私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

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第56話 エレナとリールの本名

私の名前はエレナ。

今スペルビア王国の地下にいます。

先程レナと呼ばれる人と対峙しました。

彼女はとても強く、私ではどうにもなりませんでした。

途中で割って入ってきたルルとララが止めなければ私は死んでいたでしょう。

…さて、私はルルとララに言われた通り、リールさんを深淵に連れて行こうと思います。

ですがあそこはとても危険です。

常に瘴気が漂っていますので普通の人間は少しいるだけで死に至ります。

ですがある人だけはその場に留まることができます。

それが光属性魔法の適性者です。

あそこは極度に濃い瘴気があるのでそれを祓うことができる光属性魔法しか存在できないのです。

…実際、今の深淵にはリノしかいません。

私は一度あの場所に行きましたがそれでも数分だけでした。

私ですらそこに存在することは許されないのです。

…そんな所にリールさんを連れていくのはとても危険です。

今のリールさんがリールさんじゃなくなるかもしれないのです。

ですがルルとララが連れて行くように言ってきたので仕方なく連れて行きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビア王国 地下

 

アンナ「あの…」

エレナ「何ですか?」

アンナ「リールのことでお話があります」

エレナ「…何でしょうか」

 

現在リールは意識が戻らず倒れている。傷は無いが体への負荷が大きく、回復が遅くなるとエレナは予想している。今はスカーレットたちがリールを見ており、アンナはその間にエレナから色々と聞こうとしていた。

 

アンナ「…リールの目の色が変わりました」

エレナ「…」

アンナ「リールの目は黒なんですが、先程は薄い黄色でした。…あれは一体何なんでしょうか」

エレナ「…そうですよね。あなたは知らなくて当然です」

アンナ「…」

 

エレナは1拍置いてから話し始めた。

 

エレナ「…リールさんの名前であるリールは実は本当の名前ではないんですよ」

アンナ「…え?」

エレナ「あの子の本当の名前はレナ。リノの娘で少し前までリーナが代わりに育てていたんです」

アンナ「え…え?」

エレナ「リノはあの子の母親です。今深淵という場所にいます」

アンナ「!」

エレナ「そしてリーナはリールさんのお師匠様なんです」

アンナ「あ、リールが言ってる魔女さんという人ですか?」

エレナ「そうです。あなた方の言う魔女さんがリーナという名前なのです」

アンナ「へぇ…リールのお師匠様にも名前があったんですね…」

エレナ「はい。今まで名前を明かさなかったのは当時の事件を伏せておくためなのです。あの時の事件はとても大きなものでしたから」

アンナ「そ…そうなんですね…」

エレナ「はい。で、あの子の目が薄い黄色になっていたのはまさに本当のあの子が顔を出したからなのです」

アンナ「本当の…リール?」

エレナ「はい」

アンナ「ということは今のリールは偽物…なんですか?」

エレナ「あ、今のリールさんは本物ですよ。ですがあのリールさんはリーナが育てたリールさんであってリノが育てたリールさんとはまた別の人なのです」

アンナ「???」

 

アンナはちょっと混乱した。

 

エレナ「つまりですね、リールさんの目が薄い黄色になっていたのはリノが育てたリールさんが顔を出したって感じです」

アンナ「そのリノさんが育てたリールは偽物ですか?」

エレナ「いえ、本物です」

アンナ「???」

エレナ「分かりやすく言えばあの子は表と裏の2つの顔があるという事なのです」

アンナ「あ、そういうことでしたか」

エレナ「はい。あの子の目が薄い黄色になっている時はあなた方が知っているリールさんとは別の人です。魔力も桁違いです。私と渡り合えるくらいですから」

アンナ「すごい…リール…」

エレナ「…リールさんが起きたら私はリールさんを深淵に連れて行きます」

アンナ「!!」

エレナ「でないとこの事件は解決しないそうですので」

アンナ「わ、私たちも!」

エレナ「あ、あなた方はお留守番です」

アンナ「え…どうしてですか!」

エレナ「あそこは普通の人間が行けば死にます。あなた方では瘴気に呑まれて生きては帰れませんよ」

アンナ「!!」

エレナ「…私でも死にます。ですがリールさんならその場に留まることができます」

アンナ「!」

エレナ「…あの子ならこの事件を解決することができます」

アンナ「あの…事件とは…」

エレナ「…今この世界はドレインの影響を受けています。まだその影響は小さいですが、それでも死人が出ました。…これからドレインはもっと多くなります。そうなるとこの世界から人が消えてもおかしくありません」

アンナ「!!」

エレナ「それを解決するためにリールさんが必要なのです」

アンナ「…」

エレナ「…みなさんも覚悟しておいてください。この先の未来で起こるドレインとの戦争…あなた方もただじゃ済みませんよ」

アンナ「…」

 

