私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

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ここでちょっとお知らせです。

2月14日から投稿が遅くなるとしていましたが、いつも通りできそうですので、いつも通り投稿していきます。しかし、忙しい時は投稿出来ませんので、ご了承ください。

お知らせは以上です。


第38話 リールと狂気の魔女の正体

私の名前はリール。

今、魔女さんの家にいます。

先程、グラムという名前の女性が家に来ました。

どうやら前にこの家に住んでいたらしく、魔女さんや学院長のこともよく知っているそうです。

聞くところによると魔女さんの名前はリーナというらしく、魔女さんと学院長はグラムさんのお弟子さんだそうです。

色々聞きたいことはありますが、とりあえず落ち着こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…アースの部屋

 

???「アース様!お伝えしたいことがあります!」

アース「なんだ」

???「先刻、キファ様が統治していたブエルタ王国が何者かによって大打撃を受けました!」

アース「なんだと!」

???「加えてキファ様も重傷で現在集中治療を行っているそうです!」

アース「なんだと…一体誰が…」

 

ピピピ!ピピピ!ピピピ!

突然アースの通信端末が音を鳴らした。

 

ピッ!

アースはボタンを押して対応した。

 

アース「私だ」

ジン「俺だアース!ジンだ!」

アース「ジンか。どうした」

ジン「キファがやられた!」

アース「!」

ジン「相手はエレナだ!」

アース「何!?エレナだと!?」

ジン「今さっきブエルタ王国の使者がここに来たんだ!その時にエレナという人に攻撃されて兵士数名とキファが怪我をしたと!そのうちキファは重傷で現在集中治療をして残りの兵士は動ける状態だそうだ!」

アース「くっ…あの女め…」

ジン「アースどうする!相手はエレナだ!並の魔力じゃキファのようになる!」

アース「しかし、私たちがなんとかしないと民たちが…」

ジン「アース!俺はマークと一緒に戦う!」

アース「!!」

ジン「マークもその気だ!何かあったら俺たち2人でエレナと戦う!負けてもいい!刺し違えてでも勝ってやる!」

アース「待てジン!ここで2人が犠牲になったらさらに酷くなる!ここはレヴィ学院長に頼むしかない!」

ジン「あの人には言ってある!だが協力は薄い!俺たちでどうにかするしかない!」

アース「くっ…」

 

アースたちはキファがやられた情報をキャッチした。しかし、相手がエレナということもあって迂闊には手を出せなかった。

 

アース「…どうすればいいんだ…」

 

 

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場所…魔女さんの家

 

グラム「リーナとレヴィは…"私の弟子"です」

リール「えええええええええ!」

 

リールはとても驚いたのか、家の外まで響くくらいの大声を出した。

 

グラム「?」

リール「え…え!?えええええ!?」

 

リールは何を喋ろうか迷っていた。

 

アンナ「リール!落ち着いて!落ち着いて!」

 

トントントン

アンナはリールの背中を軽く叩く。

 

リール「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

リールは少しずつ落ち着いてきた。

 

