹というには喧嘩をしなさすぎるように感じるけれど」

「仲良し美人姉妹ってことで」

「自分で言うなよ」

「あたしは別として二人は間違ってないでしょ」

 二人の容姿は理想的である。整いすぎて不自然なくらいに。そしてその姿は瓜二つ、彼女たちは色違いのビスクドールのようだ。

「メアリーとジェーンは瓜二つだし、美人双子姉妹って感じだな」

「私が姿を真似してるから似てるってだけなんですけどね」

 ジェーンは複雑そうな笑みを浮かべた。メアリーと姉妹と言われ、褒められればれば無条件で喜ぶものだと思ったがそういうわけではないらしい。

「まあ、姉妹でも姉妹でなくても折角だからみんな一緒の方が絶対楽しいって」

「ですわよね! 全員が同じ寮になった方が絶対に面白いですわ! なので全員同じ寮に入りましょう!」

 デアの言葉に待ってましたとタスさんが同意する。その反応の速さはこの話をするためにそれぞれに自分が入る寮がどこかを教えたのではないかと思わせるには十分な早さだった。

 ただ、タスさんは反応速度を変えられると言っていたのでそれをしていただけかもしれない。

「もちろん! 二人もそれでいいよね?」

「いいですよ」

「ええ」

「寮の選択は大事なものだと思うんだが二人ともそんな簡単に決めていいのか?」

「別に今決めたわけじゃないですよ。手紙が来る前からホグワーツに行くんだったら一緒の寮に入ろうって話はしてたんです」

「予定通りだから問題ないわ」

「アランも一緒の寮に入ろうよ!」

 物語を壊すオリジナルキャラクターが一か所に集まってくれるならその方が行動が把握しやすい。俺も同じ寮の方が都合がいいだろう。

「折角だしそうしよう」

「じゃあ決定だね。どこの寮にする? あたしたちはハッフルパッフにするつもりだったんだ」

「なんでハッフルパフなんだ?」

「なんでだっけ?」

「なんで本人がわかってないんだよ」

「だって決めたのあたしじゃないし」

「ハッフルパフが一番寛容だからですよ」

「あたしは主人公と同じグリフィンドールがよかったんだけどね」

「ならグリフィンドールがいいですわ。主人公と同じ寮が一番目立てますの」

「それはやめたほうがいい」

「なんでですの?」

 なぜもなにも主人公と同じ寮が彼らと関わる確率が高く、一番物語を壊す危険性が高いからである。しかし、これをそのまま言ったところで「だから面白いのですわ」とか言われかねないのでそのまま言うわけにはいかない。

「アランは目立ちたくないんじゃない?」

「違います。アランさんはスリザリンの方が目立つと言いたいんですよ」

 俺としては原作であまり登場人物が少ないハッフルパフかレイブンクロー、どちらかというとその寛容さから前者にしてほしいところである。

 本当の理由はデアが言う通り、目立たれたくないからだ。しかし、それは言えないので、とりあえずジェーンのに同意しておく。

「ああ、俺もそう思うぞ」

「なんでー?」

「グリフィンドールと対立するスリザリンになった方が目立てるだろ。主人公と同じだと埋もれるからな」

 あくまで後付け、しかし的外れではないと思う。実際、二次創作の主人公がスリザリンであることが多い。他の理由もあるとは思うがそれも理由の一つだろう。グリフィンドールの方が多い気もするし、他の寮のこともあるのでなんの根拠もないのだが。

「みんなと仲良くしたいから対立はしたくないけどなー」

「それならなおさらスリザリンにした方がいいと思いますよ。スリザリンは純血主義なので他の寮とも溝があります。それをなんとかするには内部から変えるのが一番早いんじゃないですか?」

