私の名前はリール。
今深淵にいます。
私はレナという女の子から色々とお話を聞きました。
あの子は私に「もう罪を犯している」と言っていました。
でも私はそんな事は身に覚えはないんです。
今まで真面目に生きてきましたし、ルールを破ったりもしませんでした。
なのにそんな私が罪を犯したって…一体どんな罪を犯してしまったのでしょうか。
気になって仕方ありません。
ですが、もうその話を聞くことはできないそうです。
まだ10分も経っていないのに、何故か急に私に意識が戻ったんですよ。
しかも目の前にいるグラムさんはレナさんの意識がないと仰っていましたが、私にはそれを確認する術がありません。
…もっと勉強しておくべきでした。
私は属性魔法ばっかりに目を向けてしまっていました。
なのでこういう時に何も出来ないんですよね…。
…さて、お話はここまでです。
今、グラムさんから世界を破壊しないかと提案を受けています。
…答えは簡単ですね。
グラム「あなた、私と一緒にこの世界を破壊しませんか?」
リール「!?」
アンナ「!!」
グラムさんは急にそんな提案をしてきた。
リール「え、世界を…破壊…」
グラム「そうです」
リール「…破壊したとして、私になんのメリットがあるのですか」
グラム「…」
グラムは少し黙ってから口を開いた。
グラム「…私はこの世界の裏を知っています。この世界の裏にはあなた方が使う魔力の元素があります」
リール「魔力の…元素…」
グラム「そう。それは持つ人の魔力を極限まで上昇させるものなんです。それがあれば弱い魔法も国を破壊できるくらいにまで上昇します」
リール「えっ…」
グラム「ですが今はそれがありません。いえ、正しくは『封印されて見つけ出せない』といったところです」
リール「…」
グラム「それがあれば私はある方を生き返らせることができるのです」
リール「生き返らせる…」
グラム「そう。その方は私にとって大事な方です。今は残念ながら亡くなっていますが…。私はあの方を生き返らせてまた昔みたいに時間を共にしたいです」
リール (この人が言ってる大事な人って…まさか…)
グラム「さぁ、あなたのお力を」
グラムはリールに手を差し伸べた。
リール「…ひとつ…お聞きします」
グラム「…何でしょうか」
リール「あなたが仰っていた大事な人って…魔女さんの事ですか」
グラム「…」
グラムは少し黙った。だが、少ししてから口を開いた。
グラム「…はい。その通りです」
リール「!」
リールは予想通りの答えで少し驚いていた。
リール「…魔女さんに何かあったのですか」
グラム「…」
リール「魔女さんは強いお方です。今は倒れていますが、私の代わりにドレインを弱らせてくれました。…そんな方が亡くなった?一体何があったのですか」
グラム「…」
グラムは差し伸べていた手を引っ込めた。
グラム「…殺したんですよ。私が」
リール「!?」
リールは突然の言葉に驚いた。
グラム「ですが、あぁするしかなかった。他に手はありませんでしたよ」
リール「え…魔女さんを…殺した…」
グラム「はい。殺しました」
リール「っ…」
リールはレナが言っていた言葉を思い出した。
リール「…あなたは…」
グラム「?」
リール「あなたは…道を外れたあの人…」
グラム「!」
グラムはある言葉に反応した。
リール「私はあの人…あの人は私…」
グラム「…」
リール「…お答えします」
グラム「…」
リール「あなたのお誘いには乗れません。すみません」
リールは頭を下げた。
グラム「…何故ですか。あの力を手に入れることが出来れば私たちは強くなれる。誰一人死なせずに済みます。それなのに何故」
リール「…私はみんなのために力をつけたいです」
グラム「でしたら」
リール「しかし」
リールはグラムが話している途中で遮った。
リール「…自分だけが強くなるためのものなら必要ありません」
ヒュッ!ドカン!ドカン!ドカン!
リールは杖をグラムに向けて魔法を放った。
ヒュゥゥゥゥゥゥ…
煙が徐々に晴れてきた。
グラム「…何するんですか。あなたは」
しかしグラムは無傷だった。
グラム「…少し痛かったですが、あなたが私に力を貸すというのなら先程の無礼を見なかったことにします。さぁ、私にお力を」
リール「…嫌です」
グラム「…」
リール「私はあなたに従いません」
グラム「…そうですか。なら仕方ありません」
グラムは少し怒っていた。
グラム「…すみませんがここからは一切手を抜きません。私はあなたを屈服させてあなたの魔力を使わせて頂きます」
スッ…
グラムはリールに指を向けた。
グラム「
スーッ…
グラムはそのまま指を地面の方に向けた。
リール「私だって手を抜きません!あなたの野望は全て私が排除して…」
ドゴォン!!
