私の名前はリール。
今スカーレットの家にいます。
先程魔法の練習として実戦をしてみましたが、見事に負けました。
アンナもスカーレットも凄く、魔法も初めて見るものばかりでした。
今回は私だけ負けましたが、次は絶対勝とうと思います。
…それとひとつ気になったことがあります。
あの時の言葉。
「久しぶりに見た。光属性魔法」
あの言葉は一体どういう意味なんでしょうか。
今はその事で頭がいっぱいです。
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魔法の練習をしたリールたちはその後、3人で一緒に過ごした。スカーレットの家には書物がたくさんある部屋が存在する。そこには基本属性魔法や特殊属性魔法、氷属性魔法や無属性魔法について色々書かれてあった。3人はその部屋で書物を漁っていた。
スカーレット「ここは色々な本が保管されてる部屋よ」
リール「おぉ…」
アンナ「すごいね…」
スカーレット「お父さんや叔父さんが集めたものもあれば私のお母さんや叔母さんが集めたものも保管されてるの。ここには全属性の魔法についての本があるから自分の属性魔法の本を見てみるのもいいわよ」
リール「どこにあるんですか?」
スカーレット「こっちよ」
スカーレットはリールとアンナを目的の書物の場所へ案内した。
スカーレット「ここね。火属性…水属性…これはアンナのね」
アンナ「あ、ありがとう」
スカーレット「氷属性…風属性…雷属性…これは私ね。あとは土属性…光属性…あ、これがリールのね」
リール「あ、ありがとうございます」
3人は自分の属性魔法の本を読み始めた。
アンナ「わ、すごい…私の知らないことがたくさん載ってる…」
スカーレット「私が地下室で使った魔法はここに載ってる魔法なの」
リール「あ、そうだったんですね」
スカーレット「えぇ。杖を持った時にちゃんと使えるように勉強してたの」
リール「なるほど。それはいい考えですね」
スカーレット「そういえばアンナも魔法を使ってたけど、アンナもこのような本を読んだことが?」
アンナ「あ、いえ…その…」
スカーレット「?」
リール「?」
アンナ「あれは…小さい頃から私が…その…」
スカーレット「小さい頃から?」
アンナ「…ちょっと…こんな魔法を使ってみたいなって思って…その…考えてたものなんです…」
リール「アンナが小さい頃から温めてたものだったんですね」
アンナ「えっと…うん…」
スカーレット「なるほどそうだったのね」
アンナ「は、恥ずかしい…」
リール「恥ずかしがることないですよ。この世界には決まった魔法がないと私のお師匠様も言っていたので。お師匠様も自分で考えた魔法を使ってましたし」
アンナ「え!そうなの?」
リール「はい。使ってましたよ。なので恥ずかしがることないですよ」
アンナ「そ、そっか…リールのお師匠様も…なんだか嬉しいな…」
スカーレット「そういえばリール」
リール「なんですか?」
スカーレット「リールのお師匠様って全属性の魔法を使ってたって言ってたよね」
リール「あ、はい」
スカーレット「実際どうだった?強かったの?」
リール「えっと…戦ったことないので…」
スカーレット「あ、そっか…」
リール「あ、でもエレナ学院の学院長さんは魔女さんの事知ってるようでしたよ」
スカーレット「え!そうなの?」
リール「はい。魔女さんって言ってましたよ」
スカーレット「…え?」
リール「え?」
スカーレット「えっと…名前は?」
リール「あ、そういえば…」
エレナ学院長であるレヴィも魔女さんのことは「魔女さん」と呼んでいた。1番関わりがありそうなあの人でさえ魔女さんの名前は告げなかった。リールはそのことに対して疑問があった。何故魔女さんの名前を言わなかったのか。リールの疑問がまたひとつ増えた。
スカーレット「…リール?リール?」
リール「へ?」
スカーレット「どうしたのよ」
リール「あ、えーっと…考え事してました」
スカーレット「あ、そうなのね」
リール「はい」
アンナ「ねぇスカーレット」
スカーレット「何?」
アンナ「この本に書かれている魔法って誰が使っていた魔法なの?」
スカーレット「あーえっと…お父さんと叔父さんを含めた12人の魔法使いのうちの一人よ」
アンナ「えっと…誰?」
スカーレット「名前はお父さんに聞かないと分からないわ」
アンナ「そっか…」
リール「!」
光属性魔法の本を呼んでいたリールはあるものを目にした。それは、あるページに挟まれてあった小さな紙だった。
リール「ねぇスカーレット。この小さい紙はなんですか?」
スカーレット「え?紙?」
スカーレットはリールが見せてきた紙を見た。
スカーレット「あ、この紙ね。実は私も分からないの」
リール「え、分からないんですか?」
スカーレット「えぇ。一応お父さんたちにも聞いたんだけど誰も分からなかったの」
リール「そうですか…」
その紙にはある文字が書かれてあった。その文字は現代の文字ではなく、どこか不思議な形の文字だった。当然スカーレットやリールたちが読める訳でもなかった。
リール (魔女さんなら…何か分かったのかな…)
リールがそう思っていると、その小さな紙に書かれた文字が形を変えていった。
リール (!)
