私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

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第37話 リールと魔女さんの名前

私の名前はリール。

今魔女さんの家にいます。

先程までみんなで魔力を計測していました。

みんな魔力が高くて驚きました。

ですが私の魔力はエラーが出て正確な数値が分かりませんでした…。

魔女さんが昔、魔力を計測した時はエラーが出ただけじゃなく、計測器も壊れてしまいました…。

私はエラーが出ただけで壊れることは無かったんですが、壊れるくらいになるということはそれくらい魔女さんの魔力が強かったのではないかと思いました。

考えれば考えるほど魔女さんの存在が遠くなって分からなくなりました。

…いつか魔女さんから直接お話を聞きたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…ブエルタ王国 キファの部屋

 

キィン!バゴォォォォォン!

エレナはキファに向かって魔法を放ち、キファはその衝撃で腕から血を流した。

 

キファ「くっ…」

エレナ「あらあら…そんなに逃げなくてもいいじゃないですか」

 

ブゥン…バババババババババ!

エレナは魔弾(ブラック・ベルト)を放った。

 

キファ「クソッ!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

キファは風属性魔法を使って魔弾(ブラック・ベルト)を避ける。

 

エレナ「いい動きですね」

キファ (チッ…涼しい顔しやがって…)

エレナ「では…これはいかがですか?」

 

ブゥン!

キファの足元に魔法陣が展開された。

 

キファ「な…」

エレナ「禍玉(ヴィド・ダラ)

 

ジジジジジジジジジジ!

魔法陣から紫色の雷が放たれた。

 

キファ「があああああああ!」

 

キファはまともに攻撃を受けてしまった。

 

エレナ「ふふふふふ…」

キファ「がぁっ…はぁ…はぁ…」

エレナ「まだまだいきますよ」

 

ブゥンブゥンブゥン!

エレナは多数の魔法陣を展開した。

 

エレナ「この程度で殺られちゃうと十二使徒の名折れですよ」

 

キィンキィンキィン!

魔法陣が光り出した。

 

エレナ「闇への誘い(ダーク・ネフェル)

 

ビュンビュンビュン!

魔法陣から無数の手がキファに向かって伸びた。

 

キファ「クソッ!」

 

ビュン!

キファは風属性魔法を使ってその場から離れた。

 

ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!

 

キファ「な…」

 

しかしその手はキファの両腕両足を掴み、キファの動きを封じた。

 

キファ「クソッ!離せ!」

エレナ「…せっかく捕まえたのに離すわけないじゃないですか」

 

ブゥン…ジジジジジジジジジジ!

 

キファ「な…」

 

魔法陣から出てきた手が1ヶ所にマナを集め始めた。

 

キファ「何をする気だ!」

エレナ「何って…殺す気ですよ」

キファ「くっ…」

 

ジジジジジジジジジジ!

集まったマナが闇属性魔法へと変換され、攻撃態勢に入った。

 

エレナ「これはもう甘んじて受けるしかありませんよ。狂風の使徒 レギン」

キファ「くっ…俺を…」

エレナ「…?」

キファ「俺をその名で呼ぶなああああああああ!」

 

ズシャシャシャシャシャシャ!

キファは風属性魔法で両腕両足を掴んでいた手を切り刻んだ。

 

エレナ「おっと…これは意外ですね」

キファ「はああああああああ!」

 

ビュォォォォォォ!ズシャッ!ズシャッ!ズシャッ!

キファは風属性魔法で攻撃態勢に入っていた手を切り刻んだ。

 

ジジジ…シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとマナが弾け、魔法も消え去った。

 

エレナ「あらら…やられちゃいましたか…」

キファ「死ねえええええええ!」

 

ビュォォォォォォ!

キファは風属性魔法を放った。

 

エレナ「はぁ…私は闇属性魔法なので…」

 

ヒュッ!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

エレナは爆発を起こした。

 

キファ「くっ…」

エレナ「この程度…造作もないんですよ」

キファ「なら…衝撃風(インパクト・ブレイズ)!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

キファの放った魔法は上から下へ衝撃波を放ち相手にダメージを与える魔法。

 

キィン!キィン!キィン!

しかし、エレナは自分に結界を展開しており、キファの魔法が通じなかった。

 

キファ「クソッ!」

エレナ「無駄です。あなた程度の魔力じゃ私の結界を突破することなんて不可能ですよ」

キファ「だったらこれはどうだ…」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

キファは魔法を中断して魔力を上げた。

 

エレナ「…」

キファ「吹っ飛べ…下界の人間…」

 

ビュォォォォォォ!