すると突然リールが地面に叩きつけられた。
リール「がっ…!!」
アンナ「リール!!」
グラム「…」
グググググ…
リールは見えない力によって地面に押し付けられていた。
リール「何…これ…」
グラム「あら、あなたは見たことあると思ってましたよ」
リール「こ、こんな力…」
グラム「これは第1次元魔法。相手に『点』と『線』を与える魔法です。魔女さんが使っている次元魔法ですよ」
リール「!!」
リールはその言葉に驚いた。
リール「これ…が…魔女さん…の…」
グラム「そう。これが魔女さんの次元魔法。そしてこれが…」
スッ…
グラムは手を上に向けた。
グラム「
ブゥン…
すると透明な板状のものが出現した。
グラム「相手を圧縮する魔法。第2次元魔法です」
スッ…
グラムは上に向けた手を下におろした。
ブゥン…ギギギギギ…
透明な板状のものはリールの上から覆い被さるように近づいた。そして、下にいたリールを押し潰し始めた。
リール「ぐっ…がぁっ…」
リールはあまりの強さに声が出なかった。
グラム「ひとつ言い忘れていました。私は魔女さんやエレナさんと違って全ての次元魔法を使うことができるんですよ」
リール「なっ…」
ギギギギギ…
透明な板状のものが更にリールを押し潰す。
リール「あっ…がっ…」
リールはだんだん呼吸ができなくなってきていた。
リール (このままじゃ…私…)
アンナ「リール!!」
リール「!」
リールが声のした方を見ると、アンナが走って近づいてきていた。
リール「待ってアンナ…来ちゃダメ…」
アンナ「私のリールから離れて!!」
ザバァン!!
アンナは杖を使って大量の水を作り出した。
アンナ「はぁっ!!」
ザバァン!!
そしてアンナはその大量の水を操作してグラムを押し流した。
グラム「なっ!」
ザバァン!!
グラムは少し遠いところまで押し流されてしまった。
ピシッ…パリンッ!!
すると次元魔法の効果が切れてしまった。
グラム「なっ…この力…アンナ…あなたこの時はこんなに力が強かったのですか…」
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アンナ「リール!!」
タッタッタッ!
アンナはその隙を見てリールに駆け寄った。
アンナ「リール!!大丈夫!?」
リール「アンナ…」
アンナ「あ、良かった…声は聞こえる…」
リール「アンナ…今すぐここから離れて…」
アンナ「えっ…なんで…」
リール「あの人は危険です…ですので今すぐに…ここから…」
アンナ「でも!リールを置いてなんて!!」
リール「お願いです…私よりも…オード君たちを…」
アンナ「!!」
アンナはオードたちが倒れている方を見た。オードやディア、ノーラ、スカーレットはみんな倒れたままになっている。
アンナ「みんな…」
リール「アンナ…」
アンナ「何…?」
リール「エレナさんは…いますか?」
アンナ「!」
リール「エレナさんに…みなさんを回復させるよう…言ってきてください…」
アンナ「でも…リールは…」
リール「私はあとで…だからお願いです…」
アンナ「リール…」
リール「お願いです…アンナ…」
アンナ「っ…」
アンナは少し考えて答えを出した。
アンナ「…分かった。言ってくるよ。終わったらすぐリールを回復させるから…それまでは耐えて」
リール「…はい。任せてください」
アンナ「っ…」
スッ…タッタッタッ!!
アンナはその場から離れた。
リール「頼みますよ…アンナ…」
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グラム「おや?」
グラムはリールとアンナの様子を伺っていた。するとアンナが急に立ち上がり、どこかへ走って行った。
グラム「あら、あの子と2人ならまだ希望はあったものを」
スタスタスタ
グラムは歩き始めた。
グラム「一人になるということは死にたいということですか?『私』」
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ザッザッザッ…
グラムはリールが倒れている場所に着いた。
グラム「あなた、死にたいのですか?」
リール「はぁっ…はぁっ…別に…死にたくないですよ…」
グラム「…ならあの子を一人にしたのは良くない選択ですよ。あの子と2人ならまだ私に勝つ希望はありましたよ」
リール「はぁっ…はぁっ…別にいいんです」
グラム「…」
リール「あなたの相手は私です…」
ジリッ…
リールはゆっくり起き上がった。
リール「あなたを倒すのはこの私です…」
ジリッ…
リールはゆっくり立ち上がった。
リール「あなたという脅威からみなさんを守るのが…私です!!」
シュゥゥゥゥゥゥゥ!!
