私の名前はリール。
今深淵 第一層 碧天の間にいます。
先程大きなドレインと戦っていました。
その戦いでエレナさんが大怪我を負ってしまいました。
傷はないのですが、目を開けないのでしばらくここで待機することにしました。
周囲は結界を展開しているので大丈夫かと思いますが、やはりさっきのようなドレインが出てくるとなると不安です。
早くエレナさんが起きてくれればいいのですが…
それにアンナやスカーレットの事も気になります。
みんなは今どうしているのか、怪我はしてないか、ご飯はしっかり食べているのか…とても心配になります。
場所…深淵 第一層 碧天の間(中間地点)
リール「…」
リールはエレナが起きるまでその場で待機していた。エレナは今も眠ったままで一向に起きる気配がない。
リール「…少し周りを見てきましょうか」
ザッザッザッ…
リールは周囲の安全確認のためにその場を動いた。
リール「…」
リールは周囲を見渡す。
リール「…異変はありませんね。ドレインもいなさそうですし」
ザッザッザッ…
リールは元いた場所に戻った。戻ってきたリールはしばらく座り込んである事を考えていた。
リール (リノ…私のお母さんの名前…)
リールは少し引っかかっていた。
リール (私の年齢は17歳。魔女さんと暮らしたのは1年半。だから16歳の頃に魔女さんに拾ってもらいました…。でも昔に見たある人の記憶…確かあの時は知らない女性が私に向かって謝っていました。何度も何度も。そしてその時その人は私のことをレナと呼んでいました…ここで少し引っかかります。魔女さんは私を森で拾ったと言っていました。私もそこからの記憶しかありません。ですが昔、私の頭に流れ込んできたある人の記憶。そこでは私視点の映像で誰かが私をレナと呼んでいました…。その時の記憶から魔女さんに拾われた間の記憶は…一体どこに…)
エレナ「ぅっ…」
エレナが目を覚ました。
リール「エレナさん!!」
ギュッ!
リールはエレナを抱きしめた。
リール「よかったです…目覚めて良かったです…」
エレナ「…私は一体…」
エレナは周囲を見渡す。
エレナ「…ねぇ…あのドレインは?」
リール「あ、えっと…私にも…分かりません」
エレナ「え?」
リール「気づいたらドレインはいなくなってて地面にいくつか穴が空いていました」
エレナ「え…何それ…一体どういう事よ…」
エレナは周囲を見渡した。確かに所々に小さな穴が空いていた。
エレナ (これは…一体…)
リール「エレナさん」
エレナ「な、何?」
リール「私たちはこの後どうすれば…」
エレナ「そ、そうね…とりあえずもう少しだけ休憩してから進みましょう」
リール「はい!」
そうしてエレナとリールは少しの間だけその場で休んだ。
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場所…第四層 深淵
魔女さん「…リノ。あなたの娘なのに酷いんじゃないですか?」
リノ「…」
魔女さん「…まぁ、やったのはあなたじゃないでしょうね。あなたにくっついているその怪物。それがあなたを操ってドレインを動かしてるんですよね?」
リノ「…」
魔女さん「…もう少しの辛抱ですよリノ。もう少しであなたの娘が来ますよ」
リノ「…」
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場所…第一層 碧天の間(中間地点)
エレナ「さて、そろそろ行きましょうか」
リール「はい!」
しばらく休んだエレナとリールは先に進むことにした。
スタスタスタ
エレナとリールは歩を進める。
エレナ「ねぇあなた」
リール「は、はい」
エレナ「…あなた、時々変にならない?」
リール「変…とはどういう…」
エレナ「いえ、いいわ」
リール「?」
エレナとリールがしばらく歩くと1つの大きな魔法陣が床に展開されている場所に着いた。
リール「エレナさん…ここは…」
エレナ「ここが次の層に行くための場所よ。ここまでが第一層。ここからが第二層よ」
リール「ここから…」
エレナ「…準備はいい?」
リール「…はい」
エレナ「…じゃ、行くわよ」
シュゥゥゥゥゥゥ…
エレナとリールが魔法陣の上に立つと、即座に魔法陣が起動して2人を別の場所へ転送した。
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場所…第二層 天臨の間
エレナとリールは天臨の間に着いた。そこは薄暗く、先程の碧天の間と比べて空気も悪かった。
リール「エレナさん…何だか変な臭いが…」
エレナ「これが瘴気よ」
リール「!」
エレナ「瘴気は人にとって有害なものよ。吸えばたちまち体が蝕まれるわ」
リール「え…じゃあ…」
エレナ「私とあなたは大丈夫よ。何も問題ないわ。あるとすればこの厄介な臭いね」
リール「え、なぜ私たちは大丈夫なのでしょうか」
エレナ「そりゃああなたは光属性魔法の適性者だからね。この瘴気に対する抗体を既に持ってるじゃない」
リール「でも…エレナさんは…」
エレナ「あ、私はドレインだから問題ないのよ」
リール「!!」
リールは驚いた。
エレナ「あら、そんなに驚くこと?もう1人の分身に聞かなかった?私たちはドレインだってこと」
リール「!!」
リールはエレナが2人現れた時のことを思い出す。確かにあの時、分身のエレナは自分をドレインだと言っていた。だがその人だけだと思っていたリールは驚いていた。
リール「確かに…あのエレナさんもドレインだと…」
エレナ「そうよ。本体は人間だけど私とあの子は分身体よ。しかも人間じゃなくてドレイン。見た目は人間だけどね」
リール「ひぇぇ…」
エレナ「さ、先に進みましょ。ここからはドレインは極端に少なくなってるから」
リール「はい」
スタスタスタ
エレナとリールは歩を進めた。
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場所…第二層 天臨の間(中間地点)
しばらく歩いたエレナとリールは中間地点にたどり着いた。
リール「本当にドレインがいませんね」
エレナ「えぇ。この瘴気はドレインにとっても有害なのよ」
リール「え、じゃあエレナさんも…」
エレナ「私は大丈夫よ。私の体って便利でね、この瘴気を吸って酸素を作ってるのよ」
リール「!!」
エレナ「だから呼吸に困ることもないのよ。気になるのはこの臭いだけ。ほんと嫌。この臭い」
周囲に漂う瘴気の臭いは例えるなら生ゴミのような臭い。普通の人間ならすぐに鼻をつまむくらい。臭いも強く、おまけに体を蝕むので第二層以降に人間が入ることは無い。ガスマスクのようなものはこの世界にはないため、対処法がない。
エレナ「…さ、行きましょ。あと半分だから」
リール「は、はい」
スタスタスタ
エレナとリールは歩を進めた。
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場所…第二層 天臨の間(最終地点)
エレナ「もうすぐよ」
リール「はい」
スタスタスタ
エレナとリールは休憩することなく歩き続けた。そのせいかすぐに第二層の最終地点に着いた。
???「異質な気配が2つ」
エレナ「!」
リール「!」
どこからともなく声が聞こえた。その声は太く、男性のものだと分かる。
???「この世界を壊す存在か。それともこの世界に光を灯す存在か」
エレナ「…」
リール「…」
エレナとリールはその声の方を見る。そこには1人の男性がいた。その男性は魔法陣の前に立っており、それはまるでエレナとリールが来ることを知っていて立ち塞がっているようだった。
メイビス「私の名前はメイビス。第三層 臨界の間へ通じる扉を守護している者だ」
リール「メイビス?」
エレナ「彼は第三層の門番をしているの。名前は冥邪神 メイビス。この世界のまとめ役よ」
メイビス「…どういうつもりですか。エレナ」
エレナ「…」
メイビス「あなた一人なら問題ありませんが、まさか光属性魔法の適性者を連れてくるとは」
エレナ「仕方ないでしょ。この世界が消えたら私たちは生きられない」
メイビス「…」
エレナ「私はあなたと戦う気は無いわ。この子もね」
メイビス「…そうですか。いいでしょう。通します。その代わり」
メイビスはリールを指さした。
メイビス「あなたはダメです。光属性魔法の適性者」
リール「!!」
エレナ「…メイビス。話聞いてた?」
メイビス「はい。聞いた上での判断です」
エレナ「だったら…」
メイビス「私は第三層 臨界の間を守護する者。第三層に何かあれば私の責任になります」
エレナ「…」
メイビス「ですのであなたはお通しできません」
リール「…」
エレナ「メイビス…」
メイビス「ところでエレナ。第二層の扉を守護しているイコイはどうしましたか」
エレナ「…いなかったわ」
メイビス「はぁ…あの子は…」
エレナ「だから私たちはここまで来れたの。でも今はあなたのせいで第三層に行けない。通してメイビス」
メイビス「ダメです」
エレナ「メイビス…」
メイビス「ダメです。答えは変わりません」
エレナ「…」
リール「あ、あの…」
メイビス「はい。どうしましたか」
リール「なぜ…私は通してもらえないのでしょうか」
メイビス「…気づかなかったんですか?」
リール「え?」
メイビス「あなたが通ってきた道を見てください」
リール「!!」
リールが後ろを振り返るとリールの歩いたところだけが白くなっていた。
リール「こ、これは…」
メイビス「この世界は全て闇属性魔法でできています。そのため光属性魔法の適性者であるあなたがここに来ると浄化作用が働いてこの世界が徐々に崩れていくのです」
パラパラ…パラパラ…
するとリールが歩いてきた地面が割れ、欠片が宙に浮き始めた。
リール「!」
メイビス「これがあなたを通さない理由。あなたを通せば私の管轄である第三層も崩れかねません。どうかお引き取りを」
エレナ「…」
パラパラ…パラパラ…
欠片が徐々に増えてきた。
メイビス「むしろここまで来て今まで気づかなかったのが不思議です」
リール「…」
エレナ「…メイビス。通して。私たちには時間が無いわ」
メイビス「何の時間でしょうか。この世界の滞在時間でしょうか?」
エレナ「違うわ。現世が耐えられるまでの時間よ」
メイビス「…何かあったのですか?」
エレナ「現世があなたたちドレインによって崩れてきているの。私たちはその元凶である禍異者を倒すためにここに来たの。だから通して」
メイビス「…おかしいですね。ドレインはここを通って外へ出ます。ここを通らずして外に出るのは不可能なのです。そして、ここ最近はドレインの姿を見ておりません。…あなたを除いて」
エレナ「でも外に出てきてた。あの禍異者が直接送り込んできたのよ」
メイビス「…その話…信ずる証拠は」
エレナ「でなきゃ私がこの子を連れてここに来るわけないでしょ。それにこの子は人間よ。長いことこの世界にいたんじゃ体が疲れてくるわ。だから早く事を済ませたいのよ」
メイビス「…そうですか。分かりました」
エレナ「じゃあ通し…」
メイビス「お引き取り下さい」
リール「!」
エレナ「!」
メイビスはエレナの言葉を遮って答えた。
メイビス「やはりあなたはこの世界を壊す存在でしたか。私にそんな偽りを信じろと?」
エレナ「偽りなんかじゃないわ!」
メイビス「現に証拠がない。信じることができない」
リール「…」
メイビス「お引き取りを。これ以上ここにいるのなら…」
スッ…
メイビスは杖を取りだした。
メイビス「私があなた方を倒しま…」
ゴポッ!!
メイビス「!?」
エレナ「!!」
リール「…」
カランカランカラン…
突然メイビスの腕が消えた。その時、手に持っていたメイビスの杖が地面に落ちた。
メイビス「こ…これは…」
エレナ「!!」
エレナはリールの異様な気配に気づいた。
レナ「…下がりなさい。メイビス」
メイビス「!!」
メイビスは聞き覚えのある声を聞いた。
メイビス「この声…まさか…」
レナ「下がりなさい」
メイビス「!」
メイビスはリールの方を見た。リールの目は薄い黄色になっており、リールとはまた違った気配を放っていた。
メイビス「あなたは…レナ様…」
レナ「…」
レナはメイビスの目をじっと見ていた。
メイビス「な…何故あなたが…ここに…」
レナ「下がりなさい。四度目はないわ」
メイビス「何故あなたがここに!!」
ゴポッ!!
メイビス「!?!?」
エレナ「!」
レナ「…」
メイビスの体が一部吹き飛んだ。
レナ「…四度目はないって言わなかったかしら」
メイビス「っ…」
ジリッ…
メイビスは一歩後退りした。
エレナ (な…何よこれ…この気配…)
エレナもまた、レナの気配にビビっていた。
レナ「…」
メイビス「…しかし、あなたがここを通れば…」
レナ「メイビス」
メイビス「!!」
レナ「…消すわよ」
メイビス「っ…」
レナ「嫌なら下がりなさい」
メイビス「っ…」
スタスタスタ
メイビスは魔法陣の前から退いた。
レナ「…さ、早く行きましょうか。正直待ちくたびれたの。いつ来るかいつ来るかってずっと待ってたのよ?」
エレナ「…」
レナ「あと1つ。この第三層さえ突破できればあとはあなたたちの目的の場所 深淵よ」
エレナ「!!」
レナ「…早く来なさい」
フッ…
するとリールの目の色が戻った。
リール「っ…あれ…私は一体…」
エレナ「!!」
リールの気配が戻った。先程の恐ろしい気配はもうどこにもなかった。
エレナ「…」
メイビス「…」
エレナとメイビスは何も言わなかった。それと同時にリールに逆らうとどうなるのかを悟った。
エレナ (これは…あいつに逆らったら最後ね。今は幸いリールでしょうけど何の拍子でアレに変わるか分からないわ。用心しましょう)
メイビス (こ…こいつ一体…何故あの方がここに…今は気配はないがそれでも…)
リール「あの…エレナさん」
エレナ「!」
リール「つ、次行きましょう。ここに魔法陣がありますので」
エレナ「え、えぇ…」
スタスタスタ
エレナは魔法陣のところまで歩いた。
エレナ「…じゃあ先通らせてもらうわね」
メイビス「…あぁ。好きにしてくれ」
ヒュッ…ヒュッ…
エレナとリールは魔法陣によって第三層まで転送された。
メイビス「…これはあの子たちにも報告しないと」
〜物語メモ〜
冥邪神メイビス
第三層 臨界の間に通ずる魔法陣を守護している者。この深淵には3人の守護者がおり、メイビスはその1人。メイビスは3人のまとめ役で自由奔放なイコイの後始末をよくさせられている。レナの事をよく知っており、リールがレナになった瞬間、一気に表情を変えた。
3人の守護者
深淵には各層に通ずる魔法陣を守護している者がいる。その数3人。
1人目…天邪神イコイ(女)
第二層 天臨の間に通ずる魔法陣を守護している者。活動範囲は第一層 碧天の間のみ。だが自由奔放なため、メイビスのように魔法陣の前に立って守護していることは少なく、常にどこかに行っている。
2人目…冥邪神メイビス(男)
第三層 臨界の間に通ずる魔法陣を守護している者。活動範囲は第二層 天臨の間のみ。責任感が強く、与えられた命令を遂行するまで気を抜かない性格。イコイの後始末をすることが多く、メイビスはイコイの身勝手な行動に悩んでいる。
3人目…???
第四層 深淵に通ずる魔法陣を守護している者。