キファの周りに風が出現した。

 

エレナ「あら、本気で戦って下さるんですか?」

キファ「本気だと?舐めたこと言うな」

エレナ「…?」

キファ「死ぬ気で殺るんじゃあああああ!」

 

キィン!バゴォォォォォン!

キファは自分の杖先から木属性の波動砲を放った。

 

キファ「はあああああああああ!」

 

パキパキ…パリン!

エレナの結界が一部砕けた。

 

エレナ「あら…私の結界にヒビが」

キファ「消えて無くなれええええええええええ!」

 

パキパキパキパキ…パリン!

ついにエレナの結界が突破された。しかし、それと同時にキファの魔法も解けてしまった。

 

エレナ「ふふっ…いいですね。私の結界を突破するなんて」

キファ「チッ…はぁ…はぁ…」

エレナ「では、再展開しましょう」

 

パキパキパキ…ガシャン!

エレナは結界を再展開した。

 

キファ「な…」

エレナ「だから言ったじゃないですか。あなたはボコボコにされて負けを認める…と」

キファ (チッ…ここまでか…)

エレナ「まさか、もう終わりとか言いませんよね?もっとやりましょうよ」

 

ギュオオオオオオ!

エレナの掌に渦ができた。

 

キファ「!!」

エレナ「そんなつまらない人間だったんですか?十二使徒とは」

 

キィィィィィィィィィィ…

その渦は闇属性魔法を放つ準備をしていた。

 

キファ「まだ…まだだ…」

エレナ「…」

キファ「まだ…負けてない…」

エレナ「その意気ですよ。では、死んでください」

 

キィン!バゴォォォォォン!

その渦は闇属性魔法を放ち、キファの部屋の壁を貫通した。

 

 

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場所…魔風の谷

 

国民「こんな所にいても大丈夫なんじゃろうか…」

国民「でもキファ様がここに集合って命令したらしい…」

国民「変な人がここに現れて何人もの兵士が一方的にやられたって聞いたよ」

国民「なんと…」

国民「今はキファ様を信じて待つしかないかもしれん…」

国民「でもなんで魔風の谷に集まるように言ったんだろ…」

国民「魔風の谷は下界に繋がる緊急脱出用の場所なんだ。ここから飛び降りたらすぐ地上に降り立つことができる。キファ様は俺たちを逃がすのを前提でここに集めたんだと思う」

国民「なるほど…納得じゃ」

国民「しかしいつまでここにいなきゃいけないんだ。もうかれこれ1時間だぞ」

国民「それほど強敵なのかもな…」

 

バゴォォォォォン!

 

国民たち「!?」

 

凄まじい爆発音とともに、1本の紫色の光が空を駆けた。

 

国民「なんじゃ…今の音は…」

国民「さっきの光もそうだ…あの光は闇属性魔法特有の色だ」

国民「何!?じゃあ相手は闇属性魔法の適性者か!」

国民「あぁ。俺も一度見たことある…闇属性魔法の攻撃魔法の色は紫。さっき飛んできた光と同じ色だ」

国民「そんな…」

国民「仮にほんとに闇属性魔法なら…」

国民「…勝ち目があるかどうか…」

国民「キファ様を信じろ!あの人はこの国1番の実力者だ!簡単には負けん!」

国民「そ、そうだな!キファ様は強いからな!」

国民「キファ様ぁぁぁぁ!勝ってくだされぇぇぇぇ!」

 

 

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場所…キファの部屋

 

エレナ「…さて、受けてみた感想はありますか?」

キファ「がっ…ごふっ…」

 

キファはさっきの攻撃をまともに受けてしまった。

 

エレナ「あらあら…随分お辛いでしょうね」

キファ「はぁ…はぁ…はぁ…」

エレナ「さぁ、魔核を渡してください。渡していただけたらこれ以上戦いません」

キファ「…俺が…その口車に…乗るとでも思ってんのか…」

エレナ「思いませんよ」

キファ「へっ…分かってるじゃねぇか…」

エレナ「ですからこうやって脅しているんですよ。早くしてください」

キファ「はぁ…はぁ…脅すにしては優しいな」

エレナ「…もっとキツイ方がいいですか?」

キファ「いいや…それで十分…」

エレナ「さぁ、早く渡してください」

キファ「…断る」

エレナ「…」

キファ「俺は渡さないと言った…お前はなんて言った…渡してくださいと…願ったのか…?」

エレナ「…」

キファ「違うだろ…お前は力づくで取ると言った…なら…ここで願っても仕方ねぇだろ…」

エレナ「…正解ですね」

キファ「だから俺は戦った…」

エレナ「そうですね」

キファ「…さて…続き…やろうや」

エレナ「…」

 