アンナは少し怖くなった。

 

エレナ「…リールさんが目覚めるまで事は進まないので大丈夫ですよ」

 

スタスタスタ

エレナはその場をあとにした。

 

アンナ「…リール…」

 

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場所…スペルビア王国 地上

 

エレナ「…」

 

スタスタスタ

エレナは周辺を歩いていた。

 

エレナ (…刻運命の粉がある限りあの子にこの運命を背負ってもらうしかないです。辛いでしょうが仕方のないことです)

 

スタスタスタ

エレナは歩を進める。

 

エレナ (…私が禁忌に触れようなんて言い出さなかったらこんなことにはなりませんでした。全て私の責任です)

 

ザッ…

エレナは足を止めた。

 

エレナ (…リノ、リーナ。…今こそこの呪いから解き放たれる時です。私たちでリールさんを…)

 

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場所…深淵

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは目の前の物体を見ていた。

 

リノ「…」

魔女さん「ねぇリノ。私たち…いつ死ねるのでしょうか。あの時…禁忌に触れたあの日。私たちは特殊な能力を得る代わりに死ねない呪いにかかってしまいました。死ねばこの呪いは解かれますが死ぬことが許されません。…なんと矛盾なことでしょう。これでは私たちは一生この罪を背負うしかありませんよ」

リノ「…」

 

だがその人は返事を返さなかった。

 

魔女さん「…またあなたの声が聞きたいです。リノ」

 

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場所…スペルビア王国 地下

 

しばらく時間が経ってリールが起きてきた。

 

リール「…」

アンナ「リール!」

 

タッタッタッ!

アンナがそれに気づいて走ってきた。

 

リール「…アンナ」

アンナ「大丈夫!?リール!」

リール「はい…大丈夫です…」

オード「リール!!」

 

タッタッタッ!

オードも気づいて走ってきた。

 

オード「リール大丈夫か!?」

リール「…はい…大丈夫ですよ」

オード「そうか…良かった…」

リール「あの…私は…」

オード「さっきエレナと戦ってたんだ。覚えてないか?」

リール「え…すみません…アンナたちと話しているところまでしか…」

アンナ (目の色が変わった時から…)

オード「そうか…でも良かった」

リール「…アンナ」

アンナ「何?」

リール「…お水ください」

アンナ「水?」

リール「はい…」

アンナ「待ってね」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

アンナは水属性魔法で水を生成しコップに入れた。

 

アンナ「はい。どうぞ」

リール「ありがとうございます」

 

ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…

リールはゆっくりとその水を飲んだ。

 

リール「…ふぅ」

 

リールは一息ついた。

 

リール「アンナ…」

アンナ「何?」

リール「…もう少し…休んでもいいですか…」

アンナ「いいよいいよ。しっかり体を休めてね」

リール「…すみません…何故か体が重くって…」

オード「さっきすげぇ魔法使ってたからか」

アンナ「そっか…リールにとっては大きな負担だったんだね…」

リール「すみませんアンナ…」

 

パタッ…

リールはアンナに寄りかかった。

 

アンナ「…おやすみなさい。リール」

 

リールはもう少しだけ休んだ。

 

オード (…いいなぁ)

 

そんなことを思うオードだった。

 

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場所…深淵の入り口

 

エレナ「…みんな集まるなんて何年ぶりかしら?」

 

エレナ「…」

エレナ「…」

 

現在深淵の入り口に3人のエレナが集まっていた。

 

エレナ「あなたですか。深淵の柱を壊しているのは」

エレナ「当たり前じゃない」

エレナ「今すぐやめて。ドレインが出てくるから」

エレナ「…嫌ね」

エレナ「…何故ですか」

エレナ「…私の目的は禍異者になること。この目的が達成されるまで壊し続けるわ」

エレナ「はっ…いい迷惑だわ」

エレナ「私がこの目的を持っているってことは少なからず本体であるあなたがそう思ってたってことでしょ?」

エレナ「…」

エレナ「なんで今になって止めようとするわけ?」

エレナ「…この世界にドレインは必要ありません。この世界はあの子たち人間のものです」

エレナ「で?だから何?それでドレインをあそこに封印し続けるってわけ?冗談じゃないわ」

エレナ「…」

エレナ「というか破壊しないとリノだって戻ってこないわ」

エレナ「!」

エレナ「あそこに封印されてるリノにまとわりついてるのが現ドレインの王。つまり禍異者ね。それを私が吸収してあげるって言ってるのよ。分かる?」

エレナ「…それでどうするつもりですか」

エレナ「それでお終いよ。私が禍異者になるの」

エレナ「…それだけで終わるとは到底思えないのですが?」

エレナ「そう?」

エレナ「てか待って。ドレインは闇属性魔法に反応するけどあなたに反応するとは限らないわ」

エレナ「さぁね。それはやってみなくちゃ分からないわ」

エレナ「…」

エレナ「とにかくこれ以上壊すのはやめてください。この世界に影響します」

エレナ「だったらリールを連れて来ることね」

エレナ「!」

エレナ「私が柱を壊しているのは深淵の扉を開ける鍵がないからよ。その鍵さえあれば壊さないで済むわ」

エレナ「あなた…」

エレナ「…リールさんはまだ眠っています。起きたら深淵に行くようあの子の友達に言ってありますので」

エレナ「そう。なら早くする事ね。私の気は短いから」

エレナ「…分かりました」

 