「そうだね、スリザリンに入ってみんなと仲良くしよ!」

「ワタクシもスリザリンでいいですわ」

 スリザリンに入る流れになってしまった。グリフィンドールに入るよりはマシだが他の二つに入る方が主人公たちと関わる確率が圧倒的に下がる。

「スリザリンはやめたほうがいいんじゃないかしら。私たちは誰一人純血ではないし、死喰い人の子供達がいるのだから危ないわ」

 死喰い人とはヴォルデモートの配下である。そいつらの一部は身元を隠しているのだがその子供がスリザリンに入っており、ハリーのライバルのマルフォイがそうである。

「そうですね。さっきはああ言いましたが、私も反対です。私はドッペルゲンガー、一応人間ということになってますが両親は不明ですし、メアリーは夢魔。デアとタスさんは両親とも魔法使いですが、ドラゴンと妖精の血が混じっていますし、アランさんはマグル生まれです」

「そんなワタクシたちがスリザリンになるのがおもしろいんじゃありませんか」

「そうそう、そういうあたしだからこそスリザリンのみんなと仲良くならなきゃいけないんだよ。死喰い人の子供達を死喰い人にしないためにもね」

「危ないというのならホグワーツ自体がこの七年間危ないからな。どうせ危ないのなら敵サイドの行動を把握しやすいスリザリンに入った方がむしろ安全かもしれない」

 イギリスの魔法界一安全というのはなんだったのか不思議なくらいにホグワーツでは事件が起きる。物語の舞台なのだから仕方ないがそれでも毎年事件が起きるのはいかがなものなのだろうか。最もホグワーツ以外の場所の方がさらに危険なので間違ってはいない。

「そうですね。そっちのほうがいいかもしれません」

「私はハッフルパフのほうが平和でいいと思うけれどね。でもそっちでもいいわ」

「なら決定だね!」

 スリザリンで決定してしまった。賛同しているように聞こえることをいったからか俺もスリザリンを望んでいるように思われているようだ。

「俺はハッフルパフがいいと思うぞ」

「スリザリンのほうが目立てますわ!」

「ハッフルパフのみんなとは別の寮でも仲良くなれそうだからなー」

「私はハッフルパフでもいいですが、みなさんがスリザリンがいいのならそれでいいです。一番安全ですし」

「安全かもしれないだけで一番安全とは限らないぞ。メアリーはハッフルパフがいいんだよな?」

「私はどっちでもいいわよ。ハッフルパフが一番平和そうってだけで。危険というなら私たちのほうが危険かもしれないし、大丈夫だと思うわ」

 お前らの存在がなにより一番危険だからハッフルパフに入りたいんだ……とは言えない。

「もうスリザリンでもいいや」

「今度こそスリザリンで決定だね」

「でも、全員スリザリンに入れるのか?」

「ワタクシが調整しますので安心してくださいな。メアリーもいますしね」

「調整ってあの変な儀式をまたやるってことだよな?」

「そうですわ!」

 杖を選ぶときにやった変な屈伸をまたやるつもりらしい。それは逆に安心できない。

「なになに儀式って」

「今は秘密ですの。組み分けのときにやるので楽しみにしててほしいですわ」

「気になるなー。でもわかった。楽しみにしてるね」

 タスさんがやるであろう奇行を思い頭が痛くなった。

 気分を紛らわせるためにふと窓に目をやると今まで畑ばかりだった風景が森や川、丘といったもの変わっている。

「あっ」

 まずいまずいまずい。ということはそろそろあのキャラクターがやってくる! 主要人物と怪物をあわせるわけにはいかない!

「お前ら、ちょっと遠くに行かないか!」

「いきなりなんでー?」

 デアが俺の提案に疑問を持ったところでコンパートメントがノックされてしまう。ああ、間に合わなかった……。物語を守るとはなんだったのか……。

「ごめん。僕のヒキガエルを見なかった? いつも僕から逃げてばっかりなんだけど、またいなくなっちゃった。……ってドラゴン?」

 現れたのは太り気味な泣き顔の男の子。ハリーと同じグリフィンドールに入ることになるネビル・ロングボトムであろう男の子だ。

 原作でも隣のコンパートメントにいるハリーに同じような事を言う。位置的にこの後に言うのだろう。結局ヒキガエルはこの列車がでは見つからない。列車を降りた後にホグワーツへ向かう途中で見つかることになる。原作では今の時間どこにいたかは描写されていないのでどこにいるのかは検討が付かない。

