私の名前はリール。
今深淵にいます。
先程まで魔女さんと禍異者が戦っていました。
どちらとも魔力が凄まじく、周囲に落ちていた岩石や周囲の壁が衝撃で崩れたりしました。
私はただ見ていただけですが、それでも2人の強さが身に染みて分かります。
私は今までドレインを出させないようにと思って戦っていましたが、それがこれほどまでに辛いものだとは思いませんでした。
…私は光属性魔法の適性者で、ドレインに対して有効な魔法を使うことができます。
今までのドレインも私の魔法1発でやっつけてきました。
なので今回は1発ではありませんが、何回か攻撃すればいいだろうと勝手に思っていました。
ですが…今までの魔女さんの魔法を見て分かります。
…私じゃ何も出来ないと。
ここは魔女さんに全て任せた方が良いのでしょうか、それとも私も加勢した方が良いのでしょうか。
もし加勢した方がいいならせめて足でまといにならないようにしようと思いました。
シュゥゥゥゥゥゥゥ…
魔女さんが魔法を放ってから少しの間、静寂が訪れた。
魔女さん「…」
魔女さんは依然としてその場から動かない。ずっと禍異者がいた場所を見つめている。
リール「魔女…さん…」
リールはずっと遠くから魔女さんを見ていた。
魔女さん「っ…」
禍異者「あっ…がっ…ぐっ…」
突然禍異者の声が聞こえたかと思うと、先程まで呼吸しかできていなかった禍異者が腕を動かしていた。
魔女さん (…これでもダメですか。全く…何故こうも魔力が尽きないんですか。この人は)
禍異者「かっ…カカカ…あっ…がっ…」
禍異者は今はまだ腕を動かしているだけだった。それもゆっくりと。
魔女さん (…トドメを刺しきれなかった。いや、これ以上ない魔力で倒したはず…じゃあ何でリノから離れないの…このドレイン…)
禍異者「あっ…がっ…がぁぁぁぁぁ…」
禍異者は言葉を発さず、ただ声だけを出していた。
リール「魔女さーん!」
タッタッタッ!
リールが魔女さんのところまで走ってきた。
リール「魔女さん!」
魔女さん「…」
リール「ま、魔女さん?」
魔女さん「…リール」
リール「は、はい…」
魔女さん「…まだ倒してないですよ」
リール「!」
魔女さん「今はまだそこで寝ているだけ。私は渾身の一撃で倒したはず。でもまだ生きています」
リール「そんな…」
魔女さん「…リール」
リール「は、はい…」
魔女さん「…あなたがやってください」
リール「え…」
魔女さんは突然リールにそう言った。当然リールは驚いた。
リール「え…ですが、私の魔力では倒しきれないのでは…」
魔女さん「…そうですね。私の魔力ですら倒せなかったとなると、リールの魔法でも無理でしょうね」
リール「やっぱり…」
魔女さん「ですが、光属性魔法は違います」
リール「!」
魔女さん「光属性魔法はいくら使用者の魔力が弱くてもドレインには有効打を与えることができます。私の魔法は闇属性魔法ですから効果は薄いです」
リール「え…魔女さんの魔法は全属性なのでは…」
魔女さん「元々私の魔法は闇属性魔法です。私が全属性の魔法を使うことができたのはあの時からです。つまり、後天的にそうなったのです」
リール「え…」
魔女さん「私も光属性魔法を使うことはできますが、純粋な光属性魔法のあなたと比べたら遥かに弱いです。ですからここはあなたに任せます。このドレインに最後の一撃を」
リール「…」
リールは禍異者を見た。禍異者は未だに腕を少しずつ動かしている状況で体を起こすのは少し難しそうだった。
リール (この人は禍異者…ですが本当は私のお母さん。…私は私の手でお母さんを殺さなければならないのでしょうか…)
リールは少し考え事をしていた。
魔女さん「…リール」
リール「!」
リールは魔女さんの声で我に返り、杖を取りだした。
リール「…」
ザッザッザッ…
そして1歩ずつ禍異者に近づいた。やがて禍異者の目の前に立つと禍異者に杖を向けた。
リール「…」
禍異者「あっがっ…」
リールは杖を向けて固まった。
魔女さん「リール」
リール「…できません」
魔女さん「!?」
スッ…
リールは杖を下ろした。
魔女さん「…何故ですか。リール」
リール「…私は…お母さんを殺せません」
魔女さん「お母さんを殺せとは言ってません。ドレインを倒してと言っているのです」
リール「ですがドレインを倒すとそれに取り憑かれている私のお母さんも一緒に死んじゃうのではないでしょうか」
魔女さん「…」
リール「どうですか。魔女さん」
魔女さん「…」
魔女さんは何も言わなかった。
リール「…お答えできないということはやっぱり…」
魔女さん「…」
リール「…でしたら私は殺しませ…」
シュルシュル…グッ!!