スッ…

キファはゆっくり立ち上がった。

 

エレナ「あら、命乞いですか」

キファ「命乞いだ?…舐めたこと言うなよ…」

エレナ「…」

キファ「これから死ぬやつに命乞いなんてするかよ!」

 

ビュォォォォォォォ!

キファを中心に強い風が展開された。

 

エレナ「…あらあら…素晴らしい魔力ですね。流石、一国を担ってるだけありますよ」

キファ「ほざけ…ぶち殺すぞ…」

エレナ「勝手にどうぞ。あなたこそ、それを撃つのは構いませんが、私に殺されることも視野に入れて下さいね」

キファ「入れねぇよそんなもん。俺はお前を殺すことしか頭にねぇからなぁ!」

エレナ「…随分怖い人ですね」

 

ビュォォォォォォォ!

キファは集めた風を球体に収めた。

 

キファ「これで最後だ…これでてめぇをぶっ飛ばす…」

エレナ「…そうですか。では私も攻撃準備に入りましょうか」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

エレナは急速に魔力を溜め始めた。

 

キファ「へっ…今更遅い…俺の方が早いな」

エレナ「早さなんてどうでもいいです。結局は立ってた方の勝ちですので」

キファ「…いくぞ!」

 

ビュォォォォォォォ!

キファは溜めた魔力を風の球体に送った。すると球体は光り出し、魔力を得たことを伝えた。

 

キファ「周囲を薙ぐ破裂の風(エレギナ・レヴン)

 

ドゴォォォォォォン!

キファはその球体をエレナに向けて放った。その際に周りの物を巻き込み、更に大きな球体となった。

 

エレナ「…」

 

バゴォォォォォォン!

エレナはそこから1歩も動くことはなかった。キファが放った球体はまっすぐエレナに向かって飛び、当たった瞬間凄まじい爆発とともに溜めた風を周囲に放出した。

 

キファ「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

キファは魔力を使い果たした。最後の魔法がキファの出せる最大魔力であり、奥の手だった。そのせいか周囲の家具や壁、城の3割がこの魔法によって吹き飛んだ。そして、目の前にエレナはいなかった。

 

キファ「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

キファは周囲を見渡し、エレナがいないことを確認した。

 

キファ「はぁ…はぁ…手間取らせやがって…」

 

キファはその場をあとにし、部下たちにエレナがいなくなったことを伝えに行こうとした。

 

キファ「みんな…ちゃんといるかな…」

 

キファは部下と国民の事が心配で一目散に向かおうとした。

 

エレナ「ちゃんと避難してますよ。あなたの好きな国民は」

キファ「!!」

 

キファはその声に反応し、後ろを振り返った。

 

エレナ「…あの程度ですか?」

キファ「な…」

 

エレナは全くの無傷だった。これといって外傷は見られず、おまけに結界すら破壊されていなかった。

 

キファ「な…あれが通用しない…だと…」

エレナ「…はぁ。あなたそれでも十二使徒ですか」

キファ「なんだと…」

エレナ「…正直ガッカリです。今まであなた方に見つからないよう隠れて生活してましたが、ここまで弱いなら隠れる必要なんてありませんでしたね」

キファ「…」

エレナ「……さて」

 

ジジジ…バリバリバリ!

 

キファ「!?」

 

エレナはさっきまで溜めていた魔力を再展開し、再び溜め始めた。

 

エレナ「これはさっきのと同じものです。あなたの魔法がぶつかる前に一旦保存しておきました」

キファ「な…」

エレナ「さて、ここで最後の警告です。魔核を渡せばこれを消します。ですが渡さなければあなたを消します。どちらがいいですか?」

キファ「っ…!!」

 

キファは迷った。魔核を渡せば自分は死なずに済む。しかし魔核はリノからもらった大事なものだから渡したくなかった。かといって戦おうと思っていても魔力が尽きている今は負けは必然。自分の命を取るか、リノからもらった魔核を取るか。キファは最後まで悩んで答えを出した。

 