 怪物たちとあってしまったならしかたがない。できるだけ関わらないようにするしかない。

 ドラゴンと言われたデアが最初に反応する。

「そう、ドラゴン!」

「あっ、ごめん。びっくりしちゃって」

「いいよいいよそれよりカエルだよね。あたしは見てないなー」

「すまない。俺も見てないな」

 他のやつらも見ていなかったようでそれぞれが否定する。

「そっか。もし見かけたら教えてね」

「あたしも一緒に探すよ」

 おい、なんてこと言いやがる。どうせホグワーツにつけば見つかるの知ってるだろ。

「ありがとう。でも大丈夫。もうすでに一人手伝ってくれている人がいるから」

「手伝ってもらえばいいじゃない。探し物をするときは人が多い方がいいわ」

 ああ、せっかく手伝わなくていい流れだったのに。

 コンパートメントの外から入ってきたのはフサフサの茶色い髪の毛をした女の子。彼女が手伝ってくれている人。すでに新調のホグワーツ指定のローブに着替えている彼女はハーマイオニー・グレンジャー。彼女もハリーとロンと共に主役の三人組を務める重要人物の一人である。彼女はマグル生まれでありながら学年首席であり、三人組の頭脳を担当する。

 特徴である前歯がちょっと大きいところが彼女と一致しており、原作でもネビルのカエルを探していたので間違いはないだろう。

 他人に協力するその姿は素晴らしいものだが今はやめてほしい。

「タスさんも手伝って! タスさんは予言の才能があるから百人力だよ!」

「そうなの! 君が手伝ってくれるとうれしいよ」

「面白そうですし、いいですわ。でも見つかる確率はゼロですわよ?」

「そんなー」

 タスさんの無慈悲な宣言にネビルが今にも泣きそうな顔になる。

「だからって探さない理由にはならないよ。困っている人がいたら助けないと! それに確率がゼロだからって絶対見つからないわけじゃない」

「いえ、絶対に見つからないから見つかる確率がゼロなんですわ。でも、それで見つけたらとっても面白いので協力しますの。ワタクシが見落としている可能性もありますし」

「絶対見つけるからね! アランも一緒に探そうよ」

「……別にかまわないぞ」

 原作の重要人物に接触してしまうが困るがここで断るほうが不自然で目立ってしまう。それなら俺も一緒に探すことにして余計な事をしないよう見張ったほうがマシという結論を出した。力づくで止めるとか絶対ムリだしな。まあ、見つかる確率がゼロだとあのタスさんが言ってるんだ。結果は変わらんだろう。

