やがて僕は荒潮に呑まれる   作:ANMC

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 呉第4鎮守府に着任した朝潮を待ち受けていた者は、姉妹艦の歓迎だった


歓迎会

先ほど話されたtype-γの事は一般提督や艦娘に話すと軍法会議のうえ解体射殺もあり得るので、この鎮守府ではその時に出撃していた艦娘と任務娘以外は知らない。事実を知らない人間の中には、戦闘中に失神した司令官も例外ではなく、彼等は朝潮が艤装の整備不良が原因で右腕を欠損して、療養のためにほかの泊地に送られたと信じている。

 

「だから、朝潮ちゃんも本当のことを言っちゃだめよ。……本当は熊本大将に朝潮ちゃんが来る前に話しておいてくれると、楽だし、当然そうしてくれると思っていたんだけどねぇ~」

 

 荒潮は嘆息して目線を明後日の方向に向けている。熊本司令官が舌足らずで、十分な説明なしで物事を行う人物であることは、わたしも数時間前身をもって体験せられていたのであった。「……もしや、先ほどの情報の出どころは熊本大将なの?」と、わたしは怪訝そうな表情で聞き、荒潮は

 

「言いたい事は分かるけれど、一応あの人、階級は高いから軍内部で秘匿されているような事を知っているし、大将本人ではなく秘書艦の霞ちゃんから聞いたから重要な情報が抜けているなんてことはないでしょう」

 

 荒潮の言葉に、それなら安心だね。とわたしが答えると、彼女は深くため息をついた。

 

「朝潮姉さんの中で大将の評価がどうなっているのかは、大体検討がついたけれど、あまり周りの人にそんな事を言っちゃだめよ」

 

とは言ったものの、彼女のこの反論は、私の思っていることを荒潮自身も思っているという証明であり、言わない方がいいことである。そんな彼女のために、わたしは姉としてこの格言を送ることにした。

 

「わかっているよ。かの中世の文豪ゲーテは言いました。(言っていない)沈黙は金なり(トーマス・カーライル)沈黙することは時として金と同じ価値があると言う事です」

 

「なんか言ってそうだけれど、たぶん言っていないんでしょう?」

 

 荒潮の言葉に、わたしは自信をもって肯定し、彼女はさらに深いため息をついた。

 

 

 

 昨晩の会話の後、他愛の会話を数時間程続けたと記憶しているが、わたしはどうやら会話の最中に眠ってしまったらしく、朝の働かない頭を動かし状況を整理してみることにした。

 

 1つ目、わたしは前の朝潮の代わりに連れてこられた朝潮である。

 

 2つ目、前の朝潮を倒した深海棲艦は特殊で、その時の第一艦隊のメンバー以外がいるところでは話してはならない。(破ると銃殺)

 

 3つ目、前の朝潮と共に食われた司令官の魂の一部を回収する事が私に課せられた使命で、それができるのは今のところわたししかいない。

 

 4つ目、真偽は不明。おそらく、わたしの知らない情報を隠している可能性がある。例えば、司令官の魂を回収する過程で、その時に前の朝潮の魂も回収できるとして、彼女の艤装と同型の体を持つわたしが前の朝潮に乗っ取られるのではないか。

 

 荒潮がわたしの体を使って、疑似的に前の朝潮を蘇らせようとしているのではないだろうか。司令官の魂を戻すだけならば、ほかの艦娘でもできる。しかし、艦娘を蘇らせるにはその艦娘と同型の艦娘が必要だろう。

 

 となると、熊本大将が彼女らに一般には秘匿された情報を公開した理由も説明がつく。沈んだ艦娘を同型艦を使ってサルベージする方法が確立すれば、それを発見した提督として、名誉や富が手に入る。彼の別れ際に行ったセリフの縁があればまた会おうとは、サルベージが成功したら、わたしを解剖でもして、サルベージの方法を確立するための研究材料にするのだろう。

 

 そう言った陰謀に大将が絡んでいるとなれば、その時の第一艦隊のメンバーを発見しても、真偽を聞く事は出来ないだろう。おそらく、わたしに出来る最善の策はサボタージュを行い、朝潮の艤装がわたしにうまく使いこなせない演技をして、異動させられること。これが、生き残るためには必須だろう。……駄目だ。

 