エレナ「…さぁ。どちらがいいですか?」

キファ「…決まってるだろ…魔核は渡さねぇ」

エレナ「…」

キファ「これはリノからもらった大事なものだ。他の誰にも渡さねぇ」

エレナ「…そうですか」

 

キファは魔核を渡さない選択をした。自分の命より大事なものを取ったのだった。

 

エレナ「なら、あなたを消します。さようなら」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

エレナの魔力は膨れ上がっていた。

 

キファ「!!」

 

その魔力はキファが今まで感じた中で2番目くらいに強かった。

 

キファ (この魔力…リノくらい…いや、もしくはそれ以上…)

エレナ「さようなら。狂風の使徒 レギン」

 

キィン!

エレナが溜めた魔力が光りを放った。

 

キファ (…みんなすまねぇ。先に逝って待ってるぞ。リノ…お前の大事なもんを最後まで守れなかった…すまねぇ…)

エレナ「死に誘いし宵闇の魔法(フォルメア・メル)

 

ギィン!バゴォォォォォォン!

エレナは容赦なく魔法を放った。キファは抵抗することなくまともにその魔法を受けた。

 

 

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場所…魔風の谷

 

バゴォォォォォォン!

凄まじい爆音が城から遥か遠くの魔風の谷まで届いた。

 

国民「な、なんだ今の音は!」

国民「ただの爆発か!?」

国民「キファ様が侵入者を倒した音だろ!」

国民「だが我々風属性魔法の使い手には爆発させる魔法を使う人物はいないはず…」

国民「え…じゃあ…」

国民「違う!キファ様がやられるもんか!あの人はこの国で1番強いお方だぞ!」

国民「そうだ!キファ様は負けてない!きっと激しい戦闘だからそういう音が響いてきただけだ!」

 

国民たちはキファが負けてないと信じていた。しかし一人の男が自分の持っている杖を見て悟った。

 

???「…」

 

その人はエレナが来る前にキファに現状を伝えに来た人物だった。その人の杖は根元にクリスタルが埋め込まれており、キファの状態を知らせるものだった。彼は兵団のトップであり、キファの側近でもあった。そのためキファに何かあった時に真っ先に行動できるよう杖も特殊なものを使っていた。

 

???「…キファ様…」

 

その人の杖は常に光っており、何か異常なことが起こると色が変化する仕組みになっていた。過去に何度か色が変化することはあったが、今回は違った。

色が消えていたのだった。

その人の杖はまるで息を引き取ったかのように光を失い、全く機能していなかった。

 

???「そ…そんな…」

 

 

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場所…キファの部屋

 

エレナ「…全く。手間を取らせますね」

 

エレナの周囲は何も無かった。先程の爆発でキファの周囲は何もかも破壊され、城も完全に破壊されていた。

 

エレナ「…さて、回収しましょうか」

 

スタスタスタ

そんな中エレナはキファのいる場所が分かるのか、迷わずにそこに向かった。

 

ザッザッザッ…

エレナは立ち止まった。目の前には倒れたキファがいる。キファは全身血だらけで目も閉じており、体も動いていなかった。

 

エレナ「…では、約束通り魔核を頂きますね」

 

スッ…ドスッ!

エレナはキファの胸に自身の手を突き刺し、キファの体から魔核を取り出した。

 

エレナ「…風属性魔法の魔核。間違いないですね。ではさようなら」

 

スタスタスタ

エレナはその場を後にした。

 

 

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場所…魔風の谷

 

国民「キファ様なら大丈夫だ!あのお方なら絶対倒してくれる!」

国民「そうだ!俺たちとは比べ物にならないくらい強いお方だ!そう易々とは負けん!」

国民「あの方は頼れるお方だ…ワシらをしっかり見てくださる…」

国民「キファ様は強い!だから負けない!」

 

国民はキファが勝つと信じながら言葉を発していた。しかしそんな中、ひとつの影が姿を現した。

 

エレナ「あの人は死にましたよ」

 

その一言で魔風の谷は一瞬で静寂に包まれた。さっきまで国民の声でいっぱいだったそこはその一言で静まり返り、そこにいた国民は一斉にエレナを見た。

 

国民「な…なんだお前…誰だ!」

エレナ「私はエレナと言います。そして、あの人を殺した張本人です」

国民「!?」

 

そこにいた国民は驚いていた。いきなり現れたその人がいきなりキファを殺したと言ったからだ。

 

国民「な…キファ様が…死んだ…」

エレナ「はい。私が殺しました」

国民「ふざけるな!誰だお前!」

エレナ「名前はさっき言いました。2度も言わせないでください」

国民「お前ごときがキファ様に敵うわけがない!嘘をつくな!」

エレナ「嘘ではありませんよ。そんなに信じられないなら今すぐ戻ってみてください。そこに真実がありますよ」

 

スタスタスタ!

