余命一年と診断されたので今年こそチャンピオンになって有終の美を飾りたい   作:龍門岩

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梅雨に入ったので初投稿です。

本小説では、サイトウの年齢を15歳(高校一年生の代)とします。
主人公と同年代です。




第二話

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

この世界は俺たち人間と、ポケモンの支え合いで成り立っていると言っても過言ではないだろう。

 さて、そんなポケモンだが、所謂タイプというものが存在する。例えばほのおタイプ。彼ら彼女らは文字通り炎であったり、火山などを体現するかのような見た目であることが多い。全体的な傾向としては、赤色や橙色、黄色など、暖色系等の肌の色をしていることがもっぱらだ。

 そんな中俺、ライカの好きなタイプは、圧倒的にでんきタイプである。自身で電気を生成することができることが、このタイプに数えられるための条件だ。でんきタイプは絶対数が他のポケモンに比べて少ないというのも特徴だろうか。見た目も、コイルなどの工業的なものから、ピカチュウや相棒のデデンネのように可愛らしいポケモンが多いというのも俺がでんきタイプを愛してやまない理由の一つになる。

 でんき技自体は大体のポケモンに通るが、じめんタイプには無効だから気をつけないとならないな。

 

 さて、そんな俺であるが、今何しているのかというと——

 

「ライカさん、この書類もお願いします」

「すみません、こちらのチェックもお願いします」

「ジムリーダー!お客様がいらっしゃいましたー!」

 

 ――一週間サボったせいで溜まった雑務に追われていた。

 

「まずは来客からだ、誰がいらっしゃった?」

「マリィさんです!」

「よし後回し」

「なんでそげんことすると?」

「とりあえずモーモーミルクでも出しておい――ヒェ」

「……あたし、そんなに幼児体型かなぁ」

「いや何を色々深読みしてるのか分からないけどそういうんじゃないからね。見ての通り仕事やばいからで」

「ライの自業自得やけん、知らんよ」

「ふぐっ……ま、まあだから、ちょっと忙しいから待っててってことだよ」

「……わかった、モルペコとお菓子食べ尽くして待っとるけん」

 

 さらっととんでもない言葉をおきみやげして一旦去っていったマリィだが、実際彼女に頭が上がらないほど助けられたのは確かなのだ。邪険にできるはずなどない。

 

「……フエンせんべい、出しといて」

「……ジムリーダー、将来は尻に敷かれますね」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ――暇だ。

 ライカ一週間失踪事件があっという間に解決し、そのツケを払うための雑務に忙殺される日々をなんとか消化した俺ことライカだが、今に至っては暇を持て余していた。

 暇だ暇だー、何しよー、と安楽椅子に揺られながら膝の上でくつろぐデデンネを可愛がっている平日の昼下がり。

 なんかこれ――

 

「――ニート、みたいですね」

「心の内を読まないでくれるかいワトソン君」

「わたしはサイトウですよ、ライカ」

「ごめんごめん、ちょっとした悪ふざけだよ。それでさ」

「はい」

「どうやって部屋に入ったのさ」

「鍵をこう、ちょちょいのちょいと」

「やってること普通に犯罪だからね!?」

「大丈夫です、許可は貰っています」

「誰の!?」

 

 小気味よい格闘技のような応酬を言葉で繰り広げると、満足したのかサイトウはかなりのご満悦である。ガチでビビったこの気持ちをどうしてくれるんだ。コラ。

 

「で、用件は」

「スイーツを食べに行きましょう!」

「……ふむ」

 

 スイーツ、とな。

 彼女――サイトウはガラル空手の申し子、と世間から評されるのに恥じない強さを持ち、かくとうタイプのエキスパートでもある。

 年齢は俺と同じだ。サイトウの敬語はデフォルトで、それには家庭環境等が絡んでくるのだが……それはまた別の話としよう。

 とこのように、世間からは割とお堅い感じというか、武道を嗜む者としてのオーラというか、そういったものに影響されてか知らないがあまり週刊誌などにも取り上げられることが少ないジムリーダーの一人だったのだ。

 だったのだが、最近遂にスイーツを幸せそうに頬張る姿をすっぱ抜かれたおかげでギャップにやられた!というファンが急増しているとかなんとか。

 勿論俺は前々からサイトウが大の甘党であると知っていたし、オススメの甘味処を紹介し合っていたし、なんならお菓子を作って送ったこともある。

 お互いの甘味への趣向が知れている彼女からのスイーツへのお誘い。これを断ることがあるだろうか?いやない。

 