「だめ。駄目よ、わたし。中世の文豪ゲーテは言いました。(言っていない)わたしは生まれた時から朝潮だった。せめて朝潮のまま死なせて欲しい」

 

 命惜しさに自分を裏切る。それはわたしには出来ない事だった。

 

「中世の文豪ゲーテ? その人、朝潮姉さんを知っていたのですかぁ? 朝潮姉さん!! おはようございます!! 今日もアゲアゲで行きましょう!!」

 

 わたしが自分を裏切れないでいると、背後からやけにテンションの高い声が聞こえてきた。堀の深い帽子をくるくると回しながら話しかけて来たツインテールの少女は、朝潮型駆逐艦2番型、大潮型の艦娘である。

 

「そう、ゲーテはすべてのことを言ったといわれる人物で、わたしの事もおそらく言及した事があるはずです。なんせ、わたしは朝潮ですからね」

 

 えっへんと、わたしが胸を張りながら言うと、彼女は帽子をくるりんと回しながら被った後、わたしのベッドにダイブした。わたしは一瞬だけ呆気に取られていたが、すぐにベッドにダイブして、彼女の胴を足でがっちりと固定した後、くすぐり攻撃を開始したのである。

 

「アハハハ、朝潮姉さん。何するんですかぁ!!」

 

「これが朝潮示現流の一つ、こちょこちょくすぐり拳です!! 中世の文豪であるゲーテは言いました。(言っていない)獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす(陸九淵)。妹に使うには過ぎたる技ですが、妹に後れを取ってしまう訳には行けません。こちょこちょこちょ」

 

 わたしの攻撃が効いたのか、彼女は悲鳴を上げながら逃れようとするが、完全に決まった朝潮示現流は簡単には逃げ出せない。彼女はわたしの足をタップして、降参、降参しますからやめて下さい。と敗北を認めた。わたしの完全勝利である。

 

「しかし、なんで大潮は私の部屋に来たのですか? 挨拶に来たというだけならば、殊勝な心掛けで感心しますが、昨日から色々なことが起こりすぎていて、少しナーバスになっていましてね」

 

 わたしがそう尋ねると、大潮は私の腕の中からぴょんと飛び上がり、「はわわ、そうでした。朝潮姉さんを連れてくるようにみんなに言われたんでした。朝潮姉さんついて来てください」と言いながら、わたしの手を引いて全力疾走で部屋を飛び出した。

 

 全力疾走と言うのは、わたしの感覚であり、大潮は余裕そうでたまに「えへへ」と笑い、すれ違う艦娘に会釈や挨拶をしながら走っているので、おそらく彼女もかなりの練度を誇っている艦娘なのだろう。

 

「大潮。少し聞いてもいいですか?」

 

「なんでしょう」

 

「私の前の朝潮ですが、今の大潮と比べて、どちらが強かったんですか?」

 

「前の朝潮姐さんですか? 姉さんは駆逐艦の中では荒潮ちゃんに次ぐナンバー2で、わたしよりもずっと強かったですよ。姉さんが怪我で治療のために前線を退いてからは、他の艦娘の練度を重点的に上げる必要もあると、方針が変わってから私も出撃が少し多くなりましたが、まだまだ姉さんには敵いません」

 

 彼女の声色は少し悲しそうだった。当然だろう。彼女が本当の事を聞いたとしたら、一体どうなってしまうのだろう。荒潮のように泣き出しヒステリックに喚いてしまうだろうか。しかし、真実を知らないでいる事とどちらが幸福だろうか。

 

「みんなぁ!! 朝潮姉さんを連れてきましたぁ!!」

 

 大潮に連れられ、鎮守府の中を駆け、2-5と書かれた教室の中に入った。中には、司令官と霞と霰と……満潮が出迎えてくれた。

 

 朝潮型駆逐艦10番艦の霰は大潮と同じような帽子を被っている駆逐艦であるが、彼女とは違ってなんとなくクールな印象を受ける艦娘である。霞は熊本提督で出てきた艦と同型の艦娘であるが、なんとなく彼女よりも幼そうな印象を受ける。……そして、朝潮型3番艦は頭にフレンチクルーラーをつけていた。

 

 もう一度説明する。頭にフレンチクルーラーをつけた艦娘である。フレンチクルーラーっぽい髪ではなく、フレンチクルーラーを二つ乗っけていたのである。……わたしはギャグか誰かの悪戯か判断することは出来なかったが、他の艦娘も司令官も指摘したり、吹き出したりしていなかったので、おそらく高等なギャグなのだろう。

