嘘つきみーくんと実力至上主義の学校   作:なっち様

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第2話

 

 茶柱と名乗った担任の先生が壇上でしたSシステムについての説明は始め出来たばかりの友達と話足りない生徒たちに右から左といった具合だったがそれも10万ポイントという大金が振り込まれているという話がされた途端に「僕達真面目な生徒です!」と言わんばかりに佇まいを正すことになる。

 

 説明が終わり教室から茶柱先生が去ると、さっそくクラスの中はその話題で持ちきりになった。女子も男子もさらなる日本国の発展を目指し一緒に経済を回しにショッピングモールへ参ろうぞと約束し合っている中僕はといえばこれからの土地の高騰を予期しこれを元手に土地の買い占めを行う算段を着けていた。後半は嘘。

 本当はクラスが降って沸いた大金に浮足立つ中、僕はその中に入れずにいた。最初に話しかけてくれた櫛田さんはいつの間に仲良くなったのか既に出来上がりつつある女子グループへと混じっており、男子は男子でゲームを買うだとかオタク話で盛り上がっていた。

 まいったな、僕はああいう友達バリアを張られてしまうと弱い。僕がぽつねんと窓の外で散る桜を眺めていると、一人の男子が進み出た。

 

「皆、ちょっといいかな?」

 

 その男子はみんなの視線を集めながらもそのことにまったく物怖じず堂々としていた。

 

「僕らはこれから三年間過ごすことになる。だから自発的に自己紹介を行って一日でも早く仲良くなれたらと思うんだ。どうかな?」

 

 そう言って教室を見回す彼は早速このクラスの中心になりそうな雰囲気を醸し出している。正直に言えば僕はそれが少し意外だと思った。

 女子の誰かが「さんせー」と言い、皆の間に自己紹介を行う流れが出来上がっていく。それを確認してから男子は口を開いた。

 

「じゃあまず僕から。僕の名前は平田洋介。中学の頃は皆から洋介と下の名前で呼ばれていたから気軽に下の名前で呼んで欲しい。趣味はスポーツ全般だけど、その中でも特にサッカーが好きでこの学校でもサッカー部に入る予定だよ、よろしく」

 

 平田洋介、そう名乗った彼を皮切りに順調に進んで行く自己紹介を断頭台に立つ死刑囚のような気持ちで待っていると赤髪の男子の所でその波は止まった。

 

「俺らはガキかよ。自己紹介なんてやりたい奴だけやってればいい」

 

 おもむろに口を開いた彼の言葉はその雰囲気も相まって実際より乱暴に聞こえた。

 

「強制するつもりはないよ、不快にさせたなら謝る」

 

 平田はすかさず赤髪の男子へと謝罪をするが、赤髪の男子はそれを聞いてもなお最近の若者としての模範解答を存分に発揮することにしたらしく響き渡るというよりは先端で刺すような舌打ちをうって教室を出ていった。それに釣られて何人かが同じように教室を出ていく。僕も一つの流れを作った赤髪の男子へと感謝しながらそそくさと教室を出ようと思ったが、ここで言わなかった場合、僕は何度も自分の名前をクラスメイトに言わなくてはならないことに思い至り上げかけた腰を下ろすことにした。

 そして廻ってきた僕の番。

 

「枝瀬✕✕です。三年間よろしくお願いします」

 

 僕は芋虫に食い散らかされた葉っぱのように中身のないスカスカな自己紹介を終えた。まばらな拍手に包まれながらさっと席に着く。

 言わなくていいことは言わなくていい、例えば僕が過去に親の事情で小学校を一年自主休学していた、とか誘拐事件の犯人の息子だ、とか皆さんより実は一年年上ですので敬いたまへ☆とか言い出したらそれこそ事故紹介だ。

 その後はつつがなく残った全員の自己紹介が終わった。

 

 初日は授業が無いようでオリエンテーションの後は各自解散の運びとなった、おのおのが遊びに行くと話し合っている中僕は真っ先に教室を後にした。まだ友人が出来ていない人間が何かが起こるのにすがるような気持ちで教室に残っているのを感じた、頑張れと大声の声を出さないverで応援しておく。