リールの体から大量の黄色の光の粒が出てきた。
グラム「…懐かしいですね」
リール「っ…」
リールはグラムを睨んだ。
リール「私は…」
スッ…
リールはグラムに杖を向けた。
リール「私は…あなたをやっつけます!!」
グラム「…そう」
ヒュゥゥゥゥゥゥ!!
グラムの体から大量の白い光の粒が出てきた。
グラム「だったら私は…あなたの力を奪うまでです」
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ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!
周囲に爆音が響き渡る。
リール「はぁっ!!」
シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!
リールは光の玉を作り出した。
リール「
ビュン!!ビュン!!ビュン!!ビュン!!
リールは
グラム「その程度…
キィン!キィン!キィン!キィン!
グラムは第7次元魔法を使って
リール「まだいきます!!」
スッ!
リールは杖を上に向けた。
リール「
ジャラララララララ!
すると空中に魔法陣が展開され、その中から鎖が多数召喚された。
ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!
するとその鎖はグラムを捉えて拘束した。
グラム「なっ!しまった!」
リール「これで!」
スッ!
リールはグラムに杖を向けた。
リール「
キィン!バゴォォォォォン!!
リールの爆発はいつもより少し強めのものだった。
リール「やった!」
リールは喜んだが、すぐに次の行動に移った。
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パラパラパラパラ…
グラム (…流石は私ですね。よく出来た魔法の連携…今の私にはできない芸当ですね)
ビリビリ…
グラムの周囲の大気が少し震えた。
グラム「ですが、この程度では私を止めることなんてできませんよ」
ビリビリ…バキン!!バキン!!
グラムは特殊な力で
グラム「…」
グラムはリールのいる方を見た。
グラム「…では、次は私から行きましょうか」
ビュン!!
グラムはその場から一瞬で移動した。
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リール「よしっ…次の作戦は…」
グラム「では、次は私からですね?」
リール「!?」
リールは突然目の前に現れたグラムに驚いた。
グラム「いきますよ。覚悟してください」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
すると大気が振動し始めた。
リール「なっ…何…」
リールにとって初めて見る魔法のため、リールは何をしたらいいのか分からなかった。
グラム「これも次元魔法。第11次元魔法。相手に揺らぎを与える魔法です」
リール「揺らぎ…」
グラム「そう。相手に揺らぎを与えることで平衡感覚を狂わせるんです」
リール「!?」
リールは逃げる体勢を取った。
グラム「もう遅いです。
ブゥゥゥゥゥン…
グラムはリールに揺らぎを与えた。
リール「なっ…」
するとリールの視界が急に揺らぎ始めた。
リール「何…これ…視界が…」
リールは視界が揺らいだまま飛べずに落下してしまった。
グラム「ふふふっ…」
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ヒュゥゥゥゥゥゥ…ドゴォン!!
リールはそのまま地面に激突してしまった。
リール「がっ…」
リールは大ダメージを受けた。
リール「ぐっ…い…痛い…」
リールの体は所々激痛が走っていた。
ヒュゥゥゥゥゥゥ…スタッ…
グラムはゆっくり綺麗に着地した。
リール「ぅっ…痛い…痛い…」
リールは痛みに悶絶していた。
グラム「ふふっ…でしょうね。あの高さから落ちたんだから普通は死んでるところですよ」
リール「うっ…ぐっ…」
グラム「さて、私は一切手を抜かないと言いました」
ギュォォォォォォォ!!
グラムはある魔法を発動した。
グラム「なのでこのままあなたの様子を観察するほど優しくありません」
ボワン!
するとグラムの掌に透明な空間が作り出された。
グラム「
リール「!!」
グラム「これであなたの体を空間ごと消し炭にします」
ボワン!!
透明な空間が少し大きくなった。
リール「そんなとこしたら…私の体は…」
グラム「えぇ。元には戻りませんよ」
リール「だったら…私の力も…元には戻りませんよね…」
グラム「…」
リール「それはあなたにとって最悪のシナリオなのでは…ないでしょうか…」
グラム「…」
ブクブクブク…パチン!!