「私も協力するわ」

「いえ、駄目です。すみませんが私と髪の白い彼女、メアリーは用事があるので」

「なにかあったかしら」

「メアリーは昼食がまだですよね」

「いや、ガッツリ食べてたでしょう。なんならお菓子もいっぱい食べたわ」

「メアリーはまだ主食を食べていません。丁度二人になれるのなら都合がいいんじゃないですか?」

「うん、折角二人になれるんだしいいんじゃないかな。カエル探しはあたしたちに任せてよ!」

「大丈夫、私も探すわ。昼食は食べたしお菓子もいっぱい食べたから問題ないわよ」

「あくまでそれらは代わり、ちゃんと主食を食べないと駄目です」

「そうだよ。倒れる前にちゃんと摂取しないと」

「もしかしてあなた吸血鬼? 本では読んだけど実物は初めて見るわ! 本当ににんにくが嫌いなの!? 家主に招かれないと家に入れないって本当!?」

 ハーマイオニーがうれしそうに知識を披露する。マグル生まれだが入学前に本を読み知識を深めているのでその辺の同学年の魔法使いより彼女は魔法界について詳しい。

「吸血鬼ではないの。一応他の生き物に関するものが主食だけれど。だから聞かれてもわからないわ」

「吸血鬼以外に人間の姿をしていて他の生き物に関するものが主食の生き物。……わからないわ」

「吸血鬼と似たようなものよ。でも我慢できるわ」

「いやだめよ。そういう種族ならちゃんと食べなきゃ体に悪いわ」

「ありがとうございます。ということで私たちはコンパートメントに残ります」

「だから大丈夫よ。私も探すわ」

「僕のために我慢させるなんて悪いよ。しっかり食べてほしいな」

「いや、本当に大丈夫よ。アラン、わかってるわよね」

 彼女が言っているのはジェーンの行動がエスカレートしないように刺激するのはやめるという話だろう。わかってるに決まっている。

 今は彼女の言うことを否定するほうが強引な手段を使わせるかもしれないことになり危険だろう。よって彼女の言うようにメアリーには生命力を摂取してもらうことにする。決して助けるのが面倒だったわけではない。

「ああ、カエルは俺たちが探すから心配しないでくれ。さっそく行こう」

「裏切られたわ」

「人聞きが悪い。ちゃんと約束通りだ」

「はい、ありがとうございます」

 メアリーはカエルが嫌いらしいので丁度良かっただろう。荷物をまとめて探しに行く準備をする。

「じゃあ、行くか。そういえば名前言ってなかったな。俺はアラン・スミシー」

「僕はネビル・ロングボトム」

「私はハーマイオニー・グレンジャーよ」

 やはりネビルとハーマイオニーで間違いはなかった。

 他の奴らもそれぞれ名前を言い自己紹介が終わる。恨めしそうに俺を見るメアリーをジェーンと共にコンパートメントに残して通路に出た。

 ハーマイオニーたちは隣のハリーのコンパートメントに向かう。タスさんたちが余計なことをしないよう誘導し、俺らは逆方向を探すことになった。

 

*

 

 ネビルの蛙はやはり見つからない。そろそろ到着時刻ということで制服へと着替えていない俺たちはメアリーたちのいるコンパートメントに戻ってきていた。ネビルは「いつもはいつのまにか帰ってきてるから大丈夫だよ」と不安そうに言っていたが今回もそのパターンなので安心していてほしい。

 コンパートメントに残った二人はすでに制服に着替えている。

「あたしの身体能力でも見つからないなんておかしいよ!」

「だから確率がゼロだって言ったのですわ」

「タスさんでも見つけられないの?」

「ワタクシは確率が限りなくゼロに近いものを一にしたり一に近いものをゼロにしたりすることはできるのですけれど、ゼロを一にしたり一をゼロにしたりすることはできないんですの」

「うーん……難しくてわかんないや」

「簡単に言うと不可能なことはできないってことですわ」

「へー、でもあたしだって絶対に諦めない。すぐに着替えてまた探すよ」

「そうするといいですの。ワタクシもタイムアップまでは挑戦しますわ。それで、まだ少し時間もありますし、丁度あとちょっとでハリーのコンパートメントにマルフォイ達が来ますの。今のうちにあいさつしておきません?」

「いや、しないけど。さっさと着替えようぜ」

 これから隣のコンパートメントで重要人物いざこざが起きる。そんななかにオリキャラを放り込むなんて危険極まりない行為を見過ごすわけにはいかない。

「えー!? 折角だから会いたい! あたしもう我慢できないよ!」

「私は気が進まないけれど、マルフォイ達とはどうせ後でルームメイトになるのだから今のうちにコンタクトを取っておくべきだわ。ハリー達ともスリザリンになったらマイナスイメージが付いてしまうしここで好感度を上げておいた方だいいと思うの」