グラム「…大丈夫ですか?」

リール「は、はい…大丈夫…です…」

グラム「そこまで驚かれるとは思っていませんでした」

リール「あ、いえ…まさか魔女さんと学院長のお師匠様だなんて…」

グラム「意外ですか?」

リール「いえいえ!ただ驚いただけですよ!」

グラム「そうですか」

リール「あ、あの!」

グラム「はい。何でしょうか」

リール「魔女さんのことをもっと色々教えてください!」

グラム「リーナの事ですか?」

リール「はい!魔女さんの過去のことが知りたいです!」

グラム「そうですねぇ…あの子は飛び抜けて頭が良かったと思いますよ」

リール「へぇ!」

グラム「勉強できますし、魔法も1度見たらある程度再現できますし」

リール「す、すごい…魔女さん」

スカーレット「リールのお師匠様って相当強いのよね…」

アンナ「うん…聞いただけだけどリールよりも強いってリールが言ってた…」

スカーレット「そのリールのお師匠様のお師匠様がここにいるってことは…」

アンナ「この人はさらに強い…」

オード「す…すげぇな…リールのやつ…」

ディア「人間関係がえげつねぇ…」

ノーラ「もうこの人たちでどうにかできそうなくらいだ…」

リール「他には!他にはありませんか!!」

グラム「そうですねぇ。リーナはレヴィの事を常に気にかけていましたね」

リール「何故ですか?」

グラム「リーナとレヴィは血の繋がりはありませんが、姉と弟で姉弟弟子だったんですよ」

リール「姉弟弟子?」

グラム「はい。リーナは姉。レヴィは弟という立場でした。リーナは弟であるレヴィに何も起こらないよう常に見守っていました」

リール「やっぱり優しい人だったんですね」

グラム「はい。レヴィはそんな姉であるリーナの事が大好きでしたよ」

リール「おぉ!」

グラム「それまではそんな幸せな毎日が続きましたが、ある時それは無くなってしまいました」

リール「!」

グラム「…この先は辛い過去の話になりますが、構いませんか?」

リール「辛い過去の話?」

グラム「はい。今まで話していてあなたも知るべきだと考えていました。今からあなたが知るべき話をしようと思っています。聞きますか?」

リール「聞きます!聞かせてください!」

 

グラムは紅茶を飲み干して話し始めた。

 

グラム「"狂気の魔女" についての話です」

スカーレット「!!」

リール「狂気の…魔女…」

グラム「はい。ある時、一国を全て破壊した魔女が存在しました。彼女は生まれ持った強大な力を使い、その国をたった1人で破壊しました」

リール「国を…たった1人で…」

グラム「はい。元はただの魔法使いでした。その人には弟がいて、常に気にかけていました」

リール「…」

グラム「ですがある時、ある学院の学院長が彼女を学校に引き入れようとしました。ですがその人たちはそれを拒否しました。当時のその学院の噂を知っていたからです」

リール「噂?」

グラム「はい。それは、魔法使いや魔女を兵器として使うという噂です」

リール「魔法使いや魔女を…」

アンナ「兵器…」

グラム「そうです。今の時代にはその面影はありません。昔は戦争が絶えない時代でしたので、国を守るための兵器が必要でした。しかし、その国には兵器と呼べる鉄や火薬などはありませんでした。そこで当時の学院長が考えた策として、自身が学ばせている生徒たちを兵器化するということでした」

アンナ「兵器って…その人たちは機械にされたんですか?」

グラム「いえ、そういう訳ではありません。しかし、その人たちは国を守る、もしくは国を落とすために魔法を学ばされることになりました」

リール「そんな…」

グラム「ですが、当時の生徒たちの出来は悪く、とても戦争に勝てるほどではありませんでした」

リール「!」

グラム「そこで当時の学院長はある情報をキャッチしたのです。それが、町外れにある家に住んでいる魔女の話です」

リール「魔女…?」

グラム「はい。その情報を聞きつけた当時の学院長は数名の生徒を編成し、彼女の家に押しかけました。その人たちは最初、学院に通うことを否定しました。しかしながらその人たちは力が及ばず、そのまま彼女を学院に無理やり引き入れてしまったのです」

リール「そんな…」

アンナ「可哀想…」

グラム「…それから2年。1度も帰ってくることがなかった彼女は、ついに家に帰ってきました」

リール「ほっ…それはよかったです…」

グラム「しかし、その背景には燃え盛るひとつの国がありました」

リール「!」

グラム「その燃え盛る国を背に帰ってきた彼女の目には光がなく、ただただ本能のままに行動したことを告げていました」

リール「じゃあ…その人が国を破壊した人…」

グラム「そうです。その人がその国を破壊し、傷ついたまま帰ってきたのです」

リール「…」

グラム「そして帰ってきた彼女を見た彼女の弟は嬉しさのあまり彼女に抱きつきました。当然です。無理やり離ればなれにされて2年、1度も会えなかったんですから」

リール「…」

グラム「そして帰ってきた彼女はただいまと言う前にこう告げました。『人を殺した』と」

リール「!!」

グラム「目に光がなかった彼女でしたが、それでも自身が犯した罪を認識していました」

リール「…」

グラム「それからというもの、彼女は身を隠すためにその家を離れることとなり、今も尚、この世界に存在しています。そして、この事件を聞いた当時の人たちは彼女のことを "狂気の魔女" とそう名付けました」