グラムは透明な空間を破壊した。
グラム「…だったら私に力を貸してくれますか?」
リール「っ…」
グラムは少しだけ待った。だがリールから返答が来ることはなかった。
グラム「…そうですか。ならあの子にしましょう」
リール「?」
グラム「さっきあの子の水属性魔法を受けて分かりました」
リール (アンナのこと…)
グラム「あの子にも少なからずあなたと同じものがあります。まだまだ未熟ですが、成長すれば次第に強い力となるでしょう」
リール (まさか…)
グラム「あなたがダメならあの子にしますね」
リール「ま…待って…」
グラム「…」
リール「あの子には…手を出さないで…」
グラム「…無理ですね」
リール「!」
グラム「あなたが承諾しない以上、あの子を使うしかないのです」
リール「そんな…」
グラム「では、探しに行きましょうか」
ザッザッザッ…
グラムは歩き始めた。
リール「待ってください!!」
グラム「!」
グラムは足を止めた。
グラム「…何ですか。承諾しないならあなたに用はありませんよ」
ジリッ…
リールはゆっくり立ち上がった。
リール「まだ…負けてません…」
カタカタカタ…
リールは震える腕でグラムに杖を向けた。
グラム「…」
リール「まだ…私は戦えます…」
グラムはリールの方を振り向いた。
グラム「そう。じゃあ次で最後ね」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
グラムは魔力を増幅させた。
カタカタカタ…
リールの腕はまだ震えていた。
リール (ダメ…まだ視界が揺らぐ…)
リールはまだ第11次元魔法の影響を受けていた。
グラム「フラフラのあなたに耐えられるかしら?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
グラムの魔力が更に増幅した。
グラム「第8次元魔法…」
グラムはリールに掌を向けた。
グラム「
ブゥン!!
するとリールの体が一瞬だけ硬直した。
リール「かっ…」
ドサッ…
リールはそのまま力なく地面に倒れた。
リール「ぁっ…っ…」
リールは何故か声が出せなかった。
グラム「これは第8次元魔法。相手を真空状態にする魔法。この魔法を受ければ相手の体内から一瞬で酸素が消えてなくなる」
リール「っ…っ…」
グラム「あなた知ってる?体の中にある筋肉って動かすためには酸素が必要なの。でも今のあなたの体には酸素はもう残ってない。つまり、もう二度と体を動かすことができないの」
リール「っ…っ…」
リールの目から涙が出てきた。
グラム「私が解除するか、私に一定の攻撃を与えることができればこの魔法は解除されるけどあなたにもうその余力は残ってない。つまり、あなたの敗北です」
リール「っ…」
リールの目から更に涙がこぼれ落ちてきた。
グラム「さて、次は止めませんよ。これであなたを消滅させます」
ブゥン…
グラムはまた透明な空間を作り出した。
グラム「さようなら。もう1人の私。来世ではもっとマシな人間になってくださいね」
リール「っ…っ…」
リールは涙を流すだけで何も出来なかった。
〜物語メモ〜
第1次元魔法《 空印(ソル) 》
魔女さんが使っている次元魔法。
相手に『点』と『線』を与える力を持つ。
点は相手に指を向けて空間をつつくことで、相手に空気の塊を飛ばすことができる。
線は相手に指を向けて上下左右に指を向けることで相手を思いのままの方向へ動かすことができる。
第2次元魔法《 潰箱(カンデラ) 》
グラムが使っている次元魔法。
相手を圧縮する力を持つ。
第2次元魔法は最大4枚の透明な板状のものを出現させて相手を押し潰す。
今回はリールが地面に押し付けられている状況だったため、1枚で済んだが基本は4枚出現させる。
この透明な板状のものは目に見えないが触れることはできる。
圧縮する際、その人の周囲はその透明な板状のものによって囲われるため、酸素も徐々に少なくなっていく。
第3次元魔法《 開闢(マトン) 》
リールの母親であるリノが使っていた次元魔法。
空間を作り出す力を持つ。
何も無いところから新たに空間を作り出し、それを現世に具現化することができる。
新たに作られた空間が具現化すれば、前に存在していた空間は一瞬で消滅する。
これは空間だけだが、その消滅する空間の中に人がいれば、その人も一緒に消滅する。
リールの母親であるリノはこの次元魔法を使ってこの世界に深淵という空間を作り出した。
第8次元魔法《 真空(オーラル) 》
グラムが使っている次元魔法。
相手を真空状態にする力を持つ。
相手を真空状態にするだけでなく、体内の酸素を一瞬で消したりすることも可能。
この魔法を受ければたちまち力が抜け、呼吸も出来なくなるため、かなり危険。
グラムが解除するか、一定の攻撃を与えることでこの魔法を解除することができる。
第11次元魔法《 虚式世界(アイオニア) 》
グラムが使っている次元魔法。
相手に揺らぎを与える力を持つ。
これは人だけでなく、大気にも揺らぎを与えることができる。
人に揺らぎを与えることで平衡感覚を狂わせ、大気に揺らぎを与えることで相手との距離を錯覚させることができる。