「俺もそうは思うが、到着時刻が迫ってるからおとなしくしておこうぜ」

 実際はまったく思っていないがな。なぜわざわざ主人公とコンタクトを取らんといかんのだ。しかし、ジェーンに反対される。

「だからです。私たちはもう着替えてますがみなさんはまだですよね。まだこんな年齢ですけど一応あなた以外は女子なので別々に着替えたほうがいいんじゃないですか?」

「いや、だったら中身男の私はなんで一緒に着替えさせられたの……私も同じこと言ったのに……」

「メアリーはメアリーでしょう? 問題ないですけど」

 メアリーは納得できないと首を降っている。

「でも、アランはメアリーじゃないですよね?」

「俺には言ってる意味がわからんが、もちろん別に着替えるつもりだ」

「そうなると隣でハリーたちと着替えてもらうのがいいかなと思うんです」

「トイレで着替えるから別に問題ない」

「メアリーもさっきそう言いましたが、よくないですよ。トイレは用を足す人が使う物です」

「それはそうなんだが」

「トイレいきたいのに使えなかったら困っちゃうよねー。まあ、私は一緒に着替えてもいいよー。全裸になるわけでもあるまいし」

「ワタクシも問題ないですわ。見られて困るような体はしておりませんの」

「いや、駄目だろ」

 一般人と感覚がずれていてこいつらの感覚はわからない。体の年齢でもある程度恥ずかしいものだと思うし、精神年齢であればなおさらだと思うのだが違うらしい。むしろ俺がガキに見えてるからである可能性もあるか。とはいえ俺が嫌なのでおとなしく一人であってこよう。

「ただ許可を取るのに全員で行く必要はないだろ。俺だけで行ってくる」

 俺はそう言ってさっさと一人隣のコンパートメントへ向かう。丁度その時マルフォイ達だと思われる少年三人がハリーたちのコンパートメントへ入っていった。

 俺が入ろうとするとすでにマルフォイであろう青白い顔をした少年がハリーであろう眼鏡の少年に話しかけていた。

「ほんとうかい? このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって話は。汽車の中じゃその話で持ち切りなんだ。それじゃ、君なのか?」

「そうだよ」

「そうだったのか。いや生き残った男の子に会えるなんて幸運な話だ」

 ハリーが答えたタイミングで俺が偶然を装いコンパートメントに入っていくとマルフォイが訝しげな顔をする。

「なんなんだお前たちは」

「お前たち? 俺は一人だが」

「何を言っている。後ろに四人もいるじゃないか」

 後ろを振り向くと満面の笑みを浮かべたデアとタスさん、申し訳なさそうなメアリーとジェーンが立っていた。俺が一人で来た意味がまったくもってねえ。申し訳無さそうにするなら止めておいてくれよ……。

「なんで付いてきてるんだよ!」

「やっぱりハリーに会いたくなっちゃって」

「サプライズですわ」

「すみません。一応止めたんですけど」

「でも、仲良くできるのならいいんじゃないかしら」

 来てしまったものはもう仕方がない。原作から大きく外れないようにハリー達とマルフォイ達の好感度を上げた方が有意義であると思いたい。

「俺はアラン・スミシー見てのとおり周りが女子ばかりで着替える場所がない。それでここで一緒に着替えさせてもらいたかったんだ。見たところ君たちもまだ着替えてないようだし」

「そうか。まだ僕らの自己紹介が終わってないんだ。後にしてくれるかい」

「話を中断させて悪かった。続けてくれ」

「こいつはクラッブ。こっちはゴイルさ」

 マルフォイは二人の取り巻きを連れている。どちらもガッチリした体格をしており、親は死喰い人である。

「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」

 マルフォイの名前を聞いた赤毛でそばかすの少年、ロンが笑い、それにつられたメアリーも笑ってしまう。そしてそろって軽く咳払いをして誤魔化した。

「僕の名前が変だとでも?」

「いえ、違いますよ。メアリーはこう思ったんです。生き残った男の子と由緒正しい魔法使いの家の子が一緒にいるのがなんだかとても面白いなと。マルフォイ家といえば代々続く純血の家系でしょう?」

「ほう、君たちはなにが正しいかわかっているようだ。君名前は?」

「ジェーンと言います」

「ジェーンとメアリーか。覚えておこう。見目麗しい双子の姉妹がいるとね」

 あーあ、原作キャラに見目麗しいとか言われちゃった。このままちやほやされて恋愛関係になるのか……終わったな。

 そのはずだったが、メアリーはというと無言でジェーンの陰に隠れてしまった。彼女はマルフォイのことが苦手らしい。これなら大丈夫か。そもそも中身男だしな。しかし、その表情はうれしそうににやけている。褒められてうれしかったのだろうか。よくわからない。