すると国民は我先にとキファの城まで走った。

 

エレナ「…」

???「お前…」

エレナ「!」

 

国民がキファの城へと向かう中、1人だけその場に留まっていた。

 

エレナ「…なんでしょうか」

???「お前が…キファ様を…」

エレナ「はい。私が殺しました」

???「っ!!」

 

スッ!

その人は杖を取り出した。

 

エレナ「…何をする気ですか?」

???「お前を殺してやる…キファ様の仇…」

エレナ「やめた方がいいですよ。あなたもあの人と同じ目に遭います」

???「刺し違えてでもお前を殺してやる!」

エレナ「…はぁ。あの人ですら勝てなかったのにあなたが私に勝てるとでも?」

???「知るかそんなこと!」

エレナ「…あの場所に戻った方が賢明ですよ」

???「お前に指図される筋合いはない!」

エレナ「なら、私が送り届けてあげます」

???「ふざけるな!お前を殺してや」

 

フッ…

 

エレナ「…」

 

一瞬にしてその人は姿を消した。さっきまで目の前にいたはずだが、瞬きの瞬間、その人はそこにはいなかった。

 

エレナ「…さて、次行きましょうか」

 

スタスタスタ

エレナはその場を立ち去った。

 

 

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場所…魔女さんの家

 

ラミエ先生「じゃあリール。私たちはここを出るわ」

リール「はい!分かりました!ありがとうございました!」

メリー「リールちゃん!何かあったらすぐ連絡して!私が助けに行くから!」

リール「はい!」

ラミエ先生「さ、行くわよメリー」

メリー「うん!」

 

ガチャ…バタン

ラミエ先生とメリーはそれぞれ仕事があるため、魔女さんの家を出た。

 

リール「さて、みなさんはどうしますか?」

アンナ「私はここにいたい」

スカーレット「私も」

オード「俺もだ」

ディア「じゃあ俺も」

ノーラ「俺も」

リール「ではこれからどうしますか?」

アンナ「リールから無属性魔法を教わりたい!」

リール「え?無属性魔法ですか?」

スカーレット「そうね。私もそうしようかしら」

オード「俺たちもだ!」

リール「そうですねぇ…」

 

コンコン

突然家のドアがノックされた。

 

リール「ん、誰でしょうか」

 

スタスタスタ

リールは玄関に向かった。

 

ガチャ

リールは玄関を開けた。

 

リール「はい。どなたですか?」

???「あら、初めて見る顔ですね」

リール「!!」

 

ノックをしたのは不思議な女性だった。その人は右目が赤、左目がグレーのオッドアイだった。

 

???「ここはリーナの家ではないのでしょうか」

リール (リーナ?誰のことでしょうか…)

???「おかしいですね。前はここに住んでたはずですが…」

リール「あ、あの…」

???「?」

リール「あなたは…どなたでしょうか」

???「あ、そうですね。あなたと私は初対面でしたね。紹介が遅れてしまい申し訳ありません」

リール (すごい言葉が綺麗な人…)

グラム「私の名前はグラムと言います。以前ここに住んでいた者です」

リール「え!ここに住んでた方ですか!?」

グラム「はい。昔の話ですが」

リール「あ、あの…すみません!私はリールと言います!今この家に住んでいます!」

グラム「え、リール?」

リール「はい!リールと言います!」

グラム「そうですか。あなたがリールさんなんですね」

リール「?」

グラム「リーナから話は聞いています。お会いできて光栄です」

リール「えっと…」

グラム「?」

リール「私の事…ご存知なんですか?」

グラム「はい。リーナから聞いています」

リール「あ、えっと…と、とりあえずお話を聞かせてください!」

グラム「はい。構いませんよ」

 

ガチャ…バタン

グラムは家に入った。

 

リール「こ、こちらへどうぞ!」

 

スタスタスタ

グラムはリールに案内されてリビングに置いてあるソファまで案内した。

 

リール「おかけください!」

グラム「はい。失礼します」

 

グラムはソファに座った。

 