リールはその一部始終をずっと見ていた。文字はどんどん形を変えていき、やがてリールでも読める文字になった。
私はリノ。あなたと同じ光属性魔法に適性を持つ人です。この文字が読めるあなたにだけある事を伝えます。
リール (リノ?ある事?なんの話でしょうか…)
現在この世界にはドレインという他者を取り込み強くなる魔物が存在します。今は表に出てきていませんが、ある場所に私が保管しています。そこは、辺り一面暗い "深淵" と呼ばれる場所です。あなたが光属性魔法に適性があるのならその場所に出向き、ドレインを全て浄化してください。
リール(浄化?深淵?ドレイン?)
それはかつて私が成し得なかったこと。光属性魔法は唯一ドレインに対抗できる魔法です。私はその力を使ってドレインを退けましたが、私一人ではどうにもなりませんでした。そこで私はある事を考えました。それは、私自身を使ってドレインを封印することです。ですが、先程記述したように私一人では限界があります。なので、これを読んでるあなたにお願いがあります。私一人ではドレインの進行は止められません。あなたがドレインを浄化して下さい。光属性魔法に適性があるあなただけが頼りです。お願いします。
ここで文字は変化を止めた。この間、紙に書かれた文字は絶えず変化していた。少ない文字でここまでの文字を残すようにしたのだ。
リール (ど、どういう事でしょうか…)
リールはずっと紙を見ていた。
スカーレット「リール?」
アンナ「リール?」
リール「え、何ですか?」
スカーレット「どうしたのよ。そんなに固まっちゃって」
リール「え、あ、これです」
リールはスカーレットとアンナに小さな紙を見せた。
スカーレット「あーさっきのやつね」
アンナ「何?これ」
スカーレット「なんかの文字なんだろうけど分からないの」
リール「?」
リールはここで疑問に思った。さっきリールはこの文字を読めていた。最初は読めなかったが、形を変えることでその内容を知ることが出来た。リールでも読める文字なのにスカーレットたちには読めなかった。
リール「え、この文字読めないんですか?」
アンナ「えーっと…うん。分からないね」
リール「!」
リールがその紙に視線を落とすと、紙に書かれた文字は最初に見た不思議な形の文字に戻っていた。
リール「あれ…戻ってる…」
アンナ「…?」
スカーレット「なんて書かれてあったの?」
リール「えっと…なんだっけ…」
アンナ「忘れたの?」
リール「え、あ、はい…」
スカーレット「そう。ならいいわ」
ほんとはリールは覚えていた。だが、2人に話す前にジンやマークに話そうと思ったため、知らないふりをした。
リール「ねぇスカーレット」
スカーレット「何?」
リール「この紙…ちょっと貰ってもいい?」
スカーレット「えぇいいわよ。どうせ読めないし」
リール「ありがとう」
リールはその紙をそっとポケットに入れた。
スカーレット「さ、そろそろ出ましょうか」
アンナ「そうだね」
スカーレット「リール!リール!」
リール「え、あ、はい」
スカーレット「本貸して」
リール「あ、はい」
リールは光属性魔法の本をスカーレットに渡した。
アンナ「どうしたの?リール。ずっと上の空だよ?」
リール「えっと…ちょっと色々と知りたいことがありまして…その事を考えてました」
アンナ「そうなんだ。リールは勉強熱心だね」
リール「あはは…そうですね…」
スカーレット「さ、出るわよ2人とも」
アンナ「はーい」
リール「あ、はい」
3人はその部屋から出た。
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数時間後…
あれから数時間が経って夜となった。今日はジンさんとマークさんに魔女さんについてお話します。なので私はジンさんの部屋に来ています。
ジン「それで、話とは何でしょうか」
リール「…私のお師匠様…えっと…ある魔女さんの事でお話があるんです」
ジン「ある魔女の話…」
