私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

22 / 83
第22話 リールとラミエ先生

私の名前はリール。

エレナ学院に通っています。

先日、エレナという名前の女性が学院に来ました。

彼女はすごい魔力を持ってる人で、魔法の威力も凄まじかったと聞きます。

それにスカーレットとオード君が大怪我をしたと…そう聞きました。

アンナも重症だそうです。

私の友達がみんな怪我をしました。

対する私はただ寝ていただけ…

あの人は私を回収すると言っていました。

つまりスカーレットやアンナ、オード君が怪我をしたのは私がここにいたから…

私…ここにいなければよかった…ここにいなかったら3人は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…保健室

 

リール「…」

 

私は今、保健室にいます。スカーレットとアンナ、オード君が怪我をしたと聞いたからです。何もできない私はただただ見守るだけ…保健室の先生は安静にしていたらすぐに起きると言っていました。…今は回復を待つばかりです。回復魔法が使えたらどれほど良かったでしょうか…回復魔法を使えない自分が情けないです…悔しいです…もっと魔女さんに教わればよかったと…今になって悔やまれます…

 

リール (…みんな)

 

ガラッ

すると、保健室の扉が開いた。

 

???「あら、まだいたの?私が見ておくのに」

 

保健室に入ってきたこの人はラミエ先生。保健室の先生で回復魔法に特化した魔女さんです。ラミエ先生は回復魔法を知り尽くしているので、ラミエ先生に治せない病気や怪我は無いそうです。

 

リール「…はい」

ラミエ先生「…」

 

ラミエ先生はリールの顔を見た。

 

ラミエ先生「…やっぱり気になるの?」

リール「…はい」

ラミエ先生「私がいるから大丈夫よ。私がいればどんな病もイチコロよ」

リール「…」

ラミエ先生「そういえばあなた。回復魔法は習ってる?」

リール「!」

ラミエ先生「回復魔法ってね、覚えてないとこの先必ず損するの。ここの生徒は回復魔法よりも属性魔法の方に力を入れるから一向に回復魔法を勉強しない。だから怪我をした時に真っ先に保健室(ここ)に来るのよ」

リール「…そうですか」

ラミエ先生「あなたはどう?習った?」

リール「…習ってません」

ラミエ先生「…そう。分かったわ」

 

スッ…スタスタスタ

ラミエ先生はその場から離れようとした。

 

リール「…でも、習おうとは思ってます」

ラミエ先生「!!」

 

ラミエ先生の足が止まった。

 

リール「…先生。私の属性魔法は光属性魔法なんです」

ラミエ先生「!」

 

ラミエ先生はリールを見た。

 

リール「それで、光属性魔法の適性者は魔法を受けるダメージが半分になります。なのでわざわざ回復魔法を覚えてなくても大丈夫なんです…」

ラミエ先生「…なるほどね。だからあなたはそれを持っているのね」

リール「…?」

 

私はラミエ先生が何を言っているのか分からなかった。

 

ラミエ先生「首から下げてるそれのことだよ」

リール「!」

 

私は刻運命(ときさだめ)の粉の事を言っているのに気づいた。

 

リール「これ…ですか?」

ラミエ先生「そうそう」

リール「これって…なにか効果でもあるんですか?」

ラミエ先生「えぇ。あるわ」

リール「どんな効果なんですか?」

ラミエ先生「そうね。一言で言うなら…()()ね」

リール「隔…絶…」

ラミエ先生「そう。私もそれ見たことあるわ。ある人から見せてもらったからね」

リール「あ、そうなんですか」

ラミエ先生「えぇ。それで刻運命(ときさだめ)の粉なんだけど、その粉は持ち主を守り、他者を寄せ付けないようにするものなの」

リール「他者を寄せ付けないように?え、でもスカーレットのお父さんは時間を巻き戻すって…」

ラミエ先生「えぇ。間違いではないわ」

リール「?」

ラミエ先生「さっき言ったわ。隔絶って。つまり、この世界から切り離された状態にあるということ」

リール「具体的には…」

ラミエ先生「本来、刻運命(ときさだめ)の粉は光属性魔法にしか反応しない。なぜならその粉自体が光属性魔法だからなの」

リール「これが…光属性魔法…」

ラミエ先生「そう。その粉は持ち主が光属性魔法の適性者だった場合にその力を引き出すことができる。今のあなたもその状態にあるわ」

リール「え?」

ラミエ先生「リールさん。その粉は絶対に身につけてて。あなたは実感がないと思うけど、今相当な力を出してるわ」

リール「え、そうなんですか?」

ラミエ先生「えぇ。強すぎる力ね…」

リール「わ…分かりました。ずっと身につけてます…」

ラミエ先生「ところで、ジンは何か言ってたかい?」

リール「ジンさんですか?そうですねぇ…特に何も…」

ラミエ先生「そう。分かったわ」

 

スタスタスタ…ギィィィィィ…バタン

ラミエ先生は保健室を出た。

 

リール「アンナ…スカーレット…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 廊下

 

コツコツコツ

ラミエ先生は廊下を歩いていた。

 

ラミエ先生 (まさかこんな所であの粉を見るなんて…ジンに何かあったのかしら?)

