私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

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第43話 リールとオードの風邪

私の名前はリール。

今エレナ学院にいます。

昨日みんなで無属性魔法の練習をしました!

みんな上手に無属性魔法が使えてたのでとても安心しました!

ですが今日はオード君を見ませんね。

いつもならディア君とノーラ君と一緒にいるはずなんですが…

何かあったんでしょうか。

ディア君とノーラ君に聞いてみようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…教室

 

ディア「え?オード?」

リール「はい。今日は1度も見ていません」

ノーラ「あいつなら風邪で寝込んでるぜ」

リール「え!?風邪引いてるんですか!?」

ディア「あぁ。何でも急激な体調の変化が原因らしい」

リール「え…」

ノーラ「でも保健室に行くほどじゃないらしいから部屋で寝てるよ」

リール「あの…それって…」

ディア「ん?」

リール「それって…昨日の無属性魔法の練習が原因…ではないでしょうか」

ディア「…」

ノーラ「…いや、オードはあの日の晩に氷食ってたからそれが原因なのかもよ」

リール「…そうですか」

ディア「…」

ノーラ「じゃあ俺たちはそろそろ行くわ。2人も気をつけな」

アンナ「うん」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

ディアとノーラはその場をあとにした。

 

リール「…」

 

リールは責任を感じていた。男の子とはいえ、あんなにも魔法の実験体になっていると体調を崩してもおかしくないと。自分がオードに任せっきりだったから起こったことだと。

 

リール「…アンナ」

アンナ「何?」

リール「…今日は1人で帰ってもらってもいいですか?」

アンナ「え?うん。いいけど…もしかしてリール…」

リール「…はい」

アンナ「…分かった。気をつけてね」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

アンナは教室をあとにした。

 

リール (…オード君)

 

タッタッタッ!

リールは走ってある場所に向かった。

 

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場所…保健室

 

ガラッ!

リールは勢いよく扉を開けた。

 

ラミエ先生「?」

リール「先生!!」

ラミエ先生「どうしたのよ」

リール「風邪薬となにか消化にいいものはありませんか!」

ラミエ先生「風邪薬ならあるけど消化にいいものはないわ」

リール「では風邪薬を!!」

ラミエ先生「誰か風邪引いたの?」

リール「はい…オード君が…」

ラミエ先生「そう。分かったわ。少し待ってて」

 

そう言ってラミエ先生は棚から薬を出してきた。

 

ラミエ先生「これが風邪薬よ」

リール「ありがとうございます!」

ラミエ先生「食べ物ならお粥とか作ってあげなさい」

リール「はい!」

 

タッタッタッ!

リールは走ってオードの部屋に向かった。

 

ラミエ先生「…はぁ…青春ね〜」

 

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場所…オードの部屋の前

 

リール (オード君の部屋…事前に聞いててよかったです…聞いてなかったら二度手間になってました…)

 

コンコン

リールはオードの部屋の扉をノックした。

 

ガチャ…

少ししてゆっくりと扉が開いた。

 

オード「誰…」

 

中から弱々しいオードが出てきた。

 

リール「オード君…大丈夫ですか…」

オード「…」

 

オードは少しだけ目を開けて前を見た。

 

オード「!」

 

目の前にはリールが立っていた。手には何やら袋がある。

 

オード「リー…ル…」

リール「はい。リールです。オード君が風邪で寝込んでいるとお聞きしたので看病しに来ました」

オード「…え?」

 

オードは聞き違いだと思っていた。

 

オード「え…もっかい言って…」

リール「看病しに来ましたので中に入れてもらえませんか?」

オード「…あ、どうぞ」

 

オードは頭が痛いため考えるのをやめた。

 

ガチャ…

リールとオードは部屋に入った。

 

オード「靴はそこに置いてて…台所はあそこ…で、ここが…」

 

オードは何も考えずに部屋を紹介している。

 

オード「分かった…?」

リール「はい!お任せ下さい!オード君はベッドでお休みになられてください!今すぐ料理しますね!」

オード「…うん」

 

ヨレヨレ…ヨレヨレ…

オードはふらつきながらもベッドに向かった。

 

オード (そういえばディアのやつ…どこ行ったんだよ…病人の俺を置いておくとか)