リール「はい。私はここに来る前にある魔女さんのところに住んでいました。ここから少し離れた場所に家があり、私はその魔女さんのおかげで生きることができました」
ジン「ほう。それは良かったですね」
リール「はい。そこで、ジンさんとマークさんは私の魔女さんについてなにかご存知ないですか?」
ジン「え?その魔女さんについて?」
リール「はい」
マーク「えーっとリールさん」
リール「はい」
マーク「もうちょっと情報ないかな?流石に情報量が少なすぎますね」
リール「あ、えっと…魔女さんは全属性の魔法を使うことができます」
ジン「え!?」
マーク「全属性!?」
リール「…はい」
ジン「マーク。君は今まで全属性の魔法を使うことができる人を見た?」
マーク「え、いや…1人も…」
リール「え…そうなんですか?」
ジン「え、えぇ。本来全属性の魔法を使うことってできないんですよ」
リール「え、でも魔女さんが…」
マーク「その魔女さんは今どこに?」
リール「それが…用事ができたらしくてどこかに行ってます。その間、私はエレナ学院に通うことになりました」
マーク「そうですか…」
ジン「残念ですね」
リール「はい…できれば一緒にいたかったのですが…」
マーク「あ、そういえばリールさんが持ってる杖や箒は確か…その魔女さんから貰ったものですよね?」
リール「あ、はい。そうです」
マーク「全属性の魔法を使えてあの綺麗な杖と箒を所持している人…」
ジン「そんな人は見た事がないので探すとなれば難しいですね」
マーク「でも逆に言えばこの特徴を持つ人はその人だけだから逆に見つけやすいかも」
ジン「…確かに」
マーク「リールさん」
リール「はい」
マーク「君の家に行くことはできますか?」
リール「あーえっと…できるかどうかはメリーさんに聞いてください」
ジン「メリーさんってあの魔法店の?」
リール「あ、そうです」
マーク「分かりました。聞いてみようジン」
ジン「そうだね。聞いてみようか」
マーク「あぁ」
ジン「それでリールさん」
リール「あ、はい」
ジン「他にお話はありますか?」
リール「あ、じゃあ1つ。いや、2つ…3つ…」
ジン「あはは…話せる分だけでいいですよ」
リール「あ、じゃあ…ジンさんとマークさんってドレインと呼ばれる魔物から生き残ったんですよね?」
ジン「はい。そうですね」
マーク「他にも仲間はいたけどね」
リール「そうそれです」
ジン「?」
マーク「?」
リール「他の人について教えてください。…特にリノという人に」
ジン「!」
マーク「!」
リール「…」
ジン「…どうして…その名前を…」
リール「…これです」
リールはポケットに入れた小さな紙を取り出した。
マーク「これは?」
ジン「これは…スカーレットが私に見せに来た…」
リール「そうです。その紙です」
ジン「でもどうしてこの紙を」
リール「これは今日のお昼にスカーレットたちと一緒に本が沢山ある部屋に行った時に見つけました」
ジン「あーあの部屋ですね」
リール「はい。光属性魔法の本の中にそれが挟まってました」
ジン「…」
マーク「ジン。なんだいこれは」
ジン「…実は私にも分からないんだ」
マーク「え?」
ジン「この文字はこの世界にある文字じゃない。だから読めないんだ」
マーク「な、なるほど…」
リール「私はリノ。あなたと同じ光属性魔法に適性がある人です」
ジン「!」
マーク「!」
リールはその紙に書かれていた文を読んだ。
ジン「リールさん…これ…読めるんですか?」
リール「…はい」
ジン「なんと…」
リール「そこに書いてあるリノとは誰のことですか?教えてください」
マーク「…ジン」
ジン「…分かりました。この紙は返しておきますね」
リール「はい」
ジン「…リールさん。あなたにだけお見せします」
リール「見せる?」
シュゥゥゥゥゥ…
すると突然リールは白い光に包まれた。
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場所…???