 

コツコツコツ

ラミエ先生は歩を進める。

 

レヴィ「おや、ラミエ先生」

ラミエ先生「!」

 

すると前方からレヴィ学院長が姿を現した。

 

レヴィ「どうかされましたか?」

ラミエ先生「そうね。少し気になる子がいたわ。不思議な子」

レヴィ「…リールさんの事ですか?」

ラミエ先生「!」

 

ラミエ先生は一発で当てられたため、驚いた。

 

ラミエ先生「…そうね。よく分かったわね」

レヴィ「いやぁ…私自身リールさんは特別な人だと思っていますので」

ラミエ先生「そう」

 

ほんの少しの間、二人の間に沈黙が訪れた。

 

ラミエ先生「ねぇ」

レヴィ「はい」

ラミエ先生「…あの子に持たせてるあの粉…あれあなたが渡したの?」

レヴィ「…それについては私も聞きたいところです」

ラミエ先生「ということはあなたじゃないのね?」

レヴィ「はい」

ラミエ先生「じゃあ一体誰が…」

レヴィ「さぁ…誰なんでしょうか」

ラミエ先生「…私があの子と話した時、あの子の口からジンの名前が出てきた」

レヴィ「!!」

ラミエ先生「私はジンが渡したんじゃないかって思ってる。あなたはどう?」

レヴィ「…可能性はありますね」

ラミエ先生「それともうひとつ」

レヴィ「?」

ラミエ先生「私がいない間、一体何があったの?」

レヴィ「!」

ラミエ先生「学校中に亀裂や破損が見られるわ。誰か攻撃でもしたの?」

レヴィ「…エレナ学院初代学院長…エレナ元学院長がこの学校に来ました」

ラミエ先生「!?」

レヴィ「彼女はラーフとジーヴル先生を奪い、この学校を去りました」

ラミエ先生「なぜ…エレナ学院長が…」

レヴィ「ラミエ先生。"元" 学院長ですよ」

ラミエ先生「そ、そうね…」

レヴィ「彼女の目的はリールさんを回収することだそうです」

ラミエ先生「あ、あの子を?」

レヴィ「はい」

ラミエ先生「でもなぜ…」

レヴィ「それは分かりません。しかし、リールさんは今、あの粉を持っています。故に回収することができなかったそうです」

ラミエ先生「隔絶…」

レヴィ「…はい。そういう事です」

ラミエ先生「そう。だから今保健室に3人ほどいるのね」

レヴィ「恐らく」

ラミエ先生「でもなぜ?あなた結界を展開してなかったのかしら?」

レヴィ「いえ、展開していました。ですが、私の結界を貫通する程の魔力が使われたため、外界に魔力が漏れ出し、エレナ元学院長が来ました」

ラミエ先生「あなたの魔力を上回るほどの魔力…それ相当な魔力じゃない?」

レヴィ「はい。さっきまでその原因を調査していたところ、第1魔法戦闘室であるものを感じ取りました」

ラミエ先生「あるもの?」

レヴィ「はい。あそこから魔女さんの魔力を感じ取りました」

ラミエ先生「魔女さんって?エレナ元学院長のこと?」

レヴィ「…"狂気の魔女"の事です」

ラミエ先生「!?」

 

ラミエ先生は驚いた。

 

ラミエ先生「狂気の魔女って…え…まだ存在していたの?」

レヴィ「…いえ、実際にいたわけではなく、魔力を感じ取ったってだけです」

ラミエ先生「あ、そ、そうね。でも驚いた…まさかその人の名前を聞くことになるなんて…」

レヴィ「…」

ラミエ先生「ねぇ…その人が関わってる…なんて事ないわよね?」

レヴィ「…分かりません」

ラミエ先生「…そう。心配になってきたわね…」

レヴィ「…今は結界も再展開しています。しばらくは大丈夫かと」

ラミエ先生「1学年と3学年の生徒は?」

レヴィ「彼らは大丈夫です。階層が違うので。それに、エレナ元学院長は戦闘時に結界を展開していましたので、上の階や下の階には被害はありません。被害があるのはこの階層だけです」

ラミエ先生「…そう」

レヴィ「リールさんは今保健室に?」

ラミエ先生「えぇ。いると思うわ」

レヴィ「そうですか。では私はこれで」

ラミエ先生「えぇ。分かったわ」

 

スタスタスタ

コツコツコツ

レヴィ学院長とラミエ先生はそれぞれの方向へ歩き出した。

 

ラミエ先生「リーナ…あなた…今度は何する気よ…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…保健室

 

ガラッ

突然保健室の扉が開いた。

 

レヴィ「リールさんはいますか?」

リール「!」

 

入ってきたのはレヴィ学院長だった。

 

リール「あ、はい。ここにいます」

 