スカーレット「そ…そんな話が…私もその話はお父さんに聞きましたが、それでも表の話だけ…こんな深いところまでは聞いたことがないわ…」

オード「あの、その魔女は結局どうなったんですか」

グラム「何年か経つと人は当時のことを忘れていきました。それを機に彼女は元々暮らしていた家に戻りました」

オード「おぉ、それはよかった…」

グラム「そしてもうひとつ。リールさん」

リール「はい」

グラム「当時狂気の魔女と呼ばれたその人が…あなたのお師匠様。つまり、リーナです」

リール「!!」

スカーレット「え…」

アンナ「嘘…」

オード「な…」

ディア「嘘だろ…」

ノーラ「なんだと…」

 

みんなその発言に驚いていた。

 

グラム「そして、当時リーナを学院に引き入れた人こそ、エレナ学院 元学院長であるエレナという人物です」

リール「え…」

 

その場にいたみんなは言葉が出なかった。

 

ノーラ「じゃ、じゃあつまり…エレナって人がリールのお師匠様を学院に入れて兵器として使おうとしていた…そういう事ですか?」

グラム「はい。そういう事です。ですが、結果的にリーナがその国を破壊してしまったので、その国が戦争に参加することはありませんでした」

スカーレット「その国っていうのは…今私たちが暮らしている国…ですか」

グラム「はい」

アンナ「じゃあさっきの話に出てきた弟は…」

グラム「現エレナ学院 学院長のレヴィです」

リール「…あの」

グラム「はい」

リール「いくつか質問が…あります」

グラム「何でしょうか」

リール「エレナさんは…私を回収すると言いました。それは…私を兵器として使うためですか…」

グラム「…分かりません」

リール「…」

グラム「それはご本人しか分からないことです」

リール「では…あなたはリノという人物をご存知ですか」

グラム「!」

リール「私はエレナさんからリノという人物を呼ぶために魔核を集めていると聞きましたが、私はリノという人物を知りません。教えて頂けませんか。リノという人物は…誰でしょうか」

グラム「…この世界には裏の世界が存在します」

スカーレット「裏の世界…」

グラム「はい。そこは辺り一面暗く、誰も認識できない場所だそうです」

リール「…」

グラム「私たちはその場所を "深淵" と呼んでいます」

リール「!!」

 

リールは深淵という言葉に聞き覚えがあった。

 

リール (あの小さな手紙にもあった…)

グラム「そこにはかつて地上にも存在した人を喰らう生物… "ドレイン" がいます」

リール「!」

グラム「加えて、そのドレインたちが二度と地上に出ないよう足止めをしている人物がいます。…それがリノと呼ばれる人物です」

ノーラ「なんでドレインはその深淵って場所にいるんですか?」

グラム「あの生物は元々この世界には存在していませんでした。しかし、ある時にそれは現れ、人を喰い、強くなり、手に負えなくなりました。そこでリノと呼ばれる人物が、己が体を依代として全てのドレインを深淵に封印しました」

リール「あの…」

グラム「はい」

リール「あなたはこれを見たことがありますか」

 

カサッ…

リールはリノの置き手紙を出した。

 

グラム「…これは」

リール「エレナさんが言うにはリノの置き手紙だそうです」

グラム「!!」

 

グラムは驚いていた。

 

