私の名前はリール。
ある魔女さんと一緒に暮らしています。
昨日は魔女さんに箒や杖の使い方を学びました。
自分にとってはいい体験だったと思います。
そして今日は魔女さんの顔色が少し悪いように見えました。
何かあったのかな?
私を呼び出した魔女さんは悲しい顔でその訳を話し始めました。
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魔女さん「リール。今日は大事なお話があります」
リール「大事なお話ですか?」
魔女さん「はい。あなたの今後に関わる大事なお話です」
リール「…」
私は魔女さんの真剣な顔を見てとても大事な話だと悟った。
魔女さん「とりあえずそこに座ってください」
リール「はい」
私は魔女さんの向かいの椅子に座った。
リール「あの…魔女さん」
魔女さん「リール」
リール「はい」
魔女さん「あなたはこの先色々な魔法を学びたいと思っていますか?」
リール「はい。もちろんです」
魔女さん「その魔法はどのように使うつもりですか?」
リール「えっと…まぁ自分の生活を便利にしたり…ですかね」
魔女さん「そうですか」
リール「?」
魔女さん「その魔法を人を殺めたり傷つけたり…そのように使う予定は無いんですね?」
リール「え…そんな事には使いませんよ…」
魔女さん「…」
スーッ…
魔女さんは二つ折りにされた紙を出した。
リール「魔女さん…これは?」
魔女さん「…ある学校の入学希望の手紙です」
リール「入学希望の手紙?」
魔女さん「はい」
リール「見てもいいですか?」
魔女さん「いいですよ」
カサカサ…
私はその手紙を読んだ。
リール「エレナ学院 入学希望届?」
魔女さん「はい。そうです」
リール「魔女さん。エレナ学院って何ですか?」
魔女さん「数々の魔法使いを育成している学校です」
リール「ふむふむ…」
魔女さん「そこへ行けばここで習うよりも遥かに多くの魔法を学ぶことができます」
リール「おぉ…」
魔女さん「その学校は寮生活なのでここからの通いではなくなります」
リール「え?そうなんですか?」
魔女さん「はい。学校と寮が一緒になっている建物なので常にあちらにいることになります」
リール「それって…魔女さんとは離ればなれってことですか?」
魔女さん「…はい。そういう事になります」
リール「え…」
私は魔女さんと一緒に暮らせないことをここで知った。
魔女さん「色んな魔法を学びたいリールのことを考えたらこの学校に入学するべきなんですが、私はリールと離れるのは少し気が引けます」
リール「…」
魔女さん「リールはこの学校に入学したいと思いますか?」
リール「わ…私は…」
私はここで迷った。確かに私は色々な魔法を学びたいと言った。この学校に行けばそれが叶う。でも、私を保護してくれた上に魔法も教えてくれた魔女さんと離ればなれになるのは嫌だった。私自身、魔女さんと一緒に暮らしたいと思ってる。もっと魔女さんから色々学びたいと思ってる。でもそれだと限界がある。魔女さんは私をこの学校に通わせることで私の願いを叶えようとしている。でも魔女さん自身も私と同じで離れるのは嫌って言ってた。魔女さんとの生活を取るか、自分の願いを取るか。答えはもう…決まっていた。
リール「…嫌です」
魔女さん「!」
リール「魔女さんと離れるのは嫌です」
魔女さん「リール…」
リール「確かに私は色々な魔法を学びたいと言いました。ですが、全ての魔法を学びたいとは言っていません」
魔女さん「!」
リール「私は少しの魔法が使えたらそれでいいです。さっきも言いました。私は魔法が使えたら自分の生活を便利にしたいと。人を傷つけたりするために魔法を学んでいる訳では無いです」
魔女さん「…」
リール「それに、色々な魔法というのは魔女さんが教える魔法で十分だと思っています」
魔女さん「!」
リール「学校に行ってまで…魔女さんと離れてまで魔法を学びたいとは思いません」
魔女さん「…リール」
リール「私はまだまだ魔女さんに魔法を教わりたいです。なのでこの学校には行きません」
魔女さん「リール…ありがとう」
リール「え、あ、はい」
魔女さん「じゃあこれは無しという事にしますね」
リール「はい!」
魔女さんはその手紙を手に取った。
魔女さん「じゃあこれはもう必要ないので燃やしましょうか」
ボッ!