 ジェーンが上手く誤魔化し、マルフォイの好感度を上げることに成功した。しかし、代わりにハリー達の好感度が下がったのは二人の苦虫をかみつぶしたような表情を見ればわかる。

「それでそっちの君。なにがおかしかったんだ? 君が誰だか聞く必要もない。パパが言ってたよ。ウィーズリー家は赤毛でそばかすで貧乏だと。ポッターくん。そのうち家柄のいい魔法族がわかってくる。そうでない者とは付き合わないほうがいい。僕が教えてあげよう」

 マルフォイはロンの苗字を当てた後にハリーへ握手を求めた。しかしそれに彼は応じず冷たく言い放つ。

「見分けるのは自分できると思うよ。ご親切にどうもありがとう」

「僕ならもう少し気を付けるがね。もう少し礼儀を心得ないと君も両親と同じ道を辿ることにになる。君の両親も何が自分の身のためになるかを知らなかったようだ。ウィーズリー家やハグリッドのような下等な連中といると君もすぐに同類になってしまうだろうね」

 マルフォイは真っ赤にこそなっていないが頬がうっすらと赤くなっている。相当お怒りのようだ。

 一方ハリー達も立ち上がった。ロンは顔が真っ赤にして叫ぶ。

「もういっぺん言ってみろ!」

「へえ、僕たちとやるつもりかい?」

「今すぐに出でていかないなら」

 ハリーがマルフォイの挑発に乗る。しかし、原作であればロンのペットであるネズミにゴイルが指を噛まれることでマルフォイ達が去るので丸く収まるはずだ。

「出ていく気分じゃないな。君たちもそうだろう? なにせここにはまだ食べるものが有り余っているようだし」

 ゴイルがロンのそばのカエルチョコレートを勝手に食べようと手を伸ばした。その瞬間、彼が悲鳴をあげる。ネズミが指にかみついたのだ。

 必死に手を振り回してネズミを指から離そうとする。しかし、なかなか振りほどくことができない。

「インペディメンタ」

 タスさんがネズミに行動を妨害する呪文をかけた。行動が阻害されたネズミは動きを止めゴイルの足元へと落ちる。

「エピスキー。フェルーラ」

 エピスキーは応急処置をする呪文、フェルーラは包帯を巻く呪文である。

「これで大丈夫ですの」

「ああ、助かった。よかったなゴイル」

「かなり歯が食い込んでいるように見えたんだけど本当に大丈夫?」

「うちのゴイルは丈夫だからな。トカゲなどに心配してもらわなくて結構」

「トカゲじゃなくてドラゴンだよ?」

「ふん。皮肉も通じないくらい頭がよくないらしい。まったく、こんなのを入れるなどホグワーツも落ちたものだ。メアリーとジェーン、それに……」

「タスさんと呼んでくださいな」

「メアリーとジェーン、それにタスさん。君たちも下等生物とは付き合わない方がいい」

 マルフォイはそう言うと二人のお供を連れてコンパートメントからそそくさと去って行った。彼らが離れたのを確認したメアリーが口を開く。

「ドラゴンは下等生物じゃない気がするわ。どちらかというと私のほうが下級だしそうなんじゃないかしら」

「メアリーは自分を下げて褒めるのをやめた方がいいです。ただ、ドラゴンが下等生物ではないのはそうですよね。知力が高い種もいますし、その力は熟練の魔法使いをはるかに上回ります」