グラム「…なぜ、あなたがこれを」

リール「…スカーレットの家にある書物から頂きました」

グラム「なるほど…では見つけたんですね」

リール「…ここにはリノという人物が書き残した手紙が書かれてあります。エレナさんは読むことができませんが、私は読めます」

グラム「では、あなたは…」

リール「はい。私は光属性魔法の適性者です」

グラム「な…なんと…」

リール「そしてこの手紙には深淵とこれからドレインが解き放たれると書かれています」

グラム「な…」

スカーレット「え!?」

アンナ「リール!ほんとなの!?」

リール「本当です。エレナさんはリノという人物を呼ぶために魔核を集めています。リノならどうにかできると…そう言っていました」

グラム「あの人…」

リール「あなたは深淵とリノという人物について他になにか知りませんか?」

グラム「…そうですね。私が知っているのはここまでです」

リール「…」

グラム「もし詳しく聞きたいのでしたら、エレナかリーナに聞くことをオススメします。2人は1番リノに近しい人物でしたから」

リール「そうですか…」

グラム「ですが、エレナの場所はここからだと遠いです。おまけにあなた方がいけば確実に死にます」

リール「え、場所が分かるんですか?」

グラム「はい」

リール「あの人は今どこにいるんですか!教えてください!」

グラム「…死者の集う場所 "冥界" です」

リール「め…冥界…」

グラム「はい。あそこは危険です。水属性魔法の適性者以外は全員死にます」

アンナ「わ、私…水属性魔法の適性者です!」

ノーラ「俺もだ!」

グラム「そうですか。ですがマナの圧に耐えられませんよ」

アンナ「え…」

グラム「冥界ということもあって外界からは隔絶されています。そこへ行ったはいいものの、帰って来れなくなりますよ」

アンナ「そんな…」

グラム「それならリーナの方が早いです」

リール「なら魔女さんはどこにいるんですか!!」

グラム「リーナならエレナの部屋にいます。拘束されてますね」

リール「拘束…」

グラム「あ、ひとつ忘れていました」

リール「?」

グラム「あなた、先程魔核を集めてるって言ってましたよね?」

リール「はい」

グラム「魔核はリノが12個に分けて当時生き残った人たちに渡しています。繋がりがあるなら、何か知ってるかもしれませんよ」

リール「そ、そうですか…」

グラム「…さて、私はそろそろ行きますね」

リール「え…」

グラム「あなたに会えて良かったです。リールさん」

リール「待ってください!」

グラム「はい。何ですか?」

リール「た…助けては…貰えないんでしょうか」

グラム「…私にはその資格がありません。ご自身の力で頑張ってください」

リール「そう…ですか…」

グラム「あ、あとひとつ」

リール「?」

グラム「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

リール「どういう事ですか?」

グラム「リノが言っていた言葉です。あなたが光属性魔法の適性者ならいつかこの言葉が役に立つでしょう」

リール「そ、そうですが…」

グラム「…!!」

 

グラムは一瞬だけ視界が揺らいだ。

 

グラム (何…今の感じ…この子から?)

 

グラムはじっとリールを見た。

 

リール「?」

グラム (いえ、そんな事は…)

リール「あの…どうされましたか?」

グラム「あ、いえ…なんでもありません。それでは行きますね。紅茶、美味しかったです」

 

スタスタスタ…ガチャ…バタン

グラムはその場をあとにした。

 

リール「?」

 

 

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グラム (まさか…今まで見つけられなかったのに今更ここで…。もし本当ならあの子は…今のあの子はあの子じゃない。時間と次元、時空が全て隔絶されていた。まさか…本当に…刻運命の粉を…)

 

 

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場所…深淵

 

???「…」

 

そこは深淵。地上とは全く異なる地形で構成された世界。この世界にはドレインしか存在せず、ドレインは他のドレインを取り込み強くなっていた。しかし、そんなドレインしかいない世界に1人の女性がいた。その人は深淵が誕生してからずっとそこに()()

 

???「…」

 

その人はドレインに体を侵食されて尚、生きている。人の記憶と自我を持っている。

 

???「…近い」

 

ここにはその人とドレインしかいない。過去にここに来たのはたった1人だけ。それでもその人は深淵のマナの圧に耐えきれないためにすぐに去った。あれから何年か経ったが、その間誰も来ることはなかった。

 

???「…早く来て。レナ」

 

その人は待ち続けている。光属性魔法の適性者か。自分の娘か。この世界を大きく変える存在か。




〜物語メモ〜

狂気の魔女
狂気の魔女の正体は昔の魔女さん。現在の魔女さんよりかは弱かったが、それでも一国を滅ぼすことができるほどの力を持っていた。

魔女さんとレヴィ学院長の関係
魔女さんとレヴィ学院長は昔、グラムの弟子だった。先に魔女さんが弟子となり、後からレヴィ学院長が弟子となった。年齢的にも魔女さんの方が上のため、魔女さんが姉、レヴィ学院長が弟という立場であった。

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