 

「こんにちはみんな。わたしは朝潮型駆逐艦ネームシップ、朝潮。早く艦隊になじんで、皆さんの役に立てるよう頑張る覚悟です」

 

 わたしがそう言って挨拶をすると、彼女たちは暖かく迎え入れてくれた。

 

「「着艦おめでとう朝潮姉さん。これからよろしく」」

 

「ありがとう。……そういえば、荒潮は? 昨日いたはずですよね? もしかして休養か何かですか?」

 

「この集まりは、しばらくの間忙しくて姉妹艦と顔合わせも満足に出来ないだろうからと、司令官が気を利かせて用意してくれたのよ。一応、ジュースとかお菓子もあるわ。それで、荒潮は……昨日悪戯をしたせいで、謹慎中よ。まったく、こんな時に……」

 

 わたしの疑問には霞が答えてくれた。彼女は司令官の事を熊本大将の霞とは違いクズとか言わないようである。無論、わたしがいるから自重しているかもしれないが、

 

「まったく、荒潮にも困ったものね。その前は、どんな悪戯をしたんだっけ? 確か阿武隈さんの髪型の一部をチュロスにすり変えたんだっけ? まあ、髪を食べ物にすり替えられて、気づかないなんて阿武隈さんも相当抜けているけれどね」

 

 満潮のその言葉を聞いて、わたしは満潮のフレンチクルーラーは彼女なりの高度なジョークであると判断した。わたしは満潮に近付いて彼女の肩に手を置いた。

 

「何よ……ごめんなさい。少しだけ言い過ぎたわ。阿武隈さんは疲れていたのよ。だから、普段なら気づく事でも……」

 

「満潮、中世の文豪ゲーテは言いました(言っていない)。僕の顔をお食べ」

 

「そんなア○○○○ンのような事、言っていないでしょうその人!! いや、知らないけれど?」

 

「わたしは、満潮のア○○○○ンスピリッツを応援していますよ」そう言って、わたしは彼女の頭からフレンチクルーラーをもぎ取り、一口食べた後、「その体を張った自虐ネタ。御見それしました」と言った。

 

 満潮は一瞬呆気に取られていた。そして、おそらく彼女の後の行動を鑑みるに、先ほどの言動を頭の中で反芻しながら、彼女の頭に残っているもう一つのフレンチクルーラーを触った後、部屋の隅で壁を向きながら体育すわりをした。

 

「大潮もフレンチクルーラーを頂きます。アゲアゲです」

 

 大潮はそんな満潮の頭からフレンチクルーラーをもぎ取り、むしゃむしゃと食べている。驚いたことに、この場にいる私以外の全員が満潮のフレンチクルーラーの件を知らなかったらしい。……いつの間にか司令官がいなくなっている。逃げたのだろうか?

 

 そのタイミングで、考えうる限り最悪なタイミングで、荒潮が部屋に入ってきた。

 

「ごめんなさい。さっき司令官から呼ばれて、謹慎が解かれたからここに来たんだけれど……どうしたの? 満潮、髪を下ろして」

 

そう、彼女が言ったので、司令官は逃げたのではないことは証明された。そして、満潮はその声に反応して飛びつき、彼女を押し倒した後、その口にいつの間にか持っていた大量のフレンチクルーラーを命一杯詰め込んだ。

 

「あんたのせいよぉ、あんたのせいで私は!! 私はぁ!!」

 

「モガ、モガモガ」

 

 これが、悪戯者の末路か。荒潮はわたしに向かって助けを求めているが、彼女はもみ合った瞬間、またもや彼女の髪にフレンチクルーラーを乗っけていたので、反省が足りないと判断し、満潮のなすがままにさせることにした。

 

 

 

 

 荒潮は数分後、霰と大潮に助けられた。満潮は不満そうだったがせっかくの朝潮の歓迎会で、本人そっちのけで喧嘩するとは何事だと、霞に怒鳴られてしぶしぶ矛を納めた。わたし達は用意されたジュースやお菓子を摘まみながらささやかな話に花を咲かせる。

 

 しばらくすると、霰がわたしに耳打ちをしてきた。

 