「二人ともありがとう。でも、あたしは全然気にしてないから大丈夫。頭が悪いのは本当だしねー」

 デアは罵倒されたのにもかかわらず能天気に笑ってる。これを見るに精神面は案外強いのかもしれない。

「楽しそうなところ悪いけど、うちのスキャバーズになにしたんだよ! ちっとも動かないじゃないか!」

「妨害の呪文をかけただけですわ。命に別状がないどころか外傷もないはずですの。そろそろ効果がとけるころですわ。説明せずに呪文をかけてしまってごめんなさいね」

 タスさんが謝りつつ、足元に落ちていたロンのペットのネズミであるスキャバーズを手渡しする。ロンはそれをひったくるように受け取った。

「どうも。それで、よろしければ、着替えるから出て行ってくれないかな」

「ああ、それでその話なんだが俺もここで着替えていいか?」

「わざわざここで着替える必要があるのかい? 自分の所で着替えればいいだろ」

「それがそういうわけにはいかない。さっき言ったが周りが女子ばかりなんだよ」

「それは自慢?」

「ならよかったんだがな。いや、本当に、マジな話で。それならどれだけよかったことか」

 こいつらに囲まれているのでなければそれは自慢だったのかもしれないが、残念ながら周りにいるのは化け物だけである。というかさっさと彼らに干渉するのをやめてここから離れてほしい。

「エンターテイメント不足ですの!? ならもっと楽しませてあげますわ!」

「迷惑かけちゃってるならごめんね。言ってくれれば直す努力はするよ」

「私はともかくメアリーのどこに不満があるんですか?」

「いえ、不満しかないと思うのだけれど」

「この子たちのどこに不満があるっていうんだ」

「ほぼ全部なんだが否定し続けるのもいけすかないだろうし、もういいや。自慢でもなんでもいいからここで着替えさせてくれ! 頼む!」

 この返答自体もいけすかないかもしれないがなりふりを構っている余裕はない。スペースがないのでできないが、必要とあれば土下座くらいなら何回でもやってやる。俺が必死に頼んでいるとロンの横にいたハリーが助け舟を出してくれる。さすが主人公、やっぱ頼れるぜ。

「ここまで頼んでるんだしいいんじゃない?」

「うーん。そうだね。ここで着替えていいよ」

「助かる。じゃあ着替え持ってくるわ」

「えーもう終わり? ハリーともっと話したいな」

「ハリーはここに来るまでにも人に囲まれているんですよ。このあたりで帰りましょう」

「そうだよね。じゃあまた後でねー」

「失礼しました」

「またすぐ会うと思いますが、今はこれくらいで失礼しますわ」

「失礼するわ」

 一旦自分たちのところへ戻ろうとコンパートメントを出る。するとハーマイオニーとばったり出くわした。

「誰かの悲鳴が聞こえたのだけれど大丈夫だった?」

「ああ、大事ではなかったから心配するな」

「でも、一応見てくるわ。あと、カエル探しを手伝ってくれてありがとう」

「見つけられなくてごめんね」

「手伝ってくれただけでいいのよ。他の人は協力してくれなかったの」

「困っている人がいたら助けるのは当然だよ」

「私とメアリーがもう少し探します。私たちはもう着替え終わっているので到着までは協力しますよ」

「ええ、どうせコンパートメントにいることはできないし協力するわ」

「あなたたちのコンパートメントでなにか起きたの?」

「いえ、そういうわけじゃないのだけれど」

「なのにコンパートメントにいられないの?」

「私だけよ。ちょっと事情があるの」

「そうなの。じゃあ私は見てくるから」

「ああ、またホグワーツでな」

 コンパートメントへ戻り、お菓子をまとめて自分の荷物を持つ。ハリー達のコンパートメントへ入るとすでに二人は上着を脱いでいた。

 ハリーが俺に気づき声をかける。一方ロンは俺を意図的に無視しているようだ。

「先に着替えてるけどいいよね。えっと……アラン」

「ああ、アランでいいぞ。それに別に俺に合わせなくても構わない」

「ねえ、君もマルフォイみたいに純血が偉いと思ってるの?」

「そんなことはないが」

 俺は純血主義ではない。マグル生まれで純血主義とかどうこじらせたらそうなるんだ。服を着替えながら俺が否定すると今まで無視していたロンがびっくり仰天すると俺に話しかけた。