リール「紅茶をお出ししますので少しお待ちください!」

 

スタスタスタ

リールは紅茶を淹れに行った。その間グラムは家の中を見渡した。

 

グラム「…変わりませんね。この家は」

オード「あの…」

グラム「?」

オード「あなたはリールのお知り合いですか?」

グラム「…あなた方はあの子の友達ですか?」

オード「はい。みんなリールの友達です」

グラム「そうですか。お友達もたくさんいて喜ばしい限りです」

オード「それで…あなたは…」

グラム「あ、私はグラムといいます。この家に住んでいた者です」

スカーレット「この家に…住んでいた…」

グラム「はい。昔の話ですが」

オード「リール以外にこの家に住んでた人がいたんだ…」

グラム「あ、今は別の場所に住んでいますよ」

アンナ「あの…」

グラム「はい」

アンナ「何かご用があって来られたんですか?」

グラム「はい。そうです」

リール「紅茶が入りました。こちらをどうぞ」

 

コトッ

リールはグラムという名の女性に紅茶を出した。

 

グラム「あら、ありがとうございます」

 

カチャ…ゴクッ…ゴクッ…

グラムは紅茶を手に取り、口に含んだ。

 

グラム「…あの時から変わらないお味。美味しいですね」

リール「ありがとうございます!」

 

カチャ…

グラムは手に取った紅茶を置いた。

 

グラム「リールさん」

リール「はい!」

グラム「あなたの事はリーナから聞いています。今はエレナ学院に通われているんですよね?」

リール「あ、はい。ですが今はこの家にいます」

グラム「不思議ですね。あの学院は寮生活のはず」

リール「はい…今は休学してるんです」

グラム「休学…何故ですか?」

リール「…学院長との約束を破ってしまったからです」

グラム「約束?」

リール「はい」

グラム「どのような約束ですか?」

リール「学校以外では魔法を使わないこと…です」

グラム「はぁ…あの子ったら…」

リール「学院長ともお知り合いなんですか?」

グラム「はい」

リール「そうなんですね」

グラム「あの子、今はどうですか?」

リール「えっと…どうなんでしょう…よく分かりません」

グラム「そうですか。分かりました。あ、あとひとついいですか?」

リール「はい。何でしょうか」

グラム「あなた、先程から魔女さんと呼んでいますが、あの人の名前を知らないんですか?」

リール「え、はい。知りません」

グラム「はぁ…全くあの人は…」

リール「えっと…あなたは魔女さんのお名前をご存知なんですか?」

グラム「はい」

リール「えっと…お名前は…」

グラム「リーナといいます」

リール「リーナ…それが魔女さんの名前…」

グラム「はい」

リール「あの、つかぬ事をお聞きしますが、あなたはこの家に住んでいたり、魔女さんや学院長とも面識があったりと、何か関係がおありですか?」

グラム「はい」

リール「どういった関係が…」

グラム「…あの子たちは」

リール 「…」

グラム「リーナとレヴィは…"私の弟子"です」

リール「……………」

 

リールは一瞬、その言葉の意味が分からなかった。でもすぐに理解し、言葉を発した。

 

リール「えええええええええええええ!?」




〜物語メモ〜

禍玉(ヴィド・ダラ)
エレナが使った魔法。
魔法陣を展開し、雷を放つ魔法。
闇属性魔法の適性者でありながら雷属性魔法を使っている異例な魔法。

闇への誘い(ダーク・ネフェル)
エレナが使った魔法。
魔法陣を展開し、無数の手を召喚する魔法。
召喚された手は真っ先に相手を拘束する。

衝撃風(インパクト・ブレイズ)
キファが使った魔法。
風の塊を上から下に衝撃波として放つ魔法。

周囲を薙ぐ破裂の風(エレギナ・レヴン)
キファが使った魔法。
風の塊を作り、相手に向かって放つ魔法。
放てば相手に当たるまで追尾する。
その際に周囲の物や壁を薙ぎ倒して追尾する。

死に誘いし宵闇の魔法(フォルメア・メル)
エレナが使った魔法。
闇属性魔法で固めた魔力を相手の近くで爆発させる魔法。
威力が高く、光属性魔法の適性者以外は致命傷を負う。

グラム
右目が赤、左目がグレーのオッドアイの持ち主。
昔、魔女さんの家に住んでいた人物で魔女さんとレヴィ学院長のお師匠様。

リーナ
魔女さんの名前。

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