「行こう」

「ちなみに、濃厚なピスタチオクリームを使ったケーキが狙い目ですね」

「早く!!!何モタモタしてるのさ!!!」

「……わたしが、目で追えなかった……?」

 

 ――俺、ライカは特にピスタチオが大好きなのだ。

 

 

 

 

 

 

「うまい!……うまい!……うまい!」

「声が大きいです。たくさん写真撮られちゃってますよ」

「美味い!美味……そんなの気にしてられなくない?こんなに美味しいんだからケーキに集中しなくちゃ」

「……周囲を気にせず目の前の物に没頭する力……これがライカの強さの根源……?」

「深読みしすぎだよ」

 

 思わずツッコミ入れてしまったのは仕方の無いことだろう。

 

 ちなみにこのお茶会の様子はしっかりと週刊誌に激写された。その際にサイトウが勝ち誇ったかのような顔をしていたのは不可解だけど……なんだったんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 ――その日は偶然だった。

 

 偶然喉の調子が悪かった。頭もなんだか痛む。スパイクタウンのみんなと徹夜で盛り上がり過ぎたせいか、と思考を巡らすが、違うような気もする。巡り巡ってなんで生きてるんだろうとかネガティブな思考に陥ってしまいそうなところで、なんとか思考の海から引き上げることに成功した。

 

(……はぁ、いつも悪く考えちまうのはどうにかならないもんですかね)

 

 と、おれ――ネズは周囲の空気をどんよりさせつつシュートシティを歩いていた。今日は具合が悪いのと、病院へ普通に行こうということで変装をしているので、声を掛けられることはない。

 それでも目敏いおれのファンからは声を掛けられるのだが。嬉しいことですね。

 

 そのまま病院に入り、問診票を受け取り記入する。それを看護師の方に渡し、呼ばれるまでは待合室でその名の通り待ちの時間だ。

 待ち時間が苦手だという人にはたくさん会うが、おれはそれほど嫌いじゃない。何となくだが、一番頭を空っぽにして物事を考えられる気がするのだ。気がするというだけかもしれないけれど。

 

 っとと、名前を呼ばれました。ということで、さっさと診察室へ――

 

『余命一年です』

 

 という言葉が、カーテンで仕切られただけの隣の部屋から聞こえてきたことで、思わず足を止めてしまう。

 余命宣告。一応おれもまだ若いから、告げられるリスクはゼロに等しいだろう。しかしいざ老衰して余命を医師に宣告されたときの事を想像すると、途端に寂しい気持ちになってしまった。

 ……また悪い癖が出ている。さあ早く診察を終わらせて、スパイクタウンに帰――

 

 ――目を見開いた。

 

 隣の部屋から出てきたのは、顔面蒼白、といった表情のライカであったからだ。

 

 ――ライカくん、が?余命一年……?

 

 ライカといえば、言わずと知れたメジャーのジムリーダー。初就任からマイナー落ちはない、ガラル期待の星の一人だ。

 そして何より――妹、マリィの想い人である。

 日々彼を落とそうとカフェに誘ったり、ジムまで赴いたり、毎晩顔を赤らめながらメッセージのやり取りをしている可愛い可愛いマリィの、想い人。その、彼が。

 

「余命……いち、ねん」

 

 余りにも若すぎる彼の年齢を思い出し、思わず涙が流れ出る。こんなのは。

 

「幸せに、なれないじゃねえですか……」

 

 彼と、彼に関わる全ての人、事柄が。

 

 一年後、泡のように消えてしまうと夢想して。

 

 ――思わず、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 


 

 

サイトウ

 ジムリーダー歴としてはライカよりも短く歳も同じであるため、若くして既に四年間もメジャーリーグで活躍するライカには尊敬の念を抱いている。タイプ相性に善し悪しがないので、よく鍛錬に誘っている。勝率はかなり悪いらしい。

なるべく感情を出さない正確無比なバトルを心掛けているがストレスは溜まるらしく、鍛錬の後はライカとスイーツを食べにカフェに行くのが定番となっている。ライカと過ごしている間だけは、感情が結構表に出る。

最近ではライカの胃を掴もうと画策しているらしく、主にカレーしか作れない某女子二人(明言は避ける)とは趣向を変え、スイーツ作りに勤しんでいる。尚上手くはいっていない模様。なんならライカ本人から教わる始末である。ライカのことが異性として好き。

…(そろそろ家に忍び込むのも面倒なので、合鍵ください)

 

 




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