 

 入学式から一週間が経つと雛形だったグループも完成に近づいていて、ほとんどの人間の所属するグループが固定されていた。僕はどのグループにも所属しておらず孤高の狼を気取っているのだが、そんな中でも話す人間はいる。

 一人は櫛田さんだ、自己紹介でも言っていた通り全クラスの人間と友達になるという目標に邁進しているようなのと席が隣どうしという事もあり比較的話しかけてくれる。彼女に話しかけられると僕も孤高の狼を返上して一人の男になってしまうのだった、夜は狼になるけどな。はっはっは、と言うのはあまりに下世話なのでボツにした。

 さてもう一人は綾小路清隆という男子だ、彼は初日に友人作りに失敗していて次の日から寂しそうなめで教室を見回していたところ、同じように一人の僕を見つけたらしい。らしいと言うのは本人から聞いたのではなく僕の想像だがあまり間違ってはいないだろう、今でこそ池君たちとも話すようになった彼だがそれで縁が切れることもなく話しかけて来てくれる。

 

「なぁ枝瀬」 

 

 僕の前でサンドイッチを頬張っていた綾小路が口を開いた。

 

「なに?」

「もしお前が女子をカフェに誘うならどう言って誘う?」

「普通にカフェにいかない?じゃないか?」

「それじゃ絶対に来ない相手を誘う場合だ」

 

 その言葉で綾小路が誘おうとしているのが大体誰なのか想像できたが触れないでおく。しかし、綾小路はそういうのに興味なさそうだったのに意外だ。

 

「最初に無理そうな家まで来ないか、とか難しいのを言って次にカラオケとかから徐々にハードル下げて相手に、まぁカフェくらいなら、と思わせるとかは?」

「……なるほどな、だがいきなり家に誘ったら警戒されるんじゃないか?それにこの案は最初に言わないといけないってのも難しいかもな、普通にカフェに誘って断られた後にじゃあ家来ないか?っておかしいだろ」

「そうだね、じゃあ……」

 

 と、僕は口を開いてここから先を言うか迷った、これから言おうとしたことに確信はないからだ。だが、珍しく(と言っても付き合いがそんなにあるわけではないが)綾小路が迷っているようなので言うことにした。

 

「奢るからって誘ってみれば?そこに来月はそんなにポイントが貰えないかも知れないから最後の贅沢になるかもとか付け加えてみればちょっと心動くんじゃないか?」

「え?そうなのか?」

「僕は女子じゃないから正確に心の機敏が分かるわけじゃないけど」

「いや、そっちじゃなくてポイントの方だ」

「ああ、確証はないんだけど……」

「なんでそう思うんだ?」

「今のところ勘って言うしかないんだけど一つ根拠を言うなら違和感かな」

「違和感?」

「ここって監視カメラがいっぱいあるだろ?生徒一人に10万ぽんってくれるような優しい学校が生徒を見張るかのように監視カメラを至る所に設置してるっているのは何ていうかちぐはぐだ、授業だってこのクラス騒がしいだろ、でも先生は何の注意もしない。じゃあ放任主義なのかといったら監視カメラと矛盾する」

 

 僕はそこで教室に設置してある監視カメラを見上げる。

 

「だからこのカメラがなんのためにあるのか考えてたら成績をつけるためなのかなって思った」

「つまり成績によってポイントが増減するかもってことか?」

「まぁそういうこと。……減りはしても増えるとは思わないけど」

 

 生徒一人に10万ってだけでも多いのにまだ増えるとはあまり思えなかった、あるとしたらポイントを奪い合うという形式だろうか。

 

「枝瀬って結構考えてるんだな」

 

 意外そうな口調でつぶやく綾小路の瞳がどこか冷静に僕を見ているような気がした、でも僕はあの子と違って視線の意味を感じ取るのに敏感じゃないからそれがそうとは言い切れないけど。

 




みーまー難しいです。どうして『僕』のあのめちゃくちゃな語りが出来ません。精進します
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