「荒潮を叱らないであげて。荒潮が悪戯を始めだしたのは前の朝潮姉さんがいなくなってから、寂しさを埋めるためにそうするようになったの。朝潮姉さんがいなくなって、出撃を禁止されて……寂しいんだと思う」

 

「荒潮、出撃禁止されているの?」

 

「んちゃ。出撃中に朝潮姉さんの腕が吹っ飛んだのを見て、それがトラウマになったらしくて、大事をとって司令官にしばらく出撃を禁止するように言われたらしいの。わたし達は艤装の機能のおかげで戦闘中かすり傷を負うこともほとんどない。

でも、朝潮姉さんのけがを見て艤装が機能しなければ、死と隣り合わせの危険な状態だと言う事に気づいちゃったみたい。たぶんその場に居合わせたら私でもそうなる。そのさみしさと恐怖を埋めるために、荒潮には時間が必要なの」

 

 霰はそう言った後、お菓子をぼりぼりと食べ始めた。わたしも負けじとお菓子を摘まみ、一瞬の隙をついて隣に座っている満潮のフレンチクルーラーにお菓子を突き刺す。

 

「ブフォ!!」

 

「荒潮。何を笑っているのですか? お姉さんに面白い話を聞かせてください」

 

「え……えっと」

 

 荒潮は自分が満潮に仕掛けたフレンチクルーラーのせいで墓穴を掘っている。わたしはすかさず2本目のお菓子をフレンチクルーラーに突き刺した。荒潮はもう一度吹き出してしまい。それを不審に思った満潮が頭を触った。当然そこにはフレンチクルーラーがのっかっていた。満潮は激怒した。

 

 

 

「……荒潮、今日はこのくらいにしておくけれど、阿武隈さんとかに悪戯はほどほどにしておきなさいよ。今はまだ許してくれているけれど、あんまり続くと、周りのみんなも本気で怒るようになるわよ」

 

 一通り荒潮に説教をした後に、満潮は腕を組みながら彼女にそう忠告した。彼女のキャラクターは霞のように司令官をクズ呼ばわりするほどではないが、他人と壁を作るような言動をするので、誤解されてしまった経験があるのだろうか? そんな経験則から出た彼女なりのやさしさなのだろう。

 

「あらあら、それは困るわねぇ。うふふふ、初めての満潮姉さんの忠告、素直に聞かせてもらいましょうか。しかし、姉さんがそんな事言うなんて以外ねぇ」

 

「そう、そういうのはわたしの役目です。長女としての威厳を見せて、妹たちへの指導をやり易くする。中世の文豪ゲーテは言いました。餅は餅屋」

 

 わたしは胸を張りながらそう答えた。そう、軍隊や部活で新入生をぶっ倒れるまで走らせ、指導と称して無限に理不尽な事をやらせるのは、そのためである。

 

「その人知らないけれど、絶対言っていないでしょう」

 

「そう言った表現はこの世界に無数にあるので、おそらく近しいことは言ったことあると思いますよ。と、それはさておき、今回の問題は簡単です。わたしであれば、解決することは簡単です」

 

「そう、いったい私は荒潮姉さんに一体どんなお仕置きをされてしまうのかしら?」

 

「わたしは何もしませんよ。ただ、荒潮が悪戯をすることによって受ける罰を、すべてわたしが引き受ける。それだけです」

 

 わたしが解決策を話すと、荒潮は驚愕の表情を浮かべていた。

 

「ちょっと待って、朝潮姉さん正気? そんな事をしたら、罰を受けないとこれ幸いに荒潮の悪戯に歯止めがかからなくなる。解決するどころか、悪化させる結果になるわ。分かっているの?」

 

「大丈夫です。わたしはこの方法で荒潮を更生させてみせます。なぜなら、このわたしは彼女のお姉さんです。わたしが彼女に歩み寄らないで、誰が彼女に歩み寄るというのですか。もちろん、そのために、妹たちへの責任を果たすことも時には必要な事です」

 

「まったく、どうなっても知らないわよ」

 

 わたしのこの言葉に納得してはいないだろうが、満潮はふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。そんな彼女の髪を後ろから整え、髪で彼女のトレードマークであるドーナツ状のお団子を二つ作って、

 

「もちろん、わたしは荒潮だけにそう言っているのではありません。大潮も満潮も霞も霰もわたしの力を頼りたい時があったら、いつでも相談に乗ってもらって大丈夫ですよ」

 