すると、魔女さんはその手紙を燃やし始めた。
チリチリ…チリチリ…
その手紙は完全に焼失した。
魔女さん「さて、これで綺麗に無くなりましたね」
リール「あ、あはは…」
魔女さん「あ、ひとつ言い忘れてたことがあります」
リール「なんですか?」
魔女さん「リールはこれから外には出ないでくださいね」
リール「…え?外出禁止って事ですか?」
魔女さん「はい」
リール「な…何故ですか?私…何かしましたか?」
魔女さん「いいえ。そういうことではないんです」
リール「え、じゃあ…」
魔女さん「…外出禁止にするのは、私と同じ目に遭ってほしくないからです」
リール「魔女さんと…同じ目に?」
魔女さん「はい」
リール「それは…どういう事でしょうか」
魔女さん「リール。覚えておいてください」
リール「は、はい…」
魔女さん「あの人たちは危険です。自分の国を発展させるために魔法使いを輩出しています。そのためには手段を選びません。常に自分たちの最善の策を取ります」
リール「え、でも、その国が発展するのはいい事なのではないでしょうか?」
魔女さん「ここで言う発展というのは他の国を蹴落とすという意味です」
リール「け、蹴落とす…」
魔女さん「はい。そして蹴落とすというのは…戦争ということです」
リール「え…」
魔女さん「つまりその国は自分たちの国を発展させて他の国を滅ぼすつもりでいるのです」
リール「で、でも…」
魔女さん「その国が悪いわけではないのです。問題はその国のお偉いさんです。その人たちは自分たちが上であることを維持するために他を落とすことを選ぶ人たちです」
リール「でもそれってその人たち自身は低いままって事ですよね?」
魔女さん「そうです。ただ地位が高いだけの無能です」
リール「ま、魔女さんって結構言うんですね」
魔女さん「当然ですよ。あの人には恨みしかありませんから」
リール「…」
その時の魔女さんの顔は酷く怒っている様子だった。あんな顔の魔女さんを見たのは初めてだった。魔女さんの身に一体何があったのだろうか。それを聞きたかったけど、聞ける雰囲気じゃなかったから聞くのをやめた。
魔女さん「…リール」
リール「はい」
魔女さん「…私があなたに外出禁止を言ったのは…」
リール「!」
魔女さん「…攫われる可能性があるからです」
リール「さ、攫われる!?」
魔女さん「はい」
リール「え…何でですか…」
魔女さん「…先程言いましたが、その国のお偉いさんは自分たちの国が発展すればいいと思っています。その過程は考えません。つまりその人を攫ってまで自分たちの国を強くしようとしています」
リール「え…」
魔女さん「あの手紙が来たって事は私たちの場所が特定されているということです」
リール「じゃあ…」
魔女さん「はい。リールが外に出たらその人たちに攫われる可能性があります」
リール「ひぇっ…」
魔女さん「私はリールを守るために外出禁止と言いました」
リール「わ、分かりました」
魔女さん「…ごめんなさいね。折角魔法を教えられると思っていたのですが…」
リール「い、いいですよ!勉強は家の中でも出来ますし!」
魔女さん「…そうですか」
リール「…」
その時の魔女さんの顔は酷く暗い様子だった。
魔女さん「…リール」
リール「は、はい」
魔女さん「明日、私はある場所に行かないといけません」
リール「え…」
魔女さん「1日家を空けることになります」
リール「え…」
魔女さん「リール。明日は絶対に外に出ないでください。家の中にいてください」
リール「は、はい…」
魔女さん「外の掃除はしなくてもいいです。この周囲に結界を展開しておきます。何かあったらこれを…」
リール「?」
スッ…
すると魔女さんはポケットからあるものを出した。
リール「こ、これは…」
魔女さん「危険を知らせるためのものです。何かあったらそれにマナを近づけてください。あとはマナが勝手にやってくれます」
リール「マナを近づけたらどうなるんですか?」
魔女さん「マナがそれに反応して私のところに危険を知らせてくれます。危険を察知したら私は直ちにリールの所へ向かいます」
リール「だ…大丈夫でしょうか…」
魔女さん「分かりません。ですが昨日、メリーにこの事を伝えました。なので明日はメリーが来てくれます。何かあったらメリーを頼ってください。最終手段としてそれを使ってください」
リール「わ、分かりました…」
そして私は魔女さんから白い結晶の様なものを受け取った。
魔女さん「それは首から下げることができますよ」
リール「え」
魔女さん「私が着けてあげますね」
すると魔女さんは私の首に白い結晶を着けてくれた。
魔女さん「あら、結構似合いますね」
リール「え、そうですか?」
魔女さん「はい。お似合いですよ」
リール「えへへ…ありがとうございます」
魔女さん「それではリール。明日、1日だけお願いしますね」
リール「はい。分かりました」
そしてその日は大事をとって1日家の中で過ごすことにした。
〜物語メモ〜
エレナ学院
魔法の町 スペルビアにある大きな学校。
そこでは色々な魔法を学ぶことができ、数多くの魔法使いを育成している。
スペルビアに生まれた子供たちは大体この学校に通っている。