スタスタスタ

エレナはその場をあとにした。

 

エレナ「さて、私の目的まであと少し。これが達成されれば…」

 

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場所…深淵の入り口から少し離れたところ

 

エレナ「良かったの?野放しにして」

エレナ「構いません。どのみち殺られるのはあの人です」

エレナ「自分の分身なのに?」

エレナ「…」

エレナ「…寂しくならない?」

エレナ「…ならないと言えば嘘になります」

エレナ「!」

エレナ「ですがもうどうにもなりません。それにこの事件の大元の原因は私の発言にあります。私が動かないと…」

エレナ「…」

 

ポンッ…なでなで…

エレナ(分身)がエレナ(本体)の頭を撫でた。

 

エレナ「!」

エレナ「…無理しないでね」

エレナ「!」

エレナ「何かあったら私を頼って。私はドレインに詳しいから何か力になれると思うわ」

エレナ「…分かりました。では何かあったらお力添えを」

エレナ「えぇ。任せて」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

エレナは魔法陣を展開した。

 

エレナ「では帰りましょう」

エレナ「えぇ。そうね」

 

2人のエレナは魔法陣の上に立って瞬時にその場から離れた。

 

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場所…スペルビア王国 地上

 

シュッ…シュッ…

2人のエレナは深淵の入り口から戻ってきた。

 

エレナ「ではまた」

エレナ「えぇ。ちゃんと休みなさいよ。あなたも」

エレナ「…はい」

 

スタスタスタ

2人のエレナはそれぞれの場所に向かった。

 

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場所…スペルビア王国 地下

 

スタスタスタ

エレナが戻ってきた。

 

アンナ「あ、エレナさん…」

エレナ「リールはまだ起きませんか?」

アンナ「いえ、一度起きました。でも少しお水を飲んでまた寝ちゃいました。先程のエレナさんとの戦いが効いたのかと…」

エレナ「そうですか」

 

スタスタスタ…スッ…

エレナは腰を下ろした。

 

エレナ「…」

アンナ「…エレナさん」

エレナ「はい。何でしょうか」

アンナ「…リールをどうするつもりですか」

エレナ「!」

アンナ「私としてはリールを無理させたくありません。休ませてあげたいです」

エレナ「…そうね。私もそうさせてあげたいけどそうなるとここの人たちが死んじゃう可能性があるわ」

アンナ「…」

エレナ「でも私としてはそれを理由にリールさんを酷使したくありません」

アンナ「!」

エレナ「できることなら私が解決したいです。ですがやはり事はそう上手くいきません。リールさんの力がないとどうにもできません」

アンナ「…リール…」

 

アンナはリールの頭を撫でた。

 

エレナ「…」

スカーレット「アンナ」

アンナ「あ、スカーレット」

スカーレット「あなたはもう休みなさい。今度は私が見るわ」

アンナ「ありがとうスカーレット。でももう少しだけ私が見てもいい?」

スカーレット「ま、まぁアンナがいいならあとで私を呼んでね」

アンナ「うん。ありがとう」

 

スタスタスタ

スカーレットはその場をあとにした。

 

エレナ「…」

アンナ「エレナさん」

エレナ「何でしょうか」

アンナ「リールを…よろしくお願いします」

エレナ「!!」

 

エレナがアンナの方を見るとアンナは真剣な顔をしてエレナを見ていた。

 

アンナ「リールは私たちのために色々と手を尽くしてくれました。私たちはそろそろリールから卒業して一人でできるようにならなければなりません。私たちがいつまで経ってもリールを頼っているとリールは心配します。…ですのでどうかリールをお願いします」

エレナ「…」

 

エレナは遮ることなく全て聞いた。

 

エレナ「…いいんですか。それで」

アンナ「…はい」

エレナ「…分かりました。ではリールさんが起き次第出発します」

アンナ「…お願いします」

 

そうしてエレナたちは各々睡眠を取って朝を迎えた。




〜物語メモ〜

リールの本名
リールの本名はレナ。深淵に幽閉されているリノを母親に持ち、魔力の高さは母親譲り。エレナと渡り合えるくらいだが、本人がその魔力に耐えられるほどの強さではないため、体に大きな負担がかかる。
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