「あらあら、朝潮姉さんには敵わないようねぇ、分かったわ。悪戯は控えることにするわ」

 

 荒潮はそう言って事実上の敗北を認め、大潮はさすが朝潮姉さんと言って、飛び上がり、他三人はほっと胸を撫で降ろしたが、

 

「いいえ。わたしは別に荒潮に悪戯を止めて欲しいとは思っていないですよ? むしろ、どんどん悪戯をすればいいと思っています」

 

 という言葉に、一瞬世界が凍り付いた。

 

「朝潮姉さん? 今なんて?」

 

「そう、荒潮が悪戯をして、わたしが罰を受ける事で、問題は解決します。荒潮は悪戯を無限にする事が出来、長女の私が代わりに罰を受けるとなれば、他の艦娘もおそらくなにか考えがあると邪推して、深く追及することはないでしょう」

 

「つまり、荒潮が長い間悪戯をし続けられる状態を維持するためには、この方法が最適なんです。何なら、わたしも一緒に悪戯を考えましょうか? 髪の一部を食品とすり替えるような単純なものではなく、もっとすごい悪戯を考えましょう」

 

 落ち着きを取り戻した霞のハリセンがわたしの頭に振り下ろされたのは、それから数秒後の事であった。

 

 

 

 妹たちとの話し合いと説教の結果、荒潮は悪戯を自重する事に決まり、わたしも悪戯をしてはならないと釘を刺されてしまった。わたしはもっと高等な悪戯をいくつも考えていただけに、非常に残念ではあるが、荒潮の件を解決して妹たちからの信頼を勝ち取るという当初の目的を達成できたので及第点としよう。

 

 なぜか霞や満潮が侮蔑のまなざしを向けてくるが、おそらくそれはわたしの気のせいだろう。わたしは何も落ち度のある事をしていないのだから。

 

「まったく、本当にあなたは朝潮姉さんなの? 私の知っている朝潮姉さんはこんなめちゃくちゃな事を言わなかったわよ」

 

「大潮はそれがこの朝潮姉さんの良さだったと思います!! 何だかんだで、荒潮の悪戯の問題も解決しました!!」

 

「ものすごく不本意だけどね」

 

 霞はわたしのキャラクターが前までいた朝潮とのギャップに対応し切れていない様で、大潮はそれをむしろ楽しんでいるようであった。満潮はわたしの破天荒な言動に若干の嫌悪感を覚えているようである。

 

「満潮はそれでいいと思います。わたしが朝潮だから、わたしがあなた達から見てお姉さん型の艦娘だから、そんなキャラクター性だけを見た表面だけの信頼や信用は意味のないものです。行動や言動によって、信用や信頼と言ったものは勝ち取るものです」

 

「信用や信頼は勝ち取るもの……騙されないわよ。今のところ、朝潮姉さん訳のわからない事しか言っていないじゃない。そんなんじゃ、信頼なんかされるわけがないわ」

 

「満潮、それ言い過ぎ」

 

 満潮の言動に、霰はたまらず彼女を諫めようとしたが、わたしはそれを制止した。

 

「いいんです、霰。表面化しない問題を抱えながら、姉として受け入れられたと勘違いした状態で暮らしていき、ある日突然それが勘違いである事を知らされるよりは、初めに言いたい事を言われた方がましです。違いますか?」

 

「そう? でも、朝潮姉さんもあんまり満潮姉さんを煽るような事を言わない方がいいわぁ。満潮姉さんもああ言う性格だから、誤解されやすいのよ。もちろん、満潮ちゃん本人も分かってはいるんだけどねぇ」

 

 荒潮はくすくすと笑いながら満潮の顔をちらりと見ながらそう言った。満潮は図星を刺されたのか、あたふたとしている。

 

「ちょ、荒潮」

 

「さて、そろそろ朝潮姉さんの歓迎会もお開きよぉ。朝潮姉さん、今から大体30分後、ひとふたまるまるに、演習のための作戦会議があるわ。場所は2階の家庭科室でもうぼちぼちと艦娘が集まっているから朝潮姉さんも向かった方がいいわよぉ」

 

 荒潮がそう言ったのでわたしは艤装に内蔵してある時計を確認すると、彼女の言った通り、時刻は11時30分を指示していた。わたしは一礼した後、行ってきますと部屋を後にした。

 

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