リール「!!」
魔女さん「!!」
突然禍異者から触手が伸びてきてリールの体に巻き付いた。
リール「かはっ…」
その締め付けが強く、リールは苦しんでいた。
禍異者「ワ…ワタ…ワタシ…ノ…ムスメェェェェ!」
ギュゥゥゥゥゥゥゥゥ…
禍異者は更にリールを強く拘束した。
リール「ぐぁっ…」
魔女さん「リール!」
バッ!
魔女さんは禍異者に掌を向けた。
魔女さん「
ババババババババババババ!!
魔女さんは全属性の弾型の魔法を放った。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
魔女さんの魔法は全弾禍異者に的中した。
禍異者「アァァァァァァァ!!」
ビュン!ビュン!ビュン!
禍異者は触手で掴んだリールを振り回し始めた。
リール「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
リールは高速で振り回されて恐怖を感じていた。
魔女さん「リール!!」
ビュン!
魔女さんは一目散にリールのところへ飛んだ。
禍異者「ワタシノムスメニチカヅクナァァァァァァ!!」
ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!
禍異者は周囲に魔法陣を展開して魔法を放った。
魔女さん「なっ!!」
ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!
魔女さんは突然のことに反応できなかった。
ヒュゥゥゥ…ドォン!
魔女さんはそのまま撃ち落とされてしまった。
シュゥゥゥゥゥゥゥ…
魔女さんは少しダメージを負った。
魔女さん「ぐっ…なんでっ…魔法が…使えるんですか…」
禍異者「アァァァァァァァ!!」
ドゴォォォォォォォォン!!
禍異者は落ちた魔女さんに追撃のレーザーを放った。
魔女さん「なっ!」
ビュン!ドゴォォォォォォォォン!!
魔女さんは間一髪のところで魔法を避けた。魔法が当たったところは地面がえぐれていた。
魔女さん「これほどまでの魔力…一体どこから…さっきまで動けなかったのに…」
魔女さんはさっきまで死にかけだった禍異者が打って変わってピンピンしている様子に疑問を抱いていた。
魔女さん「一体…なぜ…あっ…まさか!!」
魔女さんは何か思いついた。
魔女さん「…まさかあれが」
魔女さんはリールを拘束している触手に目をつけた。
魔女さん (もし私の考えが合っているのなら…あの触手がリールの魔力を吸っている。そしてそれを使って魔法を使用した…)
魔女さんは策を考えていた。
魔女さん (もしそうなら早くリールから引き剥がさないと…でも一体どうすれば…)
現在の魔女さんには物を斬るような魔法はなかった。最初は燃やそうかと思っていたが、リールへの被害は最小限にしてあげたいと考えたため、燃やす作戦は捨てた。
魔女さん (あれをリールから引き剥がすには…)
魔女さんは周囲を見渡した。しかし、何か物を斬れそうなものは何も無かった。
魔女さん (くっ…このままじゃリールが…)
ビュン!ドカン!
魔女さんが色々と考えていると禍異者が攻撃してきた。
禍異者「アァァァァァァァ!!」
ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!
禍異者は更に魔法を重ねる。
ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!
その魔法は魔女さんを追尾し、爆発した。
魔女さん「くっ…この触手…邪魔ですね!!」
ゴォォォォォォォォ!!
魔女さんは伸びてきた触手だけを燃やした。
禍異者「アァァァァァァァ!!」
ゴォォォォォォォォ!!
燃やされた触手は暴れ回っていた。
ボボッ!
すると周囲の触手にまで炎が移ってしまった。
魔女さん「なっ!しまった!!」
やがてリールを掴んでいる触手にまで炎が移り、炎がリールの真下まで迫っていた。
魔女さん「くっ!」
ビュン!
魔女さんは真っ先にリールの方へ飛んだ。
魔女さん「リール!!」
リール「ま…魔女…さん」
ガシッ!
魔女さんはリールの手を掴んだ。
リール「あっ…魔女さん…」
魔女さん「リール!逃げますよ!」
スッ
魔女さんは掌を禍異者の触手に向けた。
魔女さん「
バババババババババババババ!!
魔女さんは魔法を使って何とか引き剥がそうとした。
ドドドドドドドドドドドドド!!