リール「ではオード君。台所少しお借りしますね」

オード「あぁ…」

 

トントントン

リールは料理をし始めた。

 

オード (リールが俺の部屋で料理…俺の部屋で…料理…)

 

オードは料理をしているリールを見て思った。

 

オード (なんか…新婚さんみたいだな…)

 

そう思うとオードは恥ずかしさのあまり布団で顔を隠した。それからしばらくしてリールは料理を終えた。

 

リール「オード君。お皿はこれを使わせて頂いてもよろしいですか?」

オード「え、あ、あぁ」

 

カチャカチャ

リールは手際よく料理を済ませた。

 

リール「はいオード君!お料理ができましたよ!こちらに座れますか?」

オード「あ、あぁ…」

 

オードはゆっくり起き上がろうとした。

 

オード「うっ…!」

 

ズキン!

オードは急に頭痛がして再び寝転がってしまった。

 

リール「オード君!!」

 

リールはオードに近寄った。

 

オード「いってぇ…」

リール「オード君大丈夫ですか!?」

オード「あぁ…痛てぇけど…大丈夫だ…」

リール「…私が起こしてあげます」

オード「え!?」

リール「任せてください!」

オード「ちょ、待って!」

 

リールはオードの言葉に耳を貸さず、オードの体をゆっくりと起こした。

 

リール「オード君どこか痛いところはありませんか?」

オード「いや…その…」

リール「?」

オード「いや、どこも痛くない」

リール「ホッ…それはよかったです。ご飯食べられますか?」

オード「!」

 

目の前にはお粥と切ったリンゴがあった。

 

オード「これ…リールが?」

リール「はい。ラミエ先生が風邪にはお粥がいいと仰っていたので。リンゴは私の好きな食べ物ですので」

オード「…そうか」

リール「食べられますか?もし食べられなかったら私が食べさせますが…」

オード「…え?」

リール「え、なにか…」

オード「あ、いや…なんでもない。じゃ、じゃあ食べられなかったらお願いするわ」

リール「はい!」

 

オードはリールに体を触られてから妙に緊張していた。

 

オード「…いただきます」

リール「はい。お召し上がりください」

 

パクッ…パクッ…

オードはゆっくりではあるが、しっかりご飯を食べた。

 

リール「熱くないですか?」

オード「あぁ。熱くない。むしろ美味い」

リール「え!?ほんとですか!?」

オード「あぁ…美味い…」

リール「あ、ありがとうございます…」

 

リールは照れた。

 

オード「そういえばリール」

リール「はい。何でしょうか」

オード「さっきリンゴが好きって言ってたけど何で好きなんだ?」

リール「あ、私が以前魔女さんの家に住んでいた時に風邪を引いたことがありまして、その時に魔女さんがリンゴを食べさせてくれたんです。それがとても美味しくて…だから好きになりました」

オード「なるほど。そういうことか」

リール「はい。オード君はリンゴは好きですか?」

オード「そうだなぁ…嫌いではないが果物とか甘いものには疎いんだ。今まで肉とかしか食べてこなかったから」

リール「え、じゃあお粥じゃ足りないんじゃ…」

オード「いや、今は食欲がないからこの方がいい。むしろ今結構満足感がある」

リール「そうですか。それは良かったです。あ、さっき果物とか甘いものには疎いって言ってましたよね?」

オード「あぁ」

リール「では今度私と一緒に果物か甘いものを食べに行きませんか?」

オード「…え?」

 

カランカラン!

オードは思わずスプーンを落とした。

 

リール「あ、大丈夫ですか!?」

オード「あ、あぁ…いや、大丈夫…大丈夫だ…」

リール「どうかされましたか?」

オード「あ、いや…な、なんでもない…」

リール「?」

オード (え、ちょっと待てよ…これって…デートってやつか?マジ?俺がリールとデートできるのか?いいのか?ほんとに…)

リール「オード君?」

オード「!!」

 

オードが気づいた時にはリールの顔が目の前にあった。

 

リール「大丈夫ですか?」

オード「だ、大丈夫だ…問題ない」

 

その後、オードはお粥を食べきった。

 