リール「!!」
リールはある場所にいた。そこは光がなく、薄暗い場所だった。
ジン「リールさん。こっちです」
リールはジンとマークにある場所に連れていかれた。やがてある場所に着いた。そこはある一室になっていて中には何も無いように見えたが、しっかりみると部屋の中心に何かあった。
リール「!!」
リールはそれを見た時、驚いた。
リール「ジンさん…これって…」
???「…」
ジン「…これが、君が言っていたリノという人物だよ」
リール「!!」
リールの目の前にいたその人は鎖に繋がれていた。力なくぐったりしているその人は女性で、どこかリールに似ている部分があった。
マーク「彼女はドレインから私たちを守るために動いてくれた。だが、その途中でドレインに取り込まれてしまい、本来の彼女がこの世から消えてしまった」
リール「え…消えたって…」
マーク「ここにある彼女は彼女ではない。正確に言えば彼女を取り込んだドレインだ。彼女を取り込んだドレインは彼女の力を使い、私たちを襲った。だから私たちは二度と暴れないよう鎖で繋ぐことにした」
リール (え…でも…リノって人は今…)
ジン「…彼女が生きていたら私たちは離別することはなかったんだろうな…」
リール「ど、どういう事ですか…」
ジン「彼女を取り込んだドレインを倒すのは容易ではなかった。私たちではドレインに有効な攻撃ができなかったからです。途方に暮れていた私たちを救ったのは、名も告げなかったある魔女…」
リール「!」
ジン「彼女がいなかったら私たちは死んでいただろうね」
リール「その魔女って…」
マーク「その魔女さんとリノを取り込んだドレインが戦った。両者凄まじい力を発揮し、互いを傷つけた。だが、それに留まることはなく、被害は国全体に広がった。一日…いや、一夜にしてこの国は全焼した」
リール「!」
ジン「あれから数年。私たちは力を使ってこの国を建て直した。その際、この国に残ったのは私とマークの2人だけ。残りの9人はどこかへ行ってしまった」
リール「なぜ…離れたんですか…」
ジン「…リノという抑止力を失くした私たちはドレインに対して恐怖を覚えました。他の人たちはその恐怖からこの国を出たのでしょう」
マーク「私たちは残されたリノの身体を保管するためにこの国に残りました」
リール「そう…ですか…」
ジン「さ、この続きは私の部屋でしましょう」
3人はその部屋をあとにした。
???「…」
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場所…ジンの部屋
ジン「あれから数年、私たちは1度も仲間にあったことがありません」
マーク「今どこで何をしているのか、生きているのか…それとも死んでいるのか…それすらも分からない」
ジン「またいつか会いたい。あの悲劇を生き残った仲間を今一度、この目で見たいな」
マーク「…あぁ。だな」
リール「…」
ジン「さ、暗い話は終わりにしようか。リールさん。他になにかお話はありますか?」
リール「あ、いえ、大丈夫です」
ジン「そうですか。分かりました。なにか聞きたいことがあったらいつでも聞きに来てくださいね。待ってますから」
リール「はい」
そしてリールはその部屋を出た。
マーク「…リノ…か」
ジン「どうしたんだい?マーク」
マーク「いや、なんでもないよ」
ジン「…そうかい」
その後リールはスカーレットたちのところに行き、2日目の休みを終えたのだった。
〜物語メモ〜
リノ
かつてドレインと戦った女性。
光属性魔法に適正を持ち、ドレインから仲間を救った人物。
だが、彼女はドレインに取り込まれ、その生涯を終えた。