スタスタスタ

レヴィ学院長はリールのところに向かった。

 

レヴィ「リールさん。ひとつ、聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」

リール「はい。いいですよ」

レヴィ「実は先程までなぜエレナ元学院長がこの学校に来たのか…その原因を調査していました」

リール「はい」

レヴィ「その結果、私の結界を貫通する程の魔力が使われたことが分かりました」

リール「…」

レヴィ「私は自分で言うのもなんですが、魔力は大きい方だと思います」

リール「…」

レヴィ「ですが、その時だけ私の結界は意味をなさず、魔力が漏れてしまいました」

リール「…」

レヴィ「この学校で私の魔力を上回るのはこの保健室の先生であるラミエ先生くらいです。その他の人は私に及ぶことはないです。ですがあの時…そんな私の魔力を遥に上回った魔力が使われたことが分かりました」

リール「…」

レヴィ「ラミエ先生かと思われましたが、その時ラミエ先生はある場所にいたのでその可能性はゼロに等しいです。では誰がやったのか」

リール「…」

レヴィ「ここの生徒の中でズバ抜けて大きな魔力を持ち、この学校では誰も持っていない属性魔法を使うことができる人。私はその時…ある人が真っ先に思い浮かびました」

リール「…」

レヴィ「リールさん。あなたですか?」

リール「…」

 

リールは少し考えて発言した。

 

リール「…はい。恐らく私だと思います」

レヴィ「…やっぱりそうでしたか」

リール「私の魔法って…そんなに強いものなんですか?」

レヴィ「いえ。私からすればそこまで危険なものではないです。なので結界を貫通することはないと思います。ですがその時は貫通した。リールさんの使った魔法の中に強い魔力を放つ魔法がありませんでしたか?」

リール「私の使った魔法…確か…」

 

リールはあの時の戦闘で使った魔法をなんとか思い出した。

 

リール「光玉(ライダラ)閃光(フラッシュ)光速(オーバースピード)天の光(リレミト)天の鎖(エルキドゥ)…」

レヴィ (天の光(リレミト)!?)

リール「あとは…」

レヴィ「ちょっと待ってください!」

リール「?」

レヴィ「リールさん今…天の光(リレミト)って…」

リール「はい。言いました」

レヴィ「!!」

 

レヴィ学院長は驚きを隠せなかった。

 

リール「な、何かマズイことでも…」

レヴィ「あ、いえ…天の光(リレミト)は魔女さんが使っていた強力な魔法なので…」

リール「あ、はい。魔女さんに教わりました」

レヴィ (やっぱり…)

リール「この魔法のせいでしょうか…」

レヴィ「えっと、調査していた時に大きな魔力を感じ取ったんですが、その時にあの魔女さんの魔力も感知しました」

リール「!!」

レヴィ「てっきり魔女さんがやったのかと思ってたんですが、魔女さんはある場所にいるため、それも無いだろうと…思っていました」

リール「…」

レヴィ「リールさん。その魔法は魔女さんに教わったんですよね?」

リール「あ、はい。魔女さんに教わりました」

レヴィ「あ、だから魔女さんの魔力も感じられたのか…」

リール「恐らく…」

レヴィ「分かりました。これで解決しました」

リール「そうですか。それは良かったです」

レヴィ「ですがリールさん」

リール「はい」

レヴィ「今回の原因は私の結界を貫通したことにあります。結界は従来のものより遥かに強固に展開しました。ですが、今回みたいなことになる可能性は無きにしも非ずです。ですので、今後一切、第1魔法戦闘室以外の場所での魔法の使用は禁止します」

リール「え…」

レヴィ「私の力不足もありますが、あなたの魔力が私の魔力を上回ってしまった…この結果だけでも十分脅威となります。なので今後一切、あなたが魔法を使うことを禁止します。いいですか?」

リール「それ…破ってしまったら…どうなるんでしょうか…」

レヴィ「…残念ながら、退学処分となります」

リール「…そ、そうですか…」

レヴィ「すみません。私の力不足でこうなってしまって…」

リール「いいんです。私が調子に乗ったのが悪いんです」

レヴィ「…それでは私は行きますね」

リール「…はい」

 

スタスタスタ…ガラッ…

レヴィ学院長は保健室を出た。

 

リール (どうして…こんな目に…)




〜物語メモ〜

ラミエ先生
エレナ学院の保健室の先生。
回復魔法に特化した人で彼女にかかれば怪我や病気は全て治せる。
最近ある場所に出かけていたため、エレナ学院で起こったことを知らない。
ちなみに、回復魔法に特化した人だが、属性魔法が使えないわけではない。
ラミエ先生は風属性魔法の適性者。
かつて風属性魔法を極めようとしたが、ある事がキッカケで回復魔法の道を歩むこととなった。
そのおかげで今はエレナ学院の保健室の先生となっている。
ちなみに、魔力はレヴィ学院長より上。
回復魔法に特化してるが故に持つ魔力も大きい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。