オード「…ふぅ、ご馳走様でした」

リール「はい。お粗末様でした」

オード「これ…リンゴ…食べてもいいか?」

リール「はい!私はお皿を洗ってきますね」

オード「あぁ。すまない」

リール「いえいえ!オード君のお陰でみんなが無属性魔法を使えるようになったんです!感謝しかありませんよ!」

オード「…そうか」

 

シャクッ…シャクッ…

オードはリンゴを食べた。

 

オード「…うん。美味い…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

それから数分が経過した。リンゴは2つだけ食べて残りは冷蔵庫に入れておくことにした。

 

リール「体調はどうですか?オード君」

オード「あぁ。だいぶ良くなった。リールのお陰だな」

リール「そんな!私はただお粥を作っただけですよ!」

オード「いや、俺にはそれで十分だった。ありがとうリール」

リール「!」

 

リールはとても嬉しくなった。

 

リール「…そう言っていただけて光栄です」

オード「俺は少し横になるけどリールはどうするんだ?」

リール「あ、でしたら少しお待ちください」

オード「?」

 

リールはオードの布団をどけた。

 

リール「ではオード君。私が手伝いますのでベッドに横になりましょう」

オード「え!?いいっていいって!大丈夫だって!」

リール「いえ、ご飯の前には頭痛があったそうですので私が手伝います」

オード「いや、もう頭痛は治ってるって」

リール「ダメです。一人でやろうとすると負担になりますよ。私に任せてください」

オード「そ、そうか…な、ならお願いする…」

リール「はい!」

 

こうしてリールはオードをベッドに寝かせて布団をかけた。

 

リール「他に何かして欲しいことはありますか?」

オード「いや、もう大丈夫だよ。ありがとう」

リール「はい。あ、では飲み物を持ってきますね」

 

スタスタスタ

リールは飲み物を取りに行った。

 

オード (…幸せだ)

 

オードは心の中でそう思った。

 

リール「風邪の時は水分が抜けやすいと聞きましたので、こまめな水分補給は大事ですよ」

オード「あ、ありがとう」

リール「あ、あと」

オード「?」

 

ギシッ…

リールはオードの上に跨った。

 

オード「ちょ、リール!な、何して…」

リール「じっとしててください」

 

そう言うとリールはオードの頬に手を添えてオードの額に自分の額を当てた。

 

オード「!!」

リール「…」

 

ドクドクドクドクドクドクドク!

オードの心臓の鼓動が速くなった。

 

オード「っ…」

 

オードは恥ずかしくて目を瞑っていた。

 

リール「…大丈夫なようですね」

オード「!」

 

そう言うとリールは額をどけた。

 

リール「熱は少し下がっているようですよ。良くなっている証拠です」

オード「そ、そうか…」

リール「もし何かありましたら私の方に。あと飲み物はこの机の上に置いておきますね。リンゴは冷蔵庫に入れてありますので食べてくださいね」

オード「お、おう…」

リール「明日、元気なオード君を見れることを楽しみにしていますよ」

オード「!!」

リール「それでは私はこれで帰りますが、他に何かして欲しいことはありますか?」

オード「あ、あぁ…いや、大丈夫…かな…」

リール「そうですか。分かりました。ではまた明日」

オード「あ、あぁ…また明日」

 

スタスタスタ…ガチャ…バタン

リールはオードの部屋を出た。

 

オード「…」

 

オードは余韻に浸っていた。

 

オード (リールのおでこが俺のおでこに…。てかリール…めちゃめちゃいい匂いだった…てか今までで1番近かったんじゃないか?記録更新できたんじゃないか?しかもリールの手料理とリールが持ってきた飲み物、リールが好きだと言って切ってくれたリンゴ…全部リールがやってくれた。…しかも俺の体に触れてた…やっべぇ…ドキドキしてたのバレてねぇかな…バレてなきゃいいけど…)

 

その後、部屋に戻ってきたディアは冷蔵庫からリールが切ったリンゴを1つ取って食べたせいでオードに怒られた。




〜物語メモ〜

リール
リールは魔女さんの家にいた頃から料理をしていたのである程度のものは作れる。
魔女さんの家にいる頃に、風邪を引いた時は魔女さんがリンゴを切って食べさせてくれたため、リールはリンゴが大好き。

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