「そうだったのかい!? ごめん。僕、てっきり君もそうなのかと」

「俺はマグル生まれだ」

「僕も自分が魔法使いだなんて思ってなかったから同じようなものなんだ。マグル生まれならアランは大丈夫だね」

「いや、アランがそうでないとしても他の連中も同じとは限らない」

「他の連中? ああ、あいつらか。あいつらもそんなこと思っていないぞ。全員純血の魔法使いじゃないしな」

 純血の魔法使いでないどころか全員人間ですらない血が混じっているのだが、外見ですぐわかるのはデアだけである。

「タスって子は魔法が上手かったし純血だと思ったんだけど違うんだね」

「純血だからって魔法が上手いわけじゃないよ。なら僕だってもっとできるはず……」

「ロンは純血なのに純血主義じゃないんだな。あとタスさんはタスさんって言ってくれって言うと思うぞ」

「なんで敬称つけなきゃいないんだ。同い年だろ」

「さんは敬称なんじゃなくてそれを含めてニックネームなんだと」

「う、うん? どういうこと?」

「タスって名前じゃないんだ。わかった。今度からタスさんって呼ぶよ」

「僕はよくわからないけどまあいいや。それより、僕の家族は純血がどうこうなんてくだらないって言ってるよ」

「そうだな。俺もそう思うよ」

「誤解しててごめん。でも、あの双子の姉妹が純血がどうのこうのって言ってたから勘違いしてもしょうがないだろ?」

「あれは演技だ。そしてあの二人は双子じゃなくて赤の他人」

「あんまり似てるから双子だとばかり。僕の兄も双子なんだ。六人兄弟でさらに上に三人いて僕の下は妹だけさ」

 知ってたとは言えないので適当に相槌を打ち話を戻す。

「でも、俺らが純血主義じゃないってデアとつるんでるのを見ればわかると思うんだが?」

「確かにそうだったね。彼女はリザードマンかい? 本物は初めて見たよ」

「リザードマン? 本人がドラゴンだって言ってなかったか。それにマルフォイだってドラゴンだと思ってトカゲと言ってたみたいだったしな」

「マーリンの髭! 本当にドラゴンだったなんて。マルフォイが勘違いしてるんだと思ってたよ」

「そのマーリンの髭ってなに?」

 ハリーが聞きなれないマーリンの髭という単語に反応した。

「驚いたときに言う言葉さ。マグルの間では使わないのかい?」

「使わないよ。それになんでドラゴンくらいでそんなに驚いてるの? 別に魔法界ではそれくらい珍しくないんだろう?」

「そりゃ、普通のドラゴンならいるけどさ。リザードマンだってそうそう人前には出てこないっていうのに人型のドラゴンなんて……」

 原作にはリザードマンの記述すらなく人型のドラゴンの情報もなかったのでこの世界でどんな扱いなのかがわかっていなかった。しかし、ロンの反応によって珍しいものということがよくわかった。これでは他の奴らも正体がばれるとまずい可能性がある。できるだけ隠しておいたほうがいいだろう。なによりもこの世界のためにも頼むぞ怪物たち! ……俺がなんとかしなきゃいけないんだろうな。……無理じゃね?

 着替えが終わりハリーたちと話をして時間をつぶしていると車内アナウンスが流れた。

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」

「さすがにあいつらも着替え終わっているだろうし俺は自分のところに戻るよ」

「そうかい。じゃあまた後で」

「同じ寮になれるといいね」

「そうだな」

 絶対同じ寮にはならないのだが、一応そう返してあいつらのいるコンパートメントへ戻る。ハリー達と仲良くなるという当初の目的は果たせたようだし問題はないだろう。

 俺が戻った時点で列車はそのスピードを徐々に落としていた。あたふたしながらお菓子をまとめているメアリーとそれを手伝うジェーン、まだお菓子を食べているデア、いつのまにか完全に支度を済ませていたタスさんを見ながら完全に列車が止まるのを待つ。通路はすでに待ちきれない生徒でいっぱいになっている。

 そしてついに停車し物語の舞台、ホグワーツ魔法魔術学校へと到着した。




ようやく主人公たちに会え、ホグワーツにも到着しました。

怪物たちの組分けですが、グリフィンドールは革新、スリザリンは保守、レイブンクローは内向、ハッフルパフは外向と某サイトを参考に考えているため原作とはずれが生じている可能性があります。

次回はついにホグワーツです。アランくんは怪物たちの魔の手からホグワーツを守れるのでしょうか……。
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