魔女さんの魔法は全弾命中した。
スルッ…
すると触手が力なく解け、リールを解放することができた。
リール「あ、ありがとうございます…魔女さん…」
ヒュゥゥゥ…スタッ!
魔女さんは地面に着地した。
スッ…
魔女さんはリールを寝かせた。
リール「…魔女さん?」
魔女さん「…リール」
リール「はい…」
魔女さん「…少しここで待ってて」
リール「え…」
魔女さん「…アレにトドメを刺してきます」
リール「え、待ってください魔女さ…」
ビュン!
魔女さんはリールの言葉を聞かずにその場をあとにした。
リール「ま…魔女さん…」
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場所…禍異者が寝ている場所
魔女さん「…」
ヒュゥゥゥ…スタッ!
魔女さんは地面に着地した。
魔女さん「…」
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ…
魔女さんが見た方には燃えた触手と禍異者がいた。
魔女さん「…」
スタスタスタ…
魔女さんは禍異者に近づいた。
魔女さん「…所詮あなたではリノを制御することはできないんですよ」
スッ…
魔女さんは禍異者に掌を向けた。
魔女さん「
ゴォォォォォォォォ!!
魔女さんは禍異者を燃やし始めた。
禍異者「アァァァァァァァ!!」
魔女さん「…」
禍異者は火だるまになっていた。
禍異者「アァァァァァァァ!!」
禍異者は炎を消すためにゴロゴロと地面を転がった。
魔女さん「…早く消えてください。私の大事な友人なんですよ」
スッ…
魔女さんは禍異者に指を向けた。
禍異者「アァァ…ガァァァァァァ!!」
魔女さん「…」
スゥゥゥゥ…
そしてそのまま指を下に向けた。
ドシン!!
その瞬間、禍異者の動きが封じられた。
禍異者「ガァッ!」
禍異者は突然動けなくなって驚いていた。
禍異者「ガァァァァァ!!」
魔女さん「…」
禍異者は声だけ出していた。
魔女さん「早く出てきてください。でないとあなたは…このまま焼死しますよ」
禍異者「ガァァァァァッ!!」
ビュン!
禍異者が叫んだ瞬間、何かがリノの体から出てきた。
魔女さん「…やっと出てきましたか」
シュゥゥゥゥゥゥゥ…
魔女さんはリノにかかった炎を消した。
ヒュォォォォォォ…
リノから出てきたソレは紫色の煙を出していた。
禍異者「…」
魔女さん「…あなたは自分の意思はあれど声を持たないために誰かの体に寄生しなければならない。今回はリノ。あの時あなた方ドレインを潰すためにリノが犠牲になった。…でも、これで終わり。核であるあなたを破壊すれば全て元通り。この世界は平和となる」
スッ…
魔女さんは禍異者の核に掌を向けた。
魔女さん「だからもう…これで最後にして。これ以上私たちに関わらないで」
禍異者「…」
パキパキ…パリン!!
突然禍異者の核が砕け散った。
魔女さん「!!」
ヒュォォォォォォ!!
そして砕けた核から更に紫色の煙が出てきた。
魔女さん「マズイ!!」
ヒュォォォォォォ…
その煙はまたリノに取り憑いてしまった。
禍異者「…ふふふ。大正解」
ヒュゥゥゥ…
リノに取り憑いた禍異者は宙に浮いた。
禍異者「私はあの球体であるために声が出ない。だから誰かの体に入る必要がある。…それがこの人だった訳ですよ」
魔女さん「…出てきなさい。壊してあげます」
禍異者「…ですが、私は失敗しましたよ」
魔女さん「…」
禍異者「私が戦えばさっきと同じようにあなたに負ける。ならどうすればいいか。答えは簡単です」
魔女さん「…」
禍異者「戦うのが私ではなく "この人自身 " であればよいと」
魔女さん「!?」
禍異者「さぁ、存分に戦いなさい。あなたが大事と言っていた友人との死闘ですよ!!」
ギュォォォォォォ…
するとリノの周囲に紫色の煙が出現し、再びリノの体に戻っていった。
リノ「…ふぅ」
魔女さん「!!」
魔女さんは目の前の気配に気づいた。
魔女さん (この気配…リノのもの…)
リノ「…リーナ」
魔女さん「!」
リノ「…私と…殺し合いましょう」
魔女さん「っ…」
〜物語メモ〜
全属性の火炎(エレメント・バーバラ)
魔女さんが使った魔法。全属性を炎を変換して放つ魔法。属性は全て火属性となるが、各属性の力をそのまま炎に変換しているため、各属性で